本部

WD~水の都に沁みる歌~

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2017/05/09 16:51

掲示板

オープニング

● ディスペアスペシャルライブ


 幻想歌劇団ディスペアというアイドルグループをご存じだろうか。
 個性豊かな少女五人で構成されるアイドルリンカーグループであり。
 また現在国内外で人気爆発中のアイドルユニットでもある。
 現在初の全国ツアー実施中。
 今日は水の都と呼ばれる某都市でのライブ二日目だった。
 会場は開園と共に人で溢れかえり、グッズは一時間で売り切れる。
 そして総動員数1500人以上を超えるホールは超満員。
 誰もが彼女たちの登場を熱望していた。
 そんなディスペアのライブに君たちは招待されたのだった。
「うわー、ライブ前って毎回緊張しちゃう」
 春香がライト両手に震えながら言った。
「子供も多いねぇ」
「ららら、ちっちゃい子に人気。私も大好き」
 ディスペアのファン層は広く、特に六歳から十二歳程度の女子、そして大きなお友達に人気らしい。
 まるで、日曜朝の少女向け番組のようなターゲット層である。
「このだんだん会場に増えてくる、白いやつ? これが流れてくると、もうちょっとだぁって思うよねぇ」
 光を散乱させるためのスモッグが焚かれ、会場の明りが徐々に落ちていく。
 そして、唐突に響くギターサウンド。ファンはそのサウンドだけでも少女五人の誰が演奏しているか分かるらしい。
 これは『近衛 瑠音』の音だった。
「るね……」
 春香は茫然とその名を口に滑らせる。
 前回、魔法少女選手権の任務で彼女が言い放った言葉。

 私はルネの生まれ変わり。

「だとしたら」
 その言葉が春香の頭から離れなくて。
「だとしたら何で、瑠音は私に笑いかけてくれないんだろう」
 その今にも消えてしまいそうな春香を、繋ぎとめるようにerisuが掴んだ。
「梓ちゃんだよ」
 指さす先にスポットライトが当たる、会場の中心、観客席に突如現れたのは『止処 梓』で。
 小さく挨拶すると、曲にハーモニーを乗せる。
 この旋律は彼女たちの代表曲『幻想へ誘うディスペア』である。
 その後空から舞い降りてきた 『海崎 小雪』をキャッチ。二人で歌声を重ねながら壇上に登るとそこにはクルシェがいた。
 炎が立ち上る。黒髪に赤を刺した彼女は広い壇上でバックダンサーと共にダンスを披露する。
 直後会場を満たすのは共鳴の光。
 『アネット』と梓の共鳴時の演出である。二人は導師のようなローブ姿を披露すると、その杖から様々な色の光を放ち会場を満たした。
「今日はライブに来てくれてありがとう! みんな」
 直後現れたのは瑠音。アネットと梓は共鳴を解き五人は一列に並ぶ。
 そこで曲はフィニッシュ。
 そして次曲『トップスタンダード』に移る。
 熱狂。観客たちは拳を突き上げる。
 会場のボルテージは一挙に天井まで上がる。
 最前列、特に濃いファンが集まったその部分はアイドルたちと行きぴったりの掛け合いをしているし。
 その後ろのファンもまるで芸術作品を眺めるようにうっとりしている。
 デビューしてから一年にも満たないアイドルグループがここまでできれば大したものだろう。
 そうアイドル界隈に詳しくない、春香ですら思った。
 だがしかし、そんなアイドルライブ中に悲劇が起きる。
 突如、全ての音響機材がダウンした。
 そして。流れ出たのは、悲鳴の様な歌声。
 その声を聞いて春香は反射的に叫んでいた。
「愚神だ!」
 バタバタと倒れていく一般人を守るために春香は共鳴、元凶を探すために周囲の索敵を始める。

● 戦闘モードディスペア。
「春香さん」
 そう君たちの元に歩み寄ってきたのは、アネット。
 そしてその後ろには梓とクルシェが続いていた。
「まさかライブ中に狙われる何て思いませんでした。対処するのに手伝っていただけますか?」
「うん。でも二人は戦力としてカウントしていいのかな?」
「ふーん、私達を戦力外通告ってわけ? H.O.P.E.のリンカーってよっぽど強いみたいね」
 そうクルシェはあからさまに不機嫌なオーラを醸し出す。
「いや、だってみんなのライブだよ? ディスペアさんが怪我したら悲しむ人多いよ」
「お客さんが怪我したら私たちが悲しいんだよ」
 梓が告げた。
「私は……誰かが悲しむより、私が悲しい方が嫌だからさ」
 そう梓は卑屈に笑った。
「もう、そうではないでしょ?」
 アネットは梓の手を取って言い聞かせるように告げる。
「あなたは本当に感情表現がへたね。みんなが傷つくのが嫌。それでいいでしょう?」
「でも……」
「自分の感情を捻じ曲げて、無理やり論理的にする必要はないわ。みんなが傷ついたら悲しい、それでいいじゃない。戦う理由はそれで十分よ」
 そうして二人は共鳴状態となる。
「さぁ、早く終わらせて延長ライブと行きましょう」
 戦いのゴングが鳴った。

● 状況整理

 大抵、人が多くする街というのは愚神に対する何らかの対策。(警報装置、迎撃装置)が備わっているはずなのですが今回は機能しないようでした。
 速やかに敵を排除してください。
 状況については下記の通り。

・この町は陸路と水路両方を利用して人々が生活している。
 そのため、水路が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。

・子供たちが次々に水路に飛び込んでいるが。彼等はどこにいったのだろうか。

・戦闘区域は一辺10キロメートル四方の四角いフィールドだと思ってください。

 今回の愚神は幸いにして物理的攻撃力や建物を破壊するような能力は皆無です。
 ただし、精神的なダメージ、範囲攻撃。そしてBS付与が厄介です。
 肉体が悲鳴を上げるより前に、精神が狂わぬようにお気を付けを。
(ルール的にはしっかり生命力が削られます)
 そして今回ターゲットとなるのが愚神『残歌』です。
 特徴は後にまとめますが。奴の目的は人間を攫うことにあるようです。
 残歌の発する音には人間の脳機能をマヒさせ言いなりにさせる効果があり。一般人、特に成長しきっていない子供の脳であればなすすべなく洗脳を受けます。

 さらに従魔『白龍』を使役しています。能力については後述しますが。攻撃はあまりせずに人さらいに力を入れているようです。

●ディスペアステータス
 彼女らも共に戦いますが、うまい運用方法が思いつかなければ放っておいても大丈夫です

『クルシェ・アルノード』ドレッドノート。
 今回は機動力の高い火力構成、武装は大剣だが、見たことのない黄色い大剣を所持。
 スキルはPCの相談に従う。

『止処 梓』 ソフィスビショップ
 装備はアルスマギカ・リチューン。スキルはサンダーランスをセットしていくつもりらしいが、PCの相談に従う。

解説

目標 愚神『残歌』の撃破。

---------------下記PL情報――――


デクリオ級 愚神『残歌』
 外見としては、羽衣をまきつけた天女のような姿をしています。
 なぜ、和風。
 特徴的なのは高速で飛行する能力。
 そして音による広範囲の攻撃です。

・ 天使の響き
 常時発動歌スキル。自分の手番に攻撃の範囲を+5SQしていく能力です。
 効果は重複するので、対策を練らないと町全体に攻撃が及ぶかも?
 ただし、瞬間的に大ダメージを受けると歌をキャンセルするようです。

・ 墜落の音色。
 自身中心25SQのすべてに、無差別に攻撃します。対象が飛行している場合地面に落とし、2ラウンド飛行を禁止。
 命中した対象にBS減退を与えます。これは徐々に精神がすり減っていくほどひどい音であるという表現です。三半規管をかき乱します。

・ 魔王の一声
 直線範囲、横3SQ、縦10SQの音波を放ちます。これも無差別攻撃で威力は高め。
 命中すると。『移動力-3』『命中力-200』のペナルティです。
 BS扱いでスキルで回復可能。効果は重複します。
 これも同じく、精神に影響すると思ってください。

・ 硝子の宣告
 心を撃ち砕く音色です。自分中心範囲25SQの中から二人選択し。攻撃。
 命中すると放心状態となり、回避能力が80%ダウンします。
 

従魔『白龍』
 町の中に20体は存在します。
 攻撃能力は風を起こして吹き飛ばす程度。
 ダメージはほとんどありませんが、10SQほど後退させられます。
 常時飛行しており、子供を攫います。どこかに連れて行こうとします。
 ステータスとしては、回避と移動力以外は極端に低く。戦闘力には個体差があります。
 


================ここまでPL情報=============

リプレイ


プロローグ~再度H~
 護衛は任せて、春香は言った。

 先ほどまで幸福な歌に包まれていた町は一転。狂気と悲鳴の最中に埋もれた。
「私達を招待したこのタイミングで襲撃ねぇ」
 独り言のようにそうつぶやくのは『榊原・沙耶(aa1188)』彼女は町を見下ろして『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』は袖を引いた。
「私達を誘き出す為の罠か、もしくは事前にこの町がターゲットにされている事を察知して遠回しに私達に助力を求めたか」
 そう沙羅は分析を始める、その横で『斉加 理夢琉(aa0783)』は大きな金属扉をその背で押していた。
「ここでじっとしていてくださいね」
 なんでも要人用のシェルターらしい、ここに戦えないディスペアメンバーを放り込んで『アリュー(aa0783hero001)』達は戦いに向かう予定でいる。
「マタ…………子供…………(ギリィ!)
『鬼子母神 焔織(aa2439)』はそう歯を軋ませた。
 同じく怒りをあらわにするのは『青色鬼 蓮日(aa2439hero001)』
「何処のどいつか知らんがなァ……ワンパンじゃ済まさんぞ!」
 そう眼下でのた打ち回る白い龍たちを眺めて拳を突き出した。
「だが焔織! 闇雲に動いてもラチがあかんぞ!」
「ワカっていマス…………段取りを行いまス…………!」
 そう告げて焔織が理夢琉に視線をうつすと、彼女は手元の小型スピーカーからディスペアの楽曲を流し始めた。
「脳って好感を持つ旋律には敏感に反応するらしいって聞いた事あります」
「ファンが多いなら効果があるかもな」
 アリューはそう告げると理夢琉と共鳴。窓を開け放ちそこから飛んだ。

プロローグサイド~……~
「…………やはりこうなりますか」
 少女は一人言葉を空へとなげる。
「手際がいい、もはやこちらの趣味趣向は読まれ対策されつくしている、あちらもバカではない」
 その言葉と共に雫は無数に空へと上った。
「仕掛けるには不利ですか、今回の作戦は不決行。大人しく見ているしかない……」
 
「はやく見つけて」

 そう少女は絞り出すように口づさむと瞳を下ろした。


第一章 出動。

「せっかく梓ちゃん達を堪能してたのに……ムキー!」
――せっかくのライブなのに……、ジャマが入るなんて!

「「ゆるさない」」

 そう声をハモらせて船先から飛び出したのは『シエロ レミプリク(aa0575)』そして
『ルナ(aa3447hero001)』であった。
 ルナはすでに『世良 杏奈(aa3447)』と共鳴済みだが、杏奈があらあらと苦笑いする中で怒り心頭の御様子、先ほどから容赦なく従魔に魔法攻撃を浴びせ続けている。
――不躾者にはご退場願おう!
 声を大にしては言わなかったが『ジスプ トゥルーパー(aa0575hero002)』もディスペアライブを気に入っていた様子。
 シエロと一丸となり周囲に弾幕の嵐を展開している。
「ささっと倒せば大丈夫よ。ライブの続き、私も見たいしね♪」
「うん!」
 その杏奈のセリフに力強く頷いて。シエロは手近な瓦礫で足を固定。愚神『残歌』へ弾丸を放った。
 それに合わせ『九重 陸(aa0422)』が躍り出た。
「よお、オバさん。最期に一ついい事を教えてやるよ」
 そのマスクに隠された表情は硬く、瞳は炎を宿している、怒りの炎。
 残歌の口から響く耳障りな音が。死の淵から救ってくれた、陸にとって一番の友である音楽が悪事に使われているのが我慢ならない
「この九重 陸のいるHOPEに音楽で挑むのは百年早いって事をな!来い、Roland G1!」
――その意気です! やっちゃいましょうエリック!」
『オペラ(aa0422hero001)』がそう叫ぶ。
「力ハ、それほど強ク……ない。ようですガ」
 焔織は少し高い場所から残価と二人の戦いを見守っていた。
 状況確認と敵の目的の把握のため、一人たりとも子供攫いを許すつもりはなく、やるからにはこの愚神たちを一匹残らず駆逐するつもりである。
――お嬢様方。非難される方々の駆け込み先の手配が整ったようです。あとはいかようにでも。
『セバス=チャン(aa1420hero001)』がそう恭しく告げると『小詩 いのり(aa1420)』は声を上げた。
「歌も準備できたよ!」
『蔵李・澄香(aa0010)』はその言葉を受けて振り返ると、その勢いのままくるりと回り声を上げた。
「流して! 私たちの歌を!」
――出力調整、両エンジェルスビットに接続、音が来ますわ。
『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』が告げると二人の背から、機械の羽が舞いあがった。
 天を埋め尽くす音の群。それは水を揺らし、石造りの都を揺らし、泣きだしそうな曇天に響く。
 希望の歌。それは二人が受け継いだ未来を切り開くための歌。
「始まったみたいですね」
 その歌に視線を上げたのは『卸 蘿蔔(aa0405)』
 改めて視線をクルシェに、そして梓に向ける。
「アネットさん、梓さんのこと必ず守ってください。なんて、私がいう事でもないでしょうが」
 その言葉に梓は頷いた。
「私達だってそこそこの修羅場は潜ってる、大丈夫でも、私達だけ指をくわえて見てるなんてできない」
「では街中の捜索を。クルシェさん、私も協力します。一緒に戦ってもらえますか?」
「ああ、まかせて、あたしたちの歌を邪魔するなんて、八つ裂きにしたら後悔するのかな……」
 その挑戦的な一言に『レオンハルト(aa0405hero001)』は苦笑いを浮かべた
「私のバイク捌きとくとみやがれ!」
 そうクルシェは共鳴すると倉庫からバイクを引っ張り出してきた。その後部座席に蘿蔔が腰を下ろすとレオンハルトはぼそりと問いかける。
――前もこんな性格だったか?
「うーん、どうでしょう」
「猫被ってたんだよ!」
 その後のセリフはバイクのエンジン音でかき消されて聞こえなかった。
「見てください! 理夢琉さんとすみちゃんの歌が訊いているみたいですよ!」
 蘿蔔が指をさす先に視線を向けるクルシェ、そこには空中漂う白龍がおり暴れる子供たちを落すまいと身をくねらせている。
「しかし、あの調子で暴れられると危ねぇ!」
 そうクルシェは前輪を浮かせると腕の力だけで方向を転換。橋の手すりにタイヤを乗せて走る。
「きゃあああああああああ」
――蘿蔔! 今なら簡単に当たるぞ!
 敵は無防備かもしれないが自分が撃てる状態ではない。そうレオンハルトに抗議したいところだったが舌を噛みそうであきらめた、代わりのお返事として、蘿蔔は二三引き金を絞る。
 それは見事従魔の体を打ち抜いた。
 落下する少年。
「任せた!」
「はい!! 任されました!!」
 急停止するバイク、慣性の法則に従って打ち出される蘿蔔の体。
 砲弾のような速度であるがリンカーの身体能力をもってすればなんのその。
 壁をトントンと蹴って飛んで少年を抱き寄せると、眼下を走行するクルシェのバイクに着地した。
「大丈夫ですか!」
「怖かったよ!!」
 そう少年に抱き着かれる蘿蔔である。
――子供ばかり狙うとは。そういや前現れた鳥籠型ルネがも子供だけ捕まえていたと聞いたが。
「うーん、純粋だからでしょうか」
「その子、どこで下す?」
「たらちゃんに預けましょう、あの子戦いには参加していないはずです」
 そうインカム越しに沙羅に指示を出すと、蘿蔔はクルシェの肩に手を当てて体制を安定させる、そして。
 耳元でつぶやいた。
「ごめんなさい…………差し支えなければお伺いしたいのですが、もしかして以前も愚神に狙われるようなことが?」
「どうしてそんなこと聞く?」
「梓さんもそうでしたから」
「梓も?」
 その言葉を聞いて、クルシェは少し考え込んだ後、エンジン音にかき消されそうなほど、小さく小さく告げた。
「あるよ……でも時間ねぇしな………………小夜子を助けてやってほしいって、言ったら。全部わかるか?」
「え?」
「わからなかったもう一回訊きに来い!」
 クルシェはそう叫んでもう一段階ギアを上げた。

第二章 鳥の歌

 水をまきあげて、アイドル水上を走る。
 アサルトユニットを両足に装着して水上をはじかれたように移動。張力を利用して高く飛び上がった澄香は子供をキャッチして、弾幕代わりにミニスミカを展開した。
 グギャーの大群に引っ張られたり殴られたりして追撃どころではない白龍。その間に澄香は水路から跳躍、空中でアサルトユニットを分解収納。代わりにイヤリングを装備して。
 スタッと着地した。
「いのり! この子お願い」
 その時である。
――澄香よ、背中がお留守だが?
 その直後、一瞬歌がやんだ。背後から迫る白龍、それに気が付いて動きを止める澄香、カバーに走るいのり。
 だが。一筋炎が走るとその白い体は炭で染まり二つに分かれた『八朔 カゲリ(aa0098)』が開けた視線の向こうに見えた。
「だって子供が見えたから!」
「あそこにいるよ、助けないと!」
 二人が指さす先の路地、その隙間から這い出してきたのは子供を抱えて白龍である。
「なんであそこに敵がいることが分かったんだ?」
 カゲリが尋ねると。その視線の先にタブレットが縛り付けられたビットを飛ばす澄香。
「クラリスが監視カメラの映像を確認してるんです」
「事前準備はばっちりなのです」
 いのりが誇らしげに告げる。
――ふむ、であれば覚者よ、やるべきことは決まっている
『ナラカ(aa0098hero001)』が告げるとカゲリは剣を振った。
「役割を全うしよう」
 カゲリは走った。狭い空間に押しとどめられていた従魔は周囲の把握が一歩遅れカゲリの接近を許してしまう、反射的に風を放つが壁を蹴り空中に逃れたカゲリには命中しない。そのまま浴びせるような斬撃。
 絶命した白龍から子供を救いだすと、いのりへと預ける。
「洗脳はやっぱり音で妨害できるみたいだね」
「うん、効果があってよかったよ」
 いのりはそう音楽プレイヤーをポケットにしまうと男の子を抱き上げた。
「にしても、本当にこちらでよかったのか?」
 カゲリはナラカに問いかけた。
「敵が弱すぎる」
――よい、愚神といえど、使役している従魔の力量から考えて愚神も相手としてはまぁ、不足だろうよ。
「……」
――そう考えるのであれば、彼女たちの姿を間近に眺めていた方がよい。
 カゲリはナラカに促され彼女たちを眺めみた。
 煌く汗をほとばしらせて、子供たちを助け出さんと全力を尽くす少女たち。
「次のエリアは?」
――西側に数体。
「今どれくらい倒したの?」
――総数十二。折り返しは過ぎておりますよ。いのり。
「手が回らない分は俺が引き受けよう」
 カゲリがそう告げて、二人の前を走る。
「俺は倒すことしかできないからな」
「あ! 一人じゃ危ないですよ!」
 その西側にはすでに焔織たちが回り込んでいる。
 焔織は走る。あまり背の高い建物が無いため、高度を上げられると白龍への攻撃は届かなくなる。
 そのため、理夢琉が攻撃し高度が落ちたところで、建物の上から飛び食らいつく。
「オオオオ」
 壁を駆け上がりまずは片手で子供の服を掴む。そして。
「堕ッ!!」
 空いた手で白龍の腹部を殴りつけた。 
 そのまま加速、全体重を乗せた一撃にて敵を葬った
「鬼子母神さん」
 理夢琉が駆け寄ってくる。
 子供がひどく暴れているように見えたからだ。
 少年はしきりに焔織を揺すって動きを妨害しようとしてくる。
――歌が届いていないせいで洗脳を受けているようだな。
 蓮日が告げた。
――さて、この子らあの忌々しい歌声で再びパッパラパーになるやもしれん、どうする!
「…………音に困った時は、音に頼りまショウ。隊長どノの、入れ知恵でスが……」
 そう蓮日の言葉に頷き焔織はポケットからスマートフォンを取り出した。それを操作して焔織は希望の音を流し、聞かせる。
「私は謳えません。皆さん、良く聴いて。《ららら》で良いノデ、コレを皆で歌いまショウ」
 そう理夢琉の表情をうかがう焔織、理夢琉は暗い表情を見せる。
「私は……」
 焔織は燃衣から聞いたことを思い出す、確かこの少女は。
――心中お察しするよ、すまなかったねお嬢ちゃん。
 代わりに蓮日が理夢琉を気遣い。二人は音楽にらららと声を乗せていく。
「…………蓮日さマ、歌など歌えたのデスか?」
――まぁ! ボクのは子守唄の要領だがな! ものは試しだ!
 すると少年の動きが大人しくなっていき、やがて止まった。
「もう、従魔もあまり数がいませんよね! 私愚神の方に行ってきます」
 それを見届けると理夢琉はイヤホンを耳に押し込み焔織たちに背を向ける。
 その向こうで甲高い声を上げているのは赤原 光夜で彼の最近発売されたベストアルバムのようだ。お気に入りの『熱源! バーニング』を音量大きめで流して。
 全ての迷いを振り切って加速する。

第三章 染み渡る歌

「泣くな! 男の子でしょ」
 沙羅は蘿蔔から託された子供の手を引きつつ避難誘導を行っていた。
 それがあらかた完了した今、水路を利用した脱出を試みている最中だ。
「あっちのお姉ちゃんの方が大きかった」
 その言葉に青筋を立てる沙羅。
「………………あなたませてるわね? でも経験が足りてないわね、知識もね、女の価値は胸じゃなくてね」
「胸の話なんてしてないもん!」
「このクソガキ!」
「はぁい、そこまで」
 沙耶がそうたしなめると無事水門が見えた。このまま何事もなく通行できればH.O.P.E.の支援部隊と合流できる。
「ねぇ、沙耶」
「わかってるわぁ。今回ばかりは不利過ぎる。遭遇しても撤退一択ねぇ」
「撤退させてくれるのかしら」
「まぁ、その時は、私達が犠牲になれば問題ないわぁ」
 その言葉に沙羅は深く頷いた。

    *    *

「まてまてまて!」
――杏奈、残歌早いよ。
 風を纏いながらも愚神を追う杏奈。しかしその姿は徐々に小さくなっていく。
「少しでも動きが止まればみんなで攻撃して、あっという間に倒せるのに」
「くそ、忌々しい」
 悪態をつきつつも陸は演奏を続ける。速度が足りないことに歯噛みするも最低限の抵抗は続けるべく音は絶やさない。曲目は『幻想へ誘うディスペア』
 こうなってしまえば、愚神を追い詰めるために、シエロを頼るしかない。
 そう進行方向で待ち伏せしていたシエロが躍り出る。
 真っ向から展開される弾幕。
 16式60mm携行型速射砲の弾丸から逃げるためにいったん空へ。そのまま急降下し地面すれすれを走る。
――主様の腕で当たらないなんて。
「今は注意をそらす方が、せんけつだああああああああ!」
 確かに、シエロが残歌にしつこく攻撃するようになってから、うまく立ち回れていない。
「ほーらほーら、かかってこぉい!」
 ガオーっと牙をむき出しに威嚇するシエロ。
 だがそれはシエロの我慢比べ。
 愚神からすればシエロを倒せばまた気持ちよく歌を歌えるのだ。シエロを襲わないわけがない。一瞬動きを止めて、シエロを見た。シエロは笑っていた。
「……かかったな」
――その隙が命取りだ!

「梓ちゃん! いけ!」

 残歌を背後からうち貫いたのはサンダーランス。
 イカヅチの奔流が天女を地面に叩き落とし、そして煙を上げさせた。
「なんで」
 梓がインカム越しにシエロへ問いかけた。
「なんで私がタイミングを見計らってたことわかったの?」
「えへへ、なんとなく」
 シエロは照れ臭そうに頭をかく
「まったく、今夜の歌姫はひどい歌声だな……天井のシャンデリアも耐えかねて落ちてきそうだぜ!
 その時である、陸と杏奈の集中砲火が飛んだ。
――主様、追撃を!
「おうよ! ……うぉぉりゃあ!」
 それにシエロも加わった、もはや空にはあげさせない、ここで仕留めると言わんばかりの集中砲火。そのマズルフラッシュを受けながらもシエロは梓へと言葉をかけた。
「ウチ、前は弱くてぼろぼろになっちゃったでしょ?」
「何の話?」
「あれからいろんなことがあって、今は無理をしなくても梓ちゃんを守れるよ」
「だから、何の話よ」
 苛立ちを見せる梓。
 直後舞い上がる残歌。その視線は梓に向いている。だが。
 素早くシエロは残歌の目の前に回り込み、そして叫んだ。
「どうしたぁ! ウチはまだピンピンしてるぞ!」
 忌々しげに表情を歪める愚神、その時である。
 その隙をついて両側から迫るのはいのり、カゲリ。二人は濃密な霊力を纏わせた剣を、盾を振りかぶり、タイミングを合わせてそれを叩きつけた。
「頭が揺れるよ!」
 いのりはその防御の力を一部反転、縦に込めてこめかみに叩きつける。直後走るのは焔の刃。
 そしてクルシェがバイクに乗ったまま懐へ入り込み。巨大なスパナで敵を打ち上げた。
 直後銃声。吹き飛ぶ愚神の軽い体。
 猟犬。いや『いぬっころ』とあだ名撃たれた狙撃中がいなないて。吐き出された弾丸が、残歌の喉笛を食いちぎったのだ。
 直後悲鳴が町中に響いた、その声は染み渡るように徐々に小さく低くなり、やがて消える。
 煌く霊力の光が愚神の体から立ち上り、空へ向かう。
「それにしても、狙った様に現れましたねあの愚神。周りは水で溢れてるし、500%あの性悪水晶女が絡んでますよね」
 杏奈が告げる。しかし現れなかった。
「もし現れたら、また生首を投げつけてやるわ!」
 そう杏奈は気合を一つ入れると共鳴を解くことなく周囲の警戒にうつる。

第四章 対談、ディスペア。
「あ、戻ってきましたよ」
 そう蘿蔔が手を振ると、沙羅と沙耶が船の上から手を振った。
「いや、何もなかったわね」
 船着き場に豪奢な装飾が施された船を括り付けると、沙羅は船から降りてそう言った。
 非難した住民たちは、H.O.P.E.が安全確認後町に戻されるらしい。
「後は行方不明者のリストを作って……かしらね」
 その時波が立って沙羅がふらついた、その手をいのりがとる。
「お疲れさま」
「ええ、お疲れ様」
「ねえ、沙羅さん。今回の件で気になることがあるんだ」
 いのりは告げる。
「 ディスペアさんって本当に真っ当なアーティストなのかな?
人気の出方とかファンの熱狂ぶりが、少し行き過ぎっていうか不自然に思えるとこもあるかな」
「その件だけど……」
「よくないことが分かったわ、今回、みんなライブ中にいろいろ調べてくれたでしょ?」
 沙羅と沙耶は話しにくいのか交互に言葉を繋ぎながらゆっくりと説明していく。
「まず、発見されたのが、大気中の微弱な霊力反応」
「そしてライブが始まる前からの異常な興奮具合」
「私達心当たりがあるのよねぇ」
「人を一つの箱に入れてトランス状態にするなんて儀式、昔から沢山やられてきたじゃない? それだと思うのよね」
「つまり?」
「大気中にペインキャンセラーが流れていたとしたら?」
「あの薬、普通に興奮作用や多幸感もあるから」
「でも、それ憶測なんでしょ?」
「証拠は得られなかったわね、実際科学的に計測しているわけじゃないし、アネットさん達の霊力が大気中に散布されていたなんて言い逃れされたら、追い詰めることもできやしない……」
 沙羅は歯噛みする。
「どうする? 問い詰める?」
 その会話に、セバスが歩み出て混ざった。
「それは控えられた方がよろしいかと。藪をつついて蛇が出かねませんぞ」
 その言葉に蘿蔔はふむと考え込むしぐさを見せる。
「アネットさんが英雄ではないとしたら、支配するのは容易いはずなのだけど」
「彼女達の後ろには、トリブヌス級並みに大きな力を持つ存在がいるのかな」
 レオンハルトは首をひねった。
「ガデンツァ……か」
 今回観測されたとはいえ、脅威が無いとは言い切れない。
「とりあえず私達だけで判断できないわ、お持ち帰り案件ね」
 そう沙羅が告げると背後から声が聞こえた。
「こっちにはいなかったぞ」
 そう水路からざぶざぶと上がってきたのは陸である。
 水路に飛び込んで子供たちがいないか探索を続けていたのだが、とりあえずあたり一帯にはいないことを確認し戻ってきた。
「警報装置や迎撃装置が作動しなかった理由も気になる。これからそっちを見に行こうと思うんだが」
「付き合うわぁ。私も少し気になることがあるし」
 二人は防衛施設へと足を向ける。

   *   *

 時同じくして一行はライブを行っていた施設の控室に集まっていた、ディスペアも含めてである。
「梓ちゃん!」
 そう控室のドアを開けた梓に、シエロはいの一番に飛びかかった。
「きゃ!」
「怪我は! 怪我なかった? 良かった、連携ばっちりだったね! 感動した!」
「まって、離して! 今から真面目な話するみたいだし」
「すごいっしょ、ウチ♪ あれからいろいろあったんだよ、ロシアに行って、それで」
「…………ねぇ、シエロ……ってお名前だったよね?」
 その梓の言葉でシエロは少し悲しい瞳を見せた、けれどすぐにいつもの調子に戻って梓の頭を撫で始める。
「うん、はじめましての、改めまして? かな?」
「このて、知ってる気がする」
「……いつでも頼っていいからね、梓ちゃん」
「みなさん、お疲れ様です」
 そう最後に入室したのは理夢琉、背後にクルシェが控えていた。
「わぁ、本物のディスペアだ!」
 理夢琉は今回、ディスペアの面々と行動を共にしていないのでまじかで見られて感動したようだった。
「瑠音さん!」
 理夢琉は真っ直ぐルネに歩み寄って恍惚の表情のまま言葉を投げかける。
「ライブすごかったです! アレンジや舞台構成に惹きつけられるけど不安になる言葉のピースが多くて感動しました!
(despairの意味は絶望だったか 希望と対であり巡る感情の表現だが) 
 アリューはそう不安げな視線を二人に向ける。
「そして、あの前世の記憶があるって本当なんですか?」
 その言葉に瑠音は目を丸くした。
「私の名前も発音が違うだけで前世と同じなんです。一緒ですね」
「僕らもそれは訊きたいな」
 蓮日が言葉を継いだ。
「……生前の記憶。マタ……《ガデンツァ》……この名に覚えハ? 我ら【暁】……ルネ殿の死より生まれたる組織でスので……」
「生前の記憶は、あるわよ」
 その時、瑠音はふわりと微笑んで理夢琉に告げた
「あなたを悲しませてしまった。ごめんね理夢琉さん」
 そして瑠音は理夢琉の手を取る。
「ずっと、思っててくれたのよね。ありがとう。ここにいるみんなも」 
 そういって瑠音はあたりを見渡した。
「じゃあ、瑠音さんは、あの……ルネさん?」
「ええ、信じてもらうのは難しいかもしれないけど」
「ルネさん……」
 理夢琉はうわ言のようにつぶやいて、理夢琉は瑠音に歩み寄る。
 瑠音は理夢琉を膝の上に誘導して、頭を乗せて撫でた。
「待たせてごめんなさい、帰ってくるまで時間がかかっちゃった」
「おかえり、おかえり、ルネさん」
「信じてくれるの?」
「理夢琉はもう一つの記憶を持つ故の是も非も理解しているぞ」
「そう、よかった」
 そう告げて瑠音は視線を上げる、すると春香と瑠音の視線がった、その時瑠音は理夢琉をどけて立ち上がった。
「私、トイレに行ってくるわね」
 その廊下の先ではクラリスが隣に立っている。

「斉加さんの言葉、はぐらかしましたね、そして鬼子母神の問いかけにも答えていない」
 すれ違いざまにクラリスは耳打ちするように告げた。
「あなたは言葉を扱うのがすごくお上手ですね、私はよく似た人物を一人、知っています。あなたが無関係であることを祈るばかりですわ」
「あなた……」
 瑠音がクラリスに視線を向ける。
「短期間での急激な人気、ルネの生まれ変わり、明らかな精神異常の梓様。とある高校の事件に絡む謎のアイドル、そして今回の襲撃」
「一度目の勝負で、既に大きなミスをしているのはお気づきでしょう?」
「何のことでしょうか?」
「最初はあの愚神の差し金かと思いましたが、あえて疑われていませんか?」
 その言葉に瑠音は瞳を揺らす。

「…………瑠音、貴方は私の敵ですか?」

「それとも、私の敵の敵ですか?」
「あの!」
 その声に二人は驚き振り返る、そこには理夢琉が立っていて、理夢琉は名刺のようなものを瑠音に差し出している。
「私は貴女の言葉を聞いて理解したいと思っています これ私の連絡先です]


エピローグ サイド~H~
「みんな、また私たちのライブに集まってくれてありがとう!」
「H.O.P.E.のみんなのおかげで危機は去った! 私たちは私たちの仕事をする!」
 そう壇上で手を取り合って声高らかに宣言するのは梓とクルシェ。二人は今回討伐作戦にも加わった英雄である、多大な拍手が巻き起こった。
「よかったよ、間に合って」
 そう陸は二回VIP席からその姿を見下ろしていた。
「せっかくこの日のために練習したんだから披露しなくちゃ勿体ねーもんな」
 警報装置を確認しに行った後、特に問題がなかったのですぐに会場に戻り設営の手伝いをしたのだ。おかげでその日のうちにステージも再開できた。
「そう、異常は、なかったのよねぇ」
 沙耶が頬杖をついて一つため息をついた。
「警報装置は切られてた、ご丁寧なことに正規の手順を踏んで」
「であれば、それを切ったのはこの町の警報装置に自然に近づける人物」
「単なるつけ忘れは、ありえねぇしな」
 そう陸は釈然としない表情で、少女たちの晴れ姿を見守る。
「にしても春香。そろそろ私達もじれてきたわよ?」
 そう沙羅が先ほどからだんまりを決め込んでいる春香に声をかけた。
「何かしらの手を撃たないといたちごっこよね?」
「ごてごてってことなら、遙華も、それでいいなんて思ってないよ。ただ……」
 どうすれば先手がとれるのだろうか、情報が錯そうしすぎていて判断できない、それでいて、重要な情報はない。
「ドロップゾーン圏内でも感知出来る発信器、通信機。もしくはドロップゾーンでも電波を受信出来る受信機、開発出来るかしら。WNLと繋いで、地球上なら傍受出来る様に」
「傍受したとして、その情報の精査とかだれがやるんだろう」
 春香が難しい言葉を使ったので、erisuが驚いて顔を上げた。
「たぶん、このまま網をただ広くしても、価値のない情報も増えてくると思うし、ガデンツァに関係がある情報だって判断できる人も少ない」
「やっぱり、やるしかないのかしらねぇ」
 沙耶は告げた。
「拉致された場合の為に、カプセル型の通常の発信器を外科的に取り除けない箇所に埋め込んでおく。後は受信機の開発を待つわ」
「やめてよ、そんなこと」
 春香は冷たく言い放つ。
「みんな怒るよ」
「構わないわぁ」
「みんなに。言いつける」
「構わないわぁ」
「みんなに止めてもらう」
「止まらないわぁ」
「春香……」
 次いで沙羅が口を開いた。
「あなたに言ってるんじゃない、遙華に伝えなさいって言ったのよ、感情論は訊きたくないわ」
「遙華も同じことを言うよ」
「言わないと思うわぁ、少なくとも私達が本気であれば」
 押し黙る春香。
「それに研究素材である以上、即殺されはしないとは思うわ。拷問はあり得るけど」
 沙耶は春香の様子を見ながら淡々と言葉を続ける。
「小鳥遊ちゃんとのライヴスの供給活動が止まった場合、乱れた場合に起爆する爆弾を体内に仕込んであるとかハッタリをかければ、邪英化、抹殺の抑止力に少しでもなるかしらね。
 ガデンツァへの研究への助力は……相手の益になると判断した事以外なら仕方ないかしら」
「伝えてくれるわよね?」
 沙羅が強い口調でそう告げると、春香はしぶしぶ頷いた。
 そんな春香を見て蘿蔔は言葉をかける。
「…………春香さんは、その、ルネさんの事忘れたいって思った事ありますか?どんなに楽しい思い出も今は辛いだけだって」
「思うはずない!!」
 春香は叫ぶように告げた。
「思わない、だって大切な、友達だから……」
 言葉尻が濡れていた。涙をこらえるようにうつむく春香へ蘿蔔は、駆ける言葉が見つからなかった。


エピローグ 再度~G~

「クルシェ……あなた」
 冷え切った声が楽屋にはっきりと響いた。
 少女は腕をクルシェの首に押し当てて壁際まで追い詰める。
「ははは、私達のモチベーションを気にしてアンコール後まで我慢する、あんたのそう言うとこ好きだよ」
 そうクルシェは額に汗をうかべながらも強がって見せた。
「あなた、H.O.P.E.の連中に何を言ったの?」
「なにも?」
「嘘をつかないで」
「アンタらの後始末が雑だからこんなことになってるんじゃないの?」
「雑じゃないわ、誘ってるのよ。ただ」
 想定より食らいつきがいい。これは何が影響しているのか。その判断がまだつかない。
「少し警戒するとしましょう」
 そう踵を返し、少女はクルシェを解放した。
「でも、攻め手を緩めるつもりはない」
 そう少女は髪飾りをはずして、豊かな黒髪を風に、なびかせた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • 希望の音~ルネ~
    クラリス・ミカaa0010hero001
    英雄|17才|女性|ソフィ
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 無名の脚本家
    九重 陸aa0422
    機械|15才|男性|回避
  • 穏やかな日の小夜曲
    オペラaa0422hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • LinkBrave
    シエロ レミプリクaa0575
    機械|17才|女性|生命
  • 解放の日
    ジスプ トゥルーパーaa0575hero002
    英雄|13才|男性|バト
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • トップアイドル!
    小詩 いのりaa1420
    機械|20才|女性|攻撃
  • モノプロ代表取締役
    セバス=チャンaa1420hero001
    英雄|55才|男性|バト
  • 我ら、煉獄の炎として
    鬼子母 焔織aa2439
    人間|18才|男性|命中
  • 流血の慈母
    青色鬼 蓮日aa2439hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
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