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本部

雪烟る孤立無援の山

山上 三月

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/12/26 03:13

掲示板

オープニング

●山形県某所
「まんずこの雪どうにかしねど、どんどん雪深くなってら」
「父ちゃん、どうする? 帰るか?」
 老年の父親と娘がひとり、雪山を歩いていた。一匹の飼い犬が帰ってこなくなったのである。
 飼い犬はシロという。灰色の毛並みに白い毛が混じった大型犬だ。いつも山に散歩に来た際は放してから共に帰るというのがシロと散歩をする家族の日課だった。
「シロー、シロやーい」
「シロー、でてこーい」
 二人の呼びかけ虚しく、声は降り積もる雪に吸い込まれていく。
 二人が呼ぶ声に突然、周囲の雪が吹雪きはじめた。ごうごうと周囲の樹氷とかしていた樹たちが音を立てて揺れる。
「なにっこれ、父ちゃん!」
「こっちゃこい!」
 あれは吹雪ではない。
 巨大な雪男のような姿の雪が、響く足音を立てながらこちらに迫っていた。

●情報監視室
 プリセンサーの一人が、予知した結果を急いで報告していた。
 山形県某所でドロップゾーンの出現である。おまけにここでは行方不明者も出ている。父と子の二人だ。後は犬が一匹。
 捜索は周辺の警察では吹雪によって困難な状態であるという。
 それもそのはず、この吹雪は愚神によるものである。愚神を倒さなければ吹雪もおさまらないだろう。
 山形は雪深い県だが、この猛吹雪は山腹に集中した一部地域のみで発生している。いくら雪深いとはいえ、このままではこの山だけが雪まみれになってしまう。従魔の数は複数体と思われる、また鈍足であるだろう。猛吹雪に行方不明者が巻き込まれている可能性は極めて高い。
 愚神の姿はさながら雪男、といえばいいだろうか。五メートル程の巨体に全身雪被りで直立二足歩行。鈍足でどしんどしんと歩く。たまに地響きのように咆哮する。この咆哮で雪山に雪崩が起こってもおかしくはない。まさしく雪男【イエティ】のようなものだ。急ぎの要件になるだろう。

●孤立無援雪山密室
「大体の状況はこうだ」
 男はそう結ぶ。
「父子は恐らく巻き込まれているだろう。父子の保護、できれば犬もだが、を優先的に。愚神の討伐と後は周囲にいるだろう従魔に警戒しつつ倒してくれ。従魔は鈍足、ただこちらも雪上での戦闘になる、いつもよりは動きが悪くなることを考慮して欲しい。愚神の姿は大型の雪男のようなものだと報告が入っている。デクリオ級だ。雪山にはいまエージェント以外誰も入れないような状況だ、中にいるだろう父子を除いては。雪山には山小屋もあるらしいが父子がこれに辿り着いているかは詳しい状況確認がとれていない。適宜それなりの装備で向かうことを頼む。以上、警戒してことに当たってくれ」

解説

●目的
父子(できれば犬も)の保護と愚神及び従魔の討伐
●現場
山形県某所某山腹一帯
●登場※PL情報※
雪男(愚神・デクリオ級) 一体
 5m程の巨体。鈍足。鋭い爪で薙ぎ払うように攻撃してくる。
従魔 複数体
 雪の化身。主に氷雪として周囲で飛散してまとわりつくように攻撃してくる。氷の核を持っておりそれを破壊することで討伐可能。雪男のおこす吹雪に乗って移動している。

父子
 雪山に遭難している父子。一般人なので力にはなれない。山小屋に避難しているかもしれない。

※PL情報※
 ・雪山での吹雪ですので足元と視界が悪いことにご留意下さい。
 ・天候はデクリオ級の存在する一帯だけ吹雪です。
 ・山小屋は吹雪の一帯である山腹内にあります。
 ・山中ですので携帯は繋がりにくいです

リプレイ

●雪山到着
 轟々と吹き烟る雪山が奥に見える。見えている現在地は至って平穏。ただ、あの吹雪がこちらに来さえしなければ、の話ではあるが。
「うーん…むにゃむにゃ…暖かくって…ぽかぽかデェース…」
『あいちゃん! それ凍死するから!! 寒いの慣れてないの分かってるけどお仕事! ほら、しっかり!!』
「あ、…あと5分…」
『おーきーろー!! 寝たら死ぬぞー!!』
 あい(aa5422)はのっけから寒さにやられそうになっていた。それを英雄であるリリー(aa5422hero001)に揺り起こされている。
「…まさか雪山で氷の精が三名とは、珍しいこともあるものですね。よろしくお願いいたしますね。雪室様、氷鏡様」
 そう言ったのはГарсия-К-Вампир(aa4706)である。
「よろしくです!」
 元気よくЛетти-Ветер(aa4706hero001)が言い放つ。
「スネグラチカ戦隊!冬レンジャー!」
 唐突な爆発SEが鳴ったかのように錯覚される、雪室 チルル(aa5177)が冬の大地に降り立った。
『……いきなり何してるの?とうとう頭が壊れた?』
 スネグラチカ(aa5177hero001)は少々呆れ気味に返した。
「失敬ね! だってほら、今回はスネグラチカの人が3人もいるじゃん!」
『本当だ。確かにあたし含めて3人いるけど』
「ということでスネグラチカ2号・3号達と一緒に頑張るのよ!」
『(いつの間にかあたしが1号になってる……)』
「よろしく……」
 氷鏡 六花(aa4969)が控えめな声で言う。
「よろしくお願いしますね。院長さんもユフォさんもいらっしゃるのね心強い」
 アルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)が続いた。
「あぁ、よろしく頼む。御神さんもいることだしな」
『ん……よろしくね』
 麻生 遊夜(aa0452)とユフォアリーヤ(aa0452hero001)が答える。
 呼ばれた御神 恭也(aa0127)が顔をあげた。
「よろしく……問題は父子が何処に居るかだが……」
『きっと山小屋を目指すでしょうから、そこから始めるのがいいでしょう』
 不破 雫(aa0127hero002)の言葉に餅 望月(aa0843)が返す。
「そうね。寒いしね」
『それだけに遭難してたら大変だよ、早く探そう』
 百薬(aa0843hero001)も頷く。
「そうだね。いくら雪国の方とは言え、これだけの吹雪になればひとたまりもないか」
 九字原 昂(aa0919)は深刻そうに言う。
『それも愚神が起こしているものだからな。まず一般人には無理だろう』
 ベルフ(aa0919hero001)が同意する。
「山小屋を目指すのが妥当だろう」
 麻生はそう言って吹雪く山腹の方を見遣った。
 六人がいる場所は雪が積もっているだけでまだ吹雪いてはいない。吹雪の方に愚神がいるという情報は事前に得ている。後は進むだけだ。
 遭難中の父子も恐らく山小屋に向かっているだろうと、八人はここへ来る道中に考えていた。ひとまずは山小屋を目指すのが良いだろうという結論に至り、雪を踏みしめ、八人は進みはじめた。
 吹雪に近づくにつれ凍るような寒さが肌に付き纏ってくる。そんな中でも氷鏡はさくさくと歩いていた。ペンギンの獣人故に寒さには強いのだ、むしろ寒くて快適といった姿に他のエージェント達は頼もしさを覚える。
 ちょうど吹雪の境目に到着すると、麻生は登山地図を確認しつつモスケールを起動した。
「今の所反応なしか、もう少しな筈なんだが……」
 麻生の言葉に皆も立ち止まって吹雪の方を見る。
 氷鏡が一歩踏み入って、呟いた。
「……ん。この吹雪……すごく……不自然……」
 北海道育ちであり、今はH.O.P.E.南極支部所属である氷鏡には愚神が操っているであろうこの吹雪の不自然さがありありとわかった。
『……そうね、確かに不自然だ』
 ユフォアリーヤが同意する。
 吹雪は主に”なんらかの中心部”から吹いてきており、その中心部には目的の愚神がいるはずであるということである。
「じゃぁ、愚神の位置も目星がついたってことで、別れたほうがいいかな? あたしは山小屋の捜索と救助の方に向かうよ!」
 餅が言う。
「あいは愚神の討伐Death! この寒さの原因を斃して暖かい世界を取り戻すのデェース!!」
『……いや、こいつを倒したところで冬が終わる訳じゃないから』
 リリーがにあいに返す。
「あたいもあい達と愚神討伐ってことで!」
 雪室が手を上げた。
「ん……私も」
 氷鏡も同じく頷く。
「じゃぁ僕は従魔を優先するけどそれまでは山小屋を目指す救助隊と一緒にいくよ。救助も優先しないといけないし」
 九字原の言葉に他の四人は救助隊と従魔討伐として別行動することにした。
「あっ、その前に、愚神討伐行く人にはフットガードかけないとね」
 餅が、あいと雪室、氷鏡にフットガードをかける。これで雪場でも足元は安全だ。
 吹雪の中に入り込むとそこはもう愚神と従魔のテリトリーである。猛烈な吹雪が八人の顔に吹き付ける。皆それぞれリンクを始める。吹雪の中で、リンクした姿はそれぞれ美しく雪に映えた。

●目標:雪男【イエティ】との交戦
「それじゃ! 行ってくるのDeath。あいは潜伏して敵の目をごまかします」
 あいは救助隊に手を振り潜伏を使用する。途端に気配が薄くなった。
「あたいは真正面から仕掛けるから、その隙に攻撃よろしく!」
「……ん、私は索敵して情報を共有するから」
「おっけー! それじゃ行くのです!」
 三人は吹雪の中を進む。
 氷鏡はマナチェイサーを使用し、索敵を開始する。
「……目標、4体いる……奥に強い反応、愚神……かな」
 吹雪の奥にちらつく反応に三人は身構えた。
 ごうごうと吹き荒ぶ風が、身体の位置さえずらしてしまいそうである。
 愚神の位置は少し遠く、従魔の方が近かった。
 ――パリーン
 音がして、三人は慌てて身を翻す。
 従魔の攻撃だった。はじけた雪が飛び散る。従魔はさながら雪の精とでもいえるような見形だったが、その攻撃は寒々しく鋭い。優しいものではなかった。
 氷鏡に目標を定めた従魔がふわりふわりと飛びながら氷鏡の周りを回る。本物の雪の精霊は偽の雪の精霊からの攻撃をきちんと見定めた。
「氷雪対決なら負けないよっ。絶対零度のホンモノの凍気、見せてあげる!」
 終焉之書絶零断章を紐解いた氷鏡の手の先には魔法陣が浮かび上がる。目にも止まらぬ速さで魔法陣から絶対零度のライヴスが従魔に放たれた。
 あっけなく従魔はパラパラと粉のように飛び散る。後に残るのはライヴスの雪のような煌きだけだ。
 二体目の従魔が雪室に攻撃を仕掛けるがこれも雪室の機敏な動きによって躱される。
 雪室が手にしたウルスラグナで従魔を斬りつけた。従魔は雪室によって真っ二つにされ、核を失い消滅する。
 三体目の従魔が懲りずに氷鏡と雪室にまとわりつくように動く。
『(チルル、危ない)』
 スネグラチカが言うと同時に雪室は躱そうとするが、背後に回られ、腕を傷つけられる。
「いったぁ!」
 鋭利な氷で斬られたような痛みに雪室は一瞬怯む。
「もう!」
 雪室が体勢を立て直して、ウルスラグナで従魔に突きをいれる、が従魔はひゅうと風に吹かれたように的を外した。氷鏡が再び魔法陣からライヴスを放つ。
 雪室に集中していたのだろう従魔は今度こそパサリと音をたてて割れた。
「大丈夫? 雪室さん」
「このぐらいヘーキヘーキ! あたいたちは愚神をやっつけなきゃだからね」
 元気よく言う雪室に、氷鏡は少し安心したように息をついた。潜伏しているあいは状況を確認すると「(大丈夫?)」と心配するが雪室がそれにサムズアップを送るとあいもサムズアップを返し、「(GO!)」とサインを送ってくる。
 目標の愚神は目前だ。
 一層激しく吹雪が体全体に吹き付ける。
 ――どしん、どしん……
 雪男の歩く音がした。咆哮は聞こえない。
 目の前を吹雪く雪の中に、氷鏡は紅く光る瞳を見た。その目はこちらを睨めつけている。
 氷鏡が構え、ブルームフレアを放つ。
 巨体の雪男はその攻撃に反応する術を持たず、ライヴスの火炎に包まれた。
『この寒さじゃ長期戦は良くない…とにかく毒にして短期戦に追い込むよ』
「ガッテンショーチDeath!!」
 あいが隙を見てその大鎌ソウルイーターに毒刃をかけ雪男の足をひっさらうように攻撃するが、雪男に損傷は無いようだった。
「効いてない!」
 雪室が、ライヴスリッパーを使用し気絶を狙った。雪男に攻撃はあたるものの、雪男はのそりと歩みの遅いそれでこちらに向かってくる。
 雪男が手を振り上げた。鋭い鉤爪が三人に迫る。
「遅いよ!」
 雪室達三人は即座に攻撃を避けた。
 氷鏡が避け際に放った攻撃が見事雪男の首に命中する。雪男は壮絶な叫び声をあげながら、ゆっくりとのたうち回る。雪男の叫び声に呼応するように吹雪が強くなった。
『あの吹雪が厄介ね。〈縫止〉でどうにかできない?』
「口から出してるなら口Death、腕を振り回しているのなら…とにかくぐるぐる巻きにしちゃうのDeath!!」
 あいは言うが早いか、ライヴスの針を放つ。針はのたうち回る雪男に命中した。途端に吹雪が弱まった。
「今ね!」
 雪室が再びライヴスリッパーを使用する。今度は成功したらしい、どしん、と音をたてて倒れた雪男はそのまま動かなくなった。

●従魔のお邪魔
 一方愚臣討伐の三人と別れた五人は山小屋に向かっていた。
「もう少しで山小屋につくな」
 自らが明かりとなって二次遭難を警戒している麻生が言う。猛烈な吹雪は山頂にまで続いているらしい。
『敵を避けて行動とは、気が引けますね……』
 不破の言葉に御神は答えた。
「仕方あるまい、下手に戦闘を行えばそれだけ父子を保護するまでの時間が掛かる事になるんだからな」
 麻生を目印に他の四人は後を二列になってあるいていた。
「急がないとね!」
 餅が言う。
「もし従魔が出現したら私は道を作りますから、救助の方は行ってくださいね」
 Гарсияの言葉に目立つ上着を着てゴーグルを着用している九字原も頷いて答えた。
「僕も援護に回ります。お二人は救出を優先して下さい」
「あぁ、俺は山小屋の方に向かう」
 御神の言葉に麻生は「そうだ」と言って荷物から何かを取り出した。
「俺も従魔の討伐を援護するから、山小屋に父子がいるならこれを」
 ブランケットとランタンそれからボルシチパックを御神に手渡す。受け取った御神は頷いた。
『……ん、感あり……三時の方面、反応複数』
 ユフォアリーヤが従魔の反応を麻生に伝える。
「おっと、敵さんのご登場のようだ」
 五人が敵の方向へ身を向ける。
「氷に氷の攻撃をぶつけるというのはいささかどうかとは思いますが…まぁ見栄えの問題なので気にすることはないでしょう」
 Гарсияがふっと笑いながら言った。
『私の方がひえひえなんだぞー!!』
「……えぇ、そうですね。サンクトペテルブルク支部の極寒さ、お見せ致しましょうか」
 Леттиの言葉に答えたГарсияはひらりと従魔の攻撃を躱し、ライヴスキャスターを使用した。
 水晶体が数多に召喚され、山小屋に向かう道が開ける。御神と餅は一目散にそこを駆け抜けた。残ったのはГарсияと九字原、麻生である。
 九字原が速攻とばかりに従魔に攻撃を仕掛けた。手首に固定されたウヴィーツァがせり出し、従魔は粉砕された。
 Гарсияが白冥を開くと周囲に冷たいライヴスが溢れ出す。ライヴスの弾幕が従魔に襲いかかった。弾幕は避けきれなかったのか従魔はパサリと雪のように消えた。
 麻生は三体目の従魔に発砲する。ブレイズアトレイルCP11から放たれた銃弾が正確に従魔を撃ち抜いた。
『(ん……感なし。……意外と少なかったね……)』
「もういないようだな、後は愚神の討伐を手助けした方がいいか」
 麻生の言葉に九字原とГарсияは同時に頷く。まだ吹雪は続いている。
 濃密な吹雪の嵐を三人はモスケールの情報を頼りに進んだ。

●雪山密室
 御神と餅は雪道を走っていた。
 いつまた従魔が出るとも限らない、山小屋に到着するには時間が限られている。仲間のエージェント達が作ってくれた道を無駄にはできない。
 吹雪の最中にある山腹は、走っても走っても先が見えない。
 数分が数十分のように感じられる。ホワイトアウトした視界は精神に良い物では無かった。
「見えたぞ」
 御神の言葉に餅は顔を上げる。
 確かに、あった。
 吹雪の隙間に光の灯っていない山小屋がある。
「あ、いるみたい!」
 ライヴスゴーグルに反応があった。二つの生命体の反応だ。
『待って、他にもいるよ』
 百薬が従魔の気配を察する。
『どうやらそう簡単には行かせてくれないみたいですね』
 不破も同時に気づいていた。
 従魔がこちらに向かって舞う。
 御神はすかさず天叢雲剣を振りかざし、従魔に攻撃を仕掛けた。従魔は粉砕され雪の粉が散る。
 二体目の従魔が餅にまとわりつこうとする。餅は避けようと身を翻したが、避けきれず足に鋭く冷たい痛みが走った。
「ったぁ」
 しかし餅は攻撃の手は休めない。ノルディックオーデンを突くようにすると槍の青白い炎が従魔を撃退した。
 背後をとった三体目の従魔が雪の結晶を硬度にした粒子でつぶてのように二人にまとわりつく。
 御神は攻撃の隙をとられて避けそこね、頬に擦り傷ができる。
 餅が慌てて従魔に青白い炎を放つが、従魔はまだ抵抗できるらしい。もう一度攻撃を仕掛けてきた。まとわりつく粒子により御神の腕に鋭い痛みが走る。が、御神はそれも構わず剣を横薙ぎにして従魔を倒した。
「これで、終わりだな」
 御神は視界を確認し餅に言う。
「ですね! 早く山小屋に向かいましょう」
 山小屋は目前である。
 足早に二人は山小屋へ向かう。明かりの灯っていないことからして、従魔や愚神に見つかることを恐れていたのだろうことがわかる。
 戸を開けようとすると鍵がかかっていた。
「救援です、開けて下さい!」
 餅の声に少しの間が空いて中から鍵が外れる音がした。
 暗い小屋の中には火もつけずに二人で寄り添っている父子の姿がある。その目は恐怖に染まっていたが、ようやく見た人の姿を見て、安心したのか少し表情が緩んだ。
「来てけだんですか……」
「あの、怖いのは? もういねの?」
 父子はまだあの雪男の存在を恐れていた。
「もう大丈夫だよ! あたし達の仲間が退治しているからね」
 餅の言葉に娘は目を潤ませると大きく頷いた。
 御神は山小屋に電気をつけると、仲間のエージェントに連絡をとった。父子は保護、と。御神はブランケットで二人を包むとランタンをストーブにして二人を暖まらせた。
 餅が父子の体調を見て、チョコレートを渡し食べさせている間に御神はH.O.P.E.ボルシチのパックの紐を引き抜く。十数秒で山小屋はボルシチの温かな香りに包まれていた。
「どうぞ、食べてください」
 御神が差し出したボルシチを二人は、はふはふと音を立てながら食べる。芯から凍っていた身体を温めてくれる美味しい一品である。
 多少の衰弱は見られたものの、食欲もあり、食べていくごとに顔に血色が戻っていく様子に餅は安堵した。これで遭難者はあと一匹だけである。残りの者達が行き会えていればいいのだが。

●回避不能ダメージ
 御神と餅を山小屋へ向かわせるために従魔の足止めをしていた三人は愚神の元へ向かっていた。
 と、歩いているうちに吹雪が少し弱まりを見せる。
「倒したのか? いや、まだだな」
 麻生はモスケールの情報を見て言う。
「弱まらせたのでしょうね。吹雪に対して上側に向かえば多少は戦いやすくなると思ったのですが、必要なさそうです」
「無線にも対象制圧の報告はありませんね」
 Гарсияと九字原が答える。
「早いところ行って加勢するのが最前か」
 麻生は行って、少し早足に愚神のポイントへ向かった。
 三人が愚神のいる場につくと、愚神は何らかの術をかけられているのか、気絶したまま動いていない。
「加勢に来ました!」
 九字原が言うが早いか、雪男にウヴィーツァを振りかぶる。雪男の手を切り裂いた。
「同じ寒さを凌いで活きるもの同士、戦うのではなく寄り添い温め合うべきだったのでしょう…ですが相容れれぬのなら、この世界では生きる事は出来ません。Заморожены, пожалуйста!(さぁ、凍り付きなさい)」
 Гарсияが開いた本から周囲に冷気が漏れる。鋭い冷気を帯びた弾幕が倒れたままの雪男に迫りくる。
 吹雪はかなり弱まり、降雪程度におさまろうとしていた。
「さっさと狩らせてもらうぜ」
『……見えるなら、外さない』
 麻生は遠距離からハウンドドックで雪男を狙い弾丸を放つ。放たれた弾丸は空を切り見事雪男の目に命中した。
 雪男は六人の攻撃によって完全に撃滅された。

●憩い
 六人が合流して雪男を倒したすぐ後、無線によって御神から父子を保護したとの連絡が入った。
 まだ降雪は止んでおらず、麓へ行くには少し距離があるので一旦六人は山小屋へ向かうことにした。
「うーさむさむデス……。は、早く帰って暖かいご飯をお腹いっぱい頬張りたいデス……」
 あいはそう言いながら身を腕で抱く。
『はいはい……でもまだすぐには帰れないから』
 リリーがそんなあいをなだめるように声をかける。
「えぇー! そんなぁー……デェース……」
『……全く、世話が焼けるんだから……』
 リリーはそっとあいを抱きしめた。
『ほら、こうしたら少しはあったかいでしょ?』
「……」
『どうしたのよ』
「い、いやぁ……お気持ちは嬉しいのですが、どっちもヒンヤリしていますから……」
 照れくさそうに笑ったあいにリリーはぱっと離れて言った。
『もぅ、あいちゃんのバカ! 知らない!』
 そんな二人の様子を他のエージェントは微笑ましそうに見る。見ていた一人の雪室がスネグラチカの方を見る。
『あたしは、やらないよ……?』
 スネグラチカの言葉に雪室は「えー」と言う。
「……ん。アルヴィナ……冷たくて気持ちい」
 氷鏡はアルヴィナにくっつきながら歩く。アルヴィナはふふと微笑むと氷鏡の頭をぽんぽんと叩いた。
『雪は快適ね、六花』
 一行の視界に山小屋が見えてきた。煙突からほかほかと煙が上がっており、暖炉で暖まっているのだろうことがうかがえる。
 六人が小屋に近づくと待ち構えていたように餅が出てきた。
「皆さんお疲れ様! まだ雪止んでないですから中へ」
 百薬もひょこりと顔を覗かせていた。その下にある顔は娘のものである。娘はぱぁっと輝いた笑顔を見せて言った。
「みんながエージェントなの?」
「そうだよ! この人達があのでっかい雪男を退治してくれたの」
「すごーい! お話、聞かせて!」
「休みながらな、ほら、寒いから閉めろ」
 御神が言いながら娘の頭をついと小屋の方へ戻した。
 愚神との戦闘の間に親交を深めていたらしい、気安い口調である。
「はぁ、一息つけますね」
 九字原が言って胡座をかく。その横でベルフも胡座をかきながら肘をついた。
『ま、犬の捜索があるがな』
「お疲れさまでした皆様、温かい紅茶をご用意しました。スネグラ―チカ達もお疲れ様。皆様に紅茶を。氷の精達にはアイスをお出しして」
 Гарсияは小屋においてあった紅茶のセットを見つけ早業で紅茶を淹れていた。
『はい、紅茶です。あとこっちはアイス!』
 山小屋の外にあったアイスを見つけてきたЛеттиはアイスも持ってくる。後の補充はH.O.P.E.任せだ。まずは皆で労をねぎらわなければ。
『あたたかいお味噌汁が飲みたい……あと温泉』
 百薬の言葉に餅は失笑する。
「渋い趣味見せてくるね。シロちゃん(犬)も見つけたら下山して温泉いこう」
 あいは荷物からチョコレートを出して皆に分け与えた。
「さ、雪男退治の話ならなんでもござれDeathヨー!」
『そうね、雪が止む間ぐらいならきっと沢山お話できるわ』
 麻生は御神に声をかける。
「ご苦労だったな」
「まだ、犬は見つかっていないが。ご老体が言うにはこの山小屋も目印としているから帰ってくるだろうとのことだ。そちらもご苦労様」
『ん……何かきたよ』
 ユフォアリーヤの言葉と共に、戸が引っかかれる音がした。
『あら、ワンコじゃない?』
 不破が言う。
 ――ワン!
 不破の言葉に答えるように戸の外から犬が鳴く声がする。
 娘がドアを開けると真っ白な犬が娘に飛びついてきた。
「シロー! よかったぁ無事だったんだぁ」
 娘がながす涙をシロが舐めとった。
「よかったぁ、よかったよ父ちゃん!」
 静かに、雪山に降る雪は止んでいく。

結果

シナリオ成功度 成功
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MVP一覧

  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969

重体一覧

参加者

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|18才|男性|攻撃
  • 久遠ヶ原学園の英雄
    不破 雫aa0127hero002
    英雄|13才|女性|シャド
  • Freikugel
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • ユーヤの
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • ステップを踏むのは貴女と
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • 天使のお友達
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 守りもてなすのもメイド
    Гарсия-К-Вампирaa4706
    獣人|19才|女性|回避
  • 抱擁する北風
    Летти-Ветерaa4706hero001
    英雄|6才|女性|カオ
  • 絶対零度の氷雪華
    氷鏡 六花aa4969
    獣人|11才|女性|攻撃
  • シベリアの女神
    アルヴィナ・ヴェラスネーシュカaa4969hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • さいきょーガール
    雪室 チルルaa5177
    人間|12才|女性|攻撃
  • 冬になれ!
    スネグラチカaa5177hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 歪んだ狂気を砕きし刃
    あいaa5422
    獣人|14才|女性|回避
  • 歪んだ狂気を砕きし刃
    リリーaa5422hero001
    英雄|11才|女性|シャド

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