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れっつごーとぅーSUSHI
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寿司とWASABIの相談
最終発言2017/07/03 23:42:50 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/07/05 22:58:46
オープニング
●お願い
「顔面にわさびが掛かっても平気な人を知らないか」
わさび。水がきれいな谷川の浅瀬に生える多年生植物。あぶらな科わさび属。日本原産。食用。という事は知らなくても、間違っても顔面に掛けてはいけない代物である、という事ぐらいは誰でも知っているはずだ。多分。
では、今目の前にいる御仁はどうしてそんなクレイジーな質問をしてきたのか。オネェバーかぐやひめんの店主、キャシーはそんなクレイジーにも一切動じず「まあ、一体どうなさったの~ん?」と華麗に質問返しをした。
要約するとこうである。
この御仁、とある回転寿司チェーン店の店長をしているのだが、先日わさびにイマーゴ級従魔が取り憑き、客の顔面にわさびがアタックするという悲劇が起こった、らしい。そのイマーゴ級従魔は退治されたようではあるが、一度そういう事が起こると遠退くのが客足である。結果、ここ数日で売り上げがガタ落ちし、本社からなんとかしろとせっつかれている、らしい。
「というワケで、お寿司を食べて『ここは大丈夫なお店です』ってPRしてくれる人が欲しいそうなのよ~ん。お礼にお寿司食べ放題にしてくれるんですって。だから」
「ノーでござる」
すっぱりと。
実にすっぱりと、ガイル・アードレッド(az0011)は否定の言葉を口にした。いつもにこにこ元気いっぱい、「夢は世界一のNINJYAでござる!」「真名(ソウルネーム)はサルトビ“NINJYA”ダイナゴンでござる!」が通常運転のガイルが、今まで見た事もないような形相で首を激しく振っている。横に。
「ノーでござる。ノーでござる! SUSHI! WASABI! それだけは拙者ノーでござる!」
「ガイルちゃん、好き嫌いすると立派なNINJYAになれないわよん?」
「ミーはSUSHIとWASABIはノーサンキューのNINJYAになるからいいのでござる! とにかく、SUSHIとWASABIだけはノーでござる! いくらオネェさん殿の頼みでも!」
デランジェ・シンドラー(az0011hero001)の声にも腕で大きくバツを作り、ガイルは未だかつてない程の全力を以て嫌がった。ガイルは生魚がダメだった。WASABIはもっとダメだった。それなのにSUSHIを食べに行くなど死亡フラグ建設まったなし。
だがしかし。
「も~う。ガイルちゃんワガママ言わないの。ほら、一緒にお寿司に行くわよ~ん」
ひょいと。
ひょいと、米俵のように担がれたガイルに逃げる術など微塵もなかった。なんたってキャシーは身長192cm、体重はヒ・ミ・ツ。とりあえず、キャシーが本気を出せば共鳴していないガイルに逃れる術などありはしない。
「あーっ! ノーでござる! ノーでござる!」
「永平ちゃんと花陣ちゃんも行くわよ~ん。今日はおばあちゃんが町内会でいないから、お夕飯はお寿司屋さんで頂きましょう。あ、それとエージェントちゃん達も呼ばなきゃね。久しぶりに会えるの楽しみだわ~ん」
キャシーは李永平(az0057)と花陣(az0057hero001)にも声を掛け、のしのしと玄関に歩いていった。身長192cmの上からNINJYAの悲鳴が木霊する。
「ノーでござる! ノーでござるっ! あああああああ!」
●場所情報
・とある回転寿司店
・庶民と家族連れ御用達の回転寿司チェーン店
・味は庶民と家族連れ御用達の回転寿司チェーン店レベル
・全部WASABI抜きの寿司/自分でWASABIを足して食べるスタイル
・基本はレーンで流れてくるお寿司を取って食べるスタイルだが、電子パネルで注文する事も出来る
・本日貸し切り(PCとNPC以外の客はいない)(店員は数人いる)
・18時半に入店、遅くても22時には解散予定
解説
●やる事
・SUSHIを食べる
・店の安全性をPRする
●メニュー
・回転寿司屋にあるものなら大体ある。お寿司以外にも麺類、お味噌汁類、飲み物類、サイドメニュー類、デザート類もあり/プレイングに食べたいものを自由に記入して下さい
・ただし「これは流石にないだろう」というレベルに珍し過ぎるもの・高価過ぎるもの・突飛過ぎるものは却下になる場合があります
・食べている様子は録画されており、編集して「大丈夫動画」として流される可能性もある(動画として流されたくない方は記入お願い致します)
●NPC
ガイル&デランジェ
お騒がせNINJYA&忍ばぬASSASSIN
ガイルはSUSHIがダメ。WASABIはもっとダメ。玉子やツナやコーンやハンバーグ寿司の類しか食べない
デランジェは基本なんでも食べるが、まぐろ、サーモン、蒸しエビ、デザート類を好む
李永平&花陣
忠義の悪童&車椅子の悪童
二人とも寿司ははじめて。最初はWASABIに鼻をやられるが、その内慣れて全制覇を目指そうとする
なお、永平の背中を触る/見るのはNG
キャシー
真っ赤なドレスのオネェさん殿
なんか大人っぽいものを食べる
●PL情報
・20時頃にイマーゴ級従魔が発生/WASABIパックに取り憑き所構わずWASABIを噴射する
・WASABIにはライヴスが籠っているため、共鳴状態でも目に入った場合2の固定ダメージを負う
・目以外の場所にWASABIが付着した場合、場合によってはダメージを負うかもしれない
●その他
・使用可能物品は装備・携帯品・寿司屋にある備品のみ
・NPCは特に要望がなければ描写はなしor最小限
・未成年の飲酒・喫煙描写は出来ません(見た目が若い成人であればOKです)
・店内は綺麗にお使い下さい
・一度取ったものは必ず食べきるようにお願いします
・NG描写のある方はご記入お願い致します
リプレイ
●祭り開始
「今日はよろしくお願いします」
「よろしくおねがいしますもふ」
多々良 灯(aa0054)はワサビ対策に伊達メガネ、むすび(aa0054hero002)はサンライゼス・グラスでわいるどに決めて礼儀正しく挨拶した。18時25分。開始5分前の無情さに春日部 伊奈(aa0476hero002)が拳を作る。
「朝霞~、まだかよ~」
「もうちょっとだよ伊奈ちゃん。桃源郷まで、あと5分だよ!」
大宮 朝霞(aa0476)が励ますが、実はこの2人先程から全く同じ会話をしている。
10時、連絡を受けた朝霞は
「たったいまキャシーさんから連絡がきました」
ときりっと報告し、伊奈は
「お寿司の食べ放題!? いいなっ! 行こうぜ朝霞!」
ときらっと目を輝かせた。
そして18時15分、お昼ご飯を抜いた二人は誰より早く到着し、
「朝霞~」
「桃源郷まで、あと15分だよ!」
を繰り返し、今に至る。
「最近行ってなかったから楽しみだ。前にワサビ食べ過ぎて止められたから行きづらくてな……」
「お寿司が食べれる依頼もふ? たくさんたべるもふ~!」
灯とむすびも期待を募らせ開店を待っていると、「皆様ちゃんお待たせ~ん」と店からオネェが出現した。突然のオネェに数人が肩を揺らす中、朝霞と伊奈が進み出る。
「キャシーさん、こんばんは! 今日はよろしくおねがいしますね」
「おーっ! すっごいドレスだなぁ。私も着てみたいぜ」
「きっと似合うと思うわん。着たら見せて頂戴ねん」
「キャシーお姉さん……久しぶり……」
おずおずと、木陰 黎夜(aa0061)が声を掛けた。キャシーはその場に座り込み黎夜へと目線を合わせる。
「こんばんは黎夜ちゃん。来てくれて嬉しいわ~ん」
「お姉さんとご一緒したいんだけど……いいかな?」
「もちろんよ~ん。皆様ちゃんも好きな所に座っていっぱい食べてね~ん」
キャシーの言葉に一同は移動を開始した。途中ガイルと永平を発見、朝霞が「おや」と右手を掲げる。
「ガイルさんや永平さん達も来てるんだねぇ」
「知り合いか? 朝霞」
「有名人さん達だよ。私達も負けないように、知名度を上げていかないとねっ」
朝霞の答えに伊奈が「へぇ~」と声を漏らした。むすびが「にんじゃの人がいるもふ~」と興味津々に瞳を向け、私服姿の無月(aa1531)がガイルと永平に近付いた。
「ガイル君、久しぶりだな。相も変わらず息災なようで何よりだ。李君も久しいが私の事は覚えているか? 今日は食事を楽しもう」
「無月殿、ヨロシクでござる!」
元気いっぱいなガイルの横で永平は「あの時の」と呟いた後「ああ」と軽く声を返した。ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001)はデランジェへ歩み寄り爽やかな微笑を浮かべる。
「デランジェ君も元気そうだね。良ければ今日はボクがエスコートするよ。綺麗な女性と一緒の方が食事も美味しくなるからね」
「あらお上手。それじゃあご一緒させて頂くわん」
「ご、ざ、るーーーー!!」
嬉し気な女性の声に何事かと振り返ると、ユフォアリーヤ(aa0452hero001)の突撃にガイルが押し倒されていた。喜色満面の相棒に麻生 遊夜(aa0452)が首を振る。
「相変わらずブレないな……まぁ、久しぶりだったしな」
「あぁ、君がイツキの"赤"だね」
一部始終に唖然とする永平をシセベル(aa0340hero002)が興味深げに覗き込んだ。突然のシセベルに永平は一瞬警戒するが、シセベルは構わず花陣へと視線を移す。
「そして花の子! 噂はかねがね。うん、いい色彩(いろ)。私はシセベル。シセベル・ノイシュタイナ。できればこれからもよろしくね」
「あ、ああ」
「よろしくな、ポニテのねーちゃん」
戸惑いつつ永平が応じ花陣は快活に手を差し出す。その様子をジト目で佐倉 樹(aa0340)が眺めていた。
「スシ! 魚類! すなわちシーフード!! 久々に小麦粉以外を摂取出来ると聞いて! しかもスシ!!!」
「……何か、それに不満でも……?」
喜色全開の稍乃 チカ(aa0046hero001)に邦衛 八宏(aa0046)は低い声で呟いた。ホットケーキ開発に勤しむ八宏の攻撃、もといホットケーキ三昧の日々にチカはすっかり辟易していた。そこに訪れた寿司食べ放題にチカは相棒を伴い意気揚々と参加したのだ。
様々な思惑を胸に、食べ放題という名の祭りが始まる。
●実食開始
「おっ! 動画を撮るのか? それじゃあお上品に食べないとなっ」
背筋をピンと伸ばす伊奈とカウンターに横並びし、朝霞は臨戦態勢を整えた後相棒に問い掛ける。
「伊奈ちゃん、なに食べる? このパネルで注文できるんだよ」
「マグロ! マグロにしようぜ!!」
早速中トロ2皿注文。程なく周ってきた皿に伊奈が元気に手を上げる。
「はいはい! 私! 私がお皿取るからな!」
「伊奈ちゃん、落ち着いて! 大丈夫、冷静にゲットするんだよ!」
「わかってるって! ……ほらっ! 取れただろ!」
両手に掴んだ2つの皿に伊奈は得意げに鼻を鳴らした。対し朝霞はパチパチと両手を鳴らす。
「よく出来ました! じゃあ私はワサビを取るね」
ワサビを塗って準備完了。伊奈がしゃきーん☆ とお箸を掲げる。
「それじゃ、いっただっきまーす!」
「待って! 伊奈ちゃんっっっ!! お寿司はね、手で食べるんだよっ! ココは譲れないよっ!」
勢いよく迫るお箸が直前でぴたりと止まった。伊奈は箸を伸ばしたまま朝霞の言葉に首を傾げる。
「そうなのか?」
「そうだよ! こうやって手で掴んで食べるんだよ! これが日本人の心なんだよ!」
「……私は異世界から来たんだけど」
ツッコミを入れつつ「まぁ、いっか」と気持ちを切り替え、伊奈も寿司を手で掴む。醤油とワサビを程良くつけ、息を合わせて
「「それじゃ、いただきまーす」」
ぱくり。
マグロの旨み酢飯の甘味が、醤油とワサビに引き立てられ濃厚に口に広がった。二人の舌が同時に感動を音に変える。
「おいしーい!」
「うめぇ! お寿司うめぇっ!」
もぐもぐと咀嚼しつつ、次の獲物を決めるべく伊奈がメニューに瞳を受けた。と、謎の単語発見。
「かっぱ巻きってなんだ? かっぱが巻かれてんのか?」
「きゅうりの海苔巻きだよ。おいしいんだよ」
「へぇ~」
じゃあ次はそれ、と早速注文。程なく届いたかっぱ巻きを再びぱくりと口に入れ、
「おいしーい!」
「うめぇ! かっぱ巻きうめぇっ!」
●
「お寿司をいっぱい食べちゃうよ~!」
「お寿司なんて久しだな」
葉月 桜(aa3674)と伊集院 翼(aa3674hero001)はこちらも仲良く隣に並び、手元に緑茶を用意してパネル画面を眺めていた。最初のネタを吟味しつつ桜がふと疑問をぶつける。
「つーちゃんってワサビ入りの寿司食べれるの~? ボクは一応食べれるけど~」
「うーん、食べようと思えばな」
友達の情報をまた一つ増やしつつ、桜はまずはサーモンを注文、早速口へ放り込んだ。次にいくら、マグロ、えんがわ、エビ、いか、戻ってサーモン。
「食べ放題って幸せだな~」
同じものを頼むのは当たり前とばかりに注文し、「食べることが大好きです」とばかりに桜はとにかく食べた。ワサビが入っていても気にする事なくなにごともなく食べる、食べる。
一方、翼の食べる量は桜と比べ控えめだった。量より質がモットーの為か、トロやアナゴやウニといった高そうなお寿司が主戦力。
かつ、周ってくる寿司を何喰わぬ感じで取る桜と違い、翼は意外とデリケートな為か注文したものしか食べない。結果、二人の皿の高さには明確な開きが出来ていた。
「つーちゃん、何か注文する?」
「それじゃあ、サーモンとマグロと、卵焼きを、少し」
「だったら半分こしない?」
そしたら色々食べれるよ、と桜はにこっと笑顔を見せた。翼は少し考えた後「そうしよう」と同意する。
友達とのお寿司に桜はずっと楽し気で、翼もクールな表情ながら目元はどこかやわらかだった。店の安全性の証明と仲良しっぷりを見せつけつつ、たらふく食べた……と思った所で、桜の指が追加注文。
「つーちゃん、苺のショートケーキ、食べる?」
「まだ食べるのか?」
翼の問いに、桜は迷いなく答える。
「デザートは別腹!」
●
「寿司か……! あ、いや、浮かれているわけではないからな! その、リップサービスというやつだぞ!」
「(ばればれだけどねぇ。んん、ボクもそこそこ頑張ろうかなぁ)」
ぷんでれを披露する賢木 守凪(aa2548)の横でカミユ(aa2548hero001)は意味ありげに微笑んだ。守凪は準備を整えメニューへと視線を落とす。
「(回転寿司は以前来たことがあるからな! 取り方や食べ方はばっちりだぞ! ……ん、これは……)」
内心でどや顔した守凪の目が何かを発見。ご飯の上にハンバーグ、ご飯の上にコーン……
「(ハンバーグやコーンが乗っている……気になるな……。いったいどんな味がするんだ……? そもそも酢飯ではないのか……?)」
好き嫌いは特に無いが味の想像が全くつかない。むむ、と唸るが踏ん切りつかず、とりあえず以前食べた玉子等に手を出してみる。
「カミナぁ、それ美味しい?」
と、カミユが尋ねてきたので守凪は頷いた。「同じの取って」と求められ玉子の皿を取ってやる。
「んん、美味しいねぇ♪ それもう一個取って」
「自分で注文すればいいだろう……」
ぼやきつつ、守凪は再び玉子の皿をことりと置いた。カミユは掴み所のない笑みを浮かべ玉子寿司を口へと運ぶ。
●
「お寿司……食べ放題……いいの、かな……」
「PRの目的もあるってこと、忘れないようにね?」
「わかってる、よ……セーブも、ちょっとする……」
アーテル・V・ノクス(aa0061hero001)の釘差しに黎夜は小さく口を尖らす。体は細い黎夜だが見た目に反してよく食べる。具体的には男子中学生運動部所属、以上。
腹八分目を目安に、と黎夜はマグロを手に取った。さっそく頂く……その前に、テーブルを挟んで座るキャシーへと問い掛ける。
「お姉さんは、お寿司、何が好き……? うちは、マグロと、いかと、エビが好き……」
「お姉さんもマグロかしらね。美味しいわよねん」
バチコーンとウインクするキャシーに「うん」と黎夜は頷いた。アーテルも……こちらは寿司数皿で満腹になる程少食なので、タイとタコ寿司を1皿ずつ取り味噌汁を時間をかけて飲んでいく。
「アーテル……今日は、ホタテのから揚げも、食べていい……? よかったら、シェア、どう、かな……?」
「好きなものを取りなさい」
「黎夜ちゃんがいいのなら、ご相伴に預かるわ~ん」
アーテルとキャシーの許可を得て、黎夜は興味津々にサイドメニューも注文した。好きなものを中心に残さず美味しく頂きながら、ふと、大人二人の前にある緑の物が気になった。
WASABI。黎夜は基本的に何でも食べるが辛いの、苦いの、ワサビはダメ。だが、二人が美味しそうに食べているのを見ていると……
「……ちょっとだけ、ワサビ、もらってみてもいい……?」
なんかいけそうな気がしてきた。ちょっとだけマグロに塗り、ぱくり。
が。
つーんと抜ける独特の香りに黎夜は思わず鼻を押さえる。
「……やっぱりダメだった……お茶……ください……」
●
チカは目に付いた魚介類を片っ端から取っていた。魚介類なら何でも取り次々と平らげる。
ただしワサビは苦手なため一応ネタを捲っては、たまについているワサビをちまちまと退けていく。
「……ワサビがあかんのなら、子供皿食べればええのに」
「デザートばっか食ってるお前に言われたかねぇ!」
はっきり聞こえた八宏の声にチカは憤慨を露わにした。ちなみに八宏は傍らでサイドメニュー……パフェやアイスクリーム等スイーツ系を黙々とつつく。辛気臭い表情だが楽しんではいる模様。
が、チカの「小麦粉以外を摂取出来る」発言を根に持っているらしく、ワサビを残そうとするチカの様子に知ってか知らずか、珍しく周りにも聞こえるような声量で先の発言をした訳である。
チカと言えば言い返しはしたものの、子供扱いされて悔しい。ここは一つワサビ食べられない組から脱却しようと退けていたワサビを新しい寿司に盛り、頬張る。
結果。
「!!!(声にならない悲鳴)」
●
「……ん、はいどーぞ」
ユフォアリーヤは尻尾をふりふり、ガイルの口に豚の角煮を運んでいた。塩カルビ、ウナギ、サイドのタコや軟骨から揚げ、天ぷら、ラーメンやうどん、赤だしに茶わん蒸しなど、ワサビと生魚がダメでも楽しめるラインナップをガイルの口へあーんしている。
「……美味しい?」
「お、おいしいでござる」
「そういや悪童共は寿司食えるんかね?」
慈愛の目を注ぎながらユフォアリーヤは抱えたガイルの頭をなでなでし、その様子を眺めながら遊夜はふと呟いた。ユフォアリーヤは猫可愛がりと世話焼きに勤しんでいるし……
「ちょっと行ってくる」と断りを入れ、遊夜は悪童共の様子を見に歩いていった。悪童共は今正にワサビにチャレンジしたらしく、二人揃って鼻を強く押さえている。
「お、さっそく洗礼受けてんな。一気に食うときついんだよな、慣れてても」
恥ずかしい姿を見られ永平はそっぽを向いたが、遊夜は構わず席につきサーモンの皿を取る。
「最近サーモンが美味くてなぁ……ワサビは自分の好みの量がわかれば美味いもんだぜ? そうだ、今度本場の寿司食いに行くか? 魚釣りに行って俺が握るのもいいな」
「兄ちゃんコレ作れんのか?」
「自己流だがこれでも自信あるんだぜ? ガキ共には好評だ」
遊夜の返事に花陣は「おおー」と声を上げた。永平も少々惹かれたらしくぽつりと呟く。
「今度腕前見せてくれよ。花陣も興味ありそうだし」
「おう」
答えつつ遊夜は焼きトロサーモンの皿を取り、オニオン乗せ、チーズ炙り、大切り生等ひたすらサーモンを食べていく。合間にタコ、エビ、タイも入れるがほとんどがサーモン寿司。
遊夜の食べっぷりに釣られ永平と花陣も皿を取る。瞬く間に増える皿に遊夜は身を乗り出した。
「おお、良い食いっぷりだな! 何が美味かったかね?」
「これ……アンタが上手いって言ったヤツ」
永平はサーモンを指差した。「どうせなら全種類食べようぜ」と意気込む花陣に遊夜がにっと笑みを浮かべる。
「全制覇か、楽しめてるようで何よりだ」
あらかた腹が満ちた所でお茶を飲んでのんびり一息。視線を向けると各々食事を楽しんでいるようだ。
「みんな中々の食いっぷりだな。リーヤは……相変わらず、と。そういやキャシーさんは何食ってんのか気になるな。好みがわかれば今度何か贈る時の参考にしよう」
「マグロがいいんじゃないか。日本じゃ縁起物と聞いたぞ」
永平の言葉に遊夜は内心首を傾げた。縁起物と言えばタイだと思うが。
「分かった、参考にしておくよ」
●
きらきら光る金の瞳にガイルは一瞬停止した。むすびはNINJYAの横に立ちつぶらな瞳で見つめ続ける。
「もふがいた世界にもこんな感じのひといっぱいいた気がするもふ~。なつかしいもふ~。近くにおすわりしていいもふ?」
「ガイルさんすみません、何だかむすびが懐いてしまったようで。近く、よろしいですか?」
「もちろんでござる」とガイルは頷き、むすびはユフォアリーヤと反対のガイルの隣に収まった。その隣に灯が座り何はともあれマグロを注文。
「がいるさん生魚食べられないもふか。もし間違ってとっちゃったらもふがたべてあげるもふよ」
むすびがじゅるりと涎を垂らしガイルの手元を見ている隙に、灯の頼んだマグロの群れが列を為して到着した。赤身、漬け、山かけ軍艦、鉄火巻きを横に並べ、
そしてワサビを盛る!
「!」
ガイルが見たのは正にWASABIの山だった。美しき緑の山。美味しそうに食べる灯。異常な速さで消えゆくWASABI。
「ガイルさんは生魚が苦手なのですか。俺も脂がのってるのとサーモンはダメですね……玉葱、マヨネーズ、光モノも」
「そ、そうでござるか……」
超のつく激辛党をガイルは恐ろし気に眺めた。同じく相棒の様子を眺めむすびがきゅっと目を瞑る。
「もふは辛いのがだめもふ。甘いのが好きもふ。デザートも制覇したいもふ!」
まずはその第一歩、とむすびはマグロを手に取った。その横で灯は今度はカツオに手を出した。
そして山と盛られるWASABI。
●
「ガイル君、寿司とワサビがダメなんだね。きみはどう思う?」
デランジェから話を聞きジェネッサは無月へ問い掛けた。おしぼりで手を拭きながら無月は淡々と口を開く。
「特に言う事は無い。別に寿司が食べられなければ忍びになれない訳でもないからな。好き嫌いはあまり褒められた事ではないが、それに拘るのは野暮だろう」
「ボクとしては……ボク達の仕事柄、好き嫌いはあまりよくないかな。任務中では食事なんて選べないからね」
という訳で、とジェネッサは納豆巻を手に取った。そしてガイルの元へ行き後ろから肩を叩く。
「ガイル君、寿司が苦手なら納豆巻はどうかな。大豆食品は忍者が日常的に食べていたんだってさ。これを食べれたら本物の忍者に近づけるよ」
「誠でござるか!?」
実はガイルは納豆も苦手だ。しかしこれでNINJYAに近付けるなら……
「頂くでござる! ネバネバでござる! でも頑張るでござる!」
ガイルはなんとか納豆巻を飲み下し、ジェネッサは「よく頑張ったね」と健闘を褒め称えた。その後戻ってきた相棒を無月が静かな声で諫める。
「無理強いは良くない」
「はーい」
無月は小さく息を吐いた後、両手をきちんと合わせ「頂きます」の姿勢を取った。自分を見つめるデランジェに無月は意味を説明する。
「これは自分の命を繋げる為に食材となってくれた命に感謝する事。大切な事は値段や好き嫌いなどではなく、糧となった命は全て一律だと言う事だ。ガイル君も周りに流されず、本質を見る事の出来るNINJYAになって欲しい」
「なんかガイル君の先生みたいだね」
「彼の裏表のない心に私は光明を見出している、それだけの事だ」
無月とジェネッサのやり取りに「伝えておくわん」とデランジェは微笑んだ。無月は目元を緩めて応え、満遍なく色々な物を、他の人達の邪魔にならない様あまり人気のないネタを中心に取りワサビを付ける。
「味噌汁と温かいうどんを頼むけど、きみ達は?」
ジェネッサの問いに無月は味噌汁と温かいそばを、デランジェはうどんを希望した。注文を待ちながらジェネッサは録画を考慮し、無難にデランジェとの日常話に華を咲かせる。
●
シセベルはタイとほたてを前に置き皿毎に醤油をちょぴっとかけた。健康を気にしている訳ではなく、本能的苦手感を醤油汚れに覚える故だ。
玉子やマグロも食べてみるが、反応はとても微妙。白ものに戻りワサビを付けて食べ比べ、茶碗蒸しにも着手する。
一方樹はノーマル、焼きとろ、漬け、オニオン、おろし焼きとろ、のひたすらサーモンローテーション。特に焼きとろサーモンが気に入ったらしくやや機嫌が上向きだ。
ガイルに関しては生暖かい表情で見守るのみ。久々に見捨て……もとい見守る状況に少しご満悦な様子。
と、永平と目が合ったので、薄く微笑み片手を上げて挨拶した。永平は樹を見返し、さりげなく片手を振りすぐさま食事へと戻る。
樹も食事に視線を戻し、ワサビを少量塗ったサーモンを口に運ぼう、とした所で、シセベルがメモを取っている事に気が付いた。レーンやパネルを真剣に見てはメモ帳にボールペンで書き込み、また機械を真剣に見て……
「……自宅での組み立てはだめだから」
樹の言葉にシセベルは「!!!!?」と顔を上げた。食よりレーンの機械的仕組み、パネルのシステムに興味を抱いたシセベルは、諦めきれず必死に樹に食い下がる。
「な、なら小隊のお部屋ならいいよね? ね??」
「片付けをちゃんとするならね」
間髪入れず樹は答えた。
もちろん隊長の許可など取ってはいない。
●
「武之! お皿がどんどん来るんだよ! 楽しいね!」
「お寿司食べ放題ならもう養ってもらうしかないよね」
無邪気なザフル・アル・ルゥルゥ(aa3506hero001)の隣で鵜鬱鷹 武之(aa3506)は不穏な事を言った。働きたくない、動きたくない、養って欲しい、武之はそれ系願望を三拍子揃える人種である。今回はただ寿司が食べれると聞き寿司食べに来ただけである。
ただより安いものはないよね。
俺の胃袋を掴んでどうするつもりなんだい?
これはもう養ってもらうしかないよね。
などと思いつつ淡々と寿司を食べていく。全く美味しくなさそうに。やる気がないので頼まれても美味しそうにとか無理である。大食いではなく12皿程度が限界という事もあり、傍から見ると嫌々詰め込んでいるように見えなくもない。
だが
「おや? マグロが多いのは何でだろう? そんなに俺に食べて貰いたいなんて……もう養うしかないね」
と言いつつ、寿司は何でも好き嫌いなく食べれるくせにトロとか大トロとか高級なものばかり食べる。それなりに楽しんではいるようだ。多分。
ルゥルゥは初めての回転寿司に大興奮を見せていた。
周ってくる寿司を楽しげに眺め、初のWASABIに果敢に挑む。
が。
「!! 武之! これすっごくツーン! ってするんだよ!! ルゥこれあまりすきじゃないんだよ……」
ルゥルゥは肩を落としたが、しかしすぐに気を取り直し別のものを手に取った。ハンバーグ寿司・玉子・茶碗蒸し・デザート・ラーメン等、大人っぽい味の得意でない子供舌も大満足。
「すごいね! おいしいたべものがたくさんだよ! ここはまほうのおみせなんだね! 武之すごいね!
おいしいし、たのしいし、ここはゆうえんちみたいなんだよ!」
能力者とは対照的に、寿司以外のものを凄く美味しそうに食べるルゥルゥ。
回転寿司なのにと言ってはならない。
●
「……慣れないうちは、これぐらいで……最初からワサビが乗っているものですと、調整が出来ない、ので……」
ワサビ食べられない組の苦戦を見兼ね、八宏はガイル・チカ・黎夜へとレクチャーを行っていた。醤油に少量だけワサビを溶かし寿司を食べる時の作法を教える。
が。
「ミーには無理でござる……」
ガイルはワサビ醤油にも口を押さえて悶絶した。通りすがりの朝霞が横から助け船を出す。
「ワサビも生魚もダメなんですか? ……穴子なら食べられるんじゃないかな?」
「それならチョット大丈夫でござる。しかしか、ハンバーグの方がいいでござる」
「ガイルはこういう寿司が好きなのか。どんな味なんだ……?」
「ハンバーグのSUSHIでござる」
ハンバーグ寿司に興味のある守凪が質問したが、なるほど分からん。実食するよりなさそうだ、と決意を固め、ぱくり。
「……! ハンバーグ……なるほど、これはこれで美味いな……」
灯はワサビを盛っていた。玉子と穴子は除外だが、ホタテやうににもワサビ山盛り。茶碗蒸しや赤だしも食べつつそろそろワサビが無くなったな……と手を伸ばそうとした所で、何故か隣のむすびのカツオの上にワサビがべしゃり。
「もふのお寿司にワサビが! 食べてほしいもふ」
スライドしてきたワサビカツオを灯は美味しく頂いたが、なんとむすびのいか、ホタテ、エビ、玉子、穴子の上に続け様にワサビが乗った。そこでようやく気が付いた。
宙に浮いたパックがWASABIを噴射している事に。
●ワサビ迎撃
「お姉さん、店長さん達と奥の方に隠れてて」
アーテルと共鳴した黎夜はキャシーに指示を出した後、ライヴスを蝶と変じワサビパックの群れへ放った。動きの止まったパックを捕獲しテーブルの下へ持っていき、童話「ワンダーランド」で殴る。これでお寿司や人にはかからないしカメラ対策もばっちりだ。
樹もシセベルと共鳴し、フロストウルフ(改)の顎をワサビパックに喰いつかせる。守凪はワサビに注意しつつ寿司を食べ進めていたが、ワサビがすぐ横を掠め刺激に鼻を強く押さえる。
「ッ……なるほど、従魔とはいえ侮るわけにはいかないな……!」
すかさず共鳴……しようとしたが、何故か出来ない。ハッと振り向くとカミユが寿司を食べつつにこにこしている。
「カミユ、共鳴……まさかお前」
「共鳴なんかしないよぉ? ボクも食べたいからねぇ。くふふ、頑張ってねぇ、カミナぁ?」
カミユは寿司を食べ続け、ワサビパックが守凪に迫る。守凪の運命はいかに!
「無粋な奴らだな
「……むぅ、早く倒す」
合流した遊夜とユフォアリーヤも共鳴し、まずは目につくワサビ共へトリオを放って撃ち落とした。それでも迫りくるワサビにバレットストームを展開、一掃。
「初御目見えがこれとは締まらねぇが……」
『……露払いには、最適』
首を振る遊夜の目にワサビが直線に飛んできたので、これはコンタクトに換装して物理的に迎撃する。
「残念、その程度ではな」
『……ん、ワサビなのに、甘い』
無月はワサビ攻撃を小皿を盾にし防いだ後、味噌汁のお椀と麺類の丼鉢を使ってパックを中に閉じ込めた。ターゲットドロウで攻撃をこちらに向けさせた所で、桜が電光石火で近付き奇襲の一撃で沈め、動画に撮られないよう注意しオーガドライブを叩き入れる。
「従魔はパックの方に憑いてるのか。事件が繰り返される原因は果たして……普段は潜んでるとしたら、一度店内のワサビパックを全て処分してみるのも手……?」
メガネで目を防御しつつ共鳴した灯は考えた。ライヴスフィールドを展開し、見極めの眼を駆使しながらわさびを盾で止める内に、超激辛党の魂が勢いよく燃え上がる。
WASABIを噴射してくるなら先に食べればいいじゃない。思い立った灯は先手必勝、仲間達の手を借りて店中のワサビパックを集めた。パックを開け、皿の上にワサビを盛り、袋は滅し、大量のワサビを涙巻きにして、
実食。
「美味しい」
灯は満足げに呟き、それを見てガイルはドン引きした。ワサビをあらかた掃討し、樹とシセベルは氷のジャック・オ・ランタンの口をカメラの前でパクパクさせる。
「美味しい食事は『マナー良く だよ』
●祭り終了
朝霞と伊奈は満足そうにお腹を擦っていた。この二人、従魔殲滅は仲間に任せ、おいしい安全お寿司アピールのためひたすら食べ続けていたのだ。おかげでワサビをバックに寿司を食べる実にいい画が収められた。
「……まだ口の中が変な感じだ……」
「くふふ♪ 今度は普通の回転寿司の時に来たいねぇ」
ワサビを受けてげんなりする守凪の横で、無傷のカミユは楽し気に笑みを零した。実はカミユは味覚がなく、安全性のため守凪と同じ物を食べていたに過ぎない。
「(まあ、ばればれの守凪と違って、振りはちゃんと出来たかなぁ)」
「どうした、カミユ」
「なんでもないよぉ」
「花陣、ちょっと」
チカは永平の寿司を盗み食いした後花陣にこそりと耳打ちした。花陣は「いいぜ」と悪ノリし、数分後パフェを持って八宏の元を訪れる。
「これ、新作のパフェなんだって。良かったら食わねえか?」
八宏は素直にパフェを食べ、一秒後に悶絶した。イタズラが成功しチカが高らかに声を上げる。
「これ、ワサビを中にたっぷり仕込んだパフェなんだ。いやーなんかさ、お前だけずっと暗そうな顔してたから? こうすりゃ仏頂面も崩れるじゃん? 鬱憤晴らしたかったわけじゃね」
ガシ、と頭を掴まれ、チカと花陣の動きが止まった。八宏は礼儀作法や料理への感謝の気持ちなどには煩く、そういう事には無言で怒る。
「いや、にゃ、にゃぁぁ!」
遊夜はユフォアリーヤと共に店の片付けを手伝っていた。濡れタオルやティッシュでの洗浄を勧め、自分達も実践する。
「災難だったなー」
「……ねー」
「俺達も手伝いますよ」
ユフォアリーヤにしがみ付かれる遊夜へと声を掛け、灯とむすびも掃除手伝いに参加した。一方、マナチェイサーで従魔がいないか確認し終わり黎夜が店長へ声を掛ける。
「……ライヴスの痕跡、確認して、反応はなかった……もう大丈夫……おいしいお寿司、ごちそうさまでした」
お礼を述べつつ頭を下げると、店長と話をしに樹とシセベルがやってきた。二人は動画の映像を借り店長に提案する。
「夏用のフローズンなデザートメニューにこの氷のジャック・オ・ランタン的な画像を可能な範囲で差し込めませんか? 従魔のいる部分全てカットなら無しで大丈夫ですが」
『使うなら、そうした方がなんか特撮っぽくていいでしょ?』
「あとは戦闘風景ですが、もし許すのであれば、この部分をオープニングとして持ってきてしまうというのはどうでしょう?」
樹、シセベル、アーテルからの提案を、店長は「面白そうだね」と採用した。樹は自分の顔出しNGを頼みつつ、さらにこう提案する。
「あと、従魔検品? 用に学生リンカー等をバイトに雇ってはどうでしょう」
その提案に、店長に衝撃が走る。
武之はWASABIを受けた目を洗面所で洗っていた。
従魔が出た時共鳴して回避し、そのまま寿司を食べていたのだが、その先でワサビが目にぷしゃり。
だが武之はMである。苦しむがこの刺激嫌いじゃない。ダメージは灯に回復してもらったし問題は全くない。
と、外に出た所で店長が武之に近付いてきた。武之はここぞとばかりに店長に畳み掛ける。
「此処まで至れり尽くせりだったんだから養うしかないよね。養ってくれないならお土産でお寿司を貰うしかないよね」
「その事なんだが、君、ここに住まないか?」
店長は樹の提案を説明した。ひたすらにワサビパックを眺め、従魔が現れたら対応してくれるだけでいい。引き換えに寿司を三食毎日食べ放題。ワサビもなんだか平気そうだし。
武之の返答やいかに。