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広告塔の少女~悪魔をよぼう~
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相談卓
最終発言2017/04/29 11:13:40 -
質問卓
最終発言2017/04/28 18:44:17 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/04/28 15:50:43
オープニング
● ネット上の悪魔
とある少年が動画サイトで作業用BGMを流しながら携帯ゲームをしていたそうな。
そのゲームは仲間とモンスターを狩るゲームでございましたが、自分だけがへたくそで一人で修業をしているのでした。
「あー、かてねー」
ストレスで地団太を踏みつつ電源を落とし、イライラをマウスにぶつけるように拾い上げてターンと。パットに叩きつけます。
立ち上がる検索サイト。そしてゲームのタイトルを打ち込んで情報を調べはじめます。
「攻略サイト。攻略サイト」
そう少年はキーボードを軽快に叩き続けます。
その間別のウィンドウでBGMは流れっぱなし。
気分が上がる陽気なラインナップです。
そんな音声に、いつの間にかノイズが混じるようになっているではありませんか。
少年は首をかしげます。
「あん? スピーカー壊れたかな?」
そう接続のし直しをしようかと、お小遣いで買ったちょっといいスピーカーに手を伸ばそうとしたところ。
ざざっと、一際強くノイズが走ったのでした。
「なんだ?」
しかもそれは定期的に、断続的に、どんどん強く、はっきりとした声になっていきます。
それを少年がじっと聞いていると、冷や汗が流れました。
いつの間にか緊張でマウスを、握り潰さんばかりに締め上げています。
それに気が付き少年は、必死な自分を嘲笑うように口元を釣り上げると。そっとマウスを机の上に起きました。
そして再度モニターに視線をうつしたその時です。
画面にね、映っていたんですよ。
真っ白な男の顔が。
少年は飛びずさりました。しかし恐怖に喉は引きつり悲鳴は上がらない。
代わりに口を開いたのはモニターの向こうの男で。
男はつぶやきます。
「モンスターが倒したいか?」
「え?」
男の言葉が最初、日本語には聞こえませんでした。
気が動転していたためでした。
「モンスターが倒したいか」
二回目でやっと聞き取れました。少年は頷きます。
「ああ、倒したい」
「自分の手で倒したいか?」
「ん?」
最初、その問いかけの意味が解らなかった少年。
やや時間をかけて。ぽくぽくちーんと。考えますると。
やっと思い至ったのは、このゲームは協力プレイであったこと。
「協力してくれるの?」
少年は恐る恐る問いかけます。
「ああ、協力しよう。お前自身の手で。モンスターを倒させてやる」
「ん?」
接待プレイかな?
そう少年は思いましたが、なんとなくコミュニケーションが取れたので、安堵のため息を漏らし、ゲーム機に手を伸ばします。
その直後の事でした。
ゲーム機を握った少年の腕を、黒い腕が掴みました。
「え? え? うわああああああ!」
少年は画面の中に吸い込まれて行きました。
そして少年を引きずり込んだであろう男は笑います。
「ふひひひひひひひ」
笑い声が誰もいない部屋にこだまし、そして。
「いっててて、なにがあったんだ?」
少年は自分の部屋ではない場所で顔を上げます。
すると少年は驚きの声を上げました。立ち上る土煙、体は重たく、地面には見慣れた大剣が転がっています。
そして、臭い息が吐きかけられると少年は理解しました。
「おい。まさか!」
そう、目の前に何度も戦ってきたモンスターがいるではありませんか。
「うわああああああ」
少年は思います。
「俺が倒すってこういうことかよ!!」
その後少年はそのモンスターを倒すまでの十時間ゲームの世界にいたと申します。
これが今回の怪奇憚。愚神が起こした事件のお話でございました。
● 画面に引きずり込む。
「まぁ、つまりネットの中にドロップゾーンを持つ愚神なのね」
遙華はそう解説した。
「ネット上でゲームをやっている時、動画を見ている時、ラジオを聞いている時、フラストレーションをきっかけに出てくるらしいわ」
必ず決まって、なになにをしたいか? と問いかけてくるという。
「それに頷くと最後。当初の目的を果たすまでドロップゾーンから出られないわ」
被害者の一例としては下記の通り。
へたすぎる歌ってみた動画を見ていた女性が、私ならうまく歌えるのにと言って引きずり込まれ、その動画よりうまくなるまで十時間拘束された。
「これ、同時多発的に起こってるのよね。観測されている中だと。昨日の十五時二十四分に三人が同時にとっ捕まってるわ」
であれば愚神は、同時に複数の空間に存在できることになる。
「面白いのは、このドロップゾーン内で再現されたモンスターや登場人物は元のキャラクターに忠実に動くのよ」
つまり、モンスターであれば攻撃パターンはゲーム上で用意された者のみを繰り返す。
人物であれば、もととなった人物の性格や行動原理を限りなく本物に近く再現する。らしい。
「これ、個人的にはかなり危ないと思うのよね」
遙華は言う。
「野球中継を見ていて、その野球選手より自分の方がうまいと思った人がいたとする、で、愚神に野球場に引きずり込まれたとする」
愚神は引きずり込んだ人間を。その映像やゲームの中の誰か一人に置き換えるらしい。そして目的が果たされるまで何度も繰り返し、その場面をリピートするらしいのだ。
「たとえばピッチャー役にされてね。すると、その人はプロ野球選手から三振取らないと帰れないことになる。これはたぶん一生かけても無理よ」
そうなった場合、ドロップゾーンに囚われたまま死ぬことになるのだろう。
「そうなる前に手を打ちたいのだけど……」
そこで遙華は言いよどむ。
「呼び出す方法は単純よ、とりあえず動画を見てフラストレーションをためればいい。でもその後がねぇ」
愚神はほぼ確実に、自分のドロップゾーン内。つまり動画やゲームを再現した世界の、何かの登場人物に置き換わっているはずである。
「そこでアプローチ方法を考えてみたの」
● 遙華の戦略。
まず大前提として下記の事を皆さんにしていただきます。
【動画】の作成
自分たちに有利なフィールド、シチュエーションを作るために動画を作成していただきます。
自分が作った動画なのですから、生成されるドロップゾーンは性質上自分たちがよく知っているフィールドになるはずです。
であれば、誰が愚神になっているかわかるし、登場人物がイレギュラーな行動を起こすなんてこともないだろう。とのこと。
そして愚神を呼び出すためのフラストレーションですが、ほんの些細なものでも反応するようです。
語尾にイラッとする。ギャグの一部が寒かった。敵の技性能が高すぎてはめ殺される。一部分だけ音がでかい。
そんな感じのちょっとした、イラッとで大丈夫なので、好きに動画を作ってみてください。
基本的にはこの後ドロップゾーンに乗り込んで愚神を倒す、というのがマスタープランです
解説
目標 デクリオ級愚神『サモン・マジシャン』の撃破
デクリオ級愚神『サモン・マジシャン』について。
もともとはデータを食べる愚神のようです、一時期はネットワークで大人しくしていましたが人間を捉えることで大量の霊力を吸えると気が付いたようです。
スキル
・ サモンズデータ
自身が食べたデータを元に従魔を召喚します。
つまり、もとの動画データ、ゲームデータなどの一部を奪い去り自分の従魔として召喚する能力ですね。能力はまちまちですが。強くはならないようです。
食べさせるデータをある程度想定することで対処しやすくなるかもです。
・リプレイ
対象一人に前ラウンドと同じ行動を強要します。
スキルを無駄に使ってしまったり、強制移動させて壁に激突させたり。
地味ですが、使いどころによっては脅威になるかも?
・ コピー&ペースト
対象のスキル攻撃を無効化して自分で使うというスキルです。
コピーしたスキルは使用回数関係なく何度でも使えますが。
再びコピー&ペーストすると、スキルが上書きされてしまいます。
スキルをコピーするためには、そのラウンドの行動を放棄する必要があります。
● プランの増強について。
動画を作るだけでは不十分だと感じる場合はそれと並行して何か策を打ってくれて構いません。
たとえば下記のような。
* わざと複数の動画で愚神をおびき寄せてみる。
同時に複数の場所に登場する愚神が、全て同じスペックであることは考えにくいです。
ステータス、ドロップゾーンの質のダウンなど狙えるかもしれません。
* ネットワーク隔離。
この愚神が現れると通信量が跳ねあがることが確認されています。
つまり、確実に愚神はネットワークの中を『移動』しているのです。
なので、愚神がこちらの端末に姿を現した時点で。グロリア社サーバーに隔離。
こうすることで、もしかすると愚神の同時多発を防げるかもしれません。
リプレイ
プロローグ
「動画、自由に作って良いんですか? ……でも、自由にって言われると難しいな。何にすれば良いんだろう?」
『世良 霧人(aa3803)』は腕を組みうーんと、困り果てた声を上げる。
霧人自体はあまりゲームに詳しくないため、どうすればいいのかと、困り果てていた。
「旦那様、このゲームは如何でしょうか。ルートと謎解きの答えさえ覚えてしまえば簡単です!」
そんな中『クロード(aa3803hero001)』が前足でキーを叩きつつ何かを発見したようで、ノートPCの画面を霧人に向ける。
「これかー。敵キャラも少ないし、確かに良いかもね。」
「では早速取り掛かりましょう!」
こうして、一人と一匹の実況動画づくりが始まった。
第一章
「ゲーム動画制作は以前から興味があったよ!動画の方はあたしに任せて、ユリナ」
「え、ええ……私は鈴音さんのようにゲームに詳しくはありませんし……」
『月鏡 由利菜(aa0873)』はティーカップ片手に苦笑いを返す、その視線の先にはモニターを覗き込む『ウィリディス(aa0873hero002)』と、メガネに光を反射させながら画面を睨む『御門 鈴音(aa0175)』がいた。
「編集はね、ここで、このBGM。UCって言われているやつを挟んでですね」
「うんうん」
「でもこう、失敗しちゃうと面白く……」
「うんうん」
そんな動画談義に聞き入っているのはウィリディスだけではない。この任務はどうやらその手の動画サイトが好きな面々が集まっているようで、鈴音の言葉に頷いていた。
「これも一つの、やってみた動画ってものかな?」
『九字原 昂(aa0919)』が告げると『ベルフ(aa0919hero001)』は頷いた。
「公開できないから再生数は稼げないだろうな」
「まぁ、実際にやる時の練習ってことで」
そう昂はマウスを素早く動かす。
「にしても。特殊なドロップゾーンか……ちっと良い思い出はねェけど、今回は大丈夫……いや、油断はできねェか」
そう一人ごちる『東海林聖(aa0203)』
「……何時ぞやのアレ……?あの時とは種別が違うし…………ま、油断してまた怪我しない程度にね」
「まぁわかってるって。……それにしても、色んなタイプの敵が居るよな……変わってる……いや、多様性が多いってコトか」
「ああ、よくこれだけアイディアが集まったよな」
あくびをしながら告げたのは『赤城 龍哉(aa0090)』だ。
「とりあえず複数ネタがあるなら誘き寄せに活用した方が良さそうだな」
「ネットワーク隔離も今の所明確なデメリットがないようですし、やるべきですわ」
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』と共に長く画面を見つめていたので、目が疲れている様子、こめかみのあたりを強く圧迫する。
「ただ、ネットワークで隔離した場合、逃げるために実体化して出てくる可能性はどうだろうな?」
「実体化!」
龍哉の言葉に頬を覆ってうっとり反応したのは『望月 月華(aa3919hero002)』
「なんか、嫌な予感が」
『猪原 卓深(aa3919)』がそう肩を震わせている。
「ちなみに、望月さんはどんな動画を作ったのですか?」
由利菜が問いかけると月華は胸を張って答える。
「わ、私はふふふふ」
涎を啜る音に卓深は飛び上がりつつ、補足する。
「まず、俺の写真を撮ってたね~」
「可愛らしい表情から照れた表情から隅々まで。その写真を動画で動かせるように、ある技術を駆使してバーチャル3Dモデルを作ったのがこちらになります」
そう月華が広げて見せてくれたPCの中では精巧に作られた卓深が躍っていた。
「俺! きいてないよ!」
「それをさらに二次元キャラクターの別のモデルとくっつけて、こう!」
とある有名漫画のキャラクターが突如召喚され、いきなり二人がちゅちゅし始める。
「あのー、月華? 月華さーん? これ、なにかなぁ、なにかなぁ。聞いてないなぁ」
頭から湯気を放つ卓深。
「んー、愚神来ませんね」
そう月華はPCの画面を叩いて見せる。
「確かイラッとしないと来ないんじゃなかったでしたっけ?」
鈴音が首をひねる。
「師匠はよっぽどのことじゃないとイラッとしないっすよね? 師匠がイラッとできる動画、作ってみせますから、しばらく待っててほしいっす!」
『逢沢 奏音(aa5061)』が佳境に入った動画づくりを急ピッチで終わらせるべくキーを叩く。
それを温かく見守る『睡 乃皇女(aa5061hero001)』であった。
「イラっと来る瞬間かぁ……ゲームなら理不尽なハメ技で一方的に殺されたりするとイラっと来るかも……」
鈴音はいろいろ思い出すところがあるのだろう。苦笑いしながらそう告げる。
「ネットにドロップゾーンを作って人間からエネルギーを得ようなんて……なんてずる賢いのかしら……」
『朔夜(aa0175hero002)』がくすくすと笑う。
「同じ悪魔として出し抜かれた気分でムカつくから必ず殲滅するわよ……? 可能な限り惨たらしくね……!」
そうぎらつく瞳で朔夜はPCの画面を覗く。
その時だった
「できたっすよ!」
「こっちもおわり」
『阪須賀 槇(aa4862)』および『ストゥルトゥス(aa1428hero001)』が同時に席を立った。
「確か、阪須賀はゲームを作っていたんですよね?」
鈴音がそう問いかける『阪須賀 誄(aa4862hero001)』は頷くと席を譲り、自作ゲーム『アスキーアートアタック』のタイトル画面を表示させた。
ためしに鈴音がスタートボタンを押すと。(*´ω`*)とか┌(┌^o^)┐とか妙にイラ付く顔文字が敵ネスト兼ボスから沸いてこっち等に迫ってくる。
「これはRTS系ゲームですね」
「おお、御門さんゲームに詳しいみたいだね」
やがて鈴音は大きなミスも無くボスステージまでたどり着く。ボスは非移動型、踊る鳥人間でバーカ! と時々しゃべる。
その敵の行動パターンを分析しつつも、鈴音の表情が少し険しくなっていく。
「あら?」
その時である、なぜか朔夜が首をひねった。
「なぁ弟者よ」
「どうした兄者」
画面を覗きこむ朔夜。その隣で阪須賀兄弟はその光景を見守りながら告げる。
「自分で作っといて何だが、テラムカつくなコレ」
「…………あぁ。時にどうでも良いがこのモキュみたいな顔文字は」
「この顔文字はきっとこっちの世界でも流行る(*´ω`*)」
「その顔文字は流行らないし流行らせない、いいか、絶対にだ」
「私達も完成したから見て見て」
そう奏音がモニターの一つに手品ショーをうつす。乃皇女は目を丸くした。動画内容については聞かされていなかったからだ。
内容はよくある人体切断マジック、消失マジックの連作だ。
マネキンを人間に見たてた脱出マジック、ありふれている基本中の基本と呼んでいもの達だった。
「どうです? 師匠。師匠の手品と比べ物にならないでしょう?」
だがあえて奏音は師匠である乃皇女を挑発した。
「……勝負、です!」
乃皇女は静かに微笑む。
「……はぁ?」
空気がピリッと震えた気がした。
「奏音……随分……偉そうに……なったね……?」
「みんな、続々とやり始めてるね」
そう『ニウェウス・アーラ(aa1428)』が告げるとストゥルトゥスが頷いて自分の動画も再生し始める。ヘッドホンをして二人で並ぶ、その後ろに龍哉が立った。
画面上に映っているのは流れていくマークに合わせて、ボタンを押すタイプの音ゲー。
その名は『太鼓の鉄人』
最高難度と言われるステージのプレイ動画を鑑賞している。
「自称、音ゲー名人な友人に作って貰いましたー!」
「…………イラッとする所…………何か読めた、よ?」
「俺からするとすごいように見えるんだがな」
龍哉が告げる。
しかし画面上で発生する凡ミス。よそ見でもしていたのだろうか、別に連なっていない単音で痛恨のミス、コンボが途切れる・
「何で! そこで! ミスるのかなーもう!」
「ツッコミ…………本気過ぎ、ない?」
「どうして、あと一回叩けなかったんだ?」
「でもこれ。ストゥルトゥスよりはうまいよね」
「もー何やってんだ!」
その時である、画面が揺れた
『私の方がうまくできると思ったか?』
「きた」
全員が緊張した面持ちで声を聞く。
『顔文字がうざいと思ったか?』
「でも違うのよ……! 何かが違うのよ……!」
そんな声を一切聞かず、画面上の3Dモデルに首ったけな月華。
「私とならもっともっと┌(┌ ^o^)┐が┌(┌ ^o^)┐で┌(┌ ^o^)┐している卓深君の画を、理想の画を作り出せるはずなのに!┌(┌ ^o^)┐」
「どんなフラストレーションの溜まり方だよ! あとピー音が謎のマークになってるよ!」
『う……これ。…………ううん。私ならもっと完璧なBLをプロデュースできると思ったか?』
「愚神も若干引いてるじゃん!」
そしてその声はストゥルトゥスにも問いを投げる。
『フルコンボしたいか?』
「フルボッコもといフルコンボしたいでっす☆」
「本音、ダダ漏れ…………」
「ではその願い、叶えてやろう」
次の瞬間、画面から愚神が現れた。
「やってやるぜ、ルゥ!」
「……勿論……ヘマしないでね……ヒジリー」
(……前の敵に、ちょっとだけ似てるかな)
そう少しだけ不安を感じる『Le..(aa0203hero001)であった。
第二章
次の瞬間一行は別々の世界に飛ばされた。
たとえば音ゲー。例えば格ゲー。例えば恋愛ゲー。
「こ、ここは?」
愚神『サモン・マジシャン』は自分が立っている場所が普段とは違い困惑した。
たとえば戦場のど真ん中、例えば美少女の真ん前。例えばマスコット姿でプレイヤーたちを見下ろしている。
「あ、あの敵は…………どっちゃん!」
――その名前…………危険な香りが、するよ?
「ボーナスチャーンスッ! どっちゃんを血祭りにあげる事で、ボクの得点は急上昇ッ」
――音ゲーだよね、これ!?
ニウェウスが叫びをあげた矢先。太鼓のばちをかなぐり捨てて龍哉が愚神に切りかかった。ちなみに彼はなぜかはっぴに鉢巻き姿である。
結構に合ってる。
「ぬおおおお、お前たちリンカー」
「いまさらわかったのか!」
――時すでに遅しですわ。
対してこの愚神、複数の場所に存在できるようで、鈴音たちが用意した恋愛ゲーム内ではというと。
「私が主人公かよ!!」
「主人公『左門』がヒロイン『摩梨花』の幼馴染みのポンコツ系美少女とラブラブいちゃいちゃする。ラ、『ラブコメのお約束をこれでもかと詰め込んだ王道恋愛AVG……?』」
由利菜は説明を読み切って苦笑いを浮かべた。
――今は、ヒロイン『摩梨花』の両親が主人公との交際に反対しているという重要な話を聞かされるシーンだね。
「なんでそんな場面なんですか?」
「こういう、重要なシーンの方が視聴数を稼げるからです!」
鈴音が両拳を握りながら告げた。
――ユーザーが欲しいシチュなどの意見を販売会社のサーバーに送ると、それらを元に新シナリオや新システムのミニゲームが自動生成&無料配信される……予定だったんだけど、納期の都合で没になったんだって。
「ぬおおお、遊んでいられるか!」
愚神はそう告げて杖を振り上げると、ヒロイン『摩梨花』をみるみる吸収
してしまう。
「ああ、摩梨花ちゃんが!」
――そんな無理やりなことをする愚神にはお仕置きだよ。
そうウィリディスが指を鳴らすと直後。
空を悪雲が覆った。そして稲光のように空に走るのは雷撃ではなく光線。
――宇宙から敵が攻めてきちゃった。
ウィリディスが告げると、愚神は叫ぶ。
「どういう世界だ!」
直後襲来するUFOがビルを破壊、崩れ落ちる建造物、その瓦礫からヒロインを庇って左門は飛んだ。
「ねえ、左門君……この世界も、私達ももう助からないよ……」
「そんなことない、絶対助かる……って! 何言わせてるんだ」
「……異星人に殺される位なら、一緒にお星様になろう?」
「しかも、すごいことを言い始めた、うまく言ったつもりか! 畜生」
焦り始める愚神、当然だ、本来であれば自分がてんやわんやするのではなく、あそこで紅茶片手に眺めてる女どもがてんやわんやするはずなのだ。
「データを書き換えてやる」
そう携帯端末からこのドロップゾーンにアクセスしようとするも、その画面を覆い尽くすのはなんと。ヒロインからの鬱メール。
『私と一緒にお星さまに……』
「わーーーー。じゃまだーーー、あとそのセリフ気に入りすぎだろう」
「あなたを愛してる、死んでも離さない」
そう瓦礫の山で抱き合う、二人。それを見て身悶えている鈴音。
「鈴音さん?」
由利菜が心配で問いかけるも鈴音はメガネを曇らせて何も言わない。
「れ、恋愛AVGの魅力はなんといっても現実ではあり得ない展開に主人公の心が揺らぐ瞬間!」
鈴音は一気に紅茶を飲み干すと口早にセリフをまくしたてる。
「例えるならイケメンだらけの無人島でサバイバル生活で生き延びるために釣りで食材集めしてたら、普段こわもての先輩がサメを釣り上げて『なんか知らんけど……釣れたんだからお前にやるよ!』とか言う」
「え? ウィリディス、この会話はおかしくないですか? だって鮫でしょう?」
「あー、あくまで鈴音ちゃんは好きってだけだよ、鈴音ちゃん鮫くらいなら平気そうだし」
「ああ、幻想的です」
「私の知っている幻想的とは少し、価値観というか、何というか」
「あー、由利菜はたぶん理解しようとしない方がいいんじゃないかな」
「やっぱり見てて面白いゲームのプレイは誰にも思いつかないようなトンデモなプレイスタイルの開発とかよね。そういうので動画作るといいかも」
(……鈴音……妙に生き生きしてるわね……それ現実で出来ないのかしら……)
そんな鈴音を眺めながら朔夜は、今回自分の出番ないかもと一人ごちていた。
* *
舞台は打って変わって怪しげな洋館、古びた家屋は誇りっぽくその中を霧人はたった一人でうろちょろしている。
愚神はその姿を扉の隙間から見守っていた。
このゲーム藍鬼は一度捕まってしまえばゲームオーバー。この世界でならリンカーを倒すことなどたやすい、そう思った。しかし。
「さて、この鍵を取ると奴が現れるよ」
――攻撃は効くのでしょうか?
「このゲームには攻撃手段が無いからなあ。やれるだけやってみよう」
クロードの言葉に頷いて霧人は不穏なBGMと共に鍵を拾う。
次の瞬間。扉を押し開けて、ブルーベリーのような体色をした鬼が現れる。
「願いは、僕らならもっと上手く逃げられる。タイムトライアルと行こう」
直後霧人は駆ける、愚神の横をすり抜けて扉を抜けるとそのまま玄関まで走った。
追いすがる愚神めがけてライブスショット。
それを愚神は吸収し、代わりに放つ。
「しま!」
足元の床が破壊され霧人は見たこともない階に落ちていく。だが。
「ここは、マップ上で言うと応接室の隣の部屋だ」
素早く体制を立て直し玄関まで走るそして。
最後の扉を押し開くと、そこで待ち構えているのは最終形態となった愚神。
ひどく膨れ上がった両腕を撃ちつけてこちらを威嚇してきた。
「ここで決着を着けましょう!
愚神を避けつつ、目を狙ってカラースプレーを撒き目潰し、行動が鈍った所で一気に叩く。
愚神撃破後は館を脱出し、ドロップゾーンからも脱出する。
第三章
三つ目のステージに招かれた、愚神『サモン・マジシャン』
ここでは乃皇女の望みを叶えるためにマジックショーを行う予定だ。
そして目の前の壇上には大きな鳥かごが一つ。
「これより演目、『翼をください』を開幕します」
直後音楽と共に壇上に登ったのは乃皇女そして
「イッツ……ショー……タイム……」
その掛け声とともに愚神めがけてワイヤーが飛来した。
「ほう、設備を利用するか」
直後二人は共鳴。周囲に無数のナイフを展開した。
「今宵の目玉は……ナイフ百本投げ……で、ございます……」
愚神との一騎打ちが始まる。
* *
「遙華さんから、隔離の報告来ました」
そうインカムから口を離すと聖に伝える昂。
「こんなとこでも通信機使えるんだな」
そういぶかしむ聖は昂と共に敵を観客席から見下ろしている。
そこはスタジアム、ゲーム内ステージの一つである。
「お前たち、なぜそんなところに」
「気付かなかったか? お前が来た時のために動画やゲームのデータもとに細工してるんだよ」
聖が告げた。
「だとしてもこの世界で私は神!」
直後格ゲーないの敵を無尽蔵に召喚し始める愚神である。
画面上には<バトルロイヤルモード>と表示された。
そのよく見るキャラクターたちが殴り掛かってきたところで二人は武器を抜く。
「いや、それにしても」
聖は敵の蹴りを剣の腹でいなすと、すれ違うようにスタジアム内に飛び降りて、剣圧でとりあえず二、三体吹き飛ばす。
「動きはきっちりしてるじゃねぇか」
聖は気が付かない間に動きを目で追ってしまっている
……流派の技織り込むとあそこはこうで、など考察を交えながら。
「このゲームは実際に武道のプロの人たちの動きを、モーションキャプチャーでトレースしていますから」
昂は雪村で相手の足をすくい上げると、寝転んだところを一突き、くるりと回転しながら起き上がって敵の拳をいなした。
「ふーん、面白れぇゲームだな」
昂は言った。
「このゲームこそ、剛拳3」
「あれ、人間でもできるのか」
関心する聖。
――……ルゥはそっちは専門外だけど…………人間の動きじゃない……と思った……
「いや、ルゥも大概人間離れしてると思うけどな?」
そんな風に勉強熱心な聖は、キャラクタ―一人一人の動きを捉えながら従魔を倒していく。
だが、敵の生成速度は速く、聖はいつの間にか囲まれていた。
「けれど、甘い」
その窮地に舞い降りてきたのは昂。その霊力を張り巡らせて、女郎蜘蛛で足止めを狙う。だが。
「おまえの方が甘い」
その瞬間昂のスキルがキャンセルされた。
目を見開く昂。代わりに女郎蜘蛛を放つ愚神。
「ハンデなんて要らねェな……全力でやってやるぜッ!!」
だが、愚神は見誤っている、彼等はこの程度軽く潜り抜けてきたトップリンカー。
一瞬、聖の姿を一瞬意識から外した瞬間。
聖は一気呵成に攻め込んだ。
衝撃波で従魔たちを吹き飛ばし、体勢を崩した愚神を腰辺りから切り上げる。
舞い散る鮮血。
その一瞬の呻きの間に。昂が聖の左右から迫った。
ジェミニストライクである。
「なんだ、おまえたち」
強すぎる。
力を無数に分けてしまった自分では一切歯が立たないくらいに。
「これで詰めるッ……千照流・破斥……黒雅!!」
ツヴァイハンダーによる「疾風怒濤」その斬撃はライトエフェクト共に空間を揺らし、そして爆ぜた。
* *
――折角卓深君とイチャイチャするところだったのに! 邪魔しないで!
「イチャイチャしないしする予定もない!」
「なんだこれは、お前がいちゃいちゃするのか! 話が違うではないか」
その時愚神はBL世界にいた。
そこにはデフォルメされ理想と化した卓深、さらにその周囲には大量の二次元素体、仕方ないので愚神はその素体を吸収して従魔としてぶつけるのだが。くんずほぐれつするたびに月華が嬉しそうな声を上げる。
――汚物は消毒だー! 燃やさないけど!
「何がしたいんだ!」
――うるさいわね。じゃああの動画以上に卓深君と┌(┌ ^o^)┐な画を作ればいいんでしょ? 任せて!
「嫌な予感しかしない」
もはや涙目の卓深である。
――ほら、まずそこのイケメン二人をこっちに連れてきなさい。私がこの体をのっとって。
「だ れ か た す け て 」
* *
そんな動画内で戦いを繰り広げる戦士たちの一組、阪須賀兄弟は最終作戦を決行しようとしていた。
「……うむ、データがロックされてしまった」
――なんと……どうする兄者?
「元々の仕様……なら時にどうかねっと!」
――……OK、デバッグ開始だ。
自分の世界内に持ち込んだ自前のノートを立ち上げて開発者モードを起動
発動するのは最高執行権限による公式チート。
自キャラのみ。行動3倍速、オブジェ全透過、ゲーム内ダメージで回復、ゲージ常時最大
他にも障害物の発生と除去、重力n倍、全自動攻撃及び100%ホーミング等々
「ゲージがたまるとロケランなんでね」
――行くのだ、兄者!
逃げ惑う愚神へ狂気の弾丸が降り注ぐ。
* *
そして話の部隊は最初の音ゲーに戻る。
「ええい、ろくに使えるデータがない、これでも食らえ」
そう愚神は龍哉たちへ、叩くべきアイコンを複製、乱射してくる。
それを最初は切り捨てていた龍哉だったが、途中からめんどくさくなったのだろう。
「臥謳、やれ」
直後響く剣圧、それが周囲に広がると生成された従魔たちの動きが止まった。
「今回はゲームの世界。つまりボクの領分なのでー。ボクが表に出て戦うネ」
その隙に迫るストゥルトゥス。
――ゑ。
「愚神め、お前が太鼓になるんだよぉ!」
――私の姿で…………変なノリ、しないで!?
――ここからはずっと私たちのターン、ですわ!
ヴァルトラウテの掛け声とともに龍哉も走る、邪魔な敵は屠りつつ、愚神との距離を
詰めてそして挟み撃ちに。
「ふへへ。魔法の撥でフルコンボしたるっ」
――ああ。杖選んだのって、そういう理由…………
振りかざすケリュケイオン。龍哉と並んでボコボコニ殴って行った。
「く、かくなる上は」
「奥の手か?」
逃すまいと龍哉が迫る、足をからめ捕って倒れた愚神の腹部に渾身の一撃を叩きいれた。
「ごぱ」
直後、愚神の顔に影が落ちる、本に高速で装備を変更したストゥルトゥス。SWで強化した通常攻撃を。
「フルコンボだどん?」
叩き込む。
「ふ。手ごわい敵だった、ぜ」
そうストゥルトゥスが画面から出てくると、続々他の参加者も帰還した
「…………楽しそうで、何より、でした」
そうニウェウスがゲームの電源を落とす、後片付けも仕事のうちである。
エピローグ
仕事終了後、ご飯でも食べてから帰るかという話になり一行はグロリア社
食堂を目指す、そんな中乃皇女の背を呼び止める奏音。
「僕、いつか絶対に師匠を追い抜きますから!
「それじゃあ……ボクは……もっと……もっと……技を……磨くね……。そう……すれば……追い……つく……なんて……できない……から……」
乃皇女はそう微笑みを返す。
「奏音……手品……うまく……なってた……よ……ボクの……自慢……だ……」
「師匠!もう一回、もう一回言ってください! 」
その言葉に乃皇女は意地悪く微笑んで踵を返した。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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