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君の涙に乾杯……できるかな!?
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相談卓
最終発言2017/09/17 10:22:38 -
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最終発言2017/09/17 00:15:15
オープニング
芸術の秋。H.O.P.E.支部でも文化祭と称してイベントを開催することにしていた。屋台あり、展示あり、有志のパフォーマンスありのお祭で、一般の人も自由に見て回れるようになっている。
門の外にポスターを貼ったり、近くの商店街でビラを配ったりして宣伝したので、たくさんのお客さんがやってきて盛況だった。しかし、ハプニングは常に起きるものである。
なんと、メインイベントの一つである演劇の参加者が、全員出られなくなってしまったのだ。
前日ちょっとした戦闘があり、駆り出されたのが彼らだったのだが、思いの外手間取って負傷してしまった。命に別状はないものの劇ができるほどでもなく、急遽代役が必要となったのである。
台本はあるがかなり台詞も多い。オリジナルなのでだいたいの流れを掴みさえすれば、全員アドリブを駆使して乗り切ることはできそうである。
タイトルは、『君の涙に乾杯』。内容は、ざっくりと説明するといわゆる難病悲恋ものなのだが、なぜか途中に剣戟アクションが入る予定だったらしい。登場人物は六人で、主人公、ヒロイン、ヒロインの両親、主人公の恋のライバルと、ヒロインの親友。大道具や小道具のスタッフも必要だろう。
流れ的には、ヒロインと主人公の出会いから、病気発覚、剣戟、ラストと持って行くのが無難だろうが、アドリブ次第で流れは好きにやってくださいと脚本担当から謎のOKが出ている。ともかく、観客を泣かせれば任務完了と思ってくださいということだった。
さて、ピンチヒッター達はどんな劇を繰り広げてくれるのだろう?
解説
●目的
劇のピンチヒッターで代役を務めます。シナリオは一応ありますが、アドリブ次第で流れは好きにやってくださいと脚本担当から謎のOKが出ています。ともかく、観客を泣かせれば任務完了と思ってくださいということです。難病悲恋もののストーリー。ヒロインと主人公の出会いから、病気発覚、剣戟、ラストと持って行くのが無難だと思われます。
●キャスト
メインは六人で、主人公、ヒロイン、ヒロインの両親、主人公の恋のライバルと、ヒロインの親友。大道具や小道具のスタッフも必要です。
リプレイ
●幕が上がる前に
「もう、本当にお馬鹿さんです! 役を貰っておきながら危険な戦闘依頼に出るなんて!愚神を倒す為なら、劇を楽しみに来てくれた観客を裏切ってもよいというのですか!?」
オペラ(aa0422hero001)は、ぷりぷり怒りながら九重 陸(aa0422)の作業を見守っていた。彼は今、脚本製作の真っ最中なのである。
「……ところでエリック、難航してるみたいですね……?」
「俺、どうも難病ものは泣けなくって……。……でも大丈夫、何とかしますから」
『753プロ』所属の身としては、突然のアドリブに対応するくらいはできなければならない。たとえ、台本から役作りまでまるっとアドリブであったとしても。別名、一から作るとも言う。
今回、当初の予定より役者の数が減ってしまったため、大幅な変更を余儀なくされている。大まかな流れはもとの脚本をなるべく生かす努力はしているが、なぜか難病悲恋ものなのに剣戟が入るという謎ストーリーが、陸の苦悩の原因だった。
「劇の役者が全員代役ってすごい状況ですね……」
できあがった分の脚本に目を通しながら、辺是 落児(aa0281)と構築の魔女(aa0281hero001)は小道具や大道具などをチェックしている。落児は大道具及び小道具の設置と管理、衣装の準備などの補佐という裏方に徹することになっている。構築の魔女は、ヒロインの母親役だ。
「これで、それらしく見えるでしょうか……?」
化粧と衣装で三十台後半の落ち着いた女性を演出する。王妃としての責務に自負を持つ女性であり、母としては娘を愛しているが王族としての立場は忘れないという役だ。ポジションとしては脇役に当たるものの、ストーリーの流れを重要な部分で支える大事な役所である。
ちなみにヒロインの父にして、クライマックスで主人公に立ちはだかる王の役はダイ・ゾン(aa3137hero002)。ファリン(aa3137)は裏方だが、こちらはタイムテーブル・タスク作成及び進行、大道具を司る。
「わたくしの友人達の晴れの舞台です。なんとしても成功させるのですわ」
雪ノ下・正太郎(aa0297)は、主人公の親友にしてライバル、最初はヒロインにアプローチするが最終的に主人公とヒロインを結びつけることになるという役だ。彼の英雄は、今回は裏方担当。段取りのチェックに余念が無い。
少人数ではあるが、各々果たすべき役割をしっかりと頭に叩き込んでいる。的確な仕事の分担ができて効率がいい。
そして無事に、脚本もできあがる。
通称【九重脚本】。今ここに、物語の幕が上がる――。
●出会い
「お前より先に、俺は嫁を貰うか婿に行って見せる!!」
幕が上がりライトで照らされた舞台。成龍(正太郎)と力虎(陸)が、舞台下手から現れる。彼らの背後は、賑わう屋台が立ち並ぶ通りだ。お菓子屋や花屋などがある。大半はイメージプロジェクターを使っているのだが、なかなかいい感じのリアルさだ。
「まったく成龍は……腕が落ちても知らないぜ」
成龍と力虎は、幼馴染みの親友にして剣のライバルだ。力虎は真面目でよく稽古に励んではいるものの、成龍の腕には及ばない。それを内心でうらやんでいる。
しばらく成龍がお調子者らしく恋人がほしいと主張する台詞が続くが、後ろの屋台の一つから怒声が飛んだ。
驚いて振り返る二人の目に留まったのは、一人の少女。困った様子でおろおろしている。
「どうしました、可憐なお嬢さん♪」
早速彼女に声をかけたのは、成龍の方。しかし華麗にスルーされ、力虎が事情を尋ねることになる。
少女はどうやら、通りすがりの子供に屋台の菓子をあげたのだが、その代金を払えずに店主に責められていたらしい。何て世間知らずな、と呆れつつ、力虎は成龍と半分ずつ出し合って、代金を立て替えた。
「俺、力虎っていうんだ。遠くから来たんだろ? 案内してあげる」
「ありがとう、力虎。私は神美よ」
お互い名乗り合う彼ら。しかし神美の目は、真っ直ぐに力虎だけを見つめている。一生懸命アピールする成龍は空回りしていた。
それでもめげない成龍は、屋台で花を買ってプレゼントしようとするのだが、なぜか力虎に渡す羽目に。力虎は花を神美に差し出し、ますます二人の様子は親しげなものになっていく。
神美は、受け取った花を大切に抱き締めながらも、悲しげな眼差しで遠くを見やった。
「花はすぐに死ぬわ。でも、その短い間、なるべく美しくあろうとする。人もそうあるべきだと思わない?」
力虎は、不思議そうに彼女を見る。
「神美は……変わってるね。いくら綺麗でも、早死にしたらお終いなのにさ」
彼にとっては、少しでも長く生きることこそが幸せとしか思えない。神美は悲しげに微笑み、花束を胸に抱えたまま力虎と、隅っこでうずくまりのの字を書いている成龍に別れを告げる。
ここで一度ブラックアウトし大道具の入れ替えが行われる。落児、ファリン達裏方舞台の出番だ。事前にファリンがタイムテーブルを作っていたので、迅速に作業を終えることができた。横に場所、縦に時間を取り、するべき事が直感的にわかるようにとても見やすく工夫してある優れものだ。ちなみに、大道具の移動自体は幻想蝶を使ったので、少人数でも楽々である。
再び舞台が明るくなり、立派な装飾がされた部屋が照らし出される。神美が人目を忍ぶようなそぶりで袖から現れる。反対側からは、神美の母紅美(構築の魔女)が静かに出てきて、そんな彼女をしばらく見ている。
「神美、体調はいいようですね」
声をかけられて神美はどきりと跳び上がる。紅美は少しの間、神美を眺めてから再び口を開く。
「……今日は礼節の授業でしたか、励みなさいね」
しどろもどろで言い訳し、駆け去って行った娘を見送り、紅美は独白する。
「無断ですが……外出できるほど調子がいいならば喜ばしいことです」
憂いを秘めた顔を伏せるようにして、彼女も退場する。
さて、神美の秘密の外出が、父神泰(ダイ)にばれてしまう。心配そうに見守る紅美を傍らに、神泰は穏やかに、しかし厳しさも忘れず娘を叱る。項垂れて神妙に父のお説教を聞いていた神美だが、突然くたりと力なく倒れてしまう。
紅美は顔色を変え娘に駆け寄り、神泰は医者を呼ぶようにと叫ぶ。
暗転のあと、場は移動する。神美の寝室だ。神美は寝台に横たわり、紅美がしっかりと彼女の手を握っている。神泰は医師と少し離れたところで短くやりとりしてから、娘のそばへやってくる。
「お父様……お母様……我儘ばかりでごめんなさい。でも、最後に一つ、聞いて欲しいの……」
弱気な発言を窘める紅美に、神美は力なく首を振る。その顔には、笑みがあった。何かを悟ったような。
そして彼女は、こう言った。『せめて死ぬ前に結婚式を挙げたい』と。
紅美は涙を堪えながら夫を伺い、神泰はしばしの沈黙のあと、深く頷いた。
寝室を出た二人は、別な部屋へ移動する。悲しげな紅美の肩に手を置いてから舞台の先まで進み出た神泰は、きっ、と顔を上げ高らかに宣言した。
「我が国のならわしでは、有事の際には国王自ら先陣となり、死地に身を晒して兵を鼓舞せねばならぬ。武闘会を開き優勝した者を後嗣とする!」
●武闘会
その知らせは、王城より国王と王妃、王女立ち会いの下国民へ伝えられた。
力虎と成龍は、報せの内容はもちろんのこと、王妃の傍らに立つ王女を目の当たりにして驚きを隠せずにいる。
「神美……!」
街で偶然知り合った少女は、王女だったのだ。
武闘会の目的は、王女の婿選びであること。武を貴ぶ国風であるため、婿となるべき者は相応の力がなければならないことなどが告げられる。出場者を募る旨が説明され、興奮を帯びたざわめきが力虎と成龍の周りで起きる。
だが力虎は、それよりも何よりも唐突な婿選びの経緯に打ちのめされていた。
――王女の余命が幾ばくもない。
花を抱いて寂しげに微笑んでいた神美。その言葉の意味を、今こそ彼は理解していた。
「……そうか。神美はずっと死を前にして、考えて、戦って生きてきたんだな」
生まれ落ちた瞬間から、すべての命は死の宣告を受ける。しかし、それを常に傍らで囁かれるような気持ちで生きなければならない日々は、きっと力虎の想像の及ぶところではない。
一心に神美を見つめ続ける力虎。それに気づいたように、ふと神美が彼に目を向ける。
絡む。視線が。
神美は、笑った。泣き出しそうに。
力虎は口を開きかけ、結局拳を強く握っただけ。
彼女の気持ちは――恐れは、願いは、きっと力虎などには想像できない。できるのは、たった一つ。
「神美……俺も、戦うよ。俺の命を使ってできる、最大限のことをする」
出会ったばかりの少女。一目で、力虎の心を奪っていった。
だからこの魂は、もう彼女のものだ。
その夜、神美が眠る前に、紅美が寝台の傍らで付き添っていた。
我儘を詫びる娘に、紅美は微笑む。
「王族として国を繋ぐための行動が我儘であるものですか。武闘会と挙式で国民に心配をかけないように今は身体を休めておきなさい」
目を閉じた神美をしばらく見守ってから、紅美は静かに寝室を出る。夫のもとへ行き、娘の様子を伝えたあと、柔らかく笑う。
「あの子も好きな人が出来たのでしょうね……」
神美は何も語らなかったが、そうではないかと感じさせる何かがあった。
「国の未来とあの子の幸せが同時に叶うならこれ以上のことはありませんね」
「なに、相手が一国の王女であるという障害程度越えてくる男でなければ、娘はやらぬよ」
神泰の言葉に、紅美は笑顔のまま頷いた。
物語は、武闘会へ移る。国王が開催宣言をし、観客は思い思いに出場者達の名を叫ぶ。興奮が舞踏会会場を押し包んだ。
王族の観覧席では、ふらついた神美を紅美がさりげなく支えて寄り添った。
「あなたのための武闘会です。しっかりとみておきなさいね」
顔色の悪いのは化粧で隠させ、日傘で常に影を作るなど細やかに娘を気遣う母に、神美も気丈に微笑んでみせる。
周りに、悟られてはいけない。
「好きな人がいるのでしょう?心配をかけないよう胸を張って見届けなさい」
神美は、祈るような想いで戦いを見守った。何人もの猛者が勝利し、或いは敗北し、彼女の前でさだめの行方を創っていく。
成龍も神美への想いを諦められずに、彼女の願いを叶えるためにもと出場していた。
そして順調に勝ち上がった成龍は、ついに力虎と対戦することになる。
互いの想いが同じであることを、成龍は悟っていた。長く一緒に過ごしてきた親友である。言葉にせずとも伝わるものだ。
腕は、自分の方が上。しかし勝負は結果が出る瞬間までわからない。
試合開始の合図とともに、先に成龍が仕掛ける。中段からの突き。かわされる。だがそれを予想した上で、流れるように剣をなぎ払う。力虎は身をひねり鍔で受けた。
――常の鍛錬よりも、動きがよくなっている。
成龍は後ろへ跳び、慎重に間合いを取り直した。
力虎の顔つきは、真剣そのものだ。押し寄せる気迫で、足が下がりそうになる。
呑まれるわけには、いかない。
剣を構え直す成龍の前で、力虎が動いた。
上段から振り下ろされる刃を、横へかわす。勘だけで後方へ払った一撃が、がしりと受け止められた。
動かない。押し切れない。
それどころか。
がくんと体勢が崩れたのを、成龍ははっきりと認識できたわけではなかった。ただ頭より先に身体が動き、倒れた勢いを利用して地を転がる。直後先ほどまで彼がいた辺りに、力虎の剣が振り下ろされていた。
成龍は素早く起き上がり、力虎に斬りかかる。すぐに受け止められ、鍔迫り合いのあと互いに跳んで離れる。
次の攻撃へ移ろうとした成龍は、その瞬間動きを止めてだらりと腕を降ろした。苦笑が浮かぶ。
折れていた。剣が。
「まいった、お前の勝ちだよ」
勝者の名が、高らかに宣言される。歓声が上がる。
力虎は、黙って佇んでいた。真っ直ぐに、成龍を見つめていた。
成龍は首を振る。踵を返し、歩き出す。
力虎を讃える叫びの渦が、彼の背を幾度も叩いた。
●そして……
武闘会の優勝者の発表のあと、すぐに婚礼の儀が執り行われた。儀式は滞りなく厳かに終わり、紅美の口から参加者への謝辞が述べられる。無礼講の祝賀会には王族は立ち会わないが、夜明けまで楽しんでほしいとも。
もちろん、神美の身体を慮ったためだ。最後まで背筋を伸ばしてしっかりと立っていた神美だが、もう限界であることは紅美には痛いほどわかっていた。
「よく務めを果たしました。あとは、私たちに任せておきなさい」
部屋に戻る神美と付き添う力虎にかすかに聞こえる声で、やわらかく囁く。神美は彼女を支える力虎の腕の中で、涙ぐみながら頷いた。
「言い出した手前、優勝者であるお主を婿として認めるが。娘を不幸にしてみろ。一人の父としてお前を殺しにゆくぞ」
神泰の言葉に、力虎は力強く諾と答える。
しっかりと繋ぎ合わせた手。晴れて結ばれた二人の後ろ姿を、成龍は無言で見送る。これでいい。想い合っているのが、傍目にもよくわかる。だがそれだけでは、胸の痛みは消えてくれない。
成龍は静かに踵を返し、その場を立ち去る。旅に出ようと思っていた。行き先は、決めていない。
部屋に戻った神美は、ぐったりと床に頽れた。力虎は彼女を抱き上げ、寝台へ横たえる。
「力虎、ありがとう。戦っているあなたは、とても綺麗だった……」
紡がれる言葉が、弱々しい。今にもかき消えてしまいそうだ。力虎は、彼女の手を強く握る。
「幸せに……なりましょうね……。子どもも、たくさん欲しいわ……」
願い、望み。語る彼女は、美しい。今とても、苦しいのだろうに。
握る手から、どんどん力は抜けているのに。
泣き出しそうになったが、必至で堪える。涙など見せてはいけない。彼女は今、幸せなのだ。
だから、自分も笑っていなければ。
ゆっくりと、二人の姿は闇に包まれていく。やがて明るくなったとき、喪服を纏った力虎と神泰、そして紅美が一つの墓の前で項垂れている。
墓石の前で跪いた力虎が花束を捧げ――幕は、閉じた。
●幕が下りて
拍手は鳴り止まない。一列に並んだ役者達は、ライトの中で手を繋ぎ深くお辞儀をする。
役者をやっていてよかった、と感じる瞬間の一つだ。観客からの拍手は、何より達成感を与えてくれる。
陸、オペラの主役二人が、手を繋いで改めて一礼する。陸が正太郎に片手を差し出し、オペラは構築の魔女に、構築の魔女はダイに。
だが、それだけではなかった。
両端に立っていた正太郎とダイが、それぞれの舞台袖に向かって手招きする。すると、躊躇いを見せながらも、ファリンと落児、そして正太郎の英雄が現れる。
裏方で頑張ってくれていた彼らも、立派に今日の劇を作り上げたのだ。賞賛は同様に受けるべきだと、役者全員の意見が一致した。
全員で手を繋いで、お辞儀をする。これまでで一番大きな喝采が響き渡る。
ゆっくりと幕が下り、ライトが消えた。
●後片付けも万全に
大道具、小道具をきちんと整理していくのはけっこう大変だ。大半を幻想蝶などで補ったとはいえ、すべてではない。特に衣装類は借り物なので、破損や汚れがないかチェックしたあとクリーニングしておかなければならない。
劇団、それも大きなところであればそういう仕事は専門の係が担当するのだが、今回は臨時の出演でもあり、すべて全員で念入りにやった。
演じ終えたあとで疲れているのはもちろんだったが、それでも苦には感じない。
全力で演じられた。それが何より心を満たしているから。
お客様に満足してもらえた。それが、何より幸せだから。
そういうものなのだ。役者とは。
正太郎は、最後の衣装をきちんと畳んで箱に入れた。明日、クリーニング業者に持って行くことになっている。
落児も大道具のチェックをすべて終えて、構築の魔女と頷きあっている。
ファリンは、壁に貼っていたタイムテーブルの紙を外した。ダイが小道具を整理してやってくる。
陸とオペラは、人数分印刷した【九重脚本】を紙袋に入れた。
終わったのだ。これですべて。
舞台を降り、彼らは彼らへと戻る。自らの手で紡いだ物語の余韻を、大切に胸に秘めて。