本部

喫茶店でアルバイト! クリスマス編

犬熊

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/12/26 21:53

掲示板

オープニング

 季節は冬、街はすっかりクリスマスムードに包まれている。
「店長、クリスマスシーズンのこと何か考えてますか?」
 喫茶『ノワール』で働くアルバイトの日野 祐介は店主である藤堂 拓磨にそう問いかけた。
 飲食店の多くはこの時期限定メニューを出すことが多いからである。
「ああ、もちろん考えてはいるが……お前クリスマスに予定とかないのか?」
「ないんです。残念ながら」
 そう言いながら苦笑する祐介、彼は一人暮らしの上に浮いた話の一つもないのだ。
 事情を察し拓磨はそっと祐介の肩を叩いた。
「とりあえず新メニューを考えて少し店内を飾り付けたりもしておきたいところだな」
「どうせならサンタの格好とかしてみたらどうです? きっと評判になりますよ!」
「ははは、まあサンタ帽くらいならやっても良いかもな。ひとまず必要な物は早めに用意しないと」
「そうなると結構忙しくなりそうですね」
 イルミネーションにクリスマスツリーの飾り付け、新メニューを考えポップ等も作らないといけない。
「また臨時バイトを募集してみるか」
「今年は忙しいクリスマスになりそうですね」
 翌日早速店の入り口にバイト募集の張り紙が貼られた。

解説

●目的
クリスマス向けの新メニュー考案、店内の飾り付け等の準備、当日は接客等。

●補足
このシナリオではクリスマス前日の準備とクリスマス当日が描写されます。
またアルバイトとしてだけではなく客側として参加することも可能です。
その際にはプレイングで客側であることが分かるようにして下さい。

店内の飾り付けに必要な物は店側で揃えています。
手作りしたい、持参したい等も可能です。
新メニューに関しても入手困難、または高すぎる材料でなければ店側で用意してくれます。

●人物
藤堂 拓磨
喫茶『ノワール』の店主で年齢は30過ぎの一般人。
得意料理はカレー。
クリスマス当日はサンタ帽を被ろうか迷っている。

日野 祐介
20代、学生のアルバイト。
好きな物は甘いもの。

リプレイ

●クリスマス風に飾り付け
 今日はお店の定休日、クリスマスに備え今日のうちに店内を飾り付けておきたいところだ。
「先生! 喫茶店ッスよ喫茶店!」
「喫茶店、これすなわちナウでヤングな社交場。つるぎ君の社会経験を深めるためにも良いものであるな!」
「自分、一度こんなお店でアルバイトをしてみたいなと思ってたんス!」
 喫茶店の雰囲気にテンションMAXなのは大平 つるぎ(aa0751)と英雄のフランシス(aa0751hero001)だ。
「凄いな本物の甲冑とは」
「あ、店長さん! 自分はよく動いてよく喋ってよく食べる、大平つるぎです! よろしくおねがいします!」
「ああ、こちらこそよろしく」
「……時に店主殿、店内では甲冑の着用は可であるかな? いや、せめて兜だけでも……」
「はは、さすがに厨房は入れないだろうが接客なら問題ないだろう。入り口で客を案内してくれ」
「仰せのままに!」
 つるぎとフランシスに指示を出す藤堂の前に元気よく駆け寄って来たのはアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)だ。
 もちろん英雄の八十島 文菜(aa0121hero002)も一緒だ。
「店長さん今回もよろしく!」
「いつも世話になるな嬢ちゃん」
「あれ、祐介さんは?」
「ああ、飾り付けに使う道具とかの買い出しに行ってるよ」
「そっか、じゃあボクはその間に新メニューの試作に取り掛かるよ!」
「今回も楽しみにしてるぞ」
「任せてよ!」
 そう言ってアンジェリカと文菜は早速厨房へと向かうのだった。

「喫茶店? ここでなにするの?」
「働く。バイトよ」
 オリガ・スカウロンスカヤ(aa4368)は英雄のシェリー・カートライト(aa4368hero002)に連れられて店に来ていた。
「そう? たまにはいいんじゃないかしら。喫茶店だし」
「あなたも」
「……え?」
「オリガもよ」
「……ええっ!?」
 そんなこと聞いてないとオリガが言う前にシェリーは何やら衣装を取り出した。
 サンタカラーの赤いエプロンドレス、コスプレ用の安い作りではなく生地もしっかりとした物を使っている。
「ほう、随分と気合入ってるじゃないか」
 様子を見に来た藤堂もサンタの衣装に関心があるようだ。
「これを着て接客してもいいかしら」
「もちろんだ。華やかになって良い」
「と、いうわけだからオリガ」
「スカート短いのじゃなくて良かった……けど」
「アレは邪道よ」
「更衣室は奥の空いてる部屋を使ってくれ」
「じゃあ早速試着よ」
「え、えぇ……」
 シェリーに連れられてオリガは店の奥へ試着に向かった。
 
 丁度その頃、祐介が買い物を終えて戻ってきた。
 隣にはレイ(aa0632)と英雄のカール シェーンハイド(aa0632hero001)もいる。
「お、ちゃんと買って来たのか?」
「ええ、レイさん達に色々アドバイスしてもらって買って来ました」
 スノースプレーやキャンドル、赤いランチョンマット、それにツリーの飾り等も揃っている。
「サンタ帽も買ってきましたよ」
「まさか本当に買ってくるとはな」
「当日はオレも被るから店長も被ろうぜ!」
 包みを開封して早速サンタ帽を被るカール。
「まあクリスマスだしたまには良いか」
「やったぜ」
「やりましたね」
 ぐっと手を合わせる祐介とカール、その後カールは満足したのか料理の試作を作りに厨房へと入った。
「おはよう、ございます。二日間、よろしく、お願いします」
「ああこちらこそよろしくな」
「よろしくお願いしますね薙君」
 藤堂と祐介の二人に挨拶する魂置 薙(aa1688)、緊張しているのか動きがぎこちない。
「薙は初アルバイト? 楽しく一緒に頑張ろうね」
 優しく薙の肩を叩くのは皆月 若葉(aa0778)。
「ご指導、よろしく、お願いします!」
「一緒にがんばろー!」
 若葉の英雄のピピ・ストレッロ(aa0778hero002)も一緒だ。

 レイは早速店内の飾り付けを進めていく。
 大きめの窓をキャンバスに、クリスマスらしく雪の結晶やクリスマスツリー等の型紙を窓に貼り付けそこにスノースプレーを吹きかけていく。
 まるで雪景色のような出来栄えにレイも心なしか満足そうだ。
「よく出来てるんだな。まるでほんとの雪みたいだ」
「他の窓もやるつもりだ……当日は前のように外で客引きをしてこよう」
「そうか。前のあれは評判だったからな。またよろしく頼む。宣伝に行く場所教えてくれれば店の地図も描いておこう」
 藤堂もレイの手際の良さに感心しているようだった。
 クリスマスツリーを飾り付けるのは若葉とピピ、それに薙、豊浜 捺美(aa1098)とその英雄の汞(aa1098hero002)だ。
 ツリーを置く場所は事前に捺美が藤堂に確認していた。
「ツリーはどこに置きますかなの」
「そうだな……いっそ店の中央を空けてそこに置くか」
 ツリーの高さは捺美の身長よりもずっと高く、高い位置の装飾には脚立を使う必要があった。
「危なかったら、僕の頭掴んでいいから、ね。気を付けて」
「しっかり押さえててね……っと、こんなもん?」
 若葉は脚立の脚を薙に押さえてもらいながらツリーの飾り付けをしていた。
「ちょっと曲がってるんだよ!」
 離れた位置からバランスを確認するのはピピの仕事だ。
「じゃあ次は、これ」
 一つ飾り終わると次の飾りを若葉に手渡していく薙。
 低い位置を飾るのは捺美と汞の担当だ。
「飾り付け頑張ろうなの」
「おー」
 雪綿やカラフルなオーナメントボール、リボンに小さな人形、それらをどの角度から見ても良いようにバランスよく取り付けていく。
 LEDのイルミネーションをいくつもツリーに巻きつけ最後は若葉がツリーの天辺に星を飾る。
「これで完成だね」
「点灯したらきっと綺麗なの」
 だが店内の飾り付けはこれで終わりではない。
 若葉とピピ、薙の三人はメニュー表にも工夫をこらしツリーやサンタの絵を描いてクリスマス仕様にした。
 さらに店外設置用に黒板とマーカーで手書きポップを作成、クリスマス限定メニューもしっかりアピールだ。
「薙はこういうの描くの初めて?」
「うん。なかなか、難しい」
「ナギも良く描けてるよー」
 ポップが出来たら今度は小物を店のあちらこちらに置いていく。
 サンタやトナカイの小さな人形でレジ周りを可愛くレイアウト。
 窓際のスノースプレーアートの下にスノーマンと子供の人形を置けば立体的な雪景色の完成だ。

 店の入り口に飾るクリスマスリースはつるぎが用意していた。
 リースの土台に造花やオーナメントを接着しリボンを取り付けて完成だ。
「リースとツリーはクリスマスには欠かせないッスね」
 完成したリースをつるぎは店の入り口に飾り付けた。
「当日は私も甲冑をクリスマス仕様にして臨むとしよう!」
「衣装、赤と白でフリフリなエプロンだけでも用意してみたらいかがでしょうか!?」
「そう言うと思ってました」
 祐介が取り出したのはクリスマス仕様のエプロンだった。
 女性用にはちゃんとフリルも付いている。
「店長に内緒で用意してました」
「お前いつの間に……」
「これッス! まさしくイメージ通りッス!」
 クリスマスの準備は着実に進んでいた。

●クリスマスの新メニュー
 店の前に来たヴィーヴィル(aa4895)と英雄のカルディア(aa4895hero001)、二人は以前客とバイトとして『ノワール』に来ていた。
「前に来たが、なかなか良いカンジになってるな。ただ……クリスマスってやつもあんまり好きじゃねぇな」
「YES.マスター……ところでクリスマスとはなんでしょう」
「……何だろうねぇ。ま、当日や何かが来たら分かると思うゼ」
 当日は二人はサクラとして来店すると言う。
「俺としてはまたお前さんの接客してる姿が見てみたかったけどな」
「ま、俺もカルディアも接客には向いてねーし、料理も大して出来ねぇからな」
「そういうことですので……」
「まあ縁があればまた頼むよ」
「……はい」
 当日は客として来る二人だが新メニューの試作は手伝うことになった。
 店内の様子を見つつ思案するヴィーヴィル。
「ケーキ……じゃ有り触れてるカンジだしねぇ……」
「……マスターにケーキは似合いません」
「似合う似合わないはこの際関係ねぇ。それにケーキくらい、食べるゼ?」
「……人は見かけによらないと言うやつでしょうか」
「ま、そんなトコだ。実際ケーキと言って目の色が変わる訳でもねぇし」
「マスター、私はケーキに興味があります」
「じゃあ、リクエストはケーキ関連か?」
「YES.マスター」
「ケーキと言ってもクリスマスっぽいモノ……ブッシュドノエルとかは無難過ぎる……か」
 どうせなら凝った物を作りたいヴィーヴィル、ショートケーキも普通過ぎるという理由で却下した。
「クロカンブッシュをクリスマス風に……とかか? 一人用にミニ版にしても面白いかもしれねぇな」
 テーマは大人も楽しめる物、ミニシュークリームとクリームを重ねて土台を作りその上から粉砂糖と抹茶パウダーをまぶしてツリーに見立てた。
「後は冷凍のベリーとかで飾ってと……」
 出来たのはクリスマスツリー風のミニクロカンブッシュだ。
「まあこんなとこかね?」
「良いと思います」
 カルディアのお墨付きももらい無事新メニューが完成したのだった。

「三度目ともなると勝手知ったる厨房かな? だね♪」
「そうどすなぁ」
 アンジェリカにとっては使い慣れた厨房、物の配置も手に取るように分かるようだ。
 文菜はまず鱒の切り身を取り出し塩胡椒で下味を付け、小麦粉をまぶしたらバターを溶かしたフライパンで焼きムニエルに。
 同時進行で甘露煮にした栗を半分に切った物と、パセリと共に微塵切りにした物に分け、微塵切りの方に醤油、牛乳、蜂蜜、マヨネーズを混ぜソースを作った。
 ムニエルが焼けたら半分にした栗を添えソースをかけて完成だ。
「鱒ムニエルの栗ソースかけどす♪」
 ドーン! と藤堂と祐介の前に完成した料理を置く文菜。
「ネットで鮭のムニエルでやってるのを見て、鱒でもいけるかなと思ったみたい。栗と鱒でま、ダジャレだね」
 早速試食する藤堂と祐介。
「意外な組み合わせと思ったが案外合うもんだな」
「栗のソースなんて初めて食べましたよ」
「さ、次はボクの番だよ♪」
 アンジェリカが作るのはイタリアの伝統的なクリスマスのデザート、パネットーネだ。
 材料の粉やバター、卵に砂糖、それにドライフルーツ等材料を混ぜたら一次発酵、二次発酵を経て型に入れて焼き上げる。
 本来であればパネットーネ用の酵母があるらしいのだが今回はドライイーストで代用だ。
「なかなか美味しそうな菓子パンでしょ? 少しトースターで焼いて生クリームやバニラアイスを添えるのもいいよ」
 言われた通り生クリームとバニラアイスを添えて一口食べてみる藤堂。
「焼いたおかげでバニラが少し溶けていい感じに絡むな。中に入ってるドライフルーツも良い感じのアクセントになっている」
「レーズンとかあとなんでしょうオレンジっぽい風味もありますね。美味しいですよこれ」
 藤堂と祐介の反応に大満足なアンジェリカと文菜だった。

 カールが作る新メニューはピラフだ。
 ただし普通のピラフではなくクリスマスリースをイメージしたリースピラフだ。
 まずは人参、ブロッコリーの芯、ベーコンやスライスチーズを星型にくり抜いてゆく。
 余った部分は刻んでピラフの具に使う為無駄はない。
 また彩りを考えピラフにはミックスベジタブルも入れた。
 出来たピラフをリース型に丸く盛り付けその上に先程星型にくり抜いて火を通しておいた具材を飾り付ければ完成だ。
「まず一品目が出来たぜ。クリスマスだし見た目にも拘らなくちゃな」
「本当にクリスマスリースみたいですね。これは女性や子供に人気出ますよ」
 次にカールが作るのはクリスマスツリーをイメージしたデザートだ。
 まずは抹茶粉末とメレンゲを混ぜた物、それにドーナツの生地を用意しそれを小さく絞り出しツリー状にしていく。
 メレンゲの方は焼いて上からアラザンを振りかけ、ドーナツの方は揚げてチョコソースをかけたらその上からお菓子作りによく使うカラースプレーを振りかけた。
 イチゴはスライスし生クリームと一緒にツリー状になるよう交互に重ねていく。
 後は黄色いチョコペンで小さな星を描き冷蔵庫で冷やし固めたら、三つのツリーの天辺に同じチョコで接着して乗せれば三つの可愛いツリーの完成だ。
 カールはさらに盛り付ける皿の上にココアパウダーを星型で抜いた模様を描いた。
「デザートのスイートミニツリーも完成だ。オレの自信作だぜ!」
「食べるのがもったいなくなりそうだな。見た目がとても華やかだ」
「なんだか美味しそうな匂いがするッス!」
 とやって来たのは食べるのが大好きなつるぎ、どうやら試食が目当てらしい。
「早速頂くッス!」
 抹茶味のツリーをパクリと一口、そして次はチョコドーナツツリーも、最後にイチゴとクリームのツリーをパクリ。
「それで味はどうだ?」
「最高ッス! 三つのツリーそれぞれ違う味で大きさ的にも食べやすくて良いと思うッス!」
「女子のお墨付きが出たな。両方とも新メニューに加えてみよう」
 満足そうなつるぎはその後この溢れる気持ちをポップに込めるッス! と勢いよく作業に取り掛かるのだった。

 オリガとシェリーのコンビも新メニューを考えていた
「コーヒーを新しく作りましょう」
「紅茶は?」
「は?」
「……」
 紅茶党のオリガの意見はあっさり却下された。
 必要な材料を揃えたシェリーは早速作業を開始した。
「チョコレートシロップをカップに少し注いで、そこに深煎りのコーヒーと温めた牛乳を注ぐ」
「カフェオレが少しビターになった感じかしら?」
「その上にホイップクリームをたっぷりと」
「ウィンナーコーヒーとか、アインシュペナーみたいね」
「さらに、上に半分に切ったイチゴを乗せる」
「酸味も加えるのね」
「カフェオレとクリームだけだと甘すぎる。他に何か乗せてもいいけど」
「じゃあ、ミントの葉ときざんだオレンジとかどうかしら?」
「採用」
「なんだか、クリスマスケーキみたいね」
「それがいい」
 次にシェリーが用意したのはアイスコーヒー、途中までは先程と同じだが牛乳の代わりにシェリーが入れたのはオレンジジュースだ。
「アイスなら、牛乳の代わりにオレンジジュースで作ってもおいしい。こうすると、酸味が強くなるからフレッシュな感じになるわね。好みでシロップでも入れればいい」
「ジュースでコーヒーっていうのも、珍しいわね」
 と、そこにやってきた藤堂、試作品を試飲してみたところ味はなかなかの美味なのだが一つ気になったことがあった。
「メニューに書く商品名はどうするんだ?」
「考えてなかったわね」
「ふむ、ならシンプルにクリスマス特製コーヒーにするか」
 名前を決めた流れでそのまま新メニューとして採用することになった。

 薙が作るのはプレゼントボックスを模した小さ目の四角いケーキ、ベリー、抹茶、チョコの異なる味と見た目の三種類だ。
 溶いた砂糖で表面をコーティングするグラスアローという手法を用い周りはサクッとした食感に。
 盛り付けの皿にもジャムソースを引いて見た目も華やかに仕上げた。
「美味しそうなケーキッスね!」
「エルルがよく、いくつも頼んでシェア、したがる。一つを小さくすれば、複数頼みやすいかなって」
 味見をしたつるぎはグッとサムズアップ。
「食事とセットで頼みやすいし、これで客単価を、あげたい」
「きっと上手くいくッス!」
 果たして薙の作戦は上手くいくのか、そしていよいよクリスマス当日を迎えるのだった。

●スイートクリスマス
 開店直前、レイはテーブルに白いテーブルクロスをかけ、その上から赤いランチョンマットを敷き緑のキャンドルを飾りクリスマスにちなんだカラーで飾った。
 店内のBGMはジャズアレンジのクリスマスソングを、これは店の雰囲気に合わせてレイが予め用意しておいた物だ。
「……行ってくる」
「ああ、よろしく頼むよ」
 見送る藤堂を背にレイは寒くないよう上着を羽織ると、ギターを持って人通りの多い場所で客引きをしに向かった。
 街はすっかりクリスマスムードだ。
 街路樹はイルミネーションで飾られ、あたりにはサンタ服姿で客引きを行う者もいる。
 レイは自分の横に店への地図と皆が作ったポップを置くと定番のクリスマスソングのアレンジを弾き始めた。
 一人、また一人とレイの前で足を止める通行人達に対しレイは一曲弾き終わる度に店の地図とポップを見せ案内を行うのだった。
「クリスマス限定メニューをやっている。良ければ行ってみてくれ」
 レイに案内されたカップルや家族連れ、学生から老人まで様々な人達が『ノワール』へと向かっていた。

「メリークリスマス!」
 フランシスは鎧を赤白緑に飾り付け、目出度さも通常時の三倍増仕様だ。
「いらっしゃいませ! こちらの席へどうぞ!」
 入り口で不思議な鎧に案内された客達が次々に席に着いていく。
「さすが先生! 自分も頑張るッス!」
 祐介の用意した赤と白のエプロンを着用したつるぎは案内された客達に新メニューをオススメだ。
「こっちのリースピラフは見た目も可愛くてオススメッス! こっちの鱒ムニエルの栗ソースかけはバターの風味の特製の栗ソースがとってもマッチしてるッス!」
「へぇ……じゃあその二つを下さい」
「かしこまりましたッス!」
 一通り新メニューを試食していたつるぎは自分の感じたことを全力で客にぶつけていく。
 その熱意が伝わったのか次々に新メニューのオーダーが入ってきた。

 その頃厨房はまさに戦場となっていた。
 赤いサンタ帽を被ったカール、藤堂と祐介が次々に入るオーダーを捌いていた。
「これぞまさに書き入れ時ってやつじゃん?」
「ああ、ホールの頑張りに応えないとな」
 完成した料理を客席へと運ぶ捺美、彼女もまた頭にサンタ帽を被っている。
「お待たせ致しましたなの。ご注文のリースピラフと鱒ムニエルの栗ソースがけですなの」
「おお! これは美味そうだ」
 新メニューはなかなか好評なようでデザートやドリンクの注文も後を絶たない。
「このクリスマス特製コーヒーとスイートミニツリーを下さい」
「かしこまりましたなの」
 カールがスイートミニツリーを調理している間に祐介が特製コーヒーを淹れる。
 出来上がった料理を運ぶのは華やかな衣装に身を包んだオリガだ。
「あ、あの、ご注文の品、お持ちしました……」
「すごーい! ねえ見てみてこの店員さんの衣装すっごく可愛い」
「ほんとだ! あの、写真撮っても良いですか?」
「え、えっと、そのー……」
 すっかり客の勢いに負けてしまっているオリガ、後ろから助け舟を出したのはシェリーだった。
「勤務中なので撮影はご遠慮を」
「あ、すいません……」
「ほら、行くわよオリガ」
「ありがとシェリー」
 そんなちょっとしたハプニングもありつつもなんとか客を捌いていった。

 客足が途切れなそうなのを見てレイは一度客引きを中断し店に戻ることにした。
 たくさんの客で賑わう店内では。
「ようこそおこしやす」
 と笑顔を振りまく文菜、アンジェリカもパネットーネの宣伝に余念がない。
「これボクが考えたんだよ。是非食べてみてね♪」
「じゃあそのパネットーネを一つ下さい」
 可愛い女子達に接客されれば注文しない男はいない。
 一方薙は事前に何度も練習したものの緊張で接客の動きがぎこちない。
「ええっと、三番のテーブルってどこだっけ……!」
「薙!」
「何、若ぶ……!?」
 薙の振り向きざまに若葉の指が薙の頬に当たる。
「皆いるから大丈夫、楽しくいこう!」
 その言葉に励まされ少し落ち着いたようで薙の表情に笑顔が戻ってきた。
「……よし!」
 気合を入れ直し接客に戻る薙、徐々に仕事を楽しむ余裕も出てきたようだ。
 そんな時、薙の英雄のエル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)が来店した。
「愛想よく接客する姿が想像できぬ……そこだけが気がかりじゃが」
 エルの姿に気づいた薙、身内に見られて少し気まずいようだ。
「いらっしゃい、ませ……」
「エルだ! いらっしゃいませっ!」
 と駆け寄るピピの姿に思わず微笑むエル。
「可愛い店員さんがおるの」
「エルご注文は? ちなみにこのケーキ、ナギが考えたんだよ! 若葉はラテアートとかもしてくれるんだ!」
「では薙と若葉のメニューを全て頼む」
 厨房に入った若葉はラテアートの経験を活かし器用にカップの中にツリーの絵を描いた。
 ケーキの盛り付けは薙が担当、そして完成した物をピピと二人でエルの元へ運ぶ。
「お待たせ致しました」
「これが薙が作ったケーキだよ!」
「美味そうだの。そしてこれがラテアート、若葉は流石だの」
 三種のケーキを一つずつ口に運ぶエル。
「うむ、どれも美味しい。薙、働く様子を撮っても良いか?」
「撮影はご遠慮、下さい」
 お盆で顔を隠しているが薙はどこか嬉しそうだ。
 若葉もエルに挨拶しに厨房から出てきた。
「薙もすごく頑張ってますよ、ゆっくりしていってくださいね」
 その後仕事に戻る三人をエルは満足そうに見送るのだった。

「お釣り三百円のお返しです」
 レジを担当する汞、今日はずっと休む暇もない。
「お疲れ様なの。そろそろ休憩するなの」
「そうですね。さすがに少し疲れました」
 少し客足が落ち着き始めた頃ヴィーヴィルとカルディアが来店した。
 戻ったレイがホールを手伝っていた為彼らの接客も担当した。
「いらっしゃいませ」
「カルディアはケーキに興味があるんだったな」
「YES.マスター」
「じゃあクロカンブッシュとスイートミニツリー、あとコーヒーを頼む」
「かしこまりました」
 調理を終えたカールがふとホールの方を見ると夏に一緒に働いていたカルディアの姿が目にとまった。
「カルディアちゃん今日はお客なんだね」
「はい。ケーキに興味がありましたので」
「そういえば夏に一緒に働いてたな」
 と、そこにレイがオーダーを運んできた。
「お待たせしました」
「このツリーはオレが考えたんだぜ」
「ほう……」
 ミニツリーの出来栄えにヴィーヴィルも感心しているようだった。
「どれも美味しそうです。頂きます」
 淡々とケーキを食べるカルディア、表情に変化はないが食べる手が止まらないので気に入ってはいるようだ。
「カルディアちゃんさー、オレの妹になんない?」
 その様子を見て微笑みかけるカール。
「妹、ですか。私にはマスターがいますので……」
 あっさり受け流すカルディア、今の彼女の関心は完全にケーキに向いていた。
「あらら残念」
「何言ってんだか」
 ケーキを食べるカルディアの様子を見てヴィーヴィルも追加でリースピラフを注文するのだった。

●一日の終わり
 慌ただしかった一日が終わり閉店時間を迎えた。
「疲れた……でも、楽しかった」
「ほんと今日は楽しかったね」
「皆お疲れ様でした!」
 仕事が終わり薙は心地よい疲労感を味わっていた。
 若葉とピピは最後まで元気いっぱいだ。
「今日は頑張ったなの」
「さすがにうちも疲れました」
 捺美と汞に藤堂はコーヒーを差し入れた。
「皆のおかげでなんとかなったよ。ありがとう」
「いやいやおかげでつるぎ君、良い経験をさせることが出来た!」
「初めてだったけど楽しかったッス!」
「クリスマス仕様の鎧の騎士はお客さんもびっくりしたでしょうね。オリガさんとシェリーさんの衣装もとっても綺麗でしたよ」
「あ、ありがとうございます」
「まあ当然ね」
 祐介が褒めるのも当然、二人の衣装はお客さんにも評判だった。
 レイは店内に飾られているギターを手に取り藤堂に声をかけた。
「そういえばギター……、アレからどうした? 弾いてみた、か?」
「ああギターな。最近は少しづつ練習するようにしてるよ」
「そうか。いつか、聴かせてくれ」
「まあ……そのうちな」
 こうして喫茶『ノワール』のクリスマスは無事幕を閉じた。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • Sound Holic
    レイaa0632
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688

重体一覧

参加者

  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • ぼくの猟犬へ
    八十島 文菜aa0121hero002
    英雄|29才|女性|ジャ
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • エージェント
    大平 つるぎaa0751
    人間|16才|女性|攻撃
  • エージェント
    フランシスaa0751hero001
    英雄|30才|男性|ドレ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 大切がいっぱい
    ピピ・ストレッロaa0778hero002
    英雄|10才|?|バト
  • つむじ風
    豊浜 捺美aa1098
    人間|16才|女性|回避
  • エージェント
    aa1098hero002
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
    機械|18才|男性|生命
  • 温もりはそばに
    エル・ル・アヴィシニアaa1688hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • ダーリンガール
    オリガ・スカウロンスカヤaa4368
    獣人|32才|女性|攻撃
  • 喫茶『ノワール』臨時店員
    シェリー・カートライトaa4368hero002
    英雄|20才|女性|ジャ
  • 捻れた救いを拒む者
    ヴィーヴィルaa4895
    機械|22才|男性|命中
  • ただ想いのみがそこにある
    カルディアaa4895hero001
    英雄|14才|女性|カオ
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