本部

WD~ひとりぼっちの戦争~

鳴海

形態
ショートEX
難易度
易しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
4日
完成日
2017/09/20 16:24

掲示板

オープニング

●自分を探して
 三船春香は人の話を聞かない。聞いているようで全然だ。それは、せっかちな性格からかもしれないし、すぐに行き詰って頭の中でぐるぐると物事を考えてしまうせいかもしれない。
 春香の脳みそは悩むに向いていないのだ。
 だから春香は、考えるより即実践を謳っている。
 体を動かして体で考える。
 その結果たどり着いたのが、皆さんの家だったり、H.O.P.E.の食堂だったり、任務の帰りだったり。
 そんなまちまちなタイミングで春香はこう、話を切り出した。
「相談があるんだ」
 あなたに罪はありますか? あるならそれとどう折り合いをつけてますか。
 春香の話を要約するとそんな内容。
 話を詳しく聞くと、春香は、愚神に操られて沢山の人を殺したことがあるという。
 それだけじゃない。大切な人が死地に赴くというのにそれを見送ったという。
「英雄がね。不完全な形でこの世界に呼び出されて。それでね、戦うと死んでしまうのに、私はあの子と一緒に戦ったんだ、愚神は倒せたよ。けど、ルネはやっぱり帰って来れなかった。目の前で消えてなくなってしまった」
 春香は問いかける。
 もし、一人の人間を救える。誰でも救えるとして、そのために一人の誰かを犠牲にするなら、あなたはどうしたか。

「私は怖い、自分が動くことで誰かをたすけられる、それがうれしいっておもうより。誰かを救えなかった、そんな結末になりそうで、怖い」
 春香は告げた。春香は震えていた。
 指先が白く変わり。声には絶望が滲む。
 共鳴できなくなることがあるらしい。その原因が何なのか分からない。
 それは春香自身の恐怖が原因かもしれない。
 怖くて仕方がなかった。
 死ぬことじゃない。
 救えないこと。
 助けられないこと。
 誰かの悲しい顔を見ること。
 失望させること。
 怖くて怖くてたまらないという。
 夢に見るという。
 犠牲になっていった人たちの顔が浮かぶという。
 だから春香は言った。
 いつしか戦うことをやめることを考えるようになったと。
「それでも投げ出すことなんて許されない、私は……倒さないといけない敵がいて、それでリンカーになったから。けど」
 この前の孤児院に赴く依頼で思ったそうだ。
 この前の生きるか死ぬかのゲームの依頼で思ったそうだ。
 戦いから逃げる、戦わないという選択肢もあると。
「私は、戦わないといけない。だから教えて、あなたが戦える理由。罪から目をそらせてる理由。私がどうしたらいいか。」
 そんな春香をいつもと同じ、無垢な表情でerisuが見あげた。

● 今回の背景。
 今回は春香と皆さんの相談回……というか。
 青春のぶつかり合いというか。葛藤回ですね。
 アニメのキャラクターとかも葛藤して、悩んで突き抜けて強くなるので、皆さんにはぜひ春香を導いてあげて欲しいなと思います。
 今回春香が悩んでいる内容をざっとまとめると下記。

・誰かを殺した自分が生きているのが許せない。許せる方法があるなら教えてほしい。
・誰かを助けられる喜びより、誰かを救えなかった時の恐怖が強い。どうやって乗り越えているのか教えてほしい。
・考えすぎてうっぷんがたまっているので暴れたい。

 この三つが大きいです。
 皆さんの意見を聞かせてあげてください。
 その際に、皆さんの過去回想シーンとか。ばしばしはさんでいって。
 皆さんの戦う理由がなにかとか、皆さんにも同じような葛藤があったのかとか。
 揺れ動く心というものを描写できると楽しいかなと思っています。

 ちなみになんですが。接点がない人もいるかもしれません、その場合はなんとなく春香が噂を聞きつけてきたことにしましょう。
 何か新しい発見があるのではないかと近づいてきたことにしておいてください。

 そしてあなたの話を聞いた春香は下記のように春香は発狂寸前になるかもしれません。
 こうなった場合はあなたの言葉が理解できなかった時です。
 春香が発狂状態になるかどうかは皆さんで決めていただいても構いません。

【発狂】
「私、本当に生きてていいの? 本当に?」
 涙目になって、胸の前で拳を握り。首を強く振って。
 あなたと距離を取り震える声で春香は叫ぶ。
「だって。私人殺しだよ」
 見開いた目には感情なんてなくて、目を白黒させながら浮ついた言葉を続ける。
「人殺しなんて、殺すべきだよ。そうだよね」
 
「なんでのうのうと生きてるんだろ。おかしいよ」

「犠牲になるのもダメ、捧げるのもダメ。じゃあ、私はどうやったら許されるの?」

「許されたい、許されたいよ。でも私は許されない。許されないんだよ」

「私の命で沢山の人を救うから、死んだ人たちを返してよ!」

「ごめん、私、みんなを悲しませることしかできない」
 
 そう言って少女は身を震わせて泣いた。

● 説得(物理)
 春香とは言葉のコミュニケーションより体のコミュニケーションの方が有効な場合があります。
 その場合は共鳴して春香が襲いかかってきます。
 春香はカオティックブレイドです。
 使う武装としてはピアノ線で。こちら低攻撃力の常時範囲攻撃が可能な武装です。
 あたり一帯にピアノ線を張り巡らせて音を響かせ攻撃する。
 近距離、中距離戦闘が得意な感じです
 スキルは使わないようです。
 割と春香は正気ではないので武器の特性を無視して殴り掛かって来たり、蹴りかかってくる可能性もありますのでよろしくお願いします。



解説

目標 戦う理由を探す。

 皆さんの戦う理由とはなんだったでしょうか。 
 今までエージェントとして活動していて、それをやめたいと思ったことはありますか?
 今回の春香は、自分も許せないし、このまま活動していても誰も助けられないし。エージェント活動をやめたいけれど、それも許されない。
 と思っている状態です。 
 どんな言葉を投げかけるかは皆さんにお任せします。
 厳しい言葉、優しい言葉いろいろあるでしょう。
 皆さんの信念に基づく言葉であれば春香はそれを受け入れて心の糧とすることでしょう。
 皆さんの体験談や、身の上話、胸の内すべてが春香の未来を決めるでしょう。

リプレイ

プロローグ
「あの、あのね! 相談があるんだけど」
 滅多に人に相談しない三船春香。彼女がそんな話を切り出したのは食堂でのこと。
『蔵李・澄香(aa0010)』は半分にされてないチャーハンとラーメンをかきこんでおり『天城 稜(aa0314)』はスマートフォンをいじっていた。
『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』は何やら資料に目を通していたし。『リリア フォーゲル(aa0314hero001)』は読み終わった雑誌を棚に戻そうと席を立つ瞬間だった。
「みんなの、戦う理由を教えて」
 和みきった空気を張り詰めさせる、パワーのある言葉に……稜は姿勢をただし、クラリスは資料を置いた。
「なぜそのようなことを?」
 全てを、自分の中の想いを洗いざらいに話す春香。
「あの、春香。あまり自分を追い詰めないでください」
 そんな春香の言葉を聞いてクラリスが言葉をかける。次の瞬間、澄香は飲み干したラーメンどんぶりをスタンとテーブルの上に置いた。
「そうだなぁ、難しい話だからみんなで話してみようか?」
「え? みんなで話?」
「たとえばそこの」
 澄香が指さすといつの間にか『八朔 カゲリ(aa0098)』と『ナラカ(aa0098hero001)』が後ろのテーブルに座っていた。
「カゲリさん?」
「俺にきくな」
 そうカゲリはコーヒーを飲み下すと、うっとおしそうに告げる。
「覚者に聞いたところで参考になりはしないだろう。覚者は壊れた車のようなものだからね、ブレーキがそもそもない」
 カゲリはすべてを認める者。そのあり方を否定はしない。
 それは自分のあり方が見えているからかもしれない。自分がどうするべきかきちんと定まっているから。かもしれない。
「覚者は己が歩みの上で犠牲にしたものが在ればこそ、止まる事など赦されない身の上でなのでな」
 だから春香に対してアドバイスできることはないもないのだ。現時点では。
「だがおもしろい、春香よ、どのような決断を下すか見届けてやろう」
「え?」
「その心のありようを見届け、胸を貸そう。だがまだ道を決めるには情報が足りないだろう?」
「情報……」
 春香はひとりごちる、その言葉に頷いてナラカは問いを続けた。
「同じ身の上の物に話を聞け、その後に我々のところまで来るがいいさ」
 その言葉に首をひねる春香だったが次の瞬間その手が取られて引かれた。
「うわ、っとと。白江さん!」
 そう、春香の手を取ったのは『白江(aa1730hero002)』その隣には『アル(aa1730)』が控えている。
「そうですね、ではまず……ねこかふぇに行きましょう」
「!?」
 驚きの表情を向けるアルと春香。結果、わけも分からず一行は猫カフェに移動することになった。

第一章 旅路

 そこは最近街中にできた猫カフェである。店が始まったばかりなのか、まだまだ幼い猫が多い。
 そんな中、一匹の猫を白江は膝に乗せると春香を隣に座らせた。
「一部始終は効かせていただきました。それでももう一度あなたの口から話を聞きたいのですが、よろしいですか?」
「こう、改まって話すとなるとなんだか照れちゃうからなぁ」
 そう春香は白江の上のネコを撫でると、猫は目を細めた。
「なんだか、なんてことない問題な気がしてきたしなぁ」
「……生きることをやめたいと思うのが何でもないことなんですか?」
 白江は告げる。その言葉に春香はぴたりと動きを止めて。瞳を真ん丸に見開き白江を見た。
「うん、そうだね、何でもないことだよ?」
 その時春香の表情がひび割れ砕けるようにクシャリと、春香はへたくそな笑顔を作った。二人の間に不穏な空気が流れ始める。
 そんな空気を察してか無視してか、アルは頷くと立ち上がる。
 クシャリと春香の頭を撫でると少し離れたところで猫と戯れていた澄香や稜と合流した。
 そしてアルは振り返る、春香の背中は迷って家が分からなくなった猫のように小さく見えた。
「じゃあ、私はこのまま戦い続ければいいのかな? 私じゃ守れるかどうか分からないのに」
「守れるはずだった大勢の人間が目の前でバタバタ死ぬ。前の記憶がほぼ無い中で、唯一鮮烈に覚えてることです」
 白江はそう言葉をきりだした。
「死を選ぶは、あのよへ逃げると同じこと。きよえはそれを止めませんが、どうしても辛い方を選びたいとあなたが考えるならば、生きることをオススメします」
 そう白江が差し出した猫じゃらし、それを春香が手に取ると、白猫は春香の方へ移った。
 それでも春香の表情は硬いままだ。
「そうです。生き地獄です」
 息をのむ春香。
「『殺してしまった人達の分まで生ききる』ことが、きよえの罪の償い方です。
彼らに出来なかったことを代わりに行うために」
 白江は観ているしかなかった。
 命が消えていく瞬間を。
 人の命は蝋燭に灯る火のように簡単に消えてしまうのだと知った。
「彼等の盾に、剣になりたかった」
 その瞳の奥に打ちしだされるのはなくしたはずの記憶。
「助けられなかった彼等の代わりに」
 どれだけ願ってもその腕は届かなかった。
「皆を守り弱い己を斬る」
 でもそれが許されないと知った時芽生えたのは。それを無駄にできないと思う気持ち。
「全ての戦を終わらせるために。きよえが戦う理由です」
「なんで、そんなことが、できるの?」
「それはそうですね、最初はひっそり消えてもいいかもしれないと思っていたんですよけれど」
 白江は澄香を見た。今でも覚えている彼女の声。消えて行った人を忘れないで覚えている。その消えて行った思いを無意味にしない。
 そんな思い。
「人は、変わるものですよ」
「わからないよ。人をたくさん殺して、笑っていていいの? 私は裁かれるべきじゃ……」
「あるは天使とか救いの歌姫とか呼ばれてますが……昔はその逆だったと、みやびが」
 その言葉に春香は目を見開いた。
 アルを見る、視線が合った。
 声が聞えていなければいいと思った。どうだろう。
 アルの表情からは何も読み取れない、穏やかに微笑む少女がそこにいるだけだ。
「忘れていても無意識に救済を実行してるのも、あるいみ贖罪なのでしょう」
 そんなアルだがerisuを愛でていた。自分と対して身長は変わらないのだが、膝の上にごろんとさせて髪の毛を結んだりして遊んでいる。
 アルは春香から視線を外すとerisuに視線を下ろした。
「ね、アレ覚えてる? 最初音の遺跡に行った時、扉に挟まってた紙」
「らら?」
「何か書いてあった?」
 erisuはふむと考え込んでしまった、本当に忘れてるらしい。そもそも紙ってなんだろう、そんな顔をしていた。
 そんなerisuをごろんと床の上に転がしてアルは猫を引き連れ立ち上がる。
「そんなに熱い視線を送られると困っちゃうな」
 そう猫じゃらしで春香の鼻の頭をくすぐった。
「アルちゃん、私、ひどいことを言ったかもしれない」
「何の話?」
 そう春香を覗き込んで腰を折るある。短い髪だが肩からこぼれて優しく揺れる。
「良いんじゃない? 辛けりゃ逃げちゃえー」
「逃げる……」
「全部投げ出して、全部私には関係ありませんって、いいと思うよ。それで君の心が守られるなら」
「私一人守られて、どうするの? 私を助けてくれるために沢山、沢山の人が」
「わかってるじゃん」
 アルはそう言って笑った。
「止まらなければ大丈夫。動かない水は腐るからねぇ」
「なんで、アルちゃんは笑っていられるの? あなたが立っていられる理由は何?」
「ボクが戦う理由? それはね、得た力は使ってこそ。戦いたくても出来ない人達の代わりに戦う。それだけだよ」
「私には、真似できないな」
 そう力なく笑った春香をアルは抱きしめた。お腹に顔を当てて優しく。
 けれど、一瞬春香の体から緊張が解けた次の瞬間には。
「えい!」
 そうアルは腕を伸ばしてerisuも白江も巻き込んで床に倒れていた。
 そのままゴロゴロと転がってアルは笑う。
 不気味な笑い声でじわりじわりと。
「ぐへへ」
 アイドルにあるまじき笑い声へと。
「なにその笑い声」
 くすりと春香が笑うと、アルは動きを止めて告げる。
「うんうん。一緒に笑ってあげることくらいならボクでもできるからね」
 その時である、白江が。あっと声をあげた。
「そろそろ時間です」 
 立ち上がる春香、その目をまっすぐ見上げて白江は告げる。
「これからあなたがたどると決めた旅はきっと楽なものではないでしょう。けれど、最後にまた笑って会えることを願っています」
「行ってらっしゃい、春香ちゃん」

    *   *

 H.O.P.E.では苛烈な戦闘任務も多い、その任務のために戦闘訓練を行っている。お互いに都合をつけあって模擬戦闘を行うのだ。
 今日の春香の相手は『柳生 楓(aa3403)』である。その休憩の時間。『氷室 詩乃(aa3403hero001)』と三人並びながらドリンクを飲んでいる時。
 春香はその話を切り出した。
 詩乃はそんな春香に笑ってしまう、この前まで同じような顔をしていた人間が身近にいるなと。
 対して楓は真剣に話を聞いてくれた。
 倒さないといけない敵がいる。
 犠牲の上で生きている自分がいる。
 誰かが自分のために死んでしまう恐怖。
 命を奪った罪悪感。
 全部、全部が痛いほどに楓には分かる。
 だから楓はすべてを話すことに決めたのだ。
 同じ轍を踏まないように。少しでも春香が前を向いて歩ける様に。
「戦える理由ですか」
 楓は少し考えるとそう言葉を切りだした。
「最初は、誰かを守るためですね」
「カッコいいね、楓ちゃん」
「そんなことはないんですよ、だって結局それって罪滅ぼしのために死ぬためでしたから」
 その言葉に春香は息をのむ、その罪滅ぼしという単語が春香の胸に突き刺さる。
「罪、楓ちゃん、あなたも」
「罪ですか。ありますよ。未だに背負ってる罪が。妹を守れなかった罪が」
 瞼の裏によみがえる記憶、生暖かい血と、動かない体、喉が避けるまで絶叫した。
「今はもちろん違いますよ。少しでも傷つく人を減らして。護りたいんです。みんなと大切なこの世界」
 もう死のうとは微塵も思ってない、楓はそう重ねて告げた。
「それでも私は、歩いていくと決めました。誰かを守る為に、誰かの希望となる為に。その為に聖女という名も背負いましたから」
「なんで、罪滅ぼしのために死のうと思ってたの?」
「妹を目の前で殺されたんです」
 今でもたまに夢に見る、泣いて目覚めることもある。一生あの光景を忘れることはできないだろう。
 そう楓は告げた。
「妹を守れなかったんです、お姉ちゃんなのに。本当は私が死ぬべきだったとも思ってました」
「思ってた?」
「はい、今は違います」
 そっと楓の手に詩乃が手を重ねる。不安げな表情。
 大丈夫だよと楓は詩乃に視線だけを返した。
「過去、妹を守れなかったこと。それを過去の依頼があるまで誰にも告げず楓一人で背負っていました。いつかその罪滅ぼしをする為に」
 けれど……。
「詩乃が私を許してくれたんです」
 今でも覚えている。雨の中泣き叫ぶように詩乃は自分へ言葉をかけてくれた。一緒にいたいと、大切だと、消えてほしくないと言ってくれた。
 許してくれた、一緒に罪を背負ってくれると言った。
「許された?」
 だから楓は。
「一生を罪滅ぼしに使おうと思ったんです。死ぬんじゃない、護ること」
 春香は思い出していた。白江の生き地獄という言葉。
「それはとても辛いことじゃないの?」
「前ほど辛くはないですよ、これが生きる道なんだって今なら思えます」
 罪との折り合い。
 楓はそう告げた。
「だから私も、春香さんを護りたいと思います」
 楓は春香の手を取った。春香の手は冷たかった、震えていた。
 当然だろう。彼女は昔の自分なのだから。
 痛くて辛くて、苦しくて震えている。
 だから隣にいる誰かが必要なのだ。
「たった一人で背負わないで。誰か、英雄を頼って。迷惑かけるかもしれないけど助けてと叫んで。自分が壊れてしまう前に、消えてしまう前に」
「一人で背負える範囲なんてかなり限定的だよ。だからさ、まずは英雄を頼ろうよ? 迷惑をかけるのは仕方ないことだからさ。そこで遠慮したらダメだよ」
 詩乃がそう告げた。春香は傍らで眠るerisuを見つめる。
「この子は、感性が超越的だからなぁ、私と分かち合えるかなぁ」
「何かに行き詰まったら言ってください。言うだけでも楽にはなりますから。私を頼ってください、いつでも受け入れますから」
 そう微笑む楓が春香には眩しく、そしてうらやましく思えた。
「ボクと楓は聖女の名前を背負ってるよ?」
 詩乃は言う。
「ただ、それは他の人よりもちょっと多くの物を背負ってるからだからだよ。キミも背負ってるものを少しボクらに預けてみたら?」
「ありがとう、二人とも……でも預け方がまだ、分からないんだ」
 告げると春香はerisuを起こして立ち上がる。
「お話しできてすごく嬉しかった。よかったらまた話せると嬉しい」

  
第二章 罪人たち。

 H.O.P.E.施設内庭園。リンカーたちに無料で貸し出されるこのスペースでは、日々の任務に疲れたリンカーたちが、ただ喋ったり、お茶会を開いたりしている。
「遠慮しないでいっぱい食べてちょうだい」
「あ、ありがとう」
『ロゼ=ベルトラン(aa4655hero001)』もその一人だった。大き目のポットから注がれる金色にも似た紅茶と甘い香りのカップケーキで春香をもてなしてくれる。
「春香ちゃん、甘いモノはお好き?」
 ロゼがそうクッキーの入った器を差し出す。
 底からひとかけらクッキーを口に含んでもしゃもしゃと咀嚼した。
 そんな春香の話を聞いて『高野信実(aa4655)』はカップの中味を飲み干す、そして告げる。
「死ぬなんて、簡単に言っちゃ駄目っすよ……」
「そう、だよね。うん……軽々しく言っちゃだめだ」
 春香は頷く、けれど納得したわけではない。理解はしてる、けれど。
「わかってるけど、でもそう思ってしまうのは止められないんだよ?」
「リンカーになったのには必ず意味があるんすよ! 春香さんにしか出来ない事だってあるはずっす!」
「ありがとう、そう言ってくれるのは嬉しいよ。けどね……意味があっても私がダメダメだったら、きっと失敗を増やしちゃうだけだと思うんだ」
「けど」
 信実は言葉を連ねる、思い直してほしかった、ここにとどまってほしかった。けれど春香は頑なで、その視線はもう信実の方を向いていない。
 諦めてしまっている、心が折れているのだと。わかった。
(俺じゃ、どうしようもないのかな)
 そううつむく信実そんな彼の方に手を置いて。ロゼは告げる。
「あぁん、今の信実クン見てられない!」
 二人は驚きの表情を見せる、直後共鳴。
 庭園に暴風が吹き荒れた。
「erisu……」
「らら?」
 熱いカップをふーふーしていたerisuの手を取って春香も共鳴。
 そして春香の目の前に立っていたのは信実だが、雰囲気がまるで異なっていて。
「何ひとりで逃げようとしてるの?」
 口調も態度も全く違った。
「逃げてない、私はこれ以上私のせいで間違いを起こしたくないだけ」
 春香も真っ向から見据える。お互いの霊力が肌を切るように放出される。
「自分を殺させたら、今度は相手が人殺しになる。それってさ、相手にも罪を被せる事にならない?」
「だったら、私が、私を裁くよ。私はいけない存在なんだって」
 その言葉に信実は不敵に笑った。
「結局は自分の事しか考えてないんだね」
「私が、自分の事しかかんがえてない!?」
 思わず春香は両腕を振るった。ピアノ線が蜘蛛の糸のようにふわりと舞う。
 だが信実はその糸を槍で絡め捕って距離を詰めた。
「あぁ許されるならボクだって死にたいさ。ボクを捨てた父さんの目の前でね!」
 石突で春香を吹き飛ばすと追撃のために距離を取るが、目の前にピアノ線で作られた防壁が展開され。そこから発せられたのは音。
 あまりの防音に距離を取る信実。
「ギャンブルにしか目をくれず、家族を壊してまで自分の事しか考えなかった父!」
 捕縛しようと左右から襲うピアノ線を槍で叩き落として信実は左手に回り込む。
「反面教師にしようと決意し、憎悪を押し殺してきた、けれど! それだけじゃ逃れられない」
 信実は春香に肉薄する、目の前を遮られる前に槍を突きだし。ピアノ線を妨害そのまま信実は身を滑らせるように糸を潜り抜けて春香へ飛びついて、そして押し倒す。
「俺の中には、最低な父の血も流れているんだ、逃げられない」
「そんなことないよ。君はいい子だよ」
 春香が信実の頬に手を沿える。
「本当に人の為になりたいんだったらさ……生きるんだよ。ちっぽけな視野を見開いて、こんな自分でも出来る事を探すんだよ」
 そうしなければ生きていけなかった信実はそう思う。
 次いで信実は共鳴を解除。
 ロゼは微笑み、信実は春香の惨状を見て慌てふためく。
 攻撃してしまった、という事実もそうだが自分から女性を押し倒すなんて。
 そう思うと気恥ずかしさやら、申し訳なさやらで思わず頭を下げる信実である。
「本当にすんませんでした!」
「大丈夫だよ」
 そう春香は上半身を起こして信実に微笑みかける。
「春香さんには元気になってほしかっただけなのに……俺ってひどい奴だぁ……」
「ううん、私が頑なだから無理してくれたんだよね、ありがとう」
 そう言って寝転ぶと春香は告げた。
「でも、ちゃんと人の話を聞くと胸が痛いや、頭も重くなる」
 そんな春香を見て信実は苦笑いを浮かべる、何せ彼女を悩ませている張本人である。
「えぇっと、お互い頑張りましょう」
「そうだね、苦しいのは私だけじゃないもんね」
「あと……さっき言ってた事は全部内緒にしてください」
 そう言って最後に信実はもう一度頭を下げた。


    *   *

 そんなわけで春香の答えを求める旅は続く。
 次は三組のリンカーと同時に会う約束になっていた。
『煤原 燃衣(aa2271)』と『斉加 理夢琉(aa0783)』と『ヨハン・リントヴルム(aa1933)』
 なぜこの三人なのかと言えば、理由はただ一つ、予定がここしか空いてなかったのである。なのでまとめて全員を呼んだと、そう言うわけだった。
「春香ちゃーん」
 春香が食堂につくなり燃衣は春香へと手を振った。
 すでに全員が集まっており『ネイ=カースド(aa2271hero001)』は半分ではないラーメンとチャーハンを食べている。
「遅くなってごめんなさい」
「気にすることはない」
『アリュー(aa0783hero001)』がそう告げると居住まいを正す。
『ファニー・リントヴルム(aa1933hero002)』は興味なさ気に雑誌を読んでいた。
「じゃあ……」
 そんな一行を見渡して春香は息を吸う。瞳に力を宿して、自分の胸の内を淡々と語っていった。
 戦うことを迷っていること、自分が侵してきた過ち、それをもう重ねないという選択肢。そして自分の罪。
 死んだら許されるか。そんな話。
 その話を聞いて理夢琉は青ざめた。
「そんな、そんなこと言わないでください」
 理夢琉は春香の腕に手をからめて、体を近づける。
 瞳には戸惑いが浮かんでいる。
「私、あの依頼からずっと」
 あの依頼。おそらくはルネの依頼だろう。砕け散ってしまった英雄。
 あの時の光景がずっと理夢琉の中にのこっている。
「春香さん、春香さんはやるべきことをやってます、だからそんな、そんなこと言わないで」
 潤んだ視線を伏せる理夢琉。彼女の想いをアリューが代弁した。
「春香と遥華の心の強さが私にとって憧れであり目標にもなっている、だから戸惑ったんだ許してやってくれ」
「ありがとう、私達を目標なんて、すごく嬉しいよ」
 そう春香は目を伏せる。
「それに、あれは春香さんのせいじゃないです、ルネさんが消えてしまったのは。
 ううん、ちがう。消えたんじゃない、私……ルネさんを助けたくて秘薬を……ひび割れて粉々になって壊しちゃった。
 希望が見えた分だけもっと痛かったよね、ごめんなさい」
「それこそ違うよ、理夢琉ちゃんはルネを助けようと頑張ってくれたんだよね。その思いはきっとルネにも届いたよ。それに私の罪はルネだけじゃなくて、その」
 大量殺戮、記憶には残っていないが水晶の塔にうつっていた自分は紛れもなく自分で。
 あれはガデンツァの仕組んだことだからと言われても、ぜんぜんぴんっと来なかった。
 だから、死んで償う。それもありだと思ったのだ。
「死んで償うなんて、そんな事言うなよ」
 その時だ、ヨハンが暖かな笑みを浮かべて告げた。
 思わず春香はヨハンを見つめる。
 だが次の瞬間、薄く目を開いて彼は重たく告げた。
「……だって君、人を殺したんだろう? 人殺しが死んだくらいで許されるワケないじゃないか」
 心をえぐるような言葉、そしてえぐるような笑み。
 悪魔のような笑みを浮かべたヨハンとその言葉に思わず燃衣が立ち上がり詰め寄った。
「ふふふ、大丈夫。君のは事故で、愚神に操られただけなんだから。きっとみんなもう許してくれてるよ」
 けれど再び穏やかな笑みに戻った。
 その一瞬の出来事に春香は言葉を失う。
 そんな彼女をみてヨハンはさらに言葉を紡いだ。
 悪びれる様子も悲しんだ様子もなく、昨日の献立でも語るように無機質に、無感情に。
「精神を病んだ拉致被害者だから大目にみてもらえたけど、そうじゃなきゃ10回死刑になっても足りないくらいの事はしたと思ってるよ」
 それでいて彼の顔には笑顔が張り付いている。どこまでが本心で信実なのかもわからない言葉を並べる。
「一般人を両手両足の指の数ほど……まあ、『天国に御案内』した頃には、彼らが同じ生き物だとは思わなくなった」
 ヨハンは自分の指を見た。まるで今でも彼らの血がこびりついているとでも言うように。
「所詮彼らは家畜……」
 その言葉に理夢琉が息をのんだ。
「あはは、ウソウソ。そこまで思ってないって。でも実際、エージェントやってると一般人との交流なんてあんまり無いし、見ず知らずの人を必死こいて守れって言われてもねぇ」
 その言葉で理夢琉は視線を伏せた。重なる。瞼の裏によみがえる。
 血まみれの一室、血に濡れた自分の手。そして絶叫、それは自分の。
「で、何だっけ? 一人を救うために一人を犠牲にできるか? そんなの簡単だよ。僕は可愛い妻と娘をいつだって優先する」
 理夢琉は思った、自分にはできなかった。自分は何せ、一番大切な人をこの手で。
「エージェントだからって、誰でも彼でも助けられると思ってるんだとしたら、それは傲慢。人の生き死になんて元々人にどうにか出来るものじゃないんだしさ」
「でも、現に私のせいで死んだ人が……」
 春香がそう立ち上がり訴える、そんな春香を平然とヨハンは流した。
「それが傲慢だよ、おこがましいとは思わないのかな?」
「私は、でも。だったら。どうすれば……」
 燃衣が春香を振り返る。拳を握り締め俯く彼女はまるで世界から責め立てられているように見える。そんな彼女に燃衣はその手を伸ばした。
「助けられなくて当然、それくらいで丁度いいんだ。それにどうせなら、大事にしたい人を大事にしたいじゃないか」
「大事な人をこの手で壊してしまった場合は、どうすればいいんでしょうね」
 理夢琉がぽつりとつぶやいた。その言葉はヨハンに届かない。
「僕がエージェントを続けてるのだって、正義感や優しさじゃない。傷つけるのが好きだからさ……」
「そんな人が!」
 春香は激高した。今にも食い掛からん勢いで声を上げ、一歩踏み出す。その手に幻想蝶が見えた。
 けれどそんな春香など意に介さずヨハンは言葉をつづける。
「っふふ、罪深いだろう? 僕。……大丈夫、神様がじきに地獄にブチ込んで下さるから。地獄の炎に永遠に焼かれ、蝕まれ、苦しみを甘受し続ける。僕みたいなゴミクズには相応しい終わりだろう?」
「…………あなたはそれで、救われましたか?」
 春香がそう虚ろな瞳で問いかける。
「生きている限り。救われることなんてあるのかな?」
 痛んだ心は、痛んだままに、そのままに。
 生きていくしかないのだと。
 ヨハンはそう、語っているのだろうか。
 だとしたなら、血を吹きだす心臓を抱えたまま。
 どうやって生きることができるだろう。
 分からない。彼にはその答えが見えているのだろうか。
 春香はヨハンを見つめた。
「あなたの言うように、仕方ないと、それはそれで仕方ないと諦めれば、生きていけるようになりますか?」
 春香の頬を涙が伝った。燃衣は伸ばした腕を止める。
「いや、そうじゃない。けれど……」
 ヨハンは一瞬考えて、そして言葉を切る、それ以上は話す必要がないと判断したのかヨハンは、また天使の笑みを作って告げる。
 言葉を飲み込んで、春香に問いを投げる。
「で、どうだい? 自分が少しはマシに思えたかい?」
 その時春香は理解した。
「ましって。どういうことですか?」
「…………」
 ヨハンは答えない、答えを待っている。
「私が、ヨハンさんより、ましって。なにが」
 その時春香は気が付いた。ヨハンのだらりと下げられた手に、ファニーが指をかけている。
 父を見あげて心配そうに表情を見つめる少女。そんな少女の見つめる先に、人を殺し喜ぶ悪魔がいるだろうか。
 春香の瞳に色が戻っていく。
「私、ヨハンさんを誤解してました」
 その言葉に初めてヨハンは目を見開く。
「ヨハンさんも探し続けてるんだね。ありがとう」
 痛んでないはずがない、苦しんでないはずがない。
 だって、こんなにやさしい人の心が痛まない事なんてあり得るだろうか。
「……あっはは、そりゃあ良かった。悩みから立ち直るためには、自分より下の奴を見つけるのが一番だからね」
 その言葉に春香は眉をひそめて天井を見あげた。零れ落ちる涙を止める術も分からずただ茫然と。空を見上げる。
「私たちは、どんなことをしても許されない罪を背負ってるんだ。ああ、そうか」
 春香は思う、自分の甘さがそこにあったと。
「私、ルネを殺した罪から一生逃れられないんだ」
 自分はただ単純に逃れたかったのだと。許されるんじゃない逃れたい。
 その一心で自分は旅を続けてきたのだと。
「私、全部なかったことにしたかったんだ。最低だ。私」
 その時、床に陶器の投げ出される音がした、見れば理夢琉が床にマグカップを叩きつけて荒い息をついている。
「逃れたいってなんですか」
 理夢琉はふらりと春香に歩み寄る。
「大切な人を殺した、それから逃れたいってなんですか!」
「…………ごめん」
「私、爺やを殺しました。この手で!!」
 愚神が現れた時の記憶は曖昧だけど爺やが側に来てくれたのは覚えてる。けど。
「嫌だって抵抗した、でも気が付いたら……爺やがバラバラになってて……私の……手は赤く、染まってて……。でもその光景から目をそらしたことはない!」
「理夢琉ちゃんは強いね、私にはむりだよ、そんなこと」
「逃げないでください! 落ち着いたふりして、また逃げるですか!」
「だったら! どうすればよかったの? 過去はどうにもできないんだよ! だから」
「ルネさんの事なんか、自分で殺したみんなの事なんか忘れたいって、そう言う事ですか?」
「……それのどこがいけないの? 私は私は!」
「落ち着いてください、斉加さん、春香さんも」
 燃衣がその手を取る。しゃくりあげる理夢琉の手を下ろさせ。そして。
「私、止められない。また壊してしまう、春香さん、お母様と同じ目をしていた」
 現実ではないどこかを見つめる瞳。その瞳をみせた者がどうなるか理夢琉は知ってる。
「……ボクは……分かるよ。春香ちゃんの気持ち」
「え?」
 春香は燃衣を見つける。
「話したでしょ。ボクは自分の選択の結果、大勢を見殺しにしたって事」
 手が震える燃衣。思い出すは炎、命乞、悲鳴、鮮血、嘲笑。絶望。
「……弟も、ボクが殺したんだ」
 炎の中に消える最愛の弟の姿。
 そして、次に蘇るのは。ルネの。
「ルネさんも、ボクは救えなかった」
 その笑顔、ひび割れる笑顔、砕け散る笑顔。
「怖いのも一緒。失敗したら…………救えなかったら。仲間が殺されたら……」
 燃衣は思う、自分をしたい集まってきてくれる人達。彼らと共に、死を覚悟するような戦場に立ったこともある。
「更に……ボクはこの先きっと……《彼》を殺さなくちゃいけない」
 憎き相手。ラグストーカー。
 眩暈がするように折り重なる運命の輪の中に、燃衣は捕えられていた。
「……ボクは自分が赦せない。殺したい……そう思うよ」
 でも、その運命に抗うことを、諦めることはなかったのだ。
「だけど、ボクは戦う。それは憎悪の為でもある、けど……」
 同時に思う、死んでいった彼ら、彼女たち。
 あの人たちの願いはなんだったのだろうと。
 ひとえに誰かの幸せではなかったか。
 犠牲になった人々は皆、誰かの笑顔を望んで消えて行った。
「意志を…………継ぎたいから」
 響く歌。舞い散るトランプ。
 大切なあの子は光に飲み込まれるように消えて行った。
 希望を残して。
「それに、戦わなければアイツ等は高笑いをして、もっともっと大勢の人々を虐殺するから」
 燃衣は顔を上げる。
「共に戦う仲間も居るから……ねぇ春香ちゃん? その仲間にはキミも入ってて、ボクは何度もキミに救われてるんだよ?」
「え?」
 春香が首をひねる。
「例え他の誰がキミを責めても、ボクはキミを赦すよ」
「私を許して……くれる?」
「い……嫌だ、壊れないで春香さん!」
 その時、理夢琉が春香に抱き着いた。声をあげて泣く彼女を春香は抱き留め頭を撫でる。
「春香、君は」
 アリューが声をあげる。
「誰かを頼ったことはあるか?」
 アリュは告げる、考えながら話しているようで言葉はゆったりとしていたが。
「理夢流は俺にその罪を話してくれた。契約破棄も覚悟してだ」
 しゃくりあげる理夢琉の頭を撫でてアリューが告げた。
「俺はそれを一緒に背負い戦うと決めた……。お前はerisuと話したのか? 英雄ルネの時のように、戦う理由を」
 春香は共鳴を解いた。椅子の上にちょこんと現れるerisu。
 erisuは不思議そうに春香を見あげる。
「話してない」
「春香さんは勝手です! 全部一人でやろうとする、何も話してくれない」
「苦しい時に、erisuにさえ、何も言わないのだろう?」
「それで勝手に戦うことをやめるんですか? だったら、だったら何のために」
 あの時ルネは消えたというのであろう。 
 あの時、じいやは死んだというのだろう。
「それは、私は、どうしようもなく許されない人で」
「……なら、ボクも死ぬべきだよね?」
 春香のうわ言に燃衣は間髪入れず言葉を返す。
「違う! 燃衣さんは死んじゃだめだ」
「だったら、ボクと君は何が違うの!? 間違ってる。赦されないと思う事が違うんだ!」
「許されない! 許されないよ。私が私を一番許せない。殺してしまいたい。私なんて、私なんて」
「これだけ言っても分からないのか、春香ッ! ルネさんが遺した言葉はそうじゃないだろッ!」
 ルネ、その言葉に春香は目を見開く。
「私が戦えるのは一人じゃないから、英雄がいて、仲間がいて絆ができる。大切だった人達ともつながってる絆……その糸を引き合ってピンと張って」
 そう涙をぬぐいながらも理夢琉は顔をあげた、春香の頬をぬぐう。
「「きれいな絆の音色を奏でたいから」」
 アリューと理夢琉の声が重なった。
「違うんだ……《自分で自分を赦す》……それこそ傲慢なんだ」
 燃衣はトランプを幻想蝶にしまう。その瞬間彼女の笑い声が聞えた気がした。
 あの日のトランプ、それが今も自分の力になっている。
「ボクはそう言われた。貴方の罪を決めるのは貴方じゃない、と」
 そして向き直る。
「だから、私達が貴方赦す、と」
 燃衣は思う、トランプだけではない、自分は沢山の人に助けられてきた。
 許されてきた。
 だったら自分もそれを返そう。
 一人で泣いて戦う少女に手を差し伸べよう。
「だから、ボク達がキミを赦す」 

「…………言ったじゃないか、共に生きようって」

 その言葉に春香は嗚咽を漏らして泣き始めた。
 誰かに、生きててもいい、そう言われたかったのだ。
「本日の事案は此処か」
 そんな空気を粉砕してネイが現れる、チャーハンのおかわりに、牛丼。追加でお汁粉が来るらしい。炭水化物取りすぎではなかろうか。
 そんなネイと入れ替わりでヨハンは退場する、ファニーの手を引いて、一度春香を振り返るが、柔らかく微笑んでその場を後にする。
「春香。直接殺し合うだけが《戦い》では無い。無限の戦い方を学べ。だが、戦う事そのものから逃げるな。生きる事は戦う事だ」
「うん!」
 そう元気よく答える春香は明るく輝いていた。


第三章 生きることとは試練なり

 とある大ホールに向かう廊下。『無月(aa1531)』と『ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001)』は春香を挟むように歩いていた。
 ジュネッサはerisuの手を引いている。

『優しい心はそれ故に己の魂を苦しめる。だが、その優しさがあるからこそ人は人足り得るのだと私は思う』

 そう以前に言っていた無月の言葉をもい出してジュネッサは春香へと向き直った。
「私、H.O.P.E.やめようかと思うんだ」
「君の気持ちは痛いほど解る。私も少し前の任務で少年を救えなかった事があった」
 無月は語った。目の前で愚神となり果てた少年。あの時の光景は一生忘れないだろう。
「苦しかった、許せなかった、未来を生きるべき少年が、罪も無き魂が無残にも命を散らした事に対する理不尽を。そして何よりそれを止める事が出来なかった私自身の弱さを」
 一行はホール手前の扉で止まった、その向こうに最後の試練が待っている。
 そうジュネッサが告げると春香は頷いて無月へと向き直った。
「だが、彼は最後に私の事をヒーローだと言ってくれた。彼の想いは私の中に生きている。だから、私はヒーローになれずとも少しでもヒーローに近づこうと足掻き続ける」
「ヒーロー……」
 春香はその言葉を噛みしめるようにつぶやいた。
「救えなかった人達の想いは決して忘れはしない。逃げてしまえば彼らの想いを、無念を捨ててしまう事になると思うから、私は前に進み続けようと思うのだ」
「私も、そんな強さを手に入れたいと思う。けどまだ少し、勇気が足りないみたい」
「ああ、だったら僕たちがついてる。行っておいで、大丈夫君は一人じゃない」
 ジュネッサはそう告げると、無月と一緒に少し後ろに立つ。
「ありがとう!」
 告げた春香はそのホールの扉を開いた。
 ここは通常時は訓練施設だが、今日はホールの真ん中にテーブルがセッティングされていて、そこに澄香、稜が座っている。
 部屋の隅っこにはアルと白江。
 そして異彩を放つのは共鳴済みなナラカである。
 彼女は何も言わない。春香を見ることすらせず、黙って事の成り行きに耳を傾ける。
「最後に言っておく」
 無月がそう春香に言葉をかけると、春香はテーブルに歩み寄る足を止めて振り返った。
「殺したのは君ではない、真に許されざるは君を操った者だ。それでも納得出来ないのであれば、それ以上の命を救う事だ、それは今の君なら出来る事なのだから」
「それを、見極めてくるね」
 そんな春香を誘うようにクラリスが椅子を引いた。
「こちらへ」
 春香の今日までの旅は、ずっと観測されている。
 澄香もクラリスもそうだが、この場にいる全員が知ってる。
 席に座る春香。真っ先に目についたのは資料集めで澄香の目の下にはクマができていること。
 それでもシャンと伸ばした背は崩さない。
 そう言う人なのだ澄香は。
「PTSDやサバイバーズギルト等の可能性もあります。医療機関の協力も必要かも知れません」
 春香が着席するなりクラリスが資料を見ながらそう口火を切る。
「気分転換になればって色々連れまわしたけど、悩むよなぁ。10代の女の子だもん」
 白江はこれが旅だと言った。
 確かに、実際に足を運んだ場所は少ないが困難としては旅と言って差し支えないものだった。
 だがそれ故に春香は成長し。少しだけ以前より落ち着きを取り戻しているように澄香には見えた。
 だからこそ、ここで手を抜くわけにはいかない。
 澄香は資料を並べて見せる。
 愚神が起こした事件、関連調書。中には下っ端エージェントでは閲覧できない資料も含まれていた。
 それを借り受けるためにどれだけ頭を下げて回ったか。
 それを澄香は一切口に出す気がないようだ。
「誰かを殺した自分が生きているのが許せないって、言ってたね?」
「うん」
「まずは論理的に客観的事実説明しましょう、お手元の資料三ページから」
 目に飛び込んできたのはガデンツァの資料、その能力についてのまとめ、解説、解析。
「水晶の塔の時のね。あちら側から見せられた映像では判断できないよ」
「複製に記憶操作はあちらの得意技ですよ?」
「君は関係者であって、加害者なんかじゃない。全て自分のせいだなんて決めちゃ絶対にダメだ」
「それが、私の記憶にこびりついてるんだとしたら?」
「それはガデンツァの植え付けたものかもしれないよ」
「それでも、私がみんなを守れなかったのは事実だよ」
「それは、否定しない」
 澄香は淡々と告げる。
「でも、それは春香が気に病むことじゃないよ」
「複数の弁護士、当時の事件に携わったHOPE職員、NPOから得た情報を纏めです」
 そうクラリスが新たな資料を差し出した。
「愚神による精神操作や邪英化による、本人に意思のない犯罪行為に対しての法的罰則。調べましたが、この世界の法のどれも、あなたを罪には問いません」
 そう、春香の社会的立ち位置の安全を明確にする。
「ありがとう、みんな、私を許してくれようとするんだね。でもごめんね、我がままを言って。私まだ、自分を自分で許せない。自分の事が大嫌いなんだよ」
「だったら」
 そう口を開いたのは稜である。そんな彼を不安げにリリアが見下ろした。
 大丈夫、そう一つ笑みを投げると稜は淡々とお話を始める。
「昔話をしてあげる。ある所に、一人の優しい青年がいました。
 青年には、とても仲の良い友人がおり。
 二人はいつも一緒に居ました」
 その時春香は気付いた。これはきっと彼の物語だと。澄香も同じだろう、稜をみた。
「ある時、友人は青年を忌避するようになり、青年は友人の周りの人間や友人自身に色々事情を聞きましたが、誰も答えてはくれませんでした。
 ある日の夜、友人に呼ばれ青年は急いで公園に行くと…………そこには、愚神に取り憑かれた友人がいました。友人に、襲われて瀕死の所で、青年は英雄と誓約しましたが、青年は自己の命を守る際に友人を殺してしまいました」
 春香は拳を握りしめてその話を聞いていた。
「友人からは『何故お前なんだ! お前さえいなければ!』と恨み言しか聞けず、死んでしまいました」
 この旅で春香は多くの痛みを知った。いまだに心に突き刺さり、血をだくだくと流させる傷。
 きっと癒えることがない傷。
 それは直視するだけで痛いはずだ。触るだけで痛いのだ。それなのになぜ。
 そう春香は思う。
「その事件で、青年は周りから人殺しと蔑まれるようになり、青年は住んで居た所から消えました……」
 そう稜が言葉を終えた時、春香は瞳を伏せ涙を流す。
 春香にも稜の気持ちがわかる、わかるのだ。
「春香さん。青年は、友人を殺した事から許されるつもりはないけど……。
 自分の命を使って何が出来るか考え、誓約にも合致する【誰かを助ける】事に決めたんだ。
 青年は償う為に死んだら、奪ってしまった命が本当の意味で無駄になってしまうから、自分の手が届く範囲の誰かを助ける事を、死ぬまで続けてそれを最後まで続けれたら償えたと思うようだよ」
「教えて、稜君。その人はその友達を殺してしまったことどう思ってるのかな」
「ずっと後悔しているよ、夢に見るんだ。あの時ああしていたならって、何度も考えるよ」
 春香はしゃくりあげて言葉を詰まらせる。
「春香さん、人の命をうばってしまった人殺しなら僕も同じだよ…………僕を殺す?」
 そう両手を広げた稜。それに春香は首を振った。
「苦しむ人はたくさん見てきた、その人達がみんな、みんな裁かれなければならないと。どうしても思えない」
 稜の言葉を継ぐようにクラリスが言葉をかけた。
「法的に問題は無くても、納得できない気持ちは痛いほど。ですが、同じ目にあった方々は皆許されなのでしょうか?」
 そう言って最後の資料をクラリスはテーブルに乗せた。
「自分を救えるのは、自分だけです」
「そして、春香は自分を救えるくらいの事、してきてるんだよ?」
 涙をぬぐって春香は見た……その資料を。
 それは事業計画、業務提携書。ボランティア活動の書面で、資料として並ぶ写真には沢山の笑顔が刻まれていた。
「これはモノプロとグロリア社の業務提携内容です『得た収益は愚神被害への福祉へ』そう私たちは活動してきて、それが結構な額になってます」
「すごいよね、この間愚神被害にあった地域に小学校をたてたんだよ」
 澄香の抱える借金の数倍の金額の施設である。
「ごめん、涙でみえない。もっと教えて」
「切っ掛けは、貴女です。貴女とルネが繋いだものが、今でも誰かの幸せに続いているのです」
「私とルネ?」
 その時、やっと春香は思い出した。ルネがしきりに口にしていた言葉。
 この世界が大切だから、大好きだから、護りたい。
 いつの間にか春香はそれを忘れていた。そのためにルネは塵となって消えたけど。
 その塵や灰は世界を巡って誰かの助けになっているのだ。
「ありがとう、ルネを忘れないでいてくれてありがとう」
 春香は泣きながら澄香の手を取った。
「みんなを助けてくれて。私たちに意味をくれてありがとう、私を救ってくれてありがとう」
 そんな春香の頭を撫でて澄香は告げる。
「怖いままでいいんだ」
 嗚咽がホールにこだまする、けれど春香の耳に響いているのは別の音。
 ルネの歌声に、アルやみんなの声が重なる。
「怖いままでも、君は立って歩いている」
 単なるやせ我慢で、不安でうろついていただけの自分。それを澄香は、それでいいと許してくれた。
 こんな不器用な生き方をみんな許してくれる。
「だって、私たちに相談してくれたじゃない?」
 春香は声をあげて泣いた。
 そんな春香から離れてerisuはアルと白江に向かった。
 二人を交互に見つめて、ラララとメロディーを口ずさんで笑う。
 彼女なりのお礼の意思表示だったらしい。 
 それが伝わったかどうかはおいておいて。
「澄香よ、どうかな。春香の様子は」 
 そこで初めてナラカが動いた、春香の背後から歩み寄り。威圧感を漂わせながら春香の前に立つ。
「え? ナラカお姉ちゃん。どうするつも……」
「いや、優しいのはもう十分だろうと思ってね」
 次の瞬間広がったのは光捕えて焼きつくす懲罰の翼。違う、膨大なライブスがうねり放出し、それだけのものをみせたのだ。
 それを前に春香は一歩も引かない。
「して、どうだった? 迷いは断ち切れたかな?」
「難しいことばっか考えて、頭がぐちゃぐちゃになっちゃった」
 そう春香はerisuを呼び戻して共鳴、ピアノ線を周囲に張り巡らせる。
「春香よ、最初から汝の思うがままに進めばよかったのだ。自責に溺れながら、その解決でなく酔い痴れるばかり、許せぬなら許せぬままに進めばよかったろうに」
「うん、本当にそうだった。私が走り出した本当の目的忘れてた」
「それすら出来ずに救えぬ恐怖を口にするなら、それは我が身可愛さの良い証拠だよ」
「うん、私逃げてた、もう逃げない。
 みんな私を許してくれた。私は私を許していいんだって、そうとも思える。
 心が明るくなった。ありがとう。
 でも自分を許せないって気持ちも、ずっと持ち続けていくと思う。
 だから、自分を許せないまま。何かを失うことを怖がる心のまま。前に進める方法を教えてください!」
 そう春香は頭を下げる。
 それを見てナラカは笑った。
「良い、挑む事を許すぞ。覚者よ、ちと協力してくれ」
――いいのか? 本当に。
「ああ、春香は全力で来るぞ、であれば全力で返すのが礼儀というもの」
――どうなっても知らないからな。
 カゲリが全ての力を、権限を譲渡する。
 次いで場を満たすのは膨大な霊力。ナラカの姿が邪英時の姿をかたどっていった。
「ならば一時、神である私が裁定を下してやろう。
 今は生きよ、その歩みを以て汝の贖罪としよう。
 存分に苦しむが良い。
 何故なら、正道とは常に痛苦を伴うものであるのだから」
「よろしくお願いします!!」
 彼女に取って、厳しさこそが優しさである。それは春香もよくわかっている。
 稜がすぐに救助に入れるよう審判役としてホールの端っこに待機。
 全員がその戦う末を見守る。
 そんな中最初に動いたのは春香である。
 ピアノ線を弾くと音が世界を満たした。
「武闘の音~over~!!」
 広がる旋律をナラカは真っ向から粉砕して笑う。
「さぁ、春香! 今日まで積み重ねてきた思いを糧に、私に挑むがいい。どんな試練を乗り越えてきたか、見せるがいい!」
「いきます!!」

エピローグ

 戦いに敗れ寝転ぶ春香。そんな彼女を稜が治療していた。
「模擬戦でこんなにぼろぼろになる人を初めて見たよ」
 その言葉が示す通り、春香は数時間ほど動けないくらいにメタメタにやられていた。
「えへへ、強かったなぁ」
 それでもめげないあたり、やはり春香は体育会系である。
「ありがとう、稜くん」 
 そんな春香を覗き込んでジュネッサが問いかける。
「春香君、君は無月に似ているね」
「ん?」
「それは真面目で全部自分で溜め込もうとする所さ。でも、それじゃあ最後には溜め込みすぎて壊れちゃうよ。え?何で無月は大丈夫なのかって?」
 無月の首に腕を回しながら、ジュネッサは笑った。
「それはね、ボクがいるからさ。一人で苦しまないようにボクがフォローするから、彼女は強くいられるんだ」
「うん、そうだね。結んだ絆の分だけ私たちは強くなれるんだって知ったよ」
「周りを見てご覧。君にも素晴らしい仲間がいるじゃないか。いいんだよ、彼らに甘えても。それが皆の望みなんだから」
「ありがとう、と言いつつさっそくお世話になってるんだけどね」
 その言葉を受けて稜がため息をつく。
「重体一歩手前でそんな笑顔されてもね」
「互いに助け、助けられる。君は一人じゃない、皆と一緒に前へ進んでみたらいいんじゃないかな。もちろん、ボクでよければデートのお誘いは大歓迎さ」
「ありがとう、ジュネッサさん、みんな」
 そう笑う春香は以前にもまして晴れやかだった。
 最後に、澄香が春香に歩み寄る。
「イリスちゃんの邪英化の時を考えると、ルネさん外部からの情報を受け取っているのかも」
「うん」
「それなら、捕らわれたあの子の心を勇気付けられるのって、君の涙や苦悩じゃないと思うんだ」
「うん、澄香の言うとおりだ。私生きるよ。私もあの子の想いを受け継いでるんだとえ胸を張りたい」
 そう春香は澄香に手を伸ばす、その手を澄香がとった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
  • 急所ハンター
    ヨハン・リントヴルムaa1933
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 夜を切り裂く月光
    無月aa1531
    人間|22才|女性|回避
  • 反抗する音色
    ジェネッサ・ルディスaa1531hero001
    英雄|25才|女性|シャド
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • 見つめ続ける童子
    白江aa1730hero002
    英雄|8才|?|ブレ
  • 急所ハンター
    ヨハン・リントヴルムaa1933
    人間|24才|男性|命中
  • エージェント
    ファニー・リントヴルムaa1933hero002
    英雄|7才|女性|カオ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • これからも、ずっと
    柳生 楓aa3403
    機械|20才|女性|生命
  • これからも、ずっと
    氷室 詩乃aa3403hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 特開部名誉職員
    高野信実aa4655
    人間|14才|男性|攻撃
  • 親切な先輩
    ロゼ=ベルトランaa4655hero001
    英雄|28才|女性|バト
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