本部

猫探しワンダーランド

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/09/11 15:01

掲示板

オープニング

● これは砂漠で一本の針を見つけるようなそんな話。

 日本は島国である。本当や北海道、四国などからなる、列島である。
 そして小さい島ならまだまだたくさんある。利尻、沖ノ島その他もろもろ。
 そんな本州から少し離れた海の上。小さな小さな島の上。
 今回は人口5000人程度の島で起こった事件を解決してもらうために皆さんに集まっていただいた。
 今回の事件は猫型の愚神を探して討伐すること。
 なんだ、そんな簡単な任務か。
 そう皆さんは思うだろう。ただ一つだけ絶望的な状況設定があるので皆さんにお伝えせねばなるまい。
 この島、俗にいう猫島なのだ。
 島の人口より、猫の方が多いんじゃない?
 そう思えるほど猫がいる。
 この島基本的に、本州から船でむかうのだが。
 フェリーが停泊する港からして猫だらけ。
 森の方に行っても猫だらけ。
 町の方でも猫だらけ。
 あっちもこっちもねこねこねこである。
 しかも人懐っこい。
 猫好きには天国……。
 とは、今回は言ってられない。
 お気づきだろうか。猫が沢山いる中で猫型の愚神を探す必要があるのだ。
 これはもはや砂漠で一本の針を見つけるようなそんな話ではないだろうか。


● 状況確認。

 今回皆さんが探索していただくのはとある離島。
 弐日がかりの任務でございます。
 観光地として有名な島で、特産品は魚とキノコ。
 面積は150平方キロメートル。
 雫型の島であり。南東に町や港がギュッと集まっています。
 だいたい人間が生活しているエリアは80平方キロメートル程度でしょうか。
 それ以外はうっそうと森が茂っており、クマとかヘビとかいるみたいです。
 猫たちもそちら側には近寄らないそうな。
 失われた野生である。
 猫たちは日がな一日、だらりと過ごしています。
 

●探索方法について。
 今回は英雄の皆さんに協力していただきます。
 突き刺し型にゃんにゃんカチューシャというアイテムをグロリア社で開発していただきまして、これを使って猫に聞き込みをしていただきます。
 猫たちも日々を無為に過ごしているわけではありません。しらんよそ者のネコが突然現れれば覚えていると思うのです。
 なので、この猫の意思疎通が若干できるようになるカチューシャを装備して、猫に聞き込みを行ってください。
 ただこのカチューシャデメリットがあります。
 先ず英雄に突き刺すのですが、これ、任務が終わるまで外せなくなります。
 しかもこの状態で共鳴すると、共鳴姿もカチューシャしている状態になります。
 あと共鳴姿での戦闘力が下がります。
 個人差がありますが、まんべんなく下がって、本来の能力の七割、八割、程度になると思います。

 あとこのカチューシャ動物耳のフォルムでして。
 猫兎犬トラ、いろいろそろってます、好きな物を装着してください。
 そして耳の形に準じた、謎の語尾がつくことになります、ニャン、ピョンと言った語尾です。
 なので、任務に参加した人間全員が装着する必要があるかは疑問です。

 最後に、このカチューシャ能力者につきさせないことはないのですが、流血騒ぎになるのでやめておいた方が無難です。

 

解説



目標 デクリオ級愚神 シュレディンガーの撃破。


愚神シュレディンガーについて。

 このシュレディンガー、一見すると三毛猫ですが。両目の色が紫です。
 逆に言うと其れしか見分ける手段がありません。
 ただし、一度でも攻撃を受けると虎ほどの大きさに代わり。全体的に半透明になります。
 攻撃手段は軽い身のこなしを利用した爪攻撃。
 ヒット&アウェイである。
 逃げ足が速いので注意。移動力20くらいは普通にあります。もっとあるかも。
 特殊な攻撃は特にないのですが、体をガス化させて物理攻撃をやり過ごしたりします。
 戦闘力は大したことないのですが、見つけることが難しい、そして逃がさないことが難しい。そんな敵です。

● シナリオ目的について。
 今回は戦闘半分、遊び半分で作りました。
 笑いを狙って行ってるわけではなかったのでコメディーではありませんが十分にコメディー路線にも乗れるでしょう。

リプレイ

プロローグ

 事の発端はH.O.P.E.が張り出した任務の募集を見たところから始まります。
 H.O.P.E.の掲示板は毎日新しい依頼が張り出されるのですが。そのうちの一枚に釘付けになっている少女が一人。
 それが『アリス(aa5349hero001)』でした。
「……リア、猫……の依頼」
 そう『リアン ベルシュタイン(aa5349)』の袖をきゅっと握って動きを止めるアリス。そんな彼女の姿を見てリアンは茫然とつぶやきます。
「…………あぁ」
「……行きたい」
 そう上目づかいにリアンを見つめるアリス。
「…………」
 そんなアリスに何も言えない様子のリアンです。
「……おねがい」
 このお願いを聞いてくれるまで梃子でも動かないぞ。そんな風にアリスが言っているように見て取れましたリアンは溜息をついて一つ。こう告げます。
「……分かった」
 こうしてアリスは楽しい猫探しの旅に出発する機会を得たのです。
「ニボシ……かってく」
「猫はほんとうに煮干しが好きなのか?」
 ふと、何気なくリアンが告げると、おもむろに思考を巡らすアリス。二人はそんな疑問点から調べ始めるのでした。

第一章 猫探し

「砂の中のダイヤモンド、じゃなくて猫探しね」
 そうカチューシャを眺めながら『餅 望月(aa0843)』は言いました。
 何の変哲もないカチューシャに見えるそれ。それを見つめる望月をまた眺める『百薬(aa0843hero001)』はまた言うのです。
「宝石よりも命の方が大事だよ」
「いや、愚神だし」
 二人の背後でぷおーっと汽笛が鳴りまして。一世代ほど古いフェリーは港を去っていきます。
 リンカーたちが降り立った昼間の港は閑散としていてカモメが鳴いています。
 それくらいなら普通の港。けれどリンカーたちは到着早々納得することになりました。
 なるほど。ここは猫の王国。
 あっちこっちに猫がいます。
 寝転んで毛づくろい、魚の骨で遊ぶねこや丸まって日陰であくびを一つ。大きな口をあけてのんきそうにしている猫たちがいました。
 その猫たちと戯れ……いや、交渉するためにはこのカチューシャが必要とのことでして、一応リンカー全員に動物耳カチューシャが配られているのですが。
「猫と話ができるなんて便利だね」
『皆月 若葉(aa0778)』がカチューシャを翻し眺めていると『ラドシアス(aa0778hero001)』は言います
「欠点は、能力が落ちる事か……」
「えい」
 ザクリと、明らかに大丈夫じゃない音を聞きつけラドシアスは不思議そうな顔をします。
「ならば、全員付ける必要もないかにゃん……にゃん」
 気が付けばなんと若葉がカチューシャをラドシアスに突き刺しているではありませんか。ニコニコと微笑みながらラドシアスを眺める若葉さん。
「……何をするにゃん」
 あまりの出来事に茫然とラドシアスはそんなことを口にしました。
「いや、楽しそうだったから……つい」
 その時ラドシアスのカチューシャが揺れます。猫の耳にしか見えないそれがピコッと揺れると。そのタイミングで思わず噴き出す若葉さん。
「……まぁ、人手が多い方がいいかにゃん」
 意外とラドシアスの適応能力は高いので、このいたずらにもめげず冷静に言葉を返します。
 そんなラドシアスを引き連れて一人の少年へ挨拶に向かう若葉さん。
「依頼で一緒になのは初めてだね、よろしく!」
「……皆月さん、こんにちわ」
 そう『魂置 薙(aa1688)』は若葉へ挨拶を、そしてかわいそうなことになっているラドシアスを一別して、薙もカチューシャを自分の英雄へと手渡します。
「私がつけるのは色々、アウトではないか?」
 そう苦笑いを浮かべるのは『エル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)』
 見た目も語尾も似合うと思っていないので、むしろ痛いだけだと思っています。なので抵抗しかありません。
「大丈夫」
 そう薙がエルをなだめると鞄の中から何やら取り出します。それは猫耳のついた帽子で。
「えっと……おそろい」
 ぽふっとそれをかぶる薙の姿に、エルも仕方ないと折れるのでした。
「なんだか昔を思い出すカチューシャなんだけど」
 あたりに動物口調が溢れていく中、まだ尻込みしていたのは望月さん。
「つけてみようか?」
 百薬がそうカチューシャをかぶる仕草を見せると首を振って、望月は代わりにゴーグルを被せてあげるのです。
「いや、うっかり全員でやると何か見逃しそうだから、ライヴスゴーグルに頼るよ」
「これ時々役に立たないよね」
「そんなこと言わないのよ、役に立つ時の方が多いんだから」
 そして鞄から取り出したるは、猫のご褒美で有名、チューブの中からジェル状の何かを出すあれ。ちまたではチュールと呼ばれていたりします。
「ねこまっしぐらー」
「まあそういうやつね」
 こうしてリンカーたちと猫との、世にも奇妙な戦いが始まるのでした。
 
  *   *

 『ノエル メタボリック(aa0584hero001)』はいたたまれない表情で猫が好きそうな物を集めた囲いを作成しておりました。
 その隣でいまだ笑いを抑えられずにいるのは『ヴァイオレット メタボリック(aa0584)』
 いまだノエルを直視できないヴァイオレットには少し前こんな出来事があったのです。
 それはノエルがヴァイオレットにいい顔がしたいのか自分からカチューシャを選んできたところから始まるのです。
「兎耳可愛らしいですわ」
 そう上機嫌なノエルにその時点から笑いをこらえきれないヴァイオレット。
「う゛ぁひゃっひゃっ、ノエル姉者やこれを突き刺すぞよ、良いぢゃろうかの」
「ヴィオ、早くおつけになって下さいまし」
「う゛ぁひゃっひゃっ、一角デブウサギの誕生じゃ」
 そう膝を叩いて笑うヴァイオレットだったがそんなものは無視して二人は共鳴。
 そしてその姿を鏡に映し愕然としたというのです。
「う゛ぁひゃっひゃっ」
 ヴァイオレットの笑い声がこだましました。
 原因としては年老いた姿になってしまったがため、その姿を鏡に映してヴァイオレットは思わず笑ってしまったのです。
「老婆なのぢゃ若者っぽさは封印の上忘却ぢゃ」
 曲がりくねったワシ鼻と、ギョロリとし血走った三白眼、そして厚ぼったい唇とヴァイオレット特注の出っ歯な総入れ歯。
 彼女としてはかなり壺らしく鏡で初見以来『う゛ぁひゃっひゃっ』と甲高く笑う癖が付いてしまいました。
「う゛ぁひゃっひゃっ、この姿気に入ったわい」
 そのままヴァイオレットは町へ繰り出して宿泊施設の用意や相談場所の確保などに走りました。
 そして一通りの準備が済んだところで探索へと駆りだしたという現在の状況。
「快くかしてくれてよかったのう」
 そうヴァイオレットが問いかけるとノエルは、そうですねと答えました。
 匂いのきつい香水をマーキングとしてあたりに散布。
「これで、どんどん追い詰めるんじゃ」
 そう意気揚々とヴァイオレットは猫探しを続けます。
 この時点で開始から三時間程度経過したでしょうか。
 案の定捜査は難航しております。
「シュレディンガーってコードネーム考えた奴誰だ? 例の有名な猫みたいにラジウム仕込んだ箱とか用意しときゃ勝手に入り込んで死んでたりとかするのか?」
『愛宕 敏成(aa3167hero001)』は街中の商店街、隙間という隙間に顔を突っ込んで猫がいないかなぁと探していました。
「なに? 何だか分からない! ……それから猫ちゃん殺すの反対!」
 『須河 真里亞(aa3167)』が立ち上がり膝から埃をほろうとそう抗議の声をあげます。そんな真里亞の声に反応して立ち膝になって振り返る敏成
「猫じゃない……愚神だ、多分。ところで俺はそのカチューシャとか付けるのは」
 そう言いかける敏成の顔に黒い影が堕ちました。そのまま真里亞は接近して見事犬耳カチューシャをはめることに成功しました。
「反対だワン!」
「よし! 中々かわいいね」 
 やられた……、油断した数秒前の自分を怨みたい。そう思いつつカチューシャを握ってみますが、やはり取れません。
「……い、痛くないワン? って、何かやる前には人の意見聞けよワン!」
「じゃあ、その箱作ってー、聞き込みしてー、忙しいねトシナリ」
 軽く笑うと悠々と扇動する真里亞。
 ただ、実際にはシュレディンガーの箱そのものを作る訳には行かないので、島唯一のホームセンターで材料とまた旅を揃えまして……マタタビを中に敷き詰めまして……。
 そして立方体の密閉容器を作成しました。
「密閉されてはいるが猫の存在が量子的に決まるならトンネル効果で一定の確率で箱の中に入る事もある筈だワン……多分だワン」
「自分で言ってる事分かってる?」
 そんな箱を持ち歩いていると、マタタビの香りにつられて猫が集まってまいりました。
 まるでハーメルンの笛吹のように猫を先導する真里亞、しかし敏成が犬耳なので近寄りがたいようです。
 そうです、やはり犬と猫でも犬猿の仲なのでしょう。
 なので敏成は街の飼い犬を中心に行うことにしました。
 塀の上から顔をひょっこり出すと。犬が挨拶してくれます。
 敏成はそれが挨拶だとわかるのでやはりワンっと言葉を返すのです。
 そんな敏成の姿をにやにや見守る真里亞。
「体がかってにだわん」
 そう弁明する敏成。これ以上から買ってもかわいそうなので真里亞は敏成に問いかけます。
「なんて言ってた?」
「変なにおいが街中からするらしいわん。たぶんそう言ってるきがするわん」
 情報は逐一伝達です。いそうな場所に箱を設置し、時たま箱を揺すって量子的猫が中に入って無いか確認することも忘れません。
 入ってたらなら集中砲火を浴びせるのですが、それはまだまだ叶いそうにありませんでした。
 そしてその敏成の報告を受けて捜索場所を変えたのはリアンでした。
 彼は携帯電話をポケットに滑り込ませますと。猫のように道路の上に座るアリスへ視線を落とします。
 彼女は猫耳をつけていました。シルバーの髪色にあった美しいもので、時折ピコピコ動くのが可愛らしいのです。
「……俺は人。チビは」
「……うん。猫さんにゃん」
 リアンはコーヒー片手に商店街の店員さんに変わった猫を見かけなかったか聞いて回ります。
 特に店先で猫を撫でている人や、猫好きそうな人を狙って声をかけます。もし見かけた時は、自分か仲間に知らせてほしいと連絡先を伝えました。
「……猫耳なり兎耳なり、変わったカチューシャ着けてるのが仲間だから、よろしく頼む」
 そう伝えると店員さんが苦笑いを返しました。島中でリンカーが猫探しをしていることはみんなが知っている事実になっているようです。
 そんなこんなで有益な情報があれば共有するために戻るのですが。
 戻るとアリスが猫をお腹に抱えて寝ていました。しかも埋まるほどのネコ。
 ニャーニャーなく声も多重そうで耳が痛くなりそうです。
 そんな光景を眺めてリアンはつぶやきます。
「……面倒だな」
「……ん、大変そ、だにゃん」
 リアンの言葉にぱちりと目をあけたアリスがそう答えました。
カチューシャのせいでしょうか、生態系も猫に寄って行っています。
 そんなアリスを優しく起こすとアリスの猫耳がピコピコ反応しました。
「知らない猫を見たの?」
 アリスがそう起き掛けに白猫へ問いかけると、猫はニャーと鳴きました。
「どこで見たかのかにゃ?」
 ニャー。
「いつみかけたのかにゃ?」
 にゃにゃ。
 猫は左前足をごにょごにょ動かして、身振り手振りで教えてくれます。
「もし、お願い出来るなら、一緒に探してほしいにゃん……」
 その言葉に猫は快くニャーと答えます。
「報酬はにぼししか、ないけけどにゃー」
 そう幻想蝶からニボシの袋を取り出したが最後。
 アリスに群がる猫たち。そんな猫たちに無抵抗のまま押し倒されてそして。
「大丈夫か?」
 リアンに救出されると猫の毛まみれだったアリスでした。

第二章 創作難航中

 猫はなぜか港に集まります。
 それは人間たちが魚を沢山持ち帰ってくることを知っているからでしょう。
 だからそのまま港に居ついてしまえ! とばかりに昼間、特に早い時間帯は港に猫が大集結しています。
 そんな港を大捜索しているのが、一羽の兎……ではなくヴァイオレット。
「変わった猫はいないピョン」
 そうノエルが告げると、その言葉に返すように猫が鳴き声をあげました。猫の大合唱です。
「街中に……という報告もうけましたピョン。なのでそちらに向かうのもいいかもしれないピョン」
 そんな語尾にいまだ笑いをこらえられないヴァイオレットです。
 ただ、その対応にもなれてきましたのでノエルは平常心で猫たちに聞き込みを行うことができます。
「シュレディンガー様の好物はわかるぴょん?」
 そう尋ねると猫がニャーと鳴いて道の上に乗るあれを指さします。
 そ子に転がっていたのはニボシです。
 煮干しが点々と続いています。
 どうやら誰かが落したようですが……猫は言います。
 シュレディンガーは猫を食べないと。
「まぁ、元々猫に対するお礼だしね」 
 そう若葉猫にお礼のニボシを差し出しますと、三袋目の袋をくるくる閉じて幻想蝶へしまいました。
 若葉たちもみなと周辺から森に向かい情報収集を行っています。
「こちら、うちのネコのタマさんだよ」
 そんな中若葉はこの町の有力な猫に合うことができました。
 その猫は一際年老いており、おひげもしなしなでしたが、眼光鋭き強い猫だと感じることができました。
 その猫は若葉が友人からの贈り物、黒猫の書で召喚したタマさんにご執心のご様子。
 そう、タマさんはとても美人猫だったのです。
「これは。俺が猫耳をつける必要はなかったんじゃないのかにゃん」
「そんなことはないよ、俺だと何言ってるか分からないし」
 ラドシアスが通訳すると、ボス猫はこんなことを言っているようです。
 
 古より伝わりし、猫の聖地。
 マタタビの森に行くがよい。かの猫はそこにいる。
 この島のネコを滅ぼすために、その力を振るおうとしている。
 
 その報告を聞くとラドシアスと若葉の顔が引き締まります。
「ありがとうにゃん。これを……」
 そう手渡したのはカリカリの袋。これがあるだけで猫まっしぐらです。
「これを使って猫たちの避難誘導をお願いするにゃん」
 時期に夜がやってくる。始末をつけるのだとすれば夜が深まる前に。
 そう若葉は思うのです。
「後は、シュレディンガーが逃げたなら……」
 ラドシアスの言葉に頷くボス猫さん。
「協力に感謝にゃん」
「ありがとね」
 そう若葉はニボシをさしだし。ボス猫の頭を撫でますと、踵を返します。
「また会おうねムタ」
 ボス猫ムタとのしばしの別れ。この猫のためにもこの島に平和を取り戻さねばなりません。

第三章 戦い

 薙は森方面のネコたちに聞き込みを行ってました。
「最近この島に余所者が来なかったかにゃ? 目が紫の猫にゃ。…いや、私のことでは無いにゃ」
 そう漆黒の耳をぴょこぴょこさせながら膝をついて猫たちとお話をするエル。
「ここのボスはおるかにゃ?」
 ただ、そうエルが真摯に話を聞こうとしているにも関わらず猫たちは逃げるように街の方に去っていくのです。
 それを流し見ていると、奥から一際体の大きい猫が現れます。
「皆、町へ逃げていくようだにゃん。何か知らないかにゃ?」
 そうエルがボス猫に尋ねるといるらしいのです。
 この向こうに何か異質なものが。
 その猫は言いました。
 あれは猫ではないと。
 人間に近しいと。
「迷惑はかけない、私達で処理するにゃん。だから」
 道案内をお願いしたい。
 そうエルが告げますと、ボス猫は意を決したように頷いて、そして森の奥へと二人を誘っていくのです。
「他のネコにも、避難指示と協力の妖精をしたいにゃん」
 そうニボシをばらまくエル。
「そこら中に監視カメラがあるようなものにゃ。そう簡単には逃げられにゃい」
「猫使いみたいになってる……」
 そしてついに薙は愚神を見つけました。三毛猫、けれど近づいてみればライブスの色は濃く。愚神とわかるものでした。

  *   *

 マタタビの森、うっそうと茂る草木をかき分けて進むと少し開けた場所に出ます。
 そこがいわゆるマタタビの森です。
 ここは猫たちの憩いのスポットなのですが、今は一匹のネコしかいません。
 そう、彼こそシュレディンガーです。
 そんなシュレディンガーの目の前にふらりと躍り出る影がありました。
「アリスと一緒に遊ぼうにゃ?」
 アリスです。アリスはシュレディンガーの行く手を阻むように前へ出ます。
――……はしゃぎ過ぎるなよ、チビ。
「ふふふっ大丈夫、分かってるにゃん、リア」
 そしてアリスは空中にナイフを無数に展開します。
「皆には、当てないように気をつけるにゃん!」
 少しテンション高めのアリスです。そんな彼女の面射撃をかいくぐって脱兎のごとく。
 しかし、逃げることは予想済みです。なのでアリスはカラーボールを投げます。ただそれは回避されてしまうことになるのですが。
 逃げられる、アリスはそう思いました。
 けれど周囲はすでに包囲されています。シュレディンガーの目の前に躍り出たのはタマさん。
 しかも群!
――いけ! タマさん。
 そう若葉が叫び、シュレディンガーは弐本の足で立って猫パンチ。タマさん達と乱闘になります。
 ですが、さすがは愚神と言うべきでしょう。タマさんの包囲も突破して森の中へと逃げようとしますが。
 突如上がるのは猫の声です。
 唸るような威嚇の声が森の端々で上がり、それがシュレディンガーの居場所を伝えます。
――みたか! これがネコアラートシステム。
 そうガッツポーズを見せる若葉です。
 その追いたての声に合わせ敏成が動きます。
「ぐらららら! 俺様がお前の相手をしてやるぜワン!」
 そう放たれたライブスショットが地面をえぐって土煙を舞わせます。
 ヴァイオレットとアリスが常に双方向をふさぎ。逃がすまいと追い立てます。
 エルが二人に指示を出します。島の端に追い込むべく包囲網を形成し。
「猫の見た目はずるにゃ……」
 そう薙は苦虫をかみつぶしたような苦しい表情で愚神を追い詰めていきます。
 愚神は嫌い。でも猫は好き。その思いの葛藤がただただ辛い薙でした。
「あ、僕も口調が変わってるにゃん。にゃんで僕にも?!」
――説明されたにゃ。
 エルがそう悲しそうにつぶやきます。
「聞いてにゃかった……」 
 そう薙は告げつつ狙いは正確に。愚神の行く手を遮るように弓を放ち。そしてさらに追います。 
「そう簡単に逃がさないにゃん!」
 するとラドシアス。なんとタマさんを抱えて投げました。するとタマさんはまるで空を飛ぶように駆けてシュレディンガーに真横から体当たり。
 吹き飛んだタマさんとシュレディンガーは一緒に地面を転がります。
「餅、今にゃん!」
 そうゴロゴロと転がってきたシュレディンガー。その首根っこをつかまえて目の前にぶらさげる望月です。
 残念ながら、猛々しい剣幕で振るわれる猫パンチも望月には届かず、無抵抗のシュレディンガー。
「これ、本当に愚神なんだよね?」
 そう苦笑いを浮かべる望月です。
 確かに体の小ささとすばしっこさはいっちょまえでしたが、あっさり捕まってしまったシュレディンガーになんだか微妙な心境になる望月でした。
「倒しちゃっていいかな?」
 そう告げると望月は空中にシュレディンガーを蒼炎槍「ノルディックオーデン」にてひと付きです。
 ぱんっと霊力となり消えた愚神と、島の平和(主に猫の)を守った英雄たちへ、感謝のネコ大合唱が送られました。

エピローグ
「やっとモフれる!」
 そう愚神を倒した望月は白と黒のネコを両手に抱えて、抱きしめたり耳の裏側をなぞったりします。
 危機は去った、であればもう自由時間。フェリーが到着するのは明日。
 のんびりするのも報酬のうち。
 そう望月さんは猫の島を楽しむことに決めました。
「もう、そんなに構ったら猫がいやが……」
「本当に嫌がってるか聞いてみて」
 そう、猫耳を突き刺されてしまう百薬さん。
「にゃーーーーーー」
 すでにマインドコントロールを受けているみたいです、猫耳はとても怖い代物です。
「ほら、こういう謎アイテムの精度を上げるためのテストは落ち着いた状況でやらないとね」
 そう望月が告げますと、開き直ったように百薬が言います。
「猫だけど気持ちが良くわかるにゃん」
「気持ち? たとえば?」
「戻りガツオが好物にゃん」
「それ、猫の意見じゃないよね?」
 そんなやりたい放題の望月の影で若葉は猫たちに報酬の餌をあたえているのでした。
「協力ありがとにゃー!」
 そうワシャワシャと撫でる若葉たち。おそらくは猫たちも自分たちの危機を救ってくれたのがリンカーたちだとわかるのでしょう。警戒心が壱段階ゆるいような気がします。
「……猫、かわいい」
 そう毛並みのいい三毛猫を膝で抱えているのはアリスさん。
「リア、も撫でる?」
 そうリアンを見つめて問いかけますが。
「………いや、俺はいい」
 そうリアンは首を振りました。
「……かわいい、よ?」
「そう、だな」
 猫は好きですが、好きだからこその距離感もある。そんな大人な振る舞いをみせる、リアンさんなのでした。


結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843

重体一覧

参加者

  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 鏡の司祭
    ノエル メタボリックaa0584hero001
    英雄|52才|女性|バト
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 温もりはそばに
    ラドシアス・ル・アヴィシニアaa0778hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 共に歩みだす
    魂置 薙aa1688
    機械|18才|男性|生命
  • 温もりはそばに
    エル・ル・アヴィシニアaa1688hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 憧れの先輩
    須河 真里亞aa3167
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 月の軌跡を探求せし者
    愛宕 敏成aa3167hero001
    英雄|47才|男性|ブレ
  • 口の悪い英国紳士
    リアン ベルシュタインaa5349
    人間|19才|男性|命中
  • 狂気の国の少女
    アリスaa5349hero001
    英雄|10才|女性|カオ
前に戻る
ページトップへ戻る