本部

Dメール

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~12人
英雄
12人 / 0~12人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/09/13 15:05

掲示板

オープニング

● 件名は『D』
 皆さんはとあるヴィランの潜伏先の情報を入手した。郊外から先に進んだ民家、一軒家。明りもつかないこの部屋に、その者達は潜伏しているという。
 その名もD。
 新手のヴィランズでその正体目的は不明。
 ただ愚神と深く通じており、人間の技術を流す代わりに愚神の技術を得ている技術集団でもあるようだ、
 そんな彼の潜伏先を包囲突入してから、今回の物語が始まる。
 家の中はもぬけの殻だった。調査を続けていくうちにやがてあなた達は画面が付きっぱなしのノートパソコンを発見する、その画面に表示されていたのは宛先のないメール。ただし件名は『D』となっていた。
 内容は下記の通り。

DEAR H.O.P.E.
 die
   desire
 despair
 daemon

 我々の言葉を聞け。
 我々の言葉には土地の魂が宿っている。
 祈れ、声が聞えるはずだ。
 そこには誰もいない。
 奴らはどこにだっている、奴らは我々の心に巣食っている。
 これは奴らの宣言だ。
 我々の言葉を知っている者。彼ら皆間違っている。
 仰ぎ見るがいい、彼らは全て間違っている。
 彼らは略称しかもたない。
 彼らは言葉の弾圧者。
 彼らは言葉だけの存在。

 しかしそれもかつての事。六人目のDがやってくるならば状況は一変するだろう。
 Dは変貌する、その形をゆっくり変える、それが意味するところがはっきりしてしまう前に、君たちは彼らを殺さなければならない。

 闇を観よ。
 声高に吠えよ。
 夜中に耳をつんざくように。
 誰かの目覚めなど気にする必要なない。
 目覚めたなら笑って、頬を張ってやれ。
 言ってやれ。目覚められてよかったなと。
 君の隣のそれは、もう目覚めはしないのだと。
 目覚めるものだけが正義で、目覚めないものはそれ以外の違うものだ。

 残念だがここで君たちの物語は終わります。
 ご武運を、願わくばその面二度と拝まないように。
 願わくば、願わくば。
 それを読み終えるとPCからピエロのような笑い声がひびいて、そして。
 ぷつりと電源が堕ちた。
 真っ暗な画面は闇に溶けるように静まり返る。
「包囲されてる」
 その時誰かが言った。
 窓ガラスの向こうには、森林や草原が広がっていたが、その森林と草原には降ってわいたように亡者が無数に沸いていたのだ。

「あ。いいわすれてた」

 その時電子音が鳴り響いたので全員が背後を振り返る、PCに明かりがともっていた。そしてココから声が聞えたのだ。
「あわてて逃げたからいろんなものがそのまんまだわ。全部上げる」
 次いでかちゃりと何かがあく音が聞えた。するとクローゼットから少年が一人ごろりと転がって出てきたのだ。
「まもるか、にげるか。とりあえず君たちがどういうやつなのか僕に見せておくれ、それじゃね」
 そして今度こそ通信は途切れた。

● 包囲されている。
 家宅捜索を続けている間にあなた達は包囲されていることに気が付きました。
 おそらくは情報自体罠、そしてH.O.P.E.に対する宣戦布告だったのでしょう。
 あなた達はこの状況を打開して救援が来るのを待つ必要があります。
 それにあたってのネックがいくつかあるので説明します。

『ペインキャンセラーについて』
 家宅捜索をしていて見つかった有用なアイテムのうちの一つです。
 白い粉状ですが、この粉に微細な従魔が含まれています。
 リンカーであれば体内で一定時間後に分解されますが。
 分解されるまでは、痛覚信号を遮断して、痛みも疲労も感じない状態になりますし。大幅に霊力が強化されるので、異常なステータスアップが見込めます(全てのステータスが三割~四割増し)
 ただし使用すると確実に重体になります。
 このアイテムは三つ存在する。

『フラッシュバン』
 ご存じ視界をくらませる手榴弾です。5SQ程度の範囲の敵の命中を9割減少させることができます。効果は3R持続します。
 三つ存在します。

『炎上弾』
  爆発すると周囲を火の海に変える。侵入不可能な4SQ程度の一帯を進入禁止にする。
 このアイテムは三つ存在する。

『少年について』
 少年の名前は『花風 竜彦』です、彼はクローゼットの中の金庫に幽閉されていました。衰弱していてすぐに病院に搬送する必要があります。
 ただ、彼の足には鎖がついていて。その鎖はクローゼットの中の金庫に繋がってきます。金庫は厳重に固定されていて、物理攻撃力の高いリンカーが家か金庫か鎖を破壊するしか、ここから動く道はないと思います。

● 戦闘について
 今回は二階建ての家と草原、森林地帯を使っての戦闘になります。
 勝利条件は20ラウンドの生存。
 一応逃亡することはできますが、いたずらに亡者どもを周囲の町に拡散させることになるので、H.O.P.E.としてはやめておいてほしいです。
 この家をどう使うか、そして持久戦をどう生き抜くかというのが今回のゲーム趣旨です。
 家は二階建て、二階は一室とトイレしかないのですが。一回はキッチン、居間、和室、トイレ。裏口。正面玄関。倉庫。地下倉庫
 とありまして。倉庫は広くありません、せいぜい大人二人程度隠れられるくらいです。
 ちなみに、食材はふんだんにあります、本当にあわてて逃げたみたいですね。
 二階は四方に窓が開けており狙撃地点としては申し分ないのではないでしょうか。
 一般的な家にありそうな物資は大体存在しますので、利用していただいて構いません。
 

解説

目標 20R生き残る。

● 敵について。
 亡者と言ってしまいましたが、性格には人形従魔です。
 この従魔には三パターン存在します。
 外見は暗闇で閉ざされて遠いとわかりにくいですが、自分の武器射程程度まで近づいてくれれば、どのパターンか判別できます。

『マリオネット』
 人形型です。カクカクした動きが特徴で動きは遅いのですが。両腕がチェーンソウで。体のあちこちからマルノコを発射してくるので攻撃力はべらぼうに高いです。
 ある程度の硬さもありますが、魔法攻撃には弱いようです。
 このマリオネットはラウンドの終わりに2体。家から25SQ以上離れた場所に登場します。
 移動力は10です。

『ワーウルフ』
 移動力や他のステータスについては並ですが、近接格闘力に優れ、また知能が高いです。
 遠吠えでワーウルフ同士で情報を交換、PCたちの戦略に対して的確な対抗策をうってきます。
 ワーウルフはラウンドの終わりに4体。まとまった位置に出現します。
 距離としては家から40SQ離れた場所で。
 移動力は20です。

『オードナー』
 腕を十時で組まされた状態でぐるぐる巻きにされた、トンボの羽を四枚背負う化物です。顔にはズタブクロが被せられ釘で固定されています。
 飛行しているため移動力が高いです、撃たれ弱いのですが。厄介なスキルを持っています。
 それは遠距離から攻撃してきたものに自身の受けた拷問の幻想を魅せるというものです。
 一度攻撃すると恐怖カウンターが1溜まります。
 5たまると苦痛の幻覚に囚われ、自分が拷問されたと現実を誤認します。
 これは恐怖から逃れるRPで回避できる可能性があり、味方の励ましなどで回避できる可能性があります。
 この敵はラウンドの終わりに1体。家から30SQ以上はなれた場所に登場します。
 移動力は30です。

 この三種類の敵はゲーム開始時に家の周囲10SQほどの位置に二体ずつ出現しています。
 
 

リプレイ

プロローグ
屋外から聞こえるうめき声にリンカーたちは視線をあけた。しめ切ったブラインドを指でまげて外を見る『麻生 遊夜(aa0452)』
 いつの間にか取り囲まれている。
 この明確な悪意を知って遊夜は獰猛に笑って見せた。
「俺達の前でガキ囮にするたぁ良い度胸じゃねぇか」
 次弾装填。金属音が部屋に響き踵を返す遊夜。
「……ん、次会ったら……オシオキ、だね」
 そう冷えた視線で告げるユフォアリーヤ。
「……だがまずは少年の保護だ、さっさとこの場を切り抜けねばな」
 そう告げると、遊夜は幻想蝶からランタンを取り出すと全員に配る。
「すまない、これの設置を頼めるか?」 
 光源だ。いつもより闇が深いこの夜ではろくに狙いも定まらない。
「……ん、外は明るい方が良い……それに、壊しに来たら……好都合」
 その直後である。一階を探索し尽くしたのか二階に上がってくる。『アリス(aa1651)』と『Alice(aa1651hero001)』
「……そう」
 アリスはそうつぶやいてすべてを察し。戦闘態勢を整える。
 特に何を思うでもない。ただいつも通りに、敵として目の前に立つならば敵で、敵ならば燃やすだけ。
 それが如何な存在であっても……だ。
「……もしかして僕達、囲まれちゃってるの?」 
 そんな殺気立つ一行の反応を見て『世良 霧人(aa3803)』は嫌そうに告げる。その言葉を受けて少女も一声あげた。
「げっ、囲まれてるの。うぅ、罠だったかぁ」
 そう後ろ手に頭をかくのは『沢木美里(aa5126)』
「持久戦、泥まみれになる美里も見てみたいけど。生きてあがいてる姿も面白いかもしれないしね」
『浅野大希(aa5126hero001)』は状況を瞬時に理解して告げる。
「余計なこと言ってる暇があるなら、さっさと準備してね」
「こういうとき、私たちは大役ですしね。ねー?」
「プレッシャーもやめて!」
「私達は大丈夫ですが、この少年が攻撃されたらひとたまりもありません! 何としてでも守り通さなければ!」
『クロード(aa3803hero001)』がそう告げると一行は頷く。
「守るか逃げるか?守るにきまってんだろ!」
『リオン クロフォード(aa3237hero001)』はそう高らかに宣言し、『藤咲 仁菜(aa3237)』と共鳴。
「誰が間違ってるか、なんて関係ないよ。私達は私達の信念を貫くの!」
「うん、護ろう。何も壊させない」
 『大門寺 杏奈(aa4314)』と仁菜。二人は夜を睨み。窓を開けさんを踏む。
 共に駆け出し夜空へ。
 守るための戦いがここに始まる。

第一章 乱戦
――ねぇ、マスター。ハめられたケース、これで何度目だっけ。
『ストゥルトゥス(aa1428hero001)』は冷たい夜気を感じつつそう問いかける。
「四回目、くらい?」
『ニウェウス・アーラ(aa1428)』は平然とそう答えた。
――OK。仏の顔も三度までって言うしー、そろそろガチで思い知らせる?
「ん。姑息な罠は…………徹底的に、叩き潰すよ」
 次いでニウェウスは弐階屋根を疾走。木霊するエンジン音を頼りに敵を視認。 
――チェーンソウって時点でヤバみ溢れてるネ。
「ん…………同感」
 目標は両腕を唸らせるマリオネット。
 杏奈や仁菜の防御行動の後に迅速に動く。そのために群がる敵を睨みつけるニウェウス。
「……けっこう暗いね」
 杏奈が告げた。
――暗闇なら照らしてしまえば良いのですわ!
 『レミ=ウィンズ(aa4314hero002)』がそう答える。
「うん。ちょっと長いけど、やることは変わらないから」
 その言葉に頷くと杏奈はその輝きを増していく。
――はい♪ 守り切りましょう、必ず。
 ジャンヌと盾の輝きは闇を切り裂きあたりを照らす。
「深い森に暗闇…………予測をさせずに一斉に攻め落とすには最適ね」
「だけど」
 次いで一際強く杏奈が光ったその光は真っ直ぐ伸びてサーチライトのように敵を照らしだす。
「私の光の前には無意味よ!」
 そんな彼女の目の前を砲弾のように突っ切っていく影があった『柳生 楓(aa3403)』である。
――彼の容態も気になるけど今は籠城の準備だよ、楓。
『氷室 詩乃(aa3403hero001)』が告げると同時に楓は地面を削って着地、その盾でマリオネットを一体弾き飛ばす、眼前には狼男の群。
「わかってます。彼は他の人に任せて、私達は戦いましょう」
 ここを守護することが、あの少年を守り通すことに繋がると信じて。楓は盾を構えた。
 たった一人で四体のワーウルフ、その突撃を真っ向から受ける。
――ここが! 最初の防衛ラインで。
「あなた達が踏み入ることができる、最後の防衛ラインです!!」
 翻るジャンヌ、その輝きが周囲を照らし悪を明るみにさらけ出す。
 直後魔術と弾丸が殺到。ワーウルフ達を一掃した。
 楓は振り返り、アリス、遊夜を見やる。
 すると楓の目にアリスの口が動いているように見えた。こちらに何か言っている。
 伏せて。
 その指示に従って楓は身を低くすると頭上をなめるように炎が這った
 火がつき慌てふためく空中からの奇襲者、ワーウルフ達。
 その方角が脅威ではなくなったと悟ったアリスは悠々と歩きさり別の方角を眺める。
 アリスの前で本が浮き、ばらばらとページがめくられる。
 その視線は飛来するオードナーを捉えており。収束した魔力がその翼を射抜いた。
 戦闘行動は優勢に見える。だが、楓は不吉を感じ取った。次いで感じる殺気。飛行する禍々しき存在、どこからともなく湧き出す増員。
 だが楓はひるまない、この程度の逆境何度となく弾き飛ばしてきた。
 次いでその手に抜き取るのは太陽の輝き持つ大剣。
「はあああああ」
 その業火を起き上がったマリオネットに叩きつけた。
「やってるな」
 そう拳の疼きを止められず前に一歩出る『赤城 龍哉(aa0090)』軽い足払いにて、とつて激してきたマリオネットを転倒させると。その勢いのまま回転する。
 次いで後ろに突き刺していた羅號を抜き、回転力そのままに切り上げる。
 真っ二つになったマリオネットは空中で爆発。あたりに歯車を散らばせた。
 次なる敵を探しながら龍哉はぽつりと告げる。
「竜彦か…………」
――どうしましたの?
 『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』が問いかける。
「Dとやらの趣味の悪さが気になってな」
 竜彦について詳しいことはわかっていない、ただ身なりと持ち物の良さからそれなりの身分の子供であるという事がわかったのみ。他に細工もされていなかった。
「立て籠るにせよ、寄って来る連中は先に叩けるだけ叩いておくべきだよな」
 そう飛来するオードナー。翼に弾丸を受けたそれが衝撃で高度を落とすと。刃をテニスのラケットのように直上に伸ばし、龍哉はそれを切り裂いた。
――普通の一軒家ではゾンビが相手でも防ぎきれるか怪しいですものね。
「何かチェーンソー持ってるのもいるしなぁ」
 そう地面に突き刺さったチェーンソウの破片を龍哉は眺める。
 そんな彼の四方から唸り声が聞えてきた、闇からとけるように姿を現したのはワーウルフ、四対一の構図だが、龍哉は余裕を崩さない。
「おう、元気が有り余ってるみたいだな。一つ稽古をつけてやろう」
 龍哉はうっかり殺しかねないので剣をその場に突き刺して拳を握った。
 四方から襲いくる敵と夜の舞踏会をここに開くこととする。
「あちらは大丈夫そうね」
――であれば、私達が担当するのは……
 そう銃装甲に包まれた『鬼灯 佐千子(aa2526)』が姿を現す。屋根の上に陣取って角度を確保。180℃全面を誰でも狙い撃ちにできるいい場所に立った。
「……全く。随分と手厚い歓待もあったものね」
 そんな佐千子に『リタ(aa2526hero001)』リタは告げる。
――一体、何人のゲストを呼んだのやら……、か。
 直後マズルフラッシュが彼女の表情を映し出す。
 固定砲台、重機関車。彼女は弾丸尽くすことなく、面で敵を制圧していく。
 その足元には複数のアイテムが突き立てられていた。
 まるで砦である。
――時間まで集中力を切らさず引き金を引き続けることができるか
 リタが無感情にそう問いかけた、すると佐千子は笑って答える。
「当然ね」
 空薬きょうがうずたかく積まれるたびに、佐千子はそれを蹴り倒した。


第二章 少年


『イリス・レイバルド(aa0124)』は二階で少年を眺めながらフムと物思いにふける。
――ごちゃごちゃとした声明文の解析は後回しにして専門家に任せるとしてだ。
『アイリス(aa0124hero001)』がそう言うととイリスが告げる。
「攻めてくる敵がいる。一刻も早く助けるべき命がある。なら迎撃するのみだよね、お姉ちゃん」
「隊長、この子衰弱が激しいです」
 そう仁菜はどこからか引っ張り出してきた毛布で少年をくるむと、その体にケアレイを当てる。
 外傷は特にない。だがろくに何も与えられていなかったのか体はぐったりしていて体温が低かった。
 そんな少年を解放する仁菜に水の入ったペットボトルを手渡す『煤原 燃衣(aa2271)』
 その瞳の奥で怒りが燃えていた。
「この子は任せてもいいですか?」
「任せてください、隊長」
 力強く頷いた仁菜にすべてを任せ燃衣は探索を続ける。
――ずいぶん大人しいな、大人になったか?
『ネイ=カースド(aa2271hero001)』がそう茶化すように告げる、すると燃衣は
 歯を食い縛り、拳を強く握る。
「いえ……」
 その声音は鉛より重たかった。次いでぽたりぽたりと床に血が滴る。
 彼の拳から滴ったもののようだ。
「殴るだけが戦いじゃないと、知ってるだけです」
 そして幻想蝶から斧を召喚した。鎖を見据え。渾身の力を籠めて鎖へと振り下ろす。
「いつも、いつも…………ッ! 子供を犠牲にしやがってッ!」
 容易くちぎれた鎖。
「煤原さん、目が覚めたよ」
 そう霧人が喜び勇んでいる姿を一別。
 金庫に視線を移す。
「何かありそうですね?」
――厳重過ぎるな……だが開錠する暇は無いか。
「金庫を叩き割ると中のものが危険ですからね、なら」
――金庫《ごと》持って行けば良い話、だな」
 そう燃衣は斧の石突それで壁を粉砕。紙のように床を破って金庫を切りだした。
 改めて少年に視線を落とす燃衣。
 霧人が少年にチョコレートを差し出していた。
「胃がびっくりするから、舐めるように食べるんだよ?」
「もう大丈夫!まずは水分をとって落ち着こう!」
 そう霧人が少年の頭を撫でると、仁菜は少年を恐怖から遠ざけるように抱きしめる。
 木人は燃衣に頷いて立ち上がった。
「問題は片付きましたね」
「さて、後は敵を殺す…………のみ……ッ」
 二人も戦場へと参戦する。
「あれ? そう言えばイリスさんは?」
 燃衣が気にする。
 見ればイリスは小瓶を取り出して、少年にジャムをスプーンで上げていた。
――味と栄養と消化の良さは保障するよ。
「いつも持っているお姉ちゃんジャムが弱った胃に染み渡るね」
 告げて少女は戦場へ。命を守るため、その輝きの盾を取る。

   *   *
 
 一階の窓ガラスが吹き飛んだ。たどり着いたマリオネットが一階から侵入しようと試みる、だがそれを阻止したのが霧人。
「九時の方向から、敵が3体!」
 ライヴズゴーグルで敵の位置を捕捉しながら、敵の接近を皆に伝える。
 次いでフォートレスシールドを発動、攻撃を引き付けて、侵入を許さない。
 そんな戦場だが、僅かにだが処理スピードを増援のスピードが追い抜いてきた。
 戦い傷ついた戦士たちが徐々に効率を落してきたのだが。だが、まだ彼らに手札は残されている。
 直情方向から奇襲。飛び去るオードナーの背に燃えるような隕石が追突した。
「…………たまには俺にも暴れさせろ、スズ」
 その炎の中から現れたのは、燃衣。である。
「あの手の安全な位置で高笑いしている野郎は、八つ裂きにしたくて溜まらん」
 告げて足元で意識を失っているオードナーのを高々と空に掲げた。
 そして。ぎちぎちとオードナーの体を軋ませて、胴体から頭を引っこ抜いた。
「守るか逃げるか…………答えはこうだ。テメェ等は、全て、殺す……」
 そうゆったりした動作でランタンを設置。
「遅かったじゃねぇか」
 そう微笑む龍哉は山のように積み上がった死体を跨いで龍哉はネイに歩み寄る
 その過程で躍りかかってきた人形へ。その羅號の石突を突き立てた。
 双振りの槍が踊り狂う。
 駆け抜けざまに燃衣が一振り。巻き上げたマリオネットの体を龍哉が一閃。
 二人は弧を描くように左右に別れ。
 意にそぐわない動きをする敵を内側へ、撃つ側へと吹き飛ばしていく。
――そこは通行止めです。
「全て吹き飛ばす」
 そうネイが構えたのがG3。バックファイアーが陰炎となって夜の空を揺らし。排出された弾頭は火の海を作り出す。
 その日の海へネイは悠々と踏み入る。霊力を伴う熱さ。それすら意に介さず、熱に喉を焼き苦しみもがくワーウルフの前に立つ。
「…………潰れろ、砕けろ、みっともなく死ねよ…………」
 顔面にひじ打ち、地面にバウンドする体を蹴り上げショルダータックルで吹き飛ばす。
 ネイの真価はその反応速度である。
 横ベクトルの力をくわえられたワーウルフが吹き飛ぶ前に腕を伸ばして逆サイドに回り。そして。手刀をその肋骨の間に滑り込ませた。
 恐怖、それが従魔の表情を彩った。
 それに対してネイは何も告げずただ。心臓を握りつぶした。
 敵への怒り、憎悪が全てを塗り潰す、傷を負えば負う程に、敵も傷付けたい意志が燃え上がる
「……柔らかなお前、歯ごたえがない」
 燃え盛る神を振り乱し、次の獲物を求めて炎を払った。
《不破 炬鳥介》のあらゆる感情は全て怒りに変わる、全てを破壊し尽くすまで止まららない。
 その炎のカーテンの向こうに暁隊員が見えた。
 杏奈はその輝きを減らすことなく、敵を一歩たりとも家へと近づけない。
 だが徐々に動きが鈍くなっている様子が見える。
「輝きの砦は国を、人を守る!! 決して落ちはしない」
 その言葉は戦場に集うものを鼓舞すするだろう。
――ネーさん、増援に。
「必要ないな」
 燃衣の言葉を一蹴するネイ。
「お前が思う以上にあいつは強い、それにあいつの本当の助けになれるのは……」
 杏奈は両側から迫るマリオネットに対応する。
 左のチェーンソウを捌くと、リフレックスの反射でマリオネットの右腕腱が切れた。
 振り向きざまに右のマリオネットを吹き飛ばす。
 その光を瞬かせ、視界を一瞬つぶして懐へ、敵を弾きあげる。
 ただ、護ってばかりでは敵は減らない。
 このままでは押し切られかねない。
 杏奈は土ぼこりにまみれた手で汗をぬぐう。茶色く線が引かれるがそれに構ってもいられない。
 その時だ、杏奈の顔を照らす光量が増した。
 驚いて顔を上げる、そこには黄金の翼を翻す少女がいた。
「大丈夫ですか?」
 イリスである。
「イリスさん。持ち場は」
「え? だって釣撃するんですよね? なら少しくらい大丈夫です」
 そうマリオネットと杏奈の間に入り込むイリス。
――エイジスは弾き返すんじゃない。飲み込むんだ。
 アイリスの言葉通り結界を操作。
 刃の鋭利さも、回転も、推進力も高い攻撃力を発揮する要素を全て減衰させる。
 黄金の火花があたりに散った。
「なら、後はただの鉄の塊だ」
 そう刃を振り下ろしてチェーンソウを粉砕。
「まだ、ワーウルフが!」
「踊りますよ!」
 イリスが杏奈の手を引いた。
 二人は舞い踊るようにかわるがわるワーウルフ達の拳を、蹴りを受け止め、敵の攻勢を全て捌いた。
「翼の妖精郷ジャンヌ、光の奏結界エイジス。鎧の結界ティタン最大展開」
――暗闇を照らしだせ。
 その輝きにつられてさらに従魔が引き込まれていく。
 それをイリスは盾で挫き。刃で反撃する。
 杏奈がその背を護り盾ではじく。
 よろめきふためき、体勢を崩した敵へ振り帰りイリスが斬撃をみまう。
 代わりにイリスが相手にしていたワーウルフの顔面へ盾を叩きつける。
 直感と経験そしてお互いの特性が二人のコンビネーションを可能とする。
 輝きが戦場を満たす。その二枚の盾の前にどんな恐怖もかき消されることだろう。
「体制を立て直しますよ」
「うん、ここからが本番の戦いだ」
 光が後方に散る、杏奈、イリス。二人が並んで立てばまるで、巨大な光の翼が翻ったように見えた。
 そんな彼女たちの目の前で尻込みする従魔たち。それを挟み撃ちにするのが地獄の業火と絶対零度の魔法剣。
 ニウェウスとアリスの合わせ技である。
――火力が足りないんじゃない? マスター。
「……だったら、もっと冷たく、もっと鋭く」
 次いで放たれた絶対零度の凍気、それがワーウルフ達を凍らせて砕いた。
 そんなニウェウスへ迫るオードナー。
 その速度はすさまじく一瞬でニウェウスをその攻撃の射程内に捉える。
 だが。
 銃弾が両翼を穿つ。佐千子と遊夜の弾丸だ。
「狭い屋根へ、ようこそ」
――こんな所で、乱反射する魔法を避けきれっかなぁー?
 体勢が崩れたオードナーその頭上から冷気を浴びせるニウェウス。落下して砕け散るオードナーを一別し、そして再び戦域全体を見渡す。
 そのときだった。
「敵、順調に目標地点に集まってます」
 そうライトアイで視界を確保した美里が全員にへ伝令を告げる。
 一歩後退した龍哉へとリジェネ、そしてケアレイをかけた。
「準備ととのってます、釣撃いつでも行けます」
 戦いは最終局面に突入しようとしていた。
 
第三章 闇夜

「遅くなりました」
 そう仁菜があわてて二階の窓から飛び出して屋根の淵に走る、すると佐千子が銃身を下向きに夜を眺めていた。
「どうしたんですか?」
 その言葉にハッと振り返る佐千子。
「なんでもありません」
 そう佐千子は微笑んで再びトリガーに指をかけた。
「オードナー……」
 そうぽつりとつぶやくと仁菜は一番前に立つ。
「私に、いえ。私たちにまかせてください」
 弓を引き絞る仁菜。その表情が矢の光で一瞬照らされる。そして放たれた矢は一直線にオードナーへ。そして。
――痛った! 気持ちが痛い! 嫌な敵だなー
「Dは性格悪い人の集まりなのかな……!」
 そう湧き上がる恐怖を押さえつけて仁菜がつぶやいた。
――でも、俺達ならこのくらい大丈夫だな! 一人じゃないから!
「うん、私達なら、絶対に」
 二射目。その矢を受けてオードナーが地面に転がった。
――大丈夫! 何があっても守るよ!
「早いな、飛行型か……こちらで墜とす、五時の方を頼む」
 次いでオードナーへと弾丸を叩き込む
「9時、距離100……敵が固まってる、警戒してくれ!」
 そのスコープを覗く視線を外し左へ、襲いくるオードナーをうち落とすと、視界に黒い影が見えた。
 闇が笑っている。
「ッグ、何だこいつぁ……」
「……ん、嫌な幻影
「近接メンバーはこの幻影を見てないみたいだな」
 遊夜は引き金を引き絞る、同じく胸のうちに恐怖はあったが遊夜はそれで視界がぶれたりはしなかった。
「ッヅァ、この程度……ガキ共を、失うことに比べればッ!」
 奥歯を強くかみ、闇の奥に見える得体のしれない恐怖に対抗する遊夜。
――……ッ! ……大丈夫、おかーさんは……強いんだから!
 極力オードナーは遠距離メンバーで落さないように指示。やむおえない場合のみ対応することにする。
 その時である。狼の遠吠えが聞えた。
 それは戦場中に連鎖しある情報を伝える。
 そのある情報とはやはり、左面の手薄な場所であろう。
 一部分だけぽっかりと空いたスペースがある。だがそれは、こちらで設けたデッドスポット。
 つまり囮である。
 殺到するワーウルフ達。それに続く従魔。だが。
「すまんがここは立ち入り禁止だ」
「……ん、お詫びに……一発、プレゼント」
 炎上弾は当たり一面を火の海に変える。
 そして逃げようとする従魔たちを遊夜の弾丸が跳弾しながら襲った。
 従魔の大隊が誘い込まれてしまった。
――はい、より取り見取りっすよマスター?
「ん…………纏めて、薙ぎ払う!」
 ニウェウスが召喚したのは氷の短剣それが空を埋め尽くし、敵へと降り注ぐ。
 その上から押さえつけるように炎の壁。それはアリスの魔術である。
 絶対零度と、一千度を超える焔、交互に浴びせられた従魔たちは大混乱に陥った。
 だがこちらにも不安の種は芽吹く。射撃組と同じくニウェウスとアリスの視界にも夜の闇が怖く映るのだ。
 だがアリスは、攻撃の手を緩めることはしない。
「……面倒だな」
 こちらに向かってくるなら燃やすのみと判じた。拷問の幻覚は受けてしまうなら仕方ない。
 それはそうしたものとして扱う。扱った上でアリスは敵に問いかける。
「……それで?」
 絶望か痛みか、アリスは思う、自分に何を思わせたいのか知らないけど、何にせよあの時に比べればずっと楽だと。
 美里も家から躍り出て一斉攻撃に参加する。
「この程度の苦痛に足を止めたりなんてしません!」
――ボクたちを止めたいならもっと強烈なのを持ってくるんだね!
 そんな戦闘員の中央に躍り出たのは龍哉とネイである。
 ネイはフリーガーの爆炎で周囲の敵を吹き飛ばしながら。
「煤原の方も…………結構派手に暴れてるな」
 龍哉はそう微笑むと、その手の斧をふり回し、敵をまとめて頭上に放り投げた。
「遠慮はいらねぇ。羅號の一撃、とくと味わって逝け!」
――一罰百戒とはこういう事を言うのかもしれませんわね。
 怒涛の連続攻撃にて、空に舞い上がって敵を細切れにする。
「ちょいと群れた程度で俺たちをどうにか出来ると思うなよ」
 そして再びネイと背中合わせに立った。
「…………竜彦の容態を考えるとそろそろケリを付けたいとこか」
 そう、皆には守るものがある、その小さい命のために一帯たりとも従魔を通すわけにはいかない。
 だから佐千子はトリガーを絞り続ける。振動で腕がマヒしても、狙いは正確に、敵を拭きとばして、動きを縫いとめるため。
 そしてオードナーの見せる幻覚にも恐れず勇猛に立ち向かう。
 だが突如として幻覚がはっきりと眼前を覆った。
 見えたのは生身の体。
 自分の体。
 次いで見えたのが。足りない。自分の体。
 かつて、突如、押し付けられた不条理に、それを跳ね返す力のなかった己に怒りを覚えたように……。
 かつて守られなかったからこそ、不条理を押し付けられる誰かを守りたいと願ったように。
「甘いわね、恐怖ならとっくに乗り越えてる」
 今もまた、恐怖を受け入れ、そして乗り越えていくだけ。
 一度、歩んだ道。ためらいはない。
 佐千子は武装を変更、業火に慌てふためくワーウルフの群に狙いをつけた。
 そしてトリガーを引くとまるで、湧き上がる炎に打ち上げられるように従魔たちが空を舞う。
 その炎を背に佐千子は振り返る。
――煌翼刃……。
「螺旋槍!!」
 その分厚い炎の壁を吹き飛ばし、イリスが突撃する。
 眼前には溶けた表皮を地面にこすり付けながらもがくマリオネットがいた。
「煌翼刃・茨散華!」
 その背からその刃を突き立てると、マリオネットは甲高い音を鳴らしながら軌道を止めた。
 直後炎が晴れる、蝶空から吹きさらす風が炎をかき消したのだ、頭上にはヘリ、そしてその援護射撃にて残党は相当される。
 護りきった。リンカーたちは少年の命を守りきったのである。

エピローグ

 戦いが終わったあともリンカーたちはすぐに休めるわけではない。
 アリスは家宅捜索ついでに運び出される少年へ問いかける。
「自分が狙われた理由に心当たりは?」
 端的に考えるなら身代金だろうか。
「わからない……」
 そう力なく答えた少年。
 全てはあの金庫を開けてから判明することになりそうだ。
「藤咲さん、なにかありましたか?」
 その美里の言葉に仁菜は振り返る。
 ペインキャンセラーをコールドボックスに入れ、肩に背負う。他にも食べかけの食料や珍しい飲食物等手がかりになりそうなものは片っ端からコールドボックスに突っ込んでいく。
「やはり拠点だからでしょうか、トラップの類は何も仕掛けられていませんでした」
 そう仁菜は告げる。
「もしかすると本当に急いで逃げた? だとすると、うーん」
 釈然としない思いを抱えたまま家宅捜査は続く。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • 暗闇引き裂く閃光
    大門寺 杏奈aa4314

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • これからも、ずっと
    柳生 楓aa3403
    機械|20才|女性|生命
  • これからも、ずっと
    氷室 詩乃aa3403hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御
  • 献身のテンペランス
    クロードaa3803hero001
    英雄|6才|男性|ブレ
  • 暗闇引き裂く閃光
    大門寺 杏奈aa4314
    機械|18才|女性|防御
  • 闇を裂く光輝
    レミ=ウィンズaa4314hero002
    英雄|16才|女性|ブレ
  • オーバーテンション
    沢木美里aa5126
    人間|17才|女性|生命
  • 一つの漂着点を見た者
    浅野大希aa5126hero001
    英雄|17才|女性|バト
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