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広告塔の少女~メリクリって言いたい~
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プレゼントのご予定は?
最終発言2017/12/02 06:08:50 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/12/02 05:50:46
オープニング
● 今年もグロリア社は忙しい。
時は十一月。それも終わる。人類安寧の最後の一月である。
場所によっては雪が降り出すだろうか。寒さが本格化してきたこの日本において師走に入る一歩手前のこの月が過ぎたなら。正月まで怒涛の一か月を過ごすことになるだろう。
曰く、十二月とは坊主でも走るくらいに忙しい季節。
そんな季節にもっとも忙しいはずの少女は、近年の忙しさになれたのか。思いのほか余裕そうな表情を浮かべてそこにいた。
「私ね、学んだの」
ある午後の昼下がり、H.O.P.E.内食堂。そこでコーヒーを飲みながら科学雑誌を読んでいる遙華に君たちは遭遇した。
「クリスマス時期忙しくなるなら、その一か月前からプレゼントを買うべきなんじゃないかって」
そう遙華が雑誌を閉じると腕を組んで君たちを眺める。
「みんなはクリスマスプレゼントどうするつもり。私、実は自分でプレゼント選んだことがなくて」
遙華曰く。プレゼントを渡す風習は知っていたそうだが、渡す相手がいなかったそうだ。
「お父様たちは海外だし、おじい様は何を受け取れば嬉しいのかさっぱり分からないし。ロクトと出会ってからのクリスマスなんて、買い物に行ってる暇がなかったし」
去年と一昨年の話である。二人は十二月に入ってからグロリア社に缶詰であった。毎年グロリア社とH.O.P.E.で提携したイベントが開催されるためである。
今年も当然やる。商業戦略的に大事な期間である。頑張らなければ。
ただ、遙華とて少女である。クリスマスに興味がある。
「だから、私からあなたに依頼をしたいのプレゼント選び。手伝ってくれないかしら」
時同じくしてグロリア社会議室。
そこではプロジェクターいっぱいに遙華の画像が映し出されていて、画面右下に完と表示されている。
どうやら何かのムービーが終わったようである。そこにいる全員はたっぷり一時間半の大長編から解放されたため息をつく。
暗い部屋に明かりがともると壇上に登場したのはロクト。
「というわけで、皆さんに遙華の魅力は伝わったかと思うんだけど」
そう、今上映された製作費数億規模のムービーは全て遙華をテーマとしてとられた作品だった。
うすうす感づいていた方もいたかと思うが、ロクト、親ばかである。
「では、ことの本題に入りたいのだけど、休憩時間が欲しい方はいる?」
だれも疲れ切って手をあげない。それに気を良くしたロクトはにこにこ笑いながら告げる。
「今遙華の魅力について知ってもらったのは他でもない、クリスマスにプレゼントを送りたいけど、私では最適なプレゼントが選べないと思ったからよ」
ロクトはため息交じりに告げた。
プレゼントなどしたことが無いと。心のこもってない別のものがこもったプレゼントならまだしも。真心を込めたプレゼントなど送ったことがないと。
「真心ってどこで買えるの?」
そう真面目な顔で言い出すロクト。
「去年もプレゼント交換はしたのだけど、私のプレゼントは社員に選ばせたのよね」
それは実は遙華も同じである。この能力者と英雄。プレゼントが自分に選べないからと社員にプレゼントの買い出しに行かせたのである。
職権乱用にもほどがある。
「だから今年は皆さんの力をお借りしたいわ。私と一緒に遙華のプレゼントを選んでくれない? 当然お給料が出るわ」
そうロクトと遙華は同じタイミング別の場所で、両手を合わせて顔の前に持ってきた。
「「おねがい、あなた達の力が頼りなの」」
こんな二人のお願いを快く聞きうけるか、蹴るかは皆さん次第だが。
同じタイミングで大切な人へのプレゼントを買ってもいいともう。
そう今回はみんなでクリスマスのプレゼントを買いに行く話。
ちょっと季節的には早いのだが、遅いよりは早い方がいいだろう。
こうして次の休日皆で町に出る約束が取り付けられた。
● プレゼントとは?
皆さんはクリスマス、いかがお過ごしの予定でしょうか、今回はグロリア社で缶詰の予定の二人が早めにクリスマスプレゼントを確保しようと町に繰り出すお話でございます。
今回のお話は遙華サイド、ロクトサイドで別に展開されます。
店の情報など二人は詳しくないので、ガイドは皆さんにお任せする形です。
ですが皆さんもプレゼントを買う必要があるかと思うので。どんな店に連れて行っていただいても構いません。
今回はNPCとの交流イベントの側面を持ちます。
遙華とロクトそれぞれを連れて、ショッピングモールや商業地域、おひるごはんや晩御飯のお店など連れまわしてあげてください。
遙華の趣味
・本
・旅行
・機械いじり
ロクトの趣味
・お酒
・最新家電
・インテリア、調度品
そして二人はそれなりに財力があるので。皆さんにおすすめされるプレゼントに関しては全部買うでしょう。
なので失敗を恐れずガンガンおすすめしてください。
解説
目標 ロクトと遙華のプレゼントを買う。
上記。今回の目的として設定していますが。
ロクトと遙華についてくれる人が十分なら PC同士で町に出るという展開でもいいことにします。
デートシナリオですね。年末はいろいろ忙しくなるので。ここでコミュニケーションを図っておくのもいいのではないでしょうか。
それではよろしくお願いします。
リプレイ
プロローグ
「あ、あの遙華。ああああ、あのあのあの」
『卸 蘿蔔(aa0405)』の戸惑いの声が道端にこだました。
対して呼びかけられている遙華。彼女は彼女で重苦しい雰囲気を醸し出しつつベンチに座る。
ここはお昼の大きな公園、この場で待ち合わせとして、遙華はロクトへのクリスマスプレゼントを買いに行く予定だった。
「あの、遙華? 遙華?」
「だいじょうぶ、聞いてるわよ。聞いてる」
そう虚ろな視線を蘿蔔に向ける遙華。その背後には『八朔 カゲリ(aa0098)』が立っていて、つまらなさそうにあたりを見渡していた。
「今日は午後からは別行動にさせていただきたく」
「あ、あ~」
ベンチに伏す遙華。
「あと、付き合ってる事も言わなくて……ごめん、ね。遙華には真っ先に知らせるべきだったのですが」
「あ、あ~あ~あ~」
ゾンビのように人語を解さなくなってしまう遙華。
相当にショックだったようである。
「は、遙華~」
前途多難の遙華組。
それに対してロクト組も問題満載である。
「あら、今日はブリタニアなのね、来ていただけてうれしいわ」
そう握手を求めるロクト。応じる『ブリタニア(aa5176hero001)』だがその視線は『柳生 鉄治(aa5176)』にむけられていて。
その視線につられてロクトも鉄治へと視線を向けた。
ロクトは鉄治に歩み寄って両手を組みお願いのポーズをとる。
「今日は来てくれてありがとう、すごく助かるわ」
「お、おう……」
何となく、いつぞやのデートを思い出してし、たじたじとしてしまう鉄治である。
そんな鉄治がブリタニアは気に食わない。
ブリタニアの鉄治に対する好感度(恋愛)はゼロだが、自分をスルーして別の女に向かうのは気に食わないのだ。
あまつさえ鉄治は自分をスルーしてロクトに鼻の下を伸ばしていると思っている。
「そんな男放っておいて行きましょう、ロクト」
そう先導するブリタニア。
鉄治のストレスがマッハでたまっていく。
● 遙華サイド
それは御昼過ぎの事。
全員が高級ハンバーガー店から出てくるところからお話は始まる。
ちなみにこのお店はカイが昨日調べて見つけたらしい。たいへん美味しかったと好評である。
蘿蔔が昼食をみんなと共にすると、午後は別行動という事でカゲリを連れ立って町の中に消えて行った。
すると目に見えて遙華の肩が堕ちる。
「はぁ~」
「まぁ、そう言うこともあるって」
そう『蔵李・澄香(aa0010)』はソフトクリームを片手にもう片方の手で遙華の頭を撫でた。
嬉しい感情と、残念な感情を同時に感じ、ふひっと変な笑い方をしてしまう遙華。
「まぁ、遊べなくなるってことはないだろうし。それほど気にすることも無いと思うよ」
『レオンハルト(aa0405hero001)』が告げる。
ちなみにレオンハルトがここに残された理由は明白、デートに保護者は必要ないからである。
「過保護が過ぎるぞ、レオンハルトよ」
「いや、さすがにそこまでしないよ?」
ナラカの言葉にレオンハルトは苦笑いを向けた。
「それにしても、遙華嬢はショックを受けすぎでは?」
そう首をひねるナラカ。遙華はその言葉に頷いて声を絞り出す。
「そうね、私もだんだん落ち着いてきたし。でもなんだかすごく残念、喜んであげないといけないのに」
そんな遙華を見かねて『ナラカ(aa0098hero001)』が告げる。
「とられる方がわるい!」
そのひとことで撃沈した遙華を尻目に一行は大型商業施設を目指す。
『カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)』の先導で和洋酒店を目指した。
「ずいぶん慣れてるのね、足取り」
そう遙華が告げると『御童 紗希(aa0339)』が言葉を継いだ。
「前から行ってみたくて、マークしてたんですって」
そう微笑む紗希と遙華は顔を見合わせると、カイの背中を追う。
「とりあえず、検索してみたんだよ」
そう告げるカイ。真面目に調べてきてくれたようだ。
「私のパソコンでね」
そう注釈を挟む紗希である。
「そしたらさ……コレ0が何個ついてんだよって」
そう洋酒の棚を眺めながらカイはつぶやく。
「俺もう5桁以上の金額は脳が認識しなくなるんだけど……」
そのネットでおすすめされていたお酒と同じものを手に取ってカイは遙華に告げる。
「大体こういうのって飲むんじゃなくてコレクションにするもんなんでしょ?」
紗希が問いかけた。
「それにお酒なんて飲んだら無くなっちゃうよ?」
「無くなるからいいんだよ」
どういうことだろう、そう先と遙華は首をひねる。
「コンビニ行って酒買うついでに新商品の物色? ……みたいな」
「……行動が庶民過ぎ……」
そう棚を物色している遙華をじっと眺める澄香。
「どうしたの? そんなにみつめて、あとカメラ」
そう、澄香の手にはカメラが握られていた。
「あ、今日の休日、撮影させてね? 番組に使えるかもだし」
「映画監督でも目指す気?」
「あ! 行く先の撮影許可も得ないとだなぁ。先回りするね」
そうせわしなく遙華の目の前から消える澄香である。
遙華は困った顔でレオンハルトとナラカを振り帰る。
すると、思いは効かされているのだろう、レオンハルトははにかんで、ナラカは澄香の元へ走って行った。
「そうだ、このお店、前に出店してくれた所だね。ご挨拶してくるよ。ナラカちゃんも行こうか」
「それなら私も」
「いいよ、遙華はそこにいて、しっかり見てあげて、贈り物は何を送るかよりどれだけ悩んだか、だよ」
「澄香よ、私がいってもいいのか?」
「新人アイドルですって売り込むから平気」
「それは……まぁ、間違ってはいないのだが。まぁいい、全力でこの真意の前にひれ伏らさせて見せよう」
「あ、そう言う感じじゃないから」
結果取り残されるレオンハルト、そして遙華。
そんな二人に先が声をかけた。
「リンカーってみんな自由だよね」
そんな先にカイが一本の日本酒を差し出す。いつの間にか一行は流れ日本酒コーナーにたどり着いていた。
「へー日本酒でも5万もするのがあるのか。コレなんかよくね?」
「自分が飲みたいだけなんじゃん」
「ふふふ、あっちのリンゴジュースならみんなのために買ったところなんだけどね。でもこれもとてもよさそう。ラッピングしてもらいに行くわ」
そう遙華は日本酒を購入することに決めたようだ。それとは別にワインも引っ提げている。
それを見てレオンハルトは思いついた。
「ワイン好きだしワイングラスで良いんじゃないかな…………インテリアに拘ってるなら飾れるようなおしゃれな形でも良いよね」
そう一行が次に目指したのは輸入食器屋さん。
その店内ではすでに敏腕マネージャー澄香が全てのおぜん立てを整えている。
「味も見た目もとなると少し難しいかもだけど、美味しく飲めるのは既に自分で持ってるだろうから見た目で選んでも良いよう気がする」
「そうですね、いい趣味してますね、レオンハルトさん」
「気を使うのが仕事のようなやつだからな、レオンハルトは」
澄香とナラカの言葉にはレオンハルトは笑顔だけを返す。
「グラスと一口に言ってもすごく種類があるのね」
「遙華、あとは自分で選んでみたらどうだい…………ロクトに似合いそうとか、自分が好きとかそういう理由で良いんだからさ。それに、俺が選んだら意味ないし」
「うん、そうね。ちょっと悩んでみる、お時間いい?」
「もともと、西大寺さんのお買いものにつきあうために来たから」
紗希がそう告げた。
「二十歳になったらこれで一緒に飲むとかどうかな?」
そう悩んでいる遙華を店の奥に誘導していくレオンハルトである。
* *
一通り買い物を終えた遙華は、膨大な荷物を配達してもらうためにカスタマーセンターにいた。
住所を書きこむと荷物を預ける。
そんな遙華の隣に澄香が立った。
「去年の12月は36時間TVやカロンメールとか、色々あったね」
「もうあれから一年間もたったのね、早いものだわ」
そう遙華は二人で過ごした時を数えだす。
「今年も色々とやるんでしょ? この外出ついでに、出来る範囲であいさつ回りも済ませちゃいなよ。業務提携している事務所の社員として、私も手伝うからさ」
「ありがとう。いつも助けられてるわ」
「今回は特に」
「ん?」
首をひねる遙華、澄香は遙華には言ってないがロクトへのプレゼントに、遙華との時間を選択した。
忙しい二人の仕事を少しでも減らすために、先回りして用事を潰していたのだ。
「チャリティーステージとかどう? 今年も辛いことばかりだったからさ。元気を上げたいって思ってね」
「でも、チャリティーってみんなに苦労をかけるばかりで申し訳ない気もするわ」
「チャリティーだもん、そう言うものでしょ?」
自分のカバンを漁り始める澄香。
「あなたは、自分が幸せになる道を考えてもいいのよ」
その言葉に澄香は驚いたような表情を見せる。
そしてその手に握られていたのはアイドルリンカーのステージ企画書だ。
「企画運営から勿論飲食店の出店まで。すごいわね」
それを手に取って遙華はざっと内容を見通す。なかなか読みごたえのある企画書だと思った。
「36時間TVのノウハウを活かして纏めてあるんだ」
告げて澄香は遙華に肩を寄せ、一緒に企画書へ視線を落とす。
「ステージの売り上げは、愚神被害への福祉に。グロリア社の上層部へ話を通すのは大変かもだけど」
「それは大丈夫。おおめに甘い汁を吸わせてあげてるから、少しの無理くらいなら布石でとおる」
「ディスペアも呼んであげたいんだよ。社会貢献は今の彼女たちには必要だと思うから」
「そうね、あの子たちにこそこんなステージがふさわしいかもしれない」
「これ、遙華がスマートに『企画も手配も段取りも、全部終わってるわ』ってやってみてよ。ロクトさん喜ぶよ」
「でも、これはあなたの企画書よ?」
「これをプレゼントにしなよ、お題はもうもらってるよ?」
そう澄香はソフトクリームを持つ手の形を作る。
公園で項垂れる遙華に、いきなりソフトクリームをねだったかと思えばそう言うことだったのだ。
(君の成長した姿も、みせたいんだ。きっと笑ってくれるよ)
そう澄香は心の中で唱える。
そんな様子をナラカは影から見守っていた。
少女たちのあがき、だがあれは十分に輝きと呼んでいいものなのではないか。
証拠にナラカは二人をとても面白いと感じていた。
だが、もうそろそろ時間だ、皆が集まり始める。
そうナラカは姿を現す。
「やぁやぁ、もう酒に関しては十分かな?」
ナラカが問いかけると遙華は答える。
「ええ、あまり買いすぎても私が消費できないからそろそろ別のものも」
動き出した一行を見ながらナラカは頷く。
「うむうむ、酒とは過去から連綿と続く技術の粋だ。よいものさ」
そして集合した一行が迷い込んだのは家電売り場。
「無論家電も似たようなもの……と言うよりは技術と言う意味では最先端だが、此方は量産性が高いのでね、ありがたみはないかもしれないが」
「へぇ、面白いこと考えるね、ナラカちゃん」
澄香と一緒にナラカは奥へ奥へと入っていく。
「これよくね!? 缶ビール用ビアサーバー!」
そうカイが大きな声をあげた。
「超音波でクリーミーな泡が作れるんだって。つか俺が欲しいわ!」」
「アンタが欲しいものかってどうするのよ」
「いえ、欲しいかもしれないわ」
サーバーを吟味し始める三人。
そんな紗希の視界にふと。入ってはいけないものが入る」
「……おいもが美味しく焼ける焼き芋専用のオーブン……」
「白身をメレンゲ状にしてふわふわ卵かけご飯が作れるTKGメイカー」
「お肉を回転させながら焼くグリルオーブン……燻製も作れるのはなかなか……
性能を特化させた分これは期待していいかも……」
様々な現代文明の産物に翻弄される紗希。
そんな一行が最後に回ったのが、家具店。
カイがそろそろ集中力が切れてプレゼント選びが雑になってきている時間、展示品の一人掛けソファに座って休憩をはかる一同。
その時紗希は閃いた。
「もういっそ酒蔵に最新おもしろ家電と高級調度品を揃えたセカンドハウスプレゼントすれば?」
「それもいいかもね」
本気かよ、と言葉を失う紗希。金銭感覚が違いすぎた。
「そう言えば、皆さんクリスマスはどうするんですか?」
そう全員に問いかける紗希。
「ちなみにうちは、三人で水炊きです」
* *
一方そのころ蘿蔔と、カゲリは女性ものの服屋に来ていた。
「そ、その…………ごめんなさい、こんなところで。どうしても決められないというか、カゲリさんに選んで欲し、く…………て」
そう顔を真っ赤にしてもじもじと、カゲリを見あげる蘿蔔。そんな蘿蔔に柔らかな表情が向けられると蘿蔔はその表情に釘付けになった。
「俺はこういうものには疎いが……そうだな」
そうカゲリはマネキンが纏ったワンピースを指さした。
「これはどうだろうか」
「可愛いです!」
そんなはしゃいだ蘿蔔の反応を見ると、カゲリは店員を呼び手早く会計を済ませてしまった。
「ええ! そんな買っていただくわけには」
「気にしなくて良い。それに巷の恋人と言うのは、こう言うやり取りをしているものだと思うしな」
恋人という単語が新鮮で蘿蔔は思わず口を閉ざす。
カゲリは紙袋を受け取ると颯爽と人ごみをかき分け出口に向かった。
「どうした? 他にも行くところがあるんだろう?」
「はい!」
そう早足で後ろを歩く蘿蔔を待ち、二人は並んで歩く。
次いで向かったのは雑貨店。蘿蔔にも何か考えがあるようだ。陳列された時計をカゲリの胸に押し当ててムムムっと悩む。
それを贈り物にするようだった。
「ふふ、大事にしてくださいね…………って、これ。クリスマスに渡した方が良いですかね?」
「大事にする。…………クリスマス当日には、また違うプレゼントを贈らないとだな」
買い物が終われば二人は手近なカフェを目指す。ケーキの種類が豊富で、蘿蔔は幸福を噛みしめながらスイーツを食べる。
カゲリはコーヒーを飲みながら外を眺め、蘿蔔を一別する、すると蘿蔔の口が自然と開いた。
「こうしてると初めて一緒に出掛けた時を思い出しますね。とはいえあの時は緊張して何話したかとか…………何食べたとか、あまり覚えていないのですが」
「そうなのか? 俺はあの時……」
そう穏やかに話をする子の一時だけは、少し緊張を忘れられる、そう思いながら蘿蔔はココアに口をつけるのだった。
● ロクトサイド
「せっかくロクトさんと外食するのです、今日はちょっと奮発しますよ」
鉄治はあたりを見渡していた。
「私にとって、北欧の伝承が伝わる地域の料理は懐かしさを感じる。……以前にも、少しだけ記憶を思い出したな」
すごい女性が集まったものだと。
「機会があれば、お二人をベルカナへもお誘いしたいのですけれどね。この辺りにベルカナは出店していないみたいなんですよ」
『月鏡 由利菜(aa0873)』と『リーヴスラシル(aa0873hero001)』はそう優美な笑みを漏らし、ロクトに笑みを向ける。ロクトは一度振り返るとブリタニアを先導して歩き始めた。
その後ろに『麻生 遊夜(aa0452)』と『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』が続く。
「……ん、ハルカは……かわいい」
「いや、真心は……はぁ、キツイ仕事になりそうだ」
そうほくほくの笑顔を浮かべるユフォアリーヤの頭を撫でる遊夜。
そんな遊夜に鉄治はこっそり話しかけた。
「すごい、美人ぞろいで緊張しないか?」
「ん? まぁ、もうなれたな」
なんだかすごいなぁと思う鉄治である。
そんな一行が向かったのは由利菜おすすめのレストラン。
そのレストランの案内を待っている間に鉄治はブリタニアに耳打ちした。
「なぁ、何もお前まで来なくても」
その言葉にぎろりと視線だけ返される鉄治である。
もともと鉄治はブリタニアを連れてくるつもりがなかった、何故こんなことになったのかというと、ブリタニア特有の女の勘とやらでばれてしまったからだ。
時は昨日の夕食に遡る。
「…………鉄治、何をしているのです」
その手のワイングラスから口をそらすと、ブリタニアは目を瞑ったままそう告げた。
(ぎくっ)
その体を震わせる鉄治。
「…………鉄治?」
見開いたブリタニアの目はじとーっと不振に濡れていた。
見つめ合う二人、流れる鉄治の冷や汗。
「ロ、ロクトと…………メガネのプレゼント買いに…………」
「はぁ!?」
そんなこんなで今日にいたる。
だが、まぁ連れてきても良かったかもしれない、ブリタニアを含めた女性陣はなんだか楽しそうである。
そんななか、話を先に進めるために遊夜が話題を切り出す。
「趣味は……本、旅行、機械いじりか」
「……ん、お休みは……大事」
そう旅行ガイドブックを取り出すユフォアリーヤ。
「柳生さんらは本に行くみたいだしな」
「ん? ああ、そうだな」
そう鉄治が答えた。
「我らは西大寺さんの長期休暇をもぎ取れるように頑張るとしよう」
隣でユフォアリーヤが、お~と拳を突き上げた。
「ついでに団体・家族向けの旅行先も見繕っておこうか、候補はいくらあっても困らんしな」
「助かるわ。たまには仕事以外でどこかに連れて行ってあげたいし」
「色んなところに連れてってやりたいしな」
「……ん、まずは国内……次に海外、夢が膨らむ」
何気に遊夜たちも遠隔地には赴いている、アドバイスには事欠かない。
「温泉好きならここだな」
今まで行った伝統ある旅館や温泉地と秘湯にアミューズメントパークを推す遊夜。
「……ん、食べ物なら……ここ」
山の幸に海の幸、ジビエや果物狩り等が有名な所を指す。
「むしろ私が一人で行きたいわ」
「それは本末転倒では」
由利菜が苦笑いを向けた。
「あとは自然を体験しに行くのも良いな」
「……ん、森林浴……南の島、海……北国、雪……選り取り見取り」
大切な記憶を思い出したのだろうか、ユフォアリーヤは顔をほころばせた。
「屋久島や青ヶ島、高千穂に猿島辺りをのんびり巡ったり」
そうパンフレットの写真を見せる遊夜。
「バーベキューやら釣りしたり洞窟群や鍾乳洞とかを探検するのも悪くない。海外の遺跡や古城、遺産や風景を見に行っても良いな」
「ただ、時期が心配ね」
そう頬に手を当てて考え込むロクト。
「早めに予約入れてりゃどこも空いてるだろ」
「……ん、ハプニングは付き物……長めに、日数とる」
先ずは旅行会社に相談を。
そう結論づけて一行はレストランを後にした。
次に向かうのはアンティーク系インテリアショップ。ここからは由利菜たちのお買い物でもある。
「丁度、涼風邸でも収納用の新しいアンティークの引き出しが欲しいと思っていまして……」
「ユリナの母君の母国では、人に長年愛用されたものは後世高い価値を見出されるという」
「それは素敵な概念ね。いいと思うわ」
「……ロクト殿、グロリア社の開発してきた製品も、いずれそうなる時が来ると思うか?」
リーヴスラシルが問いかけた。
「どうかしら、AGWは結局武器だし、それ以外の技術に関しても後に糾弾される可能性が高いと思っているわ」
そう少し暗い表情を見せるロクト。
そんなロクトとリーヴスラシルの袖を引く由利菜。
「このステンドグラスの窓……美しいですね。でも手で渡せるというものでは……」
見上げるステンドグラスは聖母を描いていた。
「実用性で言うなら、この木製の小物入れはどうだろうか?」
そう一行は小物エリアを経由して、ブティックへ。
「ハルカ殿やロクト殿はパーティーに出る機会も多かろう。落ち着いた雰囲気のドレスはどうだろうか?」
リーヴスラシルが指差すのは扇情的なドレス。
「そうね、もうそろそろクリスマスパーティーが多くなる時期だし」
そんな中頭をひねっているのは鉄治である。
「ううん…………」
まともに女の子へのプレゼントなんか選んだことがない彼を見かねてブリタニアが声をかける。
「はぁ…………、鉄治、そのドレスは夜の世界には不向きよ」
「でも、華やかなドレスはあの子が好きかもしれないわ」
そうロクトはブリタニアに言葉を返す。
「なぜ?」
「あの子、煌びやかな世界にあこがれてるから。読んでる本も。ロミオとジュリエット、オペラ座の怪人、嵐が丘」
その単語にブリタニアは目をむいた。
「おい、どうしたんだよ」
異変を感じ取る鉄治。
「エミリー・ブロンテ!?」
「……おい、誰だ、それ」
鉄治にはさっぱり分からないようである。
「ブロンテ姉妹を知らないのですか!?」
ブリタニアはそんな鉄治に今までよく生きて来れたなと言った表情を向ける。
「知らん」
鉄治にこの手の知識を期待してはいけない。
「と、いうわけで。嵐が丘特装本」
そうブリタニアが指差したのは向かいの本屋さんに並べられていた重厚なハードカバーの一冊。
ブリタニア曰く。部数限定・シリアルナンバー入りらしい。
「行きます!!」
「だからえらくでかい本屋に来たんか」
呆れてそんな言葉を返した鉄治。
「ちなみに、お好みなら、英語版とかラテン語版みたいなものもありますけど」
「聞くだけで頭痛くなるな、おい」
「中のベーカリーで本を読みながら食べることもできますよ」
「これ、メガネ本人連れてきた方がよかったんじゃねえの」
「本人連れてきてどうするんですか」
「それは私も思ったわ、よかったらお友達になってあげて」
そうくすくすと笑みをこぼすロクトである。
* *
そんな買い物も済んでロクトが家に帰るとスマートフォンが震えた、ディスプレイにはリーヴスラシルの文字。
「すまない、私からもロクト殿に相談したいことがあってな……」
「あら、どうしたの?」
「勿論、今月はクリスマスも控えているが……私にとっては、もう一つ重要な日がある」
「それは素敵ね」
「間もなくユリナの誕生日だ。去年は、ミフネ殿にも来て頂いた。……だが、良いプレゼントがまだ決まらないのだ」
「私でよければ相談にのるわ」
「もう一人の私の教え子も、親友の誕生日を祝うのは当然と言って張り切っていた……、そして」
ロクトは思う、こんな風に無邪気に言葉を交わせるのはいつ振りだろうかと。
その後、遙華とロクト二人のプレゼント交換会が行われたのだが、それはまた別のお話し。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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