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【屍国】連動シナリオ

【屍国】感染心地

電気石八生

形態
ショートEX
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/06/15 15:09

掲示板

オープニング

●デモ隊
 香川県庁前に数千人規模のデモ隊が押し寄せている。
 ひとつの団体ではない。いくつもの団体が、それぞれの要求を掲げて……だ。
『今度こそ完全な感染者対策をしろ』
『無策のまま感染の蔓延を見逃した行政は責任を取れ』
『非感染者に安全を』
 いくつもの言葉が押しつけられてはいたが、そこにある意志はただひとつ。

 従来型および新型ウィルスの感染者とその恐れのある者を、この四国から追い出せ。

 このデモの発端は、先頃感染者収容施設から帰還した者たちによってもたらされた「変異体ゾンビ」にあり、その存在があおり立てた「新型ウィルスの存在疑惑」にある。
 しかし、そもそも存在しないウィルスのためにそんな要求をのめるはずがないのだ。知事はそれを幾度となく説明してきたが……市民は異口同音に訴える。

 新型ウィルスに感染していると言われている帰還者をどれほど厳重に隔離したところで、彼らが四国内にいればいつ変異体となるかわからない。
 いや、帰還者に接触した者たちもすでに、新型ウィルスに感染しているかもしれないではないか。
 その危険を見過ごす行政は、なんらかの陰謀によって侵されているのではないか?

 結局のところ、デモは自己欺瞞だ。
 自分たちは感染していないからこそ、ここに来て不安を訴えることができるのだという、根拠のない免罪符。それを掲げていなければ恐ろしくてたまらなくて、だからこそ必要以上に憤り、誰かを責め立てずにいられないのだ。
 果たして市民は庁舎へ向けて叫ぶ。
「新型ウィルスが存在しないと言うなら、それを証明してみせろ」

●石女神
「最後の一手、打たせてもらうわよぉ」
 ウルカグアリーは喧噪を見やりながらうそぶいた。
 布の服で擬態した彼女の外殻は熱に強く、重く、硬いタングステン。格闘戦仕様かと思われたが……その実、偽りの心臓を守るためだけに選んだものだ。
 ゆるやかに鼓動する心臓の素材はウラン235。92の陽子と143の中性子を持つ放射性物質であり、核兵器の弾頭に積まれる核分裂性物質である。
 とはいえ現在の純度は10パーセントに抑えられている。核爆発を起こすには、純度90パーセントを越えなければならない。
「まずは花を咲かせましょうってね」
 策という名の蕾を開かせる触媒――変異体ゾンビはすでに花園へ投じてある。
 問題は数をそろえられなかったことだが、それはしかたない。変異に耐えるだけの素材を見つけ出すには、蠱毒を成すだけの数のゾンビが必要だ。たかだか300余りを食い合わせただけで3体を生み出せたのは幸運と言える。
「あたしの心臓が保つ間に片づくかしらぁ?」
 己の内のウランと己の外のタングステンを見やり、ウルカグアリーは笑みの波動をさざめかせる。
 と、彼女がゆるんだ瞬間、ウラン235の純度が12パーセントに引き上げられた。
「っと、今回は安定じゃなくて、制御制御。――ま、こういうのはあんまり好きじゃないんだけど。四国ともこれでさよならだから、爪痕くらいは残してかないとねぇ」

●H.O.P.E.東京海上支部ブリーフィングルーム
「香川県庁にデモ隊が押し寄せてるのは、もうみんな知ってるよね」
 礼元堂深澪(az0016)が、いつにない緊迫した表情で切り出した。
「これだけだったら、H.O.P.E.は出動要請があるまで見守るって方針だったんだけど……ウルカグアリーの反応パターンが出たんだ。それにこの前出現したっていうゾンビの変異体のも」
 エージェントたちの表情に緊張がはしる。
 讃岐山脈に建てられた、ゾンビウィルス感染者収容施設。そこでエージェントたちはウルカグアリーの造ったゾンビと戦った。そして勝利を収めながらも、ウルカグアリーの策にひっくり返されたのだ。
「ウルカグアリーはデモ隊の後ろにいる。問題はデモ隊の中に紛れてる変異体3体。分析班は『パンデミックの演出用』だって判断してる」
 デモが最高潮を迎えたとき、“発症”を演じてその姿を現わす。
 そうなればもう、止まらない。
 この場をどうにか切り抜けたとしても、人々は互いの変異を疑い、二度と信じ合うことはできなくなる。それどころか、殺し合うことにすらなるだろう。
 四国は内部から孤立化し、神門の統べる「屍国」と成り果てるのだ。
「今回の任務はウルカグアリーとその配下のゾンビの撃破。……ウルカグアリーは撃退でもいい。どうせ本体じゃないだろうしね。それに――」
 深澪は眉をしかめ。
「プリセンサーじゃなくて監視衛星の分析になるんだけど、ウルカグアリーはタングステンの体の中にちっちゃいウラン積んでるんだ。今のとこ核爆発するほどの濃さじゃないみたいなんだけど、少しずつ濃くなってるから、多分最後は爆発する気だって」
 ウラン235についての資料をエージェントに示し、さらに深澪は言葉を継いだ。
「ただ、疑似パンデミックと爆発の関係性がわかんない。パンデミックしたいんなら人が死ぬのは効果低いし、爆発するんならもっといっぱいウラン積んでくるべきだし……って分析班も悩んでる。まあ、パンデミックが失敗したときの保険かもしれないんだけど、とにかく爆発は絶対阻止! 頼んだよ!」

解説

●依頼
1.ウルカグアリーの撃破もしくは撃退。
2.ゾンビ強化体と変異体の殲滅。
3.デモ隊を落ち着かせる。

●状況
・時間は昼時。デモ隊が県庁前の駐車場スペース(およそ百メートル四方)に詰め寄せています。車はまばらに停まっているものとします。
・ウルカグアリーはデモ隊から15メートル後方にいます。
・変異体3体はそれぞれ人間に偽装し、デモ隊の中に紛れています。
・知事は職員と共に、いつでも県庁内へ逃げ込める位置取りをして、ハンドマイクでデモ隊の説得に当たっています。

●ウルカグアリー(ケントゥリオ級相当)
・今回は2本腕ですが、ソフィスビショップおよびブレイブナイトに酷似した技と、鉱石を操作する能力を組み合わせて使います(1ラウンド最大3回行動)。
・時間経過とともにウランの濃縮が進みます(12パーセントからスタート。1ラウンドに2~5パーセント上昇。100パーセント到達で爆発)。
・体に秘密があります。ヒントはオープニングに。
・高防御力、低回避力。

●死体ゾンビ・変異体(ケントゥリオ級従魔)×3
・ウルカグアリーのライヴスと放射能によって奇形化したゾンビです。
・あらゆるBSが無効です(物理的拘束等は受けます)。
・1体は速度特化型、もう1体は攻撃力特化型、最後の1体が防御力特化型です。
・すべての個体がウルカグアリーの能力の発動点となり得ます。

●デモ隊
・非常にエキセントリックな状態にあり、一触即発です。
・落ち着かせる方法はエージェントに一任。

●備考
・ウルカグアリーおよび従魔とどのようにして対するか、各依頼に何人裂くか、それが成功度に大きく影響します(人数割りをまちがえると失敗の可能性もあります)。

リプレイ

●問い
 自らの言葉で煽られ、ヒートアップしていくデモ隊。
 誰かが「行け」と声をあげた瞬間、雪崩と化すだろう。
 それを後方から見やるウルカグアリーは、タングステンの頬を笑みで歪めた。
「さぁて。ほんとのほんとに最後のひと押し、いっちゃおっか?」
 デモ隊へ溶け込み、さらに自身の金属の顔を隠すためにつけたマスクを少しだけずらし、彼女はその口を開く――
「なるほど、すでに策自体は成っているということか。くふふ、もしかせぬでも、わらわたち詰んでおる? うむ、詰んでおるな。はっはっは」
黒き和装をしどけなく着流したカグヤ・アトラクア(aa0535)が笑顔でウルカグアリーへ手を振り。
「なんでそんなに楽しそうなのよ! もっとこうっ――あー! んー! バカぁーっ!!」
 そんなカグヤの前へ出て、必死に守ろうとするアシュラ(aa0535hero002)が叫ぶ。
「今日は赤衣じゃないのねぇ」
「共鳴しとらんからの。誠意ってやつじゃよ多分」
 ウルカグアリーは威嚇して歯を剥くアシュラから半歩下がりつつ。
「で、いっしょに見物しようってわけ?」
「それに加えて聞き取り調査じゃよ。たとえば……そなたの体を構築するタングステンとウラン、どちらも重いはずなのに、どうして口調がそんなに軽いんじゃ?」

「モスケールが正常に作動せんのである……」
 群衆から離れ、木陰に潜むソーニャ・デグチャレフ(aa4829)は、レーダーユニット「モスケール」から目を離して舌を打った。
 変異体ゾンビは群衆の中に紛れていることはわかる。大まかな位置もわかる。が、正確な位置となると、あえて身を晒しているウルカグアリーのライヴスが太陽のごとくに輝き、ゾンビどものライヴスを覆い隠して特定させない。
『大まかにでも位置をつかめるのは幸いかと』
 彼女を守る盾であり、敵を討つ矛でもある契約英雄ラストシルバーバタリオン(aa4829hero002)が平らかな声音で応える。――過ぎるほど平らかな声音で、だ。
「中尉、なにか言いたいことがあるのではないか? それとも……常ならぬものが見えているのか?」
 どろどろと重いソーニャの声音が迫る。
 ラストシルバーバタリオンは静かにかぶりを振り。
『そのご質問に対し、17名が「はい、いいえ。なにもありません」、12名が無回答、9名が「作戦の継続に注力すべきかと」、5名が「少佐殿はピンクも似合いますな」、3名が「芸名について具申あり」、1名が「ニャーたん」、以上を回答しております』
 47の英霊がひとりの英雄として顕現したラストシルバーバタリオンだからこその回答と言えたが……。
「ぐぬぅ、ゆるさんぞ愚神および中尉!」
 ラストシルバーバタリオンの装甲の内、「これ以外はすべてクリーニング中」との理由でピンクのフリフリ軍服(慰問任務用)をまとったソーニャは、割れるほどの力を込めて奥歯を噛み締めたのだった。

「わたくしの方も同じですわ……。とはいえそれも必然ではありますけれど」
 ファリン(aa3137)が息をつく。ソーニャの「モスケール」は彼女のものとはちがい、最大改造されている。それをして特定できない敵の位置を、通常版の「モスケール」で見つけられようはずがない。
『ウルカグアリーがこれほど近距離で姿を晒していた理由、知れたな』
 彼女の内にあるヤン・シーズィ(aa3137hero001)が同じく息をついた。
「先手はすでに打たれている状況、後手の不利は甘んじて受けましょう」
『キース君といっしょにあたしもがんばるからねっ!』
 静の内に決意の熱を込めてうそぶくキース=ロロッカ(aa3593)と、元気いっぱいに声をあげる契約英雄、匂坂 紙姫(aa3593hero001)。
「キース様の“声”が、わたくしたちの最初の一手になりますわ。全力でお支えいたします」
 ファリンにうなずいてみせ、キースは小型スピーカー付きマイクの動作を確認した。
「一手の内に何手込められるかが勝負になります。愚神に「ずるい」と言われる程度のものはお見せしたいところですね。――仙也、そちらはどうですか?」

「おう、逢見だ。ギリギリってわけにゃいかねぇが、射程と射角は確保できてるぜ。あとはまあ、従魔の居場所だな」
 デモ隊のななめ後ろの方向から数十メートル。太く張り出した松の枝上に潜む逢見仙也(aa4472)が言葉を返した。
 ここは、キースとファリンがしかけようとしている“次の次の一手”を支援するための待機場だ。
 アンチマテリアルライフルのスコープごし、仙也は群衆の背中を順に辿る。
 だが、誰がゾンビかまでは、さすがに見えてはこなかった。
『人間は救わなくともかまわんのだろう? ならばまとめて、という手もあるがな』
 仙也の内、ディオハルク(aa4472hero001)が皮肉な笑みを閃かせた。異世界では冥魔と呼ばれる存在だった彼にとって、関わりのない人間に価値などない。もっとも関わりのある人間に対しても、その態度はさほど変わりはしないのだが。
「俺が撃つのは敵だ。それ以外は興味ねぇさ」
 ディオハルクは口の端を歪め。
「相も変わらず、お優しいことだ」

 一方、もうひとりのスナイパーである灰堂 焦一郎(aa0212)は、県庁舎の屋上に位置取り、群衆を見下ろしている。
『クイックスキャン完了。メインウエポン・LSR-M110に不良箇所・存在せず』
 ストレイド(aa0212hero001)のガイドアナウンスを聞きながら、焦一郎はLSR-M110の引き金に指を置いた。
 変異体ゾンビが群衆の内にいることは確定事項だ。だとすれば、連射はできない。威嚇射撃で位置を探ることも。
 ただ一発で、確実に撃ち抜く必要があった。
「……出力を待機モードに。エミルさんたちからの連絡があるまで待つ」
 焦一郎は息を絞り、そのときを待ち受ける。

「はんたーい……」
 濁った声音を知事へ叩きつけ続けるデモ隊のただ中、ぷにっと丸い拳をにゅうっと突き上げるエミル・ハイドレンジア(aa0425)。
 なぜだろう、表情は淡いままなのに、ちょっと楽しそう。
「ん、デモ、楽しい」
 自分で言ってしまった。
『エミル、任務を忘れるなよ』
 彼女の内より苦々しく、ギール・ガングリフ(aa0425hero001)が諫める。
 そう、彼女はデモ隊に紛れた従魔の探索を担っている。そのはずなのだが。
「がんばえー……」
 年齢的には少女であるはずのエミルは、幼女を装ってまた拳を挙げた。なぜなら楽しいから。
 ギールは漏れ出しかけたため息をぐっと飲み下し。
『移動するぞ。従魔を見つけなければ』
 人波の底をにゅうにゅうぷるりとすり抜けながら、エミルは群衆の声に耳を傾ける。
 内容をまとめるなら、自分たちの生活を守るため、感染者とその恐れのある者を排除せよ! である。
『ん、デモとか集会とか、意味あるのかな……?』
 まわりに聞こえないよう内なる声で語るエミルに、ギールは難しい顔をして応えた。
『おおよそ、自身の恐怖心を押し隠し、正当化したいがための防衛行動といったところだろうな』
 ふむー。エミルはしばし考え込んで。
『……ん、おうどんが、足りてないのか』
『うむ――いや待て。なぜその結論に至ったのか、順を追っ』
「負けゆなー……」
『!?』

 エミルと同じくデモ隊の内に紛れて潜伏、従魔を探すギシャ(aa3141)は、変装用衣装のひとつであるヘルメットを引っぱり下ろしつつ。
『ツノが引っかかるー!』
 龍のワイルドブラッドであるギシャの頭には、小さいながら2本の角がある。エージェント用装備ならぬ白メットが、それを考慮してくれるはずもなかった。
『思わぬ弱点が露呈したな……』
 こちらは契約英雄のどらごん(aa3141hero001)の言。まあ、見た目が3頭身の着ぐるみ龍である彼には最初から縁のない話だが。
 ギシャはヘルメットを手で押さえつけ、大音量で騒ぎたてる人々を見回した。
『んー。なんでみんなこんなに騒いでるんだろー? ゾンビなんて殺しちゃえばいいだけなのにねー』
 どらごんは無邪気に言い切るギシャを内から見つめ。
『叫ばずにいられんほど生きたい、それだけのことだ。――それはともかく、どうやって人とゾンビを見分けるかは考えているか?』
『気配――って思ってたんだけどー。ウルカグアリー近すぎだよね』
 従魔のライヴスや気配は、ウルカグアリーのそれによって隠蔽されている状態だ。よほど近づけば別だろうが、従魔の性能がどれほどのものかわからない以上、確実に見極められる保証がなければ危険は犯せない。
『ではどうする?』
『呼吸』
 なるほど、すでに死んでいるゾンビとはちがい、人であれば当然呼吸をしているということか。
 どらごんは固い顎をしゃくり、うなずいた。元暗殺者のギシャにとって、他人の息を見て取ることはそれほど難しい芸当ではない。
『いい手だ。それで行こうか』

『意外なほど似合うものだね』
 バルタサール・デル・レイ(aa4199)の内にある」紫苑(aa4199hero001)は、皮肉で縁取りをした言葉を紡ぎ、薄笑んだ。
『こんな仮装で目的を果たせるなら安いものだ』
 ギシャ同様、デモ隊に変装したバルタサールは白ヘルメットの奥に金瞳を隠し、人波の狭間へすべり込んでいく。
『さて。鉱石の女神はなにを唄うつもりなのやら。――いや、誰に歌を届けたいのやら、かな』
 それこそ唄うような紫苑の言葉に、バルタサールはまた内なる声で。
『狙っているのはウィルスのパンデミックだけではないだろう。もっと広く、この有様を画面ごしに見ている連中にまで拡散しようとしている……のかもな』
 この場にいるデモ隊の参加者ばかりでなく、テレビの視聴者にまでパンデミックの恐怖を植えつける。それこそがウルカグアリーの狙いなのではないか。
『だとすれば、なかなかに意地の悪い女神だ』
 はっ。バルタサールは嘲笑を吐き捨て。
「インカの石喰い女に似合いの鉛をくれてやる」
 この身に刻んだアステカの月闇神、テスカトリポカに賭けて。

「従魔を見つけるまで、そう問題は起こらないだろうが……問題は見つけたそのときだな」
 デモ隊の裏へ回り込みつつ、潜伏移動でウルカグアリーへと向かう迫間 央(aa1445)。
『知事自らデモに対峙するのはどうなのかしら……』
 内のマイヤ サーア(aa1445hero001)が、今にも押しかからんとするデモ隊を必死で説得しようと声を張り上げる県知事を見やり、ため息をついた。
「届出もされていないだろう、半ば無法の暴動に目線を合わせるのは得策とは思えんが……そう言っていられる状況ではなくなった。そういうことなんだろう」
 央の声色になにかを感じ取ったマイヤが問う。
『気が乗らないって感じかしら?』
「正直なところ、自分の無力を棚に上げて、誰かを責めるばかりの連中に興味はない。……だが、あそこで踏みとどまっている同業を犬死させない」
 地方公務員の央は、今デモ隊にあたっている公務員の辛さが痛いほどにわかるから。だからこそここへ来る前、事のあらましをキース越しに職員たちへ告げておいたのだが。
「それをどうやって市民に伝えるか……だな」

●釣り
 カグヤの問いに対し、ウルカグアリーは小首を傾げて問いを返した。
「どうしてだと思う?」
「めんどくさい彼女か!」
 カグヤのツッコミに反応し、となりで威嚇のうなり声を鳴らしていたアシュラがウルカグアリーへ跳びかかった。
「ママとなかよくするなっ! 死ねっ!」
 その突進を自らの硬度と重量とであっさり跳ね返したウルカグアリーは、そのままの姿勢で待つ。
「物質ではなく性格の軽さでその体の比重を下げ、濃縮を推進しておるか。はたまた、さらなる反応物質で汚染の底上げを狙っておるか」
 カグヤは答えた後にぱあっと両手を広げ、笑んだ。
「ま、考えるのはファリンやキースの仕事じゃ。で、考えないわらわは身勝手を言う係でな。……神門との契約が切れたら、わらわと契約せぬか? 英雄として共に技術の句点の向こうまで。どうじゃ?」
「遠慮しとくわぁ」
「っ!」
 カグヤの動きが止まった。縫い止められたかのように――いや、縫い止められていた。スキルではなく、タングステンの細杭に足裏から胴の半ばまでもを貫かれて。
「これは……やられたのう」
「ママっ!?」
「騒ぐと横隔膜破れるわよぉ。っと、そっちの猛獣ちゃんもママが死んだら困るでしょ」
 ウルカグアリーはアシュラを制し、脂汗を浮かべて苦笑するカグヤへウインク。
「あたしが軽いのはねぇ、体と心臓の間にほんとの“アバタ”があるから。なんで教えちゃうか? 決まってるでしょ。チェックメイトだからよぉ」

 知事の数メートル左、県庁舎の入口の近くに到着したキースが、ライヴス通信機「遠雷」を通じて各員へ語りかけた。
「始めます。ゾンビを探索中の方、デモ隊の動きから外れた者を重点的にチェックしてください」
『ソーニャさん、お願いだよっ』

「了解したのである」
 紙姫からの連絡を受けたソーニャは、鋼鉄の人型戦車と化したその体を潜伏場所から乗り出させ、自らの装甲をアイシクルチェインで掻いた。
 ギギギギャギギ!! 世にも不快な音がライヴス通信機越しにキースの通信機へ届き、その音はさらにマイクのスピーカーで拡大・拡散。人々の目を一気に引きつけた。
「……おっと失礼」
 キースは咳払いをしながら視線を巡らし、仲間が群衆中の3点へ向かう様を確かめる。あぶり出しには成功したようですね。
「それでは改めまして。H.O.P.E.より参りましたキース=ロロッカと申します。お集まりのみなさん、その目でご確認いただけませんか? 新型ウィルスが存在するのかしないのかを」
 引き込まれるように、群衆が懐疑的な目をキースへ向けた。いいですね。あえてウィルスという釣り餌を投げ込んだ甲斐がありました。
『キース君。こっち向いてない人、ファリンさんに教えなきゃ』
『今カウントして送信しました。……さて、ここからが釣り師としての勝負どころです』
 紙姫に内で応えたキースはゆっくりと群衆を見渡し、左手で県庁舎を指す。
「――県庁舎を開放します。資料、ウィルス検査器具、簡易治療体制、すべて用意してあります。混乱と事故の防止のため、係員のボディチェックを受けた上で中へどうぞ」
 キースは群衆と同じく動揺の色を浮かべた知事へ寄り添い、ささやきかけた。
「デモ隊にゾンビが紛れています。処理するため、市民を避難させます。ゾンビの仕末はH.O.P.E.が引き受けますので、恐縮ですが知事はトップとしての責任を、あとの方は職員としての職務を、それぞれ全うしてください」
 知事は激情に顔を赤らめたが、肚を決めてうなずいた。

「係の者の誘導に従って動いてくださいませ! ご気分がすぐれない方、怪我をされた方がいらっしゃいましたらわたくしに! また、お手持ちの金属機器はウィルススキャンの妨げとなりますので、係員へお渡しください!」
 ファリンは群衆へ呼びかけ、県庁舎へ誘導していく。
 ウルカグアリーは鉱石を操る愚神である。群衆が待つ金属がその影響を受けないとは限らない。
『時間は限られていますわ。わたくしたちはゾンビの位置特定とマーキングを』
 ソーニャとは逆位置へ駆け、ファリンが内のヤンへ語りかけた。
『ソーニャは頑健な代わりに足が遅い。カバーリングを心がけろ』
 ヤンにうなずいてみせながら、ファリンは場の後方にあるはずのウルカグアリーを、そしてカグヤ、央へ視線を向けて。
『ウルカグアリーの策が読み切れなかったことが悔やまれますわね』
『今は気にかけたところでどうにもできん。キースの言った一手に、俺たちの手をできるかぎり詰め込むことを考えよう』
 ファリンは眉根に力を込めて顔を上げた。兄様の言うとおり、今は目的を果たすためにこそ手を重ねるときですわ。
 ウルカグアリーのライヴスで霞む「モスケール」を手に、ファリンは頭上から伸び出す白耳をぴんと立てた。
「デグチャレフ様。現状での探査結果をお送りいただけますか? 取りまとめた暫定情報をみなさんにお知らせします」

「ん、コードネーム、うどんの妖精。……見つけた、見つけた。ヘンな、そんぞん。……マーキング、よろしく、キャンユー」
 動き出した群衆のただ中、ライヴス通信機「雫」のマイクに語りかけるエミル。
 ソーニャとファリンの情報に自らの足で稼いだ情報を合わせてさらに歩き、ついに彼女はゾンビと思しき個体を発見したのだ。
『確かに怪しくはあるが、確定ではないぞ』
 たしなめるギールにエミルはぷるぷるかぶりを振り、サムズアップ。
「ん、絶対、まちがえない……。ヘンなぞんぞんと……うどんのボーメ」
 さすがにどのような能力を持つかまではわからないが、先の戦場で変異体の特徴は掴んでいる。そしてボーメとは塩水の濃さを表わす単位。
『一撃でしとめたいところだが、今騒ぎを起こすのはまずい。様子を窺いつつ機を待つ』

『なんともひどい歌声だけれど、だからこそ目と耳を奪われなかった輩がよく目立つ』
 紫苑が指すターゲット――この騒ぎの中で立ち尽くす厚着のデモ隊員――へ向かうバルタサールは、キースに注目する群衆へさりげなく。
「あいつの話が聞きたいなら少し前に詰めてくれ」
「あっちで呼んでるのはおまえの知り合いじゃないのか?」
「知事に用があるなら向こうに集合だそうだ」
 気さくな声色を使い、徐々にターゲットから引き剥がしていく。白メットとマスクの裏にある鋭い金瞳と燃え立つような赤髪に気づかせないまま。
 そのとき。
「あーっ! あたしってばどうなっちゃってるのーっ!? 体がっ、体がおかしいーっ!」
 群衆の後方から高い声が響き渡った。
『これは――愚神の唄声か』
 紫苑に応えず、バルタサールはゾンビへと駆ける。
 今、ゾンビは自らの衣装に手をかけた。晒す気だ。その体を。
『耳打ちでもするかい? もう少し待ってくれと』
 バルタサールは幻想蝶からライヴスライトを抜き出し、袖口に収めた。
「悪くない手だ」
 そしてゾンビの背後からライヴスライトの先を突き込み、その膝を崩しておいて。
「熱中症か!? 医務室へ連れていく、道を空けてくれ!」
 バルタサールは渾身の力でゾンビを羽交い締め、こちらへ不審な目を投げかけてくる群衆から引きずり出しにかかる。
「小官も手伝うのである。――中尉!」
『は。捕縛にかかります』
 待機していたソーニャが手を貸す体でアイシクルチェインをゾンビの脚に巻きつけ、払った。
「この変異体はウルカグアリーの能力の発動起点になる。そして体内には変異の素であるウランが存在する。せめて市民から引き離すまで、壊すことは避けたいのである」
 市民の目を装甲で遮りつつ、ソーニャはバルタサールへ細めた声音をかけた。
「了解した――ああ、きみは脚を頼む!」
 バルタサールの演技に支援は人の悪い笑みを向け。
『轟雷さながらの耳打ちだ。きみとの内緒話は避けるとしよう』

『バルタサールとソーニャが1匹釣り上げたようだが……俺たちはそうもいかんか』
 どらごんが難しい顔で唸った。
 ゾンビはギシャもすでに発見していたが、問題は、そのゾンビが今にもキース目がけて駆けだそうとしていることだ。
『まずいのはキースを襲撃されることよりも、群衆の前で服を脱がれることだ。ギシャ、奴の足を止め、行動を封じる――できるか?』
 ギシャはその面に刻まれた笑みを傾け。
「やるよ」
 這うほどに低く上体を倒し込み、背の羽と尻尾でバランスを取りながら人々の脚の間をすり抜ける。
 そしてゾンビの脚へ、右腕に巻きつけていた包帯を投げつけた。
『よし――!』
 ギシャとどらごんの“謎の龍パワー”で蛇へと変じた包帯は、その牙をゾンビの腿へ突き立て、ギシャの支点となる。これがギシャの新兵器、ザッハークの蛇“にょろたん”である。
『誰にも気づかれんよう、至近距離でゾンビの目を奪え』
 ギシャは“にょろたん”をたぐってゾンビへ貼りつき、ターゲットドロウを発動。追いかけてくるゾンビの腕を蛇の胴で弾き、いなし、絡め取る。
「はいはい、おとなしく順番待ってようねー」
 なだめる体で暗闘のすべてを薄い背に隠し、龍娘は死者と舞う。

 仙也は3体のゾンビにそれぞれ照準を合わせ、いったん目線を切った。
 追い詰めることを焦れば、逆にこちらが追い詰められる。それを招く愚を犯すつもりはない。しかし事態がすでに動き出している中、後手に回るのもまた愚だ。
『……』
 ディオハルクは沈黙を保っている。とはいえその胸中で、撃って出られない現状にじれてはいるのだろうが。
 仙也もまた言葉を発することなく、アンチマテリアルライフルを構えなおした。
 いつでも撃てる。あとはいつ撃つか、それだけだ。

『速度測定・完了。速度特化型・確認』
 ファリンが取りまとめたデータ、そして各員からの通信、自らの目視情報を基に弾きだした計算結果を反映し、ストレイドがモニターに速度特化型ゾンビをクローズアップした。
 伏射姿勢で待ち続ける焦一郎はそれを確かめ、照準を合わせる。
「ギシャさんが相手取っているゾンビか。ギシャさんと息を合わせる」
『個体名・ギシャの呼吸パターンを計測――』
 ストレイドがギシャの呼気を計算し、その周期をデータ化して映した。
「待機モードより復帰、射撃モードへ。照準は預ける。トリガーはこちらへ」
『了解』
 ライヴスの高鳴りが鋼鉄の体へ巡るのを感じながら、焦一郎は引き金に置いた指先に意識を集中させた。

『ウルカグアリーの口を封じる!』
『央、待って。様子がおかしい』
 ウルカグアリーに1秒で届く間合に忍び寄った央をマイヤが制した。
『共鳴していないのか――!』
 歯がみして跳びかかるのを我慢しているアシュラを見れば一目瞭然だが……それよりもカグヤが青ざめ、苦しげな息をついていることも気にかかる。
『動かないのではなく、動けないのね。ここからでは見えないけど、攻撃を受けている』
 左脚は細かに震えてその位置を変えているのに、右脚は不自然なまでに不動。
『……攻められてるのは右脚か』
 央は抑えた息をさらに絞り、ついには止めて、その身を低くかがみ込ませた。全身の筋肉が撓みに抗い、悲鳴をあげる。
「ウルカグアリー!」
 引き絞った筋肉を一気に伸ばして跳び、央は腰に佩いた天叢雲剣を抜き放った。

●釣果
 ウルカグアリーの声を聞いたファリンは、すぐに通信機を通して指示を飛ばした。
「――ゾンビが動きますわ! 目的は煽動と混乱! 市民のみなさまに説明の上、全力でゾンビにあたってくださいまし!」
 そして群衆を導きつつ、わざと棘を含めた声音を発する。
「新型のウィルスなどないとは申しません。ただ、四国全域が愚神の侵略を受けている現状、みなさまだけが感染していないとも言えませんわね」
 群衆の怒りがファリンへ殺到するが……彼女はおののかず、揺らがず、退かない。
「ないものをないと証明する。そんな悪魔の証明を求め、誰かを贄に捧げたところで、恐れから逃げ出すことなどできはしませんわ。でも」
 ファリンはその胸を反らし、仙気漂う白き姿を見せつけた。
 神ならぬこの身ですけれど、1秒でも2秒でもかまいません。みなさまの目を奪えれば。
 いぶかしむ者がいた。あっけに取られた者がいた。気圧された者もいた。が、その目からは等しく怒気が薄れていた。ここだ。
「わたくしたちH.O.P.E.がここにいます。治療薬を携え、愚神を滅するために。ですから、みなさまの不安をわたくしたちにお預けください。悲観こそが四国の守護を侵す毒。それに浮かされて傷つけ合っては、それこそ愚神の思う壺です」
 ファリンが、ほころぶように、笑んだ。
「笑ってくださいまし。笑いには免疫力を高める効力があるそうですもの」

「駐車場の後方に愚神が現われたとの報告を受けました。H.O.P.E.のエージェントが対処に当たっています。みなさんはそのまま庁舎の中へ避難してください」
 平静な声で語りながら、キースは内で厳しい顔をうつむける。
 こんな単純な返し手でこちらの一手を乱された。先手であるウルカグアリーの有利はわかっていたが、まさか自身の異形で感染を騙りにくるとは。
「新型ウィルスという形のない恐怖をもってすれば、大概の無茶は押し通る、ですか」
 眉をしかめたキースに、紙姫がぐっと力を込めて。
『ファリンさんががんばってくれた。ウルカグアリーはカグヤさんと央さんがなんとかしてくれる。だからキース君、あたしたちはあたしたちの仕事、しよっ!』
「そうですね。それに、切り込む隙はまだある」
 キースは通信機を起動、各員へ告げた。
「ウルカグアリーの存在は先の戦いで判明しています。戯れ言を差し挟むことはできても、自身が姿を晒すことはできません。……テレビを使って不安を拡散したその一手が、あなたのチェックを遠ざけましたよ」

「あら、なんだか頭のいい子がいるのねぇ」
 キュキュ、硬い喉を鳴らすウルカグアリーへ、カグヤは脂汗の浮く面を向ける。
「……わらわに、釘づけられておって、よいのか? ただでさえ、数では、そなたが、劣っておろう?」
「最後はドカンって手があるからねぇ。制御するのやめて一気にいっちゃおっかなぁ」
 のんきに語るウルカグアリーに、カグヤが震える指を突きつけた。
「制御。それで、知れたぞ。タングステン、そしてウラン。そなたが、原子炉を、模しておるのならば……本体は制御棒――比重を、考えれば、炭化ホウ素、か」
 ウルカグアリーは「あー」と硬い髪を指先で梳き、神妙な顔でうなずいた。
「そういやあんた技術屋さんだっけ。正解。大当たり」
 ウルカグアリーの構成物質の重さにそぐわぬ口調の軽さ、その謎が解けた瞬間だったが。
「こうなったら力押ししかなさげ?」

『ゾンビが動きだす。スキルを使われれば厄介なことになるぞ』
 繋ぎっぱなしのカグヤの通信を聞き、ギールがエミルへ警告する。
 群衆の移動は進んでいたが、それはあくまでも半ばのことだ。
 ソンビの体が前へ折れ曲がった。ここで金属操作なり魔法なりを発動されれば、群衆はパニックへ墜ちるばかりか、なけなしのH.O.P.E.への信用すらも放り捨てるだろう。
「ん、説明、する……」
 エミルはゾンビへ突撃する中で息を吸い込んだ。
「ん、みんな、どいてー……。そんぞん、注意報。……であえ、であえー」
 どん。ドレッドノートドライブが発動し、エミルが急加速した。
 ゾンビがこちらを振り向こうと首を巡らせるが。
『間に合ったようだな』
「ん、必殺、ぞんぞん斬り……」
 ゾンビの白メットを断ち割る炎剣「スヴァローグ」。炎の軌跡を描き、刃はさらにゾンビの背と脚とを打ち据え、その場に跪かせる。
 まわりの人々へ、エミルはこくりとうなずいた。
「ん、ウィルスじゃ、骨とかは、金属に……ならない。これは……愚神が造った、ゾンゾン」
 タングステンに置き換えられた背骨と生乾きの肉とを示し、ちぎれかけた脚で立ち上がろうとしたゾンビを神経接合ブーツ『EL』の踵でぎゅうと押さえつけ。
「もっと、離れて……」
『エミル!』
 ゾンビの背骨から伸び出したタングステンの細杭を、その手につけたイヤシロチでパンチ。切っ先を反らしながら、エミルは「ん」と踏ん張り、片手で炎剣を振りかざした。
「リベンジ……おー」

「ウルカグアリー!」
 央の叢雲が一文字を描き、ウルカグアリーの首筋を薙いだ。
 キィーッ! 鋼とタングステンが掻き合う騒音が空気を引き裂き、生者の耳を痛めつける。
『前!』
 マイヤの警告。
 央は剣を振り抜いた勢いを利して回転、ウルカグアリーの背にぶち当てた回し蹴りを足場として跳び、一気に間合を開いた。
 次の瞬間、ウルカグアリーの背後、地を突き破ってタングステンの細杭が伸び出し、一瞬前まで央がいた空を貫く。
『あれがカグヤさんの脚を縫い止』
 着地した央の足元より噴き上げるブルームフレア。
「奇襲はお静かに、でしょ? この場の手数はあたしのが多いんだし」
 首筋に刻まれた傷を指先でなぜ、ウルカグアリーが背中越しに笑みを投げた。
『2本腕でも能力の同時発動ができるのか!』
 地に転がって炎から逃れた央の内、マイヤが低く告げた。
『跳んでも飲まれるだけなら……央、行くわよ』
「ああ」
 起き上がった央はそのまま直ぐに駆ける。
 攻撃は――来ない。
「なにを企んでいる!?」
『今はいい。この時間を使うわよ』
「ああ」
 叢雲で斬りつけると見せて、央は剣を抱き込むように前転した――猫騙だ。狙うはウルカグアリーならぬ、その向こうのカグヤだ。
「カグヤ、息を止めろ!」
 地を腹でこすりつけて薙いだ叢雲が、カグヤの足裏をくぐり抜け。
 キン。高い音が弾けると同時に、カグヤの体が後ろへ倒れ込んでいった。
「ママっ!」
 アシュラがカグヤに跳びついてその転倒を支え、そっと横たえた。
「アシュラ、まっすぐ急いで正確にじゃ」
 アシュラはカグヤの右脚を抱え込み、足裏から慎重に、しかし急いでタングステンを抜き取っていく。長い。これほどの長さ体内に潜り込んでいたなんて……絶対、絶対ゆるさないから!
 細杭を投げ捨て、アシュラがカグヤに重なって共鳴。速やかに蜘蛛めいた外骨格がその体を包み、守る。
「痛い目に合わせてやる! ママが痛かった100倍っ!!」
 ウルカグアリーは笑みを浮かべてそれを見やり、そして。
「きゃー、今引きずり出された人、発症してるわー!!」

 これまでバルタサールに引きずられるがままだったゾンビがもがき始めた。
「ちっ、石喰い女が今までゾンビを動かさなかった理由はこれか!」
「……まわりには、小官らが市民に手出ししているように見えているはずだ。状況証拠を騙ってこちらの信用を落とそうとは、卑劣な策を使うものなのである」
 ソーニャは現状を分析、ウルカグアリーの意図を読み取った。いや、読み取ってしまった。
 気づかなければこのまま押し通すこともできた。しかし気づいてしまった今、バルタサールと彼女は共に迷ってしまった。その逡巡は、市民からすればウルカグアリーの言葉を肯定しているかのように見えるのだ。
『少佐殿、縛めが、解けます』
 ラストシルバーバタリオンが剛健な装甲を高くきしませ。
『まさに腐ってもケントゥリオ級だね。僕らだけでは抑えきれない』
 紫苑が麗しい面に苦笑を浮かべて肩をすくめた。
 その間にもゾンビはさらに激しくもがき、バルタサールとソーニャの拘束から逃れようとする。自らの服を引き裂き、ゾンビと化したその体を見せつける気だ。
『救いはすでにゾンビの存在が市民に知れていることかな』
「こちらに少しでも有利な形で正体を晒せれば……」
 バルタサールが奥歯を噛み締めた、そのとき。

 枝に座り込んで幹に背をつけた仙也が、頬づけに構えたアンチマテリアルライフルの引き金を絞った。
 固定されていない銃口は大きく跳ね、ストックが凄絶な反動を仙也の鎖骨へねじり込んでくる。
「っ!」
 仙也は鎖骨を砕かれる直前、ウェポンディブロイを発動した。
 跳ねたライフルは幻想蝶の内へ消え、その手にスキルで複製されたライフルが現われる。
『後のことを考えなくていいのは有用だな。さすがにリロード時間までは短縮できんようだが――まあ、狙う手間もあるからな』
「充分だ」
 ディオハルクへ短く応え、仙也はスコープ越しに戦果を確かめた。
 この場にいる3体のゾンビはすべてが金属で強化された変異体。普通のゾンビではありえない金属部分を露わとすることで、感染者を装わせようというウルカグアリーの目論見はある程度くじくことができる。
 そして。撃ち放った弾丸はゾンビの肩口をえぐり取り、骨に成り代わって体を支えるタングステンを露出させた。
 まだだ。市民の目に、ゾンビがゾンビである証を見せつける。ウルカグアリーにさらなる手を打たせず、封殺するために。
 ――てめぇは駆け引きがしてぇんだろうがな、オレたちが付き合ってやる義理はねぇんだよ。
 仙也は次弾でさらにゾンビへ穿った傷口を拡げ、次のライフルをかまえた。
「逢見だ。後ろに引きずり出したゾンビの“骨”を露出させた。マークの更新とアナウンスを頼む」

 仙也の支援を受け、バルタサールはゾンビを地へ引きずり倒す。
「これが“感染者”の正体だ。新型ウィルスなんてもんがあるなら四国だけじゃない、国中がこの新型ゾンビどもに蹂躙されてるさ。きみらとちがって事情を知ってるはずの知事もとっくに逃げ出してるだろうよ」
 ゾンビが防御のために掲げた棘だらけの腕をLSR-M110と魔導銃50AEとで撃ち抜きながら、バルタサールは冷めた声音で語った。
「これはきみらを陥れたい愚神の罠だ」
 執拗な一点攻撃に外殻を削られ、タングステンの骨を晒したゾンビを指す。
 ゾンビは糸に釣られて引き上げられるかのような動きで立ち上がり、棘の突き出した手を伸べてその指に喰らいつこうと顎を開いたが。
「“改2型”、発射用意」
『装填完了。いつなりと』
 横から割り込んだ12.7mmカノン砲2A82改2型――ディエス・イレの文字が刻まれた砲身、その砲口がゾンビの口へと突き込まれ。
 カキン。ゾンビのタングステンの歯が合金の砲身を噛む乾いた音が響いた刹那。
「てぇーっ!」
 口内で砲弾が弾けるくもぐった爆音に、大きく退いているはずの群衆をさらに後じさらせた。
 腹に砲弾をぶち込まれたゾンビが凄まじい勢いで跪き。逆流した砲圧で、ちぎれ飛んだ頭部は20メートルも打ち上げられた。
「計算通りであるな。防御特化型の外殻、こちらの弾をしかと止めてくれた」
『頭部の破壊を完遂。されどゾンビの攻勢は継続中であります』
 頭を失いながらもソーニャへ掴みかかってくるゾンビ。
 装甲をきしらせ、ゾンビの両腕を内側から揺さぶって崩しながら、ソーニャは隻眼を鋭く輝かせる。
「我らは市民の安全を最優先とする! 格闘戦を主とし、零距離射撃でしとめる!」
 タングステンの骨の隙間に指をかけ、ゾーニャは襲い来るゾンビを引き倒しにかかる。

 ギシャが対していた速度特化型ゾンビが踵を返し、前方へ向けて走り出す。
「わっ」
 対応するには近すぎたせいで引きずられるギシャだったが、蛇がその身の柔軟性で衝撃を吸収。一瞬の間を与えられた彼女は体勢を立てなおし、蛇をそのまま伸ばしていった。
「みんなどいて。これ、ゾンビだから」
 擬装用のヘルメットを払い落とし、消せぬ笑顔を露わしたギシャは、県庁舎へ向かおうとしていた人々に警告。
 そして10メートル。蛇が最大に伸び、ゾンビの脚が停まった――

 焦一郎のLSR-M110が、ただ1発の弾丸を放った。
 彼はこのときを待っていた。ゾンビが脚を止めるその瞬間を。
 戦場へ潜んだスナイパーは、ある意味で死んでいる。すべての気配を断ち、場そのものの一部として在り続けるのみだ。
 そしてその命に火を灯すのは撃つ――その瞬間だけでいい。
 シャープポジショニングで修正されたライフル弾は、停止したゾンビの右膝の継ぎ目へすべり込み、その回転にタングステンを、肉を引きずり込み、吐き散らした。
『着弾を確認。リロード実行――完了。ターゲットを選択せよ』
 ストレイドのガイドアナウンスが淡々と促した。
「照準は速度型に固定。破壊優先箇所は頭部、右腕部、左腕部。テレポートショットを試用し、ギシャさんの攻撃を支援する」
『了解』
 先と同じ伏射姿勢、先と同じ無心で、焦一郎はスコープの示す先を見据える。
「なにもさせはしませんよ」

 右膝から下を吹き飛ばされたゾンビが、残った片足を軸にくるりと回る。ギシャの蛇――“にょろたん”に支えられて。
「とう」
 体のすべてを蛇に預けるゾンビを、ギシャが引っぱった。ただ引き寄せるだけでなく、左右へ“にょろたん”を振りながら、攻撃に転じようとするゾンビの動きを阻害して。
「ギシャのほうが速いよ」
 装着した“しろ”の爪先がゾンビの首筋へ食い込み、止まる。
 しかしギシャはその固い骨をなでるように引き斬り、切れ目を刻んだ。
『予想以上に固いな』
 焦一郎のテレポートショットが、正確にギシャのつけた切れ目を撃ち、タングステンを抉った。
「まずは頭」
“にょろたん”で繋がったゾンビを軸に、ギシャが大きくその周りを巡る。充分に遠心力を蓄えた彼女は蛇を縮め、一気にゾンビへ跳んだ。
「動かなくなるまで殺すよ」
 落ちた首に言い置いて、もがくゾンビの体へ“しろ”を突き立てたギシャが――まわりの空気ごと地へ叩き落とされた。
『重圧空間、ここで来たか』
 動きを止められたギシャは、消せぬ笑顔の内で両眼を輝かせ。
「――殺しちゃえば、終わりだから」

●解答
『ファリン、ゾンビの切り口からウランが漏れ出している可能性があります。対応を』
 群衆の最後尾についていたファリンは、キースからの連絡に了解の意を伝え、ケアレインを降らせる。もちろん実質的なケアではなく、人々の心情ケアのためにだ。
「応急処置は済みました。お急ぎくださいまし。すべての説明は県庁舎への避難が済んでからですわ」
 癒やしの雨に押されるように足を速める群衆を見やり、ヤンがうそぶく。
『疑問の声をあげる者はいなかったな。ウルカグアリーがゾンビを強化してくれたおかげか』
「それこそ先のあの施設を中継してくださったことも、ですわね。……とにかく人々を安全な場所へ送り届けましょう」

『ウルカグアリーの重圧空間は健在のようだな』
 攻撃特化型ゾンビが前屈みになったのを見て、エミルはドレッドノートドライブを始動する。
「ん、速攻……悪即、斬」
 発動される前に倒す。その覚悟で突っ込むエミルの腹へ、ゾンビの体から伸び出したタングステンの細杭が突き立った。
「ん、お腹は、さっき、覚悟……決めた、から」
 杭に腹を押し込んで進むエミル。行くべきところへは、この杭が導いてくれる。
『反撃の狼煙をあげろ』
 ゾンビの前にたどり着いたエミルは、杭に体を預けて炎剣を振りかざし。
「必殺、ゾンゾン斬り……リターンズ」
 その言葉を聞きつけたかのように飛来するテレポートショット。
 弾はゾンビの剥き出しになった背を突き抜け、エミルに刺さった杭をへし折っていく。
「ショーイチロー、トモダチ……」
 カタコトでつぶやいたエミルの剣が、のけぞったゾンビの体を3度袈裟斬り、斜めに断ち斬った。

『攻撃特化型ゾンビ・大破を確認。テレポートショット・残数1。シャープポジショニング・残数0』
 ストレイドの報告に、焦一郎は淡々と応えた。
「エミルさんへの援護は終了。これ以上は逆にエミルさんの剣の邪魔になる」
『了解した』
「ターゲットを速度特化型に戻せ。射撃用意」
 腕でも脚でも、1本が残っているだけでどれほどの機動を見せるか知れない。群衆の県庁舎への退避が終了する前に、そこへ突っ込ませるわけにはいかなかった。
『リロード。装填完了。照準合わせ――補正終了』
 焦一郎はLSR-M110のセミオート機能を活用し、連射をもって速度特化型の末端部を削り落としていく。

 焦一郎の射撃が続く中、ギシャは“にょろたん”で結ばれたゾンビとの間合を詰める。
 ゾンビの攻撃とウルカグアリーの魔法が、重力に捕らわれたその細い体を幾度となく傷つけていた。しかし痛みを意識から遮断し、直撃を避け、龍娘はじりじりと歩を進め、そして。
「捕まえた」
 頭部を失くしたゾンビの首、その傷口へ両手の“しろ”を突き込み。一気に引き下ろして――その体を3枚におろした。
『ここまで刻めばもう動けまい』
 どらごんの渋い声音を置き土産に、重力から解かれたギシャはウルカグアリーへ駆ける。

「中尉、レイ殿と逢見殿の射線を繋ぐ! 耐えるぞ!」
『了解であります、少佐殿』
 守るべき誓いでゾンビを引きつけたソーニャは、ラストシルバーバタリオンと共に敵の攻撃のすべてを受け止めつつ拘束する。
『そろそろ死人舞いの唄も終わりかな』
 バルタサールは紫苑の声に「はっ」、獰猛な笑みを返して魔導銃を構え。
「終わらせてやるんだよ」
 ライヴス弾をゾンビの膝へ撃ち込んだ。
 シャープポジショニングとその眼で見極めた一点へ潜り込んだ弾はゾンビの左膝関節を砕き、さらには防御姿勢を崩させる。

「……っ」
 後方からの支援射撃に徹していた仙也が、アンチマテリアルライフルの引き金を絞る。
『ふん、殺し合いが楽しめなかったのは残念だがな』
 ディオハルクがつまらない声でつぶやき。
 カオティックソウルが乗せられた大口径弾が音を置き去りに飛び。
 ゾンビの残る右脚を付け根から引きちぎった。
「片がついたら次は愚神だな」
  群衆のほとんどが県庁舎へ入ったのを確認し、仙也はゾンビの右腕へ照準を合わせた。

『キース君っ、あともうちょっとで避難終わるよ!』
 知事、そして県庁職員と共に避難誘導へあたっているキースに、内から紙姫が報告した。
「……守衛に全出入り口にシャッターを降ろしてくださるよう通達を。ゾンビの存在は目視されていますから、騒動にはならないでしょう」
 キースは職員へ告げ、ため息をつく。
「残るはウルカグアリーと、ボクの仕事だけですね」
『ウルカグアリーさんの悪巧み、これで全部邪魔できたのかな?』
 ね? ね? と訊いてくる紙姫をキースはなだめつつ。
「ボクの仕事を心配してほしいところですけどね。先にウルカグアリーの性質が露呈していたこと、群衆に紛れた変異体ゾンビを迅速に捕捉できたことで、彼女の企みはあらかた潰せたと考えていいでしょう。ただ――」

『――問題は、爆発したいはずがなぜ制御棒などに身をやつしているのか、じゃな』
 アシュラに主導権を預けたカグヤが内から疑問を投げかける。
「そんなの知らないし! 死ね! 死んじゃえ!」
 ウルカグアリーから50センチの間合を保ち、右腕に装着したV8-クロスパイルバンカーを叩き込むアシュラ。8本の杭はタングステンに弾かれ、魔法で焼き落とされるが、その大きな動きは確実にウルカグアリーを泥仕合へ引きずり込んでいった。
「ゾンビ使ってパンデミック騙り! ってのが成功してたらよかったんだけどねぇ」
 巻き込まれていることに気づきながら、ウルカグアリーはアシュラを相手取る。
「濃縮率70パーセント。制御やめたら20秒くらいでいけるわよー?」
『させると思う?』
 マイヤの声音を先触れに、潜伏していた央が出現。逆手に構えた叢雲の切っ先をウルカグアリーの延髄へ――先ほどつけた傷へ沿わせた。
「あんた、よけるの専門じゃなかった?」
 央は体を翻し、逆の掌で叢雲の柄頭を突いた。瞬発力を吸った刃が切っ先から鍔元までの距離をこすり斬り、ひっかき傷を切り傷へと変えた。
「……先陣を切って、後続を呼び込むまでが俺の仕事だ」
 そして。
「“改2型”照準合わせ――てぇーっ!!」
 ソーニャの砲弾がウルカグアリーの横腹を撃ち据え。
「四国にこれ以上の混乱を招かせるわけには参りません」
「約束どおり、鉛を喰わせてやる」
 焦一郎とバルタサールの弾が爆煙を裂いてウルカグアリーを弾き。
「もう1回、首刈り龍行っとく?」
 潜伏状態から抜け出したギシャの“しろ”がウルカグアリーの首の傷を抉った。
『さて、しあげといこうかの』
「ママの100倍痛くなれーっ!」
 仲間たちの攻撃に紛れ、トップギアで溜めていた力のすべてを込めたアシュラの疾風怒濤――24本のパイルがウルカグアリーの首を左右から穿ち、眉間を貫いた。
「これじゃしょぼい爆発しかできないかもー。困ったわー」
 ウルカグアリーがもげかけた頭を手で支え、笑んだ。
 誰もがその笑顔を見ていた。いや、引きつけられていた。
『みなさまいけませんわ! ウルカグアリーは――』
 通信機の向こうから飛ばされたファリンの警告を遮り、ウルカグアリーがささやく。
「あたしは人間に見られてない。それってつまり、あたしがほんとに愚神なのか感染者なのかわかんないってことよね? そんなあたしからウランが漏れちゃったら……残るわよね? ウランベースの新型ウイルスがあるんじゃないかって疑惑」
 守るべき誓いを解除したウルカグアリーがキュキュ、喉を鳴らした。
「あたしが爆発する必要ないの。あんたらが寄ってたかって爆発させてくれれば。H.O.P.E.がウィルスのこと隠したくてあたしを殺したって、何人かが思ってくれたらね」
 ウルカグアリーの口から、耳から、鼻から、高熱が噴き出した。
「神門にそこまでの義理とかないからやんないけどね。こっちが設定してた罠はほとんど潰されたわけだし。負けだわぁ」
 形を失っていくウルカグアリー。
「その代わりあたしのこと憶えといてねぇ。宿縁は多いほうが楽しいもの」
 体内で断続的に起こった小爆発を飲み込んで、ウルカグアリーは沈黙。ウランの残滓を抱えたタングステンの球と化し、転がった。

●残滓
「もう残ってる奴はいねぇか?」
「ん、全員、中に入った」
 ファリンを助け、群衆の誘導を担っていた仙也とエミルが庁舎の外を確認し、守衛に合図を送る。
 果たしてシャッターが降ろされ、数千の群衆は一時的に内へ閉じ込められることとなった。
 その間にエージェントへの応急ケア、H.O.P.E.へのウルカグアリーの残存物質と周囲の洗浄の要請を済ませたファリンは息をつき。
「ウルカグアリーの本体が担う役割が“はったり”であること、予想はしていましたが……」
『よもやこちらに破壊させるため、爆発を制御していたとは』
 ヤンもまた重い息を吹いて顔をしかめた。

「ですが、あの場で爆発されても目撃者はいませんでした。そこまでの効果があったとは思えませんが――負けてもらったそうですから、今は素直に勝ちを誇りましょうか」
 通信機をオフにし、キースは庁舎の1階に詰まった人々へスピーカーを向けた。
 実施されなかった策について考えても意味はない。今はこの騒ぎを終わらせることに注力するべきだろう。
『キース君、がんばって!』
 紙姫の応援を受け、キースはその口を開く。
「この騒ぎが起こってから今まで、庁舎に据え付けられた定点カメラで撮影を続けていました。これからその映像をノーカットでお見せします。先の施設での騒動の資料は、お手数ですが香川県の公式ホームページをご確認ください」
 キースは一拍置いて人々の目が集まったことを確認し、強く、言葉を紡いだ。
「先に結論からお伝えします。――新型ウィルスなど存在しません」
 ここで共鳴を解いた央がマイクを受け取り。
「私から捕捉を。出現したゾンビは新型ウィルスの感染者ではなく、共食いで選別されたゾンビを放射性物質で変異させた個体に過ぎません。先日の収容施設での一件と併せてお調べいただければ、今日までに少なくない数のゾンビが姿を消していることがわかるかと」
 かくしてウルカグアリーの後方攪乱劇は、エージェントたちの迅速な迎撃により、不発のまま幕を下ろした。ひとかけらの、宿縁の予感を残して――

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 単眼の狙撃手
    灰堂 焦一郎aa0212
    機械|27才|男性|命中
  • 不射の射
    ストレイドaa0212hero001
    英雄|32才|?|ジャ
  • 死を否定する者
    エミル・ハイドレンジアaa0425
    人間|10才|女性|攻撃
  • 殿軍の雄
    ギール・ガングリフaa0425hero001
    英雄|48才|男性|ドレ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • エージェント
    アシュラaa0535hero002
    英雄|14才|女性|ドレ
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 君がそう望むなら
    ヤン・シーズィaa3137hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
  • 天秤を司る者
    キース=ロロッカaa3593
    人間|21才|男性|回避
  • ありのままで
    匂坂 紙姫aa3593hero001
    英雄|13才|女性|ジャ
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 悪食?
    逢見仙也aa4472
    人間|18才|男性|攻撃
  • 死の意味を問う者
    ディオハルクaa4472hero001
    英雄|18才|男性|カオ
  • 我らが守るべき誓い
    ソーニャ・デグチャレフaa4829
    獣人|13才|女性|攻撃
  • 我らが守るべき誓い
    ラストシルバーバタリオンaa4829hero002
    英雄|27才|?|ブレ
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