本部

服なんか捨ててかかってこい!

睦月江介

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/08/01 20:29

掲示板

オープニング

「愚神の出現報告がありました」
 職員からの報告に、会議室に集まったエージェント達は険しい顔を見せる。が、次に続いた言葉は同意はしてもその意味は計りかねるものだった。
「……それにしても暑いですよね」
 うん、暑い。夏真っ盛りだ。場所によっては扇風機なんて部屋の熱風をかき回すだけというレベルで暑い。
「……海、行きたいですね。あんまり暑いんで海パン一丁で海に飛び込むとかすごい幸せそうですよ」
 まあ、わからないでもない。ここで『海』というキーワードが出た以上海辺に出るのだろうか? なら確かに一仕事終えた後で海に飛び込むのは悪くない。
「……でも、だからと言ってこれはないと思うんですよ」
 渡された資料に目を通す。
「……おい、何の冗談だこれは」
「冗談だったら皆さんをここに呼びません」
 資料を見ると、討伐対象『ヘイズオーガ』はデクリオ級……『陽炎』を意味する『ヘイズ』の名の通り、高熱を発生させる能力を持っており、過去に出現したデクリオ級愚神『バーナー』の亜種とされるが……『一定の範囲内に近づくと服が脱げる』。
 正確には、燃えてしまったりするわけではなく強烈な熱気によって空気が歪むため起こる名前通りの『陽炎』に近い現象なのだが一定以下の温度の物体が透けて半透明のガラスのようになってしまう、と言うのだ。あくまで物体の温度に依存する現象なので、防具の効果なども失われないし温度が上がれば徐々に元に戻るが鎧だろうが服だろうが関係なしに透ける……つまり一時的に全裸(に近い状態に見える)という凄まじい衝撃を受ける能力を備えているのだ。更に言えば低温状態だと武器まで透けてプラスチックの水鉄砲なんかを思わせるスケルトン状態になるため、その辺りでも戸惑うかもしれない。
「どうやら、自分好みの武闘派・肉体派の人間を見つけるために無駄に進歩した能力のようですね……しかも厄介なことにその性質上、ダメージは問題なく通るが遠距離では姿が歪んで命中率が落ちます。さらにこいつも『バーナー』と同じように『フレイムダンサー』2体を取り巻きで連れていてそいつらがかばうので服が透けない遠距離から仕留めるのは不可能ではありませんが非常に時間がかかると思っていいでしょう」
 つまり(実際に脱ぐわけではないが)速やかに倒すなら諦めて脱げ、ということである。
「例によって強そうな、がっしりした奴とのタイマンを好むようなのでその性質を生かせばある程度誘導することは可能です。幸い周囲に人はいないようですが比較的近くに海水浴場があるからうまく引き離していただけると助かります」
 過去に武闘派として現れた敵が帰ってきた、というのは気が引き締まるがパワーアップの方向が大幅に間違っているのだから一周回ってため息が出てくる。しかし、それでも愚神は愚神……危険な存在であることは間違いないため思考を切り替えようとエージェント達は改めて資料に目を通すのだった……。

解説

●目標
 デクリオ級愚神と従魔達の討伐

●登場
デクリオ級愚神『ヘイズオーガ』
 黒光りする鋼の肉体を持つ巨漢。時折肉体から炎を吹き出し、炎を纏った拳を武器とする。過去に現れたデクリオ級愚神『バーナー』の亜種であり、人語を解すが極めて好戦的でほとんど戦うことしか頭に無い為、話し合いはほぼ不可能。
 物理攻撃力が高め。肉弾戦に特化しており、魔法防御は低い。
・ヒートパンチ
 近接(物理)、単体対象。
 命中した対象へ激しい火傷を負わせ、バッドステータス減退(2)を付与。
・ヘイズフィールド
 自分を中心に10m範囲に高熱と炎を発生させている。侵入してもダメージはありませんが、服や武器がガラスのように透けてしまうのでバッドステータス衝撃が高確率で付与。また、フィールド内の対象への遠距離攻撃の命中率が低下します。

ミーレス級従魔『フレイムダンサーズ』×2
 『バーナー』の指揮下にあったものと同じ従魔。リプレイ開始時は『ヘイズオーガ』の後ろで戦場を盛り上げるかのように踊っています。大きさは成人男子程度、炎が人の形を取ったような姿をしている。
 知性はほぼなく『ヘイズオーガ』の指示により主が集団で戦う場合はを守るように、主が1対1で戦う場合は勝負の妨害をさせないように動く。踊るようなステップで攻撃を仕掛けてくるものの、動きそのものは単調。
 物理攻撃力と素早さに優れるが、防御面は脆い。

リプレイ

●筋肉アピールタイム
「……ぬぅ、暑い時期に暑苦しい相手とは……面倒なことじゃのぉ……」
 音無 桜狐(aa3177)の愚痴も実にごもっとも。今回の討伐対象『ヘイズオーガ』は暑苦しい黒光りする鋼の肉体を持ち、同時にタイマンと筋肉を好むという実に暑苦しい敵なのだ。しかし、放っておくと海水浴場が襲撃される可能性があるとなれば、無視するわけにもいかない……そして、いざ戦うとなればエージェント達の行動は早かった。御手洗 光(aa0114)とマリナ・マトリックス(aa0114hero002)は共鳴しALB「セイレーン」を用いて素早く海水浴場へ移動。桜狐もまたやる気がすっかり減退していたが水上 翼(aa3177hero002)に無理矢理共鳴させられ、同様に移動。到着したところで共鳴を解き、避難を促す。
「まずは一般の人を避難させたほうがいいかな ?皆、暑苦しいのが来るから逃げちゃってー♪」
「皆々様、大変危険でございます。どうか冷静に、速やかな行動をお願いしますわ」
『どうか慌てずにお逃げ下さい。皆様は、神が見守っておられます』
 共鳴を解除した光とマリナの水着姿が人目を引くこともあり、身分を明かす必要こそあったが思いの外スムーズに避難は進んだ。そして、彼女らが避難を促していた間残りのメンバーはどうしていたかと言うと……黒光りする巨漢に肉体アピールしていた。真っ先に脱いで上半身の筋肉をアピールしたのは虎噛 千颯(aa0123)。
「ふっ……また一つフルオープンパージ道を極めてしまうな……」
『いいから服を着ろでござる』
 白虎丸(aa0123hero001)のツッコミなどどこ吹く風。マイペースを崩さないままヘイズオーガを誘導するべくその肉体をアピールする。
「んじゃま、少しはちゃんとしますかねー」
『少しではなく常にちゃんとしろ! でござる』
 そして、そのアピールの横で負けじと肉体を披露するのはカイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)。御童 紗希(aa0339)はヘイズオーガを誘導する地点でお留守番である。
『黒光り野郎、貧相な一般人襲ってもつまんねぇだろ? 俺らとガチンコしないか?』
『ほぅ……』
 ヘイズオーガの真紅の目が細められ、対峙するエージェント達を見つめる……そして、喜びを表現するかのように大きく腕を広げる。
『うむ、いずれ劣らぬ素晴らしい筋肉である! 一人ずつこの熱い拳を叩き込んでくれようぞ!!』
 こうして嬉々として海水浴場から離れる形で誘導されていくヘイズオーガ。しかしこの移動の様子もまた、非常に暑苦しい。浅葱 吏子(aa2431)に至っては砂浜で服を脱ぎ、ポージング・モストマスキュラー→バックダブルバイセプス→サイドチェストの順に作り上げられた筋肉を見せつけたりしていた。
モストマスキュラーポーズで胸や肩の強調し。更にバックダブルバイセプスポーズで背中全体を強調。とどめにサイドチェストで胸から二の腕までを強調し、余すところなく筋肉アピールの時間として有効活用していた。
「見よ! 整った僧帽筋!! 引き締まった後背筋!! そして! 大殿筋、上腕二頭筋を!! そう、筋肉とは……魅せるものなのだ」
 確かにその筋肉は美しいのだが……女性らしい羞恥心とかいうものはヘイズオーガの炎の鉄拳を食らうよりも先に灰になったらしい。
『……いや、流石の鬼でもお前のは暑苦しいわ』
 と、酒呑力鬼 雷羅(aa2431hero001)が冷めた反応を見せているあたり今回に関してはどちらかといえば英雄の方が常識人かもしれない。そういう意味では引き離した先で待っていた紗希のリアクションももっともである。
「うわ! ホントにすごいの来た!」
 と驚愕の表情を浮かべていたのだ。討伐対象のヘイズオーガが実に楽しそうに誘導についてきていて、更にそれに付きそう踊り狂う人型の炎、フレイムダンサーズ。加えてエージェントもある程度ノリノリという辺り『すごいの』としか表現できないのも納得だ……戦いの幕が開く前に、常識は筋肉の前に死んだ。合掌。

●さあ、脱衣の時間(ショータイム)だ
 無事、被害の及ばない場所までヘイズオーガ及びフレイムダンサーズを引き離したところに光と桜狐が合流し黒光りする巨躯へと向かっていく。ヘイズオーガが喜び勇んで戦おうとしていた囮4人は、分散してフレイムダンサーズに武器を向けていた。
『ぬうう……どういうつもりだ! 誘っておいて無視とは良い度胸である! 俺は小娘に用はない!!』
 と激昂するヘイズオーガの周囲に炎が迸り、熱気で空気が歪んでいく。そして、その熱気が及ぶ範囲にいる者達の武器や衣類が、徐々にガラスのように半透明に透け始める……真っ先にその服が透け始めて裸体を晒したのは光だが、それに全くたじろぐ様子もない。それどころか自信に満ちた顔でヘイズオーガに告げる。
「わたくしとて武人。見かけだけで判断されるのは、些か心外ですわ……これでも相応に自信がございます」
 口には出さないが爆乳巨尻的意味でも。衣類が透けたことで動揺しているのは、むしろマリナ。彼女は事前に聞いていたヘイズオーガの能力の意味をよく理解しておらず、完全に光に巻き込まれた形だったのだ。
『あ、あの光様。もう少し、その、慎みを……』
 真っ赤になって進言するマリナに、光は諭すように語った。実にいい笑顔で。
「相手の能力なんだから仕方がありませんわ。それに、拳で語り合うのに、衣類は不要。成る程、理に適った素晴らしい発想ですわ。御手洗流柔術、免許皆伝としては是非ともお相手して頂きませんと……これも人々を守るため。何を恥じる必要がございましょうや」
 何かが果てしなく間違っている気がするのだがマリナは事もあろうにその言葉を盛大に勘違いして受け取ってしまった。
『人々を守る為に、自信の恥を鑑みない行動……素晴らしいです!』
 むしろ光本人が見せたがっているようにしか思えないのにこれだから、天然と言うのは怖い。ともあれ、相手の言に一理ある、と判断したのかその鋼の肉体をパンプアップさせ構えるヘイズオーガ。それを見て仲間達は協力し砂浜に各武器を突き立てるだけの簡易リングを作り上げる。電柱を突き刺した吏子に至ってはゴングまで持参していたというのだからここまで来るとその準備の良さに拍手を送りたくなってくる。フレイムダンサーズも知能はほぼないはずなのにそれを賞賛するようにアグレッシブに踊りまくる。
『おお! 思ったよりも話の分かる者達であるな! これはその礼儀に答えねば失礼というもの! お望み通りまずは目の前の者達から相手をしてくれよう! ダンサーズよ! 残りの者に邪魔をさせてはならんぞ!!』
 ヘイズオーガも愚神にしては話が分かるらしい。そのノリの良さにぱあっと明るい表情を見せたのは翼。
『面白そうな相手だー♪』
 しかし、彼女もまたヘイズオーガの陽炎のフィールド内にいるのだから服が透けている。それを紗希が教えてあげるが、帰ってきたのは思いの外淡白な反応だった。
『見られて減るものじゃないし?』
 暑苦しさでテンションダダ下がりの相方、桜狐もまたどうでもいいといったふうな返し方である。
「……まあ、身体は翼の方じゃしのぉ……わしが見られているわけじゃないのじゃ……」
 共鳴しているのだから似たようなものだと思うのだが、本人たちが気にしないならいいのではないだろうか。羞恥心……? ああ、良い奴だったよ。

●熱く戦え、エージェント(全裸で)
 元々ダンサーズはヘイズオーガの指揮によりその戦いを邪魔させないように動くが、それは『ヘイズオーガから離れる』事は意味しない……つまりどういうことかと言うと、ダンサーズもまた、ヘイズオーガの装備が透けるフィールド内にいてダンサーズを倒すにも服は透ける、という事である。共鳴しうまくマリの全意識は掌握したカイは、透け始めた服に歓喜した。
『キタ――(゚∀゚)――!! よっしゃあ! 計画通りだ! 共鳴でマリの全意識は掌握済み! 絶対バレねえ! 俺はこの時を待っていた……! 合法的に(?)マリの裸が見れ……』
 そこで、カイは凍り付く。ガラスのようになった服越しに見たパートナー、紗希の裸(※大事な部分はしっかり謎の光や吹きあがる炎が隠していますのでご安心ください)は、ある意味で彼の想像を超えていたのだ。
『思ってた以上にちっせえええ!!!』
 服が透けるのとは違う意味で衝撃を受けるカイ。
『あいつ相当パットで盛ってやがる……いやしかし寧ろ俺はこれくらい小さい方が萌える! 念願のマリの裸を見ることに成功した今の俺を止める事はもうできねぇ! かかってこい! ダンサー!』
 そんなノリでいいのかと思わないでもないが、ここまで来たらもはや今更である。その啖呵に反応するように躍りかかる炎のダンサーが振り上げた足は、届くことなく受け止められた。吏子が間に立ち、代わりに攻撃を受けたのだ。個別に見れば、ヘイズオーガとフレイムダンサーズはそれぞれに2人ずつで対処している。ツーマンセルであれば、片方が防御を担当し、片方が攻撃を担うというのも簡単な話だ。電柱のリーチを生かし中距離で戦いつつ盾となる吏子の攻撃もまた、防御面はあまり強くないフレイムダンサーには手痛いものであり、おまけに先の衝撃からテンションMAXのカイの猛攻もあっては長くもたないのは自明の理……時間稼ぎと言う仕事こそ全うしたが2人には特に大きなダメージを残せず消滅した。が、そのタイミングで翼の動揺する声が響いた。
『うわっちゃちゃちゃ!!』
 どうやらヘイズオーガの炎の鉄拳をまともに受けてしまったのか半透明の服が燃え上がり、砂浜を転がって消火していた。気が付けば時間も約3分……頃合いと判断しゴングを鳴らし、彼女と入れ替わるように立ち塞がる。
「やっぱりむりだったじゃねーか……安心しな。オレに任せとけぇ!!」
『ヘイズ……オーガ、か……鬼だと言うのならあたしもまた鬼……同じ鬼ならシンプルに、どっちがつえぇか決めようじゃねーか。なぁ』
「それはお前のつごーだろ……オレにしてみればひっさびさにやり応えのありそーな敵でワクワクしてんだよあー、さあタイマンはらせてもらおうぜ!!」
(……あたしと同じようなことをほざいているぞ)
 雷羅は吏子がそれに対して無自覚であることに若干呆れを覚えつつも、そんな考えはすぐに振り払った。今は仲間の危機であり、それをフォローすべく敵の前に立ちふさがっているのだ……細かい話はこの際どうでもいいというものだ。それに、見ればもう1体のフレイムダンサーズも消滅するところだった。ここからは邪魔者のいない戦いの時間だ……。

●もっと熱く戦え、エージェント(全裸で)
 カイと吏子がダンサーズと戦っている間、もう1体のダンサーズは千颯と白虎丸、御神 恭也(aa0127)と伊邪那美(aa0127hero001)のタッグで対処していたのだが、恭也はこの組み合わせにある種の安心感を抱いていた。
「いつも違って千颯が脱いでいると安心するな……本当に目のやり場に困る」
 本人達はあまり気にしている様子もないが、女性陣の服が思いっきり半透明なのでその反応ももっともである。
『恭也が千颯ちゃんに熱い視線を……もしかして!?』
「若しかしても何もある訳無いだろうが! この状況で他の何処に視線を向けろと言うんだ!」
『うわ~ん、千颯ちゃんの趣味が恭也にうつった~』
「そんなわけがあるか! それにしても、この人員配分をしてくれたアルブレヒツベルガーには感謝だな……」
『そんな事を言って~、本当はあられもない姿を見たいんじゃ無いの~?』
「一時の欲望で、皆の冷たい視線を貰うのは御免だ」
 伊邪那美のからかうような態度はひたすらスルーする恭也。気にすればその分胃痛と頭痛のタネが増えるだけだ。
「恭也ちゃんが一緒なら心強いんだぜ! さくっと倒しちゃおうな!」
 と爽やかな表情で告げる千颯は……気が付けばいつの間にか衣類を完全開放していた。確かにこれならばそもそも既に衣類を纏っていない為今更全裸とか言われても微動だにしないし、彼は初心でもないので異性の裸に対しても微動だにしない。更に言えば妻LOVEな為異性の裸を見ても何も思わないし興味も無い……が、透けるなら脱げばいい、と言うのは極端にもほどがあるのではなかろうか? 服が透けるのはスルー出来たが流石に武器が透けるのは実際驚いてしまい衝撃を受けたが、それも一時のこと。恭也と千颯は反撃の隙を与えない連携を見せてダンサーズを圧倒する。吏子達が対処していた方のダンサーズ同様、残念ながらそれほどのダメージは残せなかったものの邪魔をさせないという仕事は全うする程度には時間を稼いだことはミーレス級にしては見事だったというべきかもしれない。

●変態だからと言って弱いとは限らない
「0距離で撃てば殴っているように見えるかな? かな?」
 と、翼は魔法職でありながら相手に合わせて近接戦を行い、パンチと同時にブルームフレアを打ち込む。ヘイズオーガの見ているだけで暑苦しいムッキムキの黒光りする肉体は、物理攻撃には見た目通りの圧倒的な耐久力を誇るが魔法への耐性は実は見た目ほど高くないためその一撃でぐらりとよろめくが、直後にヘイズオーガが浮かべたのは凶暴な笑み。その拳に紅蓮の炎が灯り、図体からは想像もできないスピードで振り上げられる。
『ハッハー! 見た目とは裏腹に、熱くて良い一撃である! 返礼だ、この熱い拳を受けるが良い!!』
 魔法職の能力で見た目そのまんまのガッチガチの肉体派愚神のスピードには対処しきれず、燃える拳を受けて吹き飛ぶ翼。更に半透明の服に火が付き、慌てて砂浜を転げまわる。
『うわっちゃちゃちゃ!!』
『まだまだ! 熱いのはこれからである!』
 と追撃を仕掛けようとするヘイズオーガの前に、颯爽と割り込む光。
「御免遊ばせ。わたくしとも一手、お付き合い下さいな?」
 その言葉に返ってきたのは、大振りの燃える鉄拳。その一撃を、相手の剛力を利用する形でいなして投げ飛ばして見せるもヘイズオーガはさしたるダメージではないとでもいうように首を回して起き上がってくる。だが、直後に鳴ったゴングの音には何故か慌てて見せた。
『おっと……2.9カウント……危ないところだったのである』
 この妙なノリの良さは、愚神でなければわかりあえたかもしれない。その隙に、ダンサーズを片付けた面々が順次合流する。砂浜を転げまわる翼に千颯がケアレイをかける間に、吏子が前に出る。紗希にゴングを渡してぐっと四股を踏み……
「はっけよーい……残った!!!」
 相撲で挑む。それにもまた嬉々として応じるヘイズオーガ。吏子は203センチと相当な大柄なのだが、それでも頭1つ以上低く見えるのでヘイズオーガは2.5メートルほどか。ここまで規格外のサイズの相撲はそうそう見られるものではないが、余裕の笑みを見せつつもやはりダメージが多少響いているのか両者の力は拮抗し投げるには至らないまま時間が過ぎていく。
『ヌゥオオオオオ!!』
「うおっ!? ちっ……」
 気合の入った咆哮と共にヘイズオーガの力が増し、均衡が崩れるかと言うところで、身をかわし倒されることを防ぐ吏子。そのタイミングでゴングが鳴り、今度は入れ替わりにギガントアームを装備した紗希が飛び込み、小細工なしの殴り合い……ガチンコの勝負を繰り広げる。数の違いに加えて、個々の力量もあるが喜び勇んで叩き続けた消耗が響いたのか、ヘイズオーガのガードが一瞬甘くなり、その隙にラッシュ+疾風怒濤を叩き込む紗希。そしてそれをフルオープンパージしてチアリーディングよろしく応援する千颯。
「f・i・g・h・t……fight!」
 だが、その声援に返ってきたのはカイの罵倒だった。
『おい千颯! チラチラ映りこんでくるんだよ! アレが!』
 演出的には謎の光さんが隠してくれているが当事者の視界についてはどうしようもない。罵倒されて当然である。それに対して、白虎丸が神妙な面持ちで詫びる。
『まっこと、申し訳ない……後で説教でござる!』
「あー、何ていうか、ごめんね? それと、紗希ちゃん鼻血」
『へ? あ、いけねえ』
 指摘されて慌ててティッシュを鼻に詰めるが、そんな漫才をしていてもヘイズオーガはツッコミを入れるでも、隙を見て反撃してくるでもない辺り相当こたえていたようだ。ここまで来たら、無理にタイマンに付き合う必要はない……そう判断し、エージェント達は戦術を集中攻撃へと切り替える。回復した翼の攻撃に合わせて側面に回って仕掛ける恭也の動きからあることに気付いた伊邪那美は、それを指摘する。
『ねえ、さっきから他の人の裸を見ない様にしてるけど自分の姿は隠さなくって良いの?』
「見られて特に困る事が無いのが一つ、もう一つはさっきから平然としてる女傑ばかりだ此方の裸なぞ歯牙にもかけないだろ」
『……皆に聞こえてないと良いね。聞かれたら絶対に怒られるから』
「こっちは思春期真っ只中の男子高生だぞ。戦闘だけに集中して他には目も向けないなんて真似が出来るか」
『……それって、実際は戦闘中に視線を向けたって事だよね?』
「違う、視線を向けたんじゃ無い。視界に入って来たんだ……本当に肩身が狭いな……」
『恭也はやっぱりむっつりだったんだ』
 みんな服がガラス状態なのである程度は仕方ない、だからむっつりじゃないはずだ……多分。そんなやり取りの間にも動きの鈍ったヘイズオーガには雨あられと攻撃が降り注ぎ、デクリオ級の中でも相当耐久力に優れた部類に属するであろうその巨体も、ついに膝を折り消滅していく……その瞬間まで笑みを見せ続けていたバトルジャンキーぶりは、変態ではあっても弱いとは限らない……むしろ相当な強敵であることを物語っていたのだった。

●汗を流そう
 何とも変態チックな強敵を下したエージェント達。一仕事終えた彼らに待っているご褒美は……ズバリ海水浴である。愚神などと言う邪魔がなければ、爽やかな日差しと心地良い冷たさの海は人を開放的にさせる。
「実に心地良い時間ですわね……」
『ええ、本当に……こうして波に揺られることの、なんと心地良い事でしょう』
 と海水浴を堪能する光とマリナは服が透ける愚神を倒したというのに裸同然。流石に開放的にもほどがあるのではないだろうか。謎の光さんはまだまだ大忙しである……彼女達がふと視線をやった先には、同じく汗を流そうと海で泳ぐ吏子と雷羅。大柄な彼女達の泳ぎは実にダイナミックで、その姿がどんどん遠ざかっていく。それを見て触発されるように桜狐を引っ張る翼は、既にスポーティーなツーピースの水着に着替えている。
『海に来たのに海で遊ばないのは損だよ?』
「……ぬぅ、わしは暑いから引きこもりたいのじゃが……」
 褌とサラシしか持ってなかったという桜狐もまた、ある意味その姿は人目を惹きそうではある……が本当にただ暑いだけのようで羞恥心とか感じられない怠惰な様子を見せていた。
『さあ、沖にある島まで競争だー♪ ほら、浅葱さん達も泳いでいってるよ!』
「……そんな遠泳は遠慮するのじゃ……」
 実際、見るからに体力底なしの2人と比べられても困る。結局、桜狐は波打ち際でばしゃばしゃと水遊びを楽しむにとどめていた……そしてそんな実に眼福な(?)光景に加えてある種の念願が叶ったカイは鼻に詰まったティッシュが赤く染まるのも気にせず呟く。
『この思い出は俺の心の箪笥の引き出しに……時々引き出しを開けて見る……』
「?」
 紗希は戦闘中意識を掌握されていたためその時起こったことを知るべくもなく、首をかしげる。
『こっちの話だ』
 そう……色々な意味で、この思い出はそっとしまっておいた方が良いだろう。故に、気にするなと告げてカイはマリも海水浴を楽しんで来い、と何事もなかったかのように紗希を送り出すのだった……。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339

重体一覧

参加者

  • エロ魔神
    御手洗 光aa0114
    機械|20才|女性|防御
  • 天然エルフ
    マリナ・マトリックスaa0114hero002
    英雄|22才|女性|ソフィ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 我が肉体は鋼の如し
    浅葱 吏子aa2431
    人間|21才|女性|生命
  • 其の手には無限の盃を
    酒呑力鬼 雷羅aa2431hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • アステレオンレスキュー
    音無 桜狐aa3177
    獣人|14才|女性|回避
  • シショク・コンプリート
    水上 翼aa3177hero002
    英雄|14才|女性|ソフィ
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