本部

騙された契約者と少女の儚い祈りと

せあら

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 5~6人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/10/19 16:11

掲示板

オープニング

某市内の病院の一室に一人の少女が入院していた。
室内には少女が現在使っているベットとその近くにある支柱台、オーバーテーブルがあり、その上には祖母の形見である小さなオルゴールと何冊もの本が山積みになっていた。少女は膝の上に置いている本へと視線を移す。
 その時、コンコンとノックする音と共に扉がガラッと開かれた。そこには黒いキャップを被った12、13歳……少女と同じ歳ぐらいの少年がいた。
「こんにちは。ユリカ」
 ユリカと呼ばれる少女は柔らかい笑みを少年へと向けた。
「こんにちは翔君。今日は学校の登校日って言っていてから、てっきり来ないかと思ったよ」
「そんな訳ないだろう、お前に本を貸すって約束していたんだから……」
 少年……有馬翔は少しだけぶっきらぼうに言いながら、ユリカの前に来るとリックの中から一冊の本を取り出し、ユリカへと差し出す。それを嬉しそうに受け取りながらユリカは「有難う」と礼を言った。
「そう言えば……ずっと入院してて忘れそうになるけど今夏休みなんだよね」
「ああ。だげど夏休みの宿題がなければ最高なのにと毎日思う。そしたらゲームとか色々遊び放題なのに」
「でも良いなぁ、私もプールとか行きたいな……」
 ユリカは羨ましそうに呟く。
「すぐに退院出来るよ。そしたらプール一緒に行こうぜ!」
 翔の言葉にユリカは一瞬だけ寂しそうに、そしてすぐににっこりと優しく微笑んだ。
「そうだね。だったら早く治るように頑張らないとね」
 
●嘘つきの神様
 有馬翔は病院の長い廊下を一人歩いていた。
 時刻はもうすでに夕方の18時過ぎなのだが、この時期のこの時間帯はまだ明るい。
 翔は考え事をしていた。それは幼馴染のユリカの事だった。少女は半年前から病気で翔の両親が経営しているこの病院で入院をしていた。
 少女の命は後一年しか持たない。
 以前両親の会話を偶然聞いてしまった。詳しい病名は医療用語がいくつも飛び交ってて分からなかったが、このままだったら少なくとも少女は死んでしまう。手術さえ成功すれば助かるのだが、だけど成功は40%ぐらいだ。
 少女に……ユリカに死んで欲しくない。
 ユリカとは幼い頃からの付き合いで、時には喧嘩などもし、一緒に過してきた大事な友達だった。いつも優しく笑う少女の笑顔が好きだった。
 少女の為に何か出来る事は自分には無いのか……
 力になれる事は……
 だが今の翔は子供で、自分に出来る事としたら少女が好きな本を貸し与えたり話し相手になるぐらいだ。何故自分はこんなにも無力なのだろうか……
 その時、急にカッと辺り一面が光輝いた。翔は小さな呻き声を出し、思わず目を伏せる。
『我を願ったのはお前か?』
 その突然の声に翔は目を開いた。そして目の前の光景に驚きを隠せなかった。何故ならば目の前には明らかに、この世の者ではない体格の良い大柄な男が立っていたからだ。男は翔の事を見下ろしニタリと笑った。
 ……そうだコイツにしょう。見た目は非力な何処にでもいそうなガキだが、能力者の器として申し分もない。それに簡単に騙せそうだ……。
 そう思い男は翔に向かい口を開く。
『我は英雄。能力者お前の声に導かれて召喚された』
「能力者……俺が……」
『左様。願いを言え能力者。我と契約をし、その願いを叶えよ』
 男は翔を見据え、野太い声で高らかに言葉を紡ぎ出す。その言葉は目の前の少年に対して希望を与える言葉と知りながら。
 何故ならば今の少年の心に不安、迷いがあると見ただけですぐに男にはそれがわかった。そして男は手を差し伸べる。翔は英雄の言葉に内心半信半疑を感じながらも、それでも震える声で英雄へと尋ねた。
「それはどんな願いだって叶うのか……?」
 願いが叶うならばなんだってする。あの笑顔がこの先ずっとあり続けるならば――。
 そう思い少年はその手を意を決して取った。

 少年は知らなかった……それは英雄と言う存在ではなく、愚神と言う存在だと言う事に――。

●少女の儚い願いの果てに
「お願い! あなた愚神なんでしょ!? 翔君を解放して!!」
 病院の建物や壁などが次々と崩壊重ねていく中、少女は泣きそうに叫びながら翔と契約を交わした愚神の後ろ姿へと言い放つ。
 翔が部屋を後にした30分後、四階のフロアでで爆発が起きた。すぐに消防、警察などが駆けつけ入院患者達の誘導が行われた。当然三階の病室にいた少女も誘導を受け非常階段を降りようとした時、廊下の角から翔の後姿を見かけた。少年は二階へと階段で降りて行く。少女は気になり追いかけ、呼びとめた。確かに翔だった。だが翔の姿は変わっていた。髪は白く染まり、腕には黒い刺青が全体に這い、そして片手には槍を携えいた。
 おそらく翔は英雄と間違えて契約を交わしてしまったのだ。
 どんな理由で愚神と契約……または騙されたのか自分には分からない。
 だけど少年を助けなければこのままでは確実に死んでしまう……。
 助けたい……死んで欲しくない……!
 そう思いユリカは必至で叫ぶ。
「翔君を解放して! お願いよっ……代わりに……代わりに私があなたと契約をしてあげるから……だからっ……」
『それは……本当か? 能力者の小娘……?』
 その言葉に愚神は立ち止り少女の方へと振り向いた……―――。
 
 
 

 
 
 

解説

 
翔と契約をした愚神を翔の体から追い出して倒す、それと同時に翔の幼馴染のユリカを保護する依頼になります。

ユリカは余命が一年……そう長く生きられないと知り、翔は少女の命を救いたいと思い英雄と勘違いをし愚神の言葉に騙され契約をしています。

愚神……翔のユリカへの気持ちを利用し、騙して契約を結んだ。一般人のライヴスを奪いつくした後翔ライヴスも同様に奪いつくそうと考えている。つまり翔の事をただの捨て駒だと思い利用している。
  
病院の三階から愚神が入院患者達を恐怖に貶める為、もしくはライヴスを奪う為に三階のフロアを攻撃……爆発を起こしました。病院の入院患者は1階のみ避難済みですが2階に2、3人入院患者達の避難が遅れている為消防、警察などが避難を誘導している最中になります。
 
翔の体に取りついた愚神は雷を槍で操ります。近距離に近づくと槍を床に2度叩き、視界対象に2、3発同時に雷を落とします。
愚神に攻撃が命中した場合、槍の先端……刃を炎に変え、対象者へ反撃をしかけます。
槍は一定ダメージ蓄積すると破壊でき、以降は雷による攻撃は行えなくなりますが、その場合は剣を装備して斬りかかってきます。

愚神とユリカは二階にいます。愚神は翔の体から出でしまうと、すぐにユリカの体を乗っ取ろうとし、近くに一般人がいれば、積極的に攻撃してそのライヴスを奪おうとします。
 

リプレイ

「病院で暴れるとか最悪の奴だね。早くやっつけないと!」
 アンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)はそう叫びながら隣を走る英雄とリンクする。長く流れる黒髪、ふくよかな胸、黒色のゴスロリワンピースを身に着けた二十代半ばくらいの美しい女性へと変わる。彼女は走るスピードを早め、病院の二階へと駆け上る。
 彼女の後に他のリンカー達もリンクした状態で続く。階段を上り、二階の広い廊下に辿り着くと足を止めた。そこには愚神とユリカが対峙するような格好でいた。
「私が契約すれば翔君を開放してくれるんでしょっ! 早く開放して!」
 震え、泣きそうな声で叫ぶユリカ。愚神はそんな少女の台詞を嘲笑うかのように言う。
『勿論お前の体は使わせて貰う。だが、それはこの小僧の後で、だ。まずはこの病院の人間のライヴスを奪い尽くし、この小僧そして貴様のライヴスを余ることなく吸い付くし、そして……殺す』
 愚神はユリカを見ながらニタリと笑う。それは全ての絶望の象徴であるかのように……。
『どんな感じなんだろうな……全ての「絶望の味」とは』
「そんな……」
 ユリカは愚神の言葉に膝をおり、その場にへたり込んだ。愚神はそれを見てユリカへと手を伸ばす。それは「入れ物」として少女を確保する為でもあった。
「ならば、お前にもその「絶望」とやらを味わってもらうのはどうだろうか?」
 声と共にジャキッと愚神へと竜爪の大剣を向ける姿があった。それはアヤネ・カミナギ(aa0100)だった。白色の髪の半ばから先端に水色のグラデーションの髪。白を基準としたドレスを身に纏ったアヤネは愚神を鋭い瞳で睨む。
『貴様等……あの目障りなリンカー共か』
 ピクリと片眉を動かしながら愚神は目障りそうに呟きユリカから手を引いた。
『我に歯向かうのか? 命知らずの能力者の虫けら共が』
「そうだ。お前達愚神はその悉くを討つ。少年達には少々無茶を強いるだろうが……耐えてもらおう」
 アヤネはその言葉と同時にユリカを後ろへと下がらせる。
『ハッ、面白い! ならば我を思う存分に楽しませろ能力者共! 余興の一つとして付き合ってやる! だから簡単に死ぬなよ!!』
 愚神は槍を素早く構え、そして一度床をトンと叩く。アヤネは大剣で槍を狙い攻撃をする。だが浅い。愚神は二度目槍を床に叩く。
「させない!」
 アンジェリカは一瞬で薙刀、サーベルを両手に握りそれを投げるようにして放った。薙刀、サーベルが愚神の近くにドス、ドスと音を立てて床に刺さると同時に雷が2、3発落ちる。アヤネは大剣で雷を防ぎ、残りの2発は避雷針の役割をした薙刀、サーベルへと落ちて行く。
「ひりょさん、昴さんユリカさんを安全な場所へ!!」
 強く叫ぶアンジェリカに九字原 昂(aa0919)と黄昏ひりょ(aa0118)は小さく頷き少女の手を引き、その場を駆け出した。

●本当の強さの意味
 昴達は愚神のいる廊下を後にし、さらに左側を曲がった先の廊下を走っていた。周囲には幾つもの病室があり、その先にはナースステーションがあった。
「待って下さい! 私戻らないと、翔君が翔君が……」
 そう言いながら、瞳にうっすらと涙を浮かべユリカは足を止めると、昴の手を強く振りほどく。
「翔君は大切な幼馴染みなんです。翔君は、もうすぐ死んでしまう私なんかの為に優しく言葉を掛けてくれた。元気付けてくれた。翔君に死んで欲しくないっ! 翔君には生きてて欲しいの!」
 涙を流しながら言うユリカに昴は少女へと静かに向き直り、口を開く。
「君が少年の事を強く想っている事は分かる。だけど君が体を愚神に乗っ取られたらあの少年は一生後悔する」
 昴のその言葉は少女と少年を思っての言葉だった。それに全てはあの少年と契約した愚神を倒さないとこの事件は解決しない。
「ここは俺達に任せてくれないか? 確かに待つだけは辛いかもしれない……だけど信じて待つ事も一つの強さだと思うんだ」
「強さ……」
 昴の言葉にユリカはポツリと小さく呟く。
 確かに昴の言うとおりだった。翔の変わりに自分が犠牲になる事を考えていた。どうせ無くなる命ならば彼の為に犠牲になって良いとさえ思っていた。だけどそれは違っていた。
 ユリカは顔を上げ、口を開きかけたその時ナースステーションから子供が泣く声が聞こえた。三人は慌ててナースステーションへ駆け寄ると、室内にある真っ白い台の下に5、6歳ぐらいの子供が二人泣いていた。昴は突入前に警察、消防に逃げ遅れた人の居場所を確認していた。おそらくこの子供達で間違えは無いだろう。ひりょはその場にしゃがみ、優しい声で子供を安心させるかのように話し掛けた。
「もう大丈夫だからね」
 それに対して子供はひりょの顔を見た瞬間、「「うわぁぁん」」と泣き抱きついてきた。
 ひりょと昴は顔を見合わせると、昴はすぐ近くにいるユリカを抱き抱え、ひりょは子供を二人同時に抱えると近くにあった窓から飛び降りる。二人は地面へとトンと着地した。そして子供達とユリカを降し、辺りを見る。そこは病院の庭にある非常階段の近くに出ていた。近くにいた警官達はひりょ達に気づくと急いで駆け寄って来た。
「リンカーさん有難うございます! その子達で全員避難完了です! 誘導していた消防、警察官達も全て今撤退させました」
「有難うございます。ではユリカさん達をお願いします」
 そう一人の警官が言った後ひりょと昴の二人は再び病院の中へと向かおうとした。その時、
「リンカーさん達!」
 ユリカの声に呼び止められ二人は振り向く。
「私待ってます! 信じて待っていますから! だから翔君を助けて下さい。お願いします」
 ユリカの言葉を聞いて、二人は口許に笑みを浮かべながら強く頷き、再び走り出した。その姿をユリカは強い瞳で見つめていた。

●想いを糧にする罠
 ヴィント・ロストハート(aa0473)は目の前の愚神へと駆け出し、コンユンクシオを携えながら愚神を目掛けて攻撃を仕掛ける。
『面白い』
 愚神は人知れずそう呟くと同時に槍の刃から赤い炎が灯り、コンユンクシオをあっさりと受け止めた。ヴィントは再度愚神へと斬りかかるが愚神はそれを防ぐ。
 ガキンと鍔迫り合いの音がする。
「知っているか? 少年……世界は無慈悲で残酷だ……。この世界には、救いの手を差しのべてくれる奴なんざ居やしない。自らの手で切り開いて掴むしかない。だから、自身の無力さを嘆くだけならここで散れ……。俺がこの手で終わらせてやろう。だが、お前が真にあの少女を救いたいのなら……全力で足掻いてその矜持を示して見せろ」
 ヴィントはそう言うと刃を放し、勢い良くスピードを上げ、槍へと斬り込む。愚神はそれに対して素早く槍を引くと柄を左手に持ち変え、ひゅんと音を出しながら真横へと凪ぎ払うかのように斬り込む。ヴィントは急いで回避するが刃が彼の頬をチッと掠めた。そして愚神は槍を床に一度トンと叩く。
 ヴィントは口許に狂笑を小さく浮かべながら愚神の腕を目掛けて斬りかかるが、愚神はそれを槍で受け止めた。
「あんた面白いな……」
『我を愚弄する気か! 貴様……っ』
「愚弄? まさか」
 ヴィントはニヤリと笑みを浮かべ、身を引いた。それを不振に思う暇はなかった。
 何故ならば愚神の背に鋭い殺気と共に攻撃が生まれた。愚神は身を捻り、それを瞬時に防ぐ。そこにはモアキーンで命中率を高め、サーベルを持つアンジェリカの姿があった。アンジェリカはスカートを翻しながら槍の柄に攻撃を仕掛け、その左側からはアヤネがヘヴィアタックで槍に攻撃をする。
 このままでは……そう思い愚神は急いで床に槍を二回叩く。すると上から雷が3発落ち、ヴィント、アンジェリカ、アヤネへと降り注ぐ。
 あまりの苦痛に思わず三人は顔を歪める。
 愚神は再び槍を構えたその時、晴海 嘉久也(aa0780)が愚神に向かいライオンハートで槍を目掛けて斬りかかる。ガキンと鈍い音が重なった。
「ここで貴方には退場して頂きましょうか?」
 そう言うと彼は愚神の顔を目掛けて攻撃を仕掛ける。だがそれはフェイントだ。愚神はそれに気づかず回避する。嘉久也はそれを利用し、槍を凪ぎ払い、それに対して愚神はバランスを崩した。その一瞬の隙を見逃さず嘉久也は槍をさらに叩き落とし、槍が床にドスと刺さる。それを嘉久也はライオンハートに力を込め、槍をへし折る。
 槍はライヴスの光となりその場から消え去った。
『ふふふふ……ハハハこれで終わりだと思ったか? 全く馬鹿な奴等共だ! これからが本番だ! 能力者共!!』
 愚神は可笑しそうに笑った後、左手に銀色の剣を出現させ、嘉久也へと襲い掛かって来た。嘉久也はライオンハートで剣の攻撃を防ぐ。愚神は先程よりもさらにスピードを上げデタラメに剣で切り裂くかのように攻撃を仕掛けて来た。

●想いの果てに
 再び戻って来たひりょは愚神に気づかれないように一メートル先の壁からグレートボウで愚神に狙いを定める。

――俺には妹がいた。余命半年と宣告された時、どんなに自分が変わってやりたかったか、なんとかその悲劇を回避出来ないか……苦しんだ覚えがある。だから翔さんの気持ちも少し分かる気がする。だからこそ、翔さんもユリカさんも救われなくちゃ。こんな悲しい結末は絶対に回避するんだ――

 ひりょは翔達をかつての自分と重ねていた。
「これ以上お前の好きにはさせないっ」
 彼らを助ける。その想いを一本の矢に乗せ、それを解き放つ。
 矢が愚神に命中したと同時に彼は走り出しながら口を動かしヴイント達へとクリアレイをかけた。

●絶望と希望と
 愚神への背中に一本の矢が刺さり、愚神に隙が生まれた。その直後。駆けつけた昴は竜牙の小太刀で剣を攻撃する。怯む愚神。小太刀の攻撃で剣に小さな亀裂がギシッと入る。
 愚神は昴の攻撃を無理矢理剣で振り落とす。それと同時にアヤネが愚神へと大剣で斬り込む。その瞬間愚神の剣がバキンと折れた。アヤネは武器を逆燐の戦拳に切り替え、愚神の体を殴り倒す。
「意識まで乗っ取られているかは判断出来ないが……好いた少女の為に耐えてみせろよ少年。伝えたい想いがあるなら、それは自分で伝えるべきだ」
『クソがぁぁ』
 愚神はそう叫び翔の体から離れた。このままでは倒されてしまう。そう思っての事だった。
 それを見たアヤネはすかさず逆燐の戦拳から竜牙の大剣へと持ち変え。
「貴様の負けだ。これ以上足掻く事無く、在るべき場所へと還れ」
 そう言い大剣にオーガドライブを発動させ、全力を注ぎ愚神を斬る。
『ぐおおお』
 愚神が悲鳴を上げる。それに対してアンジェリカは床を蹴り、
「人の弱味に付け込んで、二人のささやかな夢を壊そうとするお前をボクは絶対に許さないよ!」
 怒りを露にしながらサーベルで愚神へと斬りかかる。
「二人の想いは叶うかどうかは解らない。だけど夢があるから人は前に進んでいけるんだから。この世界に塵一片も残さないくらい破壊し尽くしてやる!」
 アンジェリカの攻撃を掻い潜り愚神は階段を目指す。目的はユリカだ。翔が使えなくなった今あの少女に取りつくしかない。
 愚神の前にザッと動く影があった。それはヴィント。
 愚神はヴィントに素早く殴り掛かって来るが彼はそれをあっさりと避ける。ヴィントは疾走し、さらに愚神の間合いに入って踏み込むと前進する勢いを運動エネルギーに転化させ同時に鞭のしなりをイメージさせ、前進駆動で無駄無くコンユンクシオで伝達させる。
「さて……ここから先は年齢指定ものだ……。子供には色々と刺激が強すぎて目の毒だからな……」
 ヴィントはそう呟くと、仲間達が繋げた想いをコンユンクシオに乗せ、コンユンクシオの重量と振り抜く速度、転化した運動エネルギーを乗せオーガドライブの一撃を愚神へと叩き込んだ。
『ぐおおお』
 その攻撃に愚神は耐える事は出来ず苦痛に断末魔のように叫びながらその場から消え去った。
「終わったな……」
 ヴィントは呟くように言う。ひりょは翔へと駆け寄りヘケアレイを掛ける。翔へと清らかな魔力が降り注がれ傷ついた体が元に戻っていった。
「後は病院で念の為に検査して貰えれば大丈夫です……」
 ひりょの言葉にリンカー達全員は安堵した表情を浮かべた。

●ハッピーエンド
 アヤネは事後処理を本部へと連絡した後病室の廊下でユリカを見掛け声を掛けた。
「少年の具合はどうだ?」
 ユリカは振り向きアヤネの言葉に苦笑を浮かべた。
「今はまだ眠っています。だけど暫くしたら目を覚ますだろうと先生が言っていました。リンカーさん翔君を助けてくれて有難うございました」
「俺達を信じてくれて礼を言う。それと分が悪い賭けでも、想いがあれば超えられるだろう。少年の為にも負けるなよ」
 そうアヤネはユリカへと告げる。ユリカはその言葉を聞き柔らかく微笑んだ。

「ここは……」
 そう言いながら翔はゆっくりとベットから身を起こした。周囲を見渡せば支柱台などがベットの近くに置かれ、ここが病院だとすぐに分かった。
「俺は確かあの英雄と契約をして……」
 そして次第に記憶が甦った。
「そうだ! ユリカは!!」
「ユリカさんなら無事ですよ。愚神は私達が倒しましたので安心して下さい」
 慌てる翔へと嘉久也は落ち着いた口調で翔へとそう言った。隣にいたアンジェリカは不機嫌そうに翔へと話し掛けた。
「ねぇ翔さん、翔さんに言いたい事があるんだ。自分を犠牲にしょうなんって馬鹿げている! それで相手が助かっても、残された人はどうしたらいいの? 果たせない想い、返せない恩、それは相手にとって呪いでしかないんだ。そんなの身勝手な自己満足だよ!」
 アンジェリカはそう言いながら怒る。それは二人を想っての事だった。
 その時ガチャと扉が開いた。部屋にアヤネとユリカの二人が入って来たのだ。ユリカは翔の顔を見た瞬間涙を浮かべ、駆け出し翔の胸へと飛び込んだ。
「翔君、翔くん………」
 泣くユリカを見て翔は自分の間違えに気付いた。それを見たアンジェリカは「二人の夢は一緒じゃないと意味ないんだからね」と優しく言い、ひりょは二人の姿を見て心から安堵し、思わず涙を流しながら。
「本当に無事で良かった。悲しい思いはして欲しくないから」
 そう静かに呟いた。

●ハッピーエンドの後に
 嘉久也は私用の為本部へと訪れていた。
 その時一人の少年を見掛けた。嘉久也は少年に近づき少年……翔へと話し掛けた。
「翔さん。こんな所でどうしたのですか?」
 翔は嘉久也に気づき振り向く。
「嘉久也さん。この前は助けてくれて有難うございました。一言お礼を言いたくって来ました。俺は今までと変わらずユリカを護ろうと思います。他人の力ではなく今度こそ自分自身のやり方で」
 そう言う翔の言葉に嘉久也はふっと口の端に笑みを浮かべ、
「翔さんなら出来ますよ」
 静かに言葉を返した。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • エージェント
    アヤネ・カミナギaa0100
    人間|21才|?|攻撃
  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • 恐怖を刻む者
    ヴィント・ロストハートaa0473
    人間|18才|男性|命中
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避
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