本部

広告塔の少女~ECCOスランプ~

鳴海

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~8人
英雄
5人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2017/06/13 17:58

掲示板

オープニング

● 枯渇した井戸。

「あああああああああああ!」
 ECCOはその長髪を振り乱して鉛筆を強く紙に叩きつけた。
 割と強いECCOの握力は哀れな鉛筆をへし折ってそのままテーブルに叩きつけられる。
 荒れている。いい年した女性があれている。
 無理もない。ニューアルバムを出すにあたって新曲を五曲、一か月で。
 とか言われてしまえば、それは無茶だ。
 しかもPV撮影まで。とか言われてしまうと辛い。
 基本ECCOの楽曲に関してはECCOがPVの内容決め、絵コンテ作成までやる。
 よってECCOは曲を作りながらPV撮影の事も考えないといけなくなった。
 ECCOは本来管理されたアーティストだ。発想とか天才性とかそう言うものに頼らずに、安定した期間で安定したノルマを達成し、安定したクオリティのものをしあげる。
 それがECCOの得意分野。
 しかし、それは安定性を覆された場合に弱いという急所の裏返しでもある。
 今絶賛、調子を崩され中なECCOは、つややかな髪を静電気で膨らませ、机にかじりついている次第だ。
「うわーん、誰かたすけてーな」
 そうECCOが泣き言を言い始めると、机に散乱した参考資料ががさがさと音を立てて崩れ落ちた。 
 その資料には各国の観光資料、世界遺産の資料と言った風景写真やそれを説明した文章が載っていたのだが。
 これも彼女にとってあまり用をなさなかったらしい。
 だが、そんな役立たずな資料でも、ひとつだけ彼女に素晴らしい発見をもたらした。
 その資料を集めてくれたとある少女の名前に目が行く。
「せや、こう言う時は」
 次いECCOは起き上がり、携帯電話の電源を入れた。
「友達を頼らなぁ」
 こうしてグロリア社の一室に繋がった電話から君たちに依頼がもたらされた。

● 要はアイディア。
「はい、遙華が来れないからかわりでよこされた春香だよ」
「ららら」
 そう元気にあいさつするのは春香とerisu。そして君たち。
 そんな君たちに涙ながらに駆け寄ってECCOは礼を述べる。
「ありがとう! ありがとな」  
「うわ。すごい部屋だね」
 ECCOの仕事部屋は資料や食べ物のゴミが散乱していた。
「赤原さんのこと言えないね」
「せっぱ詰ったら皆おんなじとこにたどり着くもんや」
 告げるとECCOは椅子を用意して皆を座らせる。そして。
「で、例のもんは持ってきてくれたんやろか?」
「うん、用意してきたけど本当にこれでいいの?」
 ECCOは頷く。
「うん、要はモチーフが大切なんや、そしてそのモチーフをうまく伝えるための言葉と音楽や。モチーフが強ければ問題ない」
 告げて春香が取り出したのは一枚のディスク。
 そこには春香がイメージした。『美しい物』という題材の映像が入っている。
「あんまり上手じゃないけど、erisuの歌ってる姿を取ってみたよ」
 ECCOはDVDをPCに叩き込んで再生ボタンを押す。
 広い丘で、石にすわり。髪をなびかせるerisuの姿があった。
 その絵はどことなく荒く、色素も薄い。映像からは今にも少女が壊れそうな印象を受けた。
「歌っている曲はなんなん?」
「どこかの民謡で、シャローム? だったかな?」
「ららら」
「ええなぁ、そうそう、こんな感じや!」
 直後ECCOはいつもの調子を取り戻して春香の手を握る。
「ありがとう! 他の皆さんもよろしく頼みます」





解説

目標 ECCOに題材を提供する
 
 今回はECCOの楽曲政策に協力する任務です。
 今回ECCOが求めているのは曲となる前の断片です。
 それは漠然としていて無数の種類があると思います。
 たとえば曲のテーマ。使う楽器。詩にむいた言葉。
 それをECCOの前で表現していただきます。
 楽器であればECCOの前で弾き語るのもありですし。
 言葉に込められた意味を説くのもありでしょう。
 テーマを説明するために映像作品を作ってきたりと、春香のようにやっていただいても構いません。
 実際春香は『儚さ』という美しさを伝えるために。erisuを撮りました。
 そんな風に今回は、ひとつの部屋でECCOとお話しするシナリオとなります。
 よければPV演出についても合わせて考えてあげてください。
 このフレーズを使うときは、鳥がバッと飛び去って。だとか。
 それは感性品になる前の断片的なもので構わないのです。
 また、ECCOの話し相手になってあげて、気分をリフレッシュさせる。
 ECCOのケアをしてすさんだ心を癒すなども。曲制作に効果がある行動となるでしょう。
 彼女の手助けをよろしくお願いします。
 もちろん完成した曲をECCOに提供していただいて構いません。その場合は作詞作曲の欄にあなたの名前が載ることでしょう。

リプレイ

プロローグ
「初めまして、俺はSoleilのフランって言うんだ」
「私は、フルムだよ。ねえ、私たちとお話しよ?」
  ぬいぐるみを手にした可愛らしい天使の翼を生やした少女が微笑みながら兄であるフランと挨拶をする。
『フラン・アイナット(aa4719)』と『フルム・レベント(aa4719hero001)』である。
 二人はアイドル衣装に身を包んでいた。
「なあ、このぬいぐるみ何に使うんだ?」
「ふふふーん、とっておきのものなんだよ!」
 そう告げてフルムはECCOの前に立つするとECCOは笑みを向けて、よろしゅうなと言った。
「初めまして、構築の魔女と名乗っております。よろしくお願いしますね」
『構築の魔女(aa0281hero001)』は作業室に入ると、そうECCOへ向けて小さく会釈する。
「あ! グロリア社のイベントでみたことあるよぉ。よろしくなぁ」
『辺是 落児(aa0281)』が構築の魔女に続いて入室し、鞄を下ろした。
「今日はECCOさんの生活環境を整えて、音楽活動の時間を増やすつもりです」
「うわぁ、気ぃ遣ってくれてありがとうな、お言葉に甘えさせてもらうわ」
 そう告げるECCOはテレビで見るより、小さいというか、元気がないというか。言ってしまえば萎びているように見えた。
「ECCOさん、大丈夫ですか?」
『斉加 理夢琉(aa0783)』はそうECCOを覗き込む。『アリュー(aa0783hero001)』が抱きしめたりしないように視線で、ダメと告げた後に。
「あらあら、お肌カサカサじゃない。もっと早いうちに言ってくれたらよかったのに」
 そう『雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)』が告げる隣で『アル(aa1730)』は楽しげにマシンを机に並べていた。
「ああ、せやな、最近インスタントなものしか食べてへんのが原因やろうなぁ。辛いわ……で、アルちゃんは何してるん?」
「ふふふ、今日は息抜きにと思ってVRを用意してきたんだよ!」
「ほうほう」
 ECCOの瞳が少しだけ輝きを取り戻す。
「今日のテーマは【旅に出ませんか?】【ノスタルジック】せっかくだから、
皆が楽しめるようにしてみた」
 その言葉にECCOは弱々しく微笑むと一行はこれは思ったより状況が悪いかもしれないと思い始める。
 なので、早速手分けをしてECCOのサポートのため動いた。

● 大相談
「さっそく、相談にのって~。もう、うち。あかんねん。何も、何も思い浮かばんのや。音楽家廃業や」
「……まぁ、落ちつけ、飯は食ったか? 食ってないならそれがおおむねの原因だ」
 そう『ネイ=カースド(aa2271hero001)』は席に着くでもなく壁に背を預けておもむろにそう言った。
「それは、ネーさんだけな気が……」
 そう頬をかくのは『煤原 燃衣(aa2271)』である。
「ECCOさん、これはどちらの棚へ?」
 そんな突っ伏したECCOに問いかけるのは構築の魔女。
「ああ、楽器の取扱説明書やな、左の棚の五番目の……」
「請求書などはどこにまとめておけば?」
「ひとまとめにしてマネージャーさんにわたしといてくれへんか?」
 構築の魔女はECCOの指示を受けて軽やかに室内整頓を続ける。
「にしても、双頭やられてますねECCOさん」
「うん、困難はじめてや」
「僕はアマチュアですけど。ネットに公開とかもやってるしDTMを嗜む者として何か手伝えないかと思って」
「愛あれば上等やん、たすかるわぁ」
「今回はアイドルのアルさんと違うアプローチができればなと思って。企画を持ってきました」
「ボクも今回は赤原さんの時とは違うアプローチをするつもりだよ?」
 そう話しながらアルはちょこちょこと動き回っていた。電源を繋いだり、機材のセッティングをしたり。
「今ね、カメラマン達が写真撮りながら外国を旅する番組に出演してるのだけど」
 さっそく雅がECCOにゴーグルを装備させながら告げる
「テーマ曲が無いんですって。ね、ECCOちゃんならどういうテーマソングにする?」
「ええなぁ、そう言うテーマありきで曲作るの好きや。でもイメージが……」
「そうですね、確認したいんですけど。『歌詞が先』か『音が先か』か……ECCOさんは普段どっちの人?」
「うちは……」
「ボクは何時も音が先ですが」
 燃衣は告げる。
「コイツそもそもゲームオタクだからな」
 ネイが告げた。
「うん、うちは、世界が先やな。光景やストーリーが先にあって、そこで音に出会えるか歌詞に出会えるかはわからへんけど。先に世界が来るなぁ」
「だったらちょうどいいですね」
 燃衣が告げる。
「持ってきましたヒント、僕もアルさんもVRを用意したんですよ」
「狭い部屋にいても、開放感を味わえるといいなと思って」
 アルは後ろ手にくんで、そう微笑んだ。
「360度カメラ撮影。VRでどうぞ」
 その場にいる全員が体感できるようにゴーグルも人数分用意されていた、全員がそれを装着できたことを確認し、アルは高らかに告げる。
「さぁ皆! 旅に出る準備はオッケー?」
 ECCOが頷いた。直後めまぐるしく変わる世界、直後飛び込んだのはアルが作った新世界。

 最初に聞こえたのは、雑踏、喧騒。そして最初に見えたのは石畳、皮のブーツ。
 耳に優しく届くのは異国の言葉で。
 声が気になって視線を上げて見れば、石造りの街並みがずーっと。ずーっと続いていた。
「きれい……」
 ECCOは唖然と、その言葉だけを口にした。
 次いで歩みを進める皮のブーツ。
 これは一人称視点でつづられた、旅の記録なのである。
 眼先には青々と葉を茂らせた森。
 異国の風が、髪を洗うように強く吹きつけた。
 次いでシーンが変わり、森の中。
 木の葉の隙間から落ちる木漏れ日というものはどうしてこんなに煌いて見えるのだろう。
 鳥の歌声があちらこちらから聞こえた。
 驚くべきは、当たりを見渡そうと首をひねると、音の角度が変わること。
 右に耳を傾けば小さな鳥の大合唱。左に耳を傾ければ、鳥の歌声の中に川のせせらぎが聞こえる。
 ただ、それも音の発信源に近づくにつれて皮の音ではないことが分かった。
 これは水の落ちる音、森から抜けて、くらむ視界に目が慣れたろ。
 水しぶき交じりの軽やかな風を受けつつ、その光景に息をのむ。
 瀑布だ。
 水が吸い込まれるように落ちていく。空に虹が見えた。
 湿った土のにおいがどこか懐かしい。
 ただ、森はそれなりに遠かったようで、町に帰ってくるころには夕刻になっていた。
 舐めるような赤が街並みを染め上げる。
 石畳に気味よく響く靴の音。
 やがてその足はゲストハウスの前で止まり、一階のカフェの扉を叩いた。
 コーヒーの香りが鼻腔をくすぐる。
 ここでECCOは自分が空腹であることを思い出した。
 目の前に並べられる焼きたてのパン。
 そしてその香りに、お腹が抗議の声を上げる。
 コーヒーに反射する店内の様子。
 ふと、左耳に鐘の音が届いた。
 皆が帰宅を開始する時間。
 にぎわう街並みを、ECCOは横目で眺めた。
 やがて夜が来る。
 訪れた静謐な夜。
 ECCOは高台に立っていた。葉擦れの音がサヨサヨと心地いい。
 見上げると満点の星空。木々の緑が認識できるのも月と星が明るいからだろう。
 ECCOは思わず息を深く吸い込んだ。
 水気のある、新鮮な空気が肺を満たしてくれるような気がして。
 そして夜が明ける。白んでいく空その向こうに空港がある。
 再び皮のブーツ。
 しかし歩む道は白い無機質な空港の通路。手元の旅券に目を落とし、周囲を行きかう人々に一瞬視線を合わせる。
 彼等や彼女らにはこれからどんな物語が待ち受けているのだろうか。
 そう思いつつも軽やかな足取りで搭乗口へ進む。
 旅はまだ、まだ続いていく。

「と、こんな感じなんだけど。どうかな? ECCOさんには空港で歌ってるシーンとかつくってもらいたいな……って」
 アルは早く感想を聞きたくて、ECCOの頭からゴーグルをどけた。
 直後こぼれるECCOの涙。
「えええ!」
 絶句するアル。そんなアルを抱きしめてECCOは叫ぶ。
「ああああ、うち、もう缶詰いやや。外でたい!」 
 

● もう二度といけない場所

「うわ。魔女さんじょうずだね」
 そう構築の魔女のフライパンさばきを観ながら、春香は皿の用意や、使った調理器具の後片付けをしていた。
「まぁ、料理は人としてできないと困ることですし、苦のない程度にはやっていますから」
 告げて中華鍋を揺らし野菜炒めをさらに盛る。
 これで食卓にはいろとりどりの料理が並ぶこととなった。
 パエリア、ドライカレーその他もろもろ
「ちなみに、コンセプトは?」
 春香が問いかける。
「片手で食べやすい物でしょうか……」
 そして二人で作業室に料理を運ぶ。春香がお行儀の悪いことに足でノブをひねってあけて、構築の魔女が突撃する。
「根を詰めすぎてもですからそろそろお昼でもいかがですか?」
 その部屋の真ん中でECCOは泣いていた。慰める雅と、おどおどしっぱなしのアルと燃衣。
 食事の香りを察知していたネイは悠然と春香に歩み寄る。
「とりあえず。食器の準備お願いしてもいいかな?」
「承知した。うまそうだな」
 ネイは上機嫌である。
「それにしても、いったい何が」
 構築の魔女が問いかける、それに答えたのはアル。
「うーん、VRの映像を見せたら、ここにはいたくないんや。って泣きだしちゃって」
「あらあら」
「あ! ECCOさん、どうしたの!?」
 そんな騒ぎを聞きつけて理夢琉が部屋に顔を出した。エプロンと三角巾で掃除の人と化した理夢琉はとりあえず片付いた作業部屋とは別の部屋をお掃除していたのだが。
 鳴き声が聞こえれば駆けつけずにはいられない。
 あわててECCOに歩み寄り、頭を撫でる。
「うう、ごめんな。なんかな。しばらく外に出てないからなぁ。その裏返しというか。映像もすごくきれいでなぁ。すごく引き込まれるしな。だからなそれがどこか遠くに行ってしまうような、もう二度と同じ光景は見れないような寂しさがあってな……」
「それは冥利に尽きるけど……」
 実際に泣きだされると困るので、心境としては複雑な雅である。
「ううう、ごめんなぁ。うちかて困らせたくなかったんやけどなぁ。ううう」
「大丈夫だよ! ECCOさん。仕事が終わったらみんなでいけるよ! お休みとってもいいし、何かの企画で言ってもいいと思うし!」
 アルがフォローをいれる。
「ありがとな。でももう二度と、見られない景色。わくわく、さみしい。空港のチケット、んん? これ、案外……」
 そう、うむうむと考え込むECCO。そんな彼女に理夢琉が告げた。
「ちょうどお風呂掃除も終わって、沸かしたところですよ。よかったらそれに入って、いったん休憩しませんか?」
「ええなぁ、それ」
「ご飯はその後でも構いませんよ」
 構築の魔女が告げる。
「いや、ちょっと食べてから行く」
「今日はラベンダーの香りがする入浴剤ですよ、とっても落ち着くと思います」
「時間があれば余裕も出来てうまくいくようになるでしょう、きっと」
 そう構築の魔女は告げると、残りの料理を作業室に運び入れ、みんなでご飯を食べた。

   *  *
 
 その後お風呂上りでほかほかになったECCOが作業室に戻ってくると。さっそくアルはVRの感想を求めた。
「編集と吹き替えは全部ボクがしたよ。パン屋のおっちゃんの声も違和感無し」
「え!」
 得意げに胸を張るアル。素で驚くECCOである。
「すごいなぁ。アルちゃん多彩やんなぁ。そう言えば、視覚だけやなくて匂いとか、風とか、あれどうしたん?」
「じつはね、滝の水飛沫はミストと送風機で、みんなの周りブワーってしてた! あとはね、パンとコーヒーの香り、ボクが調合したんだよ」
 ふふーと笑うアル。
「五感をこう、ぐわーっばぁぁってさせたかったの」
「ふふふ、そうやったんか。すごかったよ。何年か前に同じような町に行ったことがあって、その時の気分を思い出せたわ」
「ちなみに次は、そんな穏やかなものではなく、心臓に悪い刺激的な奴です」
 燃衣が語る。
「お、まだあるん? 楽しみやわぁ」
 そう笑いECCOはゴーグルを装着した。
「僕が用意したのは、猛スピードで空中を駆けていく映像です」
 暗い空間に光がさす、遥か頭上の一角が切り開かれて空が見える。
 そして、次の瞬間射出された。
「えええ!」
 射出されると一瞬空中で静止。その後あろうことか海面に向けて急加速を始めた。
 ECCOの甲高い悲鳴が響き渡る。
 次いで水しぶきを上げて、海面すれすれで並行飛行に移行。
 そのまま水をまきあげて飛びながら空中へ向けて角度をつけ上昇。
 そのまま大気圏まですごい速さで上っていく。
「きれいや」
 蒼い星、緑の大地。だが見下ろす俯瞰の風景は姿を変える、朝、夜、昼。
 暗くなり、人の町に明かりがともり、消え。朝日が地球を染め上げて。そして。落下する。
 ゴーグルを外した時ECCOは汗だくになっていた。
「凄まじいインパクトでしょ? これを無音にして音を付けるだけでも凄いものが出来そうな気がしません?」
 ECCOはこくこくと頷いた。
「これ、どうやって撮影したん?」
「え? こんな映像どうやって撮ったかって? ……小型ジェット機にくくり付けられましたよ、ええ、3回も」
 そのことを考えるとぞっとするECCOである。
「たいへんやな、煤原さんも」
「実は今回は提案があって、春香ちゃん、erisuさんも混ぜて「コラボ」はどうかな
曲名は『ソニックブルー』で!」
 そう曲紹介に入ろうとした燃衣をアリューが静止させる。
「その前に理夢琉が作ったVRも見てほしい。」
「今日は『動物専門学校の訓練風景』を取ってきました」
 理夢琉が告げる。
「実は、私達脱走したワンちゃんを捕まえて保護した縁で時々様子を見に行ってるんだ」
「理夢琉は動物に好かれるからな、個人的なものだが許可は貰っている」
 アリューが言葉をかさねる。そして台本を取り出し、理夢琉に手渡した。
 VRのゴーグルをECCOは装着する、するとすでに目の前には沢山の犬が、尻尾を振って並んでいるではないか。
「その日は学校犬が2年間共に学ぶ『パートナー』が決まる日」
 理夢琉のナレーションが流れる。
「犬のリストにはピンクのマーカーが付いています。名前『ティコ』性別メス、犬種は『ゴールデンレトリーバー』」
その犬は気分屋で運動不足で胴回りが太く重層だった。
「喜ぶと体当たりしてくるので注意です」
「理夢琉をふっ飛ばした奴だからな、屈強な男じゃないと無理……なに!?」
 映像の端から腕が伸びて、リードを持ったのは元気な女の子。他の生徒が穏やかに親睦を深める中「うきゃー!」という彼女の悲鳴が響く。
「今日、この日からティコの訓練が始まるんだよね?」
 画面が何度も切り替わった。訓練の映像がさしはさまれる。
「生徒達は動物に係わる仕事の夢の為に様々な経験をし犬達は2年間を彼らと共に過ごし訓練され飼い主を見つける事になるそうだ」
 アリューが告げた。
「捨てられたり保健所から引き取った犬は人間を怖がるそうです。事情があって学校に来た子は寂しさのあまり傷を舐めて酷くしたり……彼女はそんなティコを自分と似ていると感じて指名したそうです」
 画面はフリスビーを追うスリムになったティコ、そして真剣な顔で指導を受けるパートナー。
 新しい挑戦と絆に輝く瞳をお互いに向けて二人は駆けていく。
「初めてのフリスビー大会に出場を決めたそうです:
 ティコがジャンプしフリスビーをとり彼女の声が訓練場に響く……
 その声は青い空に吸い込まれるように消えて行った。
 そんなECCOがゴーグルを外すと、なんと目の前にゴールデンレトリバーが座っていた。
 ECCOを興味深そうに見つめている。
「ふあ。かわいい!」
 そう頭を撫でるECCO。
「今日は犬を連れてきてしまいましたもふもふで癒されてください」
 そんなECCOにフルムがぬいぐるみを差し出した。
「この子もすごく、ふわふわだよ」
 そうフルムは告げると、作業室の中央まで取って返す、見ればフランがギターを肩からおろし、構えている。
「思いをぶつけた曲を聞いて欲しいとお願いする」
兄が曲を弾き。妹が歌を歌う。
曲名は『あの日の約束』である。

 あの日約束した言葉はもう戻らない
 なのに思い出すのはあなたの笑顔
 言葉にするたびあなたを思い出し 
 泣き叫ぶ

 子供の頃から一緒にいた私たちは
 いつも笑って過ごしてきた
 それなのに今はあなたはいない
 あなたが死んだあの日から
 わたしはあの日の約束を忘れたことはない

 だけど会えたよ
 名前も違うけどあなたに会えた
 大好きなあなたに
 だから言うよ
 また一緒に笑い合おう
 今度は離れないと

 子供から大きくなった私はあなたに会いたくて
 心から願っていたんだよ
 なのにあなたはここにはいない
 だから声が枯れるまで叫んだよ
 あの日の約束を声に出して叫んだよ

 そして会えたよ 
 名前も違うけどあなたに会えた
 大好きなあたに
 だから言うよ
 また一緒に笑い合おう
 今度は離れないと

 会えてよかったと
 そして一緒に生きていくと

 ありがとう

 ひとしきり歌いきると、聞き入る一同の前でギターを置いた。
 そして告げる。
「自分が思うままに自分の気持ちをぶつければいいのさ」
「誰だって失敗はあるよ、きっと上手くいくから」
 そう、ECCOの手を取りきっと大丈夫と言いながら
「ありがとう」
 ECCOはその言葉に笑みを向ける。
「ああ! じゃあはい。次は僕でお願いします!」
 そう他人の演奏を聴いてうずうずしたのだろう。燃衣とネイがチューニングを終えて立ち上がる。
「僕は歌詞を作るのが苦手なので、曲に、音にこだわってみました」
 曲名は『ソニックブルー』 
 BPM185の静かなフェードインから弾けるように始まるハイテンポな曲。
 響かせる様なネイのベースに、衝突させる様な燃衣のドラムが合わさり、曲のテンポが一気に上がる。
 その技術にECCOは姿勢を正す、プロの目をしていた。
 曲の特徴としては『猛スピード感』何しろ楽器が『迅速い』

 321 今此処から飛び出そう 音の壁を越えて Ready Go!

 燃衣の歌が響く、だが、すぐに燃衣は舌を出して。おちゃめに笑った。
「あ、ごめんなさいボクの歌詞ここまでです」
 肩を落とすECCO、でもそのパフォーマンスは素人の春香ですら面白いと感じた。
 売りの一つはネイの脳回路が狂ってる超速弾き。
 燃衣もドラムンベースライクにスティックを回す。
ビブラートや拳、しゃくり等ポルタメントの嵐で音程の幅、遊びが大きい。
「この曲は、光夜は大喜びする野郎なぁ、うちには厳しいかも……」
 そう、ECCOが苦笑いするほど、この曲は歌い手の技量を試される。
 ついでに演奏している側の実力も試される。
「これを、春香さんと、erisuさんと、ECCOさんで歌えばきっと映えるはずです」
「わ! 私達?」 
躍動感の春香、透明感のerisu、迫力のECCOでVoを楽器として音の変化、情景を表現するのだと。燃衣は説明した。
「ためしに謳ってみるかぁ。みんなありがとうなぁちょっとスコア出してくれへん?」
 歌うための打ち合わせに入る一行だったが、その扉を構築の魔女がノックした。
「晩御飯ができましたよ、今日は休んではいかがですか?」
 そう構築の魔女が用意していたのは、クリームシチュー。
 昼間に食べた構築の魔女の料理は絶品であったので、一同は訓練された兵士のごとく机の上を片付け始める。
「賑やかな食事もよいものですよね」
 そう構築の魔女が告げると、配膳が整い。一同はいただきますと声を上げた。
 その日は構築の魔女の勧めもあって休むことにした。
 ただ、神経がとがって眠れないECCOが、食道と自室を行ったり来たりしていると。 
 構築の魔女が寝物語を話してくれると言うので寝室に二人は向かう。

世界は愛に満ちている
誰もが愛され、他人を愛し、愛を以って人と繋がり、自身を肯定する
他者を愛する自分を認めることで、その祝福は世界を形作る

世界は憎悪に満ちている
誰もが妬まれ、他者を憎み、憎悪を以って人の繋がりを断ち、自身を否定する
他者を憎み自分のを認められず、その呪詛は世界を写し取る

「それ魔女さんのお話なん?」
 ECCOは問いかける。
「……深く気にしないでくださいね」
 そう構築の魔女が答えた。


エピローグ

 翌日。一行は構築の魔女が入れるコーヒーと、サンドイッチの香りで目を覚ました。 
 今日も作業が残っている。
 しっかり仕事をしなければ。
 そう、朝食を食べ終わった一行は自然と作業部屋に集まった。
 ECCOが座っている、理夢琉に肩を揉まれている。
「爺やの肩をもんでましたから、得意です」
「ありがとうな、理夢琉ちゃん、よし、張り切って今日もがんばろーなぁ」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271

重体一覧

参加者

  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • これからも、ずっと
    フラン・アイナットaa4719
    人間|22才|男性|命中
  • これからも、ずっと
    フルム・レベントaa4719hero001
    英雄|16才|女性|カオ
前に戻る
ページトップへ戻る