本部

お気に入りの武器を教えて

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2017/06/29 16:11

掲示板

オープニング

● AGW開発局より協力のお願い。

 皆さまいつも弊社製品ご愛用いただき誠にありがとうございます。
 つきましたは皆さまにご協力のお願いがあり、連絡させていただきました。
 私どもは常にAGWの使用感の情報収集を怠っておりませんが、その武器のスペシャリストたる皆様と直接意見をかわしたく思い、武器愛好家の集いへご招待いたしたいと思っております。
 日時は下記に記載いたしますので、確認後参加可否を連絡いただければ幸いです。
 それでは急ぎとなってしまい申し訳ありません。それではよろしくお願いします。

●武器愛好家の集い?
 君たちにそんなメールが届いたのはつい先日のこと。
 たまたま君たちにはその日予定がなかったために、参加することにしたのだが。
 なんだか団体名が胡散臭い。武器愛好家の集い?
 確かに愛用している武器はある。だが……。
 そう思いつつも当日君たちは大人しく。相棒を担いでリムジンに乗った。
 迎えのリムジンが君たちを運び。そのリムジンが停車してから降りると、目の前にそびえたっているのは豪邸だった。
 ライトアップされた並木道。ごうごうと水を噴出させる噴水広場はかなりの広さがある。
 その奥に大きく開かれた扉。赤いカーペットにならって先へ進むと。
 突然扉が閉まった。
 え? 
 そう混乱するのもつかの間。
 高らかな笑い声と共に投げつけられたのは大型な旗である。
 それを間一髪でよけると君たちは槍を投げた主を見た。
 それは義手をバチバチと放電させながら君たちを見定めた。
 お堅い軍服、胸には勲章。
 悠々と旗を構えるその姿は、たまにH.O.P.E.で見かける司令官『アンドレイ』である。
「ふははは、よくきたな、若きスペシャリストたちよ!」
 なんでも彼が言うには、武器愛好家の集いの仲間に入るためには、武器愛好家の集いのメンバーを倒さなければいけないらしい。
 こんな面倒なことになるなら来なかったのに。
 そう君は思ったかもしれない。だが。
「何を呆けている。貴様と、貴様の相棒、その絆と実力示して見せろ」
 そう言われてしまえば戦うしかない、君は耽美な服を気にしつつ武器を手に取った。

●ドレスコードについて。

 夜の社交場にふさわしい姿でおいでください。
 きわめてフォーマルに、しかし女性は大胆に、長いスカートは動き辛いです。
 今回の皆さんの参加条件は大切にしている武器があること。
 そしてその武器一本だけしか持ち込めないことです。
 もしAGWが複数登録されていても一番上のAGWしか使えません。
 防具は普段通りに装備してくださっても構いません。
 では襲ってくる武器愛好家の集いの皆さんを紹介します。
 また、字数に余裕があれば欲しいAGWについて書いてみてください。

解説

目標 武闘会を無事に終える。
 

バグパイプの『シノ』
 武器愛好家の集い会長。まだ流通の少ない楽器系AGWのスペシャリスト。
 もっと楽器系AGWを広めたい。
 マンチカンのワイルドブラッドで、なんと耳を自在に開閉できる(戦闘に影響を及ぼすほど音をカットできるわけではない) 
 見た目は驚くほどに猫っぽい。
 武器はバグパイプ、その音色で攻撃する。自身を中心に23SQ全体に攻撃が届く。
 能力は高レベルのソフィスビショップ。中距離線を得意とするため、それなりに防御力も整っているが所詮はソフィスビショップ。

戦旗の『アンドレイ』
 かつて最前線で愚神と戦う存在だったが、深い傷を負ってしまい引退した。
 鳴海の依頼でちょくちょく説明役に出てくるあの人。
 今回は二メートルを超える旗を持って登場。
 攻防一体の武器となっており布部分でのガードと柄の部分の打撃を得意とする。
 戦ったことがあるもののいると思うので、旗の経験者であれば対処はしやすいか。
 彼自身はアイアンパンクだが、共鳴している英雄はわからない。
 一応共鳴しているが今回はスキルは使ってこない様子なので存分に殴ろう。


双槍の『ゲロニカ』
 短槍を二本使う。それぞれに特殊な効果があるらしい霊力無効化……もしくは傷を治りにくくする呪いか……
 見た目はうら若き少女、十三歳。縦巻ロールが特徴的なおてんば娘だが……性別は男である。
 女の子でいる自分の方が好きらしい、恋愛対象は女性である。
 正確は苛烈にして挑発によわいが、獣か! というレベルで第六感が鋭い。
 ステータスは人間のカオティックブレイド。
 槍を召喚して射撃してくる。強い(確信)
 残念だが自害はしない。

 ここで収集したデータを元に新しいAGWの開発もしていくようなので、よろしくお願いします。

リプレイ

プロローグ
「はにゃー、ごいすーな豪邸でありますねェ」
『美空(aa4136)』はその大豪邸を見あげると、ひとつため息をついた。
『ひばり(aa4136hero001)』が『バカには見えない盾』もとい『あなたの美しさは変わらない』をリムジンのトランクから引っ張り出している。
 二人はただでご飯が食べられると思い。みえないくせにバカみたいにかさばるそれを無理やりにリムジンに押し込んで、粛々と現場に来てみれば生まれてこの方見たこともないような豪邸であったので、感心したように口をあけることしかできなかった。
『依雅 志錬(aa4364)』はスカートを翻して石畳を歩む。
「エミヤ姉はよくわからないのでロングワンピースを借りてきたんです」
 そう『S(aa4364hero002)』が注釈を挟む。
「動きにくかのう…………。ないごてこげん恰好ばせねばならんとがじゃ」
『島津 景久(aa5112)』が問いかけると『新納 芳乃(aa5112hero001)』が答える。
「パーティなのですから。最低限の礼儀です」
景久は黒いスリムタキシード、芳乃は桜色のイブニングドレスで背中が開いてる。まさにこれから社交、と言った感じの雰囲気だが、その手に担いだ刃がぎらつきまったく穏やかではない。
 装備武器はチェーンソーを太刀のようにも見える形にした鎖鋸大刃「骸鬼」
 何か不穏な雰囲気を感じつつもその後ろについて歩くヒバリと美空。
 後から来る人の邪魔になるので、邸宅を始めて見た衝撃を胸に秘めつつ。そそくさと邸内にすすむことにする。
 ちなみに二人は、相変わらずのセーラー服である、清楚にして可憐。何も問題はない。
「フォーマルな格好か」
「こういう場合、イメージプロジェクターは本当に優秀ですわ」
「下手すると一番役に立ってるかもしれねぇな」
 そうつげた『赤城 龍哉(aa0090)』は白い上下のスーツに黒シャツ&白ネクタイ。ついでに白いソフト帽。帽子は優しい男の視線を隠すためにある。
 少し深めにかぶってにやりと不敵に笑って見せた。
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』はいつものドレス風、羽織った銀糸のショールが風になびいた。
 だがそんな一行が邸宅に入ってみれば、巻き起こるのが例の事件。
 突如登場したアンドレイに、その背後から続くバグパイプの音色。そして双振りの槍。
 あまりの展開についていけず、唖然とたたずむ『ルナ(aa3447hero001)』である。
「えええええ?」
「ええと、いつも使ってる武器で貴方達と戦えばいいんですよね? それならお安い御用です!」
『世良 杏奈(aa3447)』はそう高らかに告げてルナの手を取った。
「新しいAGW開発ってのも気になってるし、興味深いトコロだぜ」
 そう高らかに宣言したのは『東海林聖(aa0203)』
「実力者との戦いなんて滅多にない機会だしな、全力で行くぜ!」
「……楽しむ姿勢も……こう言う時は大事なんだろうけど……」
『Le..(aa0203hero001)』はやっぱり思ってしまう。やっぱりヒジリーはヒジリー……。
「……怪我しないって話、偶にすっぽ抜けてそうな」
「いや、そんなコトねェよ……! さて、今回はちっと『剣』以外の方が"取り回し"が良さそうだしな……!」
「……ルゥ……こういう武器良く解らないし……」
「まぁた厄介事に足突っ込んじまったカンジ?」
『一ノ瀬 春翔(aa3715)』が携帯灰皿に煙草を押し込むと、幻想蝶に手をかざす。直後『エディス・ホワイトクイーン(aa3715hero002)』が共鳴。
――でも楽しそう……がんばろ? おにぃちゃん!
 その言葉に不敵な笑みで答えると、身に纏ったタキシードがバタバタと揺れる。
 幻想蝶から溢れる光が形をなし。次いでその手に握られたのは長柄。
 徐々に伸びていくその柄を掴み一気に引き抜くと大刃の愛武器『ラッキーストライカーKS』が地面をえぐる。
 だがそんな一行の間に入ったのは『カリスト(aa0769)』
「どうして、愛好会の方々がッ……!? 皆さん、今すぐ攻撃をやめてください!…………ああもう、話を聞いてよッ!」」
一方的とはいえ、悪意のない相手に矢を向けるのは気が引た。どうにかして、彼らを傷付けずにこの「試練」を終わらせたかったのだ。
 そんなカリストを見て『アルテミス(aa0769hero001)』は思う。
(カリストー……慈悲深くも愚かな、かわいい娘。どうやら、また余計な愚慮に頭を悩ませているようだわ)
たとえ閑暇の戯れであろうと、神聖な狩りの場に、情け容赦など無用だというのに)
 そしてその言葉など一切聞き入れず、愛好家たちは刃を構えた。
「やるぞヴァル、凱謳。準備はいいか」
 龍哉が告げるとリンカーたちも武装を構える。
――私はいつでも。
《Yes.I’m also ready》
 その龍哉に背を合わせるように『リィェン・ユー(aa0208)』が立つ。
「じゃあ、僕たちは、あのバグパイプの人の相手をしますね」
 そう『イリス・レイバルド(aa0124)』が告げた。
――まぁ、特に拘りたい相手もいないことだし。
 『アイリス(aa0124hero001)』があっけらかんと告げる。
「音楽対決?」
――武器が楽器と存在が楽器の違いはあるけどね。

 こうして熱い夜会の火ぶたが切って落とされるわけである。



● 呪いの槍
 戦いが始まるや否や、ゲロニカは不敵に笑って壁を走る。そのあまりの俊敏さに皆驚いたが、 志錬は素早く獲物を抜く。
「真面目にやって」
 本日の相棒はゲロニカと同じく双槍《白鷺》/《烏羽》である。
「殺すから」
 直後投げ放たれる槍。その槍は複雑な機動を描き、蛇のアギトのごとく、シノ、アンドレイ。そして背後からゲロニカに襲いかかる。
「速さが足りないね!」
 しかしそれを楽々と叩き落とすゲロニカである。
 それを見た志錬は槍でスカートを切って短くしておく。自由になった足で地面を踏みつけて、帰ってきた槍をその手に収める。双振りの槍を回して。そしてゲロニカの突撃を槍で受けた。
「ん、いい趣味ね」
 志錬はそうゲロニカにだけ聞こえるように小さくつぶやいた。
「僕の正体わかるの?」
 その言葉に答えず志錬はゲロニカをはじいた。
「行くわよゲロニカ! 乙女の鉄拳を食らいなさい」 
 直後着地したゲロニカを特大級の拳が襲った。
「ち!」
 避けそこね。拳を受けて壁に激突するゲロニカ。その左右から志錬と聖が迫る。
 ゲロニカは横なぎに槍を振るった。それを屈んで聖は回避。槍が同じ軌道をなぞって戻ることを恐れた聖はそれを手斧で叩いて、槍の先端を落とし。もう片方の手斧で切りつける。
 それへのゲロニカの対応は早かった。
 もう片方の槍で志錬の一撃をそらし、地面に槍を突き刺した。
 フリーになった手で聖の手首をつかんで、手斧を回避、そのまま志錬に投げつけようとしたのだが。
 ぱんっと乾いた音が鳴ってはじかれたようにゲロニカは後退する。
 見れば聖の手斧が硝煙をあげていた。
 重内蔵型の手斧だ。すっかり見誤っていた。
 ゲロニカは額を伝う血をぬぐって舐める。
「相手が双槍か…………!」
 聖は確かな手ごたえを感じながら、両手の斧を握り直す。
「双槍使いってのも珍しい……な半端な使い手なら後れを取る気はしねェけど」
――今の動き、戦闘にそうとう、なれてるよ。
「わかってる、甘く見る気は毛頭ないぜッ!!」
 次いで聖は飛ぶように地面を駆けた。
 その斧による奇襲を潜り抜けて。円軌道を描いた石突が聖の腹部を強打する。
 次いで襲ってきた志錬へ迎撃するために、槍を投げるが、直後襲ってきた。粒上の魔法弾にて、槍の切っ先がそれる。
「魔法少女ルナティックローズ参上! アルスマギカの力を見せてあげるわ!」
 歯噛みするゲロニカ。真っ向から迫る志錬に対応しようにも武器がない。
「杏奈、ホントに着替えちゃダメ? ちょっと恥ずかしいんだけど……」
「大丈夫よ、すぐに直るように出来てるから♪」
 マジカルドレスの裾を恥ずかしげに引っ張りつつルナはハート形の魔法弾を放つ。
 それをゲロニカは掻い潜って。志錬をステップで抜く。腹部を斬撃されたが、その痛みを無視して体をひねり、槍を手に取って着地した。
 そして。
「この子の前では魔法なんて!」
 直後ルナの放つ魔法弾。それを切り裂くようにゲロニカは槍を投げた。
 魔法弾を切り裂き、ルナに到達するその槍は、ルナが這った障壁ごと。ルナの衣装を食い破った。
「きゃああああ!」
「うわあああ! なんで!」
「やっぱり恥ずかしいわよこの衣装!」
 ゲロニカも悲鳴を上げる。当然だろう、なぜか少女の衣装がはじけたのだ。幸い虹色の光が周囲を包みすぐに修復が始まったのだが。
 驚きもするだろう。
「やっぱりあれは、ゲイ・ボウ? ゲイ・ジャルグ?」
 志錬は反転、そう呟きながら素早くゲロニカへ向かう。
 戸惑いの淵のゲロニカに殴り掛かったのは聖である。
「おいおい、俺は無視か?」
 聖の両手の刃を槍で抑える聖。
「僕はピュアなんだよ! あんなものみせられたら」
「その恰好でその主張は無理がありすぎだ!」
 聖は直感的にゲロニカを蹴り飛ばした。ゲロニカは小石を蹴り上げようとしてたのだ。
「……ま、折角の武を競える場だからな、コレは封じてやり合わせて貰うぜッ!!」
 底からは聖の攻撃の嵐である。
 中距離から銃を乱射。これは当てるためでなく、敵の逃げ道をふさぎ、防御に徹しさせるため。
 次いで右手の斧を振り上げる。
 槍でそれを捌いて、ゲロニカは足を切りつけた。
 それを聖は飛んで回避。連蹴り、着地。逆手で伸び上がるように切り付け。膝に向けた銃口から弾丸を放つ。
 ゲロニカの体制が崩れる。背後から迫る志錬。
 その槍を屈んで回避。打ち出すように心臓めがけてゲロニカは聖の心臓へ槍を放った。
 それを的確に銃弾ではじいてそらす。聖の脇腹を槍がかすめたが出血は大したことない。
「なんで避けれるの!」
「俺だって直感は負けてねぇ」
 ゲロニカは思わず志錬へと振り返る。このままでは挟み撃ちされて終りである。
 であれば。
「カズィクル!!」
――それはあなたが使っていい技じゃ!!
 Sが驚愕の突っ込みを入れる中、ゲロニカは地面に槍を突き立てた。すると。無数の刃が、邸内の石畳砕いて生える。
 それを志錬は飛びずさって回避。
 傷だらけになりつつも致命傷は受けてない。
 問題は聖。
「やったか?」
 もうもうと立ち上る土煙の向こうに、奴はいた。
 聖である。
 その瞳はぎらついていた。血を流しながら。高らかに告げる。
「最速で打ち抜けるぜ、ルゥ!」
――…………終わったらご飯……
「千照流・破旋ッ!!」
 その手の刃が無数にゲロニカに突き立てられる、銃弾も交えた回避不能の飽和攻撃。
「一対双撃の連武、捌き切れるならやって見せろッ!」
 だがゲロニカはそれを避け続けた。斬撃、銃弾の多くはその身を穿つ、しかし致命傷は全て裂けていた。
「ここ……」
 その隙を志錬は逃さない。志錬は再びゲロニカに最接近。
「―真名拝借、擬似宝具開帳……」
 初手で相手の直前まで踏み込み、眼前で跳んだ後対象を片方の槍で地面に縫い付ける。
「一刺曰く……死(われ)、必定なり。故に」
 その後突き立てた槍先を足場に飛び上がり、もう片方の槍で全力の投擲を見舞う。
「散れ、『衝き穿つ刹雅の槍』!」
 そのミサイルのような一撃を身をそらして直撃は防いだ。だが前身血まみれになってかろうじて耐えているそんなゲロニカ、その背後からルナが迫り。そして。 
「槍には槍よ! サンダーランス!」
 閃光が建物を切り崩して空を焼いた。

●響きあう旋律。
アルテミスは構える三人を見て不敵に笑った。
「あらあら、まあまあ、ふふ…………随分と気の利いた余興だこと…………」
 そしてカリストへ手を伸ばし告げる。
「さあ、カリスト、私の手を取りなさい――共に愉快な円舞曲を踊りましょう!」
 直後戦場に響いたのは極めて民族的な音楽、鮮烈なギターでもない、響くようなピアノでもない。軽快で陽気でしかし耳に残る民族楽器バグパイプの旋律である。
「いい音色だ、ここは私がやろう」
 そう黄金色の輝きに包まれたとたん、イリスとアイリスの人格が入れ替わる。
 そして鱗粉をはじけさせてアイリスが飛んだ。
 その手には身に余るほどの巨大盾。しかしその盾を紙の束のように自在に振り回すアイリス。
「音系の攻撃は音圧や、神経に直接働きかけてくるもの。周囲に干渉して事象現象を操るものと多彩だがね」
 アイリスはバグパイプによる攻撃手段を続々と解明していく。
「今回は、新駅に作用するタイプかな」
 盾をまるでうちわのようにふり、轟音と風圧で音を遮断。それだけではない。
 震える翼の粒子、舞い散る黄金の花びら。光が妖精を祝福し。荘厳なる三重奏が真っ向からバグパイプの音色に食らいつく。
「ははは、見事な音色だ。だが音楽家にも体力というものがあるだろう? 体力勝負と以降じゃないか」
「うにゃー、そうきたかにゃー。時間がかかりそうだにゃー」
 シノはそう告げながら頭を抱え、改めてバグパイプの出力を上げていく。
 そんな光景を左右に見ながら美空は棒立ちになっていた。
 二人が声を、音を発するたびに、テニスの観客のように視線をあっちこっちと向けて頷く。
 と言っても、彼女が装備する透明盾は体にすっぽりかぶるタイプなので、そう見えるだけであって、立派に敵の攻撃をガードしていることにはなるのだが。
「さすがに耳が痛いであります!」
 そう告げながら美空はじりじりとシノに歩み寄っていく。
「うう、なんなんにゃお前等。なぜこうげきしてこないなんにゃ」
「北風と太陽!!」
 デデーンと腰に手をあてて、ドヤァと言い放つ美空。彼女も我慢比べに徹するらしい。
「こちらは情報収集もかねてだがね。ガデンツァ戦のために音のスペシャリストと戦っておくことは悪くない選択肢だろう」
――なるほど。
 イリスは頷いた。
 アイリス自身は単純な装甲の硬さよりも技術的な防御の硬さを誇っている。
 それに加え、結界エイジスとティタンは単純な防御の高さを底上げすると同時に技術ではカバーしきれない防御の隙間を埋めるため導入しているため、その硬さに磨きがかかっているのだが。
(まぁ、こんなことを考える必要が出てきたのはガデンツァの影響が大きいんだが……)
 ガデンツァは音系攻撃の中でも特殊の特殊。振動による分子、原子分解を用いて、触れてしまえば防御など関係ないという技を披露してきた。
 あれにはアイリスも舌を巻いたものだ。
 だが、いつまでもアイリスが後手に回っているはずがない。
「別にその音の壁を正面から叩き割ってしまっても構わないのだろう?」
 そう音の奔流を弾き、妨害し、打消し、時には風圧を用いて音を伝える空気自体を粉砕する。
 だがそれには戦場を満たす、情報というピースを的確に組み上げる必要があった。
 だがそれもまたアイリスの得意分野。
「イリス、今日は役割を逆転させよう。イリスは戦場の情報収集に専念するんだ」
――難しいよ……お姉ちゃん。
「何事も練習さ」
 アイリスは普段『暗殺、毒殺、謀殺が厄介だ』とイリスに教え込んでおり、そのためか視点は戦場全体で敵への一転集中はあまり好まない。
 その膨大な情報量を平然と捌く理由が『横槍一つで倒れるような安定感のない盾は頼れないだろう』とのこと、痛みを無視して怯まず微笑むのも理由の一つ。
「戦場の全てを把握して、的確な手段を講じること、戦場操作はとても重要だ。それの一番わかりやすい例は位置取りだろうか」
 そうこうしている間に、アイリスとシノの距離は手が触れそうな距離まで近づいてしまう。
 その場所にはすでに美空がいた。
 そのどや顔はどやあああああああ、くらいに進化しているものだから、シノの青筋は目に見えるほどに最大値。
「くうううう、お前等、戦えにゃ」
「これも戦いであります」
 武器を人に振るうことを好まない美空は堂々と胸を張っていった。
――正面突破です。
 イリスは告げる。するとアイリスが言葉を継いだ。
「別に正面突破は悪い選択肢ではないのだよ……可能な状況である事を忘れなければの話だが」
 そしてその盾を振りかぶる。次いで翼が大きく広がり一種のスピーカーと化した翼は周囲に鼓舞する音を放つ。
「にゃあああああああああ」
 その攻撃に危機感を持ったシノ。両手に神の威光であるイカヅチを満たし。そしてそれを至近距離からアイリスと美空に放った。
「はにゃ! 音が全く関係ない!」
 驚く美空。つんざく雷鳴。全てを焼き切る熱線となったそれはかつて、イリスの身を焦がしたこともある一矢だったが。
「まぁまぁの威力だね」
 アイリスはその中立っていた。美空も無事である。
「ああ、生きてた、よかった」
 青ざめつつも立っている美空。本当に死ぬかと思ったが、これも成長の成果だろうか。
 次いでアルテミスによる射撃。それがバグパイプを弾き飛ばして、そしてアイリスは盾を地面に突き立てた。爆風。そして瓦礫が詩乃を吹き飛ばし。
 次いで床に転がったシノは白いハンカチを振って告げた。
「降参にゃ」 



● 夜会の老兵
 二人が戦いを始めると同時にアンドレイは再び旗を靡かせた。
――……旗 !旗だよ! おにぃちゃん!
 エディスが興奮した調子でつぶやく。
「だな。全く縁のある……」
 戦旗は自身で使い、そして嫌というほどに使われた代物でもある。それに故に警戒するべきは遠距離攻撃の無効化だと知っている。だが。
「……このメンツにゃ不要か」
 春翔は龍哉とリィェンを見た。
「武器愛好家と言われたらこいつの発案者として参加しない訳にはいかないだろう」
 リィェンは軽々とその刃を振るって見せる。屠剣「神斬」その切っ先がぎらついた。
――そのせいでこの面倒な状況に巻き込まれたんじゃがな。
「うぐ……」
『イン・シェン(aa0208hero001)』に突っ込まれると苦い表情を見せるリィェンである。
(俺のはそれに加えて俺好みに色々いじっているからこういった催しは楽しみだったんだが……ま、互いに愛着ある獲物を自慢し合うにはある意味この内容でがちょうどいいのかもな)
 直後アンドレイが動いた。旗が風を受けないように布を一直線に靡くようにして。龍哉とリィェンめがけてふりおろす。
 だが。
「おれも、旗の運用に関しては知ってるからな」
 龍哉が素早く懐に入って。アンドレイの持ち手に近い部分を剣で止める。この方が少ない力で受けられるのだ。
「だが、拘りの武器を持って参加せよって事なら」
――消極的である事に意義はありませんわ。
「赤城波濤流、赤城達哉…………推して参る!!」
 直後龍哉による剣撃の嵐、それをアンドレイは懐に潜り込まれた不利さ事受け止め刃をかわす。
 それにリィェンも参加した。
 剣による攻撃を布部分で絡め捕って抑えて。柄で龍哉の斬撃をはじく。
 剣が強く引っ張られて体制を崩したリィェンへ、布を解いて、素早く石突での強打。
 吹き飛んだリィェンに追撃を仕掛けようとした瞬間龍哉が間に入り。
 アンドレイはそれを囮だと看破。
 振り返って春翔の刃を受け止めて。旗で身を隠しつつ。接近してきた景久に掌底。
 距離を大きく話した。
「おう、こうでなくてはの! 鬼島津景久、ひっ飛ぶど!」
 そう笑う景久
――島津家臣が親指武蔵、新納芳乃。推して参ります!
 直後景久は鋸のエンジンをふかして、壁を足場に、アンドレイめがけて飛んだ。
「妙な武器使いおって、そげん旗で受けきれんが? そん旗ごと叩っ斬る!!」
「やれるかな? 風になびく旗は、切りにくいぞ?」
 アンドレイは真っ向から景久を迎撃。鋸を両腕ごとからめ捕って、そのまま壁へと投げつけた。
「だんだんわかってきたな」
「ああ、あれはオーソドックスな攻防一体型だ」
 龍哉と春翔は頷く。
 布部分と柄の部分での防御、そしてそこから反撃を狙う、戦旗の一番オーソドックスな形。
 だがそれ故に強固な防御性能と対集団戦の能力は他の武装より高いだろう。
 それ故に二人は理解していた。ここで距離を取るのは愚策。
「長物の扱いはこっちもそれなりにあるんでね」
 春翔は急接近、その刃で旗事両断しようと振るう。
「ま……俺等も面倒になるのは確かだが……。エディス!」
「はぁい」
 斧の刃の部分を布で絡め捕られる、旗お得意の拘束術、しかし今回ばかりは拘束されたのはアンドレイである。
 そのまま春翔は強く旗を引き引っ掛けた段階でレプリケイショットを放つ。
「ぐお!」 
 直撃、アンドレイが一瞬ひるんだ。そこにすかさず。
「滾れ、鎖鋸大刃! チェストォォッ!!」
 次いで飛び込んできた景久の刃がアンドレイの軍服をざっくり切り裂いた。
 次いでリィェンは垂れ下がった布をその手の刃で地面に縫い付ける。
「やっと捕まえたぜ」
――旗持ちの厄介なのはこの布なのじゃ。じゃが、逆に言えばこれが足かせとも言えるのじゃ。
 そのアンドレイを挟み打つように景久、そして龍哉が刃を振るった。
 それを素手で受け止めるアンドレイ。
「さすがアイアンパンクと言ったところか」
 だが旗から両手を離してしまった。
「旗とはしなるものだ」
 突如アンドレイがそう叫んだ、するとなんと。アンドレイは落ちていく旗の柄を地面に向けて蹴りつけた。べチンと痛そうな音が鳴って、驚くことに旗がバウンド。アンドレイの視線の高さまで持ちあがる。
 その柄を掴み、パワーにまかせて振るうと、布が破れる音がした。
 次いで全員をなぎ倒し全員から距離を取る、かなり無理やりで、一度目しか通用しない奇襲。だがそれでも有効である。
「さらに、布とは武器だ」
 アンドレイは布に霊力を通す、するとはためく布がいちまいの大きな刃のように硬質化。
 そしてそれを春翔に叩きつけた。
「なるほど。そういう使い方もありか。勉強になるぜ」
―― 余裕を見せて…………居る訳ではありませんわね。
 そう苦笑するヴァルトラウテ。防御を捨てて攻撃に特化した旗の姿を見て、やりにくそうだと感じる。だがその戦法は春翔もとったことがある。だから対応できる。
 即座に反撃ロストモーメントにて逆カウンターを狙う。
 お互いの鮮血が華のように散った、体に食い込む刃。その先に延びる柄。お互いがお互いにそれを掴み動きを封じる。
「そして男の最大の武器は拳だ!!」
「アンタめちゃくちゃだぞ!!」
 思わず叫ぶ春翔。目の前に迫る雷帯びたパンチ。だがそれが春翔に届くことはなかった。
「凱謳、カートリッジロード!」

《All right,master.Force-converter ignition!!》

 直後背後から浴びせるように叩きつけられた龍哉の渾身の意一撃
「ぐおおお!」
 高速が外れた。
「まだ終わらん! 鬼島津の意地じゃ!!」
 景久が続く。
 一撃目でショットガンを放って、硬質化した布を破壊。
 春翔は半身ずらして景久の攻撃にあたらないように配慮した。
 そして。
「首寄越せェェッ!」
――首はいけません!
 ストンと落ちる…………。腕。
 義手が破壊されたアンドレイは思わず両手を挙げた。
「降参だ」
「勉強になりました。ありがとうございます」
 龍哉はそう頭を下げると、アンドレイは気持ちよさそうに笑うのであった。


終章 武器談義
 その後、ぼろぼろになった邸宅内で、ぼろぼろになった衣装のまま全員がテーブルに着いた。
 傷の治療はしてもらったが着替える時間がなかった、というより着替えが無かった。
 アンドレイは、傷や汚れは戦士の勲章と言って笑ったが、不衛生な中での食事はなんとなく納得いかない一行である。
「いや、まさか男だったなんてな!」
 そう笑って聖はゲロニカの方を叩く。
「……エミヤ姉、あの人生きてる?」
 Sがそう問いかける。
「たぶん。リンカーだから、心臓穿っても」
「ソレ絶対平気じゃないからー!?」
「ボク、本当に心臓を狙われるなんて思わなかった」
 拳を合わせれば皆戦友。そんな感じで食事会は和やかなまま続く。
「ん~~やっぱり大剣を強化するSWかな」
 そんな中。欲しい武器を問われたときにリィェンは告げる。
「アックスチャージャーみたいなチャージするようなやつがほしいな……ただ、同じ能力だと斧使いに悪いし、他にないような色を出すなら射程+で直線方向への範囲攻撃が可能みたいなものがほしいな。
 イメージとしちゃチャージしたライブスで延長した刀身を形成してそれでその間合いの敵をみんなぶった斬るようなかんじかな」
 その隣で野菜を皿からはじいていた景久へ芳乃が苦言を呈していた。
「景久様、お野菜を残しておりますよ」
「い、いらん。芳乃、おまんさぁが食え。俺は芋で良か」
「なりません。残さず召し上がってください」
 対して好き嫌いしない美空はえらい。
 ただ、ご自慢の盾をタッパー代わりにして料理を持ち帰ろうとするのはいただけなかったが。
「って! 料理がもうないであります」
「持ち替えられるなら……美味しいうちに食べよう」
 そう、LEが全て食べてしまっていたのだ。
 さらに追加で運ばれてきた料理も、どんどん胃袋の中に入れていくLEである。
 そんなLEから最低限の食事を確保した春翔。エディスにステーキを切り分けてやりながら、アンドレイに話しかける。
「ふむ……ギミックの凝った武器なんかは欲しいねぇ。ちょっと前の爆発する鉈はすげぇ良かった」
「ああ、あれか、制作コストがな、なかなかに」
「私は使えればなんでも……あ、でも一つ。ね?」
 エディスはアンドレイが机に立てかけている旗を指さした。
「おっと、そうだ。その旗だよ、旗。そいつが一番欲しいな」
「ちゃんと攻撃にも使用可能な戦旗……お待ちしてます、ね?」
「望むところだ」
「私はネクロノミコンみたいな、有名な魔導書モチーフのAGWが欲しいです」
 黄衣の王・グラーキの黙示録・エイボンの書etc……等々である。
「それはサンプルがてに入らなければむずかしいだろうな」
 次いでアンドレイに語りかけたのは景久。
「見ての通り、細腕でのう。力を得るなあば、これに頼るしかなか」
元々、チェーンソーを使うことには乗り気でなかったらしい。しかし必要に迫られれば仕方ない。
「じゃっどん、今ん俺んとっては相棒じゃ。まだまだ俺は、リィェンや、赤城さぁには遠く及ばんが…………。いずれこいつと共に、肩を並べてみせるつもりじゃ」
 その言葉に笑みを見せる龍哉とリィェン、尊敬は悪くないがむず痒くもある。
「新しい武器の要望とかはないのですか?」
 芳乃がグラスをあけるとそう問いかけた。
「んー、火縄銃かの。島津とは切っても切れんでの」
「火縄銃を模した銃……であれば、簡単に作れそうだが」
 そう、真面目に構造を考え始めるアンドレイ。そんな彼の案にあれやこれやと口出しする夜会はとても楽しかった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 慈しみ深き奉職者
    カリストaa0769
    人間|16才|女性|命中
  • エージェント
    アルテミスaa0769hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 希望の意義を守る者
    エディス・ホワイトクイーンaa3715hero002
    英雄|25才|女性|カオ
  • 譲れぬ意志
    美空aa4136
    人間|10才|女性|防御
  • 反抗する音色
    ひばりaa4136hero001
    英雄|10才|女性|バト
  • もっきゅ、もっきゅ
    依雅 志錬aa4364
    獣人|13才|女性|命中
  • 先生LOVE!
    aa4364hero002
    英雄|11才|女性|ジャ
  • 薩摩隼人の心意気
    島津 景花aa5112
    機械|17才|女性|攻撃
  • 文武なる遊撃
    新納 芳乃aa5112hero001
    英雄|19才|女性|ドレ
前に戻る
ページトップへ戻る