本部

ルクスよ、ほとばしれ!

一 一

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/02/07 12:25

掲示板

オープニング

●注意:ルックスではない
「はーっはっはっはぁ! 何とも嘆かわしい! 貴様らのような軟弱者がH.O.P.E.を名乗るとは、片腹痛いわぁ!!」
「……く、くそ」
「な、なんて強さなんだ……」
 ボディビルダーのようなたくましくも美しい肉体を惜しげもなく披露し、多くのエージェントが膝をつく様子を睥睨するのは、愚神。腕を組んで大胸筋をピクピクさせつつ、高らかに勝利宣言を上げる笑い声に歯噛みし、エージェントたちは拳を強く握りしめた。
 決して、油断などしていなかった。
 彼らはとある劇場に出現したドロップゾーンを破壊すべく愚神の討伐任務を受け、出撃したエージェントたちだった。
 敵戦力は不明だったが、経験の浅い者も含め、数十人以上を投入した。その内半数以上は熟練のエージェントであり、十分に対処可能な戦力を送ったはずだった。
 しかし、結果は惨敗。
 この愚神と、愚神が展開したドロップゾーンの前では、何も通用しなかった。
 剣も、斧も、弓も、銃も、魔法も、スキルも、鍛錬も、連携も、作戦も、何もかも。
 信じられないことに、誰1人として愚神に傷1つ負わせることが出来なかったのだ。
 すでに撤退の余力さえ残らず、エージェントたちは何も理解できないまま一方的に蹂躙された。
 もう、誰1人としてこの愚神にあらがう力など、残っていない。
「いや、まだだ、っ!」
「そうだ、まだ、終わってない、っ!」
 そんな中、震える体を何とか支え、立ち上がったエージェントがいた。2人ともまだまだ駆け出しのエージェントであり、本来なら意識を失っていてもおかしくないダメージで、なお、立ち上がる。
「ほぉ? なかなか見所のあるメンズだな?」
 愚神は両手を後頭部に回して肘を高く上げ、ブーメラン黒ビキニしか纏わぬ腰を前後に高速で振る。
 そして、黒光りした肉体と対比しているように輝く真っ白な歯が、2人のエージェントを照らした。
「いいだろう、もう1度チャンスをやる! さぁ、かかってこい!!」
 そして愚神は両手両足を大きく広げ、エージェントたちを迎え撃った!
「高校時代、ずっとサッカー部で補欠だった俺は1度だけ試合に出させてもらって1アシストしたあああっ!!」
「そこはゴールを決めて監督やレギュラーに実力を認めさせ、キラリと光る青春の汗を共有するところだ! 1アシストでは活躍が弱い!!」
「ぎゃあああっ!!」
 しかし、現実は非情だった。
「めっちゃかわいい英雄と誓約を交わして人生勝ち組だと思ったら、英雄が俺の親友に惚れて恋愛相談に乗っているうううっ!!」
「惚れた女と親友のために身を引く男気は買うが、表情が未練たらしい! 心から2人を祝福出来るようになってから出直してこい!!」
「ぐはあっ!?」
 己の過去を叫びながら武器を構えた2人のエージェントは、愚神からの強烈なダメ出しとブローをもらってあえなく撃沈。
 奇跡の逆転劇は、起こらなかった。
「ダメだダメだ、全くダメだぁ! その程度の『ルクス※1』では、私の『ルクス』を超えることなど出来ないぞぉ!!」
 ムッキィ! と全身の筋肉を隆起させた愚神は、全滅したエージェントたちへ吐き捨てた。
 深いダメージで薄れゆく意識の中、エージェントたちは高笑いする愚神を見上げ、全く同じことを考えていた。
(『ルクス』って、結局なんなんだ……?)

●緊急事態発生!
「これから皆さんには、正体不明のドロップゾーンの主を討伐してもらいます。こちら、かなりの危険度があるドロップゾーンであることが確認されていますので、最大限の準備をして挑んでください」
 召集を受けたエージェントたちを前に、神妙な面もちで職員が口を開いた。
「場所は都内某所の劇場です。規模自体はそう大きくなく建物全体を覆う程度ですが、愚神側の戦力や能力などは一切不明。すでに1度、数十人規模で愚神討伐隊が組まれたのですが、いまだ誰1人として戻ってきてはいません」
 つまり、そのドロップゾーンには数十人のエージェントを撃破できるだけの、凄絶な戦力を有していることになる。それだけで、職員の雰囲気が脅しではないと伝わってくる。
「少しでもドロップゾーン内部の情報が得られればよかったのですが、どうやら強力なライヴスが外部との接触を遮断しているらしく、突入した先遣隊のメンバーからの連絡はありませんでした。おそらく、通信機器はすべて使い物にならなくなるでしょう」
 自然と誰かから舌打ちがこぼれる。わかっていることは、数十人のエージェントが消息を絶つほどの危険度である、ということだけ。
 それを、今集められたエージェントたちだけで攻略しなければならない。先遣隊よりも人数が少ない、自分たちだけで。
「かなりの無茶を言っているのは、こちらも重々承知しております。しかし、そのドロップゾーンを放置してしまえば、愚神はさらに規模と被害を拡大させていくのは明白です。が、まだ発展途上の今であれば、叩けるチャンスは残っているはずです」
 そう、引くわけにはいかない。
 見逃せば愚神はさらに力をつけ、いずれ都市そのものを飲み込んでしまうかもしれない。
 そうなれば愚神も、こちらが討伐できないほどに成長していることだろう。
 でも、今ならきっと、まだ間に合う!
「時間に猶予はありません! 一刻も早く、危険なドロップゾーンを消し去ってください!!」
 職員の言葉を聞き届け、エージェントたちは一斉に立ち上がった。
 想像だにしない敵が待ち受けているとも知らずに。

※1…明るさの単位。より厳密には『対象が照らされている明るさの度合い』と定義され、『照度』とも言う。『カンデラ※2』との誤用に注意。
※2…明るさの単位。より厳密には『光源から発せられる光の強さ』と定義され、『光度』とも言う。

解説

●目標
 愚神の討伐・ドロップゾーンの消滅
 先遣隊の救出

●登場(PL情報)
 ルーメン…ケントゥリオ級愚神。黒ビキニ1丁でボディビルダーのように隆起した巨大な筋肉と、筋肉を美しく見せる黒く日焼けした肌を持ち、光を反射させるため歯をすべてインプラントに差し替えた『肉体美ルクス』の使い手。
 並の『ルクス』では弾き返されてしまうほど全身を鍛え上げた『ルクス』は、もはや存在そのものが凶器と言える。特殊なルールを敷くドロップゾーンを形成し、数十名のエージェントを無傷で倒した。

 スキル
・『ルクス』耐性…1度浴びた『ルクス』への耐性を得る。ただし、内容が全く同一のものだけにしか耐性は働かない。

●状況
 場所は都内某所の小劇場。建物全体がドロップゾーンに覆われ、内部との通信は一切遮断される。1度足を踏み入れれば、ゾーンルーラーを倒すまで脱出は不可能。

(以下、PL情報
 ゾーンルール
・『ルクス』至上世界…あらゆる言動を愚神特有の概念『ルクス』に変換し、対象へ反映させる。『ルクス』の蓄積量に応じて対象は弱体化し、ライヴスが奪われる。ゾーンルーラーにも効果は適用。この空間にいる間、『ルクス』が適用されない行動はほぼ無効化。

 愚神は舞台の上でスポットライトを全身に浴びながら、腰を振りつつエージェントたちを待ち構える。配下はいない。行われるのは通常戦闘ではなく、通称『ルクス』勝負。エージェントたちが全員舞台上へ移動してから戦闘(?)開始。
 プレイングに書かれた愚神へのアクションすべてが『ルクス』として変換される。主体は能力者・英雄を問わず、1PCにいくつ行動させても構わないが、非共鳴だとすぐに『過ルクス状態』となり、行動不能となる危険がある。

 リプレイでは『ルクス』勝負のみを描写し、実際の戦闘シーンは全カットされます)

リプレイ

●ご対面
 現場に到着したエージェントたちはドロップゾーンの前に集まった。
「……タフな戦いになりそうね」
『情報が全く無いのが気がかりだな。どんな相手が待っていることやら』
 梶木 千尋(aa4353)と共鳴する豪徳寺 神楽(aa4353hero002)は未知数な相手との戦いを前に、緊張の色を濃くする。
 準備を終えたエージェントたちは覚悟を決め、ドロップゾーンへと突入。
「はーっはっはっはぁ! また新たな住人が訪れたようだな、『ルクス』が支配する世界へ!!」
 瞬間、めっちゃ濃い見た目の愚神がポージングと腰振りでお出迎え。舞台前へ転移させられたらしく、エージェントたちをさりげなくこの世界の住人とした台詞回しからも、ある意味狡猾だ。
「……まず我らを汝の同類へ引き込むな。不愉快だ」
 案の定、エスティア ヘレスティス(aa0780hero001)と共鳴した晴海 嘉久也(aa0780)が真っ先に指摘し、苦言を呈した。
「おー! ステージだー! きらきらしてるー!!」
『っはー……』
 一方、まいだ(aa0122)は無邪気に舞台を見上げ、共鳴する獅子道 黎焔(aa0122hero001)は呆れたため息をこぼす。
『ハッ、たしかにこいつはタフな戦いだな』
「……わたし、すでに帰りたいわ。ああいうマッチョ、嫌いなのよ」
 出会い頭に直視した愚神に神楽は鼻で笑い、千尋は生理的嫌悪で表情をゆがめる。
「……ん、るくす?」
『明るさの単位の一つよ、光源に照らされた場所の照度を表す単位ね』
「……ん、意味不明」
 佐藤 咲雪(aa0040)は『ルクス』という言葉に反応し、一度首を傾げる。すかさずアリス(aa0040hero001)が、あまり聞き慣れない『ルクス』という単位に説明を加えるも、結局愚神の発言は不明のまま。
「ルクス……?」
『こちらの言葉で、明るさの単位だな』
「……それが何だと言うのよ?」
『……。私に聞くな』
 こちらでも、鬼灯 佐千子(aa2526)とリタ(aa2526hero001)が似たような会話を展開していた。
「『ルクス』が支配する世界、と言ったな? 汝、このドロップゾーンに何を仕組んだ?」
 仲間が困惑する中、嘉久也が目を細める。『ルクス』はともかくここがドロップゾーンであり、警戒すべき状況に変わりはない。
「そうか、貴様らは『ルクス』初心者か! ならば私が『ルクス』について教えてやろう!」
 初心者って何?
 えー、愚神の説明によると『輝く』ことがすべてらしい。以上。
「何言ってんだこいつ?」
『輝き、とな……!?』
 さっぱりわからなかった瑠璃宮 明華(aa4795)は、早速辛辣な心境を吐露する。だが共鳴したカルラ(aa4795hero001)の琴線には触れたらしく、大きな反応を見せた。
『とりあえずだ、まいだ。あのギラギラしたやつよりルクス? すりゃあいいんだってよ』
「ギラギラじゃないよ? ムキムキだよ? まっちょー!! ……れいえん、ルクスってなに?」
 はしゃぐまいだへ説明をした黎焔は、唐突にきた素の疑問に一瞬言葉を失う。
『え? あー……、っと、輝けばいいんだよ輝けばぁ!?』
「お、おおー!?」
 黎焔がやけっぱちに叫ぶと、まいだは手をぱちぱちさせて感心した。
「『輝き』という感性の戦いを行う……審美の勝負という事かね。然らば、請け合おう」
『なるほど、ハリュプ神の威光を彼に伝えればよいのですね』
 そんな中、常日頃から美しいものを追求するティテオロス・ツァッハルラート(aa0105)はすぐに理解を示した。共鳴するディエドラ・マニュー(aa0105hero001)も意味をかみ砕き、自身の行動指針を決めたようだ。順応力高ぇ。
「彼、あの体で喋る方がお好きなようですね。不思議不思議」
『ふうむ、なんと面妖な怪物よ。しかし、何故あの体躯で肉弾戦を仕掛けて来んのだ?』
 頬に手を当てる雪峰 楓(aa2427)と、侍であり兵学者の桜宮 飛鳥(aa2427hero001)は視点が違う。勝手にしゃべり続ける饒舌なマッチョに、疑問は深まるばかり。
『筋肉モリモリマッチョマンの変態と繰り広げる、ユニーク且つエキサイティングなトークバトルがボク達のハートをこれ以上なくバーニングさせ……』
「一言で」
『めっちゃ面白そうッス、マスター!』
 いつまでもしゃべりそうだったストゥルトゥス(aa1428hero001)に歯止めをかけたニウェウス・アーラ(aa1428)は、状況を完全に面白がっている相棒に軽く脱力した。
「理解したな? では、この『ルクス』師範代たる『ルーメン』と『ルクス』勝負だ!」

●輝け!
「付き合っていられないわ。こんな仕事、さっさと終わらせましょう」
『同感だ』
 最初に動いたのは佐千子。リタの言葉に背を押され、Pride of foolsでルーメンへ発砲。至近距離戦闘を前提とした設計は頑丈さに現れ、頼もしい重さは手になじむ。
「勇ましいガールだ」
 しかし、弾丸はすべてルーメンの筋肉に弾かれ、ダメージが通らない。
『実弾では厳しいらしい』
「それなら、これで!」
 冷静に結果を考察するリタに応え、次に佐千子が取り出したのは射的銃「ルフトシュトゥルム」。放たれる不可視の銃弾は、物理的な守りをすり抜ける。
「しかし、悲しいかな――」
『無傷か。だが、弱点はあるはずだ』
「あぶり出す!」
 リタの言葉でさらに装備を変え、佐千子は火竜の銃口を向ける。彼女の持つ中で最も『当てる』ことに優れた名銃が、名前の通りに火を噴いた。
「銃火器を含め『武器ルクス』は――」
『動じない……、散弾では威力が落ちるか?』
「だったら、ピンポイントで急所にぶち込む!」
 それでも平然とするルーメンに、リタの考察を踏まえ佐千子が抱えたのはAMR「アポローンFL」。長射程と高精度と威力を備えた良銃で、両足と両腕で強すぎる反動を殺し、ルーメンの口腔を穿つ。
「ふでに『耐性』があうのだよ」
 が、ルーメンは銃弾をキラリと光るインプラントで噛み止めた。封殺された佐千子は、苛立ち混じりに舌打ちをこぼす。
「さぁ、次は誰だ?」
「あのね! まいだかがやくとか、よくわかんないけどね! なんかぱぁあああああっ! ってするの!? じゃあ、ぱぁあああああっ! って、する!!」
 弾丸をペッ! と吐き出したルーメンに近づいたのはまいだ。笑顔全開でルーメンの前に立ち、「ぱぁああああああっ!!」とか「るくすー!!」とか直接言いながら、精一杯ルーメンの真似をする。
『師範代っつうくらいだから、そいつを真似するのは効果的、だよな?』
 黎焔はまいだの無邪気な行動を止めず見守るが、黎焔自身も正解がわからないので首をひねるしかない。
「……次ぃ!」
 ルーメン、これはスルー。ちょっとだけ眉間にしわを寄せると、まいだを視界から外した。
『マスター、何か言ってみて。嬉しかった事とかー』
「んーっと……近所に、凄く美味しい……ラーメン屋さんができた、よ! えっと、美味しかった!」
 次に挙手したのはニウェウス。何が作用するか不明なため、ストゥルトゥスに促されるまま最近のエピソードを発表する。
「それはただのお店紹介だ! 太っちょな友人との女子会で披露しろ!」
 しかし、ルーメンから偏見混じりのダメ出しを食らう。
「あら、突っ込みが成立するとダメージが入らないみたいですね。強引に突っ込んだら、どうなるんでしょう? あと、相手の突っ込みに突っ込み返すとか」
『……』
 一歩引いて観察する楓が『ルクス』への考察を加えるが、飛鳥は思う。自分たちは今、何をやらされているのだろうか? と。
「そういう汝こそどうなのだ?」
 楓の考察を耳にしたのか、次に口を開いた嘉久也がルーメンへ鋭い眼光を浴びせた。
「このドロップゾーンが『ルクス』とやらに支配されているのは、鬼灯との攻防で理解した。だが、汝が何も小細工をしていない保証はない」
 そして、嘉久也はNAGATOの柄頭に両手をつき、切っ先を地面へ突き刺した。
「汝が誇るその肉体は、汝が理想とする虚像ではないのか? 特異なルール下で常勝の鎧を纏う臆病者であれば、汝は無価値であり醜い。汝以外の愚神や従魔が存在しないのも、汝の浅ましい実像を表しているのだろう? そこに、汝の言う『輝き』などあるのか?」
 紅蓮の瞳と神性のオーラが揺らめき、武術百般を操る鋼の肉体を見せつけ、嘉久也はルーメンへ迫った。
「私の『肉体美ルクス』など、まだまだ筋トレで流す汗の照り返しに過ぎない。私の理想とは、筋肉で形成された太陽そのものだ!」
 しかし、ルーメンは怯まず反論。一応、肉体は自前らしい。ってか、汗の照り返しに筋肉の太陽って何だよ。
「それに私は孤独ではなく孤高なのだ! 『ルクス』世界を創造した瞬間、私の『ルクス』で配下たちは消し飛んだのでな!」
 要するに自業自得だそうです。
「私を貶めたかったようだが、無駄だ。だが、貴様の『実戦型肉体美ルクス』は素晴らしいぞ!」
 最後にルーメンは、嘉久也の肉体をなめ回すように見て評価を下した。もちろん、嘉久也は癇に障って表情がゆがむ。
「――なるほど。つまりその姿こそあなたが最も誇りを持つ姿ということね。全く趣味が合わないけれど、そのあり方は認めましょう」
『ふ、貴様も千尋と同じド阿呆なのだな。何、小賢しい輩より阿呆のほうが好ましい』
「うるさいわ、神楽」
 胸を張るルーメンに多少の共感を覚え、千尋が前に出た。神楽の小言にはしっかり突っ込んだが。
「自分自身がまだまだ頼りないなんて、自分でもわかりきっていること。それでもわたしは、あえて華々しく戦うことを望む。そして、怯まずに脚光を浴びてみせるの。それがわたしの生き様だから」
 語るのは、自分が誇る自分のあり方。千尋にとっては内面がどうだろうと、保ち続ける不敵さが己の拠り所である。
「最近じゃCMにだって出演したのよ。でも、それで満足なんてしていない。周囲の視線を、いずれ独り占めにしてやるわ」
 華美さ派手さを重んじ、いつでも着飾り華であれ。そんな生き方を信じ貫くのだと、千尋は堂々と宣言した。
「理想を追う強い精神力と、理想へ近づける行動力! いい『プライドゥクス』だ!」
 すべて聞き終えたルーメンはふんぞり返った。何故に?
「この世に輝く物と言えば、自然に満ちる命でしょう」
 次に前へ出たのは、共鳴を解いたディエドラ。手には何の変哲もない収穫期のパセリが植えられた鉢植えがあり、そっと地面へ置く。
「そして、その恵みをお与えになる豊穣神ハルュプこそ、真に光輝たる物であるのです」
 両手を広げ、己が信仰する神と、神から与えられた自然の恵みを説くディエドラ。
「自ら鍛えたという、その筋肉は見事です。しかしながら、自然の獣はそのような不自然な筋肉も牙も持たない物。見なさい、この自然に育まれた肉体から発する輝きを」
 そしてルーメンの肉体を自然に反すると釘も刺し、ディエドラはばいん! と豊穣神の巫女たるボディを見せつけた。
「ぬぅ、『信仰ルクス』に『ボインルクス』を合わせるとは、考えたな!」
 怯むルーメン。とりあえず有効打だったようです。
「……めんど……くさい。帰る」
 そしてとうとう、一連のやりとりを黙って見ていた咲雪が我慢の限界を迎えた。極度のめんどくさがりな咲雪にしては頑張った方だし、帰りたい気持ちも痛いほど分かるが、苦労人な相棒のロボ娘・アリスが黙ってはいない。
『お仕事しないと、ダメよ?』
「……めんどくさい、やだ」
 共鳴状態でなければ脳天チョップ必至なアリスの制止に、それでも咲雪は突っぱねる。バイト感覚で任務をこなす咲雪にとって、いつにも増して面倒臭いこの場にいるだけで、常に0のやる気ケージがマイナスへ転落するのは不可避だった。
『お仕事しないとお金が入らないわ。お風呂も入れなくなるわよ?』
「それはやだ……ん、しかたない」
 しかし、そこは身内であるアリスが見事な軌道修正を行う。お風呂好きという弱点を突かれ、渋々、本当に渋々、咲雪はその場にとどまった。
「『風呂好(ず)クス』に『止めルクス』の合わせ技だが、持ち味の『無気力ス』が相殺されたぞ!」
 え? あれも採点基準に入ってんの? っつか名前適当じゃね?
『……おい待て、なぜ今のが効いているんだ?』
 全員の疑問を、飛鳥が代弁してくれた。ありがとう。
「てめぇも仕事しろ! せめて『ルクス』勝負とやらに行ってこい! 得意分野だろうが!」
 戦場が常に混迷を極める中、1人気絶していた先遣隊のメンバーを避難させていた明華が、舞台をきらきらした目で見続けるだけのカルラへ怒声を上げた。
「『ルクス』、か。よきかなよきかな。さあ、もっと輝きを見せておくれ!!」
「お前どっちの味方だ!?」
 しかし、返事はからころと笑うカルラの楽しそうな声。カルラの中では、すでに最優先事項が依頼内容から大幅にズレているらしい。
「そこ! 仲間のカバーに入る『友愛ルクス』は『耐性』済みだ! しかし、己の価値観を優先する『エゴ=ルクス』は嫌いじゃない!」
「うるせぇ絡むな!」
 勝手に絡んできたルーメンへ、明華は苛立ち全てを吐き出した。

●『ルクス』は奥深い
「さぁ、もう『ルクス』切れか!?」
『うーん』
「ストゥル……何か、いい手、ある?」
 なおも挑発するルーメンに、ストゥルトゥスとニウェウスは思案に耽る。
『それなんだけどね。これ、もっとシンプルなもんでいいんじゃ?』
「もっと?」
『んむ。って事で、主導権貰うよー。お腹がいい感じになったからね!』
「ゑ?」
 ニウェウスが不穏な台詞を聞いた瞬間、主導権がストゥルトゥスへ入れ替わる。同時に、ぐきゅるるる……と、腹の音が響いた。
「ふっ。聞いたな? 我が腹の晩鐘は、汝の名を指し示した」
 ルーメンをびしっ! と指差し、ドヤ顔で啖呵を切る。
「見せてやろう。単純明快且つ最大級の輝きを。全ての生命が持つ、至高の『ルクス』というヤツを!」
 ストゥルトゥスは指さした右手で握り拳を作り、スッと幻想蝶から取り出したのは……H.O.P.E.まん。
『待って』
「待たない」
 即行でマスターから制止を受けるが、愚者も情け無用で包装紙を剥がす。
『待ってよ!? 何の為に、今日のご飯、抜いたと思って……』
「無理なダイエットいくない。ちなみに、この中華まんは(ピー)キロカロリーだ!」
『ひっ!?』
 愚者の一言に、マスターには中華まんがまるで肥満への奈落の入り口に見えた。
「ボクは食うぞ! マスタァァァ!!」
『いやぁあああああ!?』
 そして、愚者はマスターとともに奈落の底へ落ちた!
「……(ごっくん)」
 無言でもしゃもしゃして、食い終わり、一拍溜めて――、
「UMEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!」
 全身全霊のシャウトをブチかます!
「人は言う。空腹に勝る調味料無しと。これぞ生命賛歌、『腹を満たす』という喜び(ルクス)だ!!」
 1人の少女を抜け殻にした生命賛歌を、ストゥルトゥスは自信満々に突きつけたが、果たして?
「……まさか、相反する『生きてルクス』と『絶望ルクス』を重ねるとは、恐れ入った」
 効果はあったらしい。けど、1人は多分それどころじゃない。
「……しっかし、あの愚神の外見はいったいどうなってやがんだ」
『ルーメンと言ったか? 彼奴の美は儂の好みではないが、美学とは人それぞれよ。全ての美学を愛すのじゃ』
 ここで明華もカルラと共鳴して舞台に上がった。明華は間近で見たルーメンの肉体にドン引きし、カルラはからころと笑いながら味方の『ルクス』を堪能した目を細める。
『しかしふむ、光、光か……。うむ』
 しばらくルーメンの姿を見たカルラは、明華から主導権を預かり前へ出た。
「であれば、儂自身かのう」
 直後、カルラのステンドグラスのような羽がスポットライトの光を浴び、周囲を色とりどりに輝かせた。
「これはまさか、『ルクス返し』!?」
 で、ルーメンはいきなり戦慄した。なにそれ?
「己へ降り注ぐ『ルクス』を己の『ルクス』へと変換する高等技術かっ!」
 なるほど。至極どうでもいい。
『……なんだこの任務?』
「そう言うな。共にみなの輝きを眺め、共に煌き、彼奴の言う『ルクス』とやらについて語り合うもまたよし。……存外、気が合うやもしれぬのう」
『それはてめぇだけだ』
「はて、もしかすると意気投合するやもせぬぞ? そうなれば、敵味方の境を越えた『煌き』じゃと思うがの」
 意味不明なルーメンの反応に、明華は誰もが麻痺しかけている真っ当な疑問を口にした。ただ、ルーメンに近い思考のカルラからは養護っぽい台詞がポロリ。
「その上、すべてを受け止める『包容力ス』まで! 奴は化け物か!?」
 あー、うん、すごいすごい。
『でも、あの愚神、実に惜しいわね。細身のイケメンなら、あの腰振りは色々参考になるのに』
 すると唐突に、アリスが腐った。
 いや、元々アリスはサブカルを取り入れたために腐ったナノマシン群体という、もはや凄いのか凄くないのかよくわからないロボットであることから、この言葉には語弊がある。
 訂正しよう。唐突に、アリスの腐が騒ぎ出した。
 どうやら『攻め』を想起させるルーメンの腰の動きが、棚買いされた薄い本により覚醒した、腐の制作者としての血を活性化させたらしい。
 ただ、惜しむらくはガチムチマッチョがアリスの対象からは除外されていること。必死にナノマシンでルーメンを好みの細身イケメンへ演算補正をかけ、インスピレーションのまま保存しようとするアリスに、ノーマルな咲雪は嘆息しか出ない。
「貴様、『腐クス』とはまた渋いところを……」
 ルーメン曰く、腐女子は渋いらしい。
「次は私の番だな」
 ルーメンへ追い打ちをかけるのは、千尋から主導権を譲り受けた神楽。
「常ならば出しゃばりはしないが、貴様があり方を問うというならば答えてやる」
 千尋と同様、誓約に『誇り』を掲げた神楽は、実に堂々とした姿だった。千尋が華々しくあろうとするなら、神楽は揺るがぬ鋼。折れず、曲がらず、へこまない、頑強なる意志の持ち主。そう、彼女は――
『一つ教えてあげましょうか。神楽はね、非常に堂々としたショタ好きよ』
「可愛いものを愛でることに何の憚りがあるというのだ。私にとっての価値がそこにあるからに他ならぬ」
『こんな具合にね』
 ――決して揺るがぬショタ好きだ。
「しかし、わたしは自分のあり方を他人に強制したりはしない。己の『ルクス』とやらに絶対的な自信を持つ愚神よ。貴様は堂々としたものだが、己の輝きで他者を燃やし尽くすようなあり方は、低劣な輝きだな」
 同時に、ルーメンが己の力を誇示するため、配下やエージェントたちを巻き込んだことが神楽には解せない。他者の返り血で鈍った輝きに、誇りなどあるのか? と。
「ふっ、これだから素人は」
 しかし、ルーメンの見解は異なる。
「『ルクス』とは自身の生き様が放つ、いわば『魂の輝き』。人が他者へ抱く『羨望』や『憧憬』といった、心を沸き立たせる力を具現化したものだ。己で完結させるだけでは他者の心を照らす道標にさえなれず、それこそ独りよがりで低劣な輝きと言えよう」
 ……あれ? 意外に真面目?
「仮にも『希望』を名乗る貴様らが、他者に安寧と平和をもたらす光――『ルクス』を与えられないと? そのような腑抜けが、『ルクス』を語るな!」
 いや、『ルクス』って概念知ったのついさっきだから。
「ただし、貴様の『ショタックス』の地力は認めてやろう。……実に見事なボディブローだ、っ!」
 何だそのヤベェ税金? それに結局効いてんじゃねぇか。
「大した高説だな。今更貴卿に美醜の禅問答はすまい。自然の美、人工の美とて、所詮人の生み出したる分水嶺。常に美の光輝とは移ろい、人の手により変わる物。中世に在れば中世の、現代と在らば現代の、貴卿の世界と在らば、其の道理も在る、哉(かな)」
 神楽の横から前へ出たのは、再共鳴したティテオロス。さりげなく前半のディエドラの自然アピールや、そのマッチョ人工物じゃねぇか論をスルーしつつ、口を開く。
「だが、貴卿は疑わぬかね? この世界その物が、果たして光輝の中にあるのかどうかを? 凡百凡庸を『唯一』だの『個性』だのと謳(うた)わぬ事は、善(よ)し。しかし己の世界の中のみで他者を見た時、其の輝きを真に見出せていると謂(い)うのかね?」
 切り出したのは、ルーメンの『ルクス』世界への疑念。顕在化した『ルクス』で他者へ無理矢理影響させるこの世界は、不完全な『輝き』なのではないか? と。
「ここは『ルクス』が支配する世界だと言ったはずだ」
 そんなティテオロスへ、ルーメンは真っ向から反証する。
「この世界は『ルクス』を具現化する手段に過ぎん! 平等に、公平に、客観的に『ルクス』が発露し、飲み込む! 私も例外でないのは、その性質故だ!」
 なるほど、阿呆である。
「敗者は『ルクス』が足りなかっただけ! 貴様はどうなのだ、ガールッ!?」
「私かね? 私は常に美しい」
 ルーメンに詰め寄られたティテオロスは、しかし堂々と胸を張って言い切った。特に何もしない、何をする必要も無いという意志をにじませて。
 美しい物を集め、自身もその境地を維持せんとする情熱。自信。自負。常に高め続けた己は其処に在るだけで価値が有る、という100%自意識の光。それが、ティテオロスが示す『ルクス』だった。
「……ふ、貴様の『ルクス』、確かに確認した」
 小さく満足げにつぶやくと、ルーメンは鼻から一筋の血液を――、
 いやそれだと意味が違ってくるから!
「ふん。自身の器にしか収められぬ輝きで驕り慢心するだけでなく、自身の過ぎた力さえ満足に制御できぬ汝に、我らを愚弄する資格などない」
 ルーメンに新たな変態が上乗せされたところ、嘉久也が圧倒的な覇気を動かし始めた。紅蓮の炎を思わせるそれは、嘉久也がおもむろに掲げた掌へ収束していき、強烈な『輝き』を爆発させる。
「見よ。これが真の輝きであり、万象は常に輝いている」
 それは、余剰で漏れ出たオーラで形成された、小型の太陽。熱量そのものは太陽とはいかず、攻撃には一切使えない嘉久也の太陽は、『輝き』という一点においてのみ確かに『太陽』だった。
 何故ならこれは、嘉久也とエスティアから生み出された生命力そのもの。人の器から漏れ出た残滓を凝縮した、ルーメンが語る『ルクス』の根幹に通ずる光なのだから。
「ぐあ、っ!?」
 嘉久也の『太陽ルクス』を浴びたルーメンは、初めて膝をついた。
『……なあ? なんか違うんじゃねぇか?』
 そこで黎焔は気づく。まいだと仲間とのズレに。
「わかった! れいえん、わかった!! あのね、なんかじまんとかするの! でね、あそぶの!!」
『お、おう!? そう、なのか? なあ、本当にそうなのか!?』
 改めて様子を見渡した結果、まいだは『好きなことをして遊ぶ!!』という結論に至った。黎焔はまだしっくりこないが、まいだは『パニッシュメント』や『ケアレイ』をばらまいて物理的に輝きを演出し、ルーメンへタックルして満面の笑顔で見上げた。
「あのね! まいだチョコつくったの! もうすぐばれんたいんだから!! ちょこいれてー、ミルクいれてー、ぐるぐるーってしてー、おかざりしたらね! れいえんみたいなすっごい! かわいい!! いたちょこできた!!」
『お前何作ってんの!?』
 まいだの自慢話に度肝を抜かれる黎焔だったが、まいだのターンは終わらない。
「あとねあとね! おっきなおじちゃんとね!! こうえんであそんだの! でね、ゆきがっせんでね! まいだこのおててでだいしょーりしたの!! ゆきブンってつかんで、ビューンってなげて、どーんってたっくるしてだいしょうり!!」
『あーこの間遊びに行ってた時だなっつうかそのおっさんに謝れまいだぁ!!』
 まいだの最近あったことにも、黎焔は声を張った。
 小さな子供とはいえ、まいだの肉体は確かに能力者。しかも『おてて』の表面は機械化され、一般人相手には凶器となりうる。黎焔はおっさんの被害が心配だった。
「ごはっ! まさか、大人になるにつれて失われる輝き――『無垢ス』の使い手がいるとは!?」
 すると、ルーメンは吐血した。まいだの行動は全部ツボだったらしい。
「私……好きな人がいるんです」
『……うん? 初耳だな』
 次に苦しむ変態を前にしたのは、楓と飛鳥。
「初めてなんです。こんな気持ちになるのって」
『……しかし、何だ。この寒気は?』
 語られたのは、楓の恋心。ただ、飛鳥は同時に原因不明の悪寒に襲われる。
「ほら、私、ついてる男の人とついてない女の人にまったく興味が無いので。私、思うんです。プロの変態は変態じゃなくて、純愛なんじゃないか、って。ほら、それなら私のこの気持ちもしっくり来ると思うんです」
『いかん、何を言ってるのかさっぱりわからん』
 澄みきった瞳で、自称・プロの変態は意を決した。そして、天然・変態の標的はすっかり置いてけぼりを食らう。
「そうなんです。私、飛鳥さんのことを考えると……。あらやだ、こんな人前で私ったら!!」
 所作だけならお嬢様なプロの変態は、顔を朱に染めて想いを吐き出した。
「でも……愛してるんです。飛鳥さんのこと、誰よりもです」
『……へくしっ!! ……ん? 何か言ったか??』
 が、悪寒が最高潮に達した飛鳥は、プロの変態の言葉を聞き逃す。
『うーむ、共鳴していてもわかるが、楓、顔が赤いぞ。体も火照っているようだし、風邪か? いや、むしろ、先ほどの寒気に今のくしゃみといい、私の方か??』
 さらに、悪寒の元凶・プロの変態を案じて見せた。本気で気づいていない飛鳥の姿に、我々はどうすれば……?
「なんという『肉食ルクス』と『天然ルクス』! じわじわと、レバーにくる!」
 結論。プロの変態、恐るべし。
「だが余力を残すは『武器ルクス』のガールのみ。ならば――」
「――銃弾が効かないって?」
 ルーメンの言葉に、佐千子は16式60mm携行型速射砲の引き金を引いた。極めて信頼性の高い堅実な火器は、敵の額を強制的にかち上げる。
「寝言言ってンじゃないわよ」
 次なる得物は、イグニス。時に炎に例えられる佐千子の苛烈さを、そのまま形にしたかのような火器が、敵ごと舞台を焼いた。
「私も、私の『相棒』も、まだ負けていない」
 さらに見せつけた、フリーガーファウストG3。極めて高い制圧力を誇り、多くの戦場で使われた多連装ロケットは、佐千子の希望通り敵を炎ごと吹き飛ばす。
「この子たちの味、良く覚えて――」
 間髪入れず構えたのは、20mmガトリング砲「ヘパイストス」。佐千子が親友より譲り受けた彼女の最大の力が、煙に紛れた敵へ暴虐をまき散らす。
「失せなさい」
 そして跳躍した佐千子の手には、ライヴスガンセイバー。彼女の最も信頼する銃であり、最も多くの戦場を共にした、もう1人の相棒だ。
「っ!?」
 直後ルーメンから驚愕が漏れ、確かな手応えを感じた佐千子は何度も引き金を手に掛けた。
 佐千子に輝きがあるとすれば、最も信頼する相棒たちと共にある今。誰かの為にその機械の躰を十全に振るう時。そして、誰かの希望である時だ。
 佐千子にとって誰よりも信頼できるリタがくれた、『希望』という輝き。
 それが効かないなんて、言わせない。
「貴様の『絆ルクス』も、私の肉体に届く脅威、か」
 距離をとった佐千子の前に、ルーメンが姿を現した。胸には確かに傷跡と弾痕があり、ルーメンは雰囲気を一変させる。
「もはや問答不要! 貴様らの『ルクス』で、私を砕いてみろ!」
 裂帛の気合いとともに、ルーメンはエージェントたちとのガチバトルへ移行した。
 ――腰を高速で振りながら。

●約束通り、全カット
 戦闘はなんやかんやで終わった。
 激戦の結果、最後に立っているのはエージェントたち。
「ふ、見事だ。メンズ&ガールズよ」
 己の力と『ルクス』を出し切ったルーメンの顔は、晴れやかだった。
『るーめえええん!!』
「うるっせぇ!!」
 消えゆくルーメンの別れを惜しんだのは、『包容力ス』のカルラだけ。小さくないダメージを負った明華は、頭の中に響くカルラの声に本気で苦情を入れた。
『勝った……。空しい勝利ではあった、が』
「それ、私が言いたいよ……。(ピー)キロカロリー……」
『マスター。若い内は良く食えYO☆』
 こちらではショックから抜け出せないニウェウスが、肩をがっくり落とす。主犯のストゥルトゥスは悪びれた様子がない。
「効果的でしたね、突っ込み」
『そんな馬鹿な、と言いたいところだが、負けた者共もそんな感じだったらしいな。……なぜだかはわからんが。わかりたくもないが』
 楓は戦闘中の突っ込み効果を思い出し、比例して飛鳥に原因不明の頭痛が走った。
「……ん、終わった。帰る」
『先遣隊の方々を救出するのが先です』
 そして、戦闘前も戦闘中もずっと「帰る」を連呼していた咲雪はさっさと帰ろうとして、アリスに引き留められる。ルーメンとのやりとりで先遣隊の存在を忘れていたようだ。
 その後、エージェントたちは協力して先遣隊のメンバーを救出。死者こそいなかったものの、エージェントたちはかなり消耗した。

「……私たち、何でアレとまともに張り合っていたんでしょう?」
「……わかりません。わかる気もしませんし、わかりたいとも思いません」
 後日、普段以上の気疲れを起こした嘉久也とエスティアはグロッキー状態だった。原因は『太陽ルクス』。アレ、2人にとってはかなりの負担だったらしい。
『ルクス』世界だから出来たようだが、今後は2度としないと嘉久也もエスティアも心に決めた。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • 己が至高の美
    ティテオロス・ツァッハルラートaa0105
    人間|25才|女性|命中
  • 豊穣の巫女
    ディエドラ・マニューaa0105hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 止水の申し子
    まいだaa0122
    機械|6才|女性|防御
  • まいださんの保護者の方
    獅子道 黎焔aa0122hero001
    英雄|14才|女性|バト
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • プロの変態
    雪峰 楓aa2427
    人間|24才|女性|攻撃
  • イロコイ朴念仁※
    桜宮 飛鳥aa2427hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • 崩れぬ者
    梶木 千尋aa4353
    機械|18才|女性|防御
  • エージェント
    豪徳寺 神楽aa4353hero002
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 撃退士
    東 直武aa4786
    人間|83才|男性|回避
  • エージェント
    Pascal Fontaineaa4786hero001
    英雄|11才|女性|シャド
  • 片翼の不良
    瑠璃宮 明華aa4795
    獣人|21才|女性|攻撃
  • 写真部『マドンナ』
    カルラaa4795hero001
    英雄|26才|女性|シャド
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