本部

アストラルダイバー

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/02/11 13:33

掲示板

オープニング

● 星の海を渡り

 グロリア社は手が広い、日用雑貨、AGW、アイドル業界。それだけでは飽き足らず宇宙開発も視野に入れているというのだから本当にすごい。
 そんなグロリア社日本支部がついにシャトルを完成させた。
 スペースシャトルである。
 ここから人類宇宙開拓の歴史が始まる。そう喜び勇んで遙華はテストパイロットの募集をH.O.P.E.掲示板に掲げた。
 そのテストパイロットとしてリンカーが選ばれた理由はなにか。
 それは当然のごとく、共鳴していれば真空中でも死なないからである。
 よって君たちは簡単な操作な操作だけ教えられ宇宙へ駆り出されることになる。
 それが悲劇の幕開けとなるとも知らずに。

● 宙に巣をはる
 宇宙を漂い四日目とりあえず月を目指して飛んでいるシャトルだったが。
 君たちはすでに暇を持て余していた。
 そもそも狭い空間に閉じ込められて日々を過ごすというだけで人間にとってはストレスである。
 プロの宇宙飛行士の試験には真っ白な部屋に暇つぶしの道具もなく一週間詰め込まれるというものがあるが。
 そんな訓練一切していない君たちにとってこの空間は第二の地獄だった。
 そんな君たちの前に隕石の群が現れる、少しだけ気を紛らわせることができた君たち。
 その中で誰かがつぶやいた。
「いっそ従魔でも出てこないかなぁ」
 そんなばかな、出てくるわけがない。
 そう笑っていたリンカーたちの視線の先に。
 大きな岩に張り付いたタコのような生物が見えた。
 宇宙人?
 いや、違う。そんなもの存在するわけがない。
 いや、宇宙人ならまだまし。
 だってあれは、あからさまに。
 ドン。
 その時スペースシャトルを衝撃が襲った。
 外に吐き出される酸素。共鳴。
 直後シャトルは爆発した。


● 敵は地球外生命体。
 みなさんすでにお察しの通り、奴らは従魔である。
 宇宙にドロップゾーンを張るタイプで力は強くないが宇宙空間ということが災いし、今まで発見できずにいた。
 シャトルは壊れ、君たちにあるのは特殊プログラムが埋め込まれた『エネルギー・ウィング』のみ。
 さて、ここで君たちに一つ決断が迫られる。
 
1 母体である愚神を探して、倒すか。
2 早急に地球へと舞い戻り、この事態をH.O.P.E.に伝えるか。

 敵の全容については現在判明していない。それ故にどちらを選択すべきか判断がつかない状態であった。

● エネルギー・ウィングについて。
 君たちの背中には翼が装着されている。これをエネルギーウィングと言う。
エネルギーウイングは霊力をエネルギーとして出力する翼の総称だ。
 状況に合わせて選択し使用してほしい。
 また形状は装備者によって大きく変わる。基本的にはオレンジ色の火焔が翼のように広がる。
 機能比較としてステータスを数値化した。
 一般的な二輪車が全ての能力値が1であり、数値が増えれば倍倍になっていく。
 つまり加速度3であれば二輪車の三倍の加速力を持つととらえてほしい。
 下記にステータスをまとめた。参考にしてほしい
 さらに今回翼には、地球へ帰還するためのプログラムも仕込まれており、それを起動すると地球に一直線に飛べるが、自由飛行はできないようになる。
 では、エネルギーウィングの種類について説明しよう。


エネルギーウイング・メギド
 戦闘を想定し作られており、翼が自動で攻撃、防御の補助を行うように設定されている。
加速度4 最高速2 小回り1 耐久4 攻撃力4


エネルギーウイング・プロミネンス
 汎用性を追求しており、誰でもどんな局面でも扱いやすい無難な物になっている、エネルギー効率が一番よく、壊れにくいという特性ももつ。
加速度2 最高速4 小回り2 耐久5 攻撃力3


エネルギーウイング・フレア
 もともとレーシング用に開発されていた翼であり。持続力と飛ぶことに秀でている。
加速度5 最高速3 小回り5 耐久2 攻撃力1



《性能の説明》
加速度 速度の上がりやすさ。攻撃などを受け速度が落ちても高ければ再びすぐに速度を取り戻せる

最高速 その翼が出せる最高速度。加速し続けることができればそれだけの速度が出る

小回り 旋回能力、また、この数値が高ければ細かく動いても速度が落ちずらい

耐久 翼の耐久度、攻撃をうけてもどれだけ持つか。ただし翼自体それほど打たれ強いわけではない。

攻撃力 攻撃力に補正を得られる。翼自体に備わる霊力や武装が充実しているかどうか。

解説

目標 愚神 アストラルボイドの撃破 
   もしくは犠牲なく地球へ帰還
● 敵愚神について---------------下記PL情報----------------
 デクリオ愚神 アストラルボイド
 全長50Mの巨大な愚神。全身の触手を伸ばし、からめ捕り君たちを宇宙の藻屑にしようとする。
 さらに、無生物を引き寄せる吸い込みと。
 無生物を高速で射出するテレキネシスを持ち合わせる。
 同時に複数の敵を攻撃可能。
 またターンの終わりベーダを二体生産する能力を持つ。

 従魔 ベーダ。
 体長一メートルから二メートルのタコがた宇宙人。
 触手で絡み突き、霊力をすうのが主な攻撃。二体以上に絡みとられると一切の行動ができなくなるので注意。
 シナリオ開始時は視界に十体以上いるが……

ステージ情報。
 ここら一体は一メートルから三十メートルほど、大きさにばらつきのある隕石たちで埋め尽くされた。
 よって脱出は困難を極める。
 月方向に百メートル飛ぶと、愚神がおり。
 地球方向に百メートル飛ぶと、従魔たちのいる一帯を抜けられる。
 ------------------------------上記Pl情報-----------------------

リプレイ

プロローグ
 目もくらむような大爆発。体を貫いた衝撃は本来であれば能力者たちの体をバラバラに引き裂いていてもおかしくなかった。だが。
「無茶振りの挙句に従魔の襲撃……とんだ災難ね。こんな所にまで出て来なくても良いでしょうに」
 共鳴しているリンカーには傷一つつけられない。
 だがら『水瀬 雨月(aa0801)』は蒼く輝く地球を見つめながら思った。
「――はっ!? よ、よくも楽しみだった月面行きの邪魔を……」
『天野 雛(aa4776)』がじたばたと手足をふり、くるくると回転していると、『イーグレット(aa4776hero001)』は告げる。
――……雛。悪いけど今回は緊急事態。サポートや助言の余裕がないし、主導権交代よ。
 その張り詰めた声に雛は緊急事態を悟る。
「……えっ? あっ、はい!」
 そんな少し騒がしい宇宙の真ん中で『東海林聖(aa0203)』は月を背に佇んでいる。
「なぁ、ルゥ……アイツ、あの時何考えてたんだろうな……」
 よみがえるのは以前に宇宙を泳いだ記憶。
 そして少女の意味ありげな視線。
 彼女はこの戦いを機に替わってしまったように思える。
 いや、もともと壊れかけだたのかもしれない。
 この身よ裂けよと言わんばかりの捨て身の猛攻。
 そして燃え尽きて地球に吸い込まれていく彼女の姿。
 今でも、その姿が、彼女の声が、耳について離れない
「…………さぁ……聞いて見れば……?」
「……そりゃそうだな」
 ただ、彼女は遠くに行ってしまった、それこそ手を伸ばしても届かないほどの遠くに。
 聖は瞼を下ろす、そして次に見開いたときには、見えない敵へとその心は注がれていた。
「そう言えば、宇宙だからって愚神が居ねェってワケじゃなかったんだよなぁ!」
 だが、反射的に振り返る聖。その視線の先には蠢く影。
 勢いよく翼を展開するその動作はすでに手馴れていて、操作にはなんの不安もなかった。
「テメェよくも邪魔してくれたなッ! ゼッテェ倒すッ!!」
―― シャトル壊れた…………ご飯。ルゥのご飯…………許さない…………。
 聖の横で足並みを正すリンカーたち。
「まぁ、暇してたしね、Alice」
――丁度良かったね、アリス。
『アリス(aa1651)』と『Alice(aa1651hero001)』は告げて、敵めがけて加速した。

第一章 方位突破
 
 『雨宮 葵(aa4783)』は隕石群の中心で神経をとがらせるように目を瞑っていた。
 戦場を満たす奇声。音が聞こえるということは、霊力にも音を伝える作用があるのだろうか、そんな難しいことを一瞬考えた葵だが
 蒼く燐光放つ翼を広げた時には全ての雑念が吹き飛んでいた。
「ついに私も空を飛べるよ!」
『燐(aa4783hero001)』が答える。
――……宇宙、だけどね。
 ブレイブザンバー唸らせ加速していく。
 その声に導かれて進んだ先にはうねうねとのたうつ地球外生命体たち。
 その化け物の触手を切り裂いて一体の従魔へと接近した。
 すれ違いざまに一閃。
「やった」
 そう喜んだのもつかの間、同じような声が周囲からさらに聞こえてくる。
 無数に散らばった隕石群。その中に紛れているのだ。
 そして一つの隕石に取りついているベーダも一体ではない。
 その隕石の奥深くに入り込んでいたベーダは、触手を葵へと巻きつけるとその体を隕石に固定するように叩きつける。
「な!」
 それに翼の出力だけで抗おうとするも、無防備になって翼へと攻撃を仕掛けるベーダたち。
 まずい。そう思った矢先。
 空を思わせる青い粒子が少女の上空を通過した。
 それは蒼穹をうつした四枚羽。
『月影 飛翔(aa0224)』がジグザグの機動を描いて次々と敵を屠っていく。
「こいつを使うのも久しぶりだ」
――宇宙は初めてです、前のようにはいかないかと。
『ルビナス フローリア(aa0224hero001)』は告げる、すると後輩リンカーを労わるように飛翔が前へ。
「ああ、まずは慣れる事からだな」
 その直後、メギドと称される翼は爆炎をあげた。
 小刻みに振動し。残像を生み出す飛翔、それに手を伸ばした蒼い粒子だけを掴んだ。あっけに捉えるベーダたちは無防備の一言。
 その真横からスライドするように飛翔は飛来し。さらに加速、敵を隕石ごと撃ち砕き。急停止、宙返りのように方向転換。
「上下を失わないようにしないと」
――大体わかりました。翼の制御はお任せください。
 そのスピードの全てを自分の物として飛翔は宇宙を走る。
「踏込みの代わりが加速だ、勢いをつけた斬撃がメインとなるな」
 隕石を蹴り、初速を上げて加速、すれ違いざまにベーダを一体切り裂いた。
「見える範囲で約10体程度、蛸ベースとするなら隕石に潜伏や擬態してそうだな」
 その眼前を彗星のようにかける、赤き熱い男『飛岡 豪(aa4056)』である。
 彼は自分に張り付くベーダをチョップで引きはがし状況を確認するために隕石の上に降り立った。
「まさか、宇宙で戦う事になるとはな。有事に備えて耐久性を重視したのは正解だったか?」
 すると足に絡みつく触手。
「挟まれているな」
 先ほどからの攻撃の頻度を考えて、どうやらここは奴らの巣らしい。そう豪は考えた。
 軽い戦闘から、従魔の力は弱いとわかったが、こう数が多くては突破も脱出もままならない。
――前門の怪獣、後門の宇宙人、か。数が多いな。
『ガイ・フィールグッド(aa4056hero001)』は告げる。
 その発言を受けて二人は動いた。『赤城 龍哉(aa0090)』と『リィェン・ユー(aa0208)』は背中合わせに立ち死角をなくす。
「まさか宇宙に敵がいるとはな……」
 そうつぶやくリィェンの言葉に龍哉が小声で返した。
「地球に戻るには従魔を突破する必要があるが……」
――まるで足止めしようと展開しているように見えますわね。
『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』が低く声を鳴らした。
 だがそんな三人とは裏腹に『イン・シェン(aa0208hero001)』ははしゃいでいる。
――リィェン、リィェン、宇宙を自在に飛べるのじゃ!!
「こんな状況なのに楽しそうだな……」
 リィェンは呆れたように額を抑える。
――こんな経験は初めてじゃからな!!
「そんなに楽しんでられる状況じゃないと思うぞ」
――明らかに状況はおかしいですわ、これは最悪の事態である可能性が高いですわね。
 ヴァルトラウテが告げると、リィェンも立つもうなづいた。
「つまり……遭遇戦でなく待ち伏せだった、か」
「もしあの従魔が猟犬なら、狩人たる愚神がそう離れていない場所にいると考えた方が良いですわ」
「なるほどな……」
 リィェンは告げる。
「従魔が俺たちを追いたてる役割なら」
 その言葉を龍哉が継いだ。
「つまり追い立てた先にボスがいる……厄介だな」 
 そんな悩める三人にイン・シェンはあっさりと言ってのける。
――敵がいるのなら斬るのみ……なのはいつものことじゃろ。
「……たしかにそうか」
 そう納得すると二人はふわりと前に出た、わずかな加速度を維持し宇宙を漂う、そしてある程度離れたところを回転。
 直後二人は全力で翼を吹かせた、煌く霊力の粒子は衝突しあい、お互いがお互いの霊力に乗って加速し弾丸のように飛び出した。そして。
「んじゃ、一狩りいきますか」
 リィェンはフリーガーを取り出し周囲に弾丸をばらまく、宇宙を漂う石ですら粉々にしてしまうその炎を突っ切って龍哉は突貫、突破口を開く。
 それに便乗してイーグレットが攻めた。
「万が一、こんなこともあろうかと準備してあるのよ」
 そうAKの銃口から弾丸をばらまいて、従魔たちを牽制。ベテランたちが動きやすいように道を作る。
――はわー……す、凄いですね。
「雛が浮かれ過ぎなのよ。宇宙だから気持ちはよく分かるけどね」
 メギドの炎を纏った弾丸の嵐、それをベーダは嫌い隕石の影に隠れるが、そうしてもリンカーたちから逃げることは不可能で。
 二冊の魔導書から放たれる爆炎が、避難していたベーダたちを根こそぎ焼き払っていく。
 アリスと雨月である。
「深追いはしなくていいわ。広範囲攻撃は私たちの役目だもの」
 雨月はそう告げると、妙に騒いでうるさいネクロノミコンをひっぱたく。
(本が喜んでる? まさかね)
「「うふふ、たのしいわ」」
 二人のアリスの声が重なると同時に、アリスを狙って伸ばされた触手すべてが切り刻まれて落ちていく。
 アルスマギカ、リフレクトミラーによる魔術制御の応用である。
 だが言ってるそばから従魔に絡め捕られるイーグレット。
「気性が荒いのはこの本だけで十分なのに」
 そう雨月は溜息をついてブルームフレアを放つ。
 翼の攻撃補助によって獄炎と化したそれは罪なき者は残し、従魔だけを焼き払った。
「ありがとう! 助かったわ」 
 そう言いつつイーグレットは周囲の敵に狙いを定める。
 ロックオンというやつである。
「……メギド、オートサポート起動!」
 阿修羅とさらにすべての銃器、それに翼の炎を乗せていく。
「まずは全火力を広域掃射でぶっ放すわよ」
 その瞬間イーグレットは動いた。すべての敵を狙えるポジションに身を置く。そして
「後は一点集中! 確実に落としていくわよ」
放たれた弾丸は三体の敵を撃ち貫き、敵が自分を迎撃してくるのも構わずに弾丸をばらまいた。
あまりの強行に敵の戦列は崩れ、それを見逃すリンカーたちではない。
「大丈夫ですか?」
 そうイーグレットを守るように現れたのは『御門 鈴音(aa0175)』その背の純白の翼は、まるで癒しの天使の様。
 思わずその美しい姿にイーグレットは見惚れてしまう。
 そしてそんな少女の盾になりつつも見事に鈴音は敵を捌いていく。
 腕輪が輝き星の海に星を打ち出す。
 その光景はまるで神話の一ページの様だった。
「っし、行くぜ……ルゥ!」
――……勿論……カンは鈍ってないね
 だがそんな鈴音の横を割れた隕石の破片が通過する。
 まるでサーフボードのように両足を隕石に突け、盾として敵の真っただ中に突貫する。だれか。
 まぁ、こんな無茶苦茶なことをするのは聖以外にはありえないのだが。
 だが、それは呆れるほどに有効な戦術である。
 そして聖はその隕石でベーダ一体を押しつぶすと、隕石を切り裂いて。
 その破片を蹴りつけ別のベーダにぶつけた。
 そして翼を翻して加速。
「あぁ、行けるぜ!!」
 そのまま聖は敵の駆逐作業に入る。
 フレアの特性である速度を生かし、一切止まらずに戦場を慣らしていった。
 そんな嵐のような人物が過ぎ去ったのを確認し鈴音はイーグレットの傷の手当てを始める。
――これでだいじょうぶ。
『朔夜(aa0175hero002)』はイーグレットの治療を終えると、鈴音に告げる。
――さぁ、私達も行くわよ。
「どうしたの? 朔夜、今日は大人しいわね」
 そう告げた瞬間、鈴音は肩に痛みを感じた、肩というよりは翼の付け根に。
「朔夜?」
「なんでも……ないわ」
 それは朔夜の幻肢痛だ。
 朔夜は自分で切り落とした翼、それとそっくりなものが背中にある違和感を感じつつも翼をはためかせた。
「向こうに何かが、ある」
 そして飛翔の隣に並ぶと彼は鈴音にそう告げた。
 だが。視界をちょうど隕石が横断し見えない、仕方ないので飛翔は邪魔な隕石ごとフリーガーで吹き飛ばした。
 そこには信じられない光景が広がっていた。
 そこにはまだ射程圏外ではあるが、大きく醜いベーダの進化形のような存在がいたのだ。
 あれこそ、宇宙に根を張る愚神、アストラルボイドである。
「俺達はあのデカブツに向かう。後ろのヤツらは……任せる!」
 そう豪が加速すると、それにリィェンと龍哉が続く。

第二章 元凶

――よし邪魔はいなくなったのじゃ!! あとは斬り込むのみじゃ。
 イン・シェンの言葉に頷いてリィェンが突っ込むと、急激に自身の速度が上がった気がした。
 別段翼の出力を上げているわけでは無い。だとすれば原因は何か。
 決まっている。 
 アストラルボイドの仕業である。
「おい! 吸い込まれてねぇか?」
 龍哉の声で我に帰る一行。だが吸い込みは収まらない、ボイドに至ってはすでに触手を振り上げ迎撃態勢に入っている。
「逆に突っ込んだ方が早い!」
 そう告げた豪は翼を最大出力でふかせる。
「死なばもろとも!!」
 豪は叫んだ。
――あんなおぞましい物と心中……
 その言葉通りの状況を想像してしまい、ヴァルトラウテは一気にテンションを下げた。
「焼き切ってやるぜ!」
 翼のエネルギーを前に展開、そして加速度そのままに木の幹より太い触手に真っ向からぶつかった。
 その直後はじけ飛ぶボイドの触手。数千本ある触手の三本を切断することができた。
――ねばねばですわ。
 ヴァルトラウテが落ち切ったテンションでそう告げる。
 戦果の代償と言ってはなんだが、三人は紫色の体液に包まれていた。
「まぁ、そう落ち込むなって」
 意外と平気そうに龍哉は告げる。
「なんと巨大な……従魔、いや、愚神か」
 豪もネトネトに構わず揚々と告げる。それに苦笑いを浮かべて龍哉は行った。
「けどよ、さすがにあれを放って戻る訳にはいかねぇよなぁ」
 見上げる50Mの巨体。ちょっとしたビル程度の大きさを誇るそれは、人間が挑んで勝てるものとは底思えない。
――スペースビーストってとこか! っくぅー、オレに巨大化能力でもあれば! それか巨大ロボ。
 だがガイはやる気である。
――『男の子』ですわね。
 ヴァルトラウテは溜息をついた。
――……だとしても、やるしかありませんわね。あんなものに頭上に居座られては迷惑この上ありませんわ。
「大きさ的には差し詰め俺らは一寸法師ってとこだが」
 にやりと不敵に笑う龍哉、その笑みを受けてリィェンは笑う。
「相手にとって不足は、ないな」
 それに豪もうなづく。
「退いて体勢を立て直すべきなのだろうが、あのサイズだ。その間に出る被害は計り知れん」
――わかってるぜゴウ、ヤツはここで倒す!」
 直後、太陽と見まごうほどの熱量を発し豪が駆けた。
「だがまぁ、味気ない場所に閉じ込められてた憂さ晴らしには丁度いい」
 それに続く龍哉
「やるぞ、ヴァル!」
――参りますわ!
「俺は闇夜を照らす赤色巨星! 爆炎竜装ゴーガイン!」
 突貫したのは龍哉と豪だリィェンは二人が攻めやすいように後ろからのサポートに徹する。
「宇宙怪獣、貴様はここで撃滅する!」
 突如また、ボイドはその大きな口をあけて隕石を吸い寄せようとした。
 二人はそれに抗うも、背後から飛んでくる隕石に翻弄されるリンカーたち。
 だがその隕石を回避しても、今度はボイドがその隕石を射出してくる。接近どころの問題ではなかった。
 だがその隕石も無限ではない。
 そう蒼い彗星が真正面から隕石と衝突、それを粉々に叩き割った。
 飛翔である。
 さらにその傍らには絶命したベーダが漂っていた。
「やっぱり擬態か、みんな、隕石表面にも気をつけろ」
 そして場を満たしたのは常しえの闇。
 雨月の放つリーサルダークが愚神の眼前を覆った。
「あらかた片付いたから、みんなもこちらに向かっているわ」
 その瞬間、その場にいる全員がそれを見た。
 ボイドにある二つの射出口。そこからベーダが新しく生まれるのを。
「なるほど、こいつ自身がヤツらを量産する母艦というワケか。数を増やさせるわけにはいかん!」
 そう豪は従魔の発射口へ霊力の斬撃を繰り出した。
「従魔を増やしやがった」
 龍哉はそれを見て武器を弓に持ち直す。
――時間は掛けられませんわね。
 太陽すら落とすと言わしめた弓を弾くのはヴァルトラウテ。接近しながら一矢放ち、伸ばされる触手にはカチューシャMRLをお見舞いする。
――ヴァルキリーズレイン! ですわ。
「お前それ今考えただろ」
 その問いかけには無言のヴァルトラウテ。
「にしても、どこを攻撃しても効き目が薄いように見えるな」
――人間でいう、脳のような部分を見つけ出さなければだめかもしれません。
 雨月は放たれる隕石を回避、その直後に再加速して遠心力を無な鳴く使う。放たれる触手を足を振った回転力でよけ、その触手を足場に飛んだ。
 そして愚神の顔面に霊力の塊を乱射する。
「しかし、宇宙でタコみたいな敵……か。コズミック・ホラーとかそんな世界みたいね」
 その言葉に魔本が疼くように答えた。
「本の攻撃方法を元に戻して攻撃してみたら面白い絵面になるかしら? げに恐ろしきは……みたいな光景になかもしれないけれど」
 そう告げつつも雨月は霊力で応戦する。
 合流した葵は、すでに戦場に放たれているベーダをみてげんなり肩を落とした。
「わぁーなんかタコいっぱいなんだけど! どうするー?」
――……フレアの速さを生かして、雑魚殲滅、かな。
「オッケー! とりあえず雑魚は殲滅しとくので、あっちのでっかいボスはよろしく!」
 そう愚神対応に他のメンバーが専念できるように、葵は周囲を旋回する。
「ちょっと、段々雑魚増えてくんだけどー!?」
 さらにおかわりされる従魔を見て、葵は叫んだ。
――……ボスを倒さないと、増えてく、みたい。それに倒し切れなかった従魔も集まってるみたい?
「何それ面倒くさい!」
――早く倒さないと……どんどん増える。手を、動かして。
「呼んだか!」
 その葵の言葉に答えたのは、聖である。
「真打登場だぜ!」
 そう翼をはためかせ本日何度目かもわからない突撃をみまう聖。
 それを格好の獲物と触手を槍のように伸ばして迎撃するボイド。
 だが、聖にはその攻撃すら止まって見える。
 体を最小限ずらして回避。
 そしてその腕に紅榴の斬撃を走らせる。
 特大の悲鳴が宇宙に響いた。
「雑魚にかまうな」
 飛翔が聖の隣を駆け抜ける。
「倒しても増える……」
「増えるのは面倒だな……」
 聖が神妙な面持でつぶやくと念話でLEが告げる。
――……わんこたこ焼き……。
「……いや、アレ食えねェだろ」
 そう告げつつも、眼前の巨大な敵を見据え聖は刃を構えなおす。
 確かあの時も、全員で巨大な敵に立ち向かったのだ。
 それを聖は覚えている。
「やってやろうじゃねぇか。そっちの方が簡単だ」
 その言葉を受け、突破口を開くためにアリスが前に出た。
 群がる従魔たちを的確に撃ち滅ぼしていく。
 幻想のように色味を変えるその翼を翻し、吸引されていく隕石を撃破していく。
「発射するものがなければ、隕石も武器につかえないでしょう?」
 そう微笑む少女はあどけなく、かつ残忍で楽しそうだった。

第三章 撃破

 体長50Mのエーリアンはその体から無数の触手を伸ばしている。太い枝から細い触手が伸び、さらにそこから伸びという具合に、複雑に絡み合っているが。
 その一番太い触手を槍で受け止め鈴音は告げる。
「しばらくタコは食べられなさそう……」
 あまりの質量に押される鈴音。その大型触手をイーグレットが切りかかった。
――アンタは雛を邪魔した。あたしにそれ以上の理由は必要ないの。
 疾風怒濤の連撃は的確に同じ場所をえぐる。
 その斬撃で見事に触手を切り倒したイーグレットは鈴音とハイタッチした。
 そして鈴音は振り返る、本来の目的。ベーダの発射口をつぶすためにここまで来たのだ。
 そう鈴音は発射されてきたベーダを切り捨て、真っ向から敵を見据える。
 これでベーダが宇宙に散乱させられることはない。
 それを見ると、まず仕掛けたのは飛翔である。
 鈴音とイーグレットの切り落とした触手。その手薄になった直上方向に加速し回り込んだ。 
「今よ、あなたは友達と仲良くしていなさい」 
 そう雨月は幻影蝶を放つ。それは浸蝕するように、毒のようにボイドに浸み、そして明らかな隙を生んだ。
「今なら!」
 そして飛翔は翼の全エネルギーを剣に宿し。真下まで貫くような斬撃を放つ。
「宇宙の藻屑になるのはそっちだ。シャトルの借りだ、消えろ!」
 それに合わせて龍哉も動く。
「大男総身に知恵が回り兼ね、ってなぁ!」
――触手もそうですが、色々と物を飛ばしてくるのは厄介ですわね」
 ヴァルトラウテの支持に合わせて龍哉は隕石を回避。
 攻撃を掻い潜って最接近した、そして後方から駆け抜けてくるリィェンとタイミングをあわせる。
 霊力をためる龍哉、それに伸びるすべての触手をリィェンが叩き落とし、そして。
「おらあああああ!」
 体ごと回転させながらえぐるような連撃を。
 それはボイドの肉を焼き切り、見えたのは脈打つ血管。
「やれ! リィェン!!」
 その言葉に無言で頷きリィェンは狙い澄ましたように、【極】から斬撃を放つ。それは見事にボイドの皮膚を食い破り。大量の鮮血を宇宙へと散らした。
 ボイドは悲鳴を上げる。
 その血を避けるようにリィェンは龍哉へと近づき、熱で不調となった翼のかわりに彼をボイドから遠ざける。
「まだ、開発中っていうのもうなづけるな」
 その龍哉の言葉に頷きながらもリィェンは告げる。
「にしても……これだけでかいと斬りがいはあるが、面白みに欠けるな」
――じゃったら狙うは敵の体をきれいに真っ二つじゃ!!
「いや敵のがたいががたいだから刀身がたりないだろ」
 だがそれを真面目に狙っている者がいた。聖である。愚神の触手の断面を足場にして、聖は立つ。
「っし……我流でいくぜ」
――…………いいんじゃない……?
 その手のフルンティングに霊力をため込む。
 そして翼のリミッターを解除、爆発させるように推進力を生み。ドレッドノートドライブを発動。その身の瞬発力、フレアの加速力を使い愚神へ突撃し。
 まさにそれは電光石火の一撃。
 それに合わせて飛翔も斬撃を放つ。
「即興……絶翔・飛翠ッ!」
 その二つの斬撃が衝突するとめちゃくちゃな方向に力が向く、ボイドは内部から引き裂かれるような激痛を味わった。
「ここだ!」
――唸れ爆炎竜牙!!
 その斬撃の中心へダメ出しとばかりに突貫する豪。
 その翼に極度のダメージを負うが、その視界の端に捉えたのはボイドの心臓。
 それを食い破る。直後すべてのエネルギーがボイドを引き裂いて宇宙に散った。
 それは星のように爛々と輝き。
「やっぱ……こうなってみるとよくわかるが改めてすごいな。リンカーの身体能力って」 
 やがて消える。適性反応の消えた宇宙で、リィェンはそう告げ漂った。

エピローグ
「それにしても、相変わらずリンカーの頑丈さは異常ね。今更だけど」
 そうアリスは疲れて動けなくなっている近接メンバーを一か所に集めた。
「動けない人は捕まって」
 そう雨月は自分にまきつけたロープを差し出す。
「今回も出てこなかったわね」
 そう『アムブロシア(aa0801hero001)』に語りかけてみるも返事はなかった。
――生身での大気圏突入ですか、人類初ですね。皆様おめでとうございます。
「…………いや、おめでたくはないが…………やるしかないか」
 そんな相棒の言葉に頷いて、飛翔は目を閉じる。
――龍哉、あなたはどこに落ちたい?
 ヴァルトラウテがふざけてそう告げる。
「そのネタやめ……」
――ゴウ、きみはどこに落ちたい?
「……それは、あまり洒落になっていないぞガイ。……帰ろう、俺達の星へ」
 龍哉が制止しようとしたネタは、無事に豪に回収され、安堵のため息を漏らすヴァルトラウテ。
「…………い、イーグレットさんって優しいですよね」
――パートナーなんだから当然でしょ。さぁ、地球まで帰って大気圏突入を実体験よ!
「さ、流石にそれは怖いんですけど!?」
「みんな無事でよかった」
 そう安堵のため息をつく鈴音。だが朔夜はいつものように元気に話しかけては来なかった。
「朔夜?」
――翼で飛ぶ感覚なんて何百年ぶりだったから楽しかったわ。
「翼、なくしちゃったの?」
 鈴音は問いかける。それに頷いて朔夜は語り始めた。
「……私にも昔は翼があったの。真っ白な翼が……おかげで同胞から異端の悪魔って嘲笑われてね……ムカついて自分で切り落としたの。」
「朔夜って本当に負けず嫌いなのね……。でも恥じる事なかったんじゃないかな?ありのままの自分が一番よ?」
 朔夜は少しだけ驚いた。かつての鈴音なら。
 少なくとも自分が観測し始めたころの鈴音なら、自分を認めてもよいと言ったセリフを言えるわけはなかったからだ。 
「あなたは、本当に」
「え?」
 面白いわ。そうつぶやいたころにはすでに地球の重力に捕まっていた。
 ゆっくりと体が引き寄せられる。
 そう、母なる地球へと。


結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 残酷な微笑み
    朔夜aa0175hero002
    英雄|9才|女性|バト
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 『星』を追う者
    月影 飛翔aa0224
    人間|20才|男性|攻撃
  • 『星』を追う者
    ルビナス フローリアaa0224hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 夜を取り戻す太陽黒点
    飛岡 豪aa4056
    人間|28才|男性|命中
  • 正義を語る背中
    ガイ・フィールグッドaa4056hero001
    英雄|20才|男性|ドレ
  • エージェント
    天野 雛aa4776
    機械|16才|女性|命中
  • エージェント
    イーグレットaa4776hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 広い空へと羽ばたいて
    aa4783hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
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