本部

広告塔の少女~ガデンツァ対策 武器編~

鳴海

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2017/07/20 16:52

掲示板

オープニング

● 武器を作ろう。

 ガデンツァ対策委員会。前回は彼女の能力や、事件。そして今後の方針について話しあった。
 現段階から用意をすることができ、確実に効果をあげられるテーマが一つある。それがAGWである。
「トリブヌス級となると倒すのも一苦労だし、弱点を突くくらいのせせこましいことはしてもいいと思うの」
 遙華が鋼鉄のバイザーを弾きあげながらロクトに告げた。溶接機の電源を切り。腕で汗をこする。
「まぁ、彼女も人類の弱点を突いて戦っているようなものだしね」
 ロクトは溜息をつきながらハンカチを取り出すと、頬についた煤をぬぐって落とす。
「人類の弱点?」
「心の弱さ、結束のしきれなさよ」
 噛みしめるようにロクトが告げると、遙華はそれに反論する。
「違うわロクト。人は弱くて完成しきれないから、手を繋ぐことができたのよ、完璧であれば個々で存在していればいいもの。そして私はそれでよかったと思ってるわ」
 その言葉にロクトは微笑みを向ける。そしてバイザーをバチンと下ろしてやった。
「ええ、それは私も同感よ」
 そうして作業に戻った遙華。
 何やら巨大な物体を溶接しているみたいだがロクトから見ればガラクタにしか見えない。
「これが新型AGW?」
「その試作機ね」
 やがて遙華は全てのプロセスを終えたのか、バイザを脱ぎ捨て。PCとその物体を接続すると、何かをインストールし始めた。
 すると。
 ごごごごごごごと音を立てて。その鉄の塊が動いたではないか。
「あら、すごいわね」
 平然と言葉を返すロクト。その顔に影が落ちる。
 見上げるほどの巨体。しかし四肢がありどことなく人間を模している鉄の塊は。ロクトに向かって頭を下げた。
「全長、十メートル。アルスマギカロボよ! これでガデンツァと戦うは」
「………………まさかこれに経費を……」
「私のポケットマネーから出したから安心して」
 つまりは趣味である、本気でこんな物をガデンツァと戦わせようと言い始めていたら二時間ほどお説教だなと思っていたロクトであった。
「とりあえず邪魔だから解体して」
「解体!!」
 遙華と共にショックを受けているアルスマギカロボ。二人は涙を呑んで別れを惜しむ。
「で、本当に私に見せたいものってどれよ」
「ああ、それは弧の資料の水をテーマにした武器群なんだけど」
 そこにはリンカーたちの知恵を結集したAGWの企画書が束になっておかれていた。


●ガデンツァ対策、武器制作
 今回皆さんに集まっていただいたのはトリブヌス級愚神『ガデンツァ』を討伐するための武器を作成していただくために集まっていただきました。
 ガデンツァはトリアイナをはじめとする、水属性の武器で霊力を奪うことができるのではないかと言う情報もありまして。
 ガデンツァ本体に効くかは分からないのですが、ルネには有効であるようですし、このあたりを調べるべきだろうと考えました。
 さらに物理防御が他のトリブヌス級にくらべて格段に低いのでそこをうまくつけれる武器等作れないか等々。
 皆さんのアイディアを何とか形にできないか試すのが今回のお話の趣旨でもあります。
 皆さんにはそれぞれ0~3個程度、AGWの案を出していただきます。
 それを実際に装備して運用してみる、というのが一つ。

 そして、ガデンツァと相対した場合の戦術について考案していただくというのが一つ。あげられます。
 別名、ガデンツァ対策委員会戦闘部門編ですね。
 みなさんの、今までの知識と戦略をここに結集したいと思っています。



解説

目標 ガデンツァやルネに対する有効な武器制作。

● 状況補足。
 今回は皆さんが考案する武器の試作機をあらかじめ遙華が作ってきてくれます。
 それを用いた模擬戦を行っていただくのですが。対象は二種類です。
 参加しているリンカーか。VBSでガデンツァイミテーションと戦うかの二択になります。
 ガデンツァイミテーションは本体より格段に弱いと思いますし、彼女のAIを再現しきれていないようなので。
 このAIを完全なものにするためにも、ガデンツァの好む戦略、攻撃パターンなど教えていただけるとAIが強くなります。
 また、ここで得られた情報に関しては精査して新しいAGWの開発に使わせていただきます、完成度が高く欠陥も無ければ商品化。まぁ半年ほどでリリースできるでしょうか。
 

リプレイ

プロローグ

「いや、だからサボってた訳じゃ……」
『骸 麟(aa1166)』は頭をかきながらそっぽを向く、久しぶりに訪れたグロリア社の廊下は今日もピカピカで綺麗である。
「ほう……つまり今まで報告書がほとんど上がって来なかったのは途中で全部郵便局員が紛失したからと?』
『冰影(aa1166hero002)』はジトッとした視線を麟に向けた。
「……ぜ、全部と言わないけどそんな事が有るかも? と言うか有ったら良いな……! じゃないデスネ……冰影痛い……」
 脇腹をつねる冰影、だがその行いよりも視線が痛い。
「事情は分かった。麟、もう後が無いぞ?いいか、ここに任務遂行の為に丁度いい依頼が有る。これを名誉挽回の……」
「ん? 汚名挽回じゃ?……! ワカリマシタ! 命に代えても!」
 そう勢いよく駆けだした麟を冰影が追って走った。
 今日は新たな武器の試作実験の日である。試案は冰影が出し、麟が戦術を実践。
「……全力でぶっ倒していいんだよな。やってやるぜ……前回は戦域違いで殴れなかったしな……」
 そんな対策委員会に向かう道中『東海林聖(aa0203)』はふふふと不敵な笑みを浮かべて告げる。『Le..(aa0203hero001)』がその背中をばしばし叩いた。
「……ムカ付くのは別に……同意見だけど……主旨、忘れちゃダメでしょ……」
「あぁ、そうだった、新しい武器か…………いいぜ、全力でぶん殴る。何時ぞやのムカ付いた分も倍増しでやってやる……」
 立ち上るアタッカーのオーラ、その念で遥か遠くにいるガデンツァ本体も砕かんとばかりに素振り謎している。
(やっぱりヒジリーは馬鹿だ……やれやれ)
 そんな聖の背中をみてLeは溜息をつく。
「って言っても……一応仮想の戦いだから…………普段より……警戒心は低くていい、のかな。うん、思い切り殴るのは賛成かな」
 そう頷いて二人も会議室に入った。

第一章 その水を枯れさせて。
『卸 蘿蔔(aa0405)』と『レオンハルト(aa0405hero001)』そして遙華は遙華の自室から戻ってくる途中であった。
「わぁ…………アルスマギカロボ、ぱねぇ! かっこいいのです!!」
「そうでしょう、そうでしょう」
「…………また凄いものを作ったね。これが作れるなら多少無茶振りしても平気そうだね」
 そうレオンハルトがにやりと笑って告げると、遙華はとても切なそうな顔をする。
「大丈夫ですよね! 遙華はなんでも作れますよね」
 その言葉に遙華の表情は切なさを増す。
 その遙華の面白い表情が崩れたのは一瞬のこと。
「別にトイレまでついてこなくても…………」
 トイレに行こうとしていた。『黒金 蛍丸(aa2951)』そしてお付きの『詩乃(aa2951hero001)』を視界にとらえた瞬間の事だった。
「あ……」
「あっ」
 二人の視線が廊下上で交差して場に一瞬気まずそうな空気が流れる。
「あ、ほたほたたたたた」
「遙華さん。やっぱり…………僕の事」
「ちが!」
 その二人の間の微妙な空気を切り裂いたのはうら若き乙女の奇声。
「オラオラオラオラオラァ!!」 
『世良 杏奈(aa3447)』である。
 隣のトレーニングルームでガデンツァイミテーションをタコ殴りにしているのだ。
 扉を開けてタオルで汗をぬぐいながら二人に挨拶する杏奈。
 先ほど見た光景に唖然として言葉が出ない『ルナ(aa3447hero001)』
「よし、憂さ晴らし完了!」
 そう輝くような笑顔で微笑んだ杏奈は二人を交互に見た。
「あらどうしたの二人とも、固まっちゃって? 青春?」
「杏奈、あなたも元気ね」
「ええ、だって思う存分ガデンツァを殴れる機会なんてないじゃない?」
 そう告げると、杏奈はVBSルームへの扉を開く。
「中で二人が待ってるわ」
 そう指示された方を見ると『榊原・沙耶(aa1188)』と『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』が佇んでいた。
 特別設置のVBSルーム。そこで二人は早めに来て作業に没頭していた。
 沙耶は作業の手をとめずに御一行様へと向き直ると
「戦闘になった際の対策は立てられても、そのステージまで持っていくのが難しいのよねぇ」
「そうね、逃げ足が速いのよ、ガデンツァ」
 沙耶の言葉に沙羅が答える。
「何とか引っ張り出さないと、後手後手だわぁ」
「それについてはまだ何も思いついてないけどね」
 そう沙羅がない胸をそらして、エッヘンと言った。蘿蔔は憐れむような目を下。
「と、今回も小鳥遊ちゃんには引っ込んでいて貰おうかしらねぇ」
 その時である沙耶が沙羅の背後にまわり、その頭をガシィっと掴んだ。
「なん……」
 次いで沙耶の中に吸い込まれる沙羅である。
(何で共鳴したのかしら)
 そんな疑問を残しつつ、話が先に進まなさそうなので、放っておこうと決めた遙華。
「じゃあ、さっそく試験運用予定のAGW見せてもらおうかしら」
 その言葉で登場したのは『イリス・レイバルド(aa0124)』と『アイリス(aa0124hero001)』
 二人は羽を震わせながら、水が満たされたVBSルームの真ん中に躍り出る、そしてその場にいる全員に告げた。
「……といっても水属性のライヴスを操る武器とかの可能性には期待しているし」
「パニッシュメントの効果を代用できる武器などは必須だろうが」
 イリスの言葉にアイリスがこたえる。
「基本的には攻撃面で苦労はあまりしてないよね」
「まぁ、どちらかというと防御面だろうね」
 VBSからのドローエンブルーム。
「『お気に入りの武器を教えて』にて私たちは音を伝える空間自体を叩くという技を身に着けてね」
 今回はアイリス主体の共鳴らしい。閃光と共に二人は一つとなり、水の上に立った。
――その発想から空気自体を乱す武器の考案だよ。
 そんな二人の目の前にガデンツァが登場する。その手からドローエンブルムを放つが。
「芭蕉扇は……ただのイメージだな!」
 その手の扇をふり風を水面に叩きつけると、巨大な水しぶきと共に風が遮断された。
「あれはとてもいいんじゃない?」
 沙耶が告げた。
「歌対策としては、真空にして音を遮断してしまえばいいもの。そのためのAGWとして有効だと思うわぁ」
「なるほど」
「まぁ、私達の歌を含めた強みも無効果されてしまうけど、一度限りの切り札って所かしらねぇ。空気の振動が出来なくなれば、シンクロニティデスとか邪英化のスキルにも効果があるかもしれないし。」
 続いてアイリスが懐から取り出したのが。
「麻酔銃だね」
 アイリスに銃というのがなんだか不思議な感じがするが、本人はわりとなれた手つきでそれを取り扱って見せる。
「『楽園と目覚める少女』でウレタンで事前に固めた水分はルネ化できなかった」
――水分を固めてしまう薬品か何かを入れた注射器を撃ち出す銃を考案するよ。
「暗殺、毒殺、謀殺は何時の時代どこの世界でも厄介なものだよ」
「それ、ガデンツァにとって毒になるものを探そうっていう発想だよね?」
「喉を潰しても関係なく歌えても体が固まれば満足には歌えないだろうしねぇ」
 割とえげつないことを考える二人である。
 そんな二人が水しぶきの向こうのガデンツァにその手の銃の引き金を引くと。ガデンツァの肩と足あたりが白い意思のような塊となって爆ぜた。
「次は護りの面での提案だね」
 その足をトントンと水面に叩きつけて見せるアイリス。
 よくよく考えればこのVBSルーム、水で満たされているので水面に浮かんでいるのはおかしい。
 次いで緑色の光がアイリスを下から照らした。
「『【絶零】氷上のワルツ』で登場した汎用ALブーツを改良してもらったよ」
――あれは、水を吸収し強化するという技術を使ったAGWだったよね? 相手の再生用の水分を分捕りつつこちらを強化する」
「ああ、吸い分の横取りなのね」
 遙華は頷いた。
「返り血で再生とか地味に厄介だからね」
「私たちは水自体をどうにかしようと思って」
 その時である。水しぶきをあげながら蘿蔔がアイリスの隣を駆けた。
「軽快に滑るねぇ」
 そう、いつものようにはははと笑うアイリス。
「意外と好きかもです」
 蘿蔔はそう答えると。その手に握られた歪な銃をガデンツァへ構えた。
「アイテム名……ハイドロブレイザー」
「かっこいいわね」
「でしょう?」
 遙華が告げると、蘿蔔はぴょこぴょこジャンプして遙華に手を振った。
――因みに名前に困っていたら神様の声が聞こえのですって。遙華本当にこんなネーミングで大丈夫か?
「大丈夫よ、問題ないわ」
 レオンハルトの言葉にそう答えると蘿蔔は武器説明を再開した。
「水属性の武器でルネの霊力を奪える可能性を利用しそこへ更に高熱の物体を与えることにより水蒸気爆発を起こすことが目的です」
 告げて蘿蔔はトリガーを引く、直後二色の弾丸が吸い込まれるようにガデンツァへ伸び。大爆発を引き起こす。
「力奪われた上で攻撃に利用されたらいやだなーって、思って」
 規模が大きいと周囲を巻き込む危険性があるので、小規模な爆発をちまちま起こせる銃器の予定らしい。
「それぞれの性質の攻撃を2回した方が確実な気もしますが…………一度にやらないと弾を押し出されますし、あとは本体に食い込ませる火力に弾に弾を充てる命中精度と…………ちょっとハードル高いかなーって」
「まぁ、そこはおいおいね。技術があるなら機能を分離させて二丁拳銃にしてもいいし、あ、あとは……」
 その時である、左右から音の風がアイリス、そして蘿蔔を襲った。
「何事かな」
 にやりと笑う沙耶である。
――ガデンツァが強くなった?
「あらぁ。さっそく効果がでてきたみたいね」
 そう得意げに告げた沙耶は高らかに告げた。
「砂漠の戦闘以来、傲慢さが消えて慎重になって大きな戦闘はないわよね」
 ただ、今の思考は慎重かつ手堅い。
「隙を突く奇襲に不利と悟れば躊躇わずに撤退する。
 超近接戦は不得手だけど中距離が強い。
 そして精神を揺さぶり甘言で惑わす手法を好む。
「って感じのデータを組み込んでみたわぁ。どうかしら」
 沙耶はそのAIを強化することに専念したらしい、先ほどとは全く違う威圧感を放つガデンツァに二人は構える。
「ははは、望むところだよ」
 アイリスは武装を切り替えて前へ。さっそくそのAIがガデンツァ足るか確かめようと水面を駆けた。

第二章 音を断つ

「ん~」
『ナラカ(aa0098hero001)』は壁の花と化していた、場所は会議室。先ほどから仏頂面な彼女を見かねて『八朔 カゲリ(aa0098)』は声をかけた。
「一体どうした?」
「いや、覚者よ、この会議どう思う?」
「建設的だと思うが?」
「相手の力を対策して勝つよりも、相手の力を上回る力を身に着けた方がよくはないか?」
「それもしてるんだろ? ただ何が何でも勝ちたいからどんな手でも使う。まぁかっこよくはないが、それも努力だろう」
「二人ともなにしてるの?」
 そんな小難しそうな話をしている二人に『蔵李・澄香(aa0010)』は恐れることなく話しかけた。
「さぁ、私たちの番ですよ」
 そう『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』が重たそうなパイルバンカーを装備すると二人をVBSルームに案内した。
「武器名は、パイルバンカーAGです」
「地味だね」
 ナラカが告げる。
「それは何の略? カッコいいんでしょ、きっとカッコいいんでしょ」
 遙華が身を乗り出して尋ねた。
「アンチガデンツァです」
「アンチグライヴァでもない」
「くらっち、くらっち。私がお名前考えてあげてもいいですよ」
 ピヨピヨと歩み寄る蘿蔔。伸ばされた腕をふりほどきクラリスは高らかと告げた。
「蘿蔔もどっこいどっこいだから!!」
(自覚はあるのだな)
(ネーミングセンス悪いって自覚あるんだ…………)
(敬語外れてる。うらやましい……)
 さっそく使用して見せる澄香。
 仮想敵はもちろんガデンツァ。
「まずはパイルを全て装填」
 カションカションと軽快な音がしてカートリッジが装填されていく。
 それが炸薬であり音の弾丸となる。六本の杭が全て収納され、パイルバンカーは蒸気を吹き上げ目覚めを告げた。
「この現代技術の粋を集めたパイルバンカーは」
 クラリスが駆けた。銀色の髪を振り乱し地面を蹴る。
―― 杭にはイミテーションの欠片を使い測定した、固有振動数を発生させる機構と、体外衝撃波結石破砕装置
「尿管結石砕くアレですね」
 蘿蔔が補足する。
――それ! を応用、収束超音波を発する機構を内蔵。
 クラリスは着地、ガデンツァの背後を取って振り返る。
――質量兵器と見せかけて指向性をの固有振動と音波による複合破壊を叩き込む。
 ガデンツァイミテーションの体にひびが走った。
「これは、水晶の体を砕くことだけに特化している」
――体内にいる寄生ルネをパニッシュメントが無くとも破壊、または損傷による機能不全にすることが隠し目標だけど。
「そこまでは難しかったのよね」
 遙華が残念そうに告げる。その矢先放たれる高周波。
――32.7kHzで振動する水晶発振子が聴覚を狂わせる理論を使ったジャミング装置。
「歌声が触媒の精神干渉スキルを、受け手の聴覚が狂うことで逆に軽減させる」
「「これで、ガデンツァの歌も聞こえない!!」」
 そして最後に射出された杭は腹部からえぐるように貫通し天井に突き刺さった。
「直撃せずとも、何かに突き刺さり、バッテリーが尽き停止するまで周辺に32.7kHzを発生させ続ける」
「どうでしょう遙華」
「かなりいいできね。問題は使用コストの高さだけど」
「もし無理ならパイルバンカーとSWって分離させてもいいよ?」
「それも一考ね。両方を想定して開発を続けるわ、そう言えばその杭にはルネの体組織と同じものが使われているのよ」
「え?」
 澄香は思わず首をひねった。
「みんなのおかげで完成したのよ! ルネのボディーを再現する技術が。みんながガデンツァの施設からいろいろ持ち出してくれたり、澄香が欠片を生み出し続けてくれたおかげよ!」
 その時である、背後でごごごごごごと音を立てて扉が開く。
 その扉からまず入ってきたのは蛍丸。
「こちら紹介します。ガデンツァ絶対倒す連盟の肩で。去る人のいとこさんです。」
 登場したのは『火蛾魅 塵(aa5095)』そして小脇に控えるのは『人造天使壱拾壱号(aa5095hero001)』
「「こ……こわい」」
 蘿蔔と遙華は抱きしめあって震える始末。
「真打は遅れてやってくるってな」
 塵が言った。そしてひとつ咳払いをすると早速本題に入る。
「…………つまりよ。アイツら柔らけぇんだし『攻撃力』方面じゃあんま武器要らねーよな」
「大事なのぁ『敵の得意な中距離戦を潰す、盤面を有利にする武器や、防御寄りの武具』ってェワケっすネェ~?」
「そこで開発したのが。アルマギとの共同開発『失楽堕典アルスマギカ・ダムド』です」
 蛍丸が補足をいれる。
「なんと範囲攻撃が可能だ!」 
 唐突に蛍丸へ攻撃を浴びせる塵。
「蛍丸! 何するのよ!」
 絶句する遙華、しかし蛍丸は傷ついていなかった。
「『祈りの御守り』のようなものを作ってもらいました。けれど失敗だったみたいですね、痛いです」
 黒焦げになった蛍丸が姿を現す。
「もう! あんまり無茶しないでよ」
 そう遙華が蛍丸の頬をハンカチでぬぐった。
「やっと普通に話してくれましたね」
「あ、そうね。ふふふ、なるほど、こうすればよかったのね」
 そう告げると蛍丸は手のひらに握った水晶のお守りを遙華に見せる。
「シンクロニティデスの対策になるかと思ったんですけどね。あ、遙華さん考えてくれましたか? シンクロニティデスの耐久実験」
 蛍丸の提案と過去の資料の集積によって。シンクロニティデスの原理や威力の度合いについてはわかってる。
「けど、完全に解明するには至ってないわ。ごめんなさい」
「もう一度、シンクロニティデスを受ければ何か糸口がつかめると思ったんですけど」
 考え込む二人、その背後で陣が一人笑っている。
「ハッハ、俺ちゃんソフィスなんスけどね~」
 この日遙華の中で塵の評価が確定した。
「あとはよぉ『ドレナージダガー』」
 それは一件すると
 15cm程度の芯だけの短剣に見える。だが実際はトリアイナの要領で水の刃を生成するサブウェポン。懐刀。
またその液状ライヴスを塚より排出する機構も持つ
 最大の利点は非常に軽量で【SW】として使えること、吸水に特化し人間には作用が薄い事があげられる。
「そして『G・バニッシャー』」
 それはスキル『バニッシュメント』を擬似発動する兵器である。対象に貼り付けるだけ。
「ただ、これは開発段階でうまくいかなかったのよね」
「最近、バニシュが半ば必須と化して来るからよぉ。ないときついぜ」
「それは私もそう思ってるわ……」
 遙華は苦々しげな顔を見せた。



第三章 牙を研ぐ。

 対策委員会はまだ続く、水や音に関するAGWの紹介は終わったので今度は陸地でも使える武器だ。
 先ずは聖がプレゼンターとなる。
「『クローバンカー』だ!」
 そう聖はパイルバンカーを装着。
「パイルバンカーベースにロケットアンカーを装着したモノ。開閉と杭打ちの機構を持ってる、グリップ部で操作が可能。通常の物より籠手が大きく受動防御だぜ!」
 そう親指を立てて、その杭を出し入れして見せた。
 目の前にふらふらと現れるガデンツァイミテーション、それを見て聖はさらに不敵に笑うと、そのバンカーをガデンツァに叩きつけた。
 爪を閉じた状態で『爆導索』を中に仕込み、杭打ち後、爪を広げ爆破を試みる機構となっている。
 だがその爆炎の向こうでガデンツァは立っていた。
「そう来なくっちゃな!」
 聖の表情が完全に戦闘時の者に代わった。
「……っし、やるぜ! ルゥ!!」
――……調子乗り過ぎないようにね……。
 その右腕のバンカーへ霊力を注ぎ込む聖、ヴァルリア戦で体得した『砕くこつ』に基づいた強力な一撃。
 砕けた破片が空を舞う。
「まだだ、全力で、テメーだけは殴り切るッ!!!」
――……フラストレーションぶつけてるように見える…………わりに無駄な動きが無いから質が悪い……。
 Leの厳しい意見はあとで聞くとして、繰り出される連続攻撃。さらに幻想蝶から新たな武装を召喚。
『ブラッドハンガー』吸血茨を刀身に纏った大剣。敵を斬り付ける事で相手のライヴスを「血」に変えて削り取り、蓄積したライヴスを使い追撃を行えるというコンセプトの武装。
「砕け散って舞いやがれッ!! 千照流・破斥……渦血!!」
 赤く染まったガデンツァを、破片も残さず砕ききると、目の前にカゲリが躍り出た。
「おまっ!」
 あわてて血に染まる大剣を前に突き出すと、カゲリもそれに刃を合わせる。空中に錆が舞った。
「らしくねぇ」
「何がだ?」
――武器か? これは『天剣「光明」』
 ナラカが考案した武器の一つ。びた直剣。左側ステータスは低いが右側ステータスが充実しているらしい。
――これはリンクレートを消費して、能力が上がる武装なのだよ。
「そうじゃねぇ、何で切りかかってきたんだって聞いてんだよ」
 聖は獰猛に笑って見せる。
「いや、こいつがな」
――信を置く友が、あれほど苛烈に刃を振るっていれば、手を貸してやろうとなるのは当然のことだよ。
 そう刃を弾いてナラカは告げる。
「私が邪英化させられないとも限らない…………」
 低いトーンで再び告げる。
「彼女は邪英化スキルを持っていることだしね」
 その実、彼女の試練病とも言うべきものが発症してしまっただけである。
 部屋の端の方で切りあう二人、そんな二人を置いておいて次に手を挙げたのは杏奈である。
「私はSWメインで考えてみたよ」
 そう二本の指で自分の瞳を開いて見せた。そこにはまっているのはコンタクトレンズ。
「『【SW】エイミング・アイ』よ」
 そして杏奈はカゲリと聖を攻撃した。
「効果としては部位攻撃を行った際の命中の減少値を半減する。けど普通に命中アップにも使えそうね、次に毒びし」
「危ないだろ!!」
 怒った聖がこちらに駆けてくる。その通り道にはまきびしがころがっている。
「これ。さすがに引っかからねぇからな」
「そう? あとは『【SW】マジック・コンバート』」
 ダメージコンバートを全ての武器で使えるようにしたものらしい。
「さあ覚悟よガデンツァ! ボッコボコにしてやんよ!!」
「……さっき思いっきり殴ってたじゃない」
「そうよ、もう在庫切れよ」
 遙華があわてて告げる。
「在庫切れかよ、だったらこれ何に試せばいいんだ?」
 そう麟が取り出したるは『隻手音声』
 反位相波動キャンセラーを備えた胸甲で。通常の音波キャンセラーの反位相波動発出技術を応用して音波及びライブズ波動の無効化空間を周囲に作る。
「ライブズ通信技術でライブズ波動の位相解析技術を利用した。また無効化空間は出力を調整して絶えず揺らいでいるようにして中心を推測出来ない様に対策も取った」
「開発費がすごくかかったけどね」
 凛と共に入室したロクトが告げる。
「時間がかかったと思ったらそんな難しいものつくってたのね」
「あとは、これを連れてくるためよ」
 そうロクトが入り口を振り返るとアルスマギカロボがいた。
「そんな、まさか」
「次に考案するのが『てき倒浄瓶』」
 ただのライフルグレネードに見える。但し、弾頭部分はペットボトルや瓶を装着する為のアダプターとなっていて、そう言ったものを擲弾筒の有効範囲に投擲出来る機構だ。
「アダプターを開発すれば大きさと形状が空力的に問題なければ何でも飛ばせる。
リンカー相手だと命中させて道具の受け渡しも良い。HOPEまんとか小さい装備とか」
 そう麟は告げると重心をアルスマギカロボに向ける。
「骸枯水撃! この一撃にオレの昼飯分のライブズを込める!」
「ちょ! ま!」
 遙華が止める間もなく、アルスマギカロボは吹っ飛んだ。
「爆発落ちなんて最低よ!」


エピローグ
「ふう、中々面白い仕事だったな……聞いて地獄見て極楽? さて汗もかいたし帰って風呂入るか」
「……これが報告書の上がって来ない理由か」
 そう麟は冰影を誘って会議室を後にした。
 その会議室ではさめざめと涙を流す遙華を囲ってみんなでコーヒーをのんでいる。
「うう、アルスマギカロボ」
「ははは、また作ればいいじゃないか」
 アイリスにそう慰められる遙華である。
「あ、遙華そう言えばまだお話ししたいことがあったんです」
 蘿蔔が告げる。
「song is revivedに出てきた実体のない無敵な敵を実体化? させる詩の楽譜これの応用でガデンツァの内部の霊力?を固定するのに利用できないか考えてみる」
「それはできないと思うのよね」
 スッと立ち直り遙華は言った。
「ガデンツァはいわばその体にガデンツァというデータをインストールしてるのよ、音による情報伝達、ダウンロードとインストール。それに耐えうるのはガデンツァだけで、他のルネに関してはできないはず」
「それとぉ、春香ちゃんに言っていた事だけど……」
 沙耶が告げた。
「ドロップゾーン内でも感知できる発信器、特定のライヴス限定でもいいから作れないかしらねぇ」
「それは私も考えてたよ」
 澄香が告げるとクラリスが通信機を差し出す。
「通信機器『goTenna』こちらをグロリア社仕様にして、ドロップゾーン内でも通信機器が使えるようにできませんか? スマートフォンなどの電子機器による情報伝達ができればかなり有利になるはずです」
「このままじゃ、相手が攻めてきた時に迎撃をする事しか出来ないわ」
 全員が頷いた。
「そして、攻めてくる時は勝算が確実になった時。それではあまりに遅すぎる。だから、誰かが懐に潜り込むでもしないと無理だと思うの。
 自己責任で貴方達に責任は取らせないから、考えておいてねぇ」
「あなたの影響ね」
 遙華が少し冷たい目で沙耶を見た。
「春香が、インプラント手術を受けたいなんて言ってきた」
「拒絶できるわけ、ないじゃない、それは呆れるほどに有効な策で」
「承諾したの?」
「したわ……。友達にそんな残酷な施術をするなんて、幻滅した?」
「言い訳はしないわ。言い訳はしない……本当なら止めるべきなのに、そんな危険なことはやめなさいって」
 場の温度が一気に下がる、そんな中、澄香の膝の上で手を上げる少女が一人。
「本題から外れる気がしますが……放置するわけにも行かないでしょう。これ」
 イリスは場の空気に流されない真面目っこである。
「明らかに異質な気配を放っていたからねぇ」
「ところで生放送してたけどだいじょうぶなんです?」
「影響はないわ。たぶんこれ私達がいくら謳おうとも明確な影響は出ないはずよ」
「ガデンツァ専用の歌か……」
 澄香がふむと唇を抑えた。
「まぁ、この楽譜にはまだまだ興味があるので読み込ませてもらうつもりだがね」
「楽譜と言えば」
 今度は澄香が声を上げる。
「ルネさんの残した楽譜。これ、たとえば『小説「白冥」』のように想いが宿ったものってことはないかな?、死にたくないと泣きながら書き上げた楽譜には、彼女のライヴスが宿っているんじゃないかって……」
「それもないわ。ルネの残した曲にも楽譜にも彼女の霊力は感じられなかった。それが宿っているとしたら、あの欠片よ」
 そう遙華はコーヒーに口をつけて全員に向き直る、会議はまだまだこれからである。そう視線で語りまた、口を開く。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 捕獲せし者
    骸 麟aa1166
    人間|19才|女性|回避
  • 暗器インストラクター
    冰影aa1166hero002
    英雄|25才|女性|カオ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 悪性敵性者
    火蛾魅 塵aa5095
    人間|22才|男性|命中
  • 怨嗟連ねる失楽天使
    人造天使壱拾壱号aa5095hero001
    英雄|11才|?|ソフィ
前に戻る
ページトップへ戻る