本部

song of brave

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
15人 / 4~15人
英雄
15人 / 0~15人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2017/07/26 16:44

掲示板

オープニング

● 音の遺跡
音の遺跡が発見されてから一か月以上。H.O.P.E.はその遺跡の調査を続けてきた。
 その遺跡自体は霊力を動力源としており、何と歌を介して遺跡全体にエネルギー供給を行えることが判明した。
 歌とはこの遺跡で発見された『解け合うシンフォニス』と呼ばれる楽譜の事である。
 この楽譜はメロディーしか解明されていなかったが、二人で謳うことでこの遺跡内部を自在に操れることがわかってきた。
 そんな中、ひとつだけ探索が進んでいないフロアがある。
 今回はそのフロアにリンカーを投入しての探索実験が行われようとしていた。
 投入されるリンカーが二十人以上の大作戦である。
 その一室を調べるだけなら、リンカーが十名以上いれば何とかなると思われる。
 ただ、それ以外にも懸念事項があり、そのために二倍の戦力が必要とされたのだ。
 そう、最近息をひそめていたガデンツァ。
 彼女がこの海域で目撃されたのである。
● それは呪い。
「主様。あなたは以前この遺跡は調査されても大丈夫とおっしゃっていませんでしたか?」
 ルネクイーンが水分で作り上げた床の上に跪き。遺跡のある孤島を見据えた。
「ああ、確かに、相違ない」
「では、なぜちょっかいを? 時間の無駄では」
「それはのう、単なるいやがらせじゃ」
 ガデンツァがルネの傍らに腰を下ろす。そして一緒になって孤島を見据えた。
「暇なんですか?」
 その言葉にガデンツァは小さく笑いをもらす。
「そうかもしれんのう。あのようなゴミ虫ども何人おっても、我が脅威にはならぬ。しかしじゃ」
 ガデンツァは言葉を続ける、同時に自ら上がる大量のルネ。
「奴らは強大な力をヒントを手にしたつもりになっておるかもしれんが。それは同時に命を危険晒す行為……」
「彼らを殺すには今がチャンスと?」
 次いでルネクイーンが手をかざすと、そのルネのうち何体かが赤色に染まった。
 まるで血のような赤い色。
「崩れるとわかっている瓦礫の下に、敵がおるのじゃぞ。それは瓦礫を崩すに決まっておろう」
「はぁ、そう言うものですか」
「お主はもう少し、感情というものを理解した方が、よい」
 そう告げるとガデンツァは遺跡に向けてそのルネの軍勢を進撃させた。

● 歌が鳴り響く限り。
 
 ではこれよりSONGシリーズ連動の説明をしてまいります。
 今回はsong of brave(SB)とsong To destroy(SD)が同じ舞台で繰り広げられており、互いの影響が互いの戦況を代えてしまいます。
 たとえばSDの作戦が終了と同時に、こちらの作戦も終了します。
 また、こちらでルネを撃ち漏らすと、SDにルネが登場するので気を付けてください。
 敵の数は多く、総数100とも言われています。その波状攻撃を防ぐ必要がありますが。状況は皆さんに有利です。
 今現在、あなた達が歌を支配している限り、この遺跡はあなた達の城であり砦なのです。
・遺跡の性質
 皆さんは遺跡の心臓部分に突き進む敵を倒すことを目的に行動していただきます。
 心臓部分にたどり着く道は三本あります。入り口も三つあるので、どこから侵入してくるかは全く分かりません。
 それぞれの道にフロアが十ずつ存在しています。そしてフロアの間には一本道の通路が存在しています。
 1ラウンドごとに移動力を五で割った数値分だけフロアを移動できます。
 これは敵も自分たちも同じです。
 
 また前回のお話の結果リンカー側はシンフォニスの楽譜を入手しています。

・遺跡の歌について
 この歌が響いている限り、こちら側は全てのフロアを監視できるうえに。
 ただこのシンフォニスの楽譜は二人で謳うことを想定しているようです。
 歌い手を二人確保した場合は、全ての遺跡機能を解放できます。
 歌い手は遺跡内部を自分の体内のように近くでき、下記の権限を行使できます。

 1 三つの道の通路を好きつなげることができる。
 2 ラウンドに一人、好きなフロアにリンカーを転送することができる。
 3 スキルに限り、射程に関係なく遺跡内の全存在に対して発動できる。対象と範囲はフロア、もしくは通路に存在する全員、もしくは全域まで拡大できる。

 また歌えるのであれば、歌い手は途中交代してもよい。というルールになっています。




解説

目標 SDチームが愚神を倒し切るまで耐える。

 今回対応するルネは二種類、さらにそのルネも三種類の役職に別れています。

赤いルネ
 普通のルネと色が違うだけで他に何が違うのかが全く分からない。ただ、お洒落で色を変えることもないと思うので、何か目的が合って送り込まれていることは明白だろう。
 
青いルネ
 普通のルネのようだ、ただし今回は近接戦闘よりに多少チューニングされているので。防御力が高めになっている。

・ルネの役職について。

ランサー型
 もっともオーソドックスなタイプ、射程長めの近接攻撃にくわえて、行動が素早く、攻撃力も高いです。
 ただし遠距離攻撃に対してなすすべがありません。

アーチャー型
 弓を弾くルネ……と見せかけて、手に持っているアイテムはハープです。音で攻撃してきます、広範囲を攻撃できるのが特徴ですが、威力は低く、また移動力も低めです。
 ただし、アーチャー型ルネがいると、ルネ達の動きがよくなるようです。指揮官か……単純に強化しているのか。詳細は不明です。

ミミズク型
 翼を生やしたルネです。ステータスが低いのが特徴ですが。動きが素早く。また移動力が25と目を疑うような高さなのが特徴です。
 さらに飛行できないキャラクターでは移動を妨害できず。自分を中心とした風攻撃で拘束を解除してくるので捉えるのがすごく難しいです。
 高命中のキャラクターか、飛行できるキャラクターの存在が必要となるでしょう。
 さらに、ミミズク方には赤いルネが多く見受けられます。

リプレイ

第一章 歌の果て

     【A1】━【A2】―【A3】~【A8】―【A9】 【A10】                \             |   |
【心】―【B1】―【B2】―【B3】~【B8】 【B9】―【B10】
       /             |   |
    【C1】-【C2】―【C3】~【C8】―【C9】 【C10】


 戦場を飛び交う三々五々の影。
 重たい扉を押し開き、矢のように遺跡をかけるのは、希望より手向けられた楽園の守護者たち。
 ここに戦線を構築しよう。
 敵を一切通すことのない戦線を。
 そう『阪須賀 槇(aa4862)』はインカム越しに全部隊へと通達した。
「OK、作戦を再確認します」
 彼が周知する作戦、敵の殲滅手順は以下の通り。

1.A10、C10をB10のみに繋げ、B10はB9のみに接続する事で【B10】【B9】に全敵が集中する様にする。

2.B9以降は「コ」の字型に、A9-A1、C9-C1を一本道にしACどちらか片方を行き止りにする。

3.A通路に敵が侵入、A5に到達したらC1ーC2の通路を開き、A1-A2の通路を閉じる。

4.手順3をを交互に繰り返し敵を右往左往させるテク

―― これこそ、王道テク『ジャグリング』

『阪須賀 誄(aa4862hero001)』がそう補足の言葉を加える。
「補足GJ弟者…………うん、よってこれから俺らはB10で迎撃、ミミズク型はB9で迎撃が基本スタンス」
――AC両通路に敵が行った場合、敵数少ない方の道を開放し倒すってのも、作戦のうちですよっと。
「なるほど、素晴らしい作戦ですね」
 そう頷いたのは『煤原 燃衣(aa2271)』
 歌が鳴り響く遺跡、その奏者は彼を最前線へワープされると、燃衣はゆったりとした動作で立ち上がり、両手をフリーにした。
 腕を振り子のように振ってぎらつく瞳で敵を見据える。
 開かれていく扉。無数の水晶の影。ルネ、ルネ、ルネ。
 その敵の軍勢を目の当たりにしてネイが燃衣へと問いかけた。
――参謀に阪須賀兄弟、防衛に杏奈に仁菜もいる。
「それに一之瀬さんがいますから」
――言いたいことはわかってるな?
『ネイ=カースド(aa2271hero001)』はいつにもまして重たく告げる。
「ええ。僕はもう何も考える必要がないってことです」
 燃衣がタイルを踏み砕いた、一瞬にして接近。舞い散る石片、そして不意を突かれたルネ達の体が宙を舞った。
 だがそんな燃衣を攻撃範囲に捉えたアーチャー型ルネはその手のハープをかき鳴らす。狂気の音圧が迫るが、それを弾いたのは『大門寺 杏奈(aa4314)』だった。
「あまり無茶をされても困りますけどね」
 そして燃衣の隣に並び立つのは『無明 威月(aa3532)』
――…………暁の隊員としてヨォ…………集団、防衛戦で遅れを取るワケにゃー行かねぇなぁ?
 そんな威月へ『青槻 火伏静(aa3532hero001)』はどすのきいた声で問いかける。
 コクリと頷く威月。
――ま、それぁソレとしてヨォ…………威月、男も居るが、キッチリ歌ってくれよォ?
 不服そうに喉を鳴らす威月、彼女の言わんとしていることが火伏静には分かった。
――あぁ、俺? バァーカ…………俺ぁ音痴なんだよ。威月テメーがちゃんとやりな、おめーの有志は後で俺が、キッチリ、喧伝してヤッからよォ?
 改めて盾を構える威月。それに対応するように杏奈も盾を構えた。
「100体……流石に敵が多いね」
――はい。個々の攻撃力こそ杏奈の防御に比べれば微々たるものですけれど……疲労に注意いたしましょう。
 『レミ=ウィンズ(aa4314hero002)』が告げる。
「大丈夫。必ず、守り切ってみせるから」
――それでこそアンナですわ♪ さあ、行きましょう。
「隊長、張り切りすぎてこっちを暇にされても困りますよっと」
 インカム越しに告げるのは槇。
 次いで遺跡に響いたのは『藤咲 仁菜(aa3237)』と『斉加 理夢琉(aa0783)』の声だった。
「さぁ、本格的に始まってきました。暁部隊の底力見せてやりましょう」
 燃衣が先陣を切る。杏奈はリンクコントロールを使用。その輝きを増しながらゆったりとした動作でルネに歩み寄る。
 そのルネの刺突を盾でパラディオンシールドでそらし、リフレックスの反射ダメージで敵を弾き飛ばす。
 常に攻撃手である燃衣が動きやすいように戦場をコントロールする目的だ。
「何体来たって同じこと!」
 杏奈が攻撃を弾きあげる、無防備になったルネの体に威月がトリアイナを突き立て吹き飛ばす。
 妙な感覚が威月の手のひらに広がった。
 なんというか水あめを掬い取る感覚と言えばいいのだろうか。トリアイナはごっそりルネの霊力を奪いかえす刃で威月はルネを粉砕した。
 その背後で杏奈が聖旗を地面に突き立て、高らかに告げる。
「旗よ、我が同志に破邪の加護を!」
 輝きの砦、その頂には旗が立っている。誰もが仰ぎ見るべき旗が。だれもを守護すると誓う旗が。
 その光に守られて暁メンバーはさらに苛烈に、ルネ達を粉砕していく。
 そんな燃衣たちの目の前を黒い炎が疾走した。まるで燃衣たちの死角をカバーするかのように駆けるそれ。
 しかしその炎は燃衣たちを焼くことはない。パニッシュメントである。
――聖なる炎よ。愚かな贄を食らい尽くせ。
 敵が水ならすべての水を蒸発させるほどの炎を。仲間に仇なす者を焼き尽くす力を。
 そう謳うのは『リオン クロフォード(aa3237hero001)』である
「何なのその詠唱みたいなの……!?」
――雰囲気でるだろ! せっかくのダンジョンっぽい戦場だし!
「恥ずかしい……!」
 仁菜は顔を真っ赤にして台座の上で身をくねらせる。
――大丈夫! カワイイよ、ニーナ歌がんば!
「リオンが歌うんじゃなかったの!?」
――俺操作に集中したいしー。ニーナが歌って俺が体動かして操作した方が効率いいでしょ?
 諦めたように響く。柔らかなソプラノ。それは癒しの雫となってフロア全域を覆った。
――万物に宿りし生命の息吹よここに集え。我らに聖なる加護を。
「敵の数が多くなってきましたよ!」
 もう一人の奏者である理夢琉がブルームフレアを放ちながら告げた。
 ランサー、アーチャーを優先的に攻撃しているが、数は減らない、倒しても倒しても湧いてくる。
 そんな敵の数に押し切られてついにミミズク型に突破された。
「任せてください!」
 重圧空間を【B9】に理夢琉は放つ。するとそこに待機していた槇はにやりと笑って告げた。
「OK、飛んで火にいる夏の虫ですよっと」
 弾丸を放つ、放つ、放つ。
「ちょっと加勢にいきますね」
 そう去り際にフリーガーを放ち、燃衣は槇と合流した。二方向から挟み打つように弾丸をばらまいていく。
 背後から感じる風、赤いルネと青いルネが翼をはためかせ抜きさろうと槇に迫る。
「一切合切の…………猶予なく……ッ! 潰れて砕けて消えうせろッ!」
 それに反応して燃衣は銃を投げ捨てた。その拳にて、ルネの腹部を捉える。吹き荒れる燃衣の暴虐。
 それに槇は口笛を吹いて見せフリーガーを取り出した。
「ちょっと早いけど幻想蝶を放ちますね!」
 理夢琉の声が遺跡によく響く。宣言通り。B10の部屋には色とりどりの蝶が舞う。
 その蝶にて意識を奪われていくルネ達。その棒立ちのルネ達をリンカーは手当たり次第に粉砕していった。
(すごい、遺跡の全部を感じる……)
 理夢琉はその不思議な感覚に酔う。
 そんな理夢琉を嗜めるように『アリュー(aa0783hero001)』が告げた。
――感心してる場合じゃない、第二波到達、くるぞ!
――たまってきた敵を一掃するよ仁菜!
 二つの旋律が解け合う。とげとげしい高音も、地に沈むような低温も響き重なり一つの歌と代わる。
――我らに刃を向ける愚か者。光の裁きを受けよ。
 戦いはまだ始まったばかりだが、リンカーたちの勢いは最高潮である。


第二章 ログ・プロローグ

 時は少しだけ前に遡る。 
「……弟者、これ……《タワーディフェンス》じゃまいか?」
「……OK、確かに。これTD系だ……なぁ兄者、これ俺らの知識が……」
「き、きたぞ!神がキタ!《攻略開始》だ弟者!」
 遺跡にいち早くたどり着いたリンカーたちは、海岸にわいた敵勢力の反応を見て即座に戦闘準備に取り掛かっていた。
 作戦立案と連携パターンの確認。やらないといけないことは山ほどあった。
「遺跡。ようやく再調査なのね」
 そんな中『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』が台座に腰を掛けて告げる。
 とある愚神の存在を感じ取って、その表情は暗い。
「ガデンツァでしたか……足元は救われないように気を付けましょう」
『構築の魔女(aa0281hero001)』は『辺是 落児(aa0281)』と共鳴、そう告げた。
 その言葉に沙耶は頷く。
「まぁ、そうすんなりと調べさせてくれる訳ないでしょうけど……危険を犯してでもやらないと、追い詰めるどころが尻尾すら掴めないわ」
「どのように攻めてくるかわかりませんが初動が大切ですよね」
「それにしてもさぁ」
 そんな憂うつな空気を切り裂くように『彩咲 姫乃(aa0941)』が不服そうに告げる。
「遺跡を取り戻したいなら俺たちがいないときを狙えばいいだろうに。なんでいるときを狙うんだあいつは?」
「私たちが好きなんじゃないかしらぁ」
 そう冗談めかして告げたのは『榊原・沙耶(aa1188)』
 沙耶は心臓部の奥へと赴く友人たちと通信機のチェックを行っていた。今回は情報を受け、敵の行動を予測する考察側に回る予定だ。
「いるから攻めてきたのか? 倒されるのが目的なのか? あの赤いの爆弾とか毒じゃねえだろうな?」
 モニターを指さすと、荒れ狂う海から体を持ち上げたのは赤と青のルネ。
「後で遺跡を洗浄とかした方がいいんじゃないか?」
「そうだね、それに、他にも気になることが……」
 むむっと口元に手を当てて、先ほどから同じ場所を行ったり来たりしているのは『アル(aa1730)』
「絶対証拠隠滅しにくるよねぇ海に沈めるとか。その前に、必要な情報は手に入れないと!」
 そう意気込むアルだったが、すでに頭から煙が出そうなほど顔が赤い。
「知恵熱かしら」
『雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)』がアルの額に冷えるシートをぺたりと張り付けた。
 そしてその首に音響く護石をかける。
 そんなアルに『想詞 結(aa1461)』が問いかけた。
「最初に歌うのが誰か決まってるんですか?」
「うーん、僕ではないかな。最初にいろいろ調べたいことがあって」
「そうなんですね」
 アルの答えを聞くと夢見るように瞳を閉じる結である。
「歌で起動する遺跡……なんだか感性に来そうな感じです」
「それは良いけど今回は防衛だからね。ちゃんとお仕事しましょ」
『サラ・テュール(aa1461hero002)』が釘を刺すように告げた。
「わかってるです。終わってから、イメージをめぐらすので大丈夫です」
「そのためにもここはちゃんと無事残さないとですね」
 その言葉に頷いて姫乃は両の拳を握りる。
「ま、グダグダ考えててもしょうがない。まずはぶっ飛ばす!」
「オナカスイター」
 そんな彼女は空腹を訴える『メルト(aa0941hero001)』に脱力し、むなしく微笑むと幻想蝶からクッキーを取り出した。そんなメルトへのご飯タイムが終わると姫乃は改めて咳払い。シリアスな空気を再度身に纏って告げる。
「捕獲してる余裕なんてないだろってのもあるが。一度決めたら行動はシンプルが一番だ」
「いや、それが、できるかもしれないんだよね」
 アルがあっけらかんと告げる。
「ほう」
 面白そうな話に姫乃は身を乗り出した。
「ちょっと、手伝ってほしいな。あ、アルトちゃんにも」
「あ、あたし?」
 不意打ちで声をかけられた『楪 アルト(aa4349)』彼女は装備を整える手をとめて、アルの提案に耳を傾ける。

   *   *

 そして時は戻り現在。
――つまる所、出会い頭に纏めてふっ飛ばしまくればOKってことデスネ」
「そう、上手くいくと…………いいけど」
――だーいじょうぶ。ノリと勢いで何とかなるって、大体の事はね!
「…………そういうもの、かなぁ?」
『ストゥルトゥス(aa1428hero001)』がいつもの調子で明るく告げても『ニウェウス・アーラ(aa1428)』はさすがに難色を示した。
 おそらく大規模作戦でもここまで沢山の敵と戦うこともないだろう。
 そんな敵の洪水が【B10】に押し寄せる。
 威月や杏奈の影に潜み、敵を的確に狙い撃つニウェウス。
――マスター、敵が入り口にまとまってるよ。
「……うん。ゴーストさんで攻撃する」
 立ち込めた霧はルネ達の霊力をこそぎおとしていく。
 その混乱に乗じて。結はアーチャー型を狙った。懐に入り込みスヴァローグで腕を切り飛ばす。劣化した水晶体の体は相当に脆い。
 だがその頭上を通過していくミミズクたち。
「ミミズク形がB9へ! とべないのは本当に辛いです」
 結がその翼めがけて剣をふるう、剣圧が天井をえぐるが……がやはり捉えることはできなかった。
「しかも、あのミミズク赤いです!」
 だがその空飛ぶ翼を、無数の刃が口刺しにした。面を制圧する攻撃の前に会費など無意味。
「タワーディフェンスなんて分からないからねえ……。作戦は任せるよ」
――要するに、敵を奥に通さなければ良いんだろう? 頑張れよ。
 そう物量で押し切ろうとする『杏子(aa4344)』と『テトラ(aa4344hero001)』は、高範囲攻撃でとり逃したミミズクたちを天井に串刺しにして。ニウェウスがそれを焼いていく。
「出し惜しみはしない、最初から全力で行くよ! テトラ」
 悪逆のオーラを纏わせて、刃についた血を払う杏奈。
 上刃で構えられた刀身に、杏子の鋭利な瞳が写った。
 さらに迫るミミズク型。人跳躍で眼前に躍り出るとエクストラバラージからのレプリケイショット。その水晶質の体が無残に砕け、血色の欠片があたりに散らばる。
 それを受けてあらかじめ部屋に散布されていたルミノール試薬が反応。紫色に空間を塗り上げる。
「やはり血液だったのねぇ」
 沙耶はランサー型ルネのチャージを受け止めると、結果を見てほくそ笑んだ。
「だったら、心臓部に血を送ると何かが起こるのねぇ。何がおこるのかしらぁ」
 それ関連の報告はまだ上がってきていない。あちら側にとりあえず報告だけ済ませたが、どうやら忙しそうだ。
「敵の数が減りましたけど! 歌い手さん。どうなってますか?」
 結がそう問いかける。
「…………」
――ちょっと待ってくれ、歌い始めたばかりだから状況がな。
 威月のかわりに火伏静が答える。威月はビキュールダーツをその手に握りながら遺跡全体の把握に努める威月。
 リジェネレーションを全体にかけつつ、響かせる歌はなんとも繊細で。
「おおおおお! 無明さんのアイドルターンですよ」
 燃衣が拳でルネを粉砕しながら天井につきあげた。そんな燃衣の眼前に浮かび上がってくる文字。
『隊長「アイドル云々」とか、騒がないで、下さい……』
「あ、こういうこともできるんですね」
 威月は顔を赤らめながらも歌に専念する。
 正直女子はいいのだ。杏奈、仁菜辺りには聞かれても恥ずかしくはない。だが暁の男性面子が見ているととても恥ずかしい。
 しかし、威月は面を上げる。
 瞳に意思を宿して謳う。
 歌は静かに、透明に、年の割りには大人びた声が遺跡に響き渡る。
 それに仁菜の柔らかな歌声が重なった。
――おい! A10でたまって突入待ってるぞ!
 火伏静が叫ぶと、結が動いた。
「足並みをそろえさせるわけにはいきません!」
 ルネをすり抜け扉を押し開け。廊下の端っこから続々と流れ込んでくるA10側のルネを打ち抜いていく結。
 柄にもないトリガーハッピー。薬莢の山が結の周りにうずたかく積まれていく。
 これが射撃ゲームであれば爽快感があるのだろう。だが、ここで食い止めなければ何が起こるか分からない戦闘である。
 ストレートブロウも織り交ぜ、なるべく敵を散らすように。
 しかし一人で止められるはずもなく。大量のルネがフロアに流れ込んでしまう。
――マァスタァー! 何か意外と忙しいッス。
 ストゥルトゥスが悲鳴を上げた。
「相手の、数が数、だから…………当然、だよね!?」
――デスヨネー。しゃーない、気合入れ直すか!
 あふれ出るルネ。その軍勢を焼くように大火焔が立ち上った。
 ニウェウスの魔術が眼前を覆い尽くす。
「ブルームフレアは誤射しないからいい」
「煙幕に使えるのもいいですよ!」
 燃衣が爆炎を裂いて敵の中枢に切り込んだ。
 しかし敵も同じことを考えていたらしい、交差するミミズク型のルネ数体。
 これの対処は相手にまかせることを瞬間的に判断した燃衣。
 左右からルネの近接攻撃。
 それを杏奈が防ぐ。見事な連携である。
 次いで、燃衣はアーチャー型ルネの頭を撃ち砕いた。


第三章 撃墜数◎

 B9の部屋では阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
「ぬあああああ」
 一気に押し寄せたルネに驚きの声を上げる槇、処理しきれない。そう誰しもが思う数のルネに群がれれ悲鳴を上げていた、そのはずなのに。
 次の瞬間には彼は笑っていた。
「「計算通り」」
 槇の影から躍り出たのは少女三人。
 先陣を切ったのはアルトである、当然『‐FORTISSIMODE-(aa4349hero001)』と共鳴済み。
 そんなアルトがフリーガーファウストの爆撃で敵の動きを制限。およびダメージを与え。
「なんだ、お前らがあたしのこの高鳴りを沈めてくれんのか。簡単に……ぶっ壊れるんじゃねーぞぉ!!」
 爆風で煽られたルネの翼を姫乃がハングドマンでがんじがらめにした。
「わり! 一匹逃がした」
 それでもあきらめない真紅の翼をもつルネは、立った一匹となっても扉へ一直線に突っ込んでいく。
 しかし、そんな見当もむなしく、上空からそのルネを仕留めたのがアルだった。
 残り二体の青いルネには用がない。そう言われていたのでアルトと姫乃はルネを破壊しアルに歩み寄る。
「……たぁ~、んだよ、ドンパチし放題な依頼かと思ったのに……やったら狭いわ、構造訳分からんわでメンドくせーとこだな! ホントむしゃくしゃしてきたぜ……」
 そう闘争本能むき出しのアルトの目の前で麻痺させて動けなくしたルネを横たえたアルは、楽譜を取り出しながら部屋の中のリンカーに告げた。
「ごめんね、試してみたいことがあるから、みんなルネさん達は任せたよ」
 その楽譜にふられていた曲名は『ベラウバ・ヒューバ』そして金糸の姉妹が作り出した楽譜『メモリア』
 革命の声と、記憶。これがルネにどのような影響を与えるか見たかったのだ。
 だが、ここは戦地。容易にそれが行えるはずがなく、ゴゴゴゴと重たく扉が開く音共におかわりがそこに控えていた。
 そのルネに一番最初に対応したのは構築の魔女である。
「さぁ。踊りましょう、一匹たりとも先へは行かせませんよ」
 翼の生えたルネ達の機動力は高い。それが殺到すれば突破されるのは仕方ない。
 だからこそ、狙撃主たちがここに控えているのだ。
 構築の魔女と槇は連携して敵を落していく、翼を撃って体制が崩れたところを狙ったり、お互いのために敵の進路をふさぐように弾丸を放ったり。
 さらに理夢琉が合流する。壇上から降りてワープ機能を使うのもあれなので走ってきたらしい。
「少しでも回り道してくれれば御の字ですね」
 魔女の弾丸がルネを射抜く、砕けて散らばった破片を浴びて後続のルネの動きが狂った、そのルネへと容赦なく弾丸を浴びせる魔女。
「赤いルネは撃破してしまっていいのですよね?」
 そう構築の魔女が問いかけると、アルは親指をスッとたてた。
「赤と青のルネ、何が違うんですかね?」
 そう理夢琉は構築の魔女に問いかけた。
 脳裏にとある記憶がよぎったのだ。赤い血青い血。赤いルネ青いルネ。
――ただの色違いではないだろう、ここを抜かれるわけにはいかない。
 理夢琉は爆炎でルネを天井に叩きつけた、落下したの華奢な体を構築の魔女が穿つ。
 赤い体のルネは溶けるように力尽きた。
 その姿に理夢琉は悲しそうな視線を向ける。
 そんな彼女に代わって構築の魔女はトドメを挿していく。
「やはりですか」
 構築の魔女はみた。砕けた赤い欠片は案の定蒸発して遺跡に吸い込まれていった。
 それを報告すると構築の魔女は一つため息をつく。
「これが何らかのキーにならなければいいのですが。とはいえ、破壊せずに無力化は難しそうなんですけどね」
 その隣で理夢琉は拳を握りしめている。ガデンツアが仕込む悲しみの種。それに対して理夢琉は静かな怒りを感じている。音響く護石を手に、歌う。願う。闘う。 絆が壊れないように 壊されてしまった絆に救いがあるように。壊してしまった哀しみを乗り越える強さを受けとめる……ための。
「ルネさん」
 そんな理夢琉が口ずさむ、希望の歌に。
 ルネの声が乗った。
 はじかれたように振り返ってみればそこにはアルがいる。サンプリングした音声を媒介にルネの声を再現したのだ。
 一瞬潤んだ理夢琉の瞳に、アルは苦笑いを返した。
「ごめんね」
「……大丈夫ですよ」
 なかないで~っとなだめるアルに、泣いてませんと首を振る理夢琉。
 そんな二人も戦場の真ん中であることを思い出して自分の仕事に戻ることにした。
「たぶんある、なにかあるはず」
 アル一心不乱に思いつく手法全てをルネに対して試す。
 アルの脳内を情報が錯綜した。
 たとえば歌詞。例えば演奏、例えば声音。何が一番重要なのか、
 ルネ材料は人間。脳だった。……表面はあの井戸水。
 その時だった。

――アクセス禁止ですよ。

 途端にアルの脳内に『歌を介して』情報が叩き込まれた。それはごみのようなダミー情報ばかりだったが。
 その声にアルは一番驚いた。
「ルネ、さん?」
 正確にはルネクイーンだろう。アルは深追いをやめ、直ちにアクセスを切った。
――プログラム言語かしら?
 雅がおもむろに口を開く。
「え? お姉さんどういうこと?」
――ごめんなさい私も考えがまとまらなくて。けど、もし、ルネという存在が。私達と同じような存在だとしたら。
 雅は思う。歌がプログラムで。ベラウバ・ヒューバがアクセスコードだとしたら。その場合、ガデンツァとは一体どんな存在なのだろう。
 雅は思う、直感的に。たぶん彼女は自分と同じ。
 望まれて作られて、そして……
 だがこれをアルに伝えるには、何枚も壁がある。
 雅がいつまでたっても話しはじめないのでアルはとりあえずルネの破片を採取し幻想蝶へ入れる。
 そんな彼女の耳元へ、仲間たちの考察が聞えてきた。
 たとえば。火伏静の考察。
 この遺跡と同化したとき。良く見ればあちこちが痛んでおり、今にも崩れそうな気がした。この場合で怖いのは『崩落』
 これまでの戦いの経験で、敵は使えるものは何でも使うタイプだと分かった。
 もしも赤いルネが『爆発』を仕掛けるタイプだとすると、これは危険だ。
 自分達が生き埋めになる可能性もあるし、通路がそもそも使えなくなる。
 だが、本当にそうだろうか。とアルは思う。
「敵が多いって? しゃらくさい! あたしが全部片付けるからちょっと台座までワープさせて!」
 そう『フリーガーをばらまく少女』と化していたアルトが声をあげ。ばらばらとあたりに水晶の破片が散らばる。
 その指示に従って仁菜は彼女を転移させ、台座の席を譲り渡した。
「あぁ、いいよ……あたしも丁度歌いたくなってきたところでね……聴効かせてやろうじゃない!! あたしの混ざった二重奏-デュエット-は生優しいもんじゃねーぜえええええ!!」 
 思わず青ざめたのは威月である。
 とたん暴虐の嵐が吹き荒れたのはB10である。
 さらにミミズク型を取りのがそうとしていた。燃衣の眼前に爆雷が突き刺さった。
「え?」
 直後降り注いだのは爆雷の嵐。複製された担ぎ型射出式対戦車刺突爆が同時に発射され、フロアを爆炎が包んだ。
 遺跡全体が揺れる衝撃、だが不思議なことにリンカーたちにダメージはない。敵も激減した、少しの余裕が生まれる。
「じゃあ! この間に台座に向かうね!」
 そうアルは胸の中のもやもやを無視しながら懸命に走った。


第四章 セカンドステージ

「あ、アルさん! こっちよ」
 台座のある部屋に戻ってみればそこでは沙羅が待っている。
 部屋には他の歌い手とあとは『一ノ瀬 春翔(aa3715)』が油断なく部屋の中央で佇んでいて、ちらりと横目でアルをみた、不測の事態が起きた際に出向くためだ。
 ただその対応に『エディス・ホワイトクイーン(aa3715hero002)』は不服らしく、たまになだめる声が聞こえてくる。
「後は私達で最後まで歌いきることになるわ」
 そう沙耶が告げると、アルは元気よくマイクを上に突き上げた。
「まかせておいて!」
 台座は二人を祝福するように光り輝いていた。
 その光の中に体を滑り込ませると不思議な感覚が全身を襲った。まるで世界が広がっていくような感覚。
 アルは目を見開いた、同時に複数の光景を見たからだ。
 過去、今、現在。未来。
 心臓が引き裂かれるような痛み。書斎やパイプオルガンの部屋。
「あ、あそこって式場だったんだ」
 最奥のフロアは見えない。
 赤いルネからしみ出すあれは。毒?
 全身が痛い。痛い、痛い。痛い。
 ではこれは誰の痛覚? 
 横たわる少女のシルエット。心臓の中で誕生を待っている
「お願い! 早く助け出してあげて!」
「どうしたの?」
 沙羅が驚き問いかけた。アルは涙をながして、それでもなお謳うことをやめない。
 気がつけば二人は口にすることなく意思を疎通することができていた。
 沙羅の心は穏やかだ。それでいて流水が流れるように優しげで涼やかで。悪く言えばわかりやすい。
 そんな彼女の心もルネを攻撃するたびに痛んでいるようだった。
 パニッシュメントの連発。それは戦場を有利に変えるだろう。だが胸の痛みは増していく。
 アルはその痛みも感じて沙羅の手を取った。
「でも、私には癒すこともできるから」
 そう途切れてしまったリジェネをかけ直し、ケアレイで傷を埋めていく。
 大規模作戦に相当するほどの戦闘時間、リンカーたちの疲弊は限界に近い。
「お願い、あと少し頑張って。あと少しで何かつかめそう」
 アルは思う、アルは願う。アルは考える。
 この心通じ合うべき台座は誰と誰のものだったのだろうと。
(シンフォニスは2人歌唱が前提だ。……もとは誰が歌ってたんだろう)
 アルは隣を見る、一緒に謳える人。心を通わせる人。ガデンツァにもいたのだろうか。そんな人が。
(一人はガデンツァとして後一人は? ルネ? エリス? ディスペア瑠音? ……ロクトさん……いや。いやいや)

 逆? 唐突にアルの頭の中で響いたその言葉。アルは発想を逆転させる。

(2人で歌わなきゃなのに1人で歌ったから、ガデンツァは何か失敗をした……? 『独奏者』だし)
 その時アルの脳裏に差し込まれたイメージ、それは歌えなかった独奏者の姿だった。世界を壊すことができなかった独奏者の姿。
 だからこそ。世界は闇に飲まれた。
(でも遺跡は「ルネの声」に反応した。やっぱ鍵はルネかな?)

 『ガデンツァとルネ』の声で歌ってみよう声を代える、巧みに、パートごとに。アルは歌う。真実が知りたかった。彼女の物語がどこかにあるはずだった。

 そのアルの歌をガデンツァもきいていた。
「忌々しいと思いますか?」
 ルネクイーンが尋ねる。その言葉にガデンツァは無表情に告げた。
「過去を振り返っても意味はあるまい。それに奴らがあの歌について知りたがるのであればむしろこちらにとって都合がよい。楽譜を埋める材料が見つかるやもしれん」
 最後の戦いだ。そうガデンツァは告げて全ての戦力を残らず投入する。

   *   *

 戦場は刻々と変化を続ける。例えばフロアB10.
 ひゅっと気味のいい音が空を裂いて天井にアンカーが撃ち込まれる。それを手繰り寄せて姫乃は天上の真ん中に陣取った。
 その状態でフリーガーによる爆炎の嵐を【B10】フロアに降り注がせる。
「よく見えるってのは重要だ! ルーカーだって鷹の目よく使ってるしな!」
 これで対応できるのはアーチャー型のみだが、アーチャー型はミミズク型よりヘイトが高い、真っ先に排除されるので何も問題はなかった。
――範囲バフを入れる野郎は、真っ先に潰すのだ!
 ストゥルトゥスが叫ぶとニウェウスも一緒に拳を突き上げる。
「数が多い時に、やられると…………すごく危険、だもんね」
 その言葉に姫乃も頷いた。
「バフを撒き散らす指揮官から潰す、――基本だよなぁ?」
 そうなると当然ミミズク型の脅威にさらされるわけだがそこは暁の面々が対処してくれる。
「……いざ! 闘争せよ!」
「「「おう!」」」
 やっと戦場に勢ぞろいした暁メンバー、新調したばかりのジャケットを羽織りカラーリングを統一して、指揮の口上を目指す。
「一時ごとに、明日ごとに! 終わらぬ夜を、また一つ明かす為に! 体躯に炎を、心に希望を、魂に意志を! 我ら灼陽の暁となりて、今こそ戦場に臨めよ」
 杏奈がまるで洪水のように押し寄せるルネの前に立った。
 トゥーヴォワールグラスに杏奈の"光"の因子をライヴスと共に流し込んで視界の明度を上昇させる。
 杏奈の"光"が示すものは浄化、潔癖、正義――その光とは正反対の性質を持つ、悪意、敵意に満ちた対象を逃しはしないのだ。
「――見せて頂戴、奴らの攻撃を。敵意を――」
 真正面から洪水を受け止める杏奈。ルネの侵入をある程度拒みルネ達の攻撃は仁菜が捌いていく。
――そんな簡単に仲間のところには行かせないよ! 俺達なめんな!
「―そこよっ!」
 気合だ、もはや気合しかない。今日だけで愚神を何体狩っただろう分からない。
 分からなくなってもまだ戦わないといけない。
「おおおおおおおら!」
 姫乃がその群の中心にアステリオスを突き立てるように落下した。
 その体躯に似つかわしくない巨大な武装をふり回し。
 ルネを巻き上げ一撃離脱。
「敵の群れで足の踏み場もない? 敵を足場にすればいいんだよ!」
 そうルネを足場にして飛び、その一撃にてミミズク型ルネを切り捨てた。
 ハングドマンでさらに行く手を妨害して。アステリオスをワイヤーで繋ぎ増した間合いの広さで怒涛乱舞の勢いで叩きつける。
「サイクロンリッパー!」
 そして再度天井に張り付く。
逆に地上に余裕ができたら再度アンカーで天井固定
ロケランによる砲撃体制で撃ちまくる
「上に上がるメリットって回避より攻撃に集中できることだよな」
 その姫乃に弓を引こうとしたルネ達を怒鳴りつける杏奈。
「どこを見ているの?私はここよ」
「所詮は烏合の集まりね!まとめてかかってきなさい」
ダメージが入りそうなときはクロスガードを使用しダメージを軽減する。
 敵の数が多すぎてうちもらしもでてきた。
 構築の魔女は銃身が焼きつくほどにトリガーを引きっぱなしである。
「楽器を持った個体もあまり自由にさせられませんか」
 アーチャーを打ち抜き、ランサーを打ち抜き【B2】に接続されていない通路への翼の侵入を警戒する。
「切替直後に突破されないように何を優先すべきかですね……」
 限界が近い。さすがに眉をひそめる構築の魔女。
 それでも培ってきた経験が、研ぎ澄まされた本能が、動くものの存在を許さない。
 構築の魔女は気配だけをおって上空に銃口を向けた。何もみずに射撃するとミミズク型ルネが天井に縫いとめられる。
 しかも三体。
「GJです! さすが魔女さん!」
 そう軽口をたたいた槇も限界が近かった。マズルフラッシュで焼かれた目。震える手。
 そんな二人を気遣って破壊のスペシャリストが応援に来てくれた。
「やってやるぜ!」
 アルトは即座にカチューシャMRLを展開。爆撃後フリーガーファウストG3による乱射。ジェットブーツにより飛び上がってルネの腹部にアッパーをいれて、ゼロ距離からの射撃である。
「ガデンツァ、それにルネクイーン…………関係ねぇ。あたしにはこれっぽっちも関係ねぇってのに、なんでこんなに嫌な気持ちになっちまうんだ………………」
 そんな、無茶苦茶な戦いぶりに奮起される二人。あと少し、沙羅が告げる。
 すでに敵からの増援は途絶えた。今いる全員を倒せば戦いは終わる。
 そう沙羅は告げた。

第五章 悪意

「……」
 春翔は心臓部真ん前の部屋で武器を片手に佇んでいた。
――……ねえ、おにぃちゃん。
「……何だ
――……つまんない。
「……はぁ?」
 一瞬、仕事だぞっと怒ろうかとも思ったのだが、まぁこの状況では無理もないと思った春翔である。
――なーんも壊せない。つまんないー!
「あのよぉ……」
 春翔はどういえば理解してもらえるか、考えながら言葉を口にする。
「最後の最後に置かれてる駒なんてのは使われねぇのが一番なんだ」
 その言葉に抗議のうめき声を返すエディスである。
「それに、アイツ等がヘマするとも思えねぇ、諦めな」
――……じゃあ、何でこんな事してるの?
「これを仕掛けてきたのは”奴”だ。何をしでかしてくるか分かったもんじゃねぇ」
「だからただの保険だよ、保険。いざって時のな」
 二人は後詰という意味でのジョーカーだ。むしろここまで盤石な体制を取れたことを評価してもいいくらいである。
 ただ、動いてないとソワソワするのは春翔も同じようで、わかってはいるがこの斧を振るいたい衝動に駆られる。
「ま、どうしても暇なら後ろから聞こえる歌でも聞いてな」
――はぁい……。……あれ?
 その時、エディスが軽快した、それが春翔にはよくわかった。
「どうした? エディ……」
――来るよ、お兄ちゃん。
 エディスの楽しそうな声が響く。
 その時、唐突に扉が開いた。
 心臓部の扉がである。
 戦闘が終わったのか、そう思って声をかけようとした矢先、耳をつんざくような高音が響いて、脳が揺れた。
 その直後である。
 丸い何かが飛び跳ねながらこちらに向かってくるではないか。
 それを春翔は、当然のように捕まえた。
――ナイスキャッチだね。お兄ちゃん!
「なんだこれ……、しかも何かもってやがる」
 そう春翔は手のひらに収まる程度の虫っぽい何かから。鍵を引っぺがしたのである。
 そして戦闘が終わった心臓部屋へ春翔は侵入する。
「終わったのか?」
 戦闘は終わっていた。いろいろとモノ申したいことはあったのだが、それはすべてが片付いてからにしよう。そう春翔は全員の集合を待つ。

   *   *
 
 戦闘終了後、眼球形ルネを提出した春翔。
 どうやらこのルネ。自爆機能がないらしい。目玉をぐりぐり動かしながら周囲を眺めるそれは、今回のミッションでかなり大きい戦果ではないか。
 あとは鍵。最奥の部屋の鍵。これが奪われなくて本当によかった。
 そんな事後報告をしている春翔の背後で結が台座をじっと見つめていた。
「サラ、私たちは歌って見ちゃダメですか?」
「…………私は人前で歌うとか恥ずかしいから嫌なんだけど」
 にべもなく断られてしまう結。しかしその視線は台座にずっと注がれていて。
「嫌ならしょうがないですね、今度にするです」
「……ぜったい納得してないでしょ」
「サラが嫌なら私だけでやるですけど」
「わかった、わかったから、もう」
 そうなんだかんだ付き合ってくれるサラに感謝しながら二人は台座に足をかけた。
「お疲れ様です」
 そんな台座の上で歌っていた歌姫たち。彼女たちはひとところに固まって抜け殻のようにあたりをボーっと眺めていた。
「あの台座、使うだけで相当霊力を使うみたいね。疲労だから体調に異常は出ないと思うけど」
 沙羅が告げる。燃衣は結を振り返った。
 共鳴無しで乗って大丈夫かな。そう思いつつ視線を一堂に戻し。もう一度。お疲れ様と疲労をねぎらった。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
  • 暗闇引き裂く閃光
    大門寺 杏奈aa4314
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862

重体一覧

参加者

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 胃袋は宇宙
    メルトaa0941hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • ひとひらの想い
    想詞 結aa1461
    人間|15才|女性|攻撃
  • 払暁に希望を掴む
    サラ・テュールaa1461hero002
    英雄|16才|女性|ドレ
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 希望の意義を守る者
    エディス・ホワイトクイーンaa3715hero002
    英雄|25才|女性|カオ
  • 暗闇引き裂く閃光
    大門寺 杏奈aa4314
    機械|18才|女性|防御
  • 闇を裂く光輝
    レミ=ウィンズaa4314hero002
    英雄|16才|女性|ブレ
  • Be the Hope
    杏子aa4344
    人間|64才|女性|生命
  • トラペゾヘドロン
    テトラaa4344hero001
    英雄|10才|?|カオ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 反抗する音色
    ‐FORTISSIMODE-aa4349hero001
    英雄|99才|?|カオ
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
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