本部

WD~私のクオリアを感じて~

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2017/04/25 17:03

掲示板

オープニング

WD~私のクオリアを感じて~

● それは白と黒の世界で。

 大切な人が死んだ。
 雨、暗い朝。世界が全て色あせて。
 白と黒に変わって見える。
 燃え尽きた灰いろに見える。
 私は、その世界の真ん中で佇んでいて。
 
「私は――」

 右手には花束、左手には十字架。身に纏っているのは喪服が。
 鋼のように思い。
 私への罰なのだろうか。
 彼女を救えなかった私の。

「――なんでここにいるんだろう」

 感じる。痛みを感じる、色あせた世界で、あなたがいない世界で痛みだけを感じる。
 自分を感じてる。
 人は自分を殺してしまいたくなった時、いったいどうしているんだろうか。
 私にそれを教えてほしい。
 誰か私に…………。

「ああ、あの子がいない世界で、痛みを感じ続けている」

 痛みとは感覚とは個の証明だ。
 私は彼女がいない世界だというの、ここにいると主張を続ける、自分自身が。
 とても、とても許せなかった。

 そんな私の目の前に天使が舞い降りることになる。


● 感覚が奪われる病。
 アメリカ北部。
 とある病院、ここは人類史上ほとんどサンプルが無かった奇病を研究するための研究所が併設されていた。
 ここに収容されていた少女『リア・ディセル』は全世界でも百人程度しか例がない奇病に侵されていた。
 神経が消えていくという病である。
 四肢や臓器がまともに動かなくなっていくことに加え。前身の五感が消えていく病だった。

「私はあの子に命よりも大切なものを救ってもらいました」
 
 発症してから二年でその病は全身にいたり。彼女は自分を人形の様だと言った。
 最後に残っていた味覚すら、もう感じられず。
 パンががさがさとしたスポンジの様だと彼女は告げた。

「学校になじめなかった私を仲間に引き入れてくれて、彼女は家にこもりがちだった私に沢山外を見せてくれました」

 色彩を奪われていく世界。
 熱を奪われていく世界。
 音が遠くなる世界
 自分が遠のいていく世界。
 感覚の消失は個の消失。 
 自分自身が生きながらに消えていく感覚。
 その感覚の中で、彼女は微笑み続けていた。

「彼女が見せてくれる世界はとても色鮮やかで、そして。いつの間にか彼女の事を大切に感じていて」
 
 彼女はついに点滴でしか体に栄養を送れなくなっていた。
 あれは最後の訪問の時。
 彼女は両親と話をしていた。
 このまま緩やかな死を迎えるくらいであれば、いっそここで。
 そう口にした彼女の表情は疲れ切っていて、初めて見る表情で。私は……
「私は彼女が死にたいと思っているなんて、知らなかったの」
 そう目の前の少女に私は語る。
 彼女の感じていた世界を感じたい。その代償として彼女との思い出を話す必要があるとその少女に言われたのだ。
 だからすべてを話した。彼女と自分の全て。
 そしてすべてを話し終わった私へ、彼女は小さな袋と、小箱を差し出した。
「痛みをかき消す薬です」
 水晶の少女は告げた。
「これの真価は痛みを消すだけではなく、あなたの望む世界を作り出せるという点にあります」
「他人の痛みを感じることができる世界、自分の感覚を閉ざせる世界。感覚を自由に操る力。それをあなたに授けましょう」
 


● 出会い

 雨に打たれながら私は花束を投げ捨てた。それを捧げることが私は。
 彼女の死を認める、ということな気がして。
 私は、それがどうしてもできなくて。

「私はあなたを救えなかった。ついに」
「あなたに人と語らう喜びを、一緒に誰かと過ごせることがこんなに楽しいんだって教えてもらって、それが私の夢にも繋がって」
「私に感覚を与えてくれたあなたなのに、私はあなたを救えなかった」
「私はあなたの苦しみを理解することすらできなかった」

「私は、罪人だ!!」

 私は曇天に向けて叫んだ、その先に彼女がいるような気がしたから

「誰でもいい。私を裁いて!」

「アイアンメイデンでもなんでも持ってきてよ!」

「生きて恥をさらすことがこんなにつらいなんて思わなかった!!」

「あの子は私に助けを求めてたのに」

「あの視線が、私を捉えて離さない」

「あの時私があの子の苦しみをきちんと考えられてれば、私はあなたに何かできたかもしれないのに」

「私は、あの子が死に際、何を思っていたかもわからない……」

「私はあの子に寄り添えたんだろうか、幸せにできたんだろうか。私は、私は……」

「あなたがくれたこの美しい世界が、今はただただ。憎いよ」


 そう雨が頬を伝う。生暖かいそれを私は、雨だと決めつけて振り払った。
 目の前に少女がいた。
 私はこうして、彼女の手を取ることを決めたのだ。

●アリア・レイルレント
 17才の少女、自分を半年に一人の中途半端な天才と称する少女。
 頭がよく、特に数学、生物学全般に強い。
 彼女が今回ペインキャンセラー、および。愚神との共鳴で手に入れた力は感覚の共有。
 他人のクオリアと自分のクオリアを直接結びつけ、自分の痛みを、自分の見ている世界を、自分の悲しみを相手に『感じ』させるようです。
 さらに三つの特徴的スキルは、同時に発動できないようで、切り替えて使ってくるようです、容姿から発動しているスキルを判別できます。
『Pain sense propagation』
 自身の痛みを周囲に伝えるスキルです、常時発動型で自身が受けたダメージの五分の一を半径50SQにいる全員へ返すスキルです。
 強い怒りを感じている時は強制的に発動するスキルです。
 当然一般人にも伝播します。
 全身から陰炎のようなものが立ち上り、周囲の空間が歪んで見えます。

『I am a ballot』
 感覚を遮断するスキル。自身へのダメージを0にする代わりに五感を最小レベルにまで抑えます。聴覚はキチンと生きているので話をすることはできるでしょう。
 ただし冷静なときにしか使えないスキルで感情が荒ぶると別のスキルに変わります。
 アリアが灰色に変わり、動きが鈍くなります。
 
『Branch of pain』
 自分を中心に25SQ内にいる対象をランダムに繋いで、感覚を交換します。
 つまり、AとBという人物の感覚を交換した場合。AはBの視点からAを見ることになり、感じる痛みも、温度も、世界もBへと変わります。
 とても厄介なスキルですが、同時に複数の人間を繋げば繋ぐほど、アリア自身に負荷がかかり、脳に傷を負います。
 このスキルを使いすぎるとたとえ助かったとしても、彼女は重い障害を覆うことでしょう。
 悲しみに支配されていると発動するスキルです。
 きっと大切な人の元に行きたいんでしょうね。
 このスキルを発動していると、髪の毛が四方に広がり根のように空間を走ります。




解説


目標 アリアの説得。および量産型アルマレグナスの全滅。


●状況
 今回戦闘場所として選ばれたのは『リア・ディセル』が入院していた病院です。そこで彼女は、患者たちから様々な痛みや苦しみを引き受けています。
 さらにその痛みを再分配。この病院内にいる人間は様々な痛みや苦しみにふれ。この世の地獄と化している状態です。
 病院は五階建て、広々とした作りですが戦闘するには手狭です。
 さらに戦闘力の高い従魔が放されており、その従魔との戦闘も想定しないといけません。
 さらに避難も十分には澄んでおらず、避難活動を優先するか戦闘を優先するかという問題もあります。

●デクリオ級従魔 アルマレグナス
 アリアに痛みを与えるためだけの存在で、初期状態であれば病院内に五体確認できます。 
 人形で翼をもつ魔人で。首から上が無く代わりに大きな目玉が首の上で浮かんでいる姿です。
 攻撃方法は爆破と肉弾戦。火焔の球体を放って地形破壊効果のある攻撃を放ってきます。
 戦闘が長引くと新たなアルマレグナスが生成されます。
 この病院内のどこかにアルマレグナス生成装置が存在するようです、探してみてください。

・アリアの心境
 端的に言うとアリアは狂っているのだと思います。
 このままではとても邪魔なので彼女を無力化するか説得する必要があります。
 ちなみに彼女は冷静にならない限り愚神と共鳴を解くしかないようで。殺すしかありません。
 H.O.P.E.としては愚神認定をしているので、排除は問題ないのですが。
 気持ちとして後味悪くなることは必至。
 頑張って説得してみてください。
 彼女の心境は複雑ですが、このような凶行に及んだ一つの心情として、彼女が死を選んだことが許せないという物があるようです。
 アリアはアルマレグナスの存在を聞いてはおらず、うっとおしいと感じているため。リンカーの次くらいに、アルマレグナスへ痛みを返そうとして来る。



リプレイ

プロローグ

「死は終わり。過去をぐだぐだ嘆くよりも、新たに子供でも作ればいいのに。バカよねニンゲンって」
 そう『アシュラ(aa0535hero002)』母と慕う女性の隣でそう、深くため息をつく。
「…………依頼は敵の排除じゃ。止めはせぬから、好きにやるとよい。何事も経験じゃ」
 『カグヤ・アトラクア(aa0535)』はその頭を撫でて再度寂れた病院を見あげた。
 まるで怨霊をつめた箱のように。病院全体から悲鳴が上がっている。
 痛い、辛い、苦しい、助けて。
 その嘆きを受けて『御門 鈴音(aa0175)』は剣を抱いて声を引き絞る。
「輝夜……私は思うの……。肉体的な痛みよりも心の痛みのほうが何十倍も私には痛いって思う……」
 その言葉に『輝夜(aa0175hero001)』は黙って頷きを返す。
「だからこそこの痛みを感じる事で私は生きていたいって思える……。……彼女もきっとそうなんだって私は信じたい……」
「……フンッ。人ではない鬼のわらわにはそんなこと解るわけなかろう……じゃがそなたの思うままにやってみるがいい」
 そう輝夜はそっぽを向きつつ手を触れ合わせた、直後リンク。二人は戦極と呼ばれる戦闘フォームへ姿を変えた。
 するといっそう彼女に近づけた気がして。彼女の痛みをその身に受けているような気持になった。
 それは『北里芽衣(aa1416)』も同じ。
「どうしようもないですよね。その痛みから逃れる方法なんてなくて、耐えるしかなくて、それはとても理不尽で。」
 なんで死んだの、なんで私をおいてったの? なんで私は生きてるの? 死にたい、誰でもいいから殺して欲しい。昔の自分とどこか重なるアリアの痛み。
 そしてその痛みにはなれるしかない、それがいいことか、悪いことか。それすらわからない芽衣はそっと『アリス・ドリームイーター(aa1416hero001)』の手を取った。
「この痛みにも意味がある……なら、これは慣れ親しんだ痛みと同じだ!」
 対して『イリス・レイバルド(aa0124)』は自分をつらぬきとおす。
「私たちに痛みが伝わる分だけ、一人当たりの負担が減るのなら」
『アイリス(aa0124hero001)』は祈る様に告げた。
「「痛みは私達で持って行く」」
 普段から痛みを引き受けることが多いイリスだ。だからそう言い切ることができる、痛いことは恐ろしいことなのに。
(イリスの歳でこの苦悶の渦に投げ出されても怯まないというのはある意味問題なのだがねぇ)
 アイリスは思う。それは正しい少女の姿なのかと。 
 だがイリスを否定はしないのだ。だってそれこそイリスが血反吐を吐いてでも望んで、手に入れたい自分なのだから。
「難病、ねぇ」
『榊原・沙耶(aa1188)』はそう資料を見つめて継げる。
『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』は沙耶の言わんとしていることを理解して口を開いた。
「難病と一言に言っても、国からの支援金が出て研究が出るのは、症例の多い順。
治療への補助金もそう。致死率が高くても、症例が極めて稀なら後回し」

「でも、自分の親類や親しい友がそれに掛かると決まって言うのよねぇ」

国のせい、医師せい、政治家のせい。
「今まで難病に何の感心もなく、たったの1クレジットだって難病支援の援助もしてなかったのに。手前勝手よねぇ」
 その言葉ににじむのは怒りなのか、それともあきらめなのか。
 だが今は関係ない。今は黙っていれば死に行くもの達を救うという任務だけ。
 それを別っているからこそ、ここにいる人間たちは集まった。
 『煤原 燃衣(aa2271)』が先陣を切って前に進む。
「長く戦って分かった事がある。感情の力は強い、でも、不安定だ」
『ネイ=カースド(aa2271hero001)』と共鳴、スピードを上げた。
「《冷静さ》は何よりも大事だ。遺された者であれば尚」
――で、お前は何をするんだ、隊長殿。
「…………まずは一般人の安全確保! それが最優先ですッ! 敵を倒すとかはその後だ!」
 直後燃衣は扉をけ破ると、あっけにとられていた従魔に殴り掛かる。戦闘開始だった。


第一章 苦痛の回廊

 侵入した病院は外から見るよりくたびれていて薬臭かった。
『古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001)』は何かを見定めるように告げた。
――うーん……お世話になるならもっとこう、サービス良くて稲荷の美味しい病院の方が……」
「お前、世話になる用でもあるのか?」
『防人 正護(aa2336)』が尋ねた。
――いやぁ……そりゃあねぇ。
「……?」
 お腹に手を当てて、そうアイリスは微笑んだ。
 その直後である。轟音と共に金属製の扉が吹き飛ばされてきた。
「気に入らんな。己の自我を他者の自我に埋没させようなど……」
 その吹き飛ばされた扉へ意識を集中『黛 香月(aa0790)』は即座に『アウグストゥス(aa0790hero001)』と共鳴して、扉を切って捨てる、その先には禍々しく笑う爆炎の悪魔の姿があった。
「く……頭が」
 そんな香月を痛みが襲った。
 正確には頭ではなく心の痛み。失って、胸に空いた穴がだくだくと血を流している。そんな痛み。
 だが香月はそんなもの認めない。
 かつて愚神に要らぬ機械を移植されて生体兵器に改造され、洗脳されかけた彼女は己が己であることに人一倍敏感だ。
 今度の敵は人間の感覚を他人の感覚の中に埋没させ、自我の在処を曖昧にしてしまうのだから気に入らないのも当然である。
「愚神がこの世から滅び去る日はいつ訪れるか知れない。だが、「奴ら」に似通った性質を持つ愚神は徹底的に……潰す」
 そう刃を握り直すと、憎悪を纏わせ突貫した。
「手伝いますよ」
『九字原 昂(aa0919)』が香月の背後から躍り出る、アルマレグナスの反応速度を上回る急接近。昂は素早く足を払い、アルマレグナスの動きを止めると『彩咲 姫乃(aa0941)』と香月が同時に接近、斬撃を交差させるようにアルマレグナスを吹き飛ばした。
――哀れじゃな。
 カグヤはそうアルマレグナスに歩み寄り、首元に足を乗せる。動きを封じそしてしばしその姿を眺めた。
 何度か相対している迷宮の王。いつかの時は達者にこちらを煽ってきたものだが、
今は言語能力さえ失っているらしい。
 だから。もう興味はない。
 そうカグヤは大きな目玉を踏み潰す、機能を停止し、それは霊力へと帰っていった。
「痛みを苦しみを感じたり、苦しんでいる逃げ遅れがいる?」
 アシュラがつぶやいた。そしてその身を蝕む『痛み』を咀嚼するようにゆっくり味わう。
「ふーん。これがドロップゾーン? ……ふーん。壊れたらママに直して貰えばいいし気にせずいこっと」
 直後迫る二体目のアルマレグナス。
――これこれ、戦場で横見はいかんぞ
 その突撃を片手で捌くアシュラ。
「わかってるよぅ。それにしても奇病の特異患者として実験動物にする方もされる方も、既にヒトデナシだろうから無視して敵を殺しにいこっと」
「手はず通り三班に別れましょう」
 昂の言葉にリンカーたちは頷いた。
――上の階にいそうだな。階段で行くか?
 『ベルフ(aa0919hero001)』がそう尋ね昂はそれに頷く。
「私は、一般人の避難を優先的に行うわ」
 沙羅が言った。
「勝手知ったる職場、今回は私が主に動くわぁ」
「私も途中までお供します」
 芽衣が告げる。一人ではアルマレグナスに絡まれると厄介だ。沙耶はその言葉に頷いて館内マップを眺める。
「俺も一緒の方がよさそうだな、重症患者の対処法はわからないし」
「そうね、じゃあ私が指示をだすわぁ。重篤患者を優先的に運び出す必要があるわぁ。院長や他の職員の手を借りてまずは優先順位を決めた方が効率よく非難できるはずよぉ」
「「はい!」」
 少女二人はそう返事をして沙耶の後をついて走る。 
 途中襲いくるアルマレグナスは振り切る程度に開いてをして最速で委員長室を目指した。
「私たちは」
 対して鈴音は剣を構える、背後から迫るアルマレグナスの爆炎を切り裂いてゆっくりと前に進む。ぎらつく刃を構えなおして。そして真っ向からアルマレグナスへと切りかかった。
――哀れな模造品の相手じゃな!
 カグヤはそう獰猛に笑う。
 
   *   *

 正護は単独行動を謀っていた。どこかに設置されているはずの、従魔生成装置を探して二階へ。
「数が多いな…………」
 従魔とはいえデクリオ級。単独戦闘では足止めをするので精いっぱいだが。
 仲間たちもうまく動いてくれているのだろう。
 追い詰められることはなかった。
――ジーチャン! 音が。
 アイリスがそう叫び、嫌な予感に立ち止まった正護。
 突如右側の壁を破り、二つの影が躍り出た。
 片方は従魔、そしてもう片方はアイアンロックを決めながら従魔を抑え込もうとしている鈴音である。
「防人さん!!」
 鈴音の声ではじかれたように正護は反応その手に握られたニーエ・シュトゥルナが輝きを帯びる、杖先に防護フィールドを展開。それを槍のように突きだして、アルマレグナスを吹き飛ばした。
 腕が吹き飛び転がる、アルマレグナス。
「みなさん、一階まで走って!」
 鈴音は敵から視線を離さず、背後に控える患者たちに告げた。
 壁を破壊して包囲網を破ったのだ。
「あまり、壊すと古い建物だ。倒壊する可能性がある」
 正護は告げると、アルマレグナスに向き直る。
「は、はい!」
「悪いが、人形遊びする歳じゃないからな……、それに病院に人形なんて夢見の悪くなりそうな組み合わせは止してもらいたいもんだな!」
 そう正護は何かを思い出したのか激しく首を振る。
「それに今時の人形は稼働区域が多くて昔の八クリックはもはや往年の合体ロボしか……」
 そんな正護の言葉を遮るように直後インカムが震えた。
「二階はどうだ?」
 香月からの通信である。
「一通り見てまわしましたが、生成装置のようなものはありませんでした」
 そう鈴音が答えると同時に、インカム越しから空を切る刃の音が聞こえてきた。
 その斬撃は風を切り。
 そしてアルマレグナスへ命中する。
 香月の放つ烈風波である、そのまま体制の崩れたアルマレグナスへと歩み寄り。連撃によってアルマレグナスを仕留める。
「この階にも生成装置は見当たらない。やはり生体装置は地下にあるのではないかと思うんだ」
 香月がそう告げると。別の声が通信に割って入った。
――それは、当たりじゃろうなぁ。
「騒ぎが起きてるトコにいるはずよね。ごー」
 地下に進行していたのはカグヤ。彼女はすでに地下への階段を降り始めている。
 そこで門番のように立っていたアルマレグナスの蹴りを手で受けて止め。
 落とし。掌底でそれを吹き飛ばす。
 そして悠然とアシュラは告げた。
「む、何か変な感じ」
 痛みが遠ざかっていく、代わりに何かが蠢くような気配、さらに地下には人の気配がなかった。
 その時である、アシュラの足に絡みつくアルマレグナスの手。それを振りほどきアシュラは足でアルマレグナスの腕を抑え動きを止める。
 そしてその手に握った殺戮兵器。チェーンソウのエンジンを吹かせる。
「あははは」
 アシュラは笑う。これら聞けるであろう、断末魔を想像して。笑う。
 耳を覆いたくなるような回転音が響きそしてアシュラは。チェーンソウを腰だめに籠手り。そしてそのままアシュラはチェーンソウを突き刺した。
「チェーンソーの利点は……バカみたいに武器を振り回す必要がなくて、回転する刃を当てて押し斬ることで威力を発揮する……」
 それを実践している我が子をみて、カグヤは幸せそうなため息をつく。
「ママが言ってた。ふんっ、あ、アシュラだってそれくらい知ってるんだからっ」
 その一撃は固い装甲をガリガリと削り。柔らかい肉体に行きつくと、まるでプリンを掬うようなみずみずしい手触りと共に、アシュラの頬に血が返る。
「殺すよ! アシュラが造られた理由はきっと戦闘して勝つことだから、その為だけに、お前を殺す!」
 もがき苦しむアルマレグナス。だがその反応もやがて弱くなり。まったく動かなくなってしまった。
 つまらないな。そうアシュラが思っていると廊下の暗がり、奥の方から火焔の球体が飛んだ。
 アシュラは素早く前に出て武器を変更。カロル・サカルに持ち替えて、炎を打ち払う。
――ふむ、アルマレグナス。劣化コピーかの? アレの特性上このあたりに生成装置があると思うのじゃが。
「アシュラだって、そ、それくらい知ってるんだから!」
 そうカグヤはさらに院内の闇へと歩みを進めていく。
 直後全員の耳に昂からの通信が届いた。アリアを見つけたという通信が。

第二章 悲しみに染まるアリア

 イリスは廊下いっぱいに結界を広げて、アルマレグナスの攻撃を全てはじいている。
 そのイリスにまかせて燃衣は飛んだ。壁と天井を立体的にとらえる複雑な機動。
 地面に落ち、足を払って伸び上がるような掌底、そのまま患者から従魔を引きはがしていく。
 背後に控える患者たち、その非難が済むまでは防衛に徹するつもりだった。
「お姉ちゃんの近くだといたくないね」
 そうどこからか現れた少女がイリスに微笑みかける。その少女にイリスは微笑みを返し告げた。
「離れれば痛くないんです、そこまで早く逃げてください」
 そしてイリス投擲された火球を盾ではじく。建物が揺れ轟音が響く。
 防御の構えを解き切っ先をアルマレグナスに向ける。
「これがいるっていうことは……」
――アレはコピーを作るのが得意だったからね。ついでにアルマレグナスのデータも持っていた。
 アイリスが告げた。
「確実に一枚かんでいる……なら!」
――説得で止まったとしてもいつもの寄生型は確実だろうね。更に「いつもの」がどこまで強化されているかは未知数だ。
 だが、イリスは奴の攻撃パターンを知り尽くしていると言ってもいい。何せ何度も焼かれたのだから。
 感慨深い相手である。だからこそ脅威になりえないことはわかっていた。なぜなら彼は迷宮の王であるはずなのに、ここには迷宮が無いから。
「できるだけ頭のかわりにある目玉を優先して潰そう」
――そのためにはあせらず丁寧に相手の体勢を崩せ。
「この先です」
 そのイリスの脇を昂がすり抜けた。
 あとに続くのは姫乃と鈴音、そして芽衣。
 彼女たちは避難誘導を終えて戻ってきたのだ。ただ沙耶は調べたいことがあるからと別行動を選択した。
 追いすがろうとするアルマレグナスの首をイリスが跳ねると、その列に加わった。
 やがて案内されたのは個人病室。
 とあるベットの前で少女は立ち尽くしていた。
 彼女から痛みが浸みだしているのだと一目でわかった。
「ボクには今、三つの心があります」
 燃衣は静かに歩みを寄せる。
「一つ目は、貴方の身勝手な行いへの《怒り》
 貴方は心が壊れる程の痛みを知っていながら、尚それを他人ににも押し付けようと言うのか……?」
 その声にアリアは反応を見せない。
「二つ目は、喪った痛み…………自棄になる気持ちへの《共感》
 ……ボクは少し貴方と似た所があって。身の上話しですが……ボクはリンカー適正があったのに、戦う事を拒んだばかりに…………大切な者を、守れなかった。家族も弟も、皆、殺された」
 その時初めてアリアは燃衣を見た。
「……憎悪と後悔と、裁かれぬ罪の重さに…………一時、ボクの心は壊れました。
 理屈じゃない。痛くて、壊れそうで、今すぐ逢いたい気持ちは分かります。
 直後左右の病室の壁が爆破され現れたアルマレグナス。
 それに姫乃と鈴音が飛びかかる。
「俺は頭よくないからよ」
 姫乃はアリアを一瞥すると口を開く。
「何でこんなことやってるかはわからない。わからないけどよ、――あんたの大事な彼女とやらは大事な人に自分と同じ苦しみを与えたいと。
 そんなことを願うようなやつだったのかよ!?」
「思わないでしょうね」
 そう告げてアリアはナイフを取り出した。それを自分の手首に当てると思い切り引いた。飛び散る鮮血。直後姫乃は右手に違和感を覚え武器を取りこぼす。
 アルマレグナスの拳が迫る、だがイリスが姫乃を突き飛ばして、その攻撃を代わりに受けた。
 同時に、悲鳴をかみ殺す声が聞こえた。
「御門さん!」
 鈴音が攻撃を受けたわけではない、ただ、自分がアルマレグナスを切りつける度に全身に痛みが走った。
 自分のものではない痛み。それがこんなに苦しいのかと鈴音は奥歯を噛みしめる。
「芽衣ちゃん、お願い」
「でも、御門さんが!」
「私は、大丈夫だから」
 鈴音は立あがる。
「終わらせてあげないと、早く、本当に痛いのはあの子だから」
 芽衣はその背にかけられる言葉を探して拳を握りしめた。
 けれど何か言うよりは力を貸したほうがいい。そう思って。
 鈴音の背後に控える、二人のコンビネーション。
 あまりやったことはないが、今なら息が合う気がする。思いを共にする今なら。
 その間に受け身を取って体制を立て直す姫乃。 
「あんたもあんただ! そんな薬で痛みを消し去ってそいつと同じになれたつもりかよ!
違うだろ! その彼女ってのは消えてほしくなかったんだろうが!
本当に理解したいんだったら喜んで痛みを消すようなまねはやめろ!」
 姫乃はアリアに迫る、だがアリアは殻を纏うことで姫乃の接近を拒んだ。
 直後、爆炎が姫乃を包む、さらにアリアは自分の右手を執拗に突き刺した。姫乃が武器を持てなくなるようにである。
 だが姫乃はそれで戦うことを諦めるつもりはなかった。
「軽い気持ちで痛みを消すなって言ったんだ。――なら耐えなきゃかっこつかないよな!」
 姫乃の言葉にアリアはゆっくりと答える。
「痛みじゃない、私が殺したのは私自身、私のクオリアを殺すの、私が感じる世界なんて無意味で、あの子の感じる世界が……」
 姫乃に迫るアルマレグナス。それを投げ飛ばしたのは燃衣。次いでアリアに迫ろうとするが、昂が燃衣へと囁いた。
「すみません、先にやりたいことがあるんです」
 その燃衣の背後で一際強く姫乃が叫ぶ。
「綺麗なもん教えてくれた……生きたかったんだろそいつ!」
 そう響いた姫乃の想いにアリアは息を飲んだ。
「辛くてどうしようもなくなるまでずっと耐えてたんだろ」
 アリアは拳を握りしめる。そして叫ぶように告げた。
「そうだ、耐えてた、耐えて耐えて耐えて、いなくなってしまった。そうなるくらいなら私は、あの子の痛みを共有したかった!!」
「それをおこがましいとは思わなかったんですか?」
 直後昂は武器を全て捨てる。金属が床を滑る音。
 信じられないと言った調子でアリアは昂を見つめた。
――自分の痛みは自分の痛み、他人の痛みは他人の痛みだ。
「他人の事が分からないからこそ、分かろうと努力して思いやるんでしょう?」
――それを安易に感じ取りたいってのは…………傲慢が過ぎるな。
「じゃあ、私はどうすればよかったんだよ!」
「リアさんが亡くなって寂しい気持ちは分かります」
 昂は一歩、歩みを寄せる。
「あなたに何がわかるっていうんだ」
 また一歩、一歩。
「それでも、リアさんがアリアさんに遺したモノは無くなりません」
「残す必要なんてなかった、私はあの子がいてくれればそれでよかったのに」
 昂は近づけば近づくほどに知った。本当に嘆きではち切れそうなのは彼女だと。
「リアさんの死の否定は、リアさんのアリアさんへの想いも否定することになるんじゃないでしょうか?」
「そんなの! わかってるんだよ!」
 昂にアルマレグナスが向かう。それをイリスと鈴音が止める。芽衣が迎撃、爆炎の中アリアに歩み寄った。
「ああああ!」
 鈴音は叫びで痛みをかき消した。
 それでも、それでもこの程度の痛みなんてことない。そう思って耐える。
 だって、鈴音も知っているから。
 この世界で一番耐え難い痛み。人の心を歪めてしまう、心を殺せてしまうほどの痛み。
 鈴音も自分の大切な物を失ったことがあった。
 父と母。
 あの日の夜、照らし出される愚神の姿。
 そして。
 胸に開いた大きな傷。彼女の気持ちがわかるのだ。
「……痛い……だけど……みんな痛みを抱えて生きている……だから私は負けられない……!」
 同時に、傷ついても人は立って前を見られることを知ってる、だから鈴音はここで頑張るのだろう、そう輝夜は感じた。
(大事な者の死か……わらわも確かに一度それを経験したが……あの者は自らの手でやったわけではないのがまた辛いのじゃろうな……)
「なんで、何でよ!」
 燃衣がその隙に最接近。そしてアリアの胸ぐらをつかみあげた。
「なんで、あんたは誰の言葉も聞こうとしないんだ」
「…………」
「みんな、あなたの力になりたいのに」
 その時、ドロップゾーンの力が揺らいだ。
「僕があなたに抱く感情。その三つ目は…………《侮蔑》です」
「あなた達にいくら侮蔑されても、私は構わないわ」
 そう燃衣の瞳を真っ向から見据えるアリア。
「そうじゃない。落ち着いて考えて下さい。死者が本当に消え失せるのって、何時でしょう?」

「ボクの答えは……《いし》を受け継ぐ者が消えた時」

 その証拠に燃衣は覚えている、あの透き通る、真っ直ぐな背中。
 迷いがない故に、さみしく、でも追いかけるしかなかった背中。
「貴方の行いはリアさんの《いし》をドブに捨てる行為だ」
 その悲劇をもう見たくはない、繰り返させない、そのために自分は力を得た。
「貴方が成すべきは彼女の意志を継ぐ事だ、彼女の存在を証明する事だ!」
 だからこそ言える。それは間違っているのだと。
 胸を張って言える。
「ボクは分かった事がある! 感情に身を任せる行いは逃げだ! 眼を背ける行いだ! 裁きが、救いが欲しいなら《思考》を続けるんだよ!《冷静》にッ!」

「頭が煮え滾ってる奴は、こんな方法で何にも出来なくなるんだよッ!」
 
 そう告げた瞬間、アリアの両目から涙がこぼれた。
「え!!」
 慌てふためく燃衣。
「ああああああ。アリアさん?」
 驚いて燃衣はアリアを掴みあげていた両手をパッと離す。そして両手を離してしまったためにアリアはへたり込むことになった。
――やれやれセクハラだなスズ。
 それ以上、ネイは何も言わなかった。彼女から殺気が失せたためである。
「僕もアリアさんの気持ちはわかるんです」
 全身にやけどを負いながらもアルマレグナスを仕留めたイリス。炎を振り払いながらイリスは盾を置いてアリアの傍らに膝をおろした。
「どうしようもない……って」
 そしてイリスは優しく彼女に語りかける。
「明確な敵がいるのならばともかく病気や寿命に対してはそう思います。
 でも、そう思いたくないと考えもわかる。でも僕もあなたを煤原さんと同じように侮蔑します」
 直後窓ガラスを破り突入してきたアルマレグナスを燃衣が力技で叩き落とす。
「大切な人を失う痛み。それはとても辛いことです、だから。だから、なんでその痛みを消すとか、共有するとか、いえるんですか?」
 痛みは幸福の裏返し。イリスにとってそれは決して消し去っても踏み込ませてもいけない大事な領域だから。そこに確かに絆が、思い出があった証拠なんだから。
 だから、痛みをなくすことも、共有することも、それをぞんざいに扱っているようにしか見えない。
「そんな軽々しく、どこの誰かもしれない人に共有されてもいい、軽い絆だったんですか?」
「違う、私にとって、それは大切な思い出で」
「苦しいですよね、痛いですよね…………」
 そう優しく声をかけたのは芽衣だった。 
 彼女の背後にはぼろぼろになった鈴音が佇んでいる。
「私も、ずっと痛かったから、わかります。大切な人が亡くなるのも、生きて欲しかった人がいなくなる辛さも、わかります。私の気持ちは、伝わっていますか? 共感、できていますか?」
 そして芽衣は共鳴を解いて、その手を取る。温かかった、血の通った人間の体温。
 それが芽衣には嬉しかった。

「私は…………何も出来ない私が大嫌いです。生きるのも嫌です、嫌でした。ずっとずっと死にたかった、殺して欲しかった。なんで私が生きてるのって、ずっと思ってたから」

「だから殺してほしい気持ちもわかります…………私とアリアさんは違いますけど、でも、アリアさんの痛みや苦しみはわかりますから」

「それでもあなたは何で生きているの?」
 アリアは問いかけた。
「死を願った私ですが。今は幸せだって思えます。重くても苦しくても死にたくても、無色の世界がまた色付くことを知っているから、アリアさんにもいつかその世界に辿り着いて欲しい」
「私は、あの子に何もしてあげられなかった、それでも生きていていいの?」
 その言葉に芽衣は頷いた。
「苦しいなら一緒にいます、後悔も罪も私が聞きます。だから死なないでください。誰かを苦しめないでください。死にたくても私といて、苦しませるなら私を苦しませてください。あなたに死なれたくないんです。生きていて欲しいんです」
 その時、アリアの瞳に感情が宿った。そして告げる。
「私を倒して、私を助けて。この殻を破ることが唯一の方法」
――信じてよいのじゃな?
 直後である窓ガラスをぶち破って、壁を粉砕して、カグヤが入室した。
「どこから出たんですか!」
 驚く燃衣にあっけにとられるアリア。
 その手のチェーンソウを唸らせてアシュラが笑う。
「私を信じて」
 アリアは自分に言葉をかけてくれた全員を見て言った。
「私は罪を上塗りしてしまった。だから、最後のこの痛みは私の痛み。どうかお願いします」
――よかろう。壊すことなら任せておれ、アシュラにとって得意分野じゃ。
「相当硬いですよ」
 鈴音が告げる。だが同時に、院内に残ったアルマレグナス全員が集まってくる。
 アシュラに加勢している暇はなさそうだ。
「ならば手伝おう」
 そう香月も追いついてきた。アルマレグナスへと切っ先を向ける。
「人間とは一つの独立した個体と意識を以て人間たり得るのだ」
 香月は告げた。
「己が己であることこそ生命の本質。己が意識を他者の意識に埋没させて何の生命か! 自我の在処を有耶無耶にして何の人間か!」
 その刃に霊力を通わせ、そして突貫する。
「貴様らが『奴』とどんな関係にあるかなど私は知らん。だが貴様らの存在が私のアイデンティティを蝕んでいるのでな。私が私であるために、貴様らには消えてもらう!」
 直後一際大きな爆炎と共に、チェーンソウの唸る音、そして卵の割れる音が聞こえて。
 ドロップゾーンは消失した。


エピローグ

 結果から言うと、この病院内でルネは観測されなかった。
 だが、しかし。

「……防人流、雷堕脚 護の型」
 
 正護は軽く二メートルは飛び上がる。そして伸ばした足の先から銀の魔弾を放った。
 それはキューブ状の何かに突き刺さると円錐状に展開。
 その円錐に吸い込まれるように、一体となって飛び蹴りを放った。
 浮かび上がるΦの文字。キューブは爆発四散した。
「ごくろうさまねぇ」 
 それを見守っていた沙耶が正護につげる。
「ああ、まぁ固定標的だから苦労はないのだが」
 沙耶は混乱に乗じてこの霊安室までやってきて、キューブの破壊にストップをかけた、理由としては。
「こいつがアリアの愚神がわざわざ持ってきて動かしたものならば、救出しなければならない案件がもしかしたら出てくるだろう。が、もし……元からここにあったとするならば……」
 そう正護の言う通り、このキューブがもともとここにあった可能性があるからだ。
 だから沙耶はそこら辺の資料を幻想蝶にほいほい入れていく。
「……まぁどちらにしろこんなろくでもないもの、壊させてもらうぞ。出現ルートが残ってる限り、面倒な事しか起きんだろうしな」
 そう正護は振り返る、同じようなキューブが少なくとも20。さすがに苦笑いを禁じ得ない。
「うん、この病院怪しすぎるから強制捜査だね」
 そう告げたのは春香。作戦に参加していないと思ったら、こんなところでスパイの真似事である。その手には大きなガラス瓶。ロゴマークの書かれている部分は削り取られている。
「とりあえず、ガデンツァの気配はなかったね、でも気を付けてね、沙耶さんもたぶん攫われる対象になってると思うよ」
 そう春香が告げると沙耶は微笑みを返した。
「あらぁ、むしろ殺される対象じゃないかしら」
「いや、笑ってられないよ? 私じゃ、ガデンツァ止められないんだからさぁ。のんびりされてたら困るよ?」
 そう言いつつ二人は資料集めに奔走した。
 
 最後に、アリアの命に別状はなかったそうだ。ただ、外傷がひどく入院一か月を余儀なくされたが、つきものが落ちたように晴れやかに笑う彼女を見て、一同は安心してその場を去った。




おまけ。今日のerisu。

「ららららら? ららららら?」
 erisuは帰りのヘリの中でずっと『メルト(aa0941hero001)』の隣にいた。最近食べ物を上げると喜ぶことに気が付いたようで御饅頭を持参していた。
(食費が浮くな)
 姫乃はそんなことを漠然と考えながら眠りにつく。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
  • 痛みをぬぐう少女
    北里芽衣aa1416
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271

重体一覧

参加者

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 守護の決意
    輝夜aa0175hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • エージェント
    アシュラaa0535hero002
    英雄|14才|女性|ドレ
  • 絶望へ運ぶ一撃
    黛 香月aa0790
    機械|25才|女性|攻撃
  • 偽りの救済を阻む者
    アウグストゥスaa0790hero001
    英雄|25才|女性|ドレ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 胃袋は宇宙
    メルトaa0941hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 痛みをぬぐう少女
    北里芽衣aa1416
    人間|11才|女性|命中
  • 遊ぶの大好き
    アリス・ドリームイーターaa1416hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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