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広告塔の少女~アルスマギカに連れられて~
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質問卓
最終発言2017/11/16 22:28:14 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/11/18 19:41:00 -
相談卓♪
最終発言2017/11/18 13:48:01
オープニング
● 心象風景、記憶の奥の方。
「ああああ、あるまぎ。私はわるまぎ」
そうビクンビクン体を跳ねさせるロボット、その目の前で遙華はスパナで肩を叩きながら鼻先の油を拭い取った。
「うーん、小型化には成功したけど、まだ言語野が不安定ね。AI自体はキチンと言語理解できてるのに、何で端末でここまで言語能力に差が出るのかしら」
今日は遙華の休日である。
遙華は以前からアルスマギカにちゃんとした体をあげる約束をしているので、休日は最近アルスマギカとデートすることが多い。
「うーん、今月中には無理かも。ごめんねアルマギ」
「だだだだ、だいじょーびょ」
「エリザの時はうまく行ったのに、なんでこんな……」
そう遙華はアルスマギカの心臓部を露出させ、コードを接続。プログラムの見直しに入るのだが、その時である。
PCに何か映像が映し出された。
それはノイズまみれで何が何やら分からなかったのだが。
一つだけ読み取れる事実がある。
そこに映し出されていたのはロクト。
鏡を覗くロクトである。
だがその表情は険しく、今朝食卓を共にしたロクトとは全然違う人間に見えた。
「これ、ロクトの記憶?」
ノイズが収まっていくにつれ、この世界ではない街並みが表示されるようになった。
近未来的なフロント。動力不明の昇降機。そして前衛的なデザインの廊下。
煌びやかな応接室。そこでロクトが佇んでいた。
地味だが高級感のある生地で作られたロクトのスーツ。
大窓に歩み寄りそして町を見下ろす。
一番高い町の天辺で彼女は微笑んだ。まるでこの世界すべてを手中に収めたとばかりに、残忍に。
そして……。
「いや!」
流れ込んできた情報に拒絶感が募り、限界を超えた頃。
遙華はPCをアルスマギカに叩きつけていた。
わりと乙女とは思えないパーワーで突き飛ばされたアルスマギカロボは壁に叩きつけられプスプスと煙を吹いている。
「ひ……ひどい」
「あ、ごめんなさいアルマギ……え? 今ちゃんと話せてなかった?」
そう立ち上がりアルスマギカに歩み寄る遙華。
「あー、耐久度に難があったみたいね」
そう遙華はドライバーでアルスマギカの装甲を解体しようと試みる。
しかしその時だ、その指先が震えていることに気が付く。額を脱ぐとべったりとした汗が手についた。
自分は、自分は何を見たのだろう。
夢ならば、目覚めた瞬間から霞みゆくのが必定。
しかし今見た光景は、時間を置けばおくほどにはっきりと、明確な形を持って。
まるで印刷された手のポラロイド写真のように、浮かび上がってきて。
逃れられない。
己の英雄の過去から、英雄の過去に関する思案から。
「ロクト。あなたは……」
ロクトの目の前にひれ伏した、スーツの男性たち。皆口々に何事かを懇願していて。
ロクトはそれを笑いながら見下ろしていた。
その笑みは残忍でまるで、まるであの笑みは……人を踏みにじることを是とする彼女のような。
悪性の笑み。
「あれだけじゃない」
他にも沢山。いろいろな映像が頭によぎってそして……。
「これはあなたの見せた夢なの? それとも」
遙華は真偽を確かめたくなった、けれど本人に聞くことはできない。
だったら、だったら私は。
そう遙華はアルスマギカのシステムを改造し始める。
「ああ、だだだだめ。それはだめー、あー」
「変な声出さないで! ロクトが来ちゃうじゃない!」
● 遙華の告白
アルスマギカからあの光景をみせられて四日。遙華は皆さんを会議室に集めた。
「私はあの光景が、英雄の過去なのか、私の妄想なのか知りたい。だから」
遙華はヘルメット型の機材を差し出した。
「これでアルスマギカとつながってみてくれない?」
それは能力者が英雄と結んでいる絆、それを遡り英雄の記憶にアクセスする、そんな機械。
この技術に、端末に危険はないと遙華は告げた。
「春香が何度も試してくれたから。でももしこの技術が本当だったら、あなた達は英雄の暗黒面を見るかもしれない。英雄さえも忘れている何かを思い出してしまうかもしれない」
それでも誰かに協力してほしい、助けてほしいと思うのは自分の弱さだと遙華は言った。
「私は、英雄が抱えてる物を一緒に抱えたい。それが興味本位の悪いことだとしても、私はいつも私を助けてくれるあの人の事が知りたいの」
「一緒に英雄の記憶を旅しましょう」
そう遙華は手を差し出した。
あなたがその手を取った時、新たな真実が見えてくるかもしれない。
● アルスマギカマシーンについて。
これは英雄の心の奥底にアクセスして、英雄たちの記憶をランダムに引き出す装置です。
英雄たちは記憶のほとんどを失っている状態でこの世界にやってきます。
中には徐々に徐々に記憶を取り戻す英雄もいますが、取り戻さない英雄もいまして。
その英雄の記憶を取り戻す技術というのは常に研究されております。
これもその一環だと思っていただければよいです。
ただ、今回は遙華の私情も挟まってきますが。それはおいておいていただいて構いません。
この技術を、マクロスフィア技術と呼ぶことにします。
完成させるために皆さんの協力をお待ちしております。
このマクロスフィアですが。
英雄の記憶を追体験することになります。英雄の記憶はまるで映画を見ているように自動的に進行します、基本干渉は行えません。
みなさんの英雄はどんな光景をみせてくれるのでしょうか。
解説
目標
話の導入は遙華からの技術開発協力要請ですが。動機はPC全員それぞれ異なるでしょう。
英雄の過去を知りたかったり、英雄の隠し事を知るためだったり。
様々あるでしょう。
ひょっとしたら見えるのは、前の世界の記憶ではなく、この世界に召喚されてからの記憶かもしれません。
能力者に対して隠している感情かもしれません。
それはPLの皆様にゆだねられます。
さらに英雄の記憶に潜るのに人数制限は存在しません。なので誰かの英雄の記憶に複数人でダイブすることも可能です。
それではよろしくおねがいします。
リプレイ
プロローグ
それは午後の一時『月鏡 由利菜(aa0873)』はティーカップ片手に『リーヴスラシル(aa0873hero001)』と談笑をしていた。
「ハルカ殿から、epohの宝石の件のお詫びとして、アルスマギカを通じてより安全な形で私の過去を思い出す手伝いがしたい、と誘いが来た」
「また、宝石の時みたいになったりはしませんよね?」
「不安は残るが、記憶を取り戻す機会は貴重でもある。私は行く」
その決意に押され由利菜はグロリア社を目指すことになる。
先ず事前説明で通された部屋にはすでに十組以上のリンカーが集まっており、その中に『杏子(aa4344)』や『カナメ(aa4344hero002)』もいた。
「英雄の記憶が見られると聞いて、ギアナからすっ飛んで来たよ。」
「それは、なんだか悪いことをさせたわね」
そう遙華が口にする。
「自分で話せる事には限りがあるからな、直接見る事が出来るのであれば手っ取り早い」
リンカーは任務受諾後さっそく特別な一室に通された。長時間のダイブが予想されるため、生命活動を逐一観察できる椅子、それに全員が腰掛ける。
「おねえちゃん、僕だけサイズが」
「あー、遙華さんも我々が参加することくらい予想してくれればよかったのにね」
長い付き合いなのだから、そうため息をつくのが『アイリス(aa0124hero001)』
少々大きいサイズの椅子にすっぽり埋まるのが『イリス・レイバルド(aa0124)』である。
「夢の世界で会ったらよろしくお願いします」
そう二人に話しかけるのは『煤原 燃衣(aa2271)』彼は積極的に相棒である『ネイ=カースド(aa2271hero001)』の世界に没入する気でいる。
「こういうモンにゃ興味ねぇクチかと思ってたんだが」
その隣の席に腰掛けたのは『一ノ瀬 春翔(aa3715)』そんな彼の上に腰掛けるのが『アリス・レッドクイーン(aa3715hero001)』である。
「そうね~。確かに過去は振り返らないタイプだわん」
アリスは告げた。
「でも識るという事とはまた別ではなくて?」
「というと?」
「そろそろ実際に見せておくべきかな~ってね」
意味深なその言葉に春翔は首をひねるが、アリスは妖艶に微笑むばかりである。
「アリスじゃない、私の事」
告げるとアリスは混乱する春翔を置き去りに、イリスや燃衣に告げた。
「ま、みんなも覗きたいならご自由にね。あまり面白いものでも無いけどさ」
「おいおい、あとで後悔しないだろうな……」
アリスの発言にあきれ顔の春翔であった。
「アリスさんも一ノ瀬さんもやる気十分ですね……つぅ」
その時燃衣が額を抑えて呻いた。
「おいおい、だいじょうぶかよ」
春翔が身を乗り出して燃衣を覗き込んだ。
「いやね、ちょっと調子が悪くて。大丈夫、すぐ治りますよ」
ちがう、そんなのごまかしだ。燃衣はそれを知っている。
瞳の内側で何か、苦痛に呻く魂の様なものが蠢く。その頭痛はあの戦いの直後から定期的に襲ってくる、その感覚も短くなっているような、気がしている。
(トリガーは殺意や憎悪ですか。今は制御できてますが、これからどうなるか)
そんな中『八朔 カゲリ(aa0098)』は落ち着いて席につき、目を閉じる。
「ふふふ、楽しみだね。他の英雄たちがどの様な物をみせてくれるか」
『ナラカ(aa0098hero001)』は他人の夢に入り込む気満々のようだが、カゲリはそんな気になれなかった。
「記憶を知ろうが知るまいが過去は所詮過去だろ?」
カゲリはそう告げる。
そんなカゲリにナラカは、わかってないなぁとでも言いたげな笑みを返した。
「確かに、記憶を知ったからと態度が変わるものではないが、それでも、重要なことだと私は思うが」
それは愛しく思う子供達を強く強く知りたいと思うが為にだ。
ナラカは人間をその意志を愛している。
「では早速いこうか」
告げるナラカ。突如全員の意識が堕ちる。過去へ、あるいは異世界へ全員が旅立った。
● 開幕 寵愛、その熱量
その時、マクロスフィアの計器が異常を示した。
まるでそのシステムが乗っ取られたかのように動作を急変させ。ゲートを開いている者すべての夢にデータを割り込ませてくる。
その光の粒子、奔流に一同は大いなる鳥を見たという。
それは要するに、皆を己の夢に無理矢理介入させると言う暴挙である。
「はぁ」
そのときカゲリは眠っているはずなのにため息をついた。
その悪戯じみた所業はなにも、遊びで行っているわけではない。
これもれっきとした彼女のありよう。元の世界での彼女を表現するに欠かせないエフェクトなのだ。
――愛している。
焼き尽くす業火の告げる。
――愛している、愛しているのだ。故に如何か知って欲しい。
「ナラカ、お前なのか?」
カゲリは噴出する炎にも負けず突き進む、その実態へと手を伸ばすように。
――私が如何に皆を愛しく想っているのか。
「俺は知っている」
――如何にその輝きを信じていて魅せられたいと思っているのか。
「さんざん耳元で聞かされたからな、知っている」
――答えは要らない、ただ知って欲しい。
「俺だけでは不服か?」
実際、不服なのだろう、何故ならこのような暴挙に及ぶほどなのだから。
――いいや、知るべきだ。
カゲリは炎の翼に飲まれ、それぞれの世界に旅立つ。あるいはその翼に乗り別の世界を垣間見る者もいるだろう。
それでいいとナラカは思う。
そして、最初のゲートは開かれた。
●潮騒の音、遠く
「にいさまに、見て頂きたいものがあります」
神妙な面持ちで少女は告げる、メイド服姿の彼女『サーフィ アズリエル(aa2518hero002)』。
サーフィが強く何かを希望することは珍しい。思わず目くらってしまう『海神 藍(aa2518)』。
「お話するより、見て頂いた方が早いと思うのです。面倒ですし」
「面倒って」
彼女が指をさす先には例のヘッドギア。それに繋がれた皆の表情を見る限りあまりいい夢は見れていないようだ。
それでも。藍自身に知りたいという欲求が無いわけではない。
英雄の過去。ひょっとしたら本人すら忘れているかもしれない過去。
それを知ることができたなら。妹が抱える、サーフィが抱える寂しさを。時々ふと見せるどこかに行ってしまいそうな横顔をどうにかできるのだろうか。
「わかった」
そう藍は頷いてヘッドギアをかける。直後瞼の裏に電撃が爆ぜて意識が遠のく。
次の瞬間感じたのは肌寒さ。
藍が床の冷たさすら感じることができることに驚き飛び上がると、じゃらりと足元の鎖が揺れる。
その赤茶けた鎖の先には、ああ、何故だろう。
幼い少女姿のサーフィーが横たわっていた。
うつろな瞳、鎖につながれた足は可愛そうなほどに細い。絶望に彩られた視線。瞳にひかりはなく血走って見える、薄暗い部屋の闇が彼女へとついばむように降りる。子汚い煤で飾られた彼女はもう、死んでしまっているように見える。
それでも彼女が死んでいないとわかるのは、真新しい注射器が乗せられた台が近くに放置されているからだ。
隣には怪しげに光る薬瓶。割れた注射器から滴る雫が、ガラスの上に落ちて、びしっびしという音を定期的に奏でている。
その時ぐるんっと、サーフィの首が回って藍を見た。
「アルスマギカ様、こっちではありません。あっちです」
能天気するぎる声を発する少女姿のサーフィ、直後。
世界は暗転する。
(今のは一体?)
小首をかしげる藍だったが、彼が次に放り出されたのは、薄暗い小部屋とは対照的な青い空の、人があふれる。街並み。
時代は藍の知る中世に見えた。馬車が走り遠くに港が見える。歩く人々の表情は明るく、その人ごみの中でサーフィーが振り返った。
「この町は海産物が有名です」
告げて歩きだすサーフィ。彼女を追って歩く藍。
告げるサーフィーの視線の先を見てみると海の上にぽつぽつと点が見える。あれすべてが漁船なんだろう。網の設置中だろうか。
「鮮度を保つ方法が乏しい世界では、美味しい海産物を食べるために港まで足を運ばねばなりません。なのでこの町は特に賑わってるんです」
サーフィーの言葉を証明するように市場には地平線の向こうに隠れるくらい行商の店が並んでいる。
人寄せのためだろうか、店先で吟遊詩人が小さな弦楽器を鳴らしている店もある。
ただ、目を見張るべきはそれだけではない。
街のにぎわいも良いものではあったが、それ以上に藍にとって嬉しかったのは、やや広めに拡張された水路。
その水路から顔をのぞかせる人魚や魚人がいることだった。それだけではない。目を凝らせば様々な種族がいる。あれをまとめて獣人と呼ぶのだと、妹が言っていた気がする。
「この世界は平和なんだね」
そう安堵した藍。きっと自分がこんな何でもない光景で嬉しくなるのは、妹の存在によるところが多いのだろう。
妹はケーキを食べる傍ら、自分が覚えているかつての世界の話をいろいろしてくれる。
同じ光景を見られて嬉しいのか、彼女の大好きな世界が存続しているのが嬉しいのか。
それとも両方か。
その魚人たちも商い中なのだろうか、サーフィーに何かを手渡すと。サーフィーは藍に歩み寄った。その手には真珠とサンゴのイヤリング。しかしそれを受け取ろうと手を伸ばしても、藍の手はサーフィーをすり抜けてしまった。
同時に藍の体をすり抜けて、藍の体より何倍も大きい鬼が、大きな荷物を担ぎながら進んでいく。彼は心優しいのだろう。あたりを歩く小さな種族全員に気を配りながら歩いていく。
「これが、二人の世界なんだね」
そう藍は微笑んだ。よい世界だ、楽しい世界だそう。思った。
そのまま二人は町の南端海の見える丘の上まであるいた。
そしてサーフィは海の先を指し示す。
「あの向こうにねえさまの故郷があります」
「その石碑はなんだい?」
サーフィは綺麗に磨かれた石を撫でる、海を見下ろせるような場所にたてられた石碑を。
「にいさまには読めませんね、こう記されています。”この国を二度にわたり救い、しかし戻らなかった黒き人魚の戦士をここに讃える。いつの日か、彼女が帰還せんことを。”と」
藍の表情が曇った。
「それは」
「そう、サーフィの記憶の限り、ねえさまは帰ってこなかった」
風が藍の頬を撫でる。
藍は目を閉じた。
その一瞬のうちにサーフィーの姿はおぼろに崩れ。磨かれた石碑に移り込むサーフィの顔は、すでに中年を過ぎていた。
いや、むしろ、あれがこの世界、時間での本来の彼女なのだろう。
「にいさまに見て頂きたかったのです。ねえさまが守ったこの国を、サーフィがその後見守ったものを」
「ああ、ありがとう、いいものをみせてもらった。あの子を誇りに思える事柄が一つ増えた」
「サーフィもまた、護りたかったのです。異なるものも受け入れる、やさしいこの町を、この国を、この世界を。いつかねえさまの帰る場所を」
直後世界が暗くなる、夜が迫り。サーフィの表情も読み取れなくなっていく。
「我が名はサーフィ。サーフィ・アズリエル。聖騎士の一人にして、誉れ高き黒い鱗の英雄の”妹”」
「あなたがしあわせを守る限り、サーフィはあなたの剣となりましょう」
その言葉に満足な回答を出せぬまま。
藍の世界は暗転する。
● それはおとぎ話
『ロザーリア・アレッサンドリ(aa4019hero001)』の過去と聞いて
『ウェンディ・フローレンス(aa4019)』は何を思い浮かべただろうか。
彼女は常に奇抜、派手好きで大仰。そんな彼女には一体いかような過去が秘められているのか。
「そういえば、ロザリーって、あちらで何をしていたのかしら。冒険をしていたのは知っているのですけど」
気になりはした。それを知る機会に恵まれた今回、ウェンディは迷わず依頼に飛びついた。
「気になると言えば気になりますわね。あまりよい知り方ではないのでしょうが」
直後埋没、精神世界にも重力があるのだろう。ウェンディが目を開くと自分は地表に向けて引っ張られていた。
穴の中を。
まるで不思議の国のアリス、その冒頭。
そして引き込まれる先も御伽噺。
ロザーリアの声が聞えた。
「これは、囚われのお姫様属性の女の子を助け出す星の元に生まれているらしい。一人の騎士の物語」
ウェンディが痛みもなく着地し、顔をあげるとそこは、御伽の国のように煌びやかなファンタジックな世界だった。
街並みが夜なのに輝いている、見上げるようなお城が立っている。
いつの間にかその目の前に立っていたウェンディは悲鳴を聞いた。
「昔々、あるところに、誰も望んでいない不幸な結婚を強要されそうになっているお姫さまがおりました」
そんな彼女の噂を聞きつけたロザーリア。
「どうも、貴女の心を盗みに来ました、ってね♪」
ロザーリアはウェンディ―の隣を駆け抜け、開かれた窓の真下まで歩む。
お姫様と何やらお話をしていた。詳細は聞こえてこない。
ただ、すぐに衛兵に見つかるとロザーリアは退避。
そんな夜が何度も続いた。何度か彼女の所に忍び込み、心を通わせていくロザーリア。
それと同時にロザーリアはその婚約についての情報を集めていた。
そして幾ばくかの日々が過ぎると、ロザーリアは姫の結婚式会場に乗り込むことになる。
姫と、王と、聴衆の目の前で、悪逆非道な手段でお姫さまをモノにしようとしていた相手方の悪事の証拠を披露した。
それは、水戸のご老公や、暴れん坊な将軍様もかくやという活躍。結婚話も消えて、めでたく膜を閉じる。
「やっぱ、お姫さまの結婚は素敵な王子様とじゃないとね!!」
そうきめ台詞を言い放つと、ろざりーの周囲に人々が集まった、そんな光景を眺めてウェンディは思う。
「まあ。さすがと言いますか」
ただ、なんとなく面白くない気もする。
「本当に、冒険していたみたいですわね。しかも、だいぶ派手に」
それは憧れかそれとも。
「そういえば、なんで女の子ばっかり??」
そこでウェンディは気が付いてしまった。ロザーリアの周囲にたむろする人々は圧倒的に女性が多い。
「そういう星の下に生まれたからさ」
ロザーリアの声が聞える。
その直後暗転。話はどうやらそれで終わらないようだった。各地で様々な身分、それこそ貧民からお姫さままで様々の様々な不幸を抱えた女の子たちを救っていくロザーリア。
その活躍はめざましく、目まぐるしい。
百発百中で解決するのはいいのだが、女の子のハートも百発百中でがっちり掴んでしまう。
おかげで、自分を慕う女の子たちに囲まれてデレデレのロザーリアだった。
「みんなどうしたの? もー、可愛いなぁ。おいだおいで♪」
その光景を冷めた視線で見下ろすウェンディ。
その時ウェンディはふと思い出す。
自分もロザリーとの契約により病魔から救い出されたのだったと。
あれも一種の囚われれのお姫様属性だったのだろうか。
その時ぷちんとウェンディの中で何かがはじけた。
次の瞬間には現実に機関し、目の前には顔を覗き込むロザーリアが。
「ねーねー、ウェンディ。どうしたのさ?」
「ふーんだ。」
「え~っ!? なんでさ~っ!?」
こうしてウェンディの大冒険は幕を下ろすことになる。
● それは、血濡れの物語
春翔は気が付けば赤い城の前に立っていた。
「これは、あいつの城?」
そう首をひねりながら慣れた足取りで城内へと歩みゆく。
階段を上り、その部屋を春翔は真っ直ぐ目指した。
赤の城、その玉座にて、そこには少女たちが集まっている。
(あれは黒いアリス?)
その広い広間の中心にぽつんと佇むのは空虚の少女。そしてその眼前に堂々と立つのが赤の女王。二人は対峙していた。
空虚の少女が持つは彼女と同じく空虚を滴らせる一振りのナイフ。その刃はあまりにむなしく蝋燭の輝きを返す。
そして少女は女王へと躙り寄る。
「ついにこの時が来ましたわ」
「”姉さん”」
その光景を見下ろす女王、その表情には唯一の表情が張り付いていた。
女王は動じることも無く、冷えた視線を愛する妹へ向ける、優しげな笑みを浮かべるのみ。その光景が春翔には異様に感じられた。
なぜか。春翔はすぐに覚る。彼女は知っているのだ。その”時”が来ることを。
「嗚呼その顔ですわ穏やかな、その笑み」
緩やかに、着実にその目前へと迫り。
「どんな壊れ方をして下さるのでしょうか?」
その刃を振り下ろす虚飾の少女。
吹き上がる血飛沫彼女に色を与える。
空虚は塗りつぶされて赤く。
返り血は天上まで高く昇って跳ね返り、玉座までも濡らした。
滴る鮮血。
それは少女と玉座を紅へ染め上げ、代わりに……。
赤の女王を空虚へと墜としていく。
「まあなんて、綺麗」
鮮やかな赤は蝋燭の光を煌びやかに返す。
それはまるで宝石のように。
「あら? 貴女、見ていたの?」
その時だった。突如少女の首がこちらを向いた。
春翔は真っ向から彼女の瞳を見ることになる。
言い知れぬ恐怖を春翔は味わった。
だがしかし、血濡れの彼女は春翔に興味を示さない。春翔の向こう側を見ているからだ。
紅に染まった女王の間。その風景の中にただ一点、一人隅で縮こまる白い少女を見つける。
「うふ見ての通りよ。大好きなねぇさまは、意地悪なおねぇちゃんが壊しちゃいました」
その笑みは恍惚に滲んでいる。一面真っ赤なこの世界と同じくくるっているように見えた。
「安心して? 貴女は壊さないであげるわ。その方が、楽しそうだもの」
浮かべる笑みは優しげで、しかし奥に視えるものは狂いきっていて
そのまま玉座へと腰掛ける新たな女王。
「今の私はそう、紅の女王よ」
そう女王が投げ捨てた刃はフロアの真ん中に突き刺さり、怯え震える白の少女、その顔を映した。
ああ、彼女は、彼女こそは……。
その時世界とのつながりが立たれた。
春翔は呻く。
「これは」
瞼をあける、しかし世界は真っ暗のままだ。アリスがその両目を両手で覆っているのだ。彼女の温もりが感じられる。
「ま、見ての通りさ。これが、私の犯した罪って事」
絶句する春翔。なんと言葉をかけていいか分からない。
「ぶっちゃけ分かっていたでしょう? 普通じゃ無いって。付き合い長いもんね」
そう悲しみともあきらめとも、絶望ともつかない声をアリスはもらす。
彼女が今どんな気持ちで いてどんな言葉をかけてほしいのか、春翔には分からない。せめて表情を見せてほしかった。
「外身を取り繕う術を得ても、結局私はそういう存在よ」
「だが、あの時……」
春翔はアリスの両手をとる。
「殆ど死にかけていた俺に、アンタは願った」
そしてその両手に力を籠めて引き寄せる。
「”生きろ”と」
春翔は暗闇の払われた視界でアリスを見つめる。ああそうだ。そう春翔は思い出す。
あの時も、アリスはこんな風に自分を覗き込んでいたんだっけ。
「それが取り繕ったモンじゃ無かったのは、分かってるさ」
そう春翔は微笑んで見せた。
「付き合い、長いからな」
「そっか」
そう素直に頷くアリス。
「っつーことで、もう暫く願ってもらうぜ」
その言葉にアリスは首をかしげた。
「ブチ壊さなきゃならねぇヤツがまだ居るからな
なるほど、そうアリスは頷くと声に歓喜を滲ませてそして告げる。
「よっしゃ! このアリスさんにまっかせなさいな!」
● それは日常からの変化
ある晴れた日の境内、風は乾き、日差しは強い、初夏と言った具合だろうか、過ごしやすく空気は澄んでいる。
その世界はパッと見た限りでは杏子の知る日本に酷似している。それは遥か昔の時代の話だが。がっしりとしたつくりの社に、神をまつる荘厳な雰囲気。
杏子はここが一瞬で、ご先祖様の住んでいた世界なのだと理解した。
そんな彼女の眼前を少女がかけていく。
お祓い棒とお札を構えたカナメが、何やら猫っぽい妖怪を追いかけ、そして術の撃ち合いをしているのが見えたのだ。
漂う緊張感、しかしそれは、討伐という感じではなく模擬戦を行っているようにも杏子には見えた。よく見れば観戦している妖怪もいるではないか。
「あれは、カラス天狗かね。あちらで将棋を撃つのはぬらりひょん。あの影はなんだろうねぇ」
告げながら杏子は無邪気にはしゃぐカナメを追いかけていく。
そのカナメが猫に背後から襲いかかられ、笑いながら転げると。天狗はそこまで、と宣言した。
その途端だ。杏子の視界がくるりと暗転する。
次いで目覚めた時には杏子は暗い部屋の中に横たわっていた。
声が聞える、僅かな油灯りが要と男女を照らしている。
あれはカナメの父である土着神・白龍と、現人神となった母・冬姫だ。
杏子はそう実感した。
彼女の言っていることは本当だったのだとこの時理解する。
杏子が漏れ聞いた声。ひそひそと声が大きくなかったために耳をすまさねば聞えなかったが、それを想像し、補足し、要約すると。
だいたいこんな感じ。
お前も大分力を付けてきたが、この地を護る者としてはまだ足りない。
そこで更なる修行の為に、こことは異なる世界への門を開けてお前を送り込む。
充分な力が付いたらまた門を開けて呼び戻すから、帰りの心配はしないで良い。
そんな言葉を神妙な面持ちで聞いているカナメ。彼女の表情は硬かった。
嫌なんだろう。杏子にはそれがよくわかった。
「あの子も苦労しているんだね」
そう杏子が思った矢先。目の前で語られた苦労は半分に過ぎないことを思い知らされた。
「あとは、修業のついでにお前の婿候補も見つけておいたらどうだ?」
カナメがため息をつくと杏子は思わず笑ってしまう。
そう、これがカナメに課せられたもうひとつの使命は『伏見家に婿に相応しい者を連れて帰る』だった。
「その世界の者を連れて帰ったら、本当に神隠しになってしまう」
そうカナメは両親にばれないようにため息をつくと、言葉を濁し、とりあえずあちらに向かうことは承諾した。
そして門は開く。僅かに引力を感じさせるその通路にカナメは振り返らずに入っていく。
次の瞬間にはカナメは空を飛んでいた。
空中に投げ出されるカナメだがあわててはいない。そのまま彼女は山奥のとある屋敷へと向けて降下を始めた。
「門……ね」
杏子はいぶかしむ。
門を抜けてこちらの世界へやって来たとみられるカナメ。
目の前に現れたのは大きなお屋敷、それと慌ただしく出入りする同じ格好をした人々。
それが杏子の中であの場面とつながった。
家宝が盗まれた事件、その直後なのだ。
カナメはこの段階ではまだ人の目に映らないらしく。
悠々と屋敷の敷地内を進んで行く、すると、蔵の前で壮年の男性と警察が話している所と遭遇する。
「わあああああ! ちょ、ちょっとまった! 切断しておくれお嬢ちゃん」
そう杏子が声を上げると、その男の顔が表現される前に映像が遮断された。
「ああ、あの事件、大変ね? 杏子?」
遙華がいぶかしむが、杏子は気が気ではない。見ばれは防がなければならない。
その一心での叫びだった。
案の定杏子が耳をすましてみれば
話の内容は、家宝の薙刀が蔵から盗まれてしまった事、犯人はリンカーらしいという事。
警察では対処出来ない事案なのでHOPE等に連絡してみるのはどうかと警察に提案されている。
そんな警察たちの前を通り過ぎるカナメ。ここから物語が始まったのである。
●夜天の魔女
「さて……私たちの求める記憶、その片鱗でも見れればいいですがね」
『東城 栄二(aa2852)』はそううだれて告げた。隣には『カノン(aa2852hero001)』横になり瞼をおろし、すでに準備万端のようだった。
「そうだネ」
二人は飛ぶ、英雄の記憶、その彼方。
英二はその光景を空から見下ろした。
長く紅い髪を持ち、黒いドレスを身に纏った魔女が騎士の軍団と一大決戦をしているそんな場面。
その魔女は一段を見すえると告げる。
「もうすぐ、もうすぐ常夜の世界になるのだから……私の邪魔はさせないわ」
中世の甲冑を見に纏った騎士たちが波のように押し寄せる。
それを魔女は魔法によって薙ぎ払っていく。そんな光景が永遠と広がった。
紙切れのように宙を舞う騎士たち。
魔女の高笑いが響く。
そんな魔女の性格は高圧的で傲慢不遜 己が目的を達成するためならどのようなことでもする。
ついに三日三晩の決戦の末、瀕死となった魔女は一人の魔術師によって透明な宝石の付いた指輪に封印され指輪の輝きは血よりも紅い真紅の輝きとなった。
● シーエ誕生秘話
「シーエの記憶ねえ」
『エスト レミプリク(aa5116)』はほっぺたに指を当ててそう物思いにふけっていた。
これから何をみせてくれるんだろう、なにが見られるんだろう。
そんな思いに裏腹に『シーエ テルミドール(aa5116hero001)』はいつも通り。
「うふふっ♪」
そうやって小さく笑っている。
そんなシーエの記憶は完全に真っ暗な空間から始まった、それは暗い部屋なのか異質な空間なのかひと目では判断がつかない。
なのにもかかわらずぼんやりと見える影があった。
それは自分の姿形。
エストは自分の体を見回すと五体満足なのを確認して安堵のため息を漏らす。
この二つだけが暗闇にぼんやり浮かび上がって見えた。
「あいつの記憶にしては随分地味だなていうか何もないじゃないか」
そう唱えながらエストは歩みゆく。だがどうだろう。歩いても歩いてもなぜかシーエにはたどり着けない。
おかしいな、そう首をひねった矢先のこと、その空間に小さな光が出現した。
はらはらと地面に舞い落ちる、眩くも力強くもなく、終わりかけで残照のような淡い灰色の光。
それによって若干ではあるが、空間が照らされていくのに、エストは気がついた。
だからこそはっきりしてくる。この空間の真相。
灯りが周囲を照らしてもなお晴れない黒。
それはこの空間が黒で塗りつぶされている証明だった。
それだけじゃない。
この空間はただ暗いだけではなく無数の黒い靄のような何かが存在しているのだ。
蠢く何か。でも不快感を感じないのはどことなく動物的な質感を漂わせるからだろうか。
ただ、黒い靄には意志のようなものは感じられない、それでも光が出現するとそちらの方向に進んでいく、ごくごくゆったりとした足取り。
そして歩み寄るとそれは、光を飲み込んでいく。
何とも不思議な光景を見た。エストはそれを黙ってみているほかないが、これは何を意味するのだろうと首をひねることになる。
サイド、光が飲まれればまた暗闇に戻り、その内また光が生まれそれを靄が飲み込む。
それがしばらく繰り返えされると、今度は光を吸収した靄が段々淡く光り始めていることに気づいた。
光を帯びた個体達はやがて塵を集めるように一つにまとまって行き何かの形を作っていく、そうして完成したものは……。
「ッ!?」
「あはっ♪」
自分の英雄シーエの姿だった。
ポンッと軽快な音を鳴らして誕生したそれはエストの胸に飛び込んでくるが、それはすり抜けて自分の向こうに走り去ってしまう。エストは本当のシーエなのかを確認した。
彼女は現実世界で会った時と寸分たがわない姿を見せている。
そんなエストも初めは動作が鈍く操り人形のようだったが段々と動けるようになる
「でも……」
シーエはまだ足りなさそうに、当たりを見渡した。その時である。
エストの背後に突如扉が出現した。
開け放たれた向こうでは猛烈な吹雪と、吹雪すら燃やし尽くしそうな強烈な炎が上がっている。
凄まじい勢いでこちら側にまで来そうなほど。
「ああ、なんて」
シーエは残った靄たちを身に宿す、そしていつもの笑顔のまま走り出す
「これならきっときっとわたしは」
そのまま飛び込むように扉の中へと入っていった。
「うふふあはっ♪ あははははは!!」
扉が閉まるまで、彼女の笑い声は続き、やがてしまった扉にて、この夢が終わりを迎えた。
(あれはなんだ?)
目覚めるなりエストは思わず頭を抱えた。
(シーエの記憶? あれはシーエの何の記憶だったんだ!?)
考えても考えてもさっぱりわからない。
そんな苦悩を抱えるエストなどそしらぬ様子でシーエはいつも通りの表情でエストを眺めていた。
「♪」
シーエが楽しそうなら、まぁそれはそれで、そう思ってしまうエストであった。
●王の残照
「王さん、本当記憶真っ白っすもんねぇ。ちょっとでも何か分かればいいっすね」
「俺としては不安もそれなりなのだがコータローは前向きだな」
英雄の素性に関して分からないのはコミュニケーション的にも、仕事的にも困ることが多い。特に『君島 耿太郎(aa4682)』さん家の事情としても『アークトゥルス(aa4682hero001)』の過去は謎に包まれており、手が付けられなかったのだ。
「いや、今から不安がっていても仕方が無いか。見ると決めた以上は期待していこう」
告げると二人は英雄の過去へと飛翔する。
耿太郎が目覚めたのは日常生活ではお目にかかれない光景の中。
場所はどこかの立派な白亜のお城。
ヨーロッパを思わせる高価そうな内装と調度品が見える。
今は昼で、耿太郎が首を回すと石造りの壁にぽっかり窓として開けられた穴が見える、そこによじ登って外を見てみると、窓の外には城門前広場を挟んでのかなり大きな街が見えた。城下町だ。
「これが王さんの住んでいた世界っすね」
意外と早く順応して見せる耿太郎。
そんな彼の背後で人が蠢く気配を感じ、振り返るとそこには大勢の人間が配置されていた。
その中心に佇むのがアークトゥルスである。
場に多々酔う緊張感、荘厳な空気。何よりアークトゥルスは傅かれていて、まさに王様と言える雰囲気を醸し出していた。
威厳と高貴さが普段の3割増しである。思わず耿太郎は自分の記憶の中のアークトゥルスと、目の前のアークトゥルスを見比べた。
「キラキラっすドキドキっす。今の王さんもすごいのにさらに盛り盛りっす」
「そ、そこまでか」
突如響くアークトゥルスの声。目の前のアークトゥルスが喋ったのかと思ったが違うようだ。
どうやら共鳴状態と近しい状態であるらしく念で会話できるらしい。
「それで、思い出したっすか?」
「まだ、曖昧だ」
次の瞬間、世界はめまぐるしく流転する。
その場の光景として流れ込んでくるのは、王様の一日のダイジェストのような記憶。
朝目覚め、身支度をし、届いた手紙に目を通し、謁見を済ませ、各方面へ指示を出す。
一つの予定が終わったとみるや次の仕事に取り掛かる、多忙な様子が垣間見える。
常に人に囲まれているが、その中には見知った英雄の姿もちらほら。
「みんな王さんの騎士だーって言ってたっすが本当だったんっすね」
「疑っていたわけではないが、正直少しほっとしたな」
告げるアークトゥルスはなんだか少し嬉しそうだった。
それだけでもここに来たかいがあるというものだ。そう耿太郎は感じる。
また多忙な王にも休憩時間は必要で、食事やお茶会が開かれることもしばしばあったようだ、そこでは同じ女性が顔を出す。
彼女は、大層花のある美人で少し幼さも見える笑顔が魅力的な女性。
周りからの扱いやアークトゥルスの扱いから見るに恐らく王妃だろう。
「そうか彼女が」
「多分結婚してるって言ってたっすもんね」
「あぁ。こうして知ることが出来てよかった、本当に」
流れていく暖かな記憶。
しかし、廊下から城門前広場を望むその記憶だけは異質だった、城門付近の人だかりを見つめるそのアークの表情だけは、他の記憶と違い共鳴時と同じように冷え切っていた。
「何っすか今の……」
その言葉にアークトゥルスは答えない。
沈黙のままに夜がきて。そして城中の明りが消えて、物語は幕を下ろすのだ。
* *
そんな光景を耿太郎は眺め終ると、久遠に続く精神世界の光の中で身をよじってアークトゥルスを探す。
このまま現実世界に帰還することもできるのだが、耿太郎としては別の英雄の記憶も気になっていた。
「行くのか?」
静かに問いかけるアークトゥルス。その言葉に耿太郎は頷いた。
そう開かれている門、精神のゲートに手をかける耿太郎。そのゲートの先には多数のリンカーが集まっており、この先に存在する悪夢を見つめる気でいるようだ。
「他の世界ってやっぱり気になるっすよね」
その列に耿太郎も加わることとした。
視界が闇と塗り替わる。
● 闇の中でくすぶる。
視界が真っ赤に染まる。それは比喩としてではなく現象として。
眼球に圧が加わったことによる内出血。
その体は重たく倒れた。
それが、彼の始まりの記憶である。
「ごめんね炬鳥介くん?」
見上げる形相、髪を振りかざす女性。彼女が恋人だという事はなぜかわかった。
バットを振り上げる女性。
ただ、その地に濡れたバットは自分に振り上げられることはなく、目の前の他人に振り下ろされている。
そう、叩き潰される頭は彼ではなく仲間や父と母と妹らしき人物のだ、仲間の一人や弟もバットを振上げている。
これはなんだどうしたことだ。
燃衣はその超常的情景を必死に頭の中で処理すべく唸った。
――全ては『魔神イヴウィル』の仕業だ。
声がした、それはネイの声。
「イヴウィルは人心を惑わす存在。奴は囁いた『こうすれば命は助ける』と。その影響でこの祭りが出来上がっているわけだ」
同じだ。そう燃衣は感じた。
自分と同じ。
自分が受けた仕打ちと同じ。
燃衣の怒りは全身を駆け巡る。しかし。
体は起き上がることなく、そのまま燃衣は記憶を失ってしまった。
「これは誰の記憶なんですか」
燃衣は暗闇の中で叫ぶ。
「僕が入っていた人間は誰ですか」
――お前自身に決まっているだろう。燃衣!
次いで眼前に広げられたのは燃え盛る大地、それを歩み進んでくる者。
彼の半生を燃衣は知っている、見てきたかのように知っている。
彼はあのかと、脳に重大な損傷を負った彼は魔人として目覚めた。
記憶も感情も大半を失い、残ったものは殺意のみ。
恐怖も苦痛も愉悦も無い、ただ怒りのみがある。
加えて謎の『声』それは神か己か怨念か定かじゃないが声を受信する力を得る。
『敵ヲ屠レ、虐殺セヨ』
声に従い殺す、殺す、殺す。
立ちはだかる者は引き裂き、背を向けた者は貫く。
亡者の群を打ち払い、生者の群に背を向けた。
殺さねばならぬ故に殺す。
戦える筈の体では無い……だが寿命を代償に駆け抜けた。
「死ね、よみっとも、なく」
人も異形も、敵となった仲間も恋人も弟も。
命乞いをする敵も、可能な限りの苦痛を与えて殺す、殺す。
彼は炎を纏った。己すら焼き尽くす炎。
それはやがて理性さえ蝕む炎。最早殺す故も分からない、だが迷いは無い。
その姿を燃衣は見て。恐怖すら感じそうな狂気を間近で感じて見ても、燃衣はずっと笑っていた。
そして全てが終わった後に、飛空艇の甲板でソラを眺めて死んだ筈だった
燃え尽きたように死を迎えたはずだった、けれど。
「テメェは間違ってやがる従兄弟として、ここで止めるぜ、テメェを」
突如視界は塗り替わる。
燃衣が対峙するのは炬鳥介と呼ばれた青年に似た雰囲気を持つ男。
黒髪で、額に長い白鉢巻を巻いた不良風の男だった。
だが明らかに炬鳥介とは違う雰囲気を彼は持っていた。
善性を示す炎の瞳と、炎の左腕、炎の翼を持つ男。
「奴は小隊長で、沢山の仲間が居た」
燃衣の隣で炬鳥介が語る。
「たった一人の俺は負けた」
その拳がぼろぼろと崩れ始める。
「俺は敵に勝つ為に万の命を力の糧にしようとした、奴は違った」
その言葉に頷いて燃衣は炬鳥介と向き直る、その姿は溶けてほどけてネイへと変わっていった。
「スズお前はこの男の生まれ変わりだ」
その言葉を最後に映像は途切れた。
そこにはただただ頭を抱えて座り込む、燃衣の姿だけがあった。
● 姫騎士の夢
「これはラシルの小さい頃の姿でしょうか?」
由利菜は花畑に降り立った、当たりには輝かしい日差しが下りており、まるで由利菜を祝福するように花々が咲き誇っている。
ただし由利菜はそれがすぐに、自分のために咲いているわけではないとすぐに理解した。
由利菜の視線の先には少女が佇んでいる。彼女こそリーヴスラシルその幼少期の姿だ、およそ十歳ほどの少女に見え。今と比べ髪を結っている。外面的な性格は、現在と大きくは変わらないようだが、それでも可愛らしく感じてしまう。
――宝石の時とも違う光景だ。今まで思い出した私の記憶の中でも、幼少期のものはまるで見当たらなかったが。
その光景をリーヴスラシルも一緒に見ているのだろう。そう彼女の声が降ってきた。
ここはミッドガル
リーヴスラシルの生きていた世界。
概ねこちらの世界に伝わる北欧神話に準じた世界観のようだ。
神話の神々、そして戦乙女、類似点がいくつも見られる。
ただし既に神々の終焉を越えて長い時が経ち、神々はいないとされているようだ。
文明としてはルーン魔術を基盤とする魔法文明が発達している、ライヴスは『未知なる力』として近年発見されたばかりで、まだ実用段階ではない様子だ。
――だんだんと思い出してきた。そう、これは間違いない、私の世界だ。
普段きかないような声音を由利菜は耳元で聞いた。
そして由利菜はその世界を眺めて歩く。扇動するように幼いリーヴスラシルが駆け抜ける。
場面は移り変わり、ミッドガルドの城下町。
――ここが私の家だ。
そう由利菜が見上げる門扉は堅牢で、店内は清潔に見える。
そう、ここはミッドガルでも有名な食品店。リーヴスラシルはパンと魚の食品店を生家の出だ。ただ、その本質は神の血を引く戦乙女。そのことを知らず育ったラシルは、出来立てのパンをほうばっている。
「可愛いですね」
――そうだろうか?
ただ、リーヴスラシルは可愛いだけではない。この頃から既に万能超人っぷりの片鱗が垣間見える
「料理はパパやママに言われた通りやればいいだけ。簡単」
「パパ、今日もヴァニル騎士戦技の稽古をして。元はお城の騎士様だったんでしょ?」
そう朗々と語る少女は畏れを知らず、活発な少女に見えた。
――そんな私の生活も突然終わりを告げた。
次の瞬間吹き飛ぶ街並み。嘘のように一瞬で光景がぬりかわり、地平線を埋め尽くすような軍勢がはるか先に見えた。
その兵士達は明らかに雰囲気がおかしく、従魔に取り憑かれたかのような状態で父の攻撃が通じない。
「待ちなさい!」
剣を抜こうとする由利菜、しかしそれをリーヴスラシルは制した。
――もう、変えられない過去だ、それに。
リーヴスラシルはこの後の展開を覚えていた。
リーヴスラシルが兵士達に連れ去られそうになった時、兵士達のライヴスを取り込む形でラシルの神性を現す『光の翼』が発現。
翼で凪がれた兵士の一部は正気を取り戻した。
しかしラシルの両親が、残った他の兵士達に連れ去られる。
大切な物を失ったリーヴスラシルは悲しみにくれた。自分の無力さを痛感したラシルはそして、騎士を目指すことを決意
「さっきの力が何かよく分からない。でも、騎士様みたいにもっと強くなって、あれを意識的に発現できるようになれば!」
そう願い。思う心が彼女を数奇な運命に引き入れる。
だがそれを語るのは別の機械であるらしい。
なぜなら、その場面で、由利菜の意識が途絶えたからである。
●嫉妬
それは、妖精たちの修正のお話し。
突然だが、妖精は悪戯好きなのにもかかわらず、チェンジリングは滅多にしない。
それはなぜか、取り替え子の扱いに困るからだ。
「私が抱いているこの子も他の妖精が持ってきた挙句興味を無くして放置する前に引き取った」
妖精なんてそんなものだ
そうアイリスは全員の目の前で笑った。
淡く輝くアイリスを中心に森が広がっていく、彼女が歩むたびに森が生成される、その奥の奥で、鳴き声が聞こえる。
「ああ、こんなところにいたのか○○○」
アイリスはそのものの名をよんだが、イリスにはそれがノイズにまみれ。まったく聞こえなかった。
「お姉ちゃん」
イリスの表情を不安が彩る。
そんなイリスに背を向けアイリスは何者かを抱え森を闊歩する。
その抱えた何かにすらノイズがかかり、イリスにはその正体がつかめない。
「お姉ちゃん、それ、だれ?」
先ず、アイリスはその子の世話をするために古い友人の元を訪れた、その友人であれば人間の育て方を人間の育て方を尋ねにいった。
それは始まりの妖精の一人。
神の扱った原初の本の化身。
彼、もしくはそれが告げるには人間と妖精は姿が似ているが中身は全然違うらしい。
食事も睡眠も排泄も必要なのだとか。
私は■■■■■■■■■
その耳障りな音に、イリスは耳をふさぐ。
「え? お姉ちゃん、分からない、何を言ってるか分からないよ」
妖精には珍しい名前持ちだ
親しいのは■■■やそのまま”黄金”と呼ぶ
「私は、この子の名前は■■■にした。瑠璃色の瞳をしていたからだ」
妙に砕けて、散り散りな記憶。他の世界を渡り歩いてきたイリスは予想した。この記憶は、アイリスの記憶はこの世界に飛んでくる衝撃で吹き飛んだわけではないのではないか。
元からアイリスの記憶は破損していたのではないか。
そこから映像はさらに荒くなる。
色味を失い、形を失い、画面が揺れる。
そんな映像でもイリスには、長い年月が目の前で過ぎたのだとわかった。
「妖精に時間間隔はない」
木々のざわめきのように、アイリスの声がいたるところから聞こえた。
薄暗い森にイリスはいつの間にか立っていた。
「季節なんて気づけば変わっており」
木の葉が荒れるようにぶつかり合う、まるで森全体がイリスを威嚇しているようだった。
心細さを感じる、ここでイリスは初めて姉の姿が隣にないことを感じた。
実感した。
イリスはあたりに視線を巡らせる。必死で。
しかしその視界に入ったのは愛する姉の姿ではなく、一本の大樹。
新芽が気づけば大樹になっている。
「仲間が悪戯に失敗して報復で消滅しても気にも留めない」
「お姉ちゃん、仲間ってなに? それにこの、風景は」
「妖精なんてそんなものだ」
風が全てをさらった。そして戻ってくるのは再びあの風景。
アイリスが何かを抱えて森の真ん中で佇んでいる。
「しかし最近の私は時間をしっかり認識している」
アイリスが口ずさむその言葉はいつものように無感情に聞こえる。
けれど、普段より硬質で。
「違うなラ■■を認識しているのだ」
アイリスは前髪をわける。視線を手元に向ける。
その指から滴らせた妖精の蜜を、それにしゃぶら、そしてお腹を満たして眠そうなこの子に子守唄を聴かせている。
そんな彼女の表情にイリスは見たことのない表情を見つけた。見つけてしまった。
そんな幸福な日々が続く中ある日。
アイリスが大切にしているそれに異変が沖田。
「すくすくと育って私の背を抜いたラピ■だが高熱を出した」
落ち着き払ったアイリスの声。
苦しそうな声を漏らすそれにアイリスは手をかざした。
「しかし私は黄金の祝福を持つ妖精。黄金とは完全であり。黄金をもって黄金へと至らせるのが黄金の祝福」
まるで太陽でも生じたかのようにアイリスの手、その前に黄金の塊が出現した。
「私の羽から生成される蜜は黄金の祝福で満たされている。
その蜜で作られる秘薬はあらゆるものを黄金へと至らせる。
完全な体調へとすぐに戻る。
黄金の前にあらゆる病も呪いも意味をなさない」
やがてその光が収まると、それは安らかな寝息を立て始めた。
「まぁ、気合を入れすぎて不老不死にしてしまった完全すぎたがね」
そうイリスを見つめてアイリスが告げる。
「原初のに凄い怒られたよ、だが、ラピスも笑っているし問題はないのではないだろう――
その時、唐突に回線が切断される。
目覚めるイリス。その表情は穏やかではない。
自分と姉との生活を他の娘で焼き直しされているようで面白くないのだ。
(違う僕が焼き直しなんだ)
そう気が付いてしまったから、イリスは強引に切断を切った。
アイリスの過去とつながった装置の回線をひきちぎった。
(これはただの嫉妬……。僕だって、僕だって特別だ、でも)
ギュッと拳を握って膝を見つめるイリス。そんな彼女は誰にも分からないようにつぶやく。
「特別の中でも、もっと特別でありたいと思ったらわがままかな?」
● 本当にお姫様?
『柳生 鉄治(aa5176)』は悩んでいた。
(記憶を覗く。やってはいかんのだろうが)
ごくりと生唾を飲み込んで『マリアンヌ(aa5176hero002)』が横たわる隣の席に腰掛ける。
彼女の記憶にダイブする、それはお互いが全く想像もしなかった体験をすることになる。結果いかんによっては気まずくなることもあるかもしれない。
でも、それでも。
(知りたい、マリアンヌの過去を)
次いで飛びこんだ彼女の世界は教科書でよく見たあの時代だった。
それはまだ石器を扱う人々が闊歩していた時代の、後にフランスとなる地域。
腕の良い狩人として知られる青年が、夢でとびっきり綺麗な女を見たと、粘土をこねていた。
その粘土こねは、飽きることなく続けられた。町中の人間から変人と呆れられても続けられた。
「マリアンヌ、出て来ねえな。つうか、これ、いつの話だよ。」
そんな光景を永遠と見せ続けられた鉄治。呆れて疲れ果て、木陰で横になっていると、その狩人の青年がいきなり声をあげた。
「できたぞ!」
技巧も何もないはずの青年。彼によって何日もかけてできたその像は不思議な迫力に包まれていた。
まるで太古のヴィーナス像のようなソレ、それが空気に触れると突如。空が揺れて。不思議な光が象から発された。
「おいおいおいおい!」
あまりの超展開。狩人の青年と鉄治は同じ呆けた顔をさらしながら事の次第を見守る。
まるで何者かが召喚されようとしているみたいである。
これは世界の終りが始まったか?
そう思った瞬間。
ポンッと軽い音がして、血に足をつけたのが。そう。
マリアンヌである。
マリアンヌ生誕。
良く磨かれた貴石と、当時としては最上級の毛皮に身を包んだ。見目麗しい高貴な姿。
それこそ、鉄治が毎朝見ている彼女と変わらぬ輝かんばかりの美女としてこの世界に厳戒した。
「ウソだろ。マジで女神様みたいじゃねえか」
おんなじようなセリフを狩人が吐くと、マリアンヌは鈴を鳴らしたような声の女性はひとたび村に赴くと、全ての村人をひざまずかせた。
そう、この村の全ての人々全員である。
ひいては国民全員がそうした、そうなった。
その美しさとカリスマ性にへたり込み、従属し、崇拝し始める人々。
ただし、当の狩人の青年だけはそんな気配を微塵も見せなかったのだが。
「ちょっとアナタ、態度が大きすぎるんじゃない?」
「いや、態度でかいのはお前だろ」
従属してくれる人々には星の見方や動物の習性などを教えてあげるが、青年にはつれない態度を取り続けるマリアンヌ。
それは彼が真に隷属していないための行動。
ただ、青年がマリアンヌを嫌っているのかと言われるとそうではない。
青年にとっては憧れの存在らしく、意を決して嫁になってくれとマリアンヌに幾度となくアタックするも、瞬殺され続ける。
そんな月日がいくばくか続いた。
そして、長い年月繰り返すうちに、その行動も無駄ではなかったのだと示される時が来る。何度もアタックし続けるとほだされてきたらしく、ついには受け入れ、結ばれるマリアンヌ。
「マジで? 落ちるの?アイツ」
絶句した鉄治。
その後、マリアンヌの寵愛を得た青年は、周辺で並ぶもの無き強者として成長を遂げる。
「そういや、アイツの持ってる石の剣、ストームエッジでたまに出てくるな。」
その後、十二勇士と浮名を流し、トリスタンやランスロにはなんと振られるなど、様々な光景が矢継ぎ早に鉄治の頭へ流れ込んで。
そして。
「おう!」
容量オーバーで鉄治は跳ね起きた。
脂汗をぬぐって隣を眺めるとそこには寝息を立てているマリアンヌがいた。
その光景を眺めながら鉄治は罪悪感に胸を焦がすのだった。
● 閉幕 残火
全ての世界を巡った後。その翼の炎は弱くなっていた。
「気はすんだか?」
カゲリがそう問いかけるとナラカは首を振る。
最後に見せるべきものがあると、カゲリを飲み込んだ。
それは膨大な記憶の残影、それは焔の鷲がそれこそ世界を股にかけて人々の意志を導く物語。
鷲は幾度も幾度も人を導く。
頭を垂れるな前を向け、その先には必ずや光があるのだと。
より良い明日を求めるなら、諦めるなと。
――そうして鷲は、その果てに同属たる神々の総てを滅ぼしたのだ。
総ては子等の未来の為に。
神の強いる秩序など不要、その求めるままに進むが良いと。
嘗ては純粋な使命感。
然し今は人に近しき身を得たが故に欲がある。
総てを見透す天眼はなく、何処へでも飛翔出来る翼もない。
その身に限りがあればこそ、欲は際限なしに肥大化していく。
試したがりとはその発露。
――そう、邪英化してでも、己を災禍と成してでも、子等の輝きに魅せられたいのだ。
総ての神を滅ぼした、最後に残った神に。
神など不要と、汝等からそう言って欲しいのだ。
でなくば親離れと言うには遠く、子離れも出来ぬではないか。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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