本部

珍従魔ハンター『秘湯だ!ワニだ!?』

紅玉

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2018/01/18 21:18

掲示板

オープニング

●秘湯に潜む影
 新潟県の山に温泉好きが訪れるという、秘湯があり白く雪化粧された山々を見ながら入れるという絶景だそうだ。
 近くの動物園からワニが逃げ出した、というニュースが流れていてもなお“好きな者”は『立ち入り禁止』と書かれたプレートを見ぬフリをして、秘湯へと続く獣道に足を踏み入れた。
 廃材を集めて秘湯仲間と作った“立派な”とは言い難い脱衣室、一応男女と分けており風呂の仕切りを建ててはいるが温泉の中までは仕切られてはいない。
 理由としては、源泉が1ヶ所しかなくそれを2つに分ける作業をしても菅の管理は地主側が出来ない、と言われてしまった。
「動物園のワニなんだろ? 暖かい場所の生き物が、こんな寒い場所に来るわけないさ」
 と、男は一緒に来た恋人に言いながら露天へのドアを開けた。
「それもそうよねぇ~……って……目の前に、居るのは何?」
 同時にドアを開けた恋人は、温泉の水面から覗く爬虫類特有の目を見て固まる。
「逃げろっ!」
 男は声を上げるも、無数のワニ達が温泉から出て獲物に向かって駆け出した。
 プリセンサーは、ワニ達の中から微かにだが従魔のライヴスを関知した。
 その中でも、一番大きなワニからは憑依されたより“従魔そのもの”だと分かった。

●不穏な影
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。新潟県のとある山にある秘湯にて、従魔がカップルを襲うという内容をプリセンサーが関知しました」
 ティリア・マーティスがアナタ達に依頼の説明をする。
『同日に、ワニ型の従魔により動物園からワニに従魔が憑依して逃げ出し、爬虫類の本能として暖かい場所を求めた結果として温泉に逃げ込んだと思われます。被害が出る前に皆に討伐をお願いします。もちろん、報酬として秘湯に入っても良いそうです』
 トリス・ファタ・モルガナは、プリセンサーが関知した内容をアナタ達の端末に送りながら説明をする。
『ワニ! これは、食べる、しかない。珍従魔、はんたー、出動』
 と、意気揚々と声を上げながら、弩 静華は荷物を幻想蝶に入れる。

解説

【目標】
ワニの従魔を倒せ!
温泉を楽しもう!
ワニを食べよう!

【場所】
新潟県のとある山にある秘湯(昼)
とても景色が良い露天風呂となっております。
(水着着用して入っても可)

【敵】
従魔『アリゲーター』1体
デグリオ級。
全長5mもある大きなワニ
何故か、タオルとか面積の多い布を見ると剥ぐクセがある。
倒されたら消えちゃう!

従魔『クロコダイル』6体
ミーレス級。
全長2m程の小さめなワニ
何故か、タオルとか面積の多い布を見ると剥ぐクセがある。
倒しても消えない!
食べると鶏肉に近いらしい。

【NPC】
指示や、絡みの希望があれば一緒に来てくれます。
調理関連は全て静華さんがいつの間にか用意してくれます。

リプレイ

●いざ秘湯へ!
『天然ラドン温泉だ! RAD値が上がるな!』
 と、吠えるバルトロメイ(aa1695hero001)。
 説明しよう! RADとは放射能の事であり、ラドン温泉は放射能温泉た!
 某廃退世界ゲームでは、RAD値があり値が上がると体力が減ったりするのだ!
 注意、今回の温泉とRAD値は一切関係ありません。
 他にも色んな略称名としても使われていのである。
「ここ五頭でしたっけ? よくわかんないけど温泉だー!」
 セレティア(aa1695)は疑問を口にするが、とりあえずバルトロメイのテンションに合わせて両手を上げた。
『ティリアさん、荷物をお持ちします』
 珍しくマトモな事をする男・バルトロメイの懐から『モテテク!』と書かれた本の表紙が、ちらりと見えたがティリア・マーティスは見なかった事にした。
「ふふ、ありがとうございますわ。バルトロメイ様」
『当然の事です』
 女性苦手な男・バルトロメイ、憧れの女神に対しては女性ではなく女神として見ているからだろうか? それともセレティアのお陰で克服したのだろうか?
 喜んで女性達の荷物を、鍛えられた腕で肩にドンと担ぐ。
「温泉とワニったぁ……中々珍しい組み合わせだな」
 鍛えられた身体、日焼けした肌が素晴らしい浅葱 吏子(aa2431)は、温泉に入っているワニを想像する。
『そうかのぅ? あたしに言わせてもらえばなかなか乙ないい肴の組み合わせだと思うがな』
 と、吏子とは正反対に白い肌に豊満な体が着物の隙間から見える酒呑力鬼 雷羅(aa2431hero001)は、頭の中は酒の事ばかりだ。
「おめーは飲んだっくれだから何でもいい口だろ」
 吏子は吠える。
『そう言って……お前だって呑みたいじゃろ?』
 酒を飲む仕草をしながら雷羅は口元を吊り上げた。
「……にっ、そーだな!」
 少しの間を開けると、吏子は屈託の無い笑みを浮かべながら拳を握る。

「温泉か……良いな……ここのところ寒いし」
 ワニ退治の事よりも温泉に惹かれた海神 藍(aa2518)はうんうんと頷く。
『ワニ肉も美味しいものらしいです。行ってみましょう!』
 鶏肉に近いワニ肉に期待する禮(aa2518hero001)が明るい声で言った。
「ワニといったらバナナだな!」
 ひと房のバナナを手に藍那 明斗(aa4534)は言った。
『本当に?』
 ぱっと見れば美少女のクロセル(aa4534hero001)が、母親の様に明斗を睨む。
「うん! 多分、きっと、可能、一応! バナナだからな!」
 その自信は何処から来るのだろうか? と、首を傾げたくなる言葉を自信もって明斗は声を上げた。
「雪化粧の自然を肴に温泉三昧というのは風情があって良いのだが、やはり邪魔者は居るものか……年末だろうとタダで楽をさせないつもりかね奴らは」
 鴬華・エリスヴェータ(aa4920)が呆れた声色で言う。
『まあまあ。早急に片付ければ済む話ですし、雪景色に加えて珍味も楽しめますから』
 と、笑顔で言うのはアイオール・ハーシェヴェルト(aa4920hero001)だ。
 世界でも一握りしか持ってないだろう、びっくなウォーターメロンが4玉が二人の胸元で揺れる。
 退治されるワニが羨ましい!

『さ、寒い……!』
 冬の新潟に足を踏み入れた嬢(aa5148hero001)は、体をガタガタと震わせながら手で両腕を擦る。
「この程度で寒いって言うな」
 己の出身地である鐘田 将太郎(aa5148)は、着物の裾を翻し故郷の空気を肺に満たす。
「ねぇ! ねぇ! 雪が壁の様になってます!」
 自分の背より高い雪の壁をセレティアは指す。
「ヨーロッパではな殆どありませんが、日本ですとセレティア様が埋る位に積もるそうですわ」
『はっ……!』
 秘湯への道が雪で埋もれてる、俺が体を張って道を作れば男度が上がる! てな、内容のチャートがバルトロメイの脳内で作成された。
 安直である、男・バルトロメイの思考を察してはないが吏子も同じ様な考えをしていた。
 秘湯への道は、人が一人通れる程なのだが……体格の良い男女には狭く感じた。
『俺が、道を広げよう』
 放牧されたホルスタインの様に、バルトロメイは雪を掻き分けながら進む。
「そーゆー事ならまかせろい!」
 吏子も負けじと道を広げる。
『兄貴も』
 すれば良いのに、と言葉を続けようと嬢が振り向くと。
「メガネ、メガネ」
 ワザとメガネを頭の方にずらし、将太郎は目を3の様にしながら地面に手を滑らせながらメガネを探す。
 呆れて言葉にも出来ない嬢は、大きくため息が吐くと仲間の後を追いかけた。
 計画どおり、頭の良い黒い本を手にした高校生の様に笑みを浮かべると、将太郎はメガネをつけ直すが……自分の息で曇る視界の中で頼れるのは己だけ。
「遭難されても困るからねぇ」
 小さなソリに乗せられて運ばれる男・将太郎。
 仕方がなしに引く圓 冥人。

●秘湯とワニ
『いい景色ですよ、兄さん!』
 禮が大きな瞳を輝かせながら露天風呂を見回す。
「うん、これは温泉の方も楽しみだね」
 そんな禮を見て藍は思わず笑みを浮かべる。
 これから始まる戦いに、一抹の不安を感じる。
「ゴボゴボ……(さ、流石にこの巨体を風呂ん中に隠せれるのか?)」
 共鳴した吏子は、その鬼のような身体を仕切りの下にねじ込む。
『背中だけ出しておけばいい感じの岩に見える。大丈夫大丈夫』
 雷羅はつまらなさそうに言った。
「しっかしなぁ……気にするな、と言われてもアレはな」
 脇にバナナを一房抱えてる明斗は、湯船から見える吏子の背に視線を向けた。
『本人気にしない、と言ってましたし。それに、コチラも全裸ではないので』
 セパレート水着の上からタオルで体を巻いたクロセルは、気にした様子を見せずに言った。
『これで大丈夫? あたし不安だよ……』
 と、少し不安そうに嬢は言う。
 一応水着を着用をしているとはいえ、タオルと一緒に剥ぎ取られそうで不安になる。
「おまえ、ターゲットになりやすいんじゃね?」
 将太郎は冗談っぽく言った。
「ワニにしては良い目を持ってる」
 エリスヴェータが声を上げた。
 黒のパレオがぼろぼろになってしまい、彼女の視線の先にはパレオの切れ端を口にしているワニ。
「行け、嬢!」
『あたしだけ剥がされはしない! 兄貴も剥がされろ!』
 嬢が将太郎を引っ張ると、二人の間にワニの尻尾がびったーん! と降り下ろされた。
『ぶわーっはっはっはぁ!残念だったなエロワニども』
 共鳴姿のバルトロメイは仁王立ちしたまま声を上げた。
 肌色!
 肌色だ!
 しかし、ワニは悔しそうにタオルを吐き捨てた。
 そう、全裸ではなくて“肌色”のスイムスーツだからだ!
『……! 服やタオルを……!? なんで!?』
 わらわらと現れたワニ達がタオルを剥ぐ光景を見た禮は、驚きと戸惑いで混乱している。
「あ゛? ……手前ら。禮の裸を見たいってのか?」
『……え? 兄さん?』
 鬼の様な形相の藍を見て、禮はぱちくりと瞬きをした。
 共鳴姿、つまり禮の成長した姿である。
 兄として、妹を守る側としては許せない行為だ。
「ああ、ごめんごめん。さて、変態どもめ……その目、刳り貫いてあげようか」
(……こわい)
 兄の黒い一面を見た禮は体を震わせた。

「キャーッ」
 明斗が野太い悲鳴が上げた。
 左手は手拭い、右手には未だに持っているバナナ!
『ぼ、僕は男だよ!?』
 そんな明斗には興味を示さずに、ワニ達は布面積が多いクロセルの方へとにじりよる。
 やましい気持ちはない!
 彼らは、リーダーの命令で布面積が多い方を狙っているのだ!
「こっちは、何かこじらせてるし……あっちは修羅場だし。個性があるのかなぁ」
 冥人は戦う女性側と、襲われて声を上げたりしている男性側を面白そうに眺める。
『だ、だから!』
 クロセルのタオルが剥がされる。
 ワニ達が求めていたモノが、皆がやりたかった事が成就される。
『……地獄だ』
「大丈夫か!」
 颯爽と現れる明斗、手にしたバナナをワニに投げる。
 何処のタルを上から落としていたゴリラだ。
 ライヴスを介してない、専用武器でもない、ただのバナナはワニの口にシュートされるだけだった。
 バナナを手にワニを倒したり、ジャンプ出来る事は特殊なゴリラだけの特権である。
 超エキサイトにはならず、戦いの衝撃で素人が作った物は壊れやすい。
 阿鼻叫喚、地獄絵図。
 女王様がワニの口を踏みつけ、何も出来なくなる事を蔑み笑う。
 全裸に見える肌色のスイムスーツ姿のお嬢さんが、雄々しく吠えながらヘルハウンドを振り回す。
「がああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
 吏子が最も大きなワニを電柱で凪ぎ払う。
 美しい少女がトリアイナでワニの口を塞ぐ。
 対し、男風呂はタオルを剥ぎ取られた少年。
 ワニに手拭いやバナナを投げる男。
「俺がアイツを引きつける……!」
 明斗がツヴァイハンダー・アスガルを手にし、周囲に武器を召喚しウェポンズレインを発動させる、が。
 さて、ここは狭い。
 無差別攻撃は、無慈悲にも仲間に被弾するワケで。
『明斗ちゃん、めっ! 後で、一人で修理してもらうのよ』
 共鳴姿のアラル・ファタ・モルガナが、盾を片手に我が子達を守るために盾で攻撃を受ける。
「あぁっ!」
 湯船は無事だったものの、更衣室は倒壊しており倒れた仕切りは粉砕されていた。

「ワニのクセに秘湯に浸かろうたぁ良い度胸だ。冬眠してろっつーの!」
 共鳴姿の将太郎がウィッチブルームを手に、リーサルダークをワニに向かって放つ。
「温泉に浸かる前に食う! 俺の脂肪とエネルギーになれー!」
 と、声を上げながら銀の魔弾を放つ将太郎。
(太った兄貴なんて見たくないよ)
 嬢は小さくため息を吐いた。
 残念だ……いや!
 希望はあった!
『さて、これで未練は無くなったでしょう……? お逝きなさい』
 アイオールが妖艶に囁くと、呪符「氷牢」が凍って砕けると杭となりワニを無慈悲に標本の様に地面に貼り付ける。
 我々の業界ではご褒美です! と言わんばかりにワニは幸せそうに旅立った。
 多分。
 ただし、彼女の素晴らしい身体を雪というキャンパスに描かれていた。
 気にはしない。
 己に自身を持っているから。
『真面目にお仕事しなさいっ』
「オブッ!? そんな隠し玉が!?」
 明斗の視線がアイオール達に向いているのに気が付いたクロセルは、アホ毛をひゅんっと動かし、騎手が馬に鞭を打つかの様に叩いた。
『なんかできた!』
「できちゃった!?」
 クロセルと明斗は声を上げた。
 共鳴姿では尻尾が無いので、アホ毛が動かないかなーと念力を送ったら動いてしまった結果である。
 多分、滅多に出来ない事であろう。
 何だかんだで従魔の退治は終え、残されたワニを後は調理するだけだ。

●ほんへ
『ご苦労、今から、ワニの、調理を、開始!』
 珍従魔ハンターの会長(?)弩 静華は声を上げた。
「そういえばどう捌けばいいんだろう……?」
 ワニを見て藍は首を傾げた。
「静華さん、捌いてくれませんか?」
『ん、美味しく、捌こう』
 藍の言葉にこくりと頷くと、静華は自前の包丁を手にワニを解体する。
「おぉ……なかなか美味しそうな肉質」
 脂質の少く鶏肉に近い引き締まった肉を見て、藍は感嘆の声を上げた。
『これなら料理もおいしくできそうですね!』
 禮はどんな味がするのだろうか? と、胸を踊ろらせながら思わず口から涎が垂れた。
「フライにローストに……、肉質はしっかりしてるから煮込んでも美味しいかもしれない……」
 藍は切り分けられたワニ肉を手に取り、じっくりと感触等を確かめて何を作ろうか考える。
『楽しみですね……!』
 禮がぴょんと跳ねた。
「これで料理出来ればねぇ」
 と、冥人がぼやいた。

「静華ちゃん、調理関連のモン借りるよ」
「ん! もってけ、どろぼー」
 将太郎に静華はこくりと頷いた。
『皮を剥ぐのが大変そうだなぁ。それができれば、あとは肉を捌くのと変わんないけど』
 嬢が調理器具から捌くのに適したモノを選ぶ。
(嬢、異世界でワニを調理したことがある……と言ってたけどホントかね?)
 と、思いながら将太郎は嬢に視線を向けた。
 バルトロメイも料理する輪に入るが、『セレティアに足湯だけにしろよな!』と言って去る。
「せっかくの温泉なのに足湯だけ〜!?」
 ぷーと頬を膨らませて不満げに言うセレティア。
『こんな覗きやすそうな温泉は許可できん!!』
 仕切りの無い温泉は、覗き放題となっており女性陣(主にティリア)を守る為でもあるのだが。
 羞恥心のしの字も無く、水着を着ているのだから構わずに入るものは居る。
 湯船に浮かぶウォーターメロン。
 エリスヴェータとアイオールは、見たければ見なさい! と言わんばかりに温泉に浸かっている。
「やっぱり、雪景色を見ながら入る温泉といやーこれは外せないなぁ」
 吏子は、雪の中に入れて冷やしていたビールを取り出す。
『だな、あとは肴があれば文句はない』
 源泉で温めておいた日本酒を盃に注ぎ、雷羅はぐいっとあおる。
「そこまで目くじらを立てなくても、皆様水着ですから大丈夫ですわ」
『そ、そうですが!』
 ティリアの水着姿を直視出来ない男・バルトロメイは、調理する手元に視線を向けながら言う。
『もう……無茶して……というより無茶苦茶……』
 クロセルは、色んな意味で疲れた様で温泉に浸かっていた。
 そんな英雄を横目に明斗は、ワニとの戦いで無事だったバナナを頬張る。
「まぁまぁ。食うか? 俺のバナナを……』
 と、言った瞬間、クロセルの尻尾が明斗の頬にヒット!
 言葉だけ聞いたらちょっと、いやかなり危ない内容にしか聞こえない。
 俺のバナナ(意味深)

『ワサビ醤油が欲しい! 皮でワサビをおろせるかな』
 バルトロメイがワニの皮とにらめっこ。
 新潟、蕎麦やら有名であるが山葵も栽培している。
 静華がちゃっかり用意した、天然の山葵を手にすりおろす機具が無いか調理器具から探す。
「鮫じゃないしー……って、あれ、鮫のこと、ワニって言うこともありますよね? あれぇ?」
 と、セレティアが疑問を口にする。
「あぁ、昔話で兎がワニの頭を飛んで対岸に行く話があるよね?」
「はい」
「そのワニは、実はサメであった様だね。日本にはワニが居ないからね」
 冥人はセレティアの疑問に答える。
「だから、サメをワニと呼ぶのは1部の地域だけなんだよ」
「なるほど」
 冥人の説明にセレティアは感嘆の声を上げた。
『恋人にいつか作るかもだし……』
 クロセルはバルトロメイの手伝いをしながら呟いた。
「大丈夫です。クロセルさんにだって出来ます」
 セレティアがぐっと拳を握り締めながら言った。
『ふふ、ありがとうね。セレティア君』
 ワニ肉をバナナの葉に包み、それを温泉の蒸気を利用して蒸し焼きにする。
 塩分が含まれおり、薄味にしても味を付けなくともほんのりと味が付くのだ。
『皆、ワニ料理が出来たよ!』
 嬢が料理を運びなから、温泉を楽しんでいる仲間に向かって声を掛けた。
「おんっせんったまご♪」
 セレティアは、卵が入った籠を手に源泉の方へと駆け出した。
『ワニ料理の依頼だろ、ワニ食えよワニ 』
 美味しそうなワニ料理が並ぶ中、バルトロメイはセレティアに向かって言う。
「ふふ、まだワニ料理は沢山ありますから大丈夫ですわよ」
 と、笑顔でティリアが言うと、バルトロメイは美味しい部分をお皿に盛り付けて渡す。
『それもそうですね!』
 紳士なバルトロメイはどこやら、鼻の下を伸ばしてデレデレしている只のファンである。
『体が温まるものを作ったよ。皆、食べて』
 嬢が作ったハチミツあんをかけた唐揚げをテーブルに乗せる。
「美味そう~♪」
 将太郎は、バルトロメイ作バナナの葉包みの蒸したモノ、藍が作ったフライにローストそして煮込んだスープを美味しそうに平らげる。
「よーし! 飲むぞ!」
 吏子は幻想蝶から酒を取り出す。
 もちろん、冥人が用意した酒を合わせるとかなりの数だ。
「バルトロメイ、藍に冥人! 朝まで飲むぞ!」
『受けてたとう!』
 吏子の言葉にバルトロメイは飲む気満々だ。
「はいはい、藍は無理だと感じたら逃げてね?」
「ええ、そうする」
 冥人が藍に耳打ちをする。

『セレティア様、何をなさっているのですか?』
 桶に顔を突っ込んでいるセレティアを見て、ティリアは目を丸くしながら見つめる。
『何やってんだお前』
 見張り兼酒盛り中のバルトロメイも首を傾げる。
「美肌の湯ですから!最優先はお顔でしょ!」
 入るのを禁止されているセレティアは、せめて! せめて! 温泉の美肌効果を顔だけでも良いので浸ける。
『そんなんで効果あるのか?』
「あるんです! もう、バルトさんは見張りしなくていいです。私はティリアさんと一緒に温泉に入ります」
『なっ!?』
 セレティアの言葉にバルトロメイは驚きの声を出す。
「まだ、酒盛りは始まったばかりだ!」
 吏子がバルトロメイの首根っこを掴み、酒盛り会場へとずるずると引きずられていくのをセレティアはただ見ていた。
「さ、ティリアさん、温泉に入りましょう」
「ええ、そんなに美容が気になるのでしたら私のオイルとかお貸ししますわ」
 ティリアは肌のお手入れ一式が入ったポーチを指した。
「はい!」

『あ、かあさま! 一緒に入りませんか?』
 料理を食べ終えた禮は、アラルの手を取る。
『うん、可愛い我が子と温泉は入りたいの』
 笑顔でアラルは頷いた。
『いい景色です。山も良いものですね、かあさま』
 破壊した張本人は、仕切りや更衣室を修理したので禮とアラルは安心して温泉に入る。
『そうね。山の雪が溶けて、その水は川に流れて海に辿り着く……山も海には欠かせない自然の1つなの』
『はい!』
『我が子も、海の様に広い心で世界を、人達を見てね』
 アラルは禮の冷たくなった頬を両手で温める。
 じんわりと、手の温もりが禮の頬を包みどくどくと血の流れる音がする。
 静かな温泉、少し遠くから仲間達の笑い声が響く。
 温泉に入ってる仲間も、他愛もない雑談で楽しんでる。
『かあさま、その、また一緒に温泉に入ってくれますか?』
『ええ、我が子のお願いから母は喜んで』
 アラルの答えを聞いた瞬間、禮はあまり変わらない体格の“母”をぎゅっと抱き締めた。
 そっと、黒い髪を撫でるアラル。
 雪は降り続けるが、何処からか春の足音が聞こえた気がした。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
  • 飛込みイベントプランナー
    藍那 明斗aa4534

重体一覧

参加者

  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 我が肉体は鋼の如し
    浅葱 吏子aa2431
    人間|21才|女性|生命
  • 其の手には無限の盃を
    酒呑力鬼 雷羅aa2431hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 飛込みイベントプランナー
    藍那 明斗aa4534
    人間|26才|男性|命中
  • アホ毛も武器
    クロセルaa4534hero001
    英雄|16才|?|カオ
  • 平伏せ、女王の足元に
    鴬華・エリスヴェータaa4920
    人間|26才|女性|命中
  • 真っ黒なドS
    アイオール・ハーシェヴェルトaa4920hero001
    英雄|27才|女性|ソフィ
  • 臨床心理士
    鐘田 将太郎aa5148
    人間|28才|男性|生命
  • 苦難に寄り添い差し出す手
    aa5148hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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