本部

【屍国】連動シナリオ

【屍国】針で縄目をつつく者

雪虫

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
9人 / 6~9人
英雄
9人 / 0~9人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/07/06 01:28

掲示板

オープニング

●包囲網
「1400を目標に、高松自動車道周辺に前進し車両及び撮影機器を設置する。以上、わかれ!」
 尉官の声に「わかれます!」と言葉を返し、会沢二曹は自身が担当する車両へと駆けていった。四国で猛威を振るう新型感染症の根源が、現在この香川県に集結しているという。有体に言えば人間をゾンビに変える化け物がいる、故に逃がさないように包囲網を張っている……それが、会沢二曹が所属する自衛隊に要請された任務である。
「実際の捜索に当たるのはH.O.P.E.と聞いてはいるが、やはり怖いな」
 助手席に乗った同僚が会沢に本音を零す。一応自衛のために小銃は持たされているし、化け物が姿を見せたという善通寺とはまだ少しだけ距離があるが……
「もう少し範囲が狭まったら俺達は撤収していいそうだ。それまでもう少し頑張ろう」
 本音を飲み込み、会沢は軽く笑んでみせる。自分だって死ぬのは怖い。生きたままゾンビになるなんて、会沢だって誰だってそんなの嫌に違いない。
 けれど、嫌だからと逃げ出す事は自衛官には許されない。災害派遣任務と同じだ。どんなに危険な場所だとしても、国民を守るために自分達が動かなければ。
 パラパラとヘリの音が聞こえる。上空から索敵するために派遣された陸自ヘリ。その音に会沢はふと顔を上げ、大きく目を見開いた。真っ黒い烏の群れが、今まさに上空のヘリに貼り付き集り襲っている。

●出動要請
 エージェント達は善通寺市周辺で敵の姿を探していた。神門、夜愛、芽衣沙の三人が、いずれも善通寺のすぐ近くで姿を現し、そして行方を眩ませた。それを受けH.O.P.E.は警察や自衛隊の協力を得て香川県を取り囲むように包囲網を展開し、エージェント達は包囲網内で捜索に当たっている。
「【Re-Birth】が増産され、君達にも持たせられる余裕が出来た。と言っても数は多くはないが、何かあってからでは困るからな」
 そう言って渡された【Re-Birth】を幻想蝶、あるいはホルスターに収納し、エージェント達は怪しい箇所を片っ端から調べて回る。と、通信機に着信が入り、エージェント達はそれぞれ通話ボタンをオンにした。オペレーターが早口に緊急事態を告げてくる。
「11番線付近に待機している自衛隊員達の元に、神門が現れた! 既に被害が出ている。動ける者は至急現場に向かい生存者を救出してくれ!」
 神門。その名にエージェント達はそれぞれ顔を見合わせた。まさか総大将自ら包囲網を襲撃するとは。そのまま突破するつもりか? 自信の表れか? それとも。
 いずれにしろ、まだ生きている者を救い出さねば。陽動の危険性も考え、全勢力を向かわせる事は出来ないと、一部のエージェント達が車に乗り込み走り出す。一瞬の慌ただしさの後に、不気味な程の静寂が善通寺市に訪れた。

●混乱
 一体何が起こったんだ。
 会沢の脳の中はその疑問でいっぱいだった。
 真っ黒い烏の群れがヘリのフロントガラスにへばりつき、プロペラに激突し、ヘリを地上に落としてしまった。会沢は辛くも逃れたが後続の車がヘリに潰され、炎上。何人かの迷彩服が仲間を助け出さんと炎の中に飛び込んだ。
 が。
「ふむ、なかなかいい駒だ。物の役には立ちそう……か?」
 炎の中から現れたのは見慣れた迷彩服ではなく、僧服に身を包んだ見慣れぬ若い男だった。一体誰だ、どこから現れた、という考えは、男の背後に現れた多数の影に打ち消される。遠目にも分かる、爛れた皮膚。白濁した瞳。ねじ曲がった足。命を失くしてなお蠢く。
 ゾンビ。
 ゾンビと変わり果てた自衛官達を従え、僧服の男は、薄く笑う。
「一体……一体なんだお前はァッ!」
 誰かが叫び、小銃を発砲。それが全体への合図となった。小銃を所持する自衛官が一斉に弾を走らせる。だが、僧服の男は銃弾の雨の中で微笑みながら立っている。その後ろのゾンビ達も何事もなく蠢いている。従魔や愚神はリンカーでなければ倒せない。講義の内容が頭を過ぎる。
「ふ、ふふ……いい表情だ。どれ、少し遊んでやろう。鬼ごっことか言ったかな? 捕まらぬよう逃げてみろ。褒美は貴様らの命でどうだ?」

●神門情報(PC情報)
【パッシブ】
・リジェネーター
 クリンナップフェーズに生命力一定回復
・ネクロマンシー
 ゾンビへの絶対的命令権
・小さき下僕達よ
 自身を中心とする半径15sqに常時ドロップゾーンを展開。このドロップゾーン内ではウィルス型従魔が発生し続けており、範囲内に存在する(植物や微生物を除く)生命体はこの従魔に“感染”し、即座にゾンビ化する。一度ゾンビ化から回復した死体でも、灰と化した死体でも、ドロップゾーン内に入ると再びゾンビ化する
 能力者ならばゾンビ化はしないものの装備力・生命力・リンクレートを除く全ステータスが劣化し、肌が青白くなってくる

【アクティブ】
・堕霊閃
 小さき下僕併用。大量のウィルス型従魔を武器に纏わせ攻撃。物理。
 命中した場合、3Rの間装備力・生命力・リンクレートを除く全ステータスが劣化。劣化度は「小さき下僕達よ」より上
・千年の怨念
 その身に受けた夥しい数の怨念を解放し周囲一帯を襲わせる。魔法。命中時【封印】【減退(2)】、【劣化(リンクレート)】を強制付与
 影響を受けやすい者と受けにくい者がいる模様

【リアクション】
・吸霊陣
 小さき下僕併用。超圧縮したウィルス型従魔の壁で攻撃を防ぎ、同時に攻撃ライヴスを一部吸収、回復に転用する。受け防御成功時に生命力一定回復

●【Re-Birth】について(PC情報)
 神門が操るゾンビウィルスに対抗出来る唯一の手段。投与した者の体内に巣食うウィルス型従魔を殺す作用を持つ。AGWのためライヴスを込めて使用する必要がある。

解説

●目標
 メイン:生存自衛隊員を撤退させる(新たに死亡者が出た場合判定に影響)
 サブ:対神門への【Re-Birth】の効果確定

●状況
・包囲網を敷く自衛隊員達の元に神門出現。現場には70人程の自衛隊員がおり、内20人が既にゾンビ化
・自衛隊ゾンビの救出は不可能
・生存自衛隊員の中には負傷者もいる
・自衛隊員は全員小銃を所持
・PC達は善通寺市から車で現場に急行
・PC達の他にNPCブレイブナイトが4人同行/生存自衛隊員の護送を行う(特に指示がなければリプレイには出ない)
・エージェント達が現場に持っていく車は20人乗り×4台
・自衛隊の車(3tトラック。20人乗車可)はまだ動かせるものもある(動かすにはロングアクション2ラウンド消費)

●マップ情報
・戦闘区域は道路上。判定上幅20sq×長さ60sqとする
・生存自衛隊員は善通寺市側に集まっており、生存者集結地点より40sq離れた場所に自衛隊ゾンビと神門がいる(PCが現場に到着した時)
・現場に辿り着いたPC達から見て右側に車が並んでいる(車も戦闘区域内に含まれる)

●敵NPC
 神門
 判明スキルはOP参照。ステータスは特設ページ参照。PC達が到着するまでは動かず、自衛隊ゾンビ達に生存者を襲わせる/PC到着後は積極的に行動
【PL情報】
・条件により洗脳に似た状態異常をPCに付与
・【Re-Birth】を一定量浴びると笑い出す

 自衛隊ゾンビ×20
 噛み付く、しがみつく、小銃(射程60sq以上。非AGW)乱射といった行動を取る。小銃の狙いはデタラメでリンカーが受けてもダメージはないが、非リンカーは当たるとダメージを受け、最悪死亡する恐れあり
 また、倒されても神門の「小さき下僕達よ」の範囲に入れば復活する

●その他
・使用可能物品は装備・携帯品のみ
・烏は敵として登場しない(既にどこかに消えている)
・現場に持っていける治療薬は15本(誰が何本持つか自由に割り振ってよい)

リプレイ

●救出
 負傷者達は死者と生者の中程で傷を押さえて呻いていた。
 ゾンビの動きは緩慢だ。小銃を持っていても狙いを定めるのさえ難しく、きちんと注意していれば避ける事は容易い筈だ。
 しかし、それはあくまで冷静であればの話。20体ものゾンビ、しかもかつての仲間を前に冷静を保つのは難しく、結果銃弾に身を穿たれ動く事もままならずにいる。
 ゾンビの一人がふらりと銃口を持ち上げる。知性のない肉塊でも、至近距離であれば獲物の頭を撃ち抜くぐらいは出来るだろう。腐った指を引き金に掛け、そのまま押し込もうとする。
 しかし爆ぜたのは生者ではなく、ゾンビの頭の方だった。
「間に合ったか」
 アウグストゥス(aa0790hero001)と共鳴した黛 香月(aa0790)は低く呟き、冷徹を湛える赤い瞳で屍の群れをねめつけた。アキト(aa4759hero001)の外見を借りた美咲 喜久子(aa4759)も、隙を作るべくA.R.E.S-SG550でゾンビ一体の肩を撃ち抜き、合わせてアリス(aa1651)が極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』の炎を放つ。
「今よ」
 通信機からのアリスの合図にアークトゥルス(aa4682hero001)は地を蹴った。事前に通信確認しており、感度は良好。敵の動きが止まっている隙に生存者の腕を取る。
『H.O.P.E.だ。救援に来た。急いでここを離れるぞ』

「銃撃の射線を遮るように、自衛隊の車を掩蔽壕として道路に設置してくれないか」
「ゾンビと自衛隊員達の間、且つ撤退用の車への射線を塞ぐ位置に。停車後は自衛隊員達の護送に専念を」
 真壁 久朗(aa0032)とニウェウス・アーラ(aa1428)は同行したブレイブナイト一人に指示を出した後、久朗は救急医療系の道具をトラックに置いて駆け出し、ニウェウスは戦況を把握するべくレーダーユニットを作動させた。空亡 夜中(aa4827)は共鳴してクルーエルスピアを出現させ、ライヴス中の狗猫 空羽(aa4827hero002)へと問い掛ける。
「さってと、こうして戦ったりするのっていつ以来だったっけ」
『ずいぶん前ですね……というかマスター、僕たちも早く戦闘と治療を』
「わかってるよ」
 夜中は身を屈めながら距離を詰め、鋸のようなスピアの刃で死者の胴を薙ぎ払った。水落 葵(aa1538)は足を動かしつつ腰ベルトに付けたハンディカメラを微調整し、ウェルラス(aa1538hero001)は半ば呆れた声を相棒へと投げ掛ける。
『君等ほんとソレ好きだよね……』
「好きっつーわけじゃねぇよ? 実際、他の事案じゃそんなにはしてねぇだろ?」
 葵の返事にウェルラスは何か言おうとしたが、のんきにおしゃべりしていられる状況でないのは明らかだ。生存者達の避難対応……には回らず、葵はゾンビの群れに飛び込む。
「(自分に不向きなことはするべきじゃないな うん)」
 活性化、と同時に周囲へ発散されたライヴスは、ゾンビ達の意識を引き銃口を葵に向けさせた。弾丸の雨が葵を打つが、AGWでないただの銃弾がリンカーを傷付ける事はない。アークトゥルスも守るべき誓いを発動させ、葵とは別方向のゾンビの注意を引き付ける。アリスのアルスマギカの炎が屍達の身を炙り、その合間から喜久子の銃が、香月の振るう大剣が再度ゾンビの身を貫く。
「四国の動乱はまだ続く、か」 
 久朗は撤退する隊員達の最後尾辺りに立ち塞がり、キリングワイヤーの狙いを定めた。右の緑眼と左の青眼、両の視界を共有しながらセラフィナ(aa0032hero001)が音を紡ぐ。
『けれど、今が重要な局面であることは確か、ですよね。……これ以上犠牲となる方を増やさない為にも』
「ああ、今までもこれからも、俺達がやるべきことは変わらない」
 機械眼の表面に敵の姿を映し出し、グローブから放ったワイヤーでゾンビの腕を切り飛ばす。小銃が地面にガシャリと落ち、別のゾンビが武器を取ろうと腐肉の腕を伸ばしたが、喜久子の放った弾丸が手首から先を吹っ飛ばし、その隙に葵が小銃を強く後方へ放り投げた。
「出来るなら幻想蝶に入れて持ち帰りたい所だが……せめてもの遺品として」
『もう少し後の方が良さそうだね』
 ウェルラスの声に葵は仕方なさげに頷く。ゾンビの動きは緩慢だ。とは言え数は決して少なくはない。狙いの定まらない小銃でも乱射する事ぐらいは出来るし、小銃を失くしても掴み掛かり、噛み付き、生者を襲う事は可能。
 だが、抗う術がないという事でもなく。決して油断は出来ないが、それでも生存者を背に守り、敵の攻撃を躱しながらゾンビを討つ事は可能。
 相手がゾンビだけならば、敵を征圧し、生存者を救護し、遺品だけでなく遺体さえ持ち帰る事は可能だった。だが、そうはならなかった。終焉之書絶零断章のブレードを火力支援と飛ばしながら、ゴーグルを覗くニウェウスが通信機越しに警告を飛ばす。
「奥から大きな反応が近付いてくる。気を付けて」
 その警告ごと踏み潰すように、神門は地を大きく蹴り戦場との距離を縮めた。周囲のドロップゾーンからは絶えずウィルス型従魔が出現し、取り込まれた生命体は一瞬にしてゾンビと化す。そうなれば救う手段は皆無。
 ドロップゾーンが死者と生者の両方に迫る――瞬前、愚神の眉間ど真ん中に銃弾が二つ叩き込まれた。Pride of fools……「愚か者」の名を冠した二挺拳銃を両手に構え、セリカ・ルナロザリオ(aa1081)が死者の合間から花のような笑みを零す。
「申し訳ありませんが、しばしお相手願いますわ♪」
 
●車中
「みんな、ちょっと聞いてくれないだろうか」
 車で現場に向かう途中喜久子はそう切り出した。真ん中に置かれているのは治療薬の入ったケース。それに一瞥をくれた後、喜久子は仲間に視線を向ける。
「神門に多量の薬を使うのは……得策ではない気がするのだ。
 まず、前回相対した時……確かに我々リンカーも、神門のドロップゾーン内で”感染”していた……。クリアレイを施しても肌の青白さは変わらなかった。ゾンビ化の一種と言って差し支えないだろう。
 そして”感染”した者が味方に襲い掛かっていた。一時的な洗脳状態と考えられる。
 幸い”感染”の有無は皮膚の色で判別可能だ。故に薬は対神門ではなく”感染者”に即使用した方が良いだろう。

 次に、神門が我々の攻撃を防いだと同時に、攻撃に使用したライヴスが神門に流れ行っているようでもあった……。あらゆるモノが神門の力になっている……ライヴスが流入するなら、ライヴスを込めた薬は……? それすらも、神門の力になっているとすれば……?
 また、ゾンビ化云々抜きに、通常の場合でも”耐性”というモノは、出来る。
 ならば、神門に多量の薬を与える事で、神門が耐性を獲得するとしたら……?
 ゾンビにも耐性が出来る可能性は……?
 ……今は全て、憶測の域を出ない。
 然し、多量の薬を使うのは……得策ではない気がする」
 喜久子はそこで一度言葉を切り、だが全く使わない、という事でもないと説明した。
 根拠は神門の左手。以前相対した時神門の左手は欠けており、試薬が付着した際に失くしたと聞き及んでいた。
 試薬が付着した程度でそれなら、多量だと如何なる……?
「それを考えれば試す価値はある。しかし先にも述べたように多量に使うのは得策ではない。前回戦闘中に左手が再生された事が気になるが、少量であればある程度の対抗手段になると考えてもいいだろう」
 喜久子の推測も踏まえた上でそれぞれに意見を述べ合い、リンカー達は治療薬を分けそれぞれの隠し場所に仕舞った。アリスも……余程の事が無い限り取り出さないつもりで治療薬1本を幻想蝶に収納し、車外に視線を移しながらふと思案を巡らせる。
 神門……敵の総大将自らが包囲網に現れた理由とは。
「陽動? それとも……」
「可能性ならいくつでも挙げられる。問題は」
「その内のどれか」
 淡々とAlice(aa1651hero001)の声に続けた後、アリスは善通寺市に残っているエージェント達に連絡を入れた。神門がわざわざこんなところに現れた理由。包囲網が狭まる前に突破しようとしている、その可能性もなくはないだろうけど。
 この四国での事件において、敵が狙ってくるものは自分の知る限り2つ。
 結界の要、治療薬。ゾンビ化はその為の駒増やしに過ぎない筈だ。
 なら包囲網を突破したところで、いずれここに戻ってこなくてはならない筈だ。
 神門の出現で向こうは人が減っている。只でさえこちらの動きは筒抜けらしいし、これが陽動だとしたら狙ってくる。
 故に、念の為隠夜叉使用の可能性も含め、善通寺を警戒する様市内に残っているエージェント達に言い含めた。
 結界の要も治療薬も、どちらも取られるわけにはいかない。

●画策
 肌の変色がない事をセリカは己が目で確かめた。能力者がゾーンに入ればゾンビ化はしないまでも、体が重くなり肌が青白くなる、との報告を聞いていたが。
「あらかじめ投与していたお薬の力でしょうか。それにしても、ふふふっ、本当に映画のような光景ですの……♪」
『確かにな。たが楽しんでる余裕はないぞ』
 リゼア(aa1081hero001)の警告にも悠々とした微笑を絶やさず、セリカはシャープポジショニングで神門の脚を狙い撃った。死角からの攻撃は神門の防御姿勢を崩し、喜久子の銃が間を置かず愚神の腕の付け根を穿つ。
 
「あの坊主がこの騒動の元凶という訳か。良かろう、奴の情報は手土産には丁度いい」
 神門の姿を視界に収め香月は冷静に呟いた。愚神憎しをモットーに戦う彼女だが、能力が未知数の敵を前に一人で突っ走ってしまうほど向こう見ずな女ではない。
 敵の情報を熟知し、分析し、確実に勝利するための礎を築いたうえで決戦に備える。
 彼女にとって敗北は絶対悪であり、たとえ名誉や名声を犠牲にしてでも絶対に勝たねばならないのだ。
 その一手として、香月は屠剣「神斬」をかぶり屍達を鋭く見据えた。ゾンビを残していては妨害に遭うかもしれないし、負傷者を戦場に残しておく訳にもいかない。まずは自衛隊員の救出と、ゾンビの群れに鋭く斬り込み、黒地に花柄の羽織を舞わせて怒涛乱舞を叩き込む。
「死してなお奴の玩具になってはあの世で後悔するぞ。尊厳を奪われる前に眠るがいい」

「ゾンビの数はあと8体。負傷者はあと4人程だ」
「神門は仲間が押さえているわ。自衛隊員がゾーン内に入らない様に誘導を」
 フラメアで敵の脚を狩りながら久朗が現況を味方に伝え、ブレイブナイト達に要請しながらニウェウスが絶零のレーザーを放った。アークトゥルスも自身を盾とし負傷者を銃弾から守るが、庇われた自衛隊員は蹲ったまま動こうとしない。
「もうダメだ……噛まれた……俺もゾンビになっちまう……」
 その弱々しい声に、騎士は眦を吊り上げた。腕を掴み、引っ張り上げ、予備の【Re-Birth】をすかさず男に投与する。
『これは治療薬だ。貴様はまだ治る、希望を捨てるな。少なくともここにただいるだけでは何も変わらん。邪魔だ。呆けるならばせめて後ろでやれ!』
 そして半ば放り投げるようにアークトゥルスは男の背を押し出した。男の腕を夜中が掴み、安心させるように背中を擦る。
「今はこれしかできませんが絶対に助かります。だから少し我慢をおねがいします」
 夜中はケアレイで男の傷を癒してやると、「さあ走って」とそのまま後方へと送り出した。久朗とニウェウスが頼んでいたバリケードは完成し、負傷者達は着々とその向こうへ逃れていく。
 生者達を逃すまいとゾンビが小銃を持ち上げるが、香月が小銃ごとゾンビの腕を屠剣「神斬」で叩き潰し、生存者を巻き込まない事を確認後、小銃乱射者を中心に葵がライブスショットを炸裂させた。それでも飛んでくる銃弾は、途中に位置するニウェウスが我が身を盾とし押し留める。
「ついにラスボスのお出ましっすかね? 好き放題やってくれたもんっす」
『何か狙いがあると見ていいだろう。油断はするなよコータロー』
 君島 耿太郎(aa4682)に注意を促し、アークトゥルスは聖十字の盾を構えゾンビ一体へ突撃した。少しでも時間を稼げるように、ほぼ敵を押し倒すような勢いで殴り掛かる。盾越しにぐしゃりと嫌な感触が伝わったが、怯む理由は絶無。すぐさま体勢を立て直し次の敵に視線を向ける。

 神門は目を細め考えていた。先程自分に銃弾を撃ち込んできた女……セリカの肌の色が変色しないその理由を。
 しかし、とりあえず手駒を元に戻そうと、神門は先に進むべく一歩足を踏み出しかけたが、その前に喜久子の放った弾丸が神門の頬に血筋を作り、反対側から挟み込むように久朗がフラメアを繰り出した。無骨な鈍色の槍先を靄の壁が阻んだが、これはフェイク。アリスがライヴスを集積し、数多の蝶の姿に変えて神門の身を囲い込む。
「む……」
 蝶にライヴスを喰われ奪われ、神門は袖で顔を覆った。そこにセリカが肉薄し、治療薬【Re-Birth】の先を直接神門に押し付ける。薬液が内部に注入され、相反するライヴスの流れに神門は「がはっ」と苦痛を零した。愚神の周囲に展開されたドロップゾーンが完全に消え、後には脂汗を滲ませた僧形の男一人が残る。
「有効、と見てもよろしいでしょうか♪」
『もう少し確かめた方がいいだろう。油断するなよ』
「もちろんですわ♪」
 リゼアに愉し気に言葉を返し、セリカは後退しながら二挺拳銃の引き金を引いた。アリスの炎、喜久子の銃弾がさらに神門を追い叩き、突き出された久朗の槍が神門の胴に傷を負わせる。
「ぐっ」
「先程と違い壁が出ない……ゾーンが消失しただけでなく、スキルも一切使えないのか?」
『幻影蝶の効果もありますから、確実にとは言えませんけど……』
 久朗の推測にセラフィナが応える。幻影蝶は対象のライヴスを奪い、様々な状態異常を与えるスキル。それによって神門のスキルの一部が封印されている可能性もある。
 しかし一方でゾーンが消失しているのも確か。ならばウィルス型従魔を利用したスキルも、治療薬の効果により封じられている可能性は十分にある。
「それが最後の一体よ」
 レーダーユニットで敵のライヴスを把握していたニウェウスが声を上げ、香月の神斬がついに最後のゾンビを斬り伏せ地に落とした。レーダー上でも目視でも動く屍は確認出来ず。倒れ伏す死体の只中に佇む男を、リンカー達の瞳が見据える。
 だが、
「……ふっ」
 黒い靄が、瞬時に男を取り囲み同時に傷を癒し始めた。肉を再生させながら、神門は、愚神は、険呑な光を瞳に宿し、一足飛びにセリカに肉薄、手の錫杖を振り下ろした。セリカは攻撃される可能性に細心の注意を払っていた。神門との距離も取っていた。
 だが、セリカの移動力より神門の移動力は上だった。
 神門の攻撃は想像以上に正確だった。
 そしてセリカの防御力より、神門の攻撃力は遥かに上だった。
 崩れ落ちたセリカ目掛けて久朗とアークトゥルスが同時に駆け出し、援護すべくリンカー達がそれぞれ攻撃を放ったが、それは地に伏せた筈の、起き上がったゾンビ達の腐肉の壁に阻まれた。一度倒されようとゾーンから発生するウィルス型従魔に取り憑かれれば、ゾンビは蘇る。何度も何度も。
 神門は錫杖に靄をまとわせ、動かないセリカの細首目掛けて打ち落とした。だが、その前に久朗が割り込み無骨な槍で錫杖を止め、その隙に治療薬を自身に投与したアークトゥルスがセリカを抱き上げ後方に走る。
「なんだ、次は貴様が相手をするのか?」
 神門はにぃと笑みを浮かべ、錫杖で再び久朗の身を打ち据えた。回避したいが神門の攻撃の技量は高く、容赦なく久朗を殴打する。幸い久朗の身にダメージはないが、攻撃を受ける程に、ゾーンにいる時間が長引く程に肌は青白くなっていく。
 それに気付いた葵が久朗に接近しようと試みたが、復活したゾンビが葵の動線を遮った。他のリンカー達も銃で、魔法で、それぞれの武器でゾンビを撃ち抜き薙ぎ払うが、倒れても倒れてもゾンビは蘇りその手を伸ばす。
 久朗は重い身体で荒く息を吐き出した。神門が移動すればさらにゾンビの数が増え、生存者達にも危険が及ぶ。故に神門に張り付き、身を以て進撃を妨げるより他にない。
「ふん、肉体はなかなか頑丈だな。それでは、精神の方はどうだ?」
 神門がつい、と指を上げた。瞬間、靄が泥のように凝り固まり、四方八方から久朗の身に襲い掛かった。孤独。押し殺した心。失った人。鈍感になった己の感情。その奥に横たわっていた……
「なんだ、貴様にも闇があるのか。妬みか、怒りか、悲しみか?」
 神門の愉快気な声を最後に久朗の意識が遠退いた。久朗の肌は青白い。死人よりさらに青白い。
 葵はゾンビを振り切り、久朗に治療薬を投与しようと試みた。だが、久朗の腕が上がり、治療薬を葵の手から明後日の方向へ弾き飛ばす。割れた容器から薬液が零れ、神門の左手の甲に掛かった。神門は左手の甲を舐め、そしてにたりと笑みを浮かべる。

●撤退
 治療薬を避けなかった。
 治療薬を舐めて笑った。
 久朗が、恐らく操られ、神門に治療薬を弾き飛ばしたように見えた。
 それらの情報からストゥルトゥスは思考する。
『神門自身は治療薬を脅威としない? 浴びたい? 何故か』
『笑ったのは愚行への嘲笑? それとも思惑通りの意味?』
『脂汗を浮かべてたのに、治療薬をわざわざ受け続ける理由は?』
『神門は治療薬を浴びたい?』
『以前、鬼の面をつけたモノが多量の治療薬を狙いにきた』
『神門はウィルスを無尽蔵に生む。そこに大量の治療薬を浴びせ、ライヴスニューロンで治療薬の情報が伝播したらどうなる?』

『考える最悪は、神門は、治療薬耐性のあるウィルス従魔を作ろうとしている?』

『マスター。主導権、いい?』
 「ん、OK」とのニウェウスの了承を受け、ストゥルトゥスは裏から表へ意識を浮上させた。ニウェウスより軽快な口調で、少しだけおどけるように通信機で仲間に呼び掛ける。
「はい、警告! やっぱりアイツ、治療薬耐性のあるウィルスを造る気かも。薬剤耐性ウィルスに近いやり方でさ。避けなかったり使わせたり。怪しい訳だよ!」
 リンカー達の思惑を知ってか知らずか、神門は喉を軽く動かし、それから久朗に視線を送った。久朗の瞳は正気を取り戻しているが、その肌はいまだ青白い。もう一度操ってやろうと、神門は錫杖を掲げようとし、
「……ところで、結界、壊したいんでしょう? 自分でやったら良いのに。配下にばかり向かわせてないで、さ。それとも」
 ぴたり、と愚神の動きが止まり、何処までも紅い少女に刺すような目線を送りつけた。炎の様に、血の様に紅い少女……アリスは、わざわざ一度区切った上ではっきり言葉を投げ掛ける。
「……何か、自分では行けない理由でも?」
 近くでならまだしも、境内で見つけたって聞いた事が無い。戦略だ何だと言われたらそれまでだけど。そのような意図で淡々と投げられた問い掛けは、神門の瞳をあからさまに鋭くした。それに対しアリスは表情を変える事なく、やはり淡々と問い掛ける。
「ねぇ。四国から出られない気分はどう?」
「余程私を怒らせたいようだな、小娘」
 神門は掲げた錫杖を、アリスの方向へ振り下ろした。それを合図にゾンビ共がアリス一人に雪崩れ込む。
 アリスはそれに対し呪符「氷牢」で氷の杭を作り出し、リフレクトミラーで乱反射させゾンビの群れに降り注がせた。氷の杭はゾンビの脳天に突き刺さり、あるいは囲む柵となって亡者共を足止める。
 神門の注意が逸れた隙に喜久子が久朗にクリアレイの光を放った。肌の青白さを治す事は出来ないが、付随する状態異常の一つを解く事は出来る。
 それに気付いた神門が久朗を振り返ろうとしたが、香月のLSR-M110が愚神の左手を撃ち抜き遮る。葵が久朗の腕を取り、もう一本持っていた治療薬を投与する。肌の青白さが消え失せたのを確認し、喜久子は今度はケアレイの光で久朗の身を包み込んだ。
「これ以上重体者は出さない。まして死亡者など決して出させん」

「王さん! こっち側終わったみたいっす!」
 セリカを安全地帯に届けた後、自衛隊員の撤退を確認、耿太郎は声を張り上げた。アークトゥルスは念のためと十字架の盾を構えたまま耿太郎へ鋭く返す。
『分かっている。味方リンカーの状況を確認後、我等も下がるぞ』
「すいません、車をこちらにお願いします」
 夜中が残っていたブレイブナイトに車を回すよう要請した。リンカー達の撤退に気付いた神門が追おうと足を動かす――寸前、葵のリンクバリアの恩恵を受けた久朗が、またもや愚神の眼前に壁となって立ちはだかる。
「行かせない」
 強い意思を見せる瞳を、厭うように神門は錫杖を叩き込んだ。ウィルス型従魔が体内に入り肌が再び青白くなる。だが久朗の意識が飛んでしまう事はない。
 神門はさらに追い撃とうと錫杖の狙いを定めたが、アリスの放ったライヴスの業火が神門の足元を這い上がった。神門が一瞬気を取られた隙に、香月の差し向けた銃弾が神門の喉に穴を開ける。
「今回ばかりは貴様の首はお預けにしてやる。だが今度会う時こそ貴様は棺桶の中だ。せいぜい遺言を書いておくがいい」
 駆け出したリンカー達をゾンビの群れが追おうとしたが、ストゥルトゥスのブルームフレアが死肉を一瞬で焼き焦がした。それでも手を伸ばす亡者共へ、夜中が車上からカチューシャMRLを展開。
 翼のように広がるマルチプル・ロケット・ランチャーから、16連装の細身ロケットが次々と発射された。轟音と土煙を置き土産に車はリンカー達を乗せて発進、敵が追ってこないのを確認後夜中はふうと息を吐く。
「久しぶりのちゃんとした戦いだったけど、とりあえず今回は無事に生きて帰れる、かな」
 そして空羽に手を伸ばし、手触りを楽しむように白銀の頭をなでなでした。

●疑問
「ほっんとそういうの好きだよね……」
 『戦利品』を眺めながらウェルラスは感想を口にした。葵の手にあるのはハンディカメラの映像のバックアップファイルと、インスタントカメラで撮った写真を現像したもの。
 ちなみに写真は、
『(なんでまた写真を)』
「(どうせ聞いたってご本人は忘れてるか知らないかしか答えねぇんだろうからなー)」
『(?)』
 というやり取りを交え、こっそりひっそり撮っていた『神門の正面からの"顔"』である。(なお、ネガは葵が保管している)
「好きなこたぁ否定しねぇがそれだけじゃねぇよ。今回は本体サンが過去の遺物だとしても、やり口が妙に現代的すぎんだよ。奴さんの思想も理念も読み取れん以上そっち攻めるしかなーいの」
『ほんとかなぁ……』
「後から実は~ってされんのが一番厄介なんだよ。そうじゃないにしても、そうじゃないことを確定させにゃならんのさ。尖兵はツライねぇ」
『尖兵役はほんとに好きでやってるくせに……』
 などと軽口を交わしつつ、葵はデータと依頼をH.O.P.E.へと提出した。依頼内容は屍国の事件発生前からの行方不明者データとの付け合せ。寺院仏閣関係者、特に高僧を中心に。神門は行方不明者の誰かの身体を乗っ取っているのではないか、と考えたのがその理由だ。
 調査の結果、行方不明者データの中に該当なしとの回答が出た。やり口が妙に現代的過ぎるというのは否定出来ないが、少なくとも行方不明者の中に神門と同じ顔はいない。
 疑問は残るが、少なくとも後から「実は」という事はなさそうだ。葵はじっと写真を見た。「心霊写真ならコッチの方が撮れそう」と少し期待していたのだが……残念ながら、そちらのアテも叶わなかったようである。

「(最後の攻撃では操られなかったな)」
 葵から借りた映像を見ながら久朗は戦闘を思い返した。洗脳のような状態に対し、久朗は色々な要因を考えていたのだが、『特殊抵抗が低い』が理由なら久朗は最初の一撃で操られていたはずである。『負傷が多く出血していた』『神門の攻撃を多く受けていた』が原因なら、最も負傷していた最後の一撃でも操られていたはずである。
 となると考えられる要因は。
「肌の青白さ……体内のウィルス従魔量か」
 久朗は最後の一撃を受ける前に治療薬を投与された。また喜久子は「”感染”した者が味方に襲い掛かっていた。一時的な洗脳状態と考えられる」と言っていた。肌の青白さが一つの目安になる、治療薬の事前、もしくは事後の投与で対抗する事が出来る、と考えてもいいだろう。
 そして治療薬の効果についてもう一つ。神門の左手の甲に治療薬が掛かった後、香月の銃弾が同じ箇所を貫いた。そこだけ傷の治りが遅い事をカメラの映像は捉えていた。神門の肌に残った治療薬がウィルス型従魔を相殺したのかもしれない。回復能力に影響を与える効果は期待出来そうだ。
 とは言え神門が治療薬を取り込み、耐性を作ろうとしているのも恐らく間違いないだろう。
 どうやら治療薬は諸刃の剣であるらしい。

「ところで、どうして神門はあの場所に現れた?」
 アリスは見極められなかった疑問を小さく口にした。善通寺に襲撃者は現れず、襲撃場所よりさらに外の包囲網に神門の痕跡は確認出来ず。つまり神門の目的は陽動でも包囲網突破でもなかったという事だ。
 また、能力者と治療薬を狙ったというのも、偶然の要素が大き過ぎる。
 ただの気まぐれだったのか。
 それとも。


 生者達が去った後、神門は傅く屍共の只中にいた。美しい顔には紅い少女の言葉への怒りがまだ残っているが、それを反転させるように神門はくっと笑みを零す。
「出て行くとも……この忌まわしき地から必ずな……さあ新たな駒共よ、私に手を貸してくれ」

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

重体一覧

  • 繋がれ微笑む『乙女』・
    セリカ・ルナロザリオaa1081

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • 絶望へ運ぶ一撃
    黛 香月aa0790
    機械|25才|女性|攻撃
  • 偽りの救済を阻む者
    アウグストゥスaa0790hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 繋がれ微笑む『乙女』
    セリカ・ルナロザリオaa1081
    人間|18才|女性|命中
  • エージェント
    リゼアaa1081hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 実験と禁忌と 
    水落 葵aa1538
    人間|27才|男性|命中
  • シャドウラン
    ウェルラスaa1538hero001
    英雄|12才|男性|ブレ
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 希望の格率
    君島 耿太郎aa4682
    人間|17才|男性|防御
  • 革命の意志
    アークトゥルスaa4682hero001
    英雄|22才|男性|ブレ
  • エージェント
    美咲 喜久子aa4759
    人間|22才|女性|生命
  • エージェント
    アキトaa4759hero001
    英雄|20才|男性|バト
  • エージェント
    空亡 夜中aa4827
    獣人|16才|女性|攻撃
  • エージェント
    狗猫 空羽aa4827hero002
    英雄|8才|男性|バト
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