本部

彗星は死を連れて

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/03/12 20:22

掲示板

オープニング

● 地球外円を回る

 彗星のような愚神が現れた。その愚神は加速を続けている。
「霊力の影響なのかしら、速度に限界が無いみたい」
 遙華は関数電卓片手に速度やらエネルギーやら熱量を算出しながら告げた。
「本来物体は高速に近づくほどに空間自体を歪めるようになるわ。空間に圧縮されて押しつぶされるのが普通なのに……」
 アインシュタインの提唱した相対性理論ではそうなっている、現在ではその理論は覆されていないので、遙華の言っていることは間違いないのだろう。
 だからこそ恐ろしい事実が人類に突きつけられることになる。
「あの物体があのままの速度を維持して亜光速になったとする、空間の壁に押しつぶされて質量が限りなくゼロに近づいたとする、そうなれば地球の隣に小さなブラックホールが形成されることになるわね……」
 そうなればどうなるか……
「ブラックホールとは光すら逃げ出せない本当の闇。さすがにそれは夢物語だと思うけど、早急に対処したいのは本音よ」
 告げると遙華は書き終わった戦闘資料各自に配布する。
「これからどれだけの短い時間であれに対応できるかが鍵よ、私からは翼を用意したわ、これで対抗して頂戴」


● 支給品について。
 まず、翼二種類、戦闘機二種類の中から一つ支給品を選んでもらう。

《戦闘機《メルトシャドウ》シリーズについて》
 基本的に後部座席があり、リンカーを一人乗せることができます。
 後部座席に座っているリンカーは自分の武装を使えるが、振り落されないように注意。
 またリンカーたちはこれに搭乗した場合、自分の武器が使えない(ステータスだけはなぜか武器装備時のものを使用する)
 最高速度は時速700キロ。ただしこれは直線飛行を行った場合で、曲芸飛行しようものなら500キロ程度に落ち込む。

《翼について》
 エネルギーウイングは霊力をエネルギーとして出力する翼の総称だ。
 今回は二種類用意した。
 状況に合わせて選択し使用してほしい。
 また形状は装備者によって大きく変わる。基本的にはオレンジ色の火焔が翼のように広がる。
 ただし、エネルギーウイングは研究段階のため壊れやすい点に注意。
 最高速度は時速250キロ程度、ただし、加速力に秀で複雑な機動をしても速度が落ちにくい。ほぼこの速度を維持できると思ってくれて構わない。


〈メルトシャドウ―プロミネンスー〉

 霊力が通うと表面に色のついた線が浮かび上がる。その軌跡は空に浮かび上がり、雄姿を天空に刻むことだろう。
 旋回能力、瞬間加速度に秀で、回避能力に秀でる。
 装甲が薄く、つむことができる武装も少ない。


装備  
*霊力弾式ガトリング
 霊石を削り出して弾丸としたガトリング、小型でも高い制圧能力と攻撃力を持つ。
 射程は1-35
*プロミネア 
 爆発すると小形の破片をばらまくミサイル。破片は空気に触れると発火し、攻撃にも使えるが、通行妨害や追尾性の攻撃を防ぐ手段にも使える器用な奴。
 射程は1-5
*ブラッシュエッジ 
 翼の前方に真空の刃をはることができ、すれ違いざまに切りつけることができる。ただし機体にわずかにダメージをおう。
 近接武装。

〈メルトシャドウ―メテオ―〉
 やや大型で最高速度と装甲に秀でる。
 小回りがきかず敵に囲まれるとつらいが、圧倒的な遠距離火力を有する。
 機体が重たいため最高速度まで上がるのに時間がかかる。さらに速度も落ちやすい。

装備 

*大口径ガトリング二門
 圧倒的火力のガトリングを二門装備している。首ふり機能がないので角度をつけられないが、前方に敵を捕らえれば負けなしと言える。 
 射程は1-35
*ブラストゲニア
 直線状の敵すべてを薙ぎ払うレーザー兵器。射程が40と長いので味方に当たらないように注意。
*ライトシールド
 周囲に防壁をはることができる。大体の攻撃を防ぐことができるが、三回しか使えない。
 近接武装。


《エネルギーウイング・メギド》

 戦闘を想定し作られており、翼が自動で攻撃、防御の補助を行うように設定されている。
 両攻撃力を+150し、両防御力を+50する。



《エネルギーウイング・フレア》

 もともとレーシング用に開発されていた翼であり。持続力と自在に飛ぶことに秀でている。
 イニシアチブに+3 回避+200


● 作戦説明

 今回の作戦は難しい。
 地球外円を走る愚神を打ち落とさないといけない。
 そのために立てた作戦が下記の通り。
 まずファーストアプローチで敵を減速させないといけないが、これに失敗すると次の日を待たないといけない。
 効果的に遮る方法を考えてほしい。
 そして多少速度が落ちたとしても、加速度に秀でる敵を追いながら攻撃するのは至難の業である。
 敵の速度は音速に迫る勢いである。

解説

目標 愚神ハレーションの撃破。

デクリオ級 ハレーション
 直径30Mほどの球体の愚神、後方に大型エネルギー射出口がありここから霊力を高圧噴射、勢いを生み出している、小回りがきかず、ブレーキ機能もない。
 ただ、その体の周辺には霊力によって歪みが存在し、速度が速ければ早いほどその壁は敵の攻撃を遮断する。
 前方にしか展開されないので後方からの攻撃はダメージが期待できる。
 攻撃手段は球状態では確認できないが、周囲を飛んでいる小型の戦闘機がこちらを迎撃する。合計四機。
 戦闘能力は高くないが回避力が高いので、それなりの装備を用意する必要があるだろう。
 また愚神を庇う性質がある。


**********************PL情報*****

 愚神の速度を落とすことは愚神の大きさから難しくはないと思います。
 ただ、愚神は速度を落とすと人間形態へ変形し。それでも、時速三百キロ程度の速度で地球外円を回り始めます。
 人間形態の戦闘力はすさまじいです。
 身長30Mはありますから。
 攻撃手段は下記の通り。

*ホーミングミサイル
 肩装甲を開き追尾性能のあるミサイルを発射します。射程と命中精度に秀でています。さらに同時に沢山の敵を攻撃できます。 

*ブレストストーム
 胸の赤いV字装甲から光線を打ち出します。とにかく威力が高いのですが。両手を上にあげるという予備動作を必要とします。

*アシッドエッジ
 指先から小型の刃を飛ばします。速度がありますが威力も追尾性能もそれほどありません。ただその攻撃を受けると、傷口が溶解し、塞がらなくなります

************************ここまで******
 

リプレイ

プロローグ

「戦闘機に乗る日が来るとは思いませんでしたよ……」
「操縦は私の指示に従ってくれ、ユリナ」
 ここはグロリア社日本支部旗艦、試作宇宙船『桜花』の格納庫。
 そこで『月鏡 由利菜(aa0873)』及び『リーヴスラシル(aa0873hero001)』は自身が駆る戦闘機を見あげて感嘆の声を上げた。
「地上に落ちてこなくて幸いでしたね」
 その隣に立つのは『辺是 落児(aa0281)』言葉を発したのは『構築の魔女(aa0281hero001)』
 そして構築の魔女は視線を窓の向こうに向ける、まだ遥か遠くにだが、緩やかな弧を描いて球体の愚神が迫るのが見えた。
「なんだろう……あの小惑星の出来損ないは……」
『晴海 嘉久也(aa0780)』はその姿を眺め茫然とつぶやいた。
「このまま加速して上に行くと、ブラックホールになるより先に人工衛星のある軌道に突っ込んで大惨事になるので、早めに叩き潰したい所ですが」
「巨大かつ高速で飛び回る愚神……ねぇ」
 その言葉に頷く『天剣・霞音(aa0672)』『クラーケリス・アクスシード(aa0672hero001)』
「本当に厄介だ」
 そんな彼を励ますように『エスティア ヘレスティス(aa0780hero001)』が微笑みかける。
「しかしこいつどこからライヴスを…………」
『赤城 龍哉(aa0090)』は腕を組んで考え込む。
「この大きさの個体が湧き出るというのも不自然ですわね」
 『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』は告げた。
「先日の待ち伏せといい、仕掛けた奴が居そうな雰囲気だぜ」
 それは先日のスペースシャトルの運用実験の話。初の月面旅行になるはずだったが愚神に邪魔されそれは敵わなかった。
「それにしても。速いほど強度を増す障壁か」
「デブリを弾く目的もありそうですわね」
「とすると、物理耐性寄りか?」
 そう武装を慎重に選ぶ龍哉である。
「大本が月辺りに巣食われてたら嫌な感じだな」
 そんなリンカーたちの不安をよそに霞音はメルトシャドウの整備を再開する。
「ところでこのメルトシャドウシリーズって音速超えれないの?」
 そう開発責任者、つまり遙華とやり取りをしながら整備を続ける霞音。
「敵の性質的に冷戦期の超音速核爆撃機『XB-70』とか。それを迎撃する戦闘機『MiG-25』くらいの最高速欲しいんだけど」
「素材がね、あれば。できるんだけど、エンジン自体はすごくいいものができてるんだけど、素材がね」
「無理? 残念」
「シュヴァルツリッター・アーベントのデータ、反映されているでしょうか……?」
 その通信に由利菜が割り込んだ。
「正直細かいAGWの機能まで反映させるのは難しいわ」
「戦闘機の方は大変そうですね」
 そんな会話を耳でききつつ、晴海は背中にエネルギーウイング・メギドを装備する。
 全武装をメギドのバックアップを得られるように接続し、全ての準備が整うと由利菜の機体、その後部座席に乗った。
 その隣では構築の魔女の機体も準備が完了していた、発射口へと回される。
「赤城さん、よろしくお願いしますね」
 そう告げて操縦桿を握るの構築の魔女。その後部座席に龍哉が乗り込む。
「さて、見た目で侮らないようにしましょうか」
 その時作戦開始時刻を回った、リンカーたちは持ち場についた。
 開かれるハッチ。そしてその向こうに広がる宇宙を見て『イリス・レイバルド(aa0124)』はつぶやいた。
「空は好きだけど……ソラはどうなんだろ?」
 その言葉へインカム越しに遙華が告げた。
「地球の空は大気の層だし、宇宙はむしろ何もない……」
「うーんそういうことじゃないけど。正直ぜんぜん違うよね?」
「ん? どういうこと?」
 遙華がインカムの向こうで首をひねっているのが見えるような反応だった。
「どっちにしろ愚神如きに頭を抑えられるのは我慢できないから、落とすよ」
――では頑張りたまえ。私も力を貸そう。
『アイリス(aa0124hero001)』はそう告げると背中に生えた機械の羽を凛と鳴らしてみせた。

第一章 発進

「また、君に乗ることになるなんてね」
『天城 稜(aa0314)』は使える機体を見せられた時に真っ先にそれを選んだ。
 機体に残る傷がかつて自分の乗った機体のものと一致したからだ。
「また、飛ぼう。今度はこの広い宇宙を」 
 射出されたその機体は翼を大きく広げ、鋼の鷲のように自由に宇宙を羽ばたく。 
――接敵まであと五分……
 オペレーターを務める『リリア フォーゲル(aa0314hero001)』の声に頷くと、稜は汗で滑る操縦桿を握り直した。
「空が蒼い…………綺麗だ…………」
 そして視線を持ち上げる、眼前には迫る壁の様に巨大な愚神。
「地球を守って、必ず全員で地上に帰るよ! 皆!」
 応! 稜の声に反応する勇士たち。
『柳生 沙貴(aa4912)』が駆るプロミネンスが稜の斜め後方についた。その後部座席には『月影 飛翔(aa0224)』が搭乗しているのだが、突如ハッチが開いた。
 そして飛翔は空を感じるように翼を広げる。
「速度差的に最初の迎撃で片をつけるべきだな」
『ルビナス フローリア(aa0224hero001)』はその言葉に頷く。
――再アプローチ時に加速されすぎていると対応できませんしね。
――あの、そろそろ加速したいからハッチ締めてもらっていい?
『ラウラ ブラックモア(aa4912hero001)』が告げた。
 その後きちんと後部座席に収まった飛翔を確認して柳生は告げた。
「つっこむ!」
 そう柳生が加速しようとした瞬間。『桜花』のカタパルトが開く。
 何事かと機体制御も忘れ振り返る柳生。
 それもそのはず、それは機体を射出するための機構ではなく、むしろ荷物を高速で送り届けるためのレールガン。
 そして、その砲塔の中に納まっていたのは『楪 アルト(aa4349)』だから、笑えない。まさか、そこから……。
「……さぁ、てめぇの初陣だぜ。思いっきり暴れるぞピグぅ!!」
 威勢よく『偽極姫Pygmalion(aa4349hero002)』に告げるとPygmalionはそのアイレンズをピカピカ光らせアルトに答えた。
 展開される六枚の羽はPygmalionと同系色のカラーリング。
「電磁ロック接続。体を固定する金具部分は出撃と同時にパージされるわ」
 遙華が告げた。
「システムオールグリーン。射角再計算、完了。マグネットコーティング塗布完了。本当にいいのね?」
「やってくれ! 西大寺!!」
「OK、ロック解除、タイミングはそちらにまかせるから、コントロールを委譲します」
 翼が全力前回の輝きを放つ、軋む機体、砲塔内の熱が上昇する。そして。
「アルト、いっきまーす!!」
 放たれたアルトは弾丸のように、青い尾を引く彗星のように。宇宙を裂く。
 それは一直線に愚神の方へ。
 その後ろを追従するようにしてイリスが翼をはためかせている。
「楽しそうね」
 インカム越しに遙華が告げた。技術提供をしている手前、カメラによって観察しなければならないのだと言っていた。
「違うよ? 空を飛ぶことを楽しんでいるんじゃなくて、あくまで慣れ親しんで扱いやすいからだよ?」
「そうなの?」
――ははは、この子はね。愚神の類を娯楽にする事を嫌っているので、討伐を言い訳にして楽しまないよう自分を戒めているんだよ。
「お、おおおお姉ちゃん!!」
 あわてるイリス。
「あら、そうだったの。でもこういう機会でもないと貸し出せないし……」
 悩む遙華、そんな彼女をおいて戦場は様相を変えていく。
「来ましたね。私たちは彼女の道を切り開く」
 構築の魔女が告げると、全ての武装のロックが解除された。
 ファーストコンタクトは構築の魔女。
 側面から弧を描くように接近、地球の重力を利用した、下方向への加速。
 それに反応した小型機が放たれるが、それは構築の魔女の計算内。弾丸をばらまきアルトの進行方向へ寄せ付けない。
「姿勢制御用のものがあればそれを狙いたいですが……」
 そしてアルトと魔女の機体がすれ違う。
 燐光を暗い空に走らせてアルトが加速する。斜めに地球へと落ちるように一直線に、彗星へと突撃する。
「とまれー!」
 音が響かないはずの宇宙に、甲高い音が響き渡る気がした。
 それほどに勢いのある衝突。翼から噴出する焔が輪のように広がった。
「壁はドリルでうち貫く」
 ねじ切るような螺旋の霊力、ドリルアームがキュラキュラと空間をひも解いて、その防御壁に風穴を開けた。
「そのままお願いします!」
 柳生がインカム越しにそう告げると、柳生の戦闘機が交錯する最中にありったけの弾薬をぶち込んだ。
「ラウラ。吸気制御を操作できるか?」
 柳生が余裕ありげにそうつぶやく。
「出来ないし、何故今?」
「言ってみたかっただけ」 
 その言葉にラウラは溜息をついた。そんな柳生のコックピットに声が響く。
「戦闘機がそっち行ったぞ」
 龍哉がそう叫ぶと同時に、アルトと柳生めがけ小型機が接近。
「迎撃する」
 後部座席の飛翔がそう告げるのと同時に柳生は機体をロール。ミサイルを放ち、その爆発で視線を遮って告げる。
「今ならいけます」
「頼んだ」
 柳生はコックピット内ガラスの蓋で覆われたボタンを指で押す。
 それがビシリとひび割れアラートが鳴り響いた。
「ご武運を、先輩。キャノピ・スルー、ベイル・アウト」
 勢いよく放たれる後部座席、その勢いを利用して飛翔は加速。柳生は スライスバックを行い、高度を速度に変えて敵戦闘機に追撃を仕掛ける。
 それを見て晴海も意を決する。
「わたしも行きます」
「わかった」
 霞音は短く告げると晴海を射出。その背中に格納されていた翼を広げ16式の砲塔を愚神へと向ける。
「これで!」
 アルトがこじ開けた穴へ弾丸を叩き込む晴海。ストレートブロウで正面を叩いて減速を狙う、だがそうはさせないと二人へ小型機が迫った。
 だが。
「懐深く踏み込めば」
――私の歌が良く響くだろう?
 宇宙に響く繊細な音、その波。
 アイリスの歌が霊力に干渉してすべての攻撃を引きつける。
「あれはなんというか……ボク的には飛び道具に見えるんだよね」
――まあ、飛行する球体だからねぇ。少々大きいようだが。
「心眼でどうにかなるような気もしなくはないような?」
――まあ、どっちにしろ持ってきていないけどねぇ。仮にあっても少々大きすぎる気もするが。
 それを好機と見た龍哉も、構築の魔女の機体から射出され愚神へと接近。フリーガーの火力でその勢いを削ごうと乱れうつ。
「皆、タイミングを合わせろ。一斉攻撃だ!」
「ああ!」
 飛翔は空中で宙返り、その足で小型機を捉え吹き飛ばすと振り返り龍哉にタイミングを合わせてフリーガーのトリガーを引いた。
 その爆炎に紛れて飛翔は球体の背面を取る、エネルギーが噴出しているのが見える。エンジンは合計六機。
「ダメージはなくとも速度を落せればいい」
――抜けた瞬間に攻撃を。チャンスは一度きりと思われます。
 ルビナスが告げると、飛翔は返事を返す前にその噴出口を攻撃。
「一部でも壊れればバランスが取れないはずだ。それで速度は落ちる」
 球体の一部から爆炎が上がった、さらにもう一つ。
 見れば龍哉が直接そのエンジン部分に刃を突き刺している。
 そしていったんその場を離れると愚神表面が爆発した。
――たーまやー。
 珍しくおちゃめなヴァルトラウテ。
「それは最後にしろ」
 しかしそんなおちゃめは真面目モードの龍哉に一蹴されてしまった。

第二章 戦闘

「Engage from six o'clock.」
 そう戦場を俯瞰して眺めていたのは稜である。暗い空に逢ってもその目は光を失うことはない。敵の動きがよくわかった。
「ハレーションの前に固まってるひとったちにも向かってる、構築の魔女さん、対処できる?」
 そんな彼めがけ一機、戦闘機が迫る。
「一体は僕がやる」
 その敵機めがけてダイブ。緩降下しながら後部推進器を機関砲で牽制射撃。衝突をロールして回避すると機体をひねって反転。速度を位置エネルギーに変え、シールドを張りながら上昇。
 後ろを取った。
 しかしその後方から別の機体が迫る。
「大人気だな、僕」
 稜はタイミングを計る、冷や汗が滲む。だがうまくいくという確信があった。
 敵の攻撃がギリギリ届くかという瞬間、稜の手が、足が自分でも驚くほどスムーズに動く。
「答えてくれ相棒」
 バレルロール・ラダーを踏み込むと同時に、フットペダルとは逆の方向に操縦桿を倒す。
 操縦桿が震え、機体が悲鳴を上げているのが伝わってきた。
「いけ!」
 そして稜は機体を水平に保つ横滑りで攻撃を回避、そしていったん離脱。
 その際に稜はハレーションを振り返った。
 減速しつつある彗星。その周囲を飛び交う無数の光。速度を落とすことが許されない高速戦闘をリンカーたちは展開している。
 先ず構築の魔女、その背後についた敵戦闘機を振り切るために速度を上げるが、なかなか振りきれない。
「なかなか、やりますね。ではこれではどうでしょうか」
 次の瞬間構築の魔女は急上昇。その結果速度が落ち、背後の戦闘機との距離が縮まった。
 だが、その動きに反応できなかった戦闘機は逆に構築の魔女を追い抜いてしまう。ついでメテオに格納されていたビームカノンが展開される。
 ブラストゲニアである。
「これなら回避もままならないでしょう」
 直後機体を反転、砲塔を敵に向け、照射。その強大な一撃は戦闘機ごとハレーションに突き刺さる。
「タイミングを合わせるよ」
 霞音は告げて同じ敵めがけブラストゲニアを放つ。直後戦闘機一体が爆発四散。これで残り三機となった。
 しかしその隙を取られて敵機に背後を許してしまう霞音。
「ああもう、小回りがきかない割に加速性能もイマイチで一撃離脱戦法に微妙に使い難いっ……!」
「各機へ通達! メテオ1、これよりシールドを展開します!」
 だが由利菜の機体がシールドをはり盾となる。
「あ! ありがとう」
 その言葉にコックピット内で手を振る由利菜である。
――とは言え今はある物でどうにかするしか無いですね……後でスタッフに改良要望出しときますよ。
 そして再加速、ハレーションへと突撃する。
 その動きに合わせて由利菜の機体が近づいた。
――銃器は苦手だが……四の五の言っていられないな。
 トリガーを引く由利菜、二門積まれた高威力ガトリングが苛烈に火を噴く。
「ターゲット、コード『ハレーション』! ファイア!!」
 その砲撃が加速装置たる噴出口を直撃、その結果ハレーションの表面で大爆発が起きた。
 それをアルトはのんびりと眺めていた。その右手には小型戦闘機を捉え。右手のドリルでズタズタにしている。
「あと二機!」
 アルトは無力化したそれを放り捨てると加速。Pygmalionがアイレンズを光らせた。
 直後最大速度でアルトはハレーションに突撃、そのドリルでエンジンを穿つ。
 直後大爆発。 
 衝撃で軌道上からそれるハレーション。
「やりましたか?」
 晴海が問いかける。しかしその直後リンカーたちは信じられないものを目の当たりにする。
 ハレーションの滑らかな表面に走る線。そしてハレーションが裂けて。軽快な機械音と共に変形していく。
「形が……変わった……」
 霞音が茫然とつぶやく。
 飛翔は歯噛みした。
「彗星じゃなくてロボットだったか」
「まさか、変型するとは驚きですね」
 まさかの展開にさすがの構築の魔女もびっくりである。
――変形なのか変身なのか何とも言えませんが昔ああいうの見た気がしますね。記憶がはっきりしないので曖昧ですが。
 クラーケリスがそう告げる。
「後でその話聞かせてもらいたいけど今は目の前の敵に集中しないと……」
――人型なら攻撃予想がつきます。こちらの方が戦い易いかと」
 ルビナスが告げると構築の魔女も頷いた。
「手や足、人間が攻撃に使用する場所には特に警戒を」
 案の定鉄の巨人と化した愚神はその巨大な腕を伸ばしてきた。
「やらせませんよ」
 最初に動いたのは晴海だった、16式60mm携行型速射砲を壁のような手のひらにうち放つ。
 そしてリンカーたちは散開。ハレーションを取り囲むように展開する。
「……まるでロボットアニメに出そうな姿ですね……」
 由利菜は上空で反転、雨のように弾丸を浴びせる。
――ミサイル位は搭載していそうだ……赤い胸部装甲にも仕掛けがあるかもな。
 その時案の定である、肩装甲が音を立ててひらき、無数のミサイルが周囲に放たれた。
「飽和攻撃です」
――外部心眼プログラムを起動する。各機、突破口を!
 ミサイルを撃ち落としていくリンカーたち。
 対して龍哉は勇敢にも黒潮のワイヤーを愚神に撃ち込み、本体に取り付いた。絶対離れないように、振り回されても攻撃ができるように。
 そして背後に回り込み機動力を奪うべく攻撃を仕掛ける。
「二度目の巨人狩りと行くか!」
「数が……多い」
 そのミサイルの嵐にカチューシャで対抗するアルト。しかし物量は相手が上だった。
 飛翔もミサイルを後方で纏め、フリーガーで全て打ち落とす。
 その飛翔に飛来する霊力の刃。アシッドエッジ。それを飛翔は器用に刃で捌く。
「この機体の速度なら」
 柳生は全力でエンジンを吹かせた、暗い空に霊力の光をほとばしらせて、上へ下へと機体を揺らす。
「不味い。このままだと」
 その攻撃を稜がシールドを張って防ぐ。
「大丈夫?」
「助かった」
 交差する二つの機体。反転、ハレーションに向かう柳生。
「ターンピックが冴えないな」
「ターンピックなんて無いでしょ」
 ラウラが無感情に告げた。
「言ってみたかっただ」
「黙れ」
 その冷たい言葉にも負けず柳生はセリフを続ける。
「プロミネンスで勝てるさ。この機体は僕が基礎設計をして、ラウラが整備したんだから」
「もういい」
「言ってみたかっ……」
「いいっつってもう!」
 直後ハレーションと交差しながら射撃。そして後ろへと駆け抜ける。
「数が多いね」
 イリスはそう告げるとミサイルの海の中へ飛び込む。
 全力で防御の構え。そしてアイリスの歌が響くと、イリスにミサイルが殺到した。
 直後宇宙に紅い花が咲く。
「イリスさん!!」
 構築の魔女は叫んだ、しかしイリスは健在、翼にも傷は無い。
「だが、これで」
「突破口ができました」
 その隙に方へ張り付いていたのは龍哉と晴海。その渾身の一撃を装填が終わった肩ミサイルポットに叩きつける。
 直後誘爆。飛び退く二人。
「これでミサイルはうてねぇだろ」
――た、龍哉前ですわ!
 ヴァルトラウテが叫んだ直後、ハレーションの腕が伸びた、そしてその腕からアシッドエッジがはなたれようとした瞬間。
 屈折し分散されたブラストゲニアが愚神の腕部を直撃した。
 構築の魔女である。
「これでほとんどの武装を奪いました」
 だが、まだハレーションは奥の手を隠している。
 両腕をおもむろに上げるハレーション。
「うわ、高エネルギー反応。胸の部分に注意して」
 稜が告げる。
「あの動きは…………」
 飛翔は引きつった表情で告げる、柳生はその言葉に同意した。
「…………あの見た目であの構えってどう見てもじゃないか! 全機回避!」
「黒鉄の城的なら正面から退避だ!」
 直後放たれた超熱光線。まともに受ければひとたまりもないだろう。
 しかし避けるにはその攻撃の速度が速すぎた。
 間に合わない、そう思った矢先。
「うぉぉぉぉ! 皆を、やらせない!」
 稜の機体が間に入った。
「機体のシールドと、ライブスミラー、二重だとどうなるかな!」
 直後反射された一部のダメージを胸のプレートに受けのけぞるハレーション。
「今です!」
 由利菜が叫んだ。
「これは……一点集中で破るしかないな」
 残った弾薬を確認ありったけの攻撃力をもってして、側面から愚神を叩く。
「関節の継ぎ目や内蔵火器など、防御の弱そうな所を狙えないでしょうか?」
「やってみよう」
 そう答えたのは飛翔。
 ロケットアンカーを射出し愚神と自身を繋ぐ。そしてその翼に全力の霊力を注いだ。
 急加速。そして。
「これで決める! 最大加速と最大威力の一撃だ」
トップギアからチャージラッシュで高め、メギド最大加速からのストレートブロー。
「光の刃を飛ばすということは」
――巨大な刀身を振り回す事と同義だろう。
 イリスは黄金色の霊力を刃に集め、突貫。
「煌翼刃・螺旋槍!」
 二人の攻撃は胸のプレートを撃ち砕いた。
「魔法の方が通りやすいみたいだな凱謳!」
《Yes,master.Load cartridge & force-converter ignition!!》
 目覚めるプログラム、起動するシステム。鍔元のディスクユニットが回転し刀身が黄金の輝きを帯びる
「おらああああ!」
 そして背後から一閃。背部のユニットが爆発しハレーションは前に押し出される。
 それを待っていたのは由利菜。
――やはり……接近戦をやるしかない。
「至近距離からガトリング連射!」
 駆け抜けざまにガトリングを乱射。
――メテオの剛性を活かす! フィールドを張ったまま機体を突撃させる!」
「逃がさない……! 零距離ブラストゲニア、発射!!」」
 そのビームは装甲を食い破り貫通。
「さぁ……あたしの歌ーぜんぶーをぉおおお! 聴効きやがれぇぇぇええ!! ……ガルディア、一閃!!」
 アルト渾身の一撃。その両サイドから挟み込むように放たれた衝撃波は体内で衝突、それを吸収しきれなかったハレーションの肉体は内側から砕けた。
 その破片が数多の流星となって地球へ降り注ぐ。
「って! あたしたちも引き寄せられてるぞ!」
 攻撃に夢中になっていたリンカーたちは地球の重力から逃れられなくなっていた。
「またか!」
 龍哉は叫ぶ。
「安心して、大気圏に突入できるようにもしてあるから」
 そう遙華が穏やかに告げた。


エピローグ

 アルトは長距離落下に慣れ空中で暇を持て余していた。
「ったく、ピアニストがやる仕事じゃねーだろーがよ……ま、初陣お疲れさん。綺麗に洗ってやっからな」
 アイレンズが光り、喜んでいるのがわかった。
 その長い墜落時間、霞音とクラーケリスは遙華とずっと話をしていた。
「軽戦闘機型のプロミネンスはドックファイト向きでいいのですが、重戦闘機型のメテオが加速性能悪いのどうにかしてくれませんか?一撃離脱に使い難いと私のリンカーが言っていましたので改良を求めます」
 しかし遙華ははたりと会話を止める、イリスが空を睨んで身動きひとつせずにいたからだ。
 だから遙華はイリスに告げた。
「そのまま漂っていてもいいわよイリス、今から少しの間、イリスが遊びたいから貸したことにしといてあげるわ」
「あ、あの……」
 どういっていいか分からずにイリスは言葉を詰まらせる。
 代わりに遙華は告げた。
「見てごらんなさい、ほら。あなた達が守った空よ」 

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 希望の守り人
    天剣・霞音aa0672
    機械|11才|?|防御
  • エージェント
    クラーケリス・アクスシードaa0672hero001
    英雄|20才|?|バト
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 深緑の護り手
    偽極姫Pygmalionaa4349hero002
    英雄|6才|?|ドレ
  • 戦い始めた者たちへ
    柳生 沙貴aa4912
    獣人|18才|男性|攻撃
  • エージェント
    ラウラ ブラックモアaa4912hero001
    英雄|18才|女性|シャド
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