本部

春先はお洒落に

鳴海

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
11人 / 4~15人
英雄
11人 / 0~15人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2017/05/16 13:23

掲示板

オープニング

● お外に出たくなる季節。
 とある国のお姫様は言いました。
「私が、私が。私がお外に出るには良い季節がやってきましたわね」
 そのお姫様はたいそう寒いのがお嫌いで。冬は御屋敷から一歩たりとも外に出なかったのでした。
 ただ今日。お庭の花がつぼみを付けたのをいいことに、お姫様は大はしゃぎで外に飛び出したのです。
「ああ、日差しが温かい。命芽生える春なのね、これが私の待ち望んだ春なのね」
 そうお姫様は庭先でくるくると回り、それを見守るじいやに告げました。
「これからの季節私が外を歩くのにふさわしい衣装を用意しなさい」

● だからと言ってなぜ、従魔。
 そんなわけでグロリア社に従魔素材での衣服を作れと言う依頼が届いた。
「私毎回思うのだけど、みんななんでそんなに従魔が好きなの? 食べたり纏ったり、何か怖くないの?」
 遙華はそう告げつつ君たちに今回の企画の説明をしてくれた。
「今回はとある国からのお姫様の依頼で従魔素材の衣装についてファッションショーを行ってほしいとの事よ。そして気に入った服を買ってくれると、こういうわけよ」
 手順について説明しよう。
 今回の任務で必要な手順は下記の通り。

1素材集め

 先ず皆さんにはチームを作っていただきます。従魔狩りはチームを作っていただきます。チームは1~4人でまとまっていただき。
 縫製とファッションショーはチームで考えていただいて、従魔狩りは手分けをしてもいいですし、まとまって刈ってもらってもいいです。
 また素材集めの時点ではチーム関係なく協力可能とします。
 世界各国を回って従魔を狩り、素材を集めていただく必要があります。
 期間は一週間。一日一種類の素材しか集めることができないので。最大七種類集められます。
 この期間の間に素材を集めていただく必要があります。
 難易度的に失敗してしまう可能性があります。
 難易度が高い従魔には複数人で挑みましょう。
 さらに一着の服を作るのには最低でも合計素材数30になるように素材を集めないといけません。
 難易度はMAXで10デクリオ級になります。
 
 
2縫製
 デザインを決定し、手分けをしてどのような衣服を作るか、相談し。作成していただきます。
 一着の服につき三つ以上の従魔素材が必要となります、従魔素材がうまく生かされているかが、評価の大きな基準となります。 
 ちなみに従魔以外の素材は注文すれば届くので、人工素材と従魔素材うまく組み合わせて見ていただければと思います。

3ファッションショー
 ランウェイを歩く役、演出、曲などを決めていただきます、せっかくの服も来ている場面を想像させられなければ魅力半減、重要なので演出も考えて見ましょう。

● 従魔素材
難易度
1《ハードレザーデーモン》 南アメリカ
難易度 8
 全身が硬い皮に覆われた悪魔。炎の魔法を自在に操る。
 黒い重たい質感の皮であり、染色も用意。素材としては扱いやすい部類に入る。
 このレザーは絶対に炎で燃えないという。

2《藍染いったん木綿》日本
難易度 2
 日本の妖怪。色とりどりに染められたいったん木綿の様だ。
 空を飛び、動きが素早い。藍染めとか言いつつ、各色のいったん木綿が存在する。
 この木綿は空に浮くことができ、身につければ体が軽くなる。
 空を飛べるほどまでにするのは難しい。

3《霊石鉱脈》 各地
難易度 1
 これだけは従魔ではない。世界各地にある霊石鉱脈を訪れ、装飾品となる、綺麗な石を入手できる。
 鉱石加工もその場で依頼できるので素人でも安心。ただ、山深くの鉱脈まで歩いて行かないといけないため遭難のリスクがあり、対策が必要とされる。 
 霊力をため込み持ち主を守るという性質を持つ。

4《ドリームシープ》 オランダ
難易度2
 戦闘力は高くないのだが、特殊抵抗が低いと眠らされる。そこら辺の草原で野生化した羊に混ざって暮らしている。
 体は普通のヒツジの二倍くらい大きいのですぐわかるだろう。
 羊毛は、染色もしやすく、糸や装飾にも使いやすいと思われる。

5《チュパカブラゴート》 モンゴル
難易度5
 翼を生やし、血をすう山羊。普通の山羊に擬態して生きている。
 夜にその本性を現しているところを目撃するか、騙してにんにくを食べさせないと姿を現さない。
 山羊の毛はカシミヤなどで有名、上品な光沢感が出る上に、安価で使いやすい。この布は夜になると丈夫さを増すという。
 加工して布にするもよし、糸にするもよし。

6《白雪の綿》 エベレスト山頂付近

難易度2
 従魔としての力より、生えている場所まで行くのが大変。  
 雪のように白く巨大な綿の花。蔦で攻撃してくるが、気をそらさなければ当たらないだろう。
 身に着けていると常に冷たさを感じさせてくれる。

7《ホワイトスパイダー》 アマゾン奥地
難易度 7
 巨大なクモ。糸をはく穴が四つあり、あたり一面を糸だらけにする。この糸目で見るのも一苦労なほどに細いが、リンカーでもひきちぎるのは困難なほどに丈夫。
 この糸で織った布はリンカーの防具も真っ青なくらいに硬く丈夫になる。

8《涙貝》バミューダトライアングル内海底
難易度 5
 この海域で死んでいったもの達の嘆きを食べ成長した従魔。直径五メートルの貝、藍色の真珠は持ち主から悲劇を遠ざけると言われ。その貝の貝殻を砕きまぶすことで水をはじく加工を施すこともできる。

9《電蚕》 中国
難易度8
 超巨大な蚕。繭に包まれておりその糸に触れると電気が流れる。霊力製の電気ではないため一般的な帯電対策が有効。本体は攻撃手段を飛びつきと噛みつきしかもたないが、糸で自分と相手をグルグルに縛り付けた上で咀嚼してくるので逃げるのは困難、倒さないで糸だけもらうのがいいか。
 糸は電気を送ると色とりどりにひかる。


10《ハーモニックセラミック》 イタリアとある遺跡
難易度3 歌い続ける金属、削ったり加工したりしてボタンや装飾品にいかが?
 衝撃によって特定の音を奏でる鉄。複数組み込むことによって歩くたびに演奏されるなど可能である。
 とある遺跡の甲冑型従魔から取ることができる、剣や鎧を破壊してそれを加工するのである。
 甲冑従魔は近接戦闘しか行えない。

 

解説

 
目標 洋服を作る。

 ● ルール説明
 今回の任務では、先ず皆さんにチームを作っていただきます。従魔狩りはチームを作っていただきます。チームは1~4人でまとまっていただき。
 縫製とファッションショーはチームで考えていただいて、従魔狩りは手分けをしてもいいですし、まとまって狩ってもらってもいいです。
 また素材集めの時点ではチーム関係なく協力可能とします。
 世界各国を回って従魔を狩り、素材を集めていただく必要があります。
 期間は一週間。一日一種類の素材しか集めることができないので。最大七種類集められます。
 この期間の間に素材を集めていただく必要があります。
 難易度的に失敗してしまう可能性があります。
 難易度が高い従魔には複数人で挑みましょう。
 さらに一着の服を作るのには最低でも合計素材数30になるように素材を集めないといけません。
 難易度はMAXで10デクリオ級になります。
 

リプレイ

プロローグ
「恵方巻の次は服作りか。従魔素材の物ってそんなに人気なのかねえ?」
『杏子(aa4344)』がそう相棒に声をかけると『テトラ(aa4344hero001)』はそっぽを向いた。この依頼に関してはまったく興味がないのだろう。 
 その様子を見て杏子は溜息をついた。反射的にあたりを見渡す。
 ここはH.O.P.E.のブリーフィングルーム。ここから各々の計画を報告し一斉に世界各国に飛び立つわけだが。
 メンバーの中にはテトラに対してやる気のある子もいる。。
「あらあら、中々に面白そうな依頼ねぇ」
『戀(aa1428hero002)』は『ニウェウス・アーラ(aa1428)』に覆いかぶさりながら告げる。
「というか…………よく、こんなの…………思いつく、ね」
「まー、モノは経験、という事でぇ。頑張っていきましょっ」
 二人はそう人手不足なチームを優先して手伝うことを表明した、
「何か、こう…………わやくちゃとしそう、かな?」
「そうねぇ。なので、私達は状況把握とお手伝いに終始しましょ」
「ん…………お手伝い、頑張る」
「楽しそうですわねぇ」
 『リジー・V・ヒルデブラント(aa4420)』はそう意気揚々と告げる。
 洋裁はできる上に世界各国を旅できる、少しだけわくわくした。
「仕方ねぇ」
 そうため息をついたのは『コースチャ(aa4420hero001)』そんなコースチャにリジーは告げた。
「コースチャ、あなたやります?」
「やらない」
「今回はよろしくお願いします。頑張りましょうね」
 そう二人に言葉をかけたのは『斉加 理夢琉(aa0783)』隣で『アリュー(aa0783hero001)』が何気なさそうに雑誌を読んでいる。
 ファッションの参考になるかと思ったのだ。それにしても服飾に関しては素人も多いだろうリンカーにこのような任務を良く任せる気になったものだ。
 そう頭を悩ませるのは『御神 恭也(aa0127)』
「流石に裁縫は無理だな…………材料集めに精を出すか」
『伊邪那美(aa0127hero001)』はその言葉に頷いた。
「う~ん、偶には洋服を着て見ようかな~」
「しかし、こんな形で素材を残す従魔がいるとはな」
 恭也の隣に座る『赤城 龍哉(aa0090)』が『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』へそう声をかけた。
「その素材で衣服を誂えようというの話も大概だと思いますわ」
「ま、その辺は実害が無ければ何とかってことだろ」
 そう資料チェックを終えた龍哉は当面行動を共にすることになる恭也と段取りをととのえる。
 二人ともそんじょそこらの従魔では相手にならないのだが、まぁ楽を出来るところは楽をしておいた方がいいだろうという話になった。
 むしろ飛行機に連続で乗ることになるので、その疲れや暇つぶしの事を思うと気が重い。
「今回のクライアントは、何処のとは言わないが流石に社会的地位が高いようで…………」
 そう資料や報酬金額を眺めながら告げたのは『鴬華・エリスヴェータ(aa4920)』
「相手にとって不足はありませんし、皆のアイデアにも間近で触れられていい経験となりますよ、きっと
 そう『アイオール・ハーシェヴェルト(aa4920hero001)』が告げる
「ユリナと同じ姫か……ファッションショーに合う服と素材を」
 そう今からファッションに頭を悩ませ始めたのは『リーヴスラシル(aa0873hero001)』
「そうですね……普段着る服とは違う服を作った方が良いでしょう」
『月鏡 由利菜(aa0873)』もそういってファッション雑誌を覗き込む。
「…………こんな話を読んだことがある気がしますよ?」
 そんな中唐突に告げたのは『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』
「かぐや姫っぽいよね、無茶振りが」
『志賀谷 京子(aa0150)』は昔開いた絵本を思い返しながら言った。
「お姫様とはこんなものなのでしょうか。わたしとはセンスが合わなそうなので京子に任せますね」
「うん、まかせろー!」
 こうしてブリーフィングは終了し、一行は思い思いの方角に散って行った。

第一章 素材集めとは根気の世界。

 と思いきや。
 日本国内某所、夜。
 色とりどりの布切れが跳梁跋扈するその場所に、ほぼすべてのリンカーが集まっていた。
『エレオノール・ベルマン(aa4712)』は『トール(aa4712hero002)』と共鳴済み、ふわふわ漂うそれを必死に追いかける。
「まさか、最初に向かう地点がみんな一緒だなんて」
 京子がトリガを引くと力が抜けて落ちる木綿。
「まぁ、場所的に最初か最後が効率いいしな」
 龍哉はいったん木綿を蝶々結びにしながら告げた。
「乱獲ですね、絶滅しないといいのですが」
 そうレーギャルンを振るう由利菜。
「絶滅した方がいいだろ、従魔は」 
 そう恭也が思わず突っ込む。
「怒りましたよ!」
 そうエレオノールは雷書を広げると即座に雷を落とし木綿を血に落した。
「お見事」
 そう杏子が賞賛を送った。
「……大体狩終った」
 そうニウェウスは台車に木綿をひたすら詰め込む。
 その台車をトラックまで運ぶリジーと理夢琉。
「お祭りみたいで楽しかったですね」
「本番はここからですわ」
 どうやらここから、チュパカブラゴートを狩に行く班とそうでない班に分かれるらしい。
 そう、ここからモンゴルまで一直線。
 結果から言うとゴートはすぐに見つかった。
「うわ、すごく不気味」
 鴬華は赤く光るその瞳を見つめて告げる。
 群れで生息しているようだったが、この中の数匹が従魔らしい。
「まぁ、見た目でわかるんだけど」
 京子は苦笑いを浮かべた。
「なんだか、私達乱獲者みたいだ」
 そんな言葉も気にせず鴬華はゴートの前に躍り出た。呪符「氷牢」を用い、拘束狙いで術式を展開する。
 拒絶の風でゴートの突進をそらし。別のリンカーに攻撃のタイミングをゆだねた。
「まぁ、気持ちはわかる」
 龍哉はそう頷くと一気に距離を詰め、慣れた動作で刃を振り下ろす。
「えい」
 エレオノールも恭也と組みつつ手際よく材料を集めて行った。
「次はなんでしたっけ?」
「霊石鉱脈に行くつもりだが」
 恭也が答えた。
「じゃあ私は先に羊さんたちのところに行ってますね」
 そうエレオノールはわかれることになる。
 そのまま近くの鉱脈に向かった龍哉、京子、恭也。
 道中が厳しかったが無事にお目当ての鉱石がとれたので満足して次の地点へ向かう。
 次の三人の目的地は広い大地に広い空、オランダの草原ど真ん中だった。
 すでにそこにはスウェーデンの羊飼い、エレオノールがおり。彼女は牧羊犬と戯れていた。 
 まぁ、手伝ってくれるかと思ってどこからか連れてきたのだが、従魔の攻撃が思ったより激しかったので相棒たちは置いていくことにした。
「ごめんなさい」
 そこに生息しているドリームシープはたびたび、雷が鳴るようにゴロゴロと鳴いた。
 周囲に虹色の気体を発しており、確かにこれを受けると眠くなるようだ。
「安らかに眠りたい」
――疲れていますの?
 呆れるアリッサ。そんな彼女のセリフが終わらないうちに京子は一発放ち、見事にシープを仕留めた。
「ええ!」
 頑張って羊を追いこんでいるエレオノールの隣でである。
「ここは任せた方が速そうだな」
 そうのんきに居眠りを始める龍哉である、やはり広い空間は気持ちがいい。
「まかせて」
「ちょ、ちょっと待ってください、私の見せ場が」
 そう肩を落とすエレオノール

   *  *
 
 ここで別の班も見てみよう。
 たとえば由利菜は南アメリカでハードレザーデーモンとの一騎打ちに興じていた。
 フロストバイトウィップで焔を相殺、隙ができたデーモンの脇腹を切り裂くが、さすがレベルの高い従魔。
 一撃とはいかない。
「長期戦になる覚悟はしなければいけないですね」
 そう由利菜は武器を握り直す。

第二章 どなどな~

 さらにリジーと理夢琉班。
 二人はいったん木綿を刈り取ってから、取りあえず材料の確認をし、空港へ向かっていた。
「予定は、チュパカブラゴートと 白雪の綿と、ホワイト」
「私たちのレベルでそんな連戦大丈夫なんですか?」
 そんな二人の背後から声をかける人物がいた。
「…………御困り。みたいね」
「あなたは」
 そう太陽をシルエットに立っていたのはニウェウス、そして戀。
「……手伝ってあげる」
「助かります」
 こうして六名は素材集めの旅に出た。夜にチュパカブラゴートを襲い。寒い思いをしてエベレストまで綿を取りに行った。
 そしてエベレスト山頂付近では。龍哉に出会った。
「よう、ご婦人方だけで危なくないか? 麓まで護衛するぜ」
「……あ、異界探索で誰かと出会う時ってこういう」
 思わずつぶやくニウェウス。
「私たちもこの吹雪で道を見失ってしまいまして」
  その隣には由利菜が立っていた。
 しばらく足止めである、リンクしていれば寒さを感じることはないが、真っ白い空間で何もやることが無いのはつらかった。
 それも無事夜明けとともに吹雪がやんで、下山したかと思えばまた飛行機。
「斉加さんはどのような服にするおつもりですか?」
 リジーは飛行機の中で彼女にそう問いかける。
「お色味は春ですし、パステルカラーが良いかしら?」
「いいですね」
「お姫様がどの様な人物なのか情報収集をしませんと」


   *   *

 蒼くほの暗い海の上を一隻のボートが横断する。
 船の上にあふれるのはものものしい雰囲気。
 当然である、バミューダトライアングルは魔の海域なのだから。
「そう言えばこの前姫騎士の格好をしたお姉ちゃんがとっていったけどねぇ」
 船頭が告げると『木槌綾香(aa5073)』は頷いた。
 危険は承知の上だ。だが自分がやらずに誰がやる、そんな覚悟を称賛して『レオパード(aa5073hero002)』は綾香の肩を叩いた。
「素敵なドレスを作ろうじゃないか」
 そう杏子は綾香と同じようなダイバーズスーツを身に着けている。
「AGWは水中でも大丈夫な気がしたけど、ダガーも用意したよ。真珠をわたしによこせ」
 そんなものものしい雰囲気に負けない京子。
 たまたまスケジュールが重なったのか、船の上には多くのリンカーがいる。
 たとえばリジー、理夢琉、ニウェウス。
「それでは、ささっと片付けてしまいましょ!」
 戀が告げるとニウェウスは笑顔で頷いた。
「素材を確保できるように倒す、っていうのも……うん。ちょっと面倒ね?」
 そんな一行に水の中での注意事項を伝えていく綾香。そう彼女は何を隠そう日本の水族館のイルカ・海獣調教師のリンカーなのだ。
 特技は水泳。
 そんな彼女がいれば百人力である。全員が一斉に海に潜ると、まずはその幻想的な風景に目を奪われると同時に、一寸潜っただけで、明らかにこの世の者とは思えない貝に遭遇した。
 従魔は自ら動く気配はない、だがそれでも染みついた本能として全員が武器を構えた。
 そして綾香が先行する。ヒョウアザラシの牙のような大刀の切っ先を向け、貝へを切りかかっていった。
 
   *   *

 別の班が貝を獲得し、次は電蚕を取りに行くという報告を聞きうけ恭也は通信機の電源を落した。
 見上げるのは大きな神殿、ファンタジー世界に出てきそうだが、現実の者である。
 ここで恭也は《ハーモニックセラミック》を取りに来たそれでティアラを作成するために。
「今回に関しては、俺が手伝える事は少なそうだな」
 そうぼやく恭也。今のうちからデザインをと伊邪那美からイメージを聞き出して、メモに取っている。
「にしても今回の任務……女性が多いせいか肩身が狭いな」
「そう? 考えすぎじゃない?」
 伊邪那美がそうあっけらかんと言葉を返す。
「あ。恭也さんこちらに反応が」
 そう由利菜がモスケールのレーダーを見せると恭也はAGWを構えた。
「モスケールがすごく便利ですね」
 今回の探索で大活躍したモスケールを撫でて、由利菜は自身もデストロイヤーを構える。
 そのまま奥へ奥へと二人は入り込んでいく。


第三章 針で指をさすとなんか悔しい

 めまぐるしく変わる景色、天候にさらされたかと思えば、次にリンカーを待っていたのは裁縫室での缶詰だった。
「つか、こんなん素人にやらせようってのは無理がないか?」
 そう慣れない糸仕事をヴァルトラウテにに支持されながら続ける龍哉。
「試作品に当たるものだから、着た後で空中分解しなければ何とかなりますわ」
 ヴァルトラウテはびーっと通した糸を引っ張った。
 二人は材料集めからいち早く戻るとまず型紙を探すところから始めた。
 そして今では大体のパーツが出来上がっている。
 今からガッツリ縫製である。
「斉加さーん、ここはどうすれば」
 エレオノールが針の刺さったままの布を理夢琉に差し出すと少女は丁寧に縫い方をレクチャーして見せる。
「ああ、祭り縫いですねちょっと細かい作業ですよね貸してください」
「布が硬くて針が通らねぇ」
 その隣で力任せに針を通そうとするコースチャへ手ほどきするリジー。
「そう言う時は布を少しずつすくって」
 今はコースチャー用の衣装を縫っていた。パターンを作成し、仮縫いを済ませたため、従魔生地に刃を通していく。
 やはり従魔素材は霊力が通っているためAGWの鋏でないと裁断すらままならない。
「真珠は涙貝からとれたものを使いましょう」
 そう理夢琉が告げるとエレオノールはボレロに針を通していく。
 普段の生活で自分の来ている服を手直しすることはあれど、それも可低レベルなエレオノールは理夢琉の手際の良さに驚いた。
 リジーは自分の服を縫っていた。途中コースチャの手ほどきもしながらなので
手が止まることも多かったが二人は仲良く作業を進めていく。
 ワンピースはゴート生地にいったん木綿の浮力をプラスして軽やかに。表面は貝殻を砕いて撥水加工にする。
 りばしーぶるのボレロは白雪の綿も織り込んで涼しげにしあげた。
「傘まで作りますの?」
 驚くリジーの隣で理夢琉は傘の骨組みを広げて見せた。こちらも涙貝で撥水加工、さらにハーモニックセラミックで柄や骨の部分を補強し涼やかな音が出るようにした。
「すごい……小道具も作れるんですね」
 そうエレオノールは驚きの声を上げた。
「機材さえあればですけど」
 そう理夢琉は照れて笑う。
 そうここには様々な機材が置いてある、創作者にとっては夢の空間なのだ。今は杏子が自分で持ち帰ってきた霊石をカットしている。
 杏子は綾香と一緒にドレスを作成している
 ドレスにはティアラがつきものということでカットした意思をその髪飾りにはめ込んだ。
 ついでに今回は電気を流すための仕掛けも必要とされる。半田ごてを持って回路接続まで行う京子である。
「すごい、きれいです」
 綾香はすりつぶした涙貝の貝殻に感動の声を上げた。
 今彼女は装飾品のために電蚕の糸を束ねて布として織っている最中だ。
「これを使えば水の中にいるように見えるかもしれませんね」
 そう綾香は空中を漂ういったん木綿をさしていった。
 そんな作業フロアを忙しく歩き回っているペアがいる。
 ニウェウスと戀のペアである。
「さぁ、マスター。頑張って、作っちゃいましょ!」
「ん…………。戀から、お裁縫、習っておいて…………良かった」
 そう柔らかく微笑むニウェウス。
「ふふー、こういう事なら任せて頂戴」
「段々、出来てきた、ね…………」
 そうニウェウスはあたりを見渡して告げる。
「そうねぇ。達成感を味わえる瞬間まで、あともう少し。スパートを掛けて行きましょっ」
 そう手が足りなくて悩んでいる様子の由利菜まで歩み寄る。その装飾の複雑さから頭を悩ませているようだ。
「うーん……ドレスコートと靴の制作は決まっているんですけれど、他の方もそういったものは計画しているみたいなんですよね。独自性を出すなら……」
 その言葉にリーヴスラシルが答える。
「いっそのこと、ユリナが共鳴時に紡ぐ衣装をエッセンスとして組み込んでみるか。ただネルトゥスを再現しても、彼女が着るには重いだろうな。軽装のフォールクヴァングをベースにした方がいいだろう」
 こうして姫鎧の作成が決まった。まずは桜色のドレスアーマーの胸当てから。
 苦労して刈り取ってきたデーモンの皮と涙貝を用いて作成する。
 もはやリンカーの防具として使えそうなほどの強度になるがそこは置いておくことにする。
 そのまま藍色のドレスをドリームシープの羊毛。いったん木綿。電蚕の糸で生地自体から作成していく。
 お洒落にこだわるなら足元もである。ハーモニックセラミックを全体に用いて
アクセントに白雪の綿を使う。
 こうして徐々に徐々に全員の衣装が形を成していく。
 そんな中で鴬華の衣装も最終調整段階に入った。
 衣装の方向性としては、蝶の羽化をテーマとして組み込んだドレスである。
「姫君は冬の辛苦を耐え、小春日和を待ち望み外に飛び出す事を所望すると聞いた際、季節と相まって思いついたの」
 そう鴬華はいい表情で語った。
「材料はは藍染いったん木綿とチュパカブラゴートを使用しているわ、蝶の翅をイメージモデルとした部分は霊石鉱脈、涙貝、電蚕で再現してるの」
 あとは細かいサイズ調整だけ、そんな中で一番最初に出来上がったのは京子の衣装だった。
「疲れた……」
 さすがの京子も体力を使い果たしたらしくデスクに突っ伏してしまう。
 そんな京子に伊邪那美はそっとカーディガンを羽織らせた。
 伊邪那美もほとんどの作業を終えている。いまは壇上での演出について恭也と詰めていたのだが。
「私達も少し休憩しよう」
 そう睡眠の誘惑に負けて仮眠をとることを進める伊邪那美。二人は仮眠室へと引き上げていった。

第四章 輝きの舞台

 そして全員の縫製がすむなり休む間もなく今度は人口灯の世界に放り込まれてしまう。
 その色と光と熱狂の中、ファッションショーの幕が上がる。
「僭越ながらわたくしが歩かせて頂きますわね」
 そうトップバッターであるリジーが幕の前に躍り出る、シルエットのみが表示されて次いで幕が上がる。
 その脳裏をファッションショー前の会議の記憶がよぎった。
 リジーは慣れないランウェイに緊張して相棒にこう尋ねたのだ。
「さて、どう歩きましょうか」
 コースチャはその言葉に、お姫様の資料を読みながらこう答えた。
「……そのまんまでいんじゃね?性格近いだろ、多分」
 そしてリジーの前身を光が包む。
「そのままですか? ふむ……」
 ハーモニックセラミックの靴を鳴らして一歩踏み出すとリジーは微笑んだ。
「ええ、いけそうですわね」
 その様子を客席から理夢琉が食い入るように見つめている。
 彼女が纏うのは白のワンピース、ウエストで切り替えるタイプ。スカートはサーキュラー。
 舞台を歩く演出は彼女も一緒に考えたのだ。
 テーマは春のお散歩。涼やかでノリの良い曲と共にリジーが優雅に歩み寄る、光が和らいで木漏れ日の演出。  
 鳥の声が聞こえると優雅にリジーは傘を開いた。 
 そして軽くステップ。円形のスカートはふわりと舞ってくるくると広がる。
 直後トンビの声がして強めの風が吹いた。傘と帽子が空に舞う。
 その傘をコースチャがキャッチしその傘を手渡した。
 そのコースチャが纏うワンピースもデザインは違うが、統一感があって可愛らしい。
 そして二人はスカートをつまんで軽く会釈した。
 それを皮切りに続々とリンカーたちは登場する。
 まず躍り出たのは由利菜。いつもとは違った姫騎士姿は彼女の印象を少し変えて見せた。
 床を踏み鳴らせば音が鳴り、その音で足元のパネルから光が舞う。
 由利菜は凛々しくターンを決めると次いで現れたのは伊邪那美。
 伊邪那美は普段あまり見ないドレスでの登場。春の草原をイメージしてライティングは柔らかな物にして、穏やかな曲が彼女にとても合っている。
 次に登場したのは綾香。
 曲は海を連想させる様な静かで涼しげな曲調だった。
 ランウェイを青い淡い光で照らすと、幻想的な雰囲気が場にみちる。
 普段活発そうなイメージのある彼女だが。そのランウェイに露われた彼女は優美だった。
 彼女が纏うのはドリームシープの羊毛を薄めの布にしたドレス。
 上半身部分は和服、下半身部分は西洋ドレスのロングスカートで、フリルが風によくなびく。
 藍染いったん木綿の布をスカート部分に飾りとして付けているため、風に攫われている感が出やすいのだ。
 そして綾香はティアラを少し傾けてターン。
 それと同時に音楽が切り替わる。琴の音を織り交ぜたオリエンタルミュージックをバックに軽くステップを踏みながら躍り出るヴァルトラウテ。
 普段と違い少女ぜんとした彼女は少し恥ずかしそうにはにかんでターン。そのままランウェイを戻ってくる。
 そしてヴァルトラウテは控えているアリッサの手を叩く。
「任せた! アリッサ、モデルみたいにカッコいいものね」
 京子はぐっと親指を立てて見せた。
「ええ、任されました。京子も似合うと思いますけれど」
 直後 アリッサが白い日傘を広げて登場。 軽快なジャズピアノをBGMに優美な歩みで視線を引き連れるアリッサ。
 風になびく髪、本人の素材の美しさもあるが、纏っている服も見事である。
 アリッサは制作中の光景を思い出していた。
「これからの季節なら、明るめの色だよね。アビスブルーって色とかが流行色らしいよ」
 そう告げなら糸を口でかみ切った京子がなんだかおもしろかった。
「深く鮮やかな青ですか。鮮烈なイメージになりましたね」
 そして今アリッサが纏っているのが美しいシルエットの春服である。
 白いトップスと鮮やかなアビスブルーの長めのラップスカート。
 トップスはチュパカブラゴートで作られており。アメリカンスリーブで肩を露出して涼やかな印象。
 小さく加工した霊石を縫い付けられており、キラキラと光を返す。同じ素材でロンググローブも。
ラップスカートはドリームシープを鮮やかなアビスブルーに染めて。深めのスリットが入っていてセクシィだ。遊び心も満点である。
 そして身に纏うアクセサリも手作りだ。
 涙貝の真珠でネックレスを、そして藍染いったん木綿で作られた空色のスカーフを、天女のように肩に羽織る。
 そして最後に靴である。ハーモニックセラミックを靴底に仕込んだミュールを作成。
 歌うような靴、体が軽くなる服につられてアリッサはどんどん楽しくなってしまう。
 なんだかんだ言って女の子なのである。
 そしてアリッサはスカートをふわりと舞わせてターン。
スカートをふわっと翻してターン。すっと傘を持ち上げて会場に視線を投げるとフラッシュが瞬いた。


エピローグ
 無頼裏ではニウェウス組と理夢琉組が眠っていた。
 素材集めと縫製に全力を出した二人だったために、体力が途中で切れたのだろう。
 遙華はそんな二人にそっと毛布を掛けた。
「……まさにデスマーチでしたね」
「もう、無理だね」
 アリッサと京子はそう微笑みあった。
 ちなみにすでに審査は終わり、評価が高かったのは理夢琉チームと京子の作成した服だった。 
 だが疲れ切っていて評価どころの話ではないリンカーたちは、気だるさを抱えたまま控室で話をしている。
「どうだった?」
 伊邪那美はそう恭也に問いかけた。
「上手くは言えんが、良かったと思うぞ」
「ふ~ん……ねえ、今回は余り意見も言わなかったけど恭也だったらどんな服を作ってた?」
 伊邪那美がそう問いかける。
「俺にはそういったセンスが無いからな……王族って事だから防刃、防弾に優れてそうな《ホワイトスパイダー》で服を作る事ぐらいしか思いつかんな」
「あ~、ボクが作ったドレスにも編み込めば良かったかも」
「なぁ……お嬢」
「はい」
 そんな中、やはり疲れ切った龍哉が遙華に尋ねる。
「結局、従魔素材使う事は相手に知らせてるのか?」
「知ってるわよ、詳しくどんな従魔から出たかまでは言ってないけど」
「…………知らぬが華か」
 こうして波乱の衣装制作は幕を下ろしたのだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • 花弁の様な『剣』
    aa1428hero002
    英雄|22才|女性|カオ
  • Be the Hope
    杏子aa4344
    人間|64才|女性|生命
  • トラペゾヘドロン
    テトラaa4344hero001
    英雄|10才|?|カオ
  • 復活の狼煙
    リジー・V・ヒルデブラントaa4420
    獣人|15才|女性|攻撃
  • 復活の狼煙
    コースチャaa4420hero001
    英雄|15才|女性|カオ
  • エージェント
    エレオノール・ベルマンaa4712
    人間|23才|女性|生命
  • エージェント
    トールaa4712hero002
    英雄|46才|男性|ソフィ
  • 平伏せ、女王の足元に
    鴬華・エリスヴェータaa4920
    人間|26才|女性|命中
  • 真っ黒なドS
    アイオール・ハーシェヴェルトaa4920hero001
    英雄|27才|女性|ソフィ
  • エージェント
    木槌綾香aa5073
    人間|24才|女性|生命
  • エージェント
    レオパードaa5073hero002
    英雄|17才|女性|ドレ
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