本部

珍従魔ハンター番外編:巨大化畑!

紅玉

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2017/10/23 19:03

掲示板

オープニング

●秋
 アナタにとって秋は何の季節ですか?
 台風?
 運動?
 読書?
 食欲?
 それとも『仕事の夜勤とか休日出勤は嫌だー!』?
 泣いても、笑っても、時間が時を刻み、カレンダーは気付けは次の月になっている。
 しかし、この時期は人でもなくとも忙しい。
 冬に向けて蓄える動物達、実りの秋で収穫が忙しい農家達。
 のんびりと過ごしたい、のんびりと実りの秋を祝って食べ尽くしたい……なーんて、そんな甘い事は簡単には出来ないのがH.O.P.E.のプリセンサーである。

 黄金色の平原、空は晴天で見渡すと世界が無限にあるかの様に感じた。
 そんな光景から畑の風景に切り替わり、不穏で禍々しい複数の影が畑に飛び込んだ瞬間、カボチャや芋等の野菜にみずみずしい葡萄がドーン! と畑の中から巨大化して飛び出した。
(美味しそう……)
 このプリセンサー、異常な光景より食欲に負けてしまっているのである。
 巨大なカボチャは、ジャック・オ・ランタンの様な顔にツルのマントをひるがえし農家達をツルで捕まえる。
 他の巨大な野菜達も同様にツルを伸ばしたり、デンプンを撒き散らしたりして農家達からライヴスを奪おうとしている。
 そして、みずみずしい巨大な葡萄はワイン蔵を破壊して、農家達をワイン樽へ入れて蓋を閉めて巨大なストローを差し優雅に発酵されたワインと共にライヴスの飲む。
 共食い? そんな事を考えてはダメ。
 なんだって相手は人でも植物でも動物でもない、野菜や葡萄の姿をした従魔ですから!
「はっ! 明日、地元の収穫祭に行こう」
 現実に戻ったプリセンサーは、うんうんと頷きながら先程見た光景の情報を纏め、従魔が関わっているのでエージェント達に依頼を出した。

●食べ放題!?
『ぷ、ぷり、ぷりなんたら、感知したー。巨大野菜、畑で暴れて、農家のライヴスを咀嚼(ソシャク)だから、巨大野菜を、食べに、行こ?』
 弩 静華がアナタに向かって言う。
 え? 何? 状態だったが、静華が持っている依頼の用紙が目に入った。

 依頼:巨大化した野菜や葡萄が農家の人達を襲うのを、プリセンサーが感知しました。
 場所は、フランスのとある農業が盛んな町に詳しくはオペレーターまで!
 倒した野菜や葡萄は、売り物にならないので食べても良いそうです。
 (私も食べたい。プリセンサーより)

 プリセンサーさん、心の声が駄々漏れ……じゃなくて! そんな事を書いて良いの? と、思いつつアナタは悩んでいる、と。
「ごめんなさい。静華様、これは私のお仕事ですわ」
 ティリア・マーティス(さんじゅういちどくしん)がやって来て、丁寧に依頼の説明をしてくれた。
「と、いう事ですから、お手空きでしたら討伐の依頼をお願いします」
 と、言いながらティリアはアナタに微笑んだ。

解説

【目標】
巨大野菜の討伐
秋の味覚を食べ尽くせ!

【場所】
フランスの農業が盛んな町(昼)

【敵】
従魔『カボチャ』(3体)
ミーレス級。全長2m、美味しそうな南瓜にジャック・オ・ランタンの様な顔が彫られている。
浮游しており、ツルを使って攻撃や束縛をする。

従魔『ポテト』(3体)
ミーレス級。全長1m、ほくほくして美味しそうなジャガイモでモアイ像の様な顔が浮き出てる。
デンプンを撒き散らし、体はベトベトになりとても気持ち悪いだけだが、時間が経つと何故か服が溶ける!

従魔『パプリカ』(10体)
ミーレス級。全長30cm、何処かで見たことある顔が書かれている。
ぴょんぴょん跳び跳ねながら群れで迫ってくる。

従魔『グレープ』(3体)
ミーレス級。全長3m、1房の葡萄にツルで手足が生えている。
顔は沢山ある粒の1つらしい。
力持ち、葡萄の粒や皮を投げて不快な気持ちにさせる。
ワインを飲むと何故か回復する。

【討伐後】
静華が調理出来る場所を手配しています。
町の農家に言えば、討伐したお礼に食材を分けてくれます。

【NPC】
同行していますが、指示がなければ待機しています。

リプレイ

●実りの秋
 流れる雲、透き通るような青い空にふわふわと浮かぶ雲は流れゆく。
『実り豊な、良い季節になったのぅ』
 秋風を体全体で受けながらサルヴァドール・ルナフィリア(aa2346hero002)は言った。
「えぇ、この時期は美味しい食材が豊富で、お料理の幅も広がりますし、毎年楽しみなんですよ」
 花邑 咲(aa2346)は町いっぱいに作られた畑を眺めながら嬉しそうに答えた。
「嫌な予感はするけどね」
 と、圓 冥人はため息を吐いた。
「礼は私が作った料理のおかわりトッピング自由だ」
 オルクス・ツヴィンガー(aa4593)が冥人を見付けると声を上げた。
『具材の大きさも選ばせてやろう』
 竜の様な見た目のキルライン・ギヨーヌ(aa4593hero001)は、腕を組みながら力強く言う。
「そんな事を言わなくても、俺はオルクスの言う事には従うよ」
 冥人は肩を竦ませた。
 すると、畑の野菜が宙へ飛び出したかと思うと巨大化した。
『フランスの野菜は大きいんじゃなぁ……』
 その光景を見たサルヴァドールは感嘆の声を出す。
『……しかし、食べ応えはありそうじゃの』
 先に畑へと向かっていたエージェントと野菜の大きさを見比べながら、サルヴァドールは『何人分の料理になるのだろうか?』と考えた。
「ふふっ。そうですね」
 サルヴァドールの言葉を聞いて咲は思わず笑みをこぼした。

『これは素晴らしい。きっと我等が神の降り来たるのも近い筈……さぁ、収穫を致しましょう』
 大地に新緑の葉が生い茂るかの様な髪と肌のディエドラ・マニュー(aa0105hero001)は、巨大化した葡萄や野菜を見上げながら喜びの声を上げた。
「土仕事かね? あぁ、余り汚さずに返してくれ給えね。食前酒の頃に起きるとしよう」
 ワインにしか興味の無いティテオロス・ツァッハルラート(aa0105)は、ディエドラに釘をさしながら共鳴すると主導権を渡す。
 艶やかな紫色の大きな粒、一房にその粒が沢山実りそのまま口に入れてしまいたいがかなり大きいので難しいだろう。
『ワイン用の品種なのか分かりませんが……ティテオロス、味見してみますか?』
「私は完成品にしか興味は無いよ。呑み尽くされる前に搾ってしまえ」
 ディエドラの問いにティテオロスはため息を吐いた。
『それでは、私が味見します』
 と、 トライド・グロウスヴァイルを手にしたディエドラは、地面を蹴って巨大化した葡萄へと向かって駆け出した。
 びったーん! と、ディエドラの顔面に葡萄の皮がぶつけられた。
『うぐ……っ! とてもいい出来の葡萄です』
 葡萄の皮を顔から外すとディエドラは、顔に付いた果汁をペロリと舐めると満足気に笑みを浮かべた。

「さて、初御目見えって訳でもねぇが……」
 麻生 遊夜(aa0452)の視界には言い表せない顔が付いたパプリカが跳ねている。
『……ん、この子の出番』
 その隣でユフォアリーヤ(aa0452hero001)は笑みを浮かべながらアルター・カラバン.44マグナムの銃身を優しく撫でた。
「さっさと収獲して土産にするか」
『……ん、食べたいみたい……だから、ね』
 遊夜の言葉を聞いてユフォアリーヤはこくりと頷いた。
 1個、1個は小さいけれども他の野菜と比べれば数は多い、ならばこちらも手数を増やすのみだと考えた遊夜は素早い動作で3体の巨大パプリカを撃ち抜いた。
『……むぅ、相変わらず……すごい衝撃』
 と、ユフォアリーヤが感嘆の声を上げながら尻尾がピーンと千切れんばかりに伸ばす。
「こんなもんか、威力も…まぁ、見合ってるかね」
 銃を撃った反動で手を痛めたのか、遊夜は手首を振りながら茎が付いていた部分を中心に吹き飛んでいた。
「こっちは正真正銘初御目見えだ、光栄に思いな!」
『……ん、全力で……行く、よ?』
 遊夜が声を上げるとユフォアリーヤは口元を吊り上げた。

「ヴィランズに変身するぞよ」
 ヴァイオレット メタボリック(aa0584)が言うと、ノエル メイフィールド(aa0584hero001)がこくりと頷ぎバッとシスター服を脱ぎ捨てた。
 その下にはお揃いの全身ヒョウ柄のコートに下着やガーターベルトを着ていた。
 異様である。
 畑の真ん中で初老の女性2人が紫と灰色の派手なコートを身に纏い、そして噎せ返る様な香水のニオイ。
 その姿はどうやらヴィランズとしての姿の仮装、というコンセプトだそうだ。
 ヴァイオレット、その名の通りに赤紫の肌に昔負った火傷のゆえに髪は無く、ワシ鼻から息が荒々しく吐き出されてギョロっと血走った眼で巨大化したジャガイモを見る。
「おぉノエルよ、とてもそちらしい姿ぢゃぞ」
 と、ヴァイオレットが義姉のノエル姿を見て賞賛の声を上げた。
『とてもケバケバしくなったがあやつらの言うヴィランズに変わって見せよう』
「う゛ぁひゃっひゃっ、孤児院の子らに退治されるのがたのしみぢゃ」
 ノエルの言葉にヴァイオレットが答えると不気味な笑い声を上げた。
 従魔ポテトがぽーんと土の中から飛び出すと、真っ直ぐ2人に向かって駆け出した。
「ノエル姉者煙幕をするのぢゃ」
 共鳴するとヴァイオレットが声を上げた。
『これなら何があっても大丈夫じゃな』
 特殊な催眠ガスを発生させ、畑は白いモヤに包まれるのを確認するとノエルはインドラの槍を手にする。
「ついでじゃ、その槍で芋を芋ハンにしてしまうのじゃ」
『ぶぅひゃっひゃっ、了解じゃ』
 ガスで視界が悪い中、ノエルは少し柔らかい畑の土を蹴って従魔ポテトと距離を詰める。
 まずは巨大なジャガイモを半分にするが、真っ二つにされた巨大なジャガイモからデンプンがブシャーと飛び散った。
「プリセンサーのおかげで対策済みじゃ!」
 デンプンで濡れた熟女はたまらない、何て言う人もいるだろうが誰が望んだであろうか?
 ヒョウ柄のコートが徐々に溶け、危うく人前で大変なモノを見せてしまうところであった。
『じゃな、お腹空かせたプリセンサーにお土産を持って帰ってあげるのじゃ』
 地面に倒れた巨大ジャガイモにノエルは、インドラの槍の先で器用に断面を掘って芋ハンにしてしまった。

●野菜の従魔はセクシーを好む?
『肉と卵は特に多めに』
 と、キルラインが言うと。
「羊肉は癖があるぞ。ギネスシチューの方がよくないか」
 オルクスが肩を竦めた。
『両方だ。駄目だったら我が羊肉を食う』
 キルラインが口元を吊り上げると、羊肉の塊に視線を向けた。
「此処はフランス、俺のオススメは鹿肉か熊ってところだね」
「鹿は兎も角、熊は獣臭さが凄いだろう?」
 冥人の言葉にオルクスが問う。
『熊肉に合う香辛料を使えば、臭さは抜けて誰でも食べれるようになります。特にハチミツ』
『ダメだったら我が食えばいい話だ』
 壱夜の説明を気にせずにキルラインは腕を組みながら言う。
「何か煙たいと思ったら……」
 オルクスはそっと視線を反らす。
 熟女のセクシーな下着姿が見えた、気がした。
 ううん、見えたのを見なかったことにしたいそんな青年・オルクスの前に何処か青い巨大なジャガイモが現れた。
「はいはい」
 冥人がオルクスと巨大なジャガイモの間に入る。
「フラッシュバンを!」
 と、オルクスが声を上げるが。
『持ってきてないぞ』
「あ……ええい! 作戦変えて、とりあえず攻撃だ!」
 オルクスがオートマチックの銃口を巨大なジャガイモに向けた。
 目にも留まらぬ早撃ちで2体の巨大なジャガイモを撃ち抜く。
「ノエル、此処は俺達に任せて他を」
『それじゃぁ、巨大化した葡萄の方に行かせてもらうのじゃ』
 共鳴姿のノエルはサービスシーンと言わんばかりに下着にガーターベルト姿だが、冥人は気にした様子も見せずに話す。
「見ない様に目を隠したらポテトを倒せない……」
『背にして戦えば良かろう』
 キョロキョロと視線をあちらこちらへと向けるオルクスに対し、キルラインはため息を吐きながら答えた。
「そうか、その手があったか」
 セクシーな熟女が見えぬよう背を向け、オルクスはオートマチックの銃口を巨大なジャガイモに向けると精神を集中した。
 一個の巨大なジャガイモに焦点を定めると、ストライクで銃口から鋭い一射が放たれた。

『これは食いでがありそうだぜ! 待ってろウチのガキども、プリセンサーさんとティリアさん! 究極のカボチャスイーツをごちそうしますよ!!』
 珍しい野菜の従魔と聞いてワクワクしてる男・バルトロメイ(aa1695hero001)は、巨大化したカボチャを見て少年の様に瞳を輝かせながら駆け出した。
 共鳴姿はダイナマイトボディーでちょっと筋肉質な女性だが、そこは気にしてはいけない。
「はい、ほくほくのカボチャをいただきましょう!」
 ティリア・マーティスが嬉しそうに微笑むと、何かフラグが立った様な気がした。
 ツルで編みこまれたマントを翻し、巨大なカボチャはツルを複数伸ばす。
『(わざと捕まったら間合い詰められるんじゃね?)』
 バルトロメイはドラゴンスレイヤーでツルを切り裂きながら思う。
 再び伸びるツル、それに対しバルトロメイは棒立ち状態になっているとティリアが慌てて庇う。
「ちょ、ちょっと、そんなに締め上げられると痛いですわ」
 ぎちぎちとツルがティリアの体を締め付ける。
『つか……どんだけ開くんだよ! 脚!』
 もう何処のグラビアだよ! と思う位にバルトロメイはM字開脚しているが、当の本人はセレティア(aa1695)の関節が柔らかい事に気が付いて声を上げた。
 もう、どっちを見てもパイスラ状態で揺れるメロンは実りの秋だから仕方がないね!
 耐性の無い男性が居たら一発KOな光景に、カボチャは頭から湯気を出しながらヒートアップする。
『これ以上は蔵倫が許しても俺が許さない!』
 と、吠えるバルトロメイ。
 蔵倫とやらは分からないが、何か大きくて力のある組織な気がするのは確かだ。
 手足は縛られ動かせない、となるとヌアザの銀腕に【Lucifer<リュシフェル>】と銘が彫られたガントレットからビームが射出された。
『ティリアさん! 今、助けます!』
 ツルをビームで焼き切り解放された英雄界の刺客・バルトロメイは駆け出した。
『くらえ! 某レシピサイトで学んだ主婦の知恵!』
 と、声を上げながらバルトロメイは南瓜をドラゴンスレイヤーで2つに切る。
 体重を掛けてドラゴンスレイヤー(巨大な包丁)を回して切る!
「あらあら、流石バルトロメイ様ですわね」
『ど、どう……いたしまして』
 褒めるティリアの言葉を聞いて、バルトロメイの大きな体が小さく見える程に少し照れながらお礼を言った。

「あら……こんがり美味しそうに焼けてしまいましたね……」
 ブルームフレアで焼けた巨大なパプリカを見て咲は呟いた。
『うむ。美味そうじゃな』
 食べたいのをぐっとこらえながらサルヴァドールは答えた。
「シンプルに素焼き、というのも良さそうですね」
『うん? 素材そのままの味を楽しむ、というやつじゃな』
 咲の言葉を聞いてサルヴァドールはうんうんと頷いた。
「っつぁ! こいつはキツイな……切り札ってことにしとくか」
『……ボクも、ボクもやる!』
 遊夜は痛む手を押さえながら言うと、銃で風船のように弾けたパプリカを見て興奮状態のユフォアリーヤが声を上げた。
「おいおい、武器もスキルも今は使えな……」
 と、遊夜は言うが。
『……とー!』
 知り尽くしている相手の事、油断させるなんて朝飯前と言わんばかりにユフォアリーヤが主導権を握った。
 あーっ! あれは! リンクブレイブサービス開始2周年を祝して作成された金のジャスティン像だ!
 何と去年作られたジャスティン像とは少しポーズが異なっており、何故か鈍器として使える品物である!
 ユフォアリーヤが幻想蝶から取り出したソレを無慈悲に振り上げると、巨大化したパプリカ達に向かって振り下げた。
 あぁ、葡萄の粒が飛んできてた衝撃でジャスティン像の首が吹き飛び残った部分にヒビが入ってボロボロになってしまった!
『……やーん』
 驚くユフォアリーヤの服が葡萄の果汁でずぶ濡れになってしまった。
「ああもう、言わんこっちゃない」
 大きくため息を吐きながら遊夜は項垂れた。
 肌に黒い髪が果汁で付き、甘い葡萄の香りが漂い自然と野菜のツルがのびーる。
『そういう遊びをしているのじゃろうか?』
「ユフォアリーヤさんが巨大化した野菜に攻撃? されているようですねー」
 ツルに縛り上げられたユフォアリーヤを見てサルヴァドールは首を傾げ、咲は慌てた様子を見せずに言う。

『素晴らしい、この大きな実を収穫出来るなんて素晴らしいです』
 恍惚とした表情でディエドラは、トライド・グロウスヴァイルのメーレーブロウでツルを薙ぎ払い葡萄の房から実だけを取る。
 もちろん『顔』の部分だけは残してある。
「まだ終わらんのか」
 と、ティテオロスがつまらなそうに言う。
『急いで取ってしまうと実に傷がついてしまいます。ゆっくりと、丁寧に……』
 濡れた服が体にべったりと張り付こうが、ディエドラは気にした様子も見せずにトライド・グロウスヴァイルを振るう。
 豊作、豊作、大きな葡萄が出来て去年よりも沢山のワインが作れるだろう、とティテオロスは唇をぺろりと舐めた。
 こんな従魔に奪われるより、逆に葡萄の従魔からどんなワインが出来るのかが想像つかない。
『さぁ、沢山収穫しましょう?』
 果汁が滴る白い肌は何処か美しくあり、ディエドラ豊穣の巫女という肩書に相応しい。
『これではわらわ達の手は不要の様じゃな』
 と、葡萄畑に着いたノエルは言う。
「そうじゃな。これにこの姿をあまり人前でしておくものあれじゃしの」
 共鳴を解いたノエルとヴァイオレットは、予備のコートを羽織るとしっかりと前を閉めた。

●料理!
『ほんへ、準備は、完了』
 弩 静華が何時もの様に準備をしてくれていた。
「調理場の前にシャワーを貸して頂けると有難いのだが?」
 葡萄の果汁に濡れたティテオロスの第一声である。
「とりあえず、農家の方にお願いしてお借りしましょう」
 慌ててティリアはシャワーを使わせて貰える様に手配をする。
「我等が地母、豊穣の神ハルュプよ、地の恵みを感謝致します」
 その間にディエドラは、小さな祭壇を作って葡萄の一粒とおいもの一片を捧げ祈祷する。

「チーズやカレー粉の風味が良いんだよな」
『……ん、食べ応えもある……子供達にも、大人気』
 新武器の威力が凄くてパプリカの大半は潰れてしまったので、遊夜とユフォアリーヤは農家から分けて貰ったのを慣れた手付きで下ごしらえをする。
「まぁ、お菓子ならお任せ下さい」
 エプロンを付けたティリアが材料を計る。
『(エプロン姿万歳! お菓子作りありがとう!)』
 ただ、エプロン姿を見たいが為に手伝いをお願いしたバルトロメイは、心の中で嬉し涙を流しながら声を上げた。
 農家から貰った採れたて卵、手作りバターやシナモンをたっぷり使用し、焼く前に生地の上にパンプキンシードと色とりどりのレーズンを乗せてオーブンへ。
「クリームのせてください! たっぷり!」
『パプリカの肉詰めを食えたらな』
 元気よく手を上げながら言うセレティアに対し、バルトロメイは遊夜達が作ったお皿一杯のパプリカの肉詰めをドンと目の前に置いた。
「えぇ! その前にスイーツ! 甘い野菜のお菓子!」
『食べなきゃ、これはお預けだ!』
 手足をバタつかせるセレティアの前に、ドーンと仁王立ちして首を横にしか振らないバルトロメイ。
『……家の、子供達が、喜んで食べる、人気料理』
 ユフォアリーヤがセレティアの頭をぽんぽんと撫でながら言う。
『ティア、お前は子供以下になるぞ!』
 追い打ちの言葉を投げるバルトロメイではなく、ユフォアリーヤに視線を向けるとセレティアは渋々パプリカの肉詰めを口に運ぶ。

「キノコ、鹿などの肉、チーズとか沢山分けて貰えましたねー」
 農家から分けて貰った食材を見回しながら咲は笑顔で言った。
『うむ、咲の料理は楽しみじゃ』
 サルヴァドールはテーブルに座り食べる準備をする。
「手が空いているから料理位は手伝うよ」
「お願いしますよー」
 冥人の申し出に、咲は笑顔で答える。
『オルクス。我の分は肉と卵を特に多めでな』
「多めにしたいのは分かるがそれはすでに塊肉だ。せめてサイコロステーキくらいにしろ」
 キルラインの注文を聞いてオルクスは声を上げた。
「ほら、ちゃんとジャガイモの芽を取って」
 そんな事を言いつつもルキラインは具材を切ったりとオルクスの手伝いはする。
「さぁ、地の恵みは全て体に取り入れて、その身に恵みを宿しましょう」
 ティテオロスが優雅にワインに舌鼓している隣でディエドラは、葉と根や茎等を無駄にせずに大きい鍋に放り込んで灰汁を取りつつ煮込む。
「いへははほっへとふあふは」
 入れ歯の所在が分からずにあたふたしているヴァイオレットに、ノエルは見付けた入れ歯を素早く口に装着させた。
『わらわ達の孤児院で作っているマッシュポテトもあるのじゃ』
 ヴァイオレットとノエルは、自分たちが作った料理をテーブルにずらりと並べる。
 ポテトグラタン、カボチャとジャガイモのポタージュ、肉じゃが、パパ・レジャーナ(ペルー式コロッケ)、じゃがバター、巨大カボチャプリン、グレープゼリー、葡萄ジビエのワイン煮。
「ポテト尽くしもありだな、これは美味い」
 ジャガイモの料理を見て遊夜は感嘆の声を上げながら小皿に分ける。
『……これが、お袋の味……ん、覚えた』
 尻尾をゆらゆらと揺らしながらユフォアリーヤは、出来上がった料理に舌鼓を打つ。
「はい、私の作った料理とお菓子もどうぞー」
 咲が笑顔で言いながらパプリカとポテトのポタージュ、ごろっと野菜とキノコのミートグラタン、葡萄のコンポートで作ったロールケーキの三品をテーブルに並べた。
「お菓子が沢山!」
『まだ、食べ終えてないようだが?』
「お菓子は別腹!」
 バルトロメイの威圧(物理)を感じつつもセレティアは、課題『パプリカの肉詰めを食べ終える』をクリアしてみせた。
 そう、大好きなお菓子の為に!
『他の者が作った料理も美味そうだ。シェアしてもらってこよう』
 と、言ってキルラインはアイリッシュシチュー、ボクスティ(じゃがいものパンケーキ)、アイリッシュオムレツが盛られた皿を持ち立ち上がる。
「ではその間に飲み物を用意しておく」
 オルクスがヤカンに火を掛ける。
『カフェオレを頼む』
 そう言ってキルラインは、仲間が集まっているテーブルへと向かった。

 こうして、美味しい料理を仲間と共に喋りながら食べ終えたエージェント達。
「プリセンサー労をねぎらってやらねばの」
『わらわ達は年長者なのぢゃ世話をするのは当然なのぢゃ』
 ヴァイオレットが言うとノエルは同意するかのように頷いた。
「そうだな。それに余った材料を持って帰って、28人の子供達に食べさせてやりたいしな」
 遊夜は抱えきれない程の食材に視線を向けた。
『……ん、そうだね』
 子供達の喜ぶ姿を想像しながらユフォアリーヤは頷く。
『うん、だから、もってけー、泥棒ー』
 と、静華がサムズアップをしながら言った。
「プリセンサーには私からお渡ししておきますわ」
 と、ティリアが笑顔で言う。
「それでは、『お仕事お疲れさまです。休憩の時にでも、皆さんと召し上がってくださいね』とお伝えください」
 咲はパンプキンパイと野菜のチップスが入った紙袋を手渡した。
「はい、必ず渡しますわ」
 沈みゆく太陽に照らされ、大地は黄金に輝き風が通ると枯れた葉が揺れる音が響く、秋はあっという間に過ぎてもう直ぐ冬が訪れる。
 さぁ、人も早く冬支度をしなければ。
 少し肌寒い風を感じながら、温かい家へと駆け足で帰った。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584

重体一覧

参加者

  • 己が至高の美
    ティテオロス・ツァッハルラートaa0105
    人間|25才|女性|命中
  • 豊穣の巫女
    ディエドラ・マニューaa0105hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 鏡の司祭
    ノエル メタボリックaa0584hero001
    英雄|52才|女性|バト
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 想いは世界を超えても
    サルヴァドール・ルナフィリアaa2346hero002
    英雄|13才|?|ソフィ
  • エージェント
    オルクス・ツヴィンガーaa4593
    機械|20才|男性|攻撃
  • エージェント
    キルライン・ギヨーヌaa4593hero001
    英雄|35才|男性|ジャ
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