本部

【爻】英雄世界-sora-

形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/07/05 19:11

掲示板

オープニング

●夢現
 ────『リライヴァー・アムネシア』とは。
 スマートフォン越しの怪音を聞いたライヴスリンカー(能力者)とリライヴァー(英雄)の多くが昏倒する怪現象。昏倒したリンカーの『絆』が不自然に弱まり誓約が解除に近い状態になった。
 特に英雄側の影響は顕著であり、一気に誓約前のような透き通った幽霊のような姿へと戻ってしまった者すら居た。
 だが、事件の規模が大きくなかったこと、対応に当たったH.O.P.E.とH.O.P.E.技術開発研究紫峰翁センターの素早く的確な対応により、この騒動は数日で解決。影響を受けたエージェントたちは意識を取り戻し、英雄との絆も元の状態へと回復した。
 被害者たちには定期的な観察は行われているが『リライヴァー・アムネシア』の後遺症は特に見られず、彼らは日常へと戻っている。
 一般に報道する前に被害者たちが全て快復した為に事件報道はほぼ解決後のものとなり、報道はされたものの社会からの感心はすぐに薄れた。

 だが、一部、リライヴァー・アムネシアに罹患したものの昏倒せずに事件解決に協力したというエージェントたちは「謎の一日」を経験しており、彼らの記憶と実際の日付のズレが見られた。
 また、能力者たちは紫峰翁センターの担当職員からリライヴァー・アムネシアに対して、能力者と英雄、それぞれ異なる説明を受けており、特に能力者は「愚神ヌル」という存在を示唆されたという。また、ある英雄からは治療に使用したVR世界で担当職員の不適切な指導により能力者へ攻撃をしかけたという苦情もあった。
 H.O.P.E.および紫峰翁センターは、担当に当たった研究者に確認を取ろうとしたが、主な対応・治療を担当した水田 夕笥は関連資料を持ったまま行方不明となっており、そのまま現在へと至る。
 水田の失踪により、リライヴァー・アムネシアの原因、及び詳細は未だ解明されていない。



●独白
 暗い部屋にコンピュータ機器の光がちかちかと瞬く。ねっとりとしたライヴスの満ちたここにおいて光は深海を模した水槽に潜む発光漁のようであった。
「ライヴスを集めるために、リンカーが邪魔をするのなら、それを先に駆除した方が結果的に早くライヴスを集められる気がします」
 ラボコートをしっかりと着込んだ一人の男が呟く。
「ライヴスリンカーはリライヴァーが居なければただの弱い人間です。ならば、彼らをライヴスリンカーたらしめる『リライヴァー』を排除すればいいのでは、ずっとそう思ってきました」
 床まで伸びた長く真っ直ぐな髪。動かない瞼の下の青碧の瞳は、大きな瞳孔が開いたままだった。
 彼は簡易テーブルに並べられた無数の紙コップのひとつを手に取って、中の水を喉へと流し込んだ。
「今まで散々失敗して来ましたが、ここへ来てようやく光が見えました。あなたのお陰です、ありがとう、真央老人」
 男の視線の先にはすでに動かなくなった真央室長そっくりの老人の遺体があった。
「リンカーたちの前に姿を現すことは避けたいと思っていましたが、視せるくらいは我慢としなくては……そのお陰で」
 ふわりと微笑んだ彼は遺体の前のキーボードに指を走らせた。

「リライヴァーを排除するための『リプレイスメント』が漸く完成致しました」

 男の姿をしたそれの名前は「愚神ヌル」。
 戦場へは現れない、か弱き愚神。



●箱を壊した末路
 ライラ・セイデリアが寝室のドアを開けると、一人の女が夫の側に寝そべっていた。
 ──また……。
 ライラは嘆息する。
 女はゆっくりと夫を『喰う』。
 眠って意識が無い夫のライヴスを少しずつ少しずつ……機械化された内臓を残してその女は男の全てを食らいつくす。
『あなたが嫌い、誓約なんて結ばなければよかった』
 感情の無い冷たい眼差しの女は、ライラ自身であった。

「──ん? 寝てたか?」
 目を覚ました灰墨信義が寝室の入り口に佇む妻に声をかける。
「……ええ、ぐっすりと」
 答えた妻の顔を見て、信義は眉を顰めた。
「ライラ、あまり体調が良くないんじゃないのか」
「ふふ、リライヴァーのワタシが体調不良?」
「それもそうか……」
 再び眠りについた信義の横で、ライラは小さく呟いた。

『もう駄目。狂いそうよ』



●幽霊草の戦ぐ街
 リライヴァー・アムネシアの経過観察として紫峰翁センターでの定期健診を受けたエージェントたち。
 彼らが外に出ると、どこかのスピーカーからラジオの音が聞こえて来た。
 ラジオパーソナリティーがアデリナという男女ユニットの新曲の紹介をしている。
『──それではお聴きください。曲名は、エヴェイユ』
 突然、激しい頭痛がした。
 スマートフォンが激しく鳴り、エージェントたちは反射的にそれを取っていた。
『お久しぶりです。紫峰翁センターの水田です。迎えを出します。急いでこちらへ来て頂けないでしょうか?
 リライヴァー・アムネシアの耐性をお持ちのあなた方にしかお願いできない依頼です』
 何か言おうとする前に水田が続ける。
『リライヴァー・アムネシアを仕掛けた愚神が、治療に使うVR世界『sora』に侵入、システムの破壊を試みています。偶然、僕の研究所へ来ていたエージェントが対応にあたるために先にsoraへログインしましたが──そこで邪英化しました』
 水田の声は早口であったものの、どこか落ち着いていた。
『リライヴァー・アムネシアの治療に使うシステムは偶発的にできたもので代わりはありません。だからこそ、僕がずっと守っていたのですが──』
 車のクラクションが鳴った。黒いSUVのドアが開き、ラボコートを羽織った女性が車内へ手招く。
『迎えが着いたようです、車内のネットワークからログインできますから、どうかゴーグルを着けてすぐにVR世界へ向かってください!』

 ラボコートの女が差し出したVRゴーグルを装着すると軽い眩暈が訪れて、車が停車した。
『ゴーグルを外してください』
 水田の声と共にゴーグルを外すと、無人のSUVのドアが開いていた。
 その向こうには異様な光景が広がっていた。
 ──幽霊草と呼ばれる植物がある。
 水晶蘭とも銀竜草とも呼ぶそれは、鱗のようなものを持ち、光沢のある白銀の姿をしている。
 風になびく人の背丈より大きなそれが、商店街に無数に生えていた。
 現実と幻想が入り混じったその世界に茶髪の青年が佇んでいる。
「やあ、僕を倒しに来たのかな?」
 穏やかに微笑むエルナー・ノヴァ(az0004hero001)はデーメーテールの剣をエージェントたちに向けた。
 その背後で、幽霊草たちが動いた。
 その子房の代わりの瞳孔の濁った眼球が、一斉にエージェントたちの方を見た。


『邪英化したリライヴァーはエルナー・ノヴァ。でも、安心してください。能力者と共に彼の体は研究所で眠っているだけです。彼とあの従魔を倒せば、このミッションは完了します』


 ぷつっと通話は切れた。

解説

●目的:従魔・幽霊草の撃破
1)前日譚:リプレイスメントを目撃する英雄(のみ)
2)幽霊草とエルナーとの戦い
を必ずお願いします。
難易度はやや難しい、嘘と真実を見極めてください

リプレイスメントについて台詞・特徴の記載と
MSによるアドリブが入るためNG行為の明記をお願い致します

引続きご参加下さった方は前回リプレイの特別室から退院し一度日常へ戻ってから、
新規の方は『リライヴァー・アムネシア』に罹り倒れている所をH.O.P.E.より発見・回収、
病院で目覚めたが全く何も覚えておらず、やはり退院して一度日常に戻ってからの参加という状態です


●リプレイスメント
リライヴァー・アムネシアに罹った英雄が見る邪英化した自分の幻
外見等が能力者寄りでも可(記載が無い場合はMSが作成)
※今回、リプレイスメントと戦うことはありません。登場は一瞬です
※実際の邪英化とは異なる


●敵
・エルナー・ノヴァ(az0004hero001)
デクリオ級相当:物攻A|物防S|魔攻F|魔防A|命中C|回避C|移動B|特殊抵抗B|INTE|生命E
※上記能力値は今回のみ

・花茎:中央に目玉の付いた幽霊(銀竜)草の花茎そっくりの従魔(体長2m)×複数
ケントゥリオ級:物攻F|物防F|魔攻S|魔防F|命中B|回避F|移動E|特殊抵抗F|INT F|生命F
催眠波※を出す(効果:リンクレートを1へ、回避を50%ダウン)※本体が出現すると使えない
本体を倒さない限りいつの間にか増えている

・本体:巨大な口の付いた球体
ケントゥリオ級:物攻B|物防B|魔攻F|魔防E|命中B|回避F|移動F|特殊抵抗B|INT B|生命B
エルナーを倒すと地中から現れエルナーの近くPCを飲み込む(特殊抵抗判定)※本体の生命力1/3減でPC解放
大量の花茎を使った蔦攻撃、噛みつき



●登場人物
・信義&ライラ(az0055)
・リーナ&クリフ(アデリナ):恋人同士のアイドルリンカー

リプレイ


●惧れ
 倒れた千桜 姫癒(aa4767)を覗き込んでいるのは茶髪の男だ。
 ──あいつだ。
 日向 和輝(aa4767hero001)は乱暴にその男の肩を掴む。
『何で俺が面倒見てやらなくちゃいけないんだ? 助けてやったのに、めんどくさい』
 妖異な眼差しで姫癒をねめつけていた男は、振り返り、光る漆黒の瞳に和輝を映した。
 だが、和輝は怯まない。
「そんな事、思ってるわけないだろう。今では大切な相棒だ」
「──和?」
 隣の部屋から顔を出した姫癒に、和輝はいつもの顔で振り返る。
「ひめちゃんの準備が遅いってぼやいてたんだよ──冗談だって」
 小さくため息をつく姫癒。軽く笑いながら相棒の後を追って部屋を出る、その間際に和輝は振り返った。
 もちろん、そこには何もなかった。
 倒れた姫癒も散らばったカードも、──冷たい眼差しの共鳴した和輝の姿も。


 夕暮れ時。
 テール・プロミーズ学園から涼風邸への帰路、リーヴスラシル(aa0873hero001)は足を止め振り返った。
 背後に立っていたのは夕照を背に影に包まれた美女だ。それはリーヴスラシルと瓜二つだったが邪悪で蠱惑的な美しさを持っていた。
『ふふふ……くだらん』
 この女はリライヴァー・アムネシアから回復してから時折現れてはリーヴスラシルを詰り、彼女の不安を暴こうする。
 この日、女は優しい声で囁いた。
『お前は、第一位誓約術ラグナロクで縛ってしまったユリナへの負い目を感じているのだろう?』
 警戒するリーヴスラシルの顔が険しさを増した。
『いい提案をしてやろう。誓約を破棄して、別の誓約で再契約することが叶わぬなら、愚神となって個を確立すればよいではないか。記憶が偽物かどうかなどもう関係ない。愚神となれば本来の自分に怯えることなどない個を確立できる』
 女が指し示した先には月鏡 由利菜(aa0873)の後姿。
「馬鹿なことを!」
『ユリナは十分過ぎるほどに強くなった。第二英雄もいる。お前が……私がユリナの下に居続ける理由はないはずだぞ?』
 鋭く空を切る音。
 だが、夕陽の沈んだ街角からは女も由利菜の幻も消えていた。


 倒れる御神 恭也(aa0127)からライヴスをむさぼる少女。
 恭也と同年代だろうか──幼さはすでに無く、ぞっとするような冷たい美貌と気品を兼ね備えていた。
 呆然と立ち尽くす伊邪那美(aa0127hero001)に気付くと、少女は顔を上げた。伊邪那美は向けられた少女の顔に小さく息を飲んだ。
「ボク……?」
 赤い瞳の輝きが彩る少女の顔は、年こそ違うが伊邪那美のものだ。
 少女は妖しい色香すら漂う笑みを残して恭也の幻と共に掻き消えた。
「──何か判らないけど怖い……」
 寒気を感じて思わず襟を合わせた伊邪那美だったが、即座に恭也の無事を確認するために部屋を飛び出た。


『どうせ』
 虚ろな声が響く。
『どうせ何も守れないならいっそ、全て俺の手で、奪って、喰らって』
 くたりと倒れた細い少女を喰らう銀髪の男。
 淡々と、無感情に──狂気を滲ませて、男は木陰 黎夜(aa0061)を喰らった。
「黎夜!」
 手を伸ばしたアーテル・V・ノクス(aa0061hero001)の指先で幻はふっと消えた。
「ハル?」
 男が居たはずの場所で本をめくる黎夜が怪訝な顔をする。
 アーテルは、相方の無事な姿に反射的に駆け寄りそうになった自分を押し止めた。
「ごめんなさい。夕飯の時間よ、つぅ」
 腑に落ちない顔で、それでも栞を挟んで立ちあがった黎夜。
 そんな少女の姿にアーテルは胸の中で『黎夜は無事で、あれは幻覚だ』と何度も言い聞かせる。
「……何の悪夢だ」
 黎夜の姿が見えなくなってから、アーテルはこっそりと吐き捨てた。
 だが、あの幻が、あの言葉が、何かを暗示しているような不安を掻き立てて胸のざわつきを抑えることができない。
 黎夜を喰らうあの銀髪の男はアーテル自身であったから。


 倒れた防人 正護(aa2336)の身体を挟んで古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001)は女と対峙する。
「あなたは私じゃない……あなたは……だれ?」
 菖蒲の視線の先で微笑みを浮かべるのは黒い靄のようなものを纏う妖狐、殺女の姿をしていた。
 女は答える。
『私はお前だ……愛しの菖蒲よ。いつまでもそこにいる必要は無い……さぁこっちへ……くっふふふふふ……』
 唇の端がついと上がって、菖蒲の目の前の女が笑みを深める。
 ……菖蒲の中には「殺女」という人格がある。妖狐の意識が強く残虐な彼女を菖蒲は彼女の世界を滅ぼした妖怪でもあったと記憶していた。
 そして、殺女は菖蒲を愛している。自分ではない。古賀 菖蒲と名乗る今は幼いこの妖狐を。
 ──菖蒲の姿で返すのは常に菖蒲を守るため……。でも、もうその必要は無い……記憶は開かれて、リンカーとの繋がりを絶っても、私がわたしでいられるために……。
 菖蒲(あやめ)は世界を愛す者、殺女(あやめ)は世界を憎みし者。
 そして、『アイリス』の名は『あやめ』の名を、語らせないための名。
 幻が消えた後も、菖蒲はただそこに立ち尽くした。


 暗い部屋の片隅からのそりと這い出た。
 体長一メートルほど。黒く、頭の左右に三本ずつ外鰓が揺れる。
「うぱー!」
 眠ったまま、黒いそれに飲み込まれそうになる水竹 水簾(aa5022)へ『スイレンちゃん!』と必死に呼びかけるウー パルーパ(aa5022hero002)。
 ウーには解っていた。それは巨大化したメキシコサラマンダーの特徴を持った自身で──。
「うぱー!」
 ウーは『違う、これウーパールーパーじゃない! オオサンショウウオだ!』とハッとした顔になった。
 ピタリと黒いオオサンショウウオ(?)と眠ったままの水簾が止まる。戸惑いの雰囲気。
「うーぱー!」
 ぱたぱたと『ウーパールーパーとオオサンショウウオは違うんだよ! これ絶対ウーじゃない!』という顔で主張するウーの前にダイスが転がって来た。
 ──ウーパールーパーとオオサンショウウオを間違えたあなたは、成功で1D6、失敗で1D20のSAN値チェックです。
 目の前の黒い何かがそんな顔をしていた。

「ウー?」
 水簾に軽く突つかれて、ウーは彼女の肩の上で目覚めた。
 眠っていたつもりは無かったが、うたた寝と言うものはそういうものなのだろう、恐らく。
 そう思うことにした。


 ナト アマタ(aa0575hero001)は叫んだ。
「シエロ!」
 暗い部屋の片隅。逆関節の足を投げ出して力無く壁に身を預けるシエロ レミプリク(aa0575)。それから、彼女の前に佇む長身の人影。
 二十代、もしくは三十代だろうか。顔つきや姿かたちは中性的、細く引き締まった肉体は弓弦を張った弓のようにしなやかで、清廉な人柄を感じさせる要素を持っていたのだが、放つ黒い威圧感がすべてを打ち消していた。
『……お前は、認めたのだな』
 高いのか低いのかわからない不思議な声。それの声はなぜか反響してナトの耳に届いた。
「……?」
 シエロからナトへと向き直り、睨むそれ。引き込まれそうな錯覚にナトは身構えた。
 身を包む青い礼装はナトと同じデザインであった。身体で見えなかった両手にはそれぞれ弓と黒い光の矢が在った。
『だが……私は……』
 それが武器を握りしめたのに気づいたナトは弾かれるようにシエロの前に滑り込む。
「ナトくん?」
 うーんと伸びをして起き上がるシエロ。
「ちょっとウトウト……ん?」
 ぎゅーっといつもより強くシエロに抱きつくナト。
 嬉しいながらも心配そうにナトを見るシエロ。
 だが、ナトはそれをシエロに言う事ができない。禁止されていたから。


 見慣れた部屋の中央に壮年の男ががっしりとした足で立つ。
 男の視線の先は白虎丸(aa0123hero001)の位置からは見えない。
 けれど、彼は知っていた。
 ──あそこには千颯の家族が。
 小さな声が聞こえた気がした。女性か、子供か、何かを言おうとした聞きなれたその声が誰のものなのか白虎丸には咄嗟に判断できなかった。白虎丸が走り寄るより早く、男は殺した。
 塵でも見るような眼差しで。
 ただただ動いて、殺す。
 赤が飛び散る。滲む、広がる。
 それは無感情で、機械的で、意味もなく。
 否、意味ならあった。
「お前は誰でござるか。何故俺にこんなものを見せつけるでござる!」
 水の中を歩くような重い身体を引きずって、白虎丸が男の元へたどり着くと夥しい赤の中に彼の相棒、虎噛 千颯(aa0123)が居た。
 ただひとり、傷ひとつなく俯いて。
「千……」
 その瞬間、幻は消え、白虎丸は男が立っていた部屋に独りで立っていた。
 ──……あれは一体なんだったのでござるか……あの男は……。
「あの男は、俺でござるのか?」
 流れ落ちる汗がどうしようもなく気持ち悪い。
 ──あれは千颯以外の人間を殺すでござる……全部殺したうえで最後に千颯を……。
「あれは危険すぎるでござる……俺にあんな非情な一面があるでござるのか?」
 問うてみたくとも英雄には確かな記憶も、それを知る者もこの世界には無く。



●紫峰翁センター
 検診を終えたエージェントたちは談話室で休んでいた。
「どう考えてもおかしい、よな……」
 姫癒の隣で和輝が頷く。
「ああ、日にちのズレ? それに水田って奴も怪しいと思うけどなー。俺らを戦わせようとしただろ?」
「そうなると、真央室長に、このセンターも、怪しい気がしてくる。意識を失ったというのも気になるけど、どこからVR世界だったんだろう……何にしても気を付けてくれよ?」
「もちろんだ。水田に関してもだけど、紫峰翁センターも調べておきたいな」
 ──焦る姫癒を見れたのは嬉しいけど、何度も見たいもんじゃないからな。
 訝しげな表情を浮かべる姫癒に和輝は苦笑した。
「主を私の手にかけさせようとしたヌル……断じて許さぬ」
 強い口調で言い放つリーヴスラシルを由利菜が見上げる。
「自分を律せられるのね……凄いわ、ラシル」
「……これで抑えているように見えるか、ユリナ」
「私が逆の立場なら……抑えられるか自信がないもの」
 由利菜は強く握った自分の指先に視線を落とした。
 水簾も口を開く。
「目覚めるまでいた日常が、実は私たちの夢か、VR世界の映像だったとしたら、どうだろう」
「うぱー」
 ウーは水簾の肩の上で『そんなことないと思うよ』という顔をした。
「あはは。現実なんて、確かめる術なんてないだろう。だれかの見ている、夢かもしれない」
「るぱー?」
 『珍しいね? 哲学者みたいなこと言うんだね』という顔をするウー。
「我思う、ゆえに我あり。だったか。哲学は学んでいないから、よく分からんな」
「うぱ!」
「ウー、エンゲル係数というものを知って……ま、いいか」
 『哲学じゃお腹は膨れないよ。そんなことより唐揚げ食べたい! お腹すいた!』と表情で訴える相棒に、水簾は談話室にあった軽食の自動販売機へと向かう。
「謎の一日……英雄がいない二日間はVR世界、或いは同じような空間での出来事だったのではないのかしら」
 俯いて何やら思案していたアーテルだったが、流れ落ちた髪を軽くかき上げた。
「……あの箱、ガラクタ……? ……誰からもらったんだっけ……?」
 ポツリ。黎夜の疑問に白虎丸と正護が顔を見合わせる。
 二人と正護は違う依頼であったが、それぞれ紫峰翁センターの依頼で貰ったこと、そして、依頼を不自然に忘れていたことを打ち明けあった。
 そこへ、千颯と真央が現れた。
 特別室へ運び込まれた状況、いつ運ばれたのか、何を観察していたのか、千颯は真央に尋ねに行ったのだ。
「あと、これもだ」
 千颯が取り出したのはかつて真央が配布した『RB記憶のメモリー』だ。起動させると掌の上に少年の幻が現われ短いメッセージを話す。
「エラーメッセージ? そんなものは組み込まれておらんよ」
 シエロの話を聞いた真央が怪訝な顔をする。
「でも、確かに!」
 エラーメッセージを聞いたシエロが真央へにじり寄る。
「俺たちはあの時のことを知りたいんだ。どこからがVRの世界でどこからが現実だったのか」
 千颯の問いに長く沈黙した後、真央は口を開いた。
「社外秘じゃが」
 事前に千颯は真央のVR世界が何者かにハッキングされていないかを問い合わせていた。
 結果、そちらには何の問題も無かった。
 ただ──。
「恐らく、水田が持ち出したのだろうということになっているが、VR世界へダイブするためのサーバとゴーグルが数点所在不明じゃ。
 RBの記憶のメモリーはさっきのようにデータを呼び出すだけではなく、ワシのVR世界内ではキャラクターを呼び出す。そのためのプログラムがサーバにもある。だが、所在不明になっているサーバのVR世界内でメモリーを起動させた場合、プログラムが再現できず──サーバ側がエラーを告げるかもしれん」
 『だれかの見ている夢』、そんな顔をしてウーは水簾を見上た。
「質問の回答じゃ。
 特別室にいつどのような状態でお主らが運ばれたかは水田しか知らん。驚くべきことに協力した職員も見つからん。
 あの日のH.O.P.E.の対応は早く、怪音の着信が疑われた範囲が集中していたために状況の把握も早かった。
 それでも大よその把握には一日、夜になって漸く研究・治療の担当者として水田が選ばれた。
 特別室を含めたリライヴァー・アムネシア患者のための病室は担当になった水田の申請で準備した」
 真央は大きく息を吐いた。
「あそこで何を観察していたか、じゃが。記録もなく、治療に使ったはずのゴーグルはあの時全て電源も入っておらんかった。
 水田が行方不明の今、治療に関する資料もほとんど無いのじゃ。だから、ワシらが改めてお主たちの経過観察を行っておる」
 真央の言葉に千颯は、特別室と転がったゴーグルを思い出した。
 ──あんなもののせいで俺ちゃんは……いや、いまは調べる事が最優先なんだぜ。あんな思いはもう二度とごめんだ。
「リライヴァー・アムネシアについて、細かく教えて欲しい」
 だが、千颯に真央は首を振った。
「その名を付けたのは水田だが──。英雄・能力者が共に昏倒し、ふたりの絆が薄れて英雄が誓約前のように姿が薄くなる。
 ワシらが事実として把握しているのはそれだけじゃ。お主らがさっき言ったようなヌルだの能力者だけが英雄を認識できなくなるだのという話は、誰も知らん」
 談話室に沈黙が落ちた。



●幽霊草
 センターを出たエージェントたちは水田からの着信を受けた。
 そして──、ゴーグルを外し車外へ出る。
「大事な調査の邪魔だ。早急に駆除するぞ……変身っ!!」
 共鳴した正護がライダー「サキモリ」へと変わり、次いであちこちで幻想蝶が舞う。
 エルナーの前へ飛び出した黎夜が《マナチェイサー》を放つ。
 それはライヴスを使う者の痕跡を彼女に伝える。
 周囲の大量に生える幽霊草に似た不気味な従魔と、エルナー。そして、地中浅くに何か。
「……ミュシャは、どうした……?」
 問う黎夜に彼はいつもの爽やかな笑みを浮かべた。
「あの子が居なければ、僕は僕の世界を救いに戻ることができるからね」
「エルナー……、邪英化したなら、貴方を倒す……」
 共鳴した姫癒の髪が微風に広がった。
「さて、いったいどうなっているんだろうね? 一先ずお相手しよう」
 翻したタロット『セフィロト』が獅子の幻影と共に幽霊草を浅く裂く。
『悪い、姫癒。集中できない』
 幽霊草の目玉がぎょろりと姫癒を見ている。
 千颯が放った鋭い光《パニッシュメント》がエルナーの胸部を貫く。
「当たりだ」
 千颯の頬に嫌な汗が流れた。
「コイツは邪英でも愚神でも従魔でもない!」
 剣を構えたエルナーが走る。幽霊草たちが左右に別れて彼の為に道を空けた。
「この杖はどうも邪英に対して良く効くって聞いたが……こういう時にも有効的なんだろうかな?」
 ライダー「サキモリ」が錫杖「金剛夜叉明王」を繰り出す。
 錫杖の生み出す光球はエルナーに直撃したものの、邪英にあるはずの効果は見えなかった。
「……どうもおかしい、先日から仮想と現実を行き来しているせいで気分が悪いが……それだけじゃない気がする。
 ……まさかとは思うが、《俺達》の中で現実と仮想が入れ替わっているわけじゃないだろうな……。少なくとも今ここで戦っていること自体が……仮想……なんてことないだろうな」
「確かに。さっき電話があった水田って行方不明になってたはずだろ? 真央ちゃんもVR世界で本物の従魔は居ないって言ってたし」
 サキモリに応えて、千颯が周囲の従魔をねめつける。
「だったら、じゃあ、これは? ってなるだろ。VR世界で邪英化するかどうかだって怪しいしな」
「話は終わったかな」
 エルナーの剣が容赦なく千颯に突き立てられる。避け損ねた彼の赤い血が白い幽霊草へ飛び散る。
 《守るべき誓い》を使った由利菜が盾を構える。
『エルナー殿の偽者か……その姿でも加減はしない』
 ふと由利菜に疑念が湧く。
 ──soraの開発……普通に考えれば、既に研究所の方々がヌルから狙われてもおかしくないですよね……。
『内側で内通者がいるか、既に愚神に侵食された者がいるか……』
 ──偶発的に、ですか……。何者か故意にシステムへ干渉していたとしたら……?
『干渉で治療システムを作っても、愚神ヌルに利はないはずだが……。英雄を誘き寄せる為の餌でも無い限りは、な』
 由利菜たちは敵意を向けるエルナーを見た。


『考えても仕方ない、行こう、ナトくん!』
 共鳴の主導権を担ったナトはシエロの鎧を身に着けて、蛇弓・ユルルングルを構える。
 狙うは幽霊草だがエルナーからも目を離さない。
 気になることはたくさんあるけれど、どれも今、結論を出すことはできない。ならば、結論を出すための情報を集めなくては。
 水田も気になるが、今はエルナーだ、とシエロは思う。
 ──間違えたら、最悪の、取り返しのつかないことになりそうな気がする……。
『ナトくん?』
 《トリオ》で幽霊草を撃ち抜きながら、エルナーを警戒するナトの脳裏で自分が見たあの幻影とエルナーが重なった。
 その瞬間、ナトの見えない戒めが緩んだ。
「あのね、ナトも、なの」
『え?』


 共鳴した恭也が混乱した戦場を見渡す。
「如何にも信用ならんな……」
『この前、変な物を見たせいかな……集中出来ない』
 伊邪那美も絆の弱まりを感じて訴えた。
「変な物?」
 まるで靄が晴れたかのように、伊邪那美はそれを彼に話すことに思い至る。
「……前回の事を考えると目に見えている物が正しいとは限らんか」
『もしかして、敵に見えてるのが実は味方だったとか?』
「風景が正しいなら一般人が紛れている可能性があるな」
 そう言うと、空気を振るわす凄まじい咆哮《臥謳》を放つ恭也。周囲の幽霊草の何本かがその衝撃に負けて大きく揺れた。
 ──誰も飛び出さない、か。
 しかし、彼は警戒を緩めず、エルナーへと向かう。
「本人ならば、何故、俺たちを襲う?」
 エルナーは小さく笑い声をあげた。
「僕が『そう』在るべきだからだよ」
 伊邪那美はその反応に激しい嫌悪感を感じた。
『流石に疑心暗鬼が過ぎるんじゃ無いのかな?』
「思い過ごしなら俺が間抜けな姿を晒すだけだ。だがな、万が一に想像通りなら同士討ちなんて最悪な状況になるぞ」
『単に姿を真似てるだけだったりして』
「……その可能性もあったか」
 追いついた水簾が《ライヴスフィールド》を展開する。
「えーと、お仕事はなんだっけ……除草作業?」
『るぱ? (花壇の健康を守るのかな?)』
 緻密な模様のハイジーンスピアを振り回し、幽霊草を刈り取る水簾は海神のような神々しさがあった、気がした。


 サキモリの展開した《重圧空間》によって敵の動きを鈍くなる。
「これで、同じだな」
 エルナーの顔からすっと表情が消えた。
「やっぱり、コイツらは従魔だな」
 パニッシュメントで従魔の真偽も確認した千颯。
「情報を共有して、互いのズレを無くして隙を与えないようにするんだ」
 姫癒が警告する。
 前回、敵は能力者と英雄を引き離そうとした。ならば今回もその危険性はあるかもしれない。
 はっとした黎夜はアーテルへと告げた。
「アーテル、今から、素の口調で……大丈夫、もう怯えない……」
 誓約や絆を強めれば、共鳴の力は増す。黎夜の意図に気付いたアーテルもまた覚悟を決めた。
『無理はするなよ』
 唇を引き結び、黎夜は前を向くと「黒の猟兵」を掲げて霧の猛獣を走らせた。
 一方幽霊草と対峙するエージェントたちは全て刈り取ることは出来なかったが、周囲の幽霊草が消えると身体の重さは軽減した。
 《リンクコントロール》を使いながら由利菜はエルナーに剣を撃ち込み、間髪入れずに恭也が重い一撃を放った。
「く……」
 遂にエルナーが怯んだ、その瞬間。
 飛び上がったライダー「サキモリ」。彼の足からスパイク状の《銀の魔弾》がエルナーへ降り注いだ。
「防人流雷堕脚……護の型!」
 苦痛の声をあげてエルナーは膝を折り──そのまま、倒れ込む。
 駆け寄った黎夜はそこに共鳴が解除されたミュシャの姿を確認した。
「あ──」
 地響と共に足元が崩れる。
「こっちだ!」
 黎夜の近くに居たサキモリが飛び退りながら手を差し出したが、小さな黎夜の掌はサキモリの指先を掠めた。
 土砂と共に恭也、ミュシャ、エルナー、黎夜は突如地面の下から現れた従魔の大口に呑み込まれた。
『恭也、変な液体があるよ!』
 伊邪那美が悲鳴を上げ、立ち上がった恭也が、黎夜を、次いでミュシャとエルナーを引き上げる。


「その醜い姿ごと散れ! セラフィック・ディバイダー!」
 走り寄った由利菜の苛烈な一撃が幽霊草の本体を裂く。
 即座に白虎丸のブレイジングランスがその口をこじ開けた。
 えずくように震えるそれから、恭也たちが吐き出された。
 飛び出した恭也は従魔へと踵を返すと、《疾風怒濤》の連撃を叩き込む。
 水簾はおもむろにオーラルスウィップに持ち替えた。
『う、うぱ……(じ、女王様……?)』
「なんか……言ったか……ウー」
『うぱ!(なんにも!)』
 頭を振るウーをよそに水簾は決意した。
「きりがないな……だるいから、さっさと片付けようか。それでさっさと休憩しよう」
 共鳴による思考の変化。
 水簾は幽霊草の本体へと忍び寄ったが、死角のはずの攻撃をに対しケントゥリオ級従魔は牙の並ぶ大口をあけた。
 代わりに残った幽霊草の眼球が全て水簾を映す。
 ガツン!
 閉じかけた口が揺れた。
 ナトが放つ雷光を纏った一矢を放ったのだ。
「止めだ」
 水簾の影から姫癒が放った《ブラッドオペレート》が醜悪な従魔の体から液体を噴出させた。
 空を仰いだ幽霊草たちがざああと黒い灰となり崩れ落ちる。



●ゾーザンテラ
 倒れた英雄にしがみつくミュシャと目覚めるエルナー。
「覚えて無いの?」
 伊邪那美の問いにエルナーは頷いたが、遮るようにミュシャが口を開く。
「違、あたしが弱いから、エルナーは、何も」
 崩れ落ちるミュシャとそれを支えようとしたエルナーも昏倒する──その身体から何かが転げ落ちた。
 黙ってそれを拾いあげる恭也。
 それは白化した珊瑚によく似ていた。


 H.O.P.E.の救護班が走り回る。
 戦いで負った傷以上に、ミュシャは衰弱し重体であった。
 そして、恭也の予想通り壊れた商店街からはドロップゾーンで自由を奪われた人々が次々と見つかっていた。
 つくば市内の商店街のひとつ──ここは、VR世界ですら無かった。
「なんか状況が全然掴めないけど……こりゃ裏がありありって事か!?」
 千颯の言葉に姫癒が眉を顰めた。
「前回の敵の従魔。あれがVRの世界に入ってきたという事はどこかでVR世界に入る手段を手にしているのかもしれない。だとしたら、soraを管理している水田が怪しいだろう?
 始まりはスマートフォンの音、今回は歌……その後に電話がかかって来たけど、頭痛の引き金はやっぱりあのアデリナの歌のような気がする」
 黎夜はアーテルを見上げた。
「アーテル、頭が痛くなる直前に、紹介された曲って、なんだっけ……?」
「エヴェイユ。意味は確か、”覚醒”」
 水簾がウーを軽くつついた。
「あなたは、本物ですか。……なんてな」
「うぱ」
 ぎょっとした顔をしたエージェントたちにウーは『たぶん、冗談だよ』という顔をした。
「……シエロー」
「ん? どったのナトくん」
「……」
 自分の声がちゃんと聞こえていることにほっとしたナトは居心地の良い彼女へと抱き付いた。
「木陰さんやシエロさん達も……皆、今回の一連の事態には思う所があるみたいですね」
「ああ」
 由利菜と会話をしながらリーヴスラシルは夕陽を眺めていた。
 ──英雄と愚神は表裏一体だ……。ならば、あのVR空間も……。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 薄明を共に歩いて
    木陰 黎夜aa0061
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
  • 太公望
    御神 恭也aa0127

重体一覧

参加者

  • 薄明を共に歩いて
    木陰 黎夜aa0061
    人間|16才|?|回避
  • 薄明を共に歩いて
    アーテル・V・ノクスaa0061hero001
    英雄|23才|男性|ソフィ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • きみをえらぶ
    ナト アマタaa0575hero001
    英雄|8才|?|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • ひとひらの想い
    千桜 姫癒aa4767
    人間|17才|男性|生命
  • 薫風ゆらめく花の色
    日向 和輝aa4767hero001
    英雄|22才|男性|バト
  • 落としたか?
    水竹 水簾aa5022
    獣人|20才|女性|回避
  • ウーパールーパー、好き?
    ウー パルーパaa5022hero002
    英雄|6才|?|バト
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