本部

【幻灯】虹の橋を渡って

電気石八生

形態
シリーズEX(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,800
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/09/16 16:56

掲示板

オープニング

●己とわたし
 自ら鏡面体へと跳び込んだジュリア・イトウ。
 彼女は今、“黒”の内をひた駆けている。
 ジュリアが一歩を刻むたび、“黒”の内にかすかな彩がついては消える。像を結びかけては、崩れ落ちる。
 ……セットがうまく組み上がらない。この子、ライヴスがすごく少ないのよ。死にかけてるみたいに。
 舌を打つ「わたし」に、「己」が言葉を返した。
 ……はっきりな知れの。これをどの戦にいれ娘御の。通し稽古が対象とこれほどがものにない。再び攻め寄せをためだ。
 自分にとってこれ以上のリサーチ対象はないと「己」は語る。
「わたし」はしばし思い悩み、決めた。
 あんまり気乗りしないけど、エキストラを呼んでセットを組むライヴスをもらいましょうか。オーディションは、そうね。この子にしてもらうってことで。

●H.O.P.E.東京海上支部・ブランコ岬対策本部
「ゾーンルーラーの目的は、エージェントの“弱さ”を知るためのリサーチだそうですよ」
 本部長が同時中継で繋がれたニューヨーク本部とジョアンペソア支部の面々へ肩をすくめてみせた。
『そのリサーチはどうやら失敗続きのようだが……鏡面体に引き込まれたというMs.イトウの反応はまだ掴めていない?』
 ニューヨークから幹部が問い、ジョアンペソアの支部長がうなずいた。
『はい。しかしこれはひとつのきっかけにはなるかと思っています。彼女は、「ブランコ岬防衛戦」を支えた伊藤哲の契約英雄ですので』
 東京海上支部の担当官として会議に加わっていた礼元堂深澪(az0016)が眉尻を強く跳ね上げた。
「――どういうことですか?」
 ジョアンペソア支部長は深澪を制し、静かに口を開いた。
『我々の事前調査と東京海上支部の最初の調査から、ひとつの推論が導き出されています。ゾーンルーラーが、ブランコ岬防衛戦を引き起こした当の愚神なのではないかと』
 支部長はここで一度言葉を切り、思い切るようにまた口を開いた。
『しかし、あのときの愚神であると断言はできないのです。あのとき見たものとあまりにちがう。海棲生物を模したあの愚神は、力こそ強大ながら知能は低く、ドロップゾーンを無秩序に構築しながら攻め寄せるばかりでした』
 攻防戦の資料をパソコンの画面に呼び出し、確かめていた幹部が口を挟んだ。
『そのドロップゾーンのルールは? こちらには虚像を見せる、としか書かれていないが』
『取り込んだ者に過去の情景を見せて動揺させる。それだけのものでした。エージェントであれば捕らわれることのない、子供だましです』
 むしろ単純な攻撃力のほうが脅威でした。付け加える支部長。
『報告にあった“わたし/演者”と“己”の関係が気になるね。攻防戦の資料にはどちらの一人称もなかったはずだ』
 息をつく幹部に本部長が右手を挙げて。
「俺は援軍のひとりで現場に行ってるんですが、そのとき一人称ってのは使ってませんでしたね。それより、言葉が怪しくてなに言ってんのかわかりませんでしたよ」
『それこそ知能の問題かな。ともあれ、“わたし”か“己”か、その登場ないし発生によって、自分という存在を分けて考える必要が生じたのかもしれないね』
 幹部のコメントにうなずいた本部長は顔をしかめ、唸る。
「あー。それにしてもひでぇ戦いでした。俺ら援軍80組が到着するまで、ジョアンペソアは20組で1000匹相手にしてたんですから。再起不能が11組、死亡が……伊藤も入れたら6組半ですか」
『あのときは申し訳ありませんでした。すべては当時の支部長を諫められなかった私の咎です』
 支部長が深く頭を下げ、本部長はただ無言でかぶりを振った。
 当事者にしかわからないなにかがあるということなのだろうが……深澪は厳しい顔のまま立ち上がり、歩き出す。
「支部長、あなたのお考えはわかりません。でもウチの英雄を利用したんだってこと、忘れませんから」
 支部長は半ば閉ざした目を中空へ向け、つぶやいた。
『けして得られるはずのない機会を得たのですよ。ジュリア・イトウも、私も』
 深澪は応えることなく部屋を出た。疑問と苛立ちを飲み下し、エージェントたちにジュリア救出を要請するために。

●開幕
 さあ、Cinemaの扉を開くわよ。
 今度のFilmeは戦あり、人情あり、涙ありの超大作。出演したい子は正装していらっしゃいな。主演女優のお眼鏡にかなった子だけ出演させてあげるから。

解説

●依頼
 ブランコ岬の鏡面体へ突入し、能力者と英雄とで再び「誓約」を交わしてください。

●黒い鏡面体
・日曜日の22時、灯台のライトの表面がドロップゾーン化します。

●鏡に映る情景
・黒の内に、前々回と前回の参加PCの場合はそこで見た情景が入り交じる形で映し出されます(ですので指定は不要です)。
・新規ご参加の方は、恐れ入りますが能力者と英雄が制約したときの場所や状況をプレイングでご説明ください。それが黒の内に映し出されます。

●為すべきこと
・最初、能力者と英雄はそれぞれが見た情景の中にいます(英雄はこの情景にいる間、過去の記憶を取り戻すものとします)。ジュリアの魔法攻撃を避けつつ、互いの元まで駆け抜けてください。
・ジュリアは魔法と共に問い(1.能力者/英雄をどう思っているのか。2.能力者/英雄を失うことが怖くないのか。3.能力者/英雄を失ったらどうするのか)を投げかけてきます。言葉なり態度なりで答えてあげてください。
・能力者と英雄が出逢ったら、互いに再び制約を交わしてください。それによって共鳴が成ります。
・共鳴すると黒は祓われ、目の前に「ブランコ岬攻防戦」の情景が拡がります(これが今回のエンディングとなります)。

●ジュリア・イトウ(14歳/ソフィスビショップ)
・表情豊かで元気な少女でしたが、今は無表情で頑なです。
・あなたはジュリアや哲と「知り合い」であることも「見知らぬ同僚」であることもできます(知り合いの場合は関係や過去エピソードを自由に設定可)。
・哲との誓約は「楽しく生きる」。

リプレイ

●眼前
 日曜日の22時。
 一週間前にジュリア・イトウを飲み込んだ鏡面体が、何知らぬ顔でその黒を世界へ顕わした。
「自分の手で相方を生かしてたスイッチを切る――俺にできるかな」
 事前に関係者からジュリアについて知る限りを聞き出していたGーYA(aa2289)は憂い顔を左右に振り、内に在る英雄まほらま(aa2289hero001)へ意識を向けた。
『あたしはどうかしらねぇ? まぁ、縛られてるよりはいいかも?』
 まほらまの言葉に応える者はなかった。
 ――意識が戻る見込みなく、ただ「生きている」を持続させられていただけの伊藤哲。
 ジュリアは解放したのだ。哲から自分をではなく、自分から哲を。共に逝くことも、彼の傍らでいつか来るかもしれない奇蹟を待つことも棄て去って。
「ジーヤ」
 日暮仙寿(aa4519)がGーYAの肩に手を置き、うなずいた。わかってるよ。ただそれだけを伝えるために。
『迎えに行こう、仙寿様』
 内から仙寿の心を押し上げるように、不知火あけび(aa4519hero001)が拳を握り締めた。
「僕たち、守れるかな。助けられるのかな」
 ハーメル(aa0958)がいつにない厳しい顔で鏡面体をにらみつける。
 ジュリアは契約主と共に死ぬため、偽りと知りながら過去の情景へ向かったのだ。そんな彼女へ、自分はなにができるというのだろう?
『悩むな。できることがほかにないなら……できることをするよりない』
 墓守(aa0958hero001)はささやくように告げ、元のとおりに押し黙った。
「主よ、暗闇を這い進む子羊に導きの光を」
 星空へ祈りをささやくシェオル・アディシェス(aa4057)へ、内のゲヘナ(aa4057hero001)が苦笑とも嘲笑ともつかぬ、カラコロと乾いた音を投げる。
『誰もが目を塞がれ、深淵の縁を這っている。見えぬからこそ這えるというに、光あれとは酷いことを願うものよ』
 その言葉に、レイラ クロスロード(aa4236)が自らの両目を塞ぐ包帯に触れて、ぽつり。
「“見えない”と“見ない”って、ちがうのかな?」
 レイラに応えたのは内のN.N.(aa4236hero002)。
『水に飛び込むとき、風に向かうとき、目を開けたままではいられない。見据えるのは、本当に見なければならなくなったときでいい』
 一方、夫である加賀谷 亮馬(aa0026)の傍らに立ち、鏡面体を見やっている加賀谷 ゆら(aa0651)。その内からシド(aa0651hero001)が声を発した。
『これまで2度、オレたちは問われてきた。自分というものをな』
 亮馬の内に在るEbony Knight(aa0026hero001)がうなずいて。
『此度も問われるのであろう。我か亮馬か、それとも別のなにかか』
「なにを訊かれても、見せられても突っ切る。それでジュリアさんを引っぱり戻す。だろ?」
 言い切った亮馬の青き装甲に鎧われた顔を見上げ、ゆらは静かに言葉を紡ぐ。
「そうだな。私たちは過去を踏み越えてここまできたのだから。それをジュリアに示そう」
 ふたりと同じ【戦狼】に所属する志賀谷 京子(aa0150)が、内のアリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)へいたずらっぽく笑みかけて。
「なんとかなるでしょ。無茶振りは慣れてるもんね、わたしたち?」
『ええ、わたしは慣れたものですね。主に京子のおかげで』
 アリッサの返答はシニカルであった。
「――だそうよ?」
 橘 由香里(aa1855)が内の飯綱比売命(aa1855hero001)にアリッサの言葉を投げつけた。
『それは大変じゃな。いや、あの者の気苦労、わらわも共感せずにいられぬわ』
 しれっと返す飯綱へ、由香里は盛大に顔をしかめてみせた。
「彼の娘御は逃げた。今現在の戦いに背を向け、あろうことかしくじった過去へと」
 鏡面体へ歩み寄ったソーニャ・デグチャレフ(aa4829)は口の端を歪め、吐き捨てた。
「小官は逃げぬ。祖国を取り戻すためならば何度でも黄泉帰る。……弱さにかまけている暇など、小官にはないのだから」
 彼女を包む装甲と化したラストシルバーバタリオン(aa4829hero002)は黙して語らず、自らのライヴスをソーニャのライヴスに合わせ。
 鏡面体へとその身を躍らせた。

●加賀谷亮馬/Ebony Knight
 黒の内に生じた赤。それはかつての彼が保っていたものすべてを焼き尽くした炎の色。
 瓦礫を踏みしめて立った亮馬は、寸分違わぬ“あのとき”の情景に眉をひそめた。
「俺はまた、引き戻されたのか」
 内に在るはずのEbonyはなく、その両手は血の通う生身。
「取り戻したってことなのかもしれないけどな。全部失くした機械の手でつかみ取ったもののほうが、今の俺には大事なんだよ」
 と。死の街をなめる炎が激しく燃え立った。この感じ、ブルームフレアか!? 炎に追い立てられ、亮馬は駆けた。
『ここを越えて、君と英雄は出逢ったんだよね。どんなふうに思ってる? ひとつになれるくらい信じた相手のこと』
 どこからともなく降りそそぐ少女の声。
 半ば反射的に亮馬は叫び返す。
「難しいこと聞くんだな! エボちゃんはいちばん長い間俺といっしょにいてくれて、俺のこと理解してくれる妹みたいなもんだ! いや、父親、友だち、師匠かもな。全部まとめちまえば――家族だよ。世界でいちばん気になる相手さ」
 一方、白いばかりの空間を駆けるEbonyは同じ問いに対して渋い顔で応えた。
「初め、我は亮馬の母であった。それほどに奴は手のかかる、なにもできぬ子どもだったのだから。我が導かねばならぬ、そう気を張っていたものだが……今はそう、兄妹であり、姉弟であろうか。正直、寄りかかっているのは我のほうであろうよ」
 Ebonyはふと表情をゆるめ。
「生きることのすべてを教えてくれたのは亮馬だ。魔道式駆動鎧殻を操るために腕と脚を切り落とされ、ただの部品として成形されてきた我を“人”にしてくれたのは」
 少女の声が乾いた笑みを刻み、ふたりの情景を燃やしていく。
『大切なんだね。お互いがいなくなったらって考えたことない? 怖くないの?』
「怖いよ。ゆらが死んじまうのと同じくらい」
 亮馬が断言し。
「怖いさ。汝は誰ぞと首を傾げられるほどに取り乱すことだろう」
 Ebonyもまた断言した。
 亮馬とEbonyの先に続く情景が歪み、靄めく。まるでそう、声の主の苛立ちを表わすかのように。
『じゃあ、その人が死んだら、どうするの?』
 亮馬が返したのは、不敵な笑みであった。
「みっともなく泣いてやる。いろいろと後悔だってする。でも!」
 Ebonyが返したのは、真摯な笑みであった。
「その原因を、理由を、運命とやらも含めて絶対に許しはしないだろう! しかし!」
 炎がふたりに追いついて、その体にまとわりついた。
 肌を焦がされる痛みと息を奪われる苦しみとに苛まれながら、それでもふたりの言葉は途絶えない。
「俺は前へ進むよ。エボちゃんとの約束破るなんて、ありえないんだからさ」
「我は前へ進もう。哀しみも怒りも踏み越えて、亮馬の望むまま、まっすぐと」
 言葉のとおり、ふたりは燃え尽きそうな体をひたすらに進ませる。
 なぜだろうか、確信があったのだ。この先に、自分が望むたったひとつのものがあるのだと。
 炎をかき分け、苦痛を飲み下し、一歩ずつ、前へ。前へ。前へ。
 果たして。
 情景を焼き尽くした炎のただ中で、ふたりは互いの姿を見いだした。
「あんなに白かったのにずいぶん黒くなったな、エボちゃん」
 焼け焦げた亮馬の腕が、回路をまとって鉄腕と化す。
「消し炭がそれを言うか、亮馬」
 腕を失くしたEbonyの肩口から、機械が生えだして機腕を成す。
 あのときに囚われていたそれぞれの形が今このときを取り戻した。
「また逢えたな」
「うむ。我らふたり、今このときより先へ進むため、交わすべきを交わそうか」
 万感を込めて唱えたEbonyが亮馬を促した。
「何者にも屈しない俺を貫く」
 亮馬の鉄腕がEbonyの機腕を掴み。
「何者にも屈しない我を貫く」
 Ebonyの機腕が亮馬の鉄腕を掴み。
「『何者にも屈しない己を貫く」』
 顕われたものは青き機械甲冑。それこそが共鳴し、ひとりとなった亮馬とEbonyの誓いであった。

●志賀谷 京子/アリッサ ラウティオラ
 空から降り落ちてきた無数の銀弾が街を貫き、人々引き裂いてアスファルトを穿つ。
「銀の魔弾――これってまさか、ジュリアさん!?」
 あのときの彼女を追い詰め、殺し駆けた男があっさりとミンチになる瞬間を、幸運にも見逃した京子は鋭く踵を返し、闇雲に走り出した。
「っとと!」
 彼女の前方、魔弾に撃ち抜かれたビルが割れ、地面が砕けてなにもない黒へと落ちていく。どれだけ材料費を削ればこんなに安っぽい書き割りが仕上がるものか。
 いや、そんなことよりも今は逃げなければ。
(ま。もし狙われたら、無理してでも一撃お返ししようとしてたかな。昔のわたしなら)
 今の京子はあのときの京子ではないから、全速力でアリッサがいるところまで逃げるだけだ。
 京子が街を駆けているころ、アリッサはなつかしいあの森にいた。
 魔弾によって撃ち崩されていく森の端と自身との距離を確かめて、メリッサは下生えを蹴り散らして逃げる。
(京子のところへ!)
 自分の記憶が消えていないことを確かめ、彼女は息をつく。思い出の森を壊されるのは耐え難い苦痛だったが、今はそれよりも守りたいものがある。
『ふたりともなかよしなんだね』
 少女の声が京子とアリッサへ同時に届いた。羨んでいるような、憤っているような、薄暗い音。
「クールぶってるけど天然なとこもあって、かわいいから。まじめでうるさくて、でもやさしくて。張り詰めてたわたしを広い場所に連れてってくれた、恩人だしね」
 魔弾の弾道を読み、最小限の動きで最大距離の回避をしながら、京子は微笑んだ。
「最初は鋭利すぎて今にも欠けそうな刃を思わせるほど繊細でしたね。今のふてぶてしさからは信じられませんけど……いえ、ちがいますね。京子は今も昔も変わらない。進むべき道を迷わずに選んで踏み出す、あの強さは」
 魔弾が無作為に降っていることを読み取ったアリッサは、回避よりも先へ進むことを優先して急ぐ。
『じゃあ、きっとどっちかが死んだら困るね。考えるだけで怖くなるよね』
 京子はくわっと顔を上げて。
「困るよ! 怖くて怖くてたまらない! でもね、怖い怖いって丸くなって、身動きとれなくなるほうがもっと怖いよ。それはわたしが――わたしよりもアリッサが望まないことだから」
 アリッサは前を向いたまま静かに。
「わたしはあの輝きを失いたくないと誓った。でも、怖いからと身をすくめていては、この手を伸べて守ることすらできはしません。だから戦います。京子と共にあるために」
 視界の先で街と森とがぶつかりあい、轟々と崩れ合って渦を成す。あそこへ行けば、アリッサに、京子に、逢える――!
『あたしは守れなかったのに、あんただけは守れるの? そう思ってたのに、死んじゃうんだよ?』
 渦へ頭から飛び込んだ京子が鼻で笑った。
「意味のない質問だね、それ! そのときにならなきゃわかるわけないじゃない! でも、それがわたしにとって理不尽なことなら、世界を敵に回しても取り戻すよ」
 渦へつま先から飛び込んだアリッサが薄笑んだ。
「手遅れになった後でどうするかを考えるより、今どうするかを考えます。わたしはまだなにも失っていませんし、失うつもりもないのですから」
 京子の放った鋭い決意が渦を裂いた。
 アリッサの発した固い意志が渦を穿った。
 黒の内で再会したふたりは、互いの顔を見定める。
「わたし、これからもきっと無茶するよ」
 京子の言葉にアリッサがかぶりを振り。
「しかたありませんね。その無茶に生きる意志があるのなら」
 京子はうなずき、アリッサの手を取った。
「誓うよ。いつだって“わたしらしく”生き抜くことをあきらめない」
 アリッサはその手を強く握り返した。
「わたしも誓いましょう。最期まで京子、あなたと共に在ると」
 ふたりが共鳴し、ひとりになりゆく中。京子は笑んだ。
「うん、ありがと。わたしはわたしでいたいから、アリッサといっしょにいたいんだ」

●加賀谷 ゆら/シド
 風が吹いていた。
 生ぬるく、湿っぽく、肌にまとわりつく……重い風が。
 風にそぎ落とされ、端から欠けていくあのときの情景を見たゆらは、すぐに制服の上着を脱ぎ捨てた。
「ゴーストウィンド、だよね」
 ボロボロとこぼれ落ちる世界の端から逃れ、果樹園を跳び出した。
「っ!」
 重い風が、ゆらの体をあのとき、あの場所へ押し返そうと迫る。彼女の脚を絡め取り、心を削ぎ、うずくまらせようとする。
「言ったよね。今の私は、あのときの私を裏切ったりしない。みんながいて、亮ちゃんがいて、シドがいるから」
 ゆらは向かい風を押し割り、あの河へ向かう。
「……せっかく造った情景だろうに」
 ゆらの状況を知らぬシドは今、あの丘の上にいた。
 景色の一角を担っていたはずの王城が、やけに乾いた音をたててへし折れ、情景の端を侵す黒の向こうに吹き流されていく。
 その黒に追いつかれぬよう、シドは吹き寄せるゴーストウィンドに逆らい、駆け出した。
「ゆらは無事か――?」
『おかしいよね。そんな大事なのに、自分のものにしないんだ』
 風に乗って届く少女の声音。
 ゆらは迷うことなく応えた。
「シドがいなかったらあのとき死んでたし、今生きてられるのも彼がいるから。――もう超えちゃってるんだよ、愛とか恋みたいなとこ。それくらい、かけがえのない存在」
 視界の端に映った恋人だったはずの姫君が砕け散る様を淡々と振り切り、シドはおもしろくもなさげに応えた。
「恋人なんて関係じゃ足りないんだよ。いや、どんな言葉を尽くしたところで、俺とあれの関係を表わせやしない。俺にとってあれは、命を尽くして護るべき絶対的な存在……俺のすべてだ」
『自分の知らないところで消えちゃうかもしれないのに。怖くないの?』
 ゆらはあのときそうしたように欄干を越え、河へ飛び込んだ。水の流れを助けに泳ぎだす。
「誰といっしょにいてくれてもいい。でも、彼はどこにいても、なにがあっても私を生かそうって……自分は死んでもいいって、思い切る。私が怖いのはそれだよ。だって」
 ゆらは風が吹くほうに向かい、言い切った。
「シドは私の命そのものだから」
 そしてシドは丘の下に流れる川へ身を潜め、風を避けて進む。
「怖くないか? 怖いさ。あれは俺が存在する意義であり、意味だ。あれが生きていてくれるなら、俺はいつ消えてもかまわない。……いや。俺が消えれば、あれは存在をやめてしまうだろうな」
 シドはやさしく笑み、風に告げた。
「俺はゆらを生かすため、この世に在り続けなければならん。俺が在るかぎり、ゆらが消えることもない」
『それでも、もし消えちゃったら――』
 とまどいを映す少女の声。
「愚問だわ。シドが消えたら私も消える。愚神に襲われたあのときをやりなおして死ぬだけ」
 ゆらはあっさりと言い放ち。
「愚問だな。俺がそれを許さない。あれが幸せであり続けることを妨げさせはしない。それが俺たちの誓約だから」
 シドが仏頂面で語り上げた。
 欠け消えていくふたつの情景が交錯する。
 河と川とが合流し、ひとつの太い流れを成す。
 ゆらとシドが、流れの内に互いの姿を見たそのとき。
 情景は弾け飛び、惨状が顕われた。
 それはゆらが愚神に襲われ、すべてを失くしたあのとき――今は地図からも消し去られた名もなき村のあのときだった。
「全部ここから始まったんだよね」
 ゆらの顔をまっすぐ見据えたまま、シドは言った。
「これからも続けていくんだ、おまえの明日を」
 自分のことじゃなくて、いつだってシドは私のことばっかりだよね。
 ゆらは息をつき、シドの顔をまっすぐに見る。
 言うべきことがなにか、迷うことはなかった。
「幸せになること」
 あのときを越えて幸せでい続けると、ゆらは誓った。
「幸せになること」
 あのときを越えて幸せにし続けると、シドは誓った。
 ふたつの言の葉が共鳴し、ひとつの音となりゆく中、ゆらが風に問うた。
『ねぇ、ジュリア。あなたはどうなの?』

●ハーメル/墓守
「うわーうわーうわー」
 ハーメルが叫びながら転げ回る。
 なにせまわりには無数の実体なき蝶が舞い飛んでおり、隙あらば彼に取りついて命を削ろうとするのだ。
「あのときの従魔よりキツイんですけど! 墓守さーん――って、いないし!」
 ここはかつて彼が命を落としかけた初依頼の場。
 蝶にたかられた従魔はあっさりと壊れて消えた。ついでにこの場も、蝶に喰われてぼろぼろこぼれ落ち、ところどころから虚無の黒が顔をのぞかせていた。
「……今度はなにを見せたい?」
 親友と過ごしたあの夜の中、たき火から抜き出した即席の松明で蝶を払う墓守。
 親友の顔をした“わたし”がいないのは幸いだったが、これではきりがない。
「用があるなら、はやくしろ……あのバカを放っておくのは、気鬱だ」
 墓守の火をふわりとかわした蝶どもがささやく。
『なんだか軽くない? ふたりとも、そんなに好きじゃないんだ』
 どこか不満げな少女の声。
 墓守はマスクに隠した口の端を歪め。
「気にはしてやっている……不出来な弟のようなものだからな」
 蝶を通じて墓守の言い様が届いたらしい。ハーメルが叫び返した。
「墓守さんのことはお姉様みたいだなって思ってるよ! すっごくお慕い申し上げてるから! ――ねぇ、墓守さんどこ!? はーかーもーりーさーんっ!」
 呼ぶことに心を捕らわれ、回避が遅れたハーメルのつま先と髪先をかじりとった蝶が嗤う。
『それくらいなら、どっちがいなくなっても怖くないね』
 対して、ハーメルと墓守は同時に応えた。
「怖いよ! そんなの決まってるでしょ!」
「怖いさ。……死なない程度にはいじめ――鍛えてやったつもりだが」
 墓守がしれっと言いなおした言葉に、ハーメルはキーっと震えあがり。
「やっぱりあれ、イジメだったんだ!」
「トレーニング……の序章だ」
「え!? 実は第一章も始まってなかったの!? 第二章まで行かないで未完になっちゃうよ!?」
 なんとも緊迫感のないやりとり。
 が。普通であれば、この状況でこんなことを言い合えるはずはない。
 少女の声がいぶかしげにふたりを探る。
『もしお互いが死んじゃったら、どうするの?』
 ハーメルが立ち上がった。
 視野を広く保つための半眼で、宙を埋める蝶どもを見据え。
「立ち止まるかもしれない。後ろばっかり振り返って、いっぱい泣くんだろうね。けど!」
 蝶の包囲のただ中へ跳び込み、すり抜けていく。髪先くらいはいくらでも喰わせてやればいい。大切なのは受けるダメージを最小限に抑えて敵へ迫ること。その、墓守に叩き込まれた教えを不足なく再現することだ。
「僕は前を向いて歩き続ける! リンカーとしてこれからも行動していくってことは変わらない! 大切な人が死んだってことを理由にして、歩くのを止めることだけは絶対しない!!」
 ハーメルが蝶へ――その向こうにいる墓守へ告げた。
「守らなくちゃいけない誰かは、僕の行く先にいるんだ」
 それを聞いた墓守は小さくうなずいた。
「わたしは英雄として戦い抜くだけだ。……ハーメルはそれを望むだろうから。友を喪ったそのとき誓ったように。ハーメルへ誓い、生きる」
 墓守はふと目を閉ざし。
「わたしはどこにいようとも、どうであろうとも、変わることなく一人の為の英雄なのだから」
 ふたりの間にあるものは、信頼。
 それがあればこそ、ふたりは互いに対して過度な深刻さを見せはしないのだ。
 いつしか蝶は散り、乾いた音をたててふたつの情景が崩れ去る。
 なにもない黒の内で向き合うハーメルと墓守。その距離はおよそ10メートルといったところか。これほど近くにいたのかと思い、どれだけ離れていても同じことだと思いなおす。心が同じ場所にあるならば、それで。
「此れからもこの力は誰かを守るために」
「此れからもその為に強くなる」
 それはどちらが発した言葉だったのか。
 いや、どちらでもかまわないのだ。
 ふたつの心が共鳴し、ひとつに重なった今、ふたりの誓いもまたひとつに重なったのだから。

●橘 由香里/飯綱比売命
「またここなの? もう一度私にあれを見せたいわけ? いい加減にして欲しいものね」
 降り落ちる滝。その先に刻まれる流れをローファーのつま先で割り、由香里はため息をついた。
 父母はあのときと同じように滝壺の外にいる――ただし、声を張り上げた形のまま凍りついて。
 あのときの端から霜が沸き立ち、世界を閉じ込めていく。
 しかし由香里はあわてることなく座り込んだ。
 なにが起きているのかは知れないが、彼女を追い立てる両親の形をしたものは静止しているし、なによりも自分には確かな記憶と意志がある。
「待ってるから」
 膝を抱え、彼女はきしきしと音を立てて凍りゆく滝を見上げた。
『どうして逃げないの?』
 どこからか聞こえてきた少女の声に、由香里は薄笑みを返す。
「来てくれるって信じてるから」
 そのころ。飯綱は里山を覆う氷をたけのこの皮に乗って直滑降中だった。
「この世界を二度見捨てるのは悪いと思うが、わらわも自分の手に余るものまでは抱え込めぬでのう!」
 凍りついたままこちらをにらみつけるきのこども、たけのこどもに憂いを込めた流し目をすべらせて。
「……訂正しておこう。わらわの手はもういっぱいじゃから、ぬしらにまで伸べてやることはできぬし、せぬよ」
 飯綱の目が情景のほころびを捕らえた。以前とはちがい、どうやらごく狭い範囲でしか情景を再現できていないようだ。だとすれば、あそこを突き抜ければ由香里を探すこともできるはず。
「そうじゃ。わらわはこの世界を逃げ出して、由香里と逢った。親に虐げられ、縮こまっておったあの娘の救いとなれたからこそ、わらわは己の価値を見失わずにすんだ。わらわは由香里の救いであり、由香里はわらわの救いであったのじゃよ」
 凍った山肌に貼りついたたけのこの皮から跳び降り、飯綱は油断するとすぐに這い上がってこようとする霜を蹴り散らして駆ける。
『死んじゃうんだよ。どんなに信じてても、守っても。それが怖くないの?』
 少女の声を、はん。飯綱は笑い飛ばした。
「なにがあってもあの娘を守る!」
 そして同じ問いを投げられた由香里は、芯まで氷と化した川に踵をついて応える。
「ええ、怖い。このまま戦っていれば、いつかどちらかが死ぬことだってあるでしょうし」
 由香里は少しためらい、静かに言葉を継いだ。
「飯綱は、弱さを認められなくてイライラして空回りしてた私を、甘やかすことも急かすことも投げ出すこともせず、となりをいっしょに歩いて導いてくれた。だから私は今、私でいられるのよ」
 もしかしたら、私は飯綱を“理想の母親”だって思ってすがってたのかもしれない。言外に吐露をひそめて。
『それでも相手が死んじゃったら、どうするの?』
「もし由香里を殺すものあらば、わらわは鬼とも妖とも成り果て、報いようぞ――なんてのう、にあわぬな」
 だが本心じゃ。胸の内で言い置いて、飯綱はきのこの氷像を踏み、跳んだ。
「私がどうするかなんてわからない。でも飯綱だったら、彼の岸ってところから手を伸ばして私の頭を叩くんじゃないかしら。前を向けって」
 と。滝が半ばからへし折れた。
「彼の岸になんぞ行くまでもないわ。此の岸にしがみついて言うてやる。前を向け」
 裏から跳びだしてきた飯綱がそのまま小川の上をすべり、由香里の手を掴んだ。
「さて、ちょっとばかり待たせたが、真打は遅れて登場するものじゃからの。この幻にケリをつけようか」
 胸の内で、飯綱は誓約を語り。
「ええ、こんなところで立ち止まっていられないもの。私はもう籠の鳥でも、あの人たちの人形でもない。橘由香里として生きることを大切な人たち――そして飯綱に教えてもらったの」
 胸の内で、由香里が誓約を返す。
 本当に大切なことを口にしないのは、互いが自分が自分であるためになくてはならない存在だから。
 言わなくてもわかってほしい。言わなくてもわかるから。
 情景を突き抜けた由香里と飯綱の心が共鳴し、ひとつとなった。

●GーYA/まほらま
 まほらまは、自身が魔王城の玉座に腰をかけていることに気づいた。
 周囲に満ちる闇。気を抜けばまた意識を失ってしまいそうな――
「魔法じゃなくて剣で来なさいよねぇ」
 この闇に満ちた呪力は、魔法防御の低いドレッドノートにはまさに毒だ。
「ジーヤちゃん、早く見つけに行かないと。泣いてるかもしれないし」
 GーYAはまほらまに心配されていることを知らぬまま、闇に閉ざされた病院内を進んでいた。
「見えなくてもどこにいるかはわかる。でも――」
 以前、この情景に引き込まれた際に襲ってきた褐色の女がいない。院内は無人だった。
 角を曲がって、出口に触れて、自動ドアを手で引き開けて、外へ出る。ただそれだけのことのはずだったのに。なぜか彼はまた、自分の病室にいるのだった。
「……まほらまのところに行かなくちゃいけないのに」
 頭を振って闇を払う。なんだよこれ。やばい鎮静剤みたいだ。
 室内に設置されたスピーカーから唐突に。少女の声が流れ出した。
『そんなに自分じゃない人が心配?』
「俺の“世界”はまほらまがくれたものだから。まほらまは俺にとって必要以上の不可欠ですよ」
 GーYAの返答にまほらまの言葉が重なった。
「ジーヤちゃんの“世界”はあたしがあげたものだもの。ジーヤちゃんがいなくちゃ、あたしの世界は空っぽになっちゃうわ」
 GーYAの足が再び病室の外へ向かう。ただし、向かう先は出口ではなかった。
 そしてまほらまの足もまた、目ざしていた魔王城の大門から逸れていた。
 GーYAが階段を登る。
 まほらまが階段を上る。
 その頭上から、少女の声が降る。
『探しに行かないの? どこかで死んじゃってるかもしれないのに、怖くないの?』
 GーYAは踊り場で一度立ち止まり、かぶりを振った。
「怖い、んですかね。まあ、俺が死ぬのは別にいいかなって思ってますから。まほらまもそのへん気にしないでしょうし」
 まほらまは螺旋階段を登りながらふわりと答えた。
「死んじゃうのが救いなら、それを求めちゃうわよねぇ。ジーヤちゃんも止めないだろうから」
 そしてふたりはたどりつく。GーYAは病院の屋上に。まほらまは城の屋上に。
『相手が死ぬ前に自分で死ぬの? そこから飛び降りて』
「死にませんよ。でも、もし俺が哲さんみたいになったら、俺の命はまほらまの手で終わりにしてほしい。まほらまもきっと、同じこと考えてますよ」
 GーYAの言葉に、少女の声が押し詰まる。
「死なないわよぉ。あたしを終わらせるのはあたしじゃない。それは――ううん、きっとジーヤちゃんも同じこと考えてるわよねぇ」
 少女の声が逃げるように消え失せ、闇もまた吹き払われた。
「もっといろいろ聞きたいこと、あったんだけどな」
 ため息をつくGーYAにまほらまが肩をすくめてみせた。
「心臓が動いてるだけの契約主とでも誓約は機能するのか、とか?」
 あの日そうしたように、まほらまがGーYAを抱え上げた。俗に云う「お姫様抱っこ」で。
「哲さんとジュリアさんの誓約、俺たちと似てるから知りたかったんだ。もし同じような状況になったとき、まほらまは生きてられるのか」
「無理ね。約束があるし、それにがまんしないわよぉ、あたし」
 まほらまの足が、誓約を結んだあの日の屋上の縁で立ち止まった。
「この『世界』で楽しく生きる」
 まほらまがGーYAの人工心臓へ流れ込み、そのライヴスが強く、高く鼓動を刻む。
「この『世界』で楽しく生きる」
 応えたGーYAの体が宙へ舞った。
 あのときは誓約が成ったことを思い知らせるため、まほらまがGーYAをここから投げ落としたのだ。
 今、まほらまが死ねばGーYAの人工心臓は燃料たる霊力を失くして止まる。GーYAの心臓が止まればまほらまもまた自らを保つ霊力を失くして消える。
 生きるも死ぬも一蓮托生。
 互いを独りにしないと約束したからこそ、自由に生きられる。
 崩れた情景の底に空いた黒の中を落ち行きながら、ふたりは笑んだ。

●シェオル・アディシェス/ゲヘナ
 戦火に侵された古都ドレスデンの聖母教会、その門前にシェオルは立っていた。
 先日見せられた偽りの情景ではない。彼女自身がその目で見た、あのときの景色だ。
 連合軍の爆撃機が吐き落とす爆弾が都市を打ち据え、情景を壊して裏に拡がる黒を露わにしていく。
 結局、ここも本当の過去ではないのだ。
 それでも。
「主よ、喪われしあのときに、救いの御手を」
 彼女は祈り、焼け残った聖母教会の内へ向かった。あのときのように。あのときを見せられた先日のように。
 ――そしてゲヘナは、なじみ深いというよりない闇のただ中にいる。
「なにが望みかは知らぬが、汝が期待には応えぬよ。虚像と知ってなお踊ってみせるほど、我は浮かれてはおらぬからな」
『余裕だね。契約者のこと、考えたりしないの? 教えてよ。相手のことどう思ってるのか』
 ふと聞こえてきた少女の声。その異様な圧迫感に心を苛まれ、ゲヘナは強いられるまま吐き出した。
「あれは救済者よ。穢れの奥底に墜とされてなお無垢で在り続ける光」
 同じ問いを突きつけられたシェオルはあのとき自分が駆け込んだ部屋に座し、両手を組み合わせて祈る。
「あのときからずっとそばにいてくれる、誰よりも優しくて大切な存在です。――そしていずれ私の歩みの価値を裁いてくれる、私だけの死神」
 歪でありながら直ぐでもある、互いへの思い。
 それを確かめた少女の声が畳みかける。
『だったら探しに行かなきゃ! 必死に走っても間に合わないかもだけどね!』
 しかし。
 シェオルは祈り続けるばかりで動かない。
 ゲヘナは玉座に座したまま動かない。
 おかしい。この声は支配者の言葉。抗えるはずがないのに!
『大事な相手が死んじゃうの、怖くないの!?』
「なによりも恐ろしいことです。彼は長き旅路を行く友で、いつか斃れた先の伴侶となる……永遠を伴にする存在ですから」
 シェオルは静かに答え。
「怖くあろうものか。生ある者はいずれ死すが道理なれば、取り沙汰されるはいつ死すものか、という程のもの」
 ゲヘナは皮肉な笑みをその山羊の頭骨の内で鳴らした。
「我らの間には誓約がある。生けるとも死すとも、ここにあろうとなかろうと、その約が我らを結ぶ」
『でも相手が先に死んじゃったら、約束だってどうなるかわかんないでしょ! そしたらどうするわけ!?』
 シェオルは天井を透かすようにその目を上げ、答えた。
「それでも私は旅路を行きます。嘆きに捕らわれて足を止めては、この生ある限り私に尽くすと誓ってくれた彼の思いを穢すことになります。それに」
 シェオルの唇にやわらかく強い笑みが浮かぶ。
「この身が死すれば彼の待つ裁定の場へ行くのですから。そのとき、悔いることなく立派に歩き通したのだと胸を張って笑える私でありたいのです」
 そして今なお闇に座すゲヘナは。
「如何もせぬ。あれが我より先に死すれば、必然我はこの玉座へ引き戻されよう。我が先に果てるとしても、裁かれることを赦されぬ我はやはり玉座へ戻されることとなる。なればあれが来るをただ待つばかりよ」
 ゲヘナは少女の声に強いられることなく、己の意志で言葉を紡ぐ。
「かくて引き離されようと、孤独に惑うて互いを探すことはないのだよ。我らはどこに在れ、共連れであるがゆえに」
 情景の闇が音もなく崩れ落ちる。
 闇よりも深き黒の中、ゲヘナは誓った。
「汝が死後の魂を我に捧げよ。それを以て汝が生涯に尽くす奴隷となろう」
 情景の教会が崩れ落ちた黒の中、シェオルが誓った。
「私の死後の魂をあなたに捧げましょう。それを以て私の生涯を共に行く救いとなって」
 ゲヘナは骨の顔を傾げて言う。
「文言を違えては誓約にならぬだろうよ」
 シェオルは祈りの手を解き、どこへいるとも知れぬゲヘナへ伸べて。
「成ります。この言葉が、あなたの心に響くのならば」
 共鳴したシェオルの内へ溶け込みながら、ゲヘナは肩をすくめてみせる。我に響かぬはずはなかろう、汝の言の葉が。

●レイラ クロスロード/N.N.
 停車した装甲車のバックハッチが開き、ただひとりの乗員だったN.N.を吐き出してかき消えた。
「さすがに同じ手は使わないか……それとも、ゾーンルーラーの気まぐれ?」
 N.N.は目をすがめて陽光を透かし見る。
「レイラ」
 つぶやいたのは、彼女の契約主であり、目の前にある屋敷の主である少女の名前であった。
 一方、名を呼ばれたレイラは屋敷の内にいた。
 もの言わぬ骸が転がるロビー。彼女の肌にさわるものは、死。そればかりである。
 車椅子のハンドリムを漕ぎ、レイラは前進。たとえ造られた情景の一部とはいえ、かつて共に暮らした人たちを踏んでしまわないよう慎重に。
 しかし。そんな心配は無用だった。彼女のまわりには風が吹いていて、彼女と車椅子が他のなにかに触れることを拒んでいたから。
「触れない……これってまさか」
 慣れ親しんだ屋敷の中だ。見えずともどこに行けばなにがあるかはわかる。彼女は外へのドアのノブを回そうとしたが。
 どれほど手を伸ばしても、風に巻かれてノブを掴むことができないのだった。
「N.N.、どこ!?」
 レイラは車輪を繰って他の出口へ向かう。どこかに開いているドアなり窓なりがあるはず。
 同じようにN.N.も屋敷の縁をなぞって駆けていた。
 おそらくこの風は、ソフィスビショップが使う拒絶の風。だとすれば、この情景を統べているのはゾーンルーラー本体ではない。
「レイラは無事なんでしょうね、ジュリア?」
 応えたのは少女の声だった。
『自分じゃない他人がそんなに心配?』
「他人?」
 N.N.は窓に映る自分の顔を横目で見やり。
「レイラは私に居場所をくれた大切な家族。私の全部をかけて守りたい――私みたいに穢れてない、私よ」
 過去の情景の中で、N.N.はひとつの答を得ていた。
 ふたりが同じ「レイラ」の名を持つ理由、それはふたりが別々の世界に生まれた同じ人間だからなのだと。
 風に翻弄されながら、それでも車椅子を漕ぎ続けるレイラは「他人なんかじゃない!」と叫び返し。
「N.N.は大切な家族で、弱い私に前を向かせてくれる相棒で――きっと私とはちがう道を辿った、私」
 レイラの言葉に根拠はなかった。しかし、N.N.の情景を見た彼女にはこう思えてならないのだ。N.N.は別世界の、もうひとりの自分なのだと。
『だから探すんだ。もうひとりの自分がいなくなるのは怖いもんね?』
「失くすことはいつだって怖い。もうこれ以上失くすのは耐えられないから、私はレイラを命に変えてでも守るのよ」
 ためらうことなくN.N.は答えた。
「N.N.は私の光だから、消えちゃうのは怖いよ。でも、それを怖がって立ち止まったりしない!」
 迷うことなくレイラは答えた。
『……いなくなったら、どうするの? もうひとりの自分が』
 N.N.とレイラの答が重なった。
「復讐するわよ。なにがあっても、泥水を啜ってでも、“私”を殺した罪を償わせるまで足掻いて生き抜くわ」
「復讐するよ。ほんとはいっしょに逝きたいけど、N.N.は足掻いて生き抜けって言うはずだから。私は“私”を殺した奴らに思い知らせるまで生きる」
 ふと、レイラは廊下の窓へ塞がれた目を向けた。
 そして。N.N.もまた屋敷を囲う窓に目を向ける。
 ガラスに映ったものは、自分。
 見えぬはずの、もうひとりの“私”。
「やっと会えた。ねぇN.N.――ううん、レイラ」
「レイラの名前はあの世界に置いてきたわ。この世界の私はNo.Name.。それでいい」
 風を貫き、窓をすり抜け、ふたりの手が重なった。
 やるべきことはわかっている。私と私が、もう一度ひとりの“私”となるために、誓う。
「「二度と大事なものを奪われず、逆に奪ってやる」」
 そう、奪わせない。なによりも大事な“私”を。
 共鳴したふたりの心がひとつの決意を奏で、きらめく光の刃を情景の内へ顕現させる。
「行くよ、この先に!」
 光刃が嵐を描いて情景を斬り裂いた。

●日暮仙寿/不知火あけび
 あのときの夜、政治家宅のテラス。
 仙寿は静かに息をつく。もしあの少年が再び襲い来ても、今の自分をもって応えられるだろうが、それよりも。
 あけび。胸の内でその名を唱え、仙寿はテラスの縁へ向かう。
「なら、前と同じように抜け出すだけだ」
 時同じくして、あけびもまた胸の内で仙寿の名を唱えていた。
 仙寿様、どこにいるんだろ?
 彼女があるのはあのときの“今夜”。しかしそこに師たる天使はいない。
「この情景を斬って、仙寿様のところに行く」
 左に佩いた守護刀「小烏丸」の柄に手をかけ、気配を探るが。
 肌にさわるものは静寂。だだそればかりであった。
 早く仙寿様と合流して、ジュリアのこと探さないといけないのに。
 と。
『いちばん最初に相手のこと考えたね。そんなに大事なの?』
 あけびは気づいた。どこからか聞こえる少女の声が、鏡面体に「連れてって」と叫んだジュリアのものであることに。
 ゆえに答えた。思いを直ぐに。
「初めて逢ったとき、お師匠様にそっくりだって思った。もしかしたら、私がこの手で――」
 あけびはひとつの疑問を抱いていた。失われた元の世界の記憶、その時間の中で、自分は立場として敵であった師を殺しているのではないかと。
「だからね、思ったよ。この人は私の贖罪なのか、救済なのかって。でも今は……なんであんなに生意気無愛想かなって! 俺は暮れる日だーとか言っちゃって、私のこと置いてさっさと沈んでっちゃおうとするし! 追っかけてこいとか、どこの小僧だろ!?」
 唐突に投げつけられた雷を一度手放した小烏丸に任せ、あけびはむくれた顔をふとゆるめた。
「仙寿様は向かい合わなくちゃいけない人じゃなくて、並び立ちたい人だから。大事なんて言葉じゃ足りないよね。うん、ぜんぜん足りない」
 同じ問いを受けた仙寿は退き、降り落ちる雷から間合を外して。
「俺は人殺しだ。だから忍のくせに侍を目ざしてるってまっすぐ言い切ったあけびに劣等感を感じたよ。それなのに、こいつといれば俺も刺客じゃない、剣客にしてもらえるんじゃないかって、甘えてた」
 新たに降る雷を足捌きでかわし、仙寿はさらに言葉を重ねた。
 雷と鋼の相性は最悪。刃を抜くことはできない。しかし。そんなことは今、どうでもいいことだ。
「でも今は――俺が日暮れに蕾を晒す八重の桜なら、あいつは明ける日に咲く染井吉野。みっともなくてもいい。追いかけて、追いついて、並び立つ」
『じゃあ、そんな相手がいなくなるのは怖いよね。……いなくなったら、どうするの?』
 横合いから飛んできた雷に対し、片手の指先だけを支えに宙返りしてかわしたあけびは、道場から一気に駆け出した。
「怖いに決まってるよ! だから私がついててあげなきゃ! 私たちは英雄と能力者って切り離せない仲だから当然って思うかもしれないけど……その繋がりに甘える気なんてないよ」
 雷を振り切ってテラスから跳んだ仙寿もまた言い残した。
「考えたことがない――それだけの繋がりを、俺たちは結んできたんだな。考えるのが怖いから考えなかったのかもしれない。でも」
 誰もいない、祭りの山車ばかりが置かれた通りを駆け、あけびが言い放つ。
「誰だって一期一会だよ。突然異世界に飛ばされちゃったりするしね! いつ別れが来ても後悔しないように、毎日精いっぱい生きるだけ! あ、仙寿様がいなくなったら全力で探すけどね!」
 黒の中を落ちゆきながら、仙寿は残してきた言葉を継いだ。
「失ったら探すだけだ。それがこの世かあの世かは知らないが、胸を張って再会できるように。――ジュリア、今のおまえはどんな顔であのときの哲に逢う気だ?」
 答えはなかった。
 ただ、落ちる先に、こちらを仰ぎ見るあけびがいた。
「強さを目指し続ける」
 仙寿が誓う。
「強さを目指し続ける」
 あけびが誓う。
 並び立つまで互いを追い続け、その先へ行くことを。
 それ以上なにを語ることも必要とせず、ふたりは共鳴し、ひとつになった。

●ソーニャ・デグチャレフ/ラストシルバーバタリオン
 ここはあの夜の倉庫であり、外に広がるのはソーニャがすべてを失くしたあのときの町並……死にゆく人々。死にゆく町。死にゆく祖国。
 それを眼前にして、ソーニャは動かない。否、動けずにいた。
「重圧空間か……」
 体内ライヴスの循環不全により、400キロの自重を持つソーニャの天敵たる重力。そしてそれは、傍らに座す全長50メートルの巨大人型戦車“ラストシルバーバタリオン”も同様だ。
「こうしているだけで、駆動系が悲鳴をあげます」
「ならば腰を据えて話でもしようか。――ジュリア殿、そこにいるのであろう?」
 応えたものは少女の声。
『あたしが誰かなんてどうでもいい。それよりなんなのあんたたち?』
 ソーニャは隻眼を沈みゆく町へ、落ち行く人へ向けたまま答えた。
「この失われた祖国を守るべき軍人だ」
 ラストシルバーバタリオンも同じ光景を見据え。
「この失われた祖国を取り戻すべき軍人である」
 ソーニャは小さくうなずき。
「今、ソーニャ・デグチャレフは父母に必死で死なないでくれと願っているだろう。小官は彼女と、同じあのときを生き延びた同胞のため、この地獄へ戻らねばならぬ。今生でかなわぬのならば来世で。それでもかなわぬなら来来世で」
 のしかかる重さに逆らい、顔を振り向けてラストシルバーバタリオンを見上げた。
「ゆえに、かならずや我が元に参れ、中尉」
 ラストシルバーバタリオンはソーニャを掌に乗せ、超重力の軛を引きちぎって立ち上がる。
「我々が幾度砕け散ろうとも、かならずやその御許へ」
 重力に裂かれた装甲が倉庫の床へ突き立った。分厚いはずのコンクリートに亀裂がはしり、下に広がる黒を垣間見せる。
『そんなことしたら死んじゃうよ。お互いが死ぬの、怖くないの?』
 壊れながら歩を進めるラストシルバーバタリオンが低く笑った。
「積み重ねられた死と喪失の果て、流す血も涙も尽き果てた。今再び少佐殿を失おうと、その骸を足がかりに大願成就へ前進するのみ」
 口の端を吊り上げたソーニャは「然り」とうなずき、ジュリアに語る。
「失うことは恐ろしい。しかしそれを嘆くにはもう、小官は失い過ぎたのだよ。幾星霜もの死を越えて、我らはここまで来た。今再び心預けた部下を失おうと、47の死を標に大義を成すのみ」
 彼方では、あのときのソーニャが絶望の中で死を願っているはずだ。
 しかし今ここに在るソーニャはその先を知っている。あのとき救われなかったからこそあのソーニャは戦うことを誓い、死を前にこのソーニャを呼んだのだと。
 ソーニャは一時目を閉ざし、“自分”に注視する。今語るべきは“小官”なのだから。そして彼女はゆっくりと言葉を継いだ。
「それこそが同志への餞だ。かならずや仇を討ち果たし、祖国の大地に弔わん。そして次の世でまみえたときには、酒を酌み交わそう」
 ラストシルバーバタリオンはついに膝をつき、それでも這い進む。
「はい。少佐殿が斃れたとて、祖国を取り戻すまで戦い続けます。……いつかの世で、少佐殿の酒をいただく日を楽しみに待っておりますよ」
 鋼の装甲がひしゃげ、折れ、砕ける。
 あの日あのとき、愚神によって喰らわれたことごとくが、その巨体からこぼれ落ちていく。
 かくて50メートルを失った果てに残されたものは。
 わずか250センチの、人型戦車を模した体。
 その両腕に守られたソーニャが声を発した。
「今再び祖国を我らの手に取り戻すその日まで、そなたらの命は小官があずかる。そして我が命はそなたらに捧げよう」
 ラストシルバーバタリオンの胸部装甲が展開し、ソーニャの小さな体を包み込んだ。
「今再び祖国を我々の手に取り戻すその日まで、少佐殿の命は我々があずかりましょう。そして我々の命を少佐殿に捧げます」
 ラストシルバーバタリオンの頭部に装備された12.7mmカノン砲2A82“改2型”が展開、その砲弾をもって情景を穿つ。

●分かれ道
『失くしたことなんかないくせに――強いふりしてるだけのくせに――なんで――』
 少女の絶叫が“世界”を揺るがせて。
 誓約し、再び共鳴したエージェントたちを取り巻いていた黒が、粗雑な撮影セットさながらカラカラと崩れ落ちた。
 思い知ればいい! ほんとに大事な人を助けられなかったあたしの絶望! 
『これだけのライヴスがあれば組める! あの子のあのときが、“己”のあのときが!』
 響き渡る“わたし”の声が青へと転じ、黒を呼び込んだ。
「このにおいは潮?」
 鼻腔へ飛び込んできたにおいを確かめるレイラ。
「ここって誰の情景!?」
 言葉を途切れさせたハーメルが青と黒が織り成す“新世界”を見る。
 その背に背を合わせたGーYAが鋭く言い放った。
「資料で見たとおりなら、ジュリアさんの過去――ブランコ岬防衛戦の情景だ!」
 夜の海岸。言われなくてもわかる。ここはジョアンペソア最東端の海岸で、背後にはそう、あの灯台があった。
 そして。海岸へまばらに立ち、海ににらみつける20組のライヴスリンカーたちがいた。
 彼らこそがH.O.P.E.ジョアンペソア支部のエージェント19組と、そして。
「伊藤哲か」
 仙寿が目をすがめ、それらしき影を探す。
「真打は遅れて登場するんだっけ? でももう来てるみたいよ、真打」
 由香里が示したのは20組が見据える視線の先。打ち寄せる波の向こうに浮かび上がる無数の影だ。
「さて。わたしたちを招き入れたこと、ゾーンルーラーに後悔させてやろうじゃない」
 京子はAGWを引きだそうとしたが、その手が虚しく空にすべり。
 情景がかき乱れた。
 戦いを前にした海岸を割り、現われては消えるいくつもの1シーン。
「すべての情景に、男の方が」
 シェオルの言葉どおり、シーンのすべてにひとりの青年が映し出されていた。
「伊藤哲でまちがいあるまい」
 ソーニャは鋼鉄の体を前進させようとするが、その足は虚しく砂をかくばかりであった。
「私たちはまだ、情景に招き入れられたわけではないということか」
 ゆらの言葉に、彼女の横から進み出た亮馬が強く応えた。
「呼んでくれないなら勝手に割り込むだけだ!」
 エージェントたちはライヴスを燃え立たせ、心を決める。
 かくて一歩を踏み出して――黒の内より消えた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • きみのとなり
    加賀谷 亮馬aa0026
    機械|24才|男性|命中
  • 守護の決意
    Ebony Knightaa0026hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
  • 神月の智将
    ハーメルaa0958
    人間|16才|男性|防御
  • 一人の為の英雄
    墓守aa0958hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 救いの光
    シェオル・アディシェスaa4057
    獣人|14才|女性|生命
  • 救いの闇
    ゲヘナaa4057hero001
    英雄|25才|?|バト
  • 今から先へ
    レイラ クロスロードaa4236
    人間|14才|女性|攻撃
  • 先から今へ
    N.N.aa4236hero002
    英雄|15才|女性|カオ
  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
  • 我らが守るべき誓い
    ソーニャ・デグチャレフaa4829
    獣人|13才|女性|攻撃
  • 我らが守るべき誓い
    ラストシルバーバタリオンaa4829hero002
    英雄|27才|?|ブレ
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