本部

【屍国】連動シナリオ

【屍国】屍の国を望む者

雪虫

形態
イベント
難易度
難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
25人 / 0~25人
報酬
普通
相談期間
6日
完成日
2017/08/03 01:47

掲示板

オープニング


 自衛隊の包囲網を神門が直接襲撃し、かつ襲撃場所外に神門の痕跡がなかった事から、神門は善通寺市周辺に潜伏している線がほぼ確実となった。プリセンサー十数人が同時にライヴスの感知を行い、結果、善通寺市のとあるビルの屋上に現れる、との予知が得られた。
「前回の神門との交戦で、治療薬で神門の力……ウィルス型従魔の力を抑制出来る事が分かった。しかし一方で神門が治療薬を取り込む事で耐性を作る、との推測も出されている。
 つまり治療薬は諸刃の剣という事だ。協議した結果、君達に持たせられるのは5本程度が限界との結論が出た。神門に耐性を獲得され、感染を止める手段がなくなるのは最悪の事態。とは言え最終判断は君達に委ねるが……くれぐれも気を引き締めて臨んでくれ」
 オペレーターは治療薬の入ったケースをエージェント達に手渡した。治療薬【Re-Birth】。これが四国を照らす希望となるか。
 あるいは。


 敵はこちらの動向を把握しているかもしれない、との報告により、予知時間ギリギリ……夜明けの約30分前にビルへ赴く事となった。何故神門がビルの屋上に現れるのか、その理由を予知する事は出来なかったが、ビルの屋上であれば逃亡するのも容易くはない。待ち伏せを勘付かれて逃げられるより、時間ギリギリに現れビルの屋上に追い詰める方が確実、との判断だった。
 敵の妨害の可能性も考え、3台の車に分かれて現場へ赴く事になった。しかし合流場所に辿り着いたのは3台中2台のみ。
 何かトラブルがあったのかもしれない……しかし、後戻りしている時間はない。エージェント達は今いる人員だけでビルを登る事にした。


 屋上に辿り着いたと同時に、何故神門がこのビルを選んだのかの理由が分かった。ビルにはヘリポートが設置されており、今まさに三台のヘリコプターがビルの周りを飛んでいる。そして中央に立つ一人の男が、屍の群れに囲まれながら高らかに声を上げていた。
「朱天王……よくやった。これで忌々しきこの地をようやく脱する事が出来る! 待っていろ空海、今貴様の抜け殻を詣でに行ってやるからなぁ!」
 男はしばらく笑い声を響かせていたが、ようやく来客達に気付いたらしく緩慢に首を巡らせた。神門。千二百年前に封じられた、死病を振り撒く疫神が、心の底から厭わしそうにエージェント達を睨み付ける。
「やはり来たか……妨害の可能性を考え、この場を選んだ夜愛の知啓は流石だな。ここなら百も二百も数を揃えて押し寄せる事は出来ないからな」
 どうやら敵はエージェント達が来る事を視野に入れ、それも踏まえてこの場所を選んでいたようである。確かにこの狭さでは、数に任せて神門を攻める、という戦法を取る事は出来ない。
 また、ビルの上では神門に逃げ場はないと思っていたが、神門はむしろ四国そのものから脱出するためにこのビルを選んでいたようだ。そして先程の口ぶりから、神門が四国を脱出する条件は既に満たされている……
 神門が錫杖をシャンと鳴らすと、ゾンビ達が一斉に手にした銃を向けてきた。屍兵の盾に囲まれながら地を這う声で愚神が呟く。
「俺はようやくあの男とまみえるのだ。邪魔をするな小蝿共」


●敵NPC情報
 神門
 ステータスは特設ページ参照。全力でPCを排除しようとする一方、隙をついて四国を脱出しようと試みる

【パッシブ】
・リジェネーター
 クリンナップフェーズに生命力一定回復

・ネクロマンシー
 ゾンビへの絶対的命令権

・小さき下僕達よ
 自身を中心とする半径15sqに常時ウィルス型従魔が発生するドロップゾーンを展開。ゾーン内に入った(植物や微生物を除く)生命体はこの従魔に“感染”、即座にゾンビ化。一度ゾンビ化から回復した死体でも、灰と化した死体でも、ドロップゾーン内に入ると再びゾンビ化
 能力者ならばゾンビ化はしないものの装備力・生命力・リンクレートを除く全ステータスが劣化/肌が青白くなってくる。ゾーン外に出れば肌の青白さは軽減していく
 肌の青白さが進行した段階で、条件により洗脳に似た状態異常をPCに付与

【アクティブ】
・堕霊閃
 小さき下僕併用。大量のウィルス型従魔を武器に纏わせ攻撃。物理
 命中時、3Rの間装備力・生命力・リンクレートを除く全ステータスが劣化。劣化度は「小さき下僕達よ」より上

・千年の怨念
 その身に受けた夥しい数の怨念を解放し周囲一帯を襲わせる。魔法。怒り、悲しみ、憎悪など負の感情を持つ者程影響を受けやすい
 命中時【封印】【減退(2)】、【劣化(リンクレート)】を強制付与

【リアクション】
・吸霊陣
 小さき下僕併用。超圧縮したウィルス型従魔の壁で攻撃を防ぎ、同時に攻撃ライヴスを一部吸収、回復に転用。受け防御成功時に生命力一定回復

【PL情報】
・肌の青白さが進行した段階で、身体or心理的にクリティカルを喰らわせた場合BS【侵蝕】付与
・【侵蝕】されたPCは体内にいるウィルス型従魔により神門に一時的に操られる
・【侵蝕】は【Re-Birth】の使用時/一点以上のダメージを受けた時/クリンナップフェーズ時に回復
・クリアレイは【侵蝕】の回復とウィルス型従魔の除去は出来ないが、それ以外のBSならば回復出来る
・【侵蝕】は体内のウィルス型従魔によるものなので、体内のウィルス型従魔が排除されれば起こらないが、体内にウィルス型従魔がいる(肌が青白い)限りは何度でも起こり得る
・【Re-Birth】を神門の体内に3回注入するか浴びせるかすると神門が耐性を獲得し始め、戦闘における【Re-Birth】の効果はなくなる(【侵蝕】の予防・回復も不可能)
・PCが治療薬を使う/ゾーン内に入っても肌が青白くならないのを目の当たりにした段階で「PCは治療薬を持っている」と神門は判断する


 自衛隊ゾンビ×11
 噛み付く、しがみつく、小銃(射程20sq)乱射、神門の盾になる、PCを突き飛ばそうとするなどの行動を取る
 倒されてもゾーンに入れば復活


 阿修羅×2
 自衛隊ゾンビを3体繋げて作られた改造ゾンビ。計6本の腕に一本ずつ刀を持ち、三方向直線に同時に衝撃波(射程25sq。当たると1~3sq後退)を放つ。近距離攻撃も可能。切り払いによる回避が高く、6つの目を駆使した索敵能力に優れている
 倒すと1体ずつの死体に戻る/復活すると自衛隊ゾンビ(刀持ち)になる
 
 
 ゾンビヘリ×3
 屋上から5~20sq上空を飛び回り、外壁に取り付けられた機関銃(射程30sq)を乱射。ヘリを操縦しているのは自衛隊ゾンビ
 ヘリの外側にはそれぞれゾンビ×10が張り付いており、攻撃すると落下/ビルに落下した場合自衛隊ゾンビと同じような行動を取る
 ヘリの機体そのものは破壊されると修復不可

解説

●目標 
 神門撃破

●マップ情報:地方ビル屋上
・60sq×60sq
・PCが屋上から落ちた場合、屋上に戻るまでに4ターンかかる
・ゾンビが屋上から落ちた場合、そのまま地面に残る(屋上に復帰しない)
・神門が屋上から落ちた場合、ゾンビヘリが残っていればヘリが神門を拾い神門は四国を脱出/残っていなければ神門は四国の何処かに逃亡

●【Re-Birth】について(PC情報)
 ウィルス型従魔を殺す作用を持つ。AGW。戦闘における効果は以下
・神門に直接浴びせた場合:1ターンの間リジェネーター使用不可
・神門の体内に注入した場合:1ターンの間全スキルを使用不可/ゾーン1ターン消失
・PCの体内に注入した場合:3ターンウィルス型従魔によるBS(【侵蝕】含む)を防ぐ/体内に既にウィルス型従魔がいる場合はウィルス型従魔を除去しBS(【侵蝕】含む)を全回復

●他シナリオとの関連
・他の最終決戦シナリオの結果が全て「普通」以上の場合、6ターン目からウィルス型従魔の力が弱まる(神門の全スキルが弱体化)

●その他
・使用可能物品は装備・携帯品のみ
・治療薬を誰が何本持つか自由に割り振ってよい
・職員に交渉すれば最大8本まで持てる/持っていく治療薬の本数を減らすという選択も可
・自衛隊ゾンビは「【屍国】針で縄目をつつく者」で神門がゾンビに変えた自衛隊員20体
・神門が死ぬと他のゾンビは倒れ、元の死体に戻る

●注意事項
・PL情報は「PCは知らない情報」/活用するためにはPC情報への落とし込みが必要です
・能力者と英雄の台詞は「」『』などで区別して頂けるとありがたいです
・英雄が二人いる場合は英雄の変更忘れ/装備・スキルの付け忘れがないかご注意下さい
・装備されていないアイテム・スキルはリプレイに反映する事が出来ません
・プレイングの出し忘れにご注意下さい

リプレイ

 憎い。憎い。ただ憎い。
 俺を封じたあの男も、生にしがみつく人間も。 



 神門の地を這う声と共に、銃弾の雨が一斉にリンカー達へとばら撒かれた。リンカー達はそれぞれに銃弾を躱し、あるいは防ぎ、その中で一人の女侍が刀を握り先陣を切る。
「……ふっ、面白い…よもやこんな辺鄙な地に足を運んだら……こんな面白いことに出合えるとはな……」
『何を喜んでいるのだ主よ! 油断為されるな』
「涅槃や六道に興味はない……ただ、最後まで動いていたものだけが……生きている者だ!!」
 犬飼 健(aa5245hero001)に凛と返し、吉備津彦 桃十郎(aa5245)は薄氷之太刀「雪華」真打を閃かせた。透き通った刃を受けゾンビの腕が銃ごと落下し、さらにカイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)が屠剣「神斬」の斬撃を、御神 恭也(aa0127)がアンチマテリアルライフルの弾丸を、それぞれ亡者の壁に撃ち込み突破口を切り拓く。
 穿たれた穴を抜けようとリンカー達が駆け出すが、その行く手を遮らんと6本腕の改造ゾンビが――阿修羅と形作られた骸が一斉に刀を振り上げた。
 だが、連携を取るのは亡者共だけではない。
『……させない』
 オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は小さく呟き、血の通わぬ死者の腕にLSR-M110の銃口を向けた。もう一方の阿修羅には、佐倉 樹(aa0340)が童話「ワンダーランド」の頁をめくりトランプ兵を差し向ける。ガラ空きになった胴に攻撃を喰らい阿修羅の身体がわずかに揺らぐ。そこに紫 征四郎(aa0076)が九陽神弓で追い打ちをかけ、邦衛 八宏(aa0046)が縫止の針で敵のライヴスを掻き乱した。
「ここで止めよう、真昼……」
『ええ、止めましょう、つきさま』
 木陰 黎夜(aa0061)は真昼・O・ノッテ(aa0061hero002)と言葉を重ね、オートマチック「グラセウールIS000」を周囲に多数召喚した。イメージプロジェクターで作ったローブの下から亡者を見据え、端的に、小さく、音を紡ぐ。
「道を開けて……」
 瞬間、数多の弾丸が嵐となって一直線に駆け抜けた。銃弾の嵐はゾンビを、阿修羅を、神門の身さえも叩き撃つ。
 その中に、阿修羅と繋がれた骸の中に見知った顔を一つ見つけ、築城水夏(aa5066)は悲鳴を上げた。
「う、うああああ! そんなぁ!!」
 皮膚は腐り爛れているが、その顔貌は確かに見覚えのある先輩の顔。小銃の撃ち方を教えて貰った事もある。
 生憎今日はその銃を持ってきてはいないのだが……水夏は歯を食い縛ると、竹田伸晃(aa5066hero001)メインで共鳴し直し愛刀の先を阿修羅に向けた。

 銃弾から顔を上げ神門は秀麗な眉を顰めた。群り集る小蝿共が、よくもまあ次々と……。
 振り払うべく神門が錫杖を掲げる、その直前に武芸者がアスファルトを強く蹴り込んだ。ブレイジングランスを引きながら虎噛 千颯(aa0123)は口角を上げる。
「んじゃま、この間のお礼参りと行きますか!」
『お遍路と掛けているでござるか?』
「んなわけないだろ!」
 白虎丸(aa0123hero001)の天然ボケに千颯はすかさずツッコミを返すが、金色に変じた瞳は鋭く愚神の身を射抜く。呼応するように赤い穂先が炎熱の温度を上げる。
「お前を逃がしはしない! 此処が終着点だ!」
 そして繰り出された攻撃を、神門は靄を壁と作り灼熱ごと阻んだが、間髪入れずアリス(aa1651)が極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』の業火を放った。アルス・ペンタクルに威力を増した炎は愚神の腹を焼き焦がし、さらに八朔 カゲリ(aa0098)の魔導銃50AEが脚を撃つ。
「怨み辛みでここまでの事態起こしやがって」
『それだけ、空海の事が許せんのじゃろうな。じゃから、ああやってぐずっておるのじゃよ。あやつは』
「……ガキかよ」
 イン・シェン(aa0208hero001)の言葉に苦く小さく声を吐き、リィェン・ユー(aa0208)は改造した神斬、【極】を大きく振り被った。神経接合マスク『EL』の下から狙いを定め地へと刃を叩き落とす。生み出された衝撃波は愚神の身にぶち当たり、腕から血とも腐液ともつかぬドロリとしたものを流させる。
 リンカー達はさらに愚神へ肉薄しようと試みたが、周囲を飛び回る異形のヘリが機関銃の狙いを定めた。第一射が雨と放たれリンカー達に傷を負わせ、カイが上空に視線を向ける。
「上からも弾が降ってくんのか!?」
 そして二射目が放たれる……寸前、外壁の銃身に麻生 遊夜(aa0452)が「ヘパイストス」の照準を合わせた。飢狼の咆哮は砲弾となって機関銃を喰い破り、ガトリング砲を担いだまま遊夜は軽く肩を竦める。
「やれやれ、やはりそう簡単にはやらせてくれんか……」
『……ん、脱出なんて……させない』
 フンス、とユフォアリーヤ(aa0452hero001)は鼻を鳴らし、遊夜は紅く残光を描く義眼に敵の姿を映し出す。

「おこっているね?」
 傍らのシキ(aa0890hero001)の問い掛けに十影夕(aa0890)の目元は僅かに歪んだ。表情は乏しく、口調も淡々としているが、その言葉には明らかな強い怒りが込められている。
 殺した人や遺族を、さらに痛めつけるような行いに。
「絶対、生かして帰したくないなーって思ってるだけ」
「そうかい。それならそうしよう」
 とくに感慨もない様子でシキはあっさりと頷いた。怒りを恐れるのは夕らしいね、小さくその言葉も添えて。共鳴し、意識と感覚の境界さえ失くして「彼ら」は柔く瞳を細める。
「ゾンビは初めてだな。どんなふうに歌ってくれる?」
 RPG-49VL「ヴァンピール」の銃口を頭上のゾンビヘリに向け、夕は引き金を素早く引いた。三発のロケット擲弾は接着と同時に更なる衝撃を呼び起こし、一撃でそのヘリに張り付いていた全てのゾンビを落下させた。

 轟音に神門の意識が逸れる、その隙に零月 蕾菜(aa0058)が錫杖「金剛夜叉明王」の幻影を放った。寸前で神門が従魔の圧縮壁を作り、幻影と靄は衝突し、喰らい合って霧散する。
「聖霊紫帝闘士ウラワンダー・マジカルナースモード! これでウィルス型従魔対策はバッチリよ!」
 大宮 朝霞(aa0476)は白いマントを翻し、同色のマスクで口を覆い可憐にビシッとポーズを決めた。相棒の歪みない姿勢にニクノイーサ(aa0476hero001)が息を吐く。
『風邪用のマスクをしただけだろう? マスクってのは他人にうつさない事が主目的なんじゃないのか?』
「要は、気の持ちようよ!」
 ある意味力技な相棒にニクノイーサは首を振ったが、共鳴中につき姿は見えず。朝霞は改造したレインメイカー……ハートマークのオブジェを掲げる杖(2m)をビシッと掲げ、白く清らかな光の輪を周囲へと展開した。神門のドロップゾーンは悪寒と重苦しさを侵入者へともたらすが、朝霞のクリーンエリアが影響を和らげる。
「本当にやるッスか」
『くどい。何度も言わせるな』
 君島 耿太郎(aa4682)の確認にアークトゥルス(aa4682hero001)はすげなく答え、ゾーンに突入する前に自身に治療薬を打ち込んだ。その肌は既に青白く、治療薬を打っても変化する事はない。



 先日の戦闘により判明した神門の情報。報告書に記載されたそれを全員で共有した後、このような考察と提案が上げられた。
 肌の色によって洗脳状態の危険性を測れるかもしれない。そしてそれは神門にしても同じ事。
 故に神門に相対するリンカーは、露出の少ない服や化粧で肌の色が分からないよう工夫してはどうだろうか。
 リィェンが『EL』で全身を覆い、アークトゥルスと同じく突入前に治療薬を投与、効果を隠しているのもその一環。アークトゥルスは肌に青白い化粧を施した上で一本を投与、一本を持つ事に決めた。二人の他に八宏に蕾菜、カゲリに千颯と希望者が多かったため、アークトゥルスが担当する事になったのは二本だが、その内の一本は捕まった際の緊急用に袖の内に隠している。
 その状態で神門に接近する危険性に、耿太郎が真意を問うた。
「本気っすか? 相手に知られたら完全に狙われるっすよ」
『回復役は必要だ。前回思ったがあのゾーン内で動けなくなればその時点で致命だ。それを見過ごすのは我らの誓いに反する』
 誓いは「弱きを守ること」。故にゾーン内で動けなくなった味方を見捨てない。見捨てる訳にはいかないのだ。
『聖女よ……我らの戦いに加護を』
 アークトゥルスはゾーンに踏み込み、リンクバリアを展開と共に聖旗「ジャンヌ」を振りかざした。防御を高めるバリアと救国の聖旗の護りを受け、千颯は果敢に神門に攻め込む。赤熱する穂先に合わせリィェンも斬撃を撃ち飛ばし、熱風と烈風が同時に神門に傷を負わせる。
『敵は四国の亡霊、何度か戦いましたがそれでもなお、あの時の愚神の足元にも及ぶ様子はないですね』
「先代にはいつか追いついてみせます、きっと」
『いい返事。そのためにはまず守り切りますよ。大丈夫、いつかの山羊頭に比べればかなりやりやすい相手です』
 十三月 風架(aa0058hero001)の声に蕾菜は錫杖を握り締め、神門との距離を詰めつつ水晶の幻影を射ち放った。五色の光に紛れるように朝霞がレインメイカーを振り落としたが、これを神門は錫杖で払い、そのまま朝霞に切っ先を向ける。
『神門の攻撃は強力かつ正確だ。避け切る事は朝霞には無理だし、直撃をもらえば耐えきれないだろう』
「……どうしよ」
『なるべく直撃を避け、ヒットの瞬間身体を捻って衝撃を受け流せ』
「何それ難しいよ」
 ニクノイーサの指示に当惑を返しつつ、朝霞はとにかくレインメイカーを横に構えてガードを固めた。錫杖の殴打を杖で受け止め、同時に身体を捻って緩和しようと試みる。
「うっ」
 なんとか直撃は避けたものの、やはり衝撃が激しく足元が僅かにふらつく。だが。少女はバイザーの下から強い瞳で愚神を見据え、気丈な笑みさえ浮かべて見せる。
「虎噛さんも白虎丸さんも一緒だもん! 今度こそ神門をボコボコにしてやるんだから!」

 八宏はノーブルレイに換装すると、銀色に輝くワイヤーを阿修羅の脚部へ走らせた。三体もの上半身を支えているのだ。その不自然さ故、下半身の強度はその分弱いと考えられる。
 黎夜も屋上の端へ誘導するように移動しながら、「グラセウールIS000」で別の阿修羅の足を穿った。擦傷、銃創、共に阿修羅を転倒させるには至らなかったが上体がわずかにぐらつく。
 だが、自我も痛覚もないゾンビ。どんなに傷を負ったとしても怯むという事はない。上体をブレさせながら、そのまま腕を振り上げる阿修羅に、オリヴィエが通信機越しに仲間達に警告する。
『来るぞ』
 直後、計6本の衝撃波がリンカー達に襲い掛かった。上半身がぐらついているため狙いは正確性を欠いていたが、突風がかまいたちとなってリンカー達の身を刻む。
「こんな、酷い……」
 操られる死者の痛ましさに征四郎は胸を押さえた。共鳴する事で青年騎士の姿となった征四郎だが、その瞳は未だ幼い少女の心のままに歪む。
『人間を繋ぎ合わせて、か。怖いか、征四郎』
 ガルー・A・A(aa0076hero001)は心の内から征四郎に語り掛けた。凛々しくあろうとしているが、本当の征四郎は負けず嫌いで怖がりな普通の、幼い少女である。
 だが。
「……っ でも、足は、止めません! 道を作ります、ガルー!」
 戦う。誰かの明日を守る為に。征四郎は魔剣「カラミティエンド」を出現させると、樹のトランプ兵に紛れて接敵、魔剣の刃を垂直に構えそのまま胴に叩き入れた。一撃を加えた後すぐに阿修羅から距離を取り、九陽神弓に換装して弦を最大まで引き絞る。
「攻撃ヘリまで敵は用意してますか……上を押さえられてるのはキツいですね、迫撃砲くらいは欲しかったですね……」
 言いながら水夏はかつての日を回想していた。「安全装置よーし弾込めよーし単発よーし」、型通りに行われた自衛隊の小銃訓練。
「興奮で銃がぶれては元も子もない。引き金はな、闇夜に霜が降りるがごとく静かに引く……」
 そう教えてくれた先輩は、今はゾンビとなっている。
 その引き金を本人に向ける事がなかった事の是非は問わない。迅狼改造軍刀を構え、戸山流居合で真っ向勝負。仲間の介錯は自分がやる。例え刺し違えてでも。
 その覚悟を以て、水夏は強く地を蹴った。

 バルタサール・デル・レイ(aa4199)は敵に姿を見せる事なく、屋上の出入り口でじっと息を潜めていた。銃声にも眉一つ動かさず、オプティカルサイトを使用して慎重に狙いを定め、その時を――ヘリを撃ち落とす絶好の機会をただ静かに待っていた。
 下手な場所に墜落させては、リンカー達を火災等に巻き込んでしまう恐れがある。故に旋回時等にビルから少し離れたタイミングを狙い、地上に落下させられれば僥倖。そうでなければゾンビの頭上を飛んでいる時が望ましい。
 だが、狙い過ぎて時間が掛かる、というのも頂けない。
 かつて裏社会にいた男は細く長く息を吐き、ジャガーのような瞳を細めプロペラへと照準を定めた。あそこならゾンビは張り付いていない。上手くいけば一撃で仕留める事は可能な筈。
 獲物との距離を正確に測り、息を吐ききった後に止め、引き金を押す指に力を加え……銃声。放たれたロングショットは空を裂き、その先にあったプロペラを一撃の下に粉砕した。ヘリは推力を失い、重力に従って屋上の端に落下する。
「おっと」
 遊夜は咄嗟に「ヘパイストス」の砲口を向けると、余裕さえ見せつけながらアハトアハトを叩き出した。砲弾に込められたライヴスは巨大な爆発を引き起こし、数tの金属塊を戦場外へ弾き飛ばす。
「すまんね、墜ちるなら他所で墜ちてくれ」
『……ん、こっち来ちゃ、嫌よ?』
 ユフォアリーヤはクスクス微笑み、遊夜は落ちゆく残骸に別れを告げるように右手を掲げた。それを知覚してか否か、残った二機のゾンビヘリがそれぞれ移動を開始する。
「危険を察知するだけの知能は残っているのかな?」
 尻尾を巻いて逃げようとするヘリの様に、夕は嗜虐的な笑みを浮かべた。嗜虐的な行動も、増える口数も勝ち気な調子も共鳴時のみの特性。夕がいくら共鳴中の自分を苦手とし、後で記憶を思い返していたたまれなくなったとしても、今ここにいる「彼ら」を止める者など居はしない。
 夕はLSR-M110に武器を持ち替え、やや悪戯っぽい表情で赤い片目を瞑って見せた。射程距離を伸ばすため弾丸にライヴスを注ぎ込む。
「逃がしはしないよ?」
 そして放たれたロングショットは、ゾンビヘリの尾翼を撃ち抜き機体を大きく傾けさせた。



「自衛隊ゾンビとは以前にも殺りあった事があるが、戦闘訓練されてる奴を相手にするのはめんどくせーぜ!」 
 御童 紗希(aa0339)の外見でカイは眉根に皺を寄せた。喪装の様な黒い服、少女の姿で豪快に大剣を振るうその姿を、少女の姿をした死神と評する者もいる事だろう。
 一方、次の攻撃のための力を内に溜め込みながら、豪徳寺 神楽(aa4353hero002)は今この戦場にいる疫神の姿に目を細めた。
『……こうしてみると実に滑稽な阿呆だが』
「ただの阿呆じゃない、剣呑な阿呆よ」
『……ふん。アレの思うとおりにさせるのは業腹だな。たたっ斬るぞ』
 梶木 千尋(aa4353)に常の不機嫌な調子でそう返し、トップギアで威力を増した「スヴァローグ」を振り被った。カイも同じく「神斬」を構え亡者の群れに雪崩れ込み、巨剣で弧を描きながら武骨なる演武を披露する。炎剣と屠剣の怒涛乱舞は流れるようにゾンビを平らげ、粉塵が晴れた後には物言わぬ8体の死体が残る。
「まずは此方の足場を確保しないとな」
『死者ばかり……まるで黄泉平坂みたい』
 伊邪那美(aa0127hero001)の言葉に恭也の眉が微かに動いた。だが、古事記の「伊邪那美」を引き合いに出している暇はなさそうだ。
 亡者の放つ小銃の弾を掻い潜り、地と平行に保ちながらドラゴンスレイヤーの刃を繰り出す。分厚く重い大剣は、ゾンビをたった一撃で押し潰す事も可能だろう。
 が、恭也の目的は倒す事ではなくゾンビを行動不能にする事。まずは両足を斬り飛ばし、邪魔なだけの肉塊は出来るだけ遠方へと放る。可能なら復活阻止のため地上に投げ捨てたい所だが。
「もう少し、端まで行かないと難しいな」

 迫りくる銃弾を刀一本で受け流し、桃十郎はそのままふらりとゾンビの懐に忍び入った。無防備にも見える仕草だが、次の瞬間にはゾンビの片足は斬られており、バランスを崩したゾンビは床の上にどうと倒れる。本来ならさらに地上に蹴り落としたい所だが……恭也の言う通りもう少し端に誘導しないと難しい。
 居合い切りを基本とする桃十郎は鞘に納めたまま柄を握り、そのまま視線を持ち上げたが、リンカー達の攻撃に対しゾンビの減っている感がない。その原因はすぐに分かった。神門を中心に展開される黒い靄が……ドロップゾーンから発生するウィルス型従魔が倒れ伏す骸にまとわりつき、見る間に皮膚を爛れさせ、蠢く死体に戻してしまう。一度解放されたとしても再び傀儡と成り果てる……その光景に千尋が、感情の見え難い抑えた口調で皮肉を述べる。
「壊れた死体まで叩き起こして使うだなんて、ブラック経営者の鑑ね」
『面倒だ、下に落とすぞ』
『……復活すんのか? 面倒だな、じゃあビルから落っことしちまうか!』
 偶然か否か、神楽とカイは同時に同種の結論を出し、それぞれ得物を携えて屍兵へと駆け込んだ。千尋は炎剣「スヴァローグ」で下段からゾンビの足を掬い、相手を浮かして後退させ外側へと追い詰める。他方、カイは「神斬」の幅と巨大さを活かし、どてっ腹へ剣を打ち込みゾンビを端へと突き飛ばす。
「あの妙な領域が邪魔だな……」
 桃十郎は「雪華」の切っ先を黒い靄の方へと向けた。ここからウィルス型従魔が出現し、ゾンビを復活させている。ならば、この極小の従魔を倒す事さえ出来れば……
 桃十郎は試しに、今正に死体に群がろうとする靄へと刃を振り下ろした。が、一瞬靄が晴れた気がしただけですぐさま元の通りに戻り、靄に囲まれた死体の肌は瞬く間に腐っていく。削り剥がして落とせればと思っていたが、ウィルス型従魔はあまりにも小さく、そして数が多い。少なくとも一人で対処する事は難しいようだ。
「倒しても復活するなら、息の根を止めずに無力化するしかないな」
『……斬り落とされた手足が生えてくる事は無いよね?』
 伊邪那美からの問いを受け、恭也は床を這うゾンビを見た。先程落としたゾンビの両足が生えてきそうな様子はない。が。
「斬り落とした手足が生えてくる事はなさそうだが、ゾンビは一度倒すとゾンビ化前の死体に戻り、受けた傷もなくなるようだ。つまり手足を切り落としても一度倒し、再びゾンビ化すればダメージはリセットされてしまう……行動不能にしたゾンビは倒すのではなく、放置するかビルから落とした方が良さそうだな」
 推測を仲間達に伝え、改めて大剣の柄を握る。いずれにしろ、もっと端まで誘導しなければ始まらない。視線を上げた恭也の顔は凪いでおり、何の感情も情報も伺う事は叶わない。ゾンビが恭也の表情から情報を得る事はないだろうが……戦闘における恭也に染み付いた生き様が、自然に彼にそうさせていた。



『また来るぞ』
 オリヴィエの警告の直後に阿修羅の衝撃波が宙を裂き、武器を構えて対峙するリンカー達へと踊り掛かった。追い込まれないよう位置を確かめ、身を捻り、あるいは飛び退いてそれぞれに攻撃を躱す。
 今の所直撃こそ避けているものの、上空はヘリ、地上は小銃と阿修羅の衝撃波、そして神門のドロップゾーン……気にすべき点が多過ぎる。いつの間にか流れ弾を喰らっている者も多い。オリヴィエも頬に出来た血の筋を拭いつつ、オプティカルサイトの照準線を阿修羅の眼球へと定める。
『ここが、長い悪夢の終わりになればいい』
「俺たちにとっても、屍人にされた人達にとってもね」
 木霊・C・リュカ(aa0068)の声にオリヴィエは小さく頷いた。そのためにも神門の撃破、さらにそこに至るために阿修羅の早期撃破が必要。
 オリヴィエが狙っているのは阿修羅の視野を減らす事。眼球を破壊する事が出来れば、敵の回避能力を減退させる事が出来る筈。その意図を汲んだ黎夜がオートマチックの撃鉄を起こす。
「援護する……から、上手く……使って……」
 先んじて放たれた弾丸は阿修羅の脚へと吸い込まれ、土気色と化した腐肉に小さくはない風穴を穿った。阿修羅の意識が足元に向いた、隙を逃さずオリヴィエが狙撃銃の引き金を引き、命中力を最高に高めた弾丸が阿修羅の眼球を突き破る。
「お悔み……申し上げますが、今は……申し訳ありません」
 死者への謝罪を口にしながら、八宏は破裂した眼球の死角からZOMBIE-XX-チェーンソーを振り上げた。八宏は明治時代から続く由緒ある葬儀屋の跡取り息子。一見すると人の死に対して冷ややかな男だが、誰よりも死を畏れ、死を悼み、死を敬い、死と命に向き合っている。
 そんな八宏が、死者に刃を向ける事にどのような想いを抱いているのか、正確な所は分からない。悲しみか、憤りか、それとも。
「必ず……お返ししますから」
 だが、還すべき所に還すためと、八宏は唸り声を上げるチェーンソーを振り下ろした。狙いは死体同士の結合部。駆動する刃は振動と共に結合部へと沈み込んだが、三分の一程削った所で阿修羅が大きく身を捩った。あまりの力に弾き飛ばされ、八宏は床へと放り出される。
『丈夫にくっつけられてやがんな』
 響く稍乃 チカ(aa0046hero001)の声に八宏は奥歯を噛み締めた。だが、止まっている暇はない。早く解放してやらなければ。
「そろそろ『いいカな』
 と、樹がシルミルテ(aa0340hero001)と声を重ね「ワンダーランド」の頁を開いた。全員の位置、ある程度よし。タイミング、恐らくよし。二色の虹彩を持つ魔女は魔女服を風にはためかせ、ぽつりと落とすように仲間に注意を投げ掛ける。
「重いの『いくヨー!』
 瞬間、行動を阻害する重圧が敵味方問わず襲い掛かった。征四郎の全身にも圧力が伸し掛かったが、それは阿修羅も同じ事。九陽神弓に矢をつがえ、その間に水夏が九五式軍刀で斬り掛かる。重力に負けじと水夏の刃が阿修羅の胴を薙ぎ払った、と同時に征四郎の放った矢が亡者の胸に突き刺さる。



 狙撃手達は手を伸ばすゾンビの壁に囲まれていた。小銃を持たず、服装も一般市民のもの。恐らくヘリに張り付かされ、攻撃を受けた事により落下してきたゾンビだろう。
「悪いけど、抱擁に付き合う暇はないね」
 夕は柔く微笑むと、「ヴァンピール」の照準を亡者の中央に定め放った。仲間を巻き込む可能性は極めて低いし、制圧力はこちらが高い。ロケット擲弾の『吸血鬼』はゾンビ共を吹き飛ばし、バルタサールと遊夜は上空へと武器を掲げる。
 ヘリはビルから離れようとしているのか、機首を屋上の外へ向けそちらに前進しようとしていた。距離を取られるのは不味い。その前に仕留めておかなければ。
 だが、二人に焦りはない。バルタサールは怜悧な瞳で淡々と、遊夜は余裕をさえ浮かべて、共にテールローターを狙い己が得物を吠えさせた。少し離れ始めたヘリにはバルタサールのロングショット、まだ近くにあったヘリには弱点看破した遊夜の砲弾。ばら撒かれた弾丸はテールローターを砕き回り、操縦不能となったヘリがおぼつかなく宙を彷徨う。
 そこに、遊夜が、バルタサールが、夕が、揃って銃を持ち上げる。
「ここから脱出なんぞさせはせん」
『……数で押せなくても、倒せなくても……逃がさない、よ?』
 遊夜が宣告を、ユフォアリーヤがクスクスと笑みを、音にしたと同時に弾丸は放たれた。悪足掻きのようにヘリが機関銃を乱射したが、弾が掠っても三人の狙いは変わらない。
 狙撃手達の攻撃は二機のヘリに『ジャックポット』し、張り付いていたゾンビもろとも地上へと墜ちていく。夕はヒールアンプルを使いながら立ち上る火柱を二つ見届け、別の場所を援護するべく仲間と共に駆けていった。
 
 剣撃が鳴り響く。
 動く程に砂塵が舞う。
 リィェンが衝撃波を撃ち飛ばせば、その影から千颯がブレイジングランスの穂先を繰り出す。神門の視線が千颯を向けば、アリスの業火が愚神を舐め。カゲリの黒色の魔導銃が宙と神門を貫けば、朝霞のレインメイカーが神門の側頭に振り下ろされる。
 絶え間なく隙間ない連携。だが、攻撃を放っても靄の壁がそれを阻み、いくら傷を負わせても靄がそれを癒していく。神門へと肉薄した蕾菜が、至近距離から水晶の幻影を解き放った。光に幻惑されながらも、神門は今最も近い――蕾菜へと瞳を向ける。
「調子に乗るな……小蝿風情が!」
 錫杖の攻撃を蕾菜もまた錫杖で、受け止めるのではなく滑らせ、逸らせ、受け流そうと試みた。だが、神門の技量は高く、衝撃に玄の甲と蛇の幻影を纏った左脚がたたらを踏む。そのまま追撃しようとする神門の、前に千颯が立ち塞がる。
「そう簡単に仲間を傷付けさせはしないんだぜ!」
 金色に自分を見据える瞳を、神門は忌々し気に睨んだ。
「ならば、貴様が代わりに喰らうがいい」
 ウィルス型従魔を錫杖の先に纏わせて、千颯の頭上に振り下ろす。ランスで受け止めた千颯にはまだ余裕が残っているが、化粧で隠しているとは言え、確実にその身の内にはウィルス型従魔が侵入している。
 とにかく決定打に至れない。負けるつもりも逃がすつもりも毛頭ないが、長期戦になればリンカー達の不利になる。
 だが、神門にも余裕がある訳ではない。
 足に拒絶の風を纏わせ立ち回りながら、神門の一挙一動を注視していたアリスがいち早くそれに気が付いた。神門の目がわずかに、しかし確実に上空のヘリを盗み見る。ふと、神門と目が合った所で、アリスはふ、と小さく笑みを浮かべてみせた。神門の視線がアリスを射抜く。アリスが丁寧に口を開く。
「ねぇ。会いに行きたいのは分かったけどさ。……また、弾かれるとは思わないの?」
 アリスの言葉に神門の眉が微かに跳ねた。微細な変化であるとは言え、確信するにはそれで十分。
(先の依頼と今の反応を見るに、結界に弾かれてたのは間違いなさそうかな)
(それにしても思ったより子供っぽい性格なんだね?)
(空海……なら四国を出たら高野山? まぁ何にせよ)
 紅い少女は淡々と、残酷に言葉を投げ付ける。
「残念。貴方は彼の所には辿り着けない」
 アリスが宣告を下した共に、少女に負けず劣らずの紅が……墜落したヘリが火柱を作り一瞬空気を焼き焦がした。同時に響いてきた音に、神門が歯を食い縛る。
「おの……れ!」
 神門は紅い少女に飛び掛かろうと地を蹴ったが、逃すまいと千颯が再び眼前に躍り出た。神門は攻撃手段を変え、黒い靄を泥濘と作り千颯の身を呑み込ませた。千年の怨念を喰らい膝をつく千颯に目もくれず、屍の王は亡者共に命を下す。
「こいつらを……皆殺しにしろ! 辿り着いてやる……必ずあの男の下へ!」



 銃声と肉の潰れる音。
 それらを繰り返しながら、リンカー達はゾンビ共を端へ端へと追いやっていた。下手に倒す訳にはいかない、というのは確かに厄介だが、注意さえしていれば緩慢なゾンビに後れを取るような事はない。
 桃十郎は背中を味方の誰かに向けるよう、常に注意を払いつつ、フラフラとビルの際近くを歩いていた。無防備な体で敵を引き寄せ、頃合いを見てゾンビが外側に行くように身を捻って立ち回り、懐に飛び込んでから足を切り、そして蹴り飛ばす。
「まずは一体……か?」
 とりあえず、神門とは距離が離れている。ここでゾンビを倒し、死体に戻しても容易には復活しなさそうだが……念には念を、と桃十郎がフラリとゾンビに視線を向けた、その時、男の声が響いた。
「こいつらを……皆殺しにしろ!」
 瞬間、ゾンビの動きが変わった。いや、それ以前にもゾンビからの攻撃はあったのだが、それよりも尚はっきりと、意図を感じる。ゾンビ達は小銃を持ち上げると、最もビルの端にいる――桃十郎に銃口を向けた。桃十郎は迫る銃弾を刀で流し、あるいは身を捻って回避したが、その内の一つが足を抉り、そこに両腕を失くしたゾンビが捨て身で突進する。
 だが、粉塵と共に弾き飛ばされたのはゾンビ共の方だった。桃十郎が土煙を避けるため掲げた腕から顔を上げると、燃えるような赤髪の男が「ヴァンピール」と共に立っている。トリオと併用してゾンビ数体を一掃したバルタサールは、特に感慨を示す事なく次の『作業』に意識を移す。桃十郎もまた軽く首を動かすに留め、次の獲物に刀を向けた。
『あんまし端に行かない方が良さそうだな!』
 カイは周囲に注意を投げ掛け、「ヘパイストス」に得物を交換、6本の砲身を回転させた。圧巻の火力はゾンビを襲い、宙空へと叩き出す。
 千尋はWアクス・ハンドガンに換え、ギリギリの位置に立つゾンビへと狙いを定めた。射撃機能が内蔵された手斧は小気味よく弾を吐き出し、背中を押されたゾンビは屋上からダイブする。
「恨まないでほしいわね!」
『死体なんてモノだと思え、阿呆め』
 ツンと言い放った神楽に千尋はわずかに肩を竦め、片刃の斧を構え直して別のゾンビに銃口を向けた。恭也も敵との距離を正確に測り、ライヴスで加速させた衝撃波……ストレートブロウを打ってゾンビを地上に突き落とす。
『興味深いね、彼』
 獲物を屠るバルタサールの脳内で紫苑(aa4199hero001)が愉し気な声を漏らした。蠱惑的な容姿、琥珀のような瞳、額から生える角を有し、かつて「鬼」と呼ばれ、差別を受け、忌み嫌われたこの英雄は、精神的に壊れた人間を見物する事を好んでいる。故に、金色に変じたバルタサールの眼を通し、紫苑は神門のことを興味深く眺めていた。
 一方、バルタサールにそのような趣味はなく。ゾンビを殺すことにも抵抗はなく、淡々と作業のようにこなしている。神門の過去等に関しても、言う事はただ一つ。
「興味ねえな」


 
 186cmの長身を屈め、八宏はノーブルレイを手に阿修羅へと駆け出した。チェーンソーで結合部を切断するのは時間が掛かる。故に脚部にダメージを蓄積し、転倒を狙う考えだ。
 黎夜の銃撃に合わせて八宏が銀色のワイヤーを繰り出す。オリヴィエが狙撃銃を掲げ、目にも留まらぬ速度で弾丸を叩き撃つ。三人分の死体を繋ぎ合わせているとは言え、的としては三位で一体。放たれた銃弾は真直に飛び阿修羅二体を同時に貫き、腐液を撒き散らしながらも阿修羅は6本の腕を掲げる。
「衝撃波『来るヨー!』
 衝撃波は必ず直線で、射出方向は阿修羅の正面。阿修羅を観察しパターンを見出し、既に樹はその情報を仲間に伝達していたが、周囲に目を配ったオリヴィエが通信機に声を飛ばす。
「衝撃波がそっちに行く、気を付けろ」
 この方向は神門の戦域、そう判断したオリヴィエは神門対応班に警告した。それを聞いた征四郎は駆け出し、阿修羅と仲間の狭間へと己が身をねじ込んだ。迫りくる突風を、「カラミティエンド」を床に突き刺し耐えようと試みる。
「持ち堪え、ます!」
 魔剣の刃はアスファルトを割き、征四郎はわずかに後退したが、それでも耐えた。仲間にも被害はない。すぐさま「カラミティエンド」を引き抜き阿修羅との距離を詰めようとする。
 樹は指で位置をはかった。あともう少し移動してくれれば、二体の阿修羅が一直線になる。あと一歩、二歩……よし。
『ソレじゃア! ビリビリするノ!』いきます」
 シルミルテと共に使用前の一言を告げ、樹はサンダーランスを生成、稲妻纏うライヴスの槍を直線上に疾走させた。閃光が雷鳴を供に亡者二体の胸部を貫き、そこに征四郎が、水夏が距離を詰めてそれぞれ刃を叩き込む。
「グ……グぅゥゥ、ァあァアッ!」
 と、阿修羅が、咆哮を上げた。主の絶対の命を受け、崩れた喉で吠え猛った。残存している眼球で手近にいる生者を睨み、自分達の仲間に引き入れようと手の刀を振りかざす。征四郎と水夏は一撃目を弾いたが、すぐさま二撃目が二人の頭上に落とされる――
「悪いが」
「渡す訳にはいかないよ?」
 声と共に銃弾が二発、飛来してそれぞれに阿修羅の目を撃ち抜いた。遊夜と夕は硝煙を風にたなびかせ、そのまま銃口を獲物へと合わせ続ける。
「援護するから、ポイはよろしく」
『……ん、絶対に……逃がさない、よ』
 SVL-16越しに遊夜は義眼を煌めかせ、ユフォアリーヤは妖艶に捕食者の笑みを漏らす。樹はこの隙を逃さず、再度ライヴスを練り上げる。
『ビリビリするノ!』もう一度いきます」
 味方の攻撃を確実にするべく、オリヴィエは退路を塞ぐように阿修羅の足元に弾丸を放った。そして駆けるサンダーランス。腐肉の焦げる臭いが立ち込め、八宏が、水夏が、黎夜が、脚に、胴に、肩に、それぞれ一撃を叩き撃つ。
「こっちです! 私はここにいます!」
 征四郎はビルの端側に立って声を張り上げ、阿修羅の注意を自分の方へ向けようと試みた。上手くいくかは賭けだったが、光に誘われる蛾のように阿修羅の一体が足を踏み出し、しかし完全には近付かないまま衝撃波を打ち放つ。
 それが征四郎の狙いと知らず。
 征四郎に向かった突風は、勢いもそのままに跳ね返され阿修羅の身を押し流した。ライヴスミラー……攻撃を丸ごと打ち返す反射鏡が、衝撃波を反転させて阿修羅自身を襲わせたのだ。加えて、リンカー達の攻撃は、阿修羅の肉体に十分過ぎるダメージを蓄積させていた。断裂した筋肉では衝撃を受け止めきれず、阿修羅は弾き飛ばされて眼下へ転がり落ちていく。
「やりました! これで残りは一体……」
「紫様……危ない……!」
 顔を上げた征四郎の前に、黒い影が躍り出た。八宏は征四郎を庇い、もう一体残った阿修羅の衝撃波をその身に受け、吹き飛ばされた屋上の淵に辛うじて手を掛ける。
「クニエ!」
「すぐに……復帰します。だから神門を逃さないよう……」
 八宏は必死でしがみつき、精一杯声を張り上げ……そのまま力尽きて視界の外へと消えていった。



 疫神は亡者に命を下すと、己の足元に蹲る千颯へようやく視線を移した。千颯の肌は青白い、それを見て神門は判断した。ウィルス型従魔はもう十分にその身を冒している筈だ、と。後押しの一撃を与え支配下に置いてやろうと、神門は錫杖にウィルス型従魔を纏わせ――
「そうは、問屋が卸さねえよ!」
 リィェンの「神斬」【極】 の斬撃が地を走り、加えてカゲリの魔導銃、アリスのアルスマギカが火を噴いた。さらに千颯を庇うため、アークトゥルスがプレートシールドを両腕で構え立ち塞がる。
 神門は動きが鈍った相手に積極的に追撃する印象がある。また、これ以上千颯が神門の攻撃を受けるのは危険だと判断し、クロスガードを最大に重ねた上でカバーに走る。
『私が相手だ、忌まわしき者よ!』
 苛烈に己を見据える騎士を、神門は憎悪さえ込めて睨む。
「どいつもこいつも……潰れてしまえ、小蝿共!」
 叩き下ろされた錫杖を盾でアークトゥルスは受け止めたが、神門は一撃でアークトゥルスの生命力を大きく削った。盾を掲げたまま崩れる騎士に、愚神は引導を渡そうと――
「させないと、言っています!」
 蕾菜の水晶の幻影が神門を遮るように乱れ飛び、その隙にシェオル・アディシェス(aa4057)がアークトゥルスにケアレイを飛ばした。元々、彼女は戦う者ではない。戦う力を持たず、戦場を逃げ惑っていながらも、それでも傷付く者を助ける力になりたい、とシェオルは手をかざし続ける。
 助けたい、救いたい。その先に、命の意味を知る為に。
 彼女の原動力とは、ただそれのみである。
「千颯さん! とりあえず今はこれだけでも!」
 朝霞もまた、千颯の身に巣食う異常を少しでも取り除こうとクリアレイの光を飛ばした。空はいつの間にか白んでいた。夜明けが少しずつ迫っていた。神門は、秀麗な顔を憎悪に歪ませ生者達へと吠え立てる。
「忌々しき……虫ケラ共が! 生に群がるだけの浅ましい小蝿のくせに! 殺してやる……貴様らの骸も駒として、俺は必ずこの地から……」
 その時、神門の表情が変わった。嘲笑、憤怒、憎悪、どれでもない、驚愕。瞳が忙しなく泳ぎ、唇が小さく音を紡ぐ。
「朱天王……夜愛……?」
 その時、決着がついた、と、通信機から連絡が入った。他の場所の戦況を伝えて欲しいという、事前に出していたアリスの要請に対する伝達事項。慌ただしさも同時に伝える報告を受けながら、紅い少女は思案する。
 アリスとAlice(aa1651hero001)。共鳴する前は合わせ鏡のごとき二人。共鳴した後はどちらかではなく、どちらでもある「一人」。彼女は、あるいは彼女達はただ淡々と思案する。
(前回とは状況が違うけど、感情が揺らげば僅かなり隙でも出来るかもね)
(彼を封印した人の様な優しさを、私は持ち合わせていないもので)
 そして少女は呪を紡ぐ。
「いなくなっちゃった?」
 誰が、とは言わない。
 だが、それで十分だった。
「こ……の、……ぁあああああっ!」
 吠えるように、泣き叫ぶように、神門はアリスに駆け出した。姿形は全く変わらぬはずなのに、図体だけが大きくなった泣きじゃくる子供のようにも見える。
 だが、それも一瞬の事。神門は瞬時に殺意と怨念だけに瞳を染め、アリスに襲い掛かろうとした。しかし朝霞がそれを阻み、リィェンが死角からネビロスの操糸で絡め取る。
「マジでガキの癇癪だな……お前の本心は何処にある」
「うるさい……うるさい! 俺を……そんな目で見るなァっ!」
 肉が裂けるのも構わずに神門は操糸の戒めを解き、そのまま身を捻ってリィェンを討とうと試みた。だが、蕾菜がリィェンを押し退けるように間に割り込み、胴に一撃を受けてアスファルトの上に転がる。
 少なくないダメージを負いながら、それでも蕾菜の意識は続いていた。痛みを抱えつつ身を起こす。まだ戦える。自分が届く場所ならば何度だって駆け付ける。傷つく人が一人でも少なくなるように。
 その上で死ぬつもりなんか微塵もなく。戦い、守り抜き、生かし、生きる。
 それが風架との誓約であり、先代たちの誓約を受け継いだ、「零月」として自分が選んだ生き方だから。
「私は……生きます。生きて、守り、戦います」
 決意と共に神門を見据える。強い意志と生を秘める瞳が容赦なく神門を追い詰める。
「まだ……まだだ、亡者共! 俺が命じるのだ、手足が落ちても戦い続けろ!」
 神門の咆哮と共に、神門の背後にいたゾンビ共が数体床を這い進んだ。隠し持っていた訳ではない。ヘリに張り付いていたゾンビが奥の方に数体落下し、リンカー達の目を掻い潜りそのまま床に潜んでいたのだ。
 屍兵が進撃し生者達に手を伸ばす……が、その腕に、脚に、胴に、いくつもの銃弾が叩き込まれた。ウィルス型従魔がまとわりつき、ゾンビを復活させようとするが、それさえ許さんと言わんばかりにまたもや銃弾の雨が注ぐ。
『他のザコは全部地面に落としたぜ』
「あとはあなたと、あそこにいる阿修羅ぐらいよ」
 カイと千尋の言葉に神門の足が一歩引いた。足元にまだ手駒はいるが、これでは数も、力も足りないのは分かっている。それに恐らく、朱天王と夜愛は……。
 だが、逃げれば、まだ機会はある。芽衣沙がまだいる。再び亡者共を増やし、芽衣沙の手を借りてさらに強力な駒を作ればもう一度……
 だが、そんな神門の思惑が、見逃される筈がなかった。バルタサールは嘲笑うでも、哀れむでもなく、ただ淡々と銃口を向ける。
「ああ、もう一仕事だ」
 敵味方の位置を即座に把握し放たれた最適の弾丸。先手を取った奇襲攻撃は神門の大腿を穿ち抜き、合わせて千尋がハンドガンの弾丸を叩き出す。
 朝霞が神門の注意を引くべく懐に飛び込んで杖を構え、さらに影から桃十郎が急所を狙って刃を繰り出す。神門が後退しながら壁を作り、攻撃を防ごうとした――
 その時ビルの縁から影が二つ躍り出た。



 ギシャ(aa3141)はどらごん(aa3141hero001)と共鳴すると、戦闘に参加することなくビルの縁に移動していた。屋上の障害物の配置、地上までの距離、途中のベランダや室外機等の出っ張り、ヘリやゾンビの位置、リポップ方法、そして何より、神門の行動と能力の範囲。
 それら全てを注視し、観察し、ビルの縁に潜みながらその時を待っていた。
「(近付くと危険な能力があるみたいだからねー)」
『(俺達は戦士ではない。ただ一度の行動で充分だ)』
「(暗殺者だしねー。他のことやれないしねー)」
 もちろん、敵に発見されたり、攻撃に巻き込まれたりする可能性は存在したが、敵も味方もギシャの潜んでいる方角には接近して来なかった。時折ヘリが頭上近くを通り過ぎたかもしれないが、狙撃手から逃げるのに忙しいらしくギシャには攻撃して来なかった。
 あとは潜伏を使用して姿と気配を覆い隠し、その時を待つ。
 味方との戦闘で生まれる隙、あるいは会話している最中。
 神門を殺すタイミングを。

 八宏もまたビルの縁にしがみつき同じく時を待っていた。阿修羅に弾かれ、ビルから落ちきる前に外壁に刀を突き立て、ワイヤーを駆使して外周を登り神門の背面へ回り込み……そこにギシャがいたのには少々驚いたが、敵を欺くにはまず味方から。八宏もその考えで、仲間には真意を告げず迫真の演技をしたのだから。
「(とは言え、さすがにあの方には合図をせざるを得ませんでしたが……)」
 黒と金の瞳がじっと様子を伺い続ける。神門が叫び声を上げた。その足がふらりと後ろへ下がる。仲間の銃弾が叩き込まれ、朝霞と桃十郎が肉薄したタイミングに――

 神門は判断が出来なかった。正面から朝霞、死角から桃十郎、背後からは影が二つ……どうすればいい。一体どう立ち回ればいい。
 ギシャは緊張化体感時空間圧縮装置を使い心拍数を上昇させた。生命力と引き換えに肉体は限界を突破する。潜伏を掛けたまま神門へと一気に踏み込み、竜の鉤爪に毒を纏わせ神門の喉へと狙い打つ。
「お仕事お仕事っと。縁も恨みもないけど死んでねー」
『死者を生み出す危険な死者を骸に還すだけだ』
 ギシャが純真無垢故の無慈悲さで、どらごんがあるがままの真理を、音と放ったと同時に神門の首に線が走った。肉が裂け、神門が思わず首を押さえた、その隙を逃さず別の死角から八宏が治療薬【Re-Birth】を振り被る。
 血管に細かな蟲が侵入したようなおぞましさに、神門が膝をつき、表情に苦悶を現した。その足元から靄が消え失せ、後には愚神ひとりが残る。
「……おのれ、おのれェェエッ!」



 阿修羅は踊り続けていた。リンカー達を警戒してかビルの端には近寄らず、ただひたすらに刀を、衝撃波を繰り出し続ける。
 征四郎は困っていた。端側へ立つという事は、それだけ自分が落ちる危険性が増すという事。内の方へと戻りたいが、その度に衝撃波が迫り中々思うようにいかない。
『征四郎、来るぞ!』
「くっ」
 飛来する衝撃波に征四郎は剣を突き立てたが、激しい攻撃により屋上のアスファルトもかなりのダメージを負っていた。石くれの集積は魔剣を支えるには足りず、吹き飛ばされて征四郎の身が宙を舞う。
 落ちる。そう思った。だが、いつまで経っても征四郎に地面は近付いてこなかった。征四郎の腰には何か柔らかなものが巻き付いており、顔を上げると……榊原・沙耶(aa1188)がロケットアンカー砲でビルの壁に張り付きながら、右の腕で征四郎の腰を抱え込んでいた。
「ナイスキャッチ、というのかしら」
 防護マスクの下から色っぽい声を漏らしながら、沙耶は征四郎を抱えたまま屋上へと引き上げた。征四郎は驚きながらも丁寧に礼を述べる。
「ありがとうございます」
「お礼はいいわぁ。さ、行って」
 沙耶は征四郎を送り出し、すぐさま戦況に意識を向けた。沙耶が今回自分の役目に選んだのは、敵を倒す事ではなく味方のカバーに回る事。落下する征四郎を捉えたのも、仲間がビルから落とされた場合に備え、ロケットアンカー砲を命綱にダイビングキャッチを決めたからだ。
 ちなみに八宏に関しては、目が合ったと同時に首を振られた。有線を戻しながら沙耶がふわりと声を落とす。
「いよいよ、四国での最終決戦ね。ロシアで騒ぎがあった時からゴタゴタが続いていたから、もうかなり長い間魔境と化していたのよね」
『その魔境に、決着をつけないといけないわね』
 沙耶の言葉に小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)は声を続けた。悪魔、邪龍、忌まわしい神、かつての世界でそのように評された沙羅であるが、その心根は優しく純粋。だからこそ、決着をつけるためこの戦場に立っている。
 沙耶は年の離れた妹の様な沙羅の言葉に笑みを深め、防護マスクの位置を直した。神門のウィルス型従魔、及びスキル対策にと着用しているマスクだが、このマスクはライヴスを介するガスなどは防げない。同じくライヴスを介するウィルス型従魔にはあまり効果がないようだ。
 とは言え、沙耶のやる事は変わらない。仲間が落ちれば救出に、怪我や異常を負えば回復に、即座に行動出来るように戦闘全域に意識を巡らす。

 オリヴィエは弾丸にライヴスを込めた。そのまま保持しておくにはあまりに大きなエネルギー。臨界点までギリギリ蓄え、声と共に、放つ。
『アハトアハトを撃つ、阿修羅から離れろ』
 そして繰り出された弾丸は、阿修羅に衝突したと同時に大爆発を巻き起こした。衝撃に押され後退した阿修羅へと、黎夜がすかさず肉薄し周囲に多数の武器を召喚。
「いい加減……倒れて……」
 舞い踊る刃の嵐は阿修羅の肉を切り刻み、それでもなお阿修羅は刀を持ち上げようとした。その関節を征四郎の矢が、夕と遊夜の弾丸が穿つ。
 水夏は九五式軍刀を握り駆け出した。反撃を喰らっても構わない。真正面から挑み掛かり、居合で阿修羅の胴を狙う。
 それに対し、阿修羅は刀を振り被る。その顔は、変わり果てた先輩の顔。
「ォォォオオオッ!」
「あああぁぁあっ!」
 突き出された阿修羅の刀が水夏の肩にめり込んだが、水夏はそのまま勢いを殺さず軍刀を振り抜いた。限界に達した阿修羅はアスファルトに膝をつき、次の瞬間、三体の死体に分かれて床の上に転がった。その中の一体に視線を向け、水夏は右手で敬礼を送る。
「お疲れ様です、先輩」



「仕留めきれなかったかー。残念だけど即離脱ー。暗殺者はただ一撃のみにすべてをかけるのさー」
 ギシャは無邪気に告げるとそのまま神門の元から離れた。殺すには至らなかったが毒刃のライヴスは確実に神門を蝕んでいる。また、八宏の投与した【Re-Birth】は、神門からドロップゾーンもスキルも奪い去っていた。
「く……くそ……」
 神門は呻きながらも逃亡しようと足を動かす。スキルを封じられ身を蝕まれても、足は動く。
 そこに、シェオルのリジェネーションを受けながら、蕾菜が杖を縦に構える。
「ここで終わらせます。逃がしはしません」
 宣告を下すと共に蕾菜はライヴスを蝶に変え、神門を囲む檻とすべく幻影蝶を解き放った。光の蝶は神門のライヴスを喰らい奪ってその場に留め、恭也はドラゴンスレイヤーを携えながら仲間に告げる。
「今だ、一気に畳み掛けるぞ」
 容赦なく矢弾が降り注ぎ、恭也はその隙に神門へ駆け出し、疾風怒濤の乱撃を愚神の身へと叩き込んだ。合わせて槍が、刃が、炎が、風が、絶え間なく神門に襲い掛かり、見る間に神門の皮膚が裂け、肉から腐液が流れ出す。
「うぐっ……」
 治療薬の効果が切れ、ドロップゾーンが神門の足元に舞い戻った。黒い靄が手を伸ばし、神門の傷を癒そうとするが、先程より回復のスピードが遅いように感じられる。また、幻影蝶の効果は続いており、ライヴスを封じられた神門は動く事さえままならない。
「今の内に回復を」
 シェオルは傷の深い蕾菜やアークトゥルスに回復スキルを使い続けた。彼女が持つのは癒しの力。故に回復役にまわり、神門に挑む仲間の傷をただただ癒し続けていく。
「加勢するわ」
「私も、手伝います」
 そこに沙耶と征四郎も到着し、治癒のライヴスを雨のように仲間達へと注がせた。ウィルス型従魔に操られるゾンビが襲い掛かろうと腕を伸ばすが、アークトゥルスが盾で弾き、駆け付けた夕の、遊夜の、オリヴィエの弾丸がゾンビの頭を撃ち抜き止める。
 圧倒的不利。にも関わらず、傷を増やしながら疫神は立ち続けていた。肉が裂ける程に靄でそれを覆い隠し、生きとし生けるもの全てを、恨み、憎み、呪い、叫ぶ。
「まだだ、まだ、俺は……俺はッ!」
「………もし、自由な生を再び得たとして、貴方は如何するおつもりですか」
 猫のように瓦礫を蹴り、神門との距離を埋めながら八宏は問いを投げ掛けた。地に立てる限り、生を恨む屍の王の叫びを全て受け止めんと、肉薄し、鎖鋸を振るいながら、八宏は神門を静かに見据える。
 神門は避けもせず振動する刃を肩の肉で受けながら、八宏を覗き込んでにっと笑った。憎悪。憤怒。殺意。怨念。それら全てを込めた瞳で。
「生だと……? そんなものに興味はない! 永劫の腐敗、万物の滅び、俺が望むのはそれだけだ! 分かったら……貴様も死ね!」
 神門は出現し続けるウィルス型従魔を泥と変じ、自らに巣食う怨念を八宏に味合わせようとした。寸前、八宏の肩をカゲリが引き、代わりに怨念の全てを受ける。黒い汚泥がカゲリを呑み、内側から冒そうとする。
 だが、カゲリは倒れない。リンクコントロールでレートを最大値まで高め、ブレイブガーブの恩恵を受けているから……だけではない。そもそも、カゲリの中にはない。怨念に呼応する負の感情が。あるのは怨念を凌駕する、苛烈なまでの二人の意志。
『――小蝿、小蝿か。
 ならばそれから逃げんとする汝は一体なんであろうな?
 戦略的撤退、ああ良い言葉だ。
 然し小蝿と見做した相手に、それを選んだ時点で汝の性根は知れている。
 仮に此処で逃げ遂せたとて、小蝿に逃げた愚か者が、果てに如何な勝利を掴めると言うのだ?
 誰にも、何にも、勝てる道理がなかろうが』
 ナラカ(aa0098hero001)の声が静かに語った。元より怨嗟など敗者の型に嵌る良い証拠。そんなものは、単に弱さの証明でしかないが故に。
 一方のカゲリには、特に語る言葉はなかった。それでも、あえて、只一つ言うとするならば――
「――お前の逆襲劇は実らない。此処で空しく滅べば良い」
 燼滅の王――万象を肯定したその裁定に揺るぎなく、その劫火は不浄を滅却せんと燃え盛る。
 双炎剣「アンドレイアー」――【燼滅の双剱】の名を持つ刀身に黒焔を宿らせて、カゲリは神門へ……愚かな神へ刃を横に振るい払った。炎は肉を焼き焦がし、爛れた皮膚に瞬時にウィルス型従魔が纏わりつくが、黒焔に焼かれた傷の一部は灰のようになったまま。
 回復能力が減退している……その推測はここではっきりと確信に至った。恐らく、他の戦局で決着がついたその時から。樹がライヴス注射器「キートゥヘヴン」を構え、苦し気に息を洩らす神門へ液状ライヴスを差し向ける。気付いた神門は靄の壁でそれを阻もうと試みたが、防御壁の作成が間に合わず攻撃は神門の胸を撃つ。
 そこに、リィェンが「神斬」を構え突撃する。
「終わるんだ、そろそろ」
「……! 嫌だ、終わらせない、終わらせてなるものか!」
 子供のような言葉を吐き、神門は咄嗟に錫杖をリィェンへと繰り出した。杖の先がリィェンの胴を打ち、リィェンの頭がカクリと垂れる。その様に神門は目を開き、嬉し気に哄笑した。
「ははは……いいぞ、お前は俺の駒だ。やれ! 互いに殺し合え!」
 神門の言葉にリィェンは振り向き、刃をリンカー達へと向けた。見せつけられる非道さに、征四郎が声を上げる。
「あまりにも酷い! 貴方には人の心がわからないのですか!」
「俺を人柱に自分達だけ助かろうとした、それが貴様ら人間だろうが!」
 支離滅裂、理解不能の言葉を吐き、神門はリィェンを走らせた。千颯がその前に壁と立ち、リィェンの刃を槍で止める。
「リィェンちゃん、しっかりしろよ! 今ぶん殴ってでも正気に……」
 その時、リィェンの唇が動いた。千颯はわずかに瞳を動かし、気付かれないよう頷いた。そして治療薬投与を考え、こちらに駆けようとするアークトゥルスを目で制し、リィェンの側頭を右の拳で殴り抜ける。
「いって……」
「目が覚めたか、リィェンちゃん」
「抗うか! 無駄な事を!」
 今度はリィェンと千颯、二人を操ってやろうと神門が靄を収束させた。その予兆、予備動作に、蕾菜が喉にライヴスを込める。
「【攻撃を中止せよ】」
 発せられた支配者の言葉に神門の両の腕が垂れた。靄が足元に沈殿した、と同時にカイが「ヘパイストス」を掲げ上げ、アリスがリフレクトミラーを併用してアルスマギカの頁を摘まむ。
『フレンドリーファイアに注意だな』
「今は近付かない方がいいかもね」
 疾走する砲撃と業火。直撃を喰らった神門の肉が一部炭化して剥がれ落ち、だが「正気」を戻した愚神は未だにそこに立っていた。命があれば「生き汚い」と評されただろう醜悪さで、愚神は傷を繕いながら生を呪い吠え続ける。
「まだだ……まだ、あァアッ!」
 ゾーンからゾンビが起き上がり、神門を守る盾となるべく立ちはだかった。だが、そこにゲヘナ(aa4057hero001)が迫り、「死神」の姿に大鎌で亡者の身を斬り伏せる。シェオルの相貌に仮面を張り舞い降りた死神は、内でまどろんでいるだろうシェオルへと語り掛ける。
『良く成したと褒めておこう。己が行いは無為ではなかったと信ずるが良い。
 後は応じる者が好きにするであろう。
 ならばこそ、此れより先は我が担うもの』
 傷を癒すのはシェオルの役目。シェオルが回復の術をあらかた使い果たした今、戦場に立ち、審判を下すのはゲヘナの役目。その在り様に従い、死神は鎌を低く掲げる。
『蘇る死者など見るに堪えん。それが意に反して蘇らせられるとなれば尚の事。
 今一度冥府の元へと墜ちるが良い』
 
「ウラワンダー☆アロー!」
 朝霞はゾーン外に退避しながらフェイルノートの矢を射った。先程までは肌の青白さが目立っていたが、ゾーンの外に出たためか青白さも悪寒も徐々に消失してきている。征四郎も九陽神弓を引き絞り、桃色の瞳に敵を映す。
「そこを、退いて下さい!」
 矢は空気を切り裂いて亡者の喉に突き刺さり、間髪入れず遊夜が、夕が、千尋が、バルタサールが、それぞれに銃口を向け数多の弾丸を叩き撃った。迫るゾンビをアークトゥルスがプレートシールドで弾き返し、水夏と桃十郎が同時に居合いでゾンビの胴を薙ぎ払い、沙耶が悪戯っぽい笑みと共にカチューシャMRLを展開。
「本当はヘリ対策に使おうと思ってたけど、せっかくだから……、ね?」
 そして一斉に射出される16連装ロケット弾。轟音が響き渡り、砂塵が晴れた時にはゾンビ達は死体に戻っていた。ウィルス型従魔が取り付くには若干のタイムラグがある。黎夜は全力で神門に駆け出し、神門は身を引こうとする。
「終わらせようか、悪夢を」
『……そうだな』
 リュカの言葉に小さく頷き、オリヴィエは狙撃銃の引き金を引いた。弾丸は神門の脚を撃ち愚神の身体をぐらつかせ、そこにカイが「ヘパイストス」を、アリスがアルスマギカの業火を、蕾菜が賢者の欠片を噛み砕きながらブルームフレアを炸裂させる。高熱が神門の身を炙る。その中心に黎夜が飛び込む。ライヴス結晶によりリンク状態が限界まで上がっていく中、真昼が黎夜に語り掛ける。
『つきさま、まひるも一緒ですの。恐れるものなどありませんの!』
「……うん」
 声を返しながら黎夜は神門に腕を回し、捕らえながらリンクバーストを発動させた。抱擁そのものの至近距離で、黎夜は神門に声を放つ。
「死んだ後の世界なんて、知らない……でも、無理やり起こすのは、違うと思う…。
 ……神門、お前をここで、斬り落とす……。ここで眠って……!」
「黙れ、死ぬのは貴様の方だ!」
 神門はしがみつかれたそのままに千年の怨念を黎夜に浴びせた。汚泥が黎夜の身を汚す。黎夜の過去、悲しみ、恐怖、負の感情に付け入ろうとひたひたと忍び寄る。
 その時、黎夜の周囲に数多の刃が発生した。広げられた多数のザミェルザーチダガーは銀の翼のようにも見える。ダガーは神門に切っ先を向け、防御の隙さえ許さずに愚神の肉を切り刻む。
「ぐぅっ!」
 黎夜が手を離して転げ落ち、神門は傷を押さえて呻いた。靄が神門の傷を覆うが、神門の身を隠す程に纏わりついても回復が間に合わない。
 神門はふと視線を上げ、自分に向かって駆けてくる千颯とリィェンの姿を認めた。しめたと思った。千颯は何度か神門の攻撃を受けているし、リィェンは一度操っている。威力は弱くとも一撃入れれば操る事は可能な筈。
 神門は全力を足元の靄に込め、二人が十分に近付いた瞬間千年の怨念を発動させた。回復に全力を傾けているため攻撃力はほぼないが、精神を制圧し操る事ぐらいは出来る。
「馬鹿め、だが僥倖だ! さあ俺に従え! あいつらを皆殺しに……!」
 靄の中で千颯とリィェンの身体が揺れる。だが、その手に握られた刃は神門の心臓へ放たれた。胸を貫かれ、腐液を口から滴らせ、驚愕を露わにしながら神門は眼前の二人を見やる。
「な……なぜ」
「奥の手は最後まで取っておくもんだぜ!」
 疑問を呈する神門へと千颯は高らかに声を発した。千颯とリィェンは【Re-Birth】を一本ずつ持っていた。仲間が攻撃し神門の意識が逸れた隙に、二人は治療薬を自身に投与、ウィルス型従魔を体内から追い出した。
 また、先程の攻撃で、リィェンは神門に操られては「いない」。トドメを刺す際の布石として操られたフリをしていただけ。本当に操られていたとしてもそれを布石に使っただろうが、最初に投与した治療薬はきちんと効果を発揮していた。
(『妾のリィェンを舐めるでないわ。いかに過去や負で抉ろうが此奴が練り上げておるのは、そなたのような過去に囚われた亡者ではたどり着けぬ明日への道を作る一刀じゃ。それにのぅ』)
『そんなに空海僧正の真意が知りたいんじゃったら、あの世で本人に聞くがいいのじゃ!!』
 インの言葉と共に千颯とリィェンは同時に刃を振り抜いた。心臓が裂け、それでも倒れぬ愚神へと、恭也が、カゲリが、八宏が、得物を手に跳躍する。
 神門は咄嗟に錫杖を掲げたが、恭也が錫杖に武器破壊の衝撃を与え、ここまで耐えてきた錫杖は真っ二つに砕けて折れた。続けてカゲリが双炎剣を、八宏がチェーンソーを神門の両肩へ叩き落とし……神門の両腕がだらりと下がる。白虎丸が吠え立てる。
『一気に決めるでござるよ!!』
 神門は考えた。錫杖が折れ肩が砕けてもウィルス型従魔はまだ使える。壁にして攻撃を止めれば……それでは傷を治せない。傷を治せば繰り出される攻撃を止められない。攻撃に使えば……一矢報いる事は出来る。だが、いずれにしろ。
 終わる。
「お前の事なんてどうでもいい。お前の過去に興味はない。お前は命を奪いすぎた……だからその代償はお前自身に支払って貰う!」
『安らぎは与えないでござる。仮初としてもお前の思うとおりにはさせないでござる』
 千颯と白虎丸は咆哮し、ランスで神門の喉を穿った。リィェンはライヴスを充填し、破壊力を高めた「神斬」を肩に担ぐように構え。
「送ってやるから……鬼の一撃から喰らって……迷わず逝けよ!!」
「(だから……貴様が喰らった童の魂は置いていけよ)」
 叩き下ろした。オーガドライブを乗せて放たれた斬撃は神門の身を押し潰し、神門の目は一瞬、空を向いた。そしてその身は崩れ始めた。やけに小さな頭蓋骨がカランと瓦礫の上に落ちたが……それもすぐに消え去った。
 昇った朝日が生者達を照らしていた。



「提出ありがとう。すまないが詳細はまた後で」
 職員は樹から映像データを受け取ると、慌ただしく去っていった。渡したのは腰のベルトに固定して撮影していた動画用ハンディカメラのデータの、コピー。そのまま職員の動向を観察するが、全体的にバタバタしている。神門が倒れた事により状況に変化があった模様だ。
 樹は壁の一部に寄り掛かり、彼の愚神についてシルミルテと言葉を交わす。
「妄執の中で逝けるのは、少し羨ましいね」
『妄執ノ強さネ』

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 常夜より徒人を希う
    邦衛 八宏aa0046
    人間|28才|男性|命中
  • 不夜の旅路の同伴者
    稍乃 チカaa0046hero001
    英雄|17才|男性|シャド
  • ひとひらの想い
    零月 蕾菜aa0058
    人間|18才|女性|防御
  • 堕落せし者
    十三月 風架aa0058hero001
    英雄|19才|?|ソフィ
  • 薄明を共に歩いて
    木陰 黎夜aa0061
    人間|16才|?|回避
  • 生満ちる朝日を臨む
    真昼・O・ノッテaa0061hero002
    英雄|10才|女性|カオ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 深淵を見る者
    佐倉 樹aa0340
    人間|19才|女性|命中
  • 深淵を識る者
    シルミルテaa0340hero001
    英雄|9才|?|ソフィ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中
  • エージェント
    シキaa0890hero001
    英雄|7才|?|ジャ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
  • 救いの光
    シェオル・アディシェスaa4057
    獣人|14才|女性|生命
  • 救いの闇
    ゲヘナaa4057hero001
    英雄|25才|?|バト
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 崩れぬ者
    梶木 千尋aa4353
    機械|18才|女性|防御
  • エージェント
    豪徳寺 神楽aa4353hero002
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 希望の格率
    君島 耿太郎aa4682
    人間|17才|男性|防御
  • 革命の意志
    アークトゥルスaa4682hero001
    英雄|22才|男性|ブレ
  • エージェント
    美咲 喜久子aa4759
    人間|22才|女性|生命
  • エージェント
    アキトaa4759hero001
    英雄|20才|男性|バト
  • サバイバルの達人
    築城水夏aa5066
    人間|22才|女性|命中
  • エージェント
    竹田伸晃aa5066hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 流離の辻斬り侍
    吉備津彦 桃十郎aa5245
    人間|40才|女性|攻撃
  • エージェント
    犬飼 健aa5245hero001
    英雄|6才|男性|シャド
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