本部
息抜き、お料理教室! チョコ2017年編
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/01/21 21:38:18
オープニング
●お料理レッスンのお誘い
パティシエのお料理レッスン。
後一か月ほどでバレンタインデー。
チョコレートの香りが町中を包むカップルの愛の誓いの日。
バレンタインデーが来る前に美味しいチョコレートのお菓子の作り方を覚えてみましょう!
今回は手作りチョコの定番トリュフ。
丸くてコロコロしたあまーいトリュフを心を込めて作りましょう!
たとえ料理が上手くなくても大丈夫、本場のパティシエが手取り足取り教えしします。
●ショコラールの簡単★トリュフチョコレート
今回で合計四回目になるお料理教室。
お菓子作りを学べかつ、作ったお菓子の一部を一般職員に配ることにより若干の報酬が得られる。
そしてやはりもうすぐバレンタインデーとなればお菓子作りに興味の沸く人も増えるのではないだろうか。
と言うわけで、パティシエ、ショコラール・クロワッサンを呼び今回はトリュフチョコレートの作り方を指導してもらう運びとなった。
「ムッシュ、マダム、今日はワタシのお料理教室にようこそん! 今日はトリュフチョコレートを作っていきマス! 愛を込めて一緒に作っていきましょうネ!」
ショコラールが集まった人たちへ挨拶がてらに投げキッスを送る。
「ワタシがお手本で作るのは基本的なトリュフチョコレートになりマス! ですが、ミナさんそれぞれ好きな形にしてみたり、料理が得意であればアレンジしてみてくだサーイネ!」
広く清潔感が溢れ、幾つも並ぶ長テーブルにコンロとオーブンが付いた部屋。前方には大きなボードがあり、そこにはショコラールの簡単★トリュフチョコレートと可愛らしい丸文字が書かれている。その他の料理器具や設備もばっちりだ。
ショコラールはいつも通り、始めに手を二度石鹸で洗うことやアルコール消毒をしっかりすることなどの説明を行う。
「まず、チョコレートを溶かしやすいように細かく刻んで行きマース!」
と、順々に作り方を実践し説明していくショコラール。
「そして絶対に水気のないボールに刻んだチョコレートを入れマース! どんな時もボールの中に水が入らないよう注意してくだサーイネ!」
注意点を丁寧に説明し、そして、チョコレートに生クリームを入れたガナッシュと呼ばれるトリュフのメインを作る。
「こうやって一口サイズに分けた後は暫く冷やしマス! そして冷えたのがココに!」
冷やして粘土くらいの柔らかさになったガナッシュを一つずつ宙に投げるショコラール。
チョコレートは綺麗に丸みを帯び、ショコラールが軽やかな手つきでコーティング用のチョコレートをヘラで掬い舞わせれば、あっという間に綺麗な形のトリュフが皿の上に並んだ。
「完成品はこちらデス! 普通に掌で転がして作っても綺麗に丸くナリマスからネ!」
ウィンク一つ。完成品を掲げて見せる。
「それではミナさん、さっそくお菓子作りを始めまショウ!」
さあ、いよいよ実践が始まる! 美味しいトリュフチョコレートを完成させよ!
解説
●目的
トリュフチョコレートを作って食べます。
また一般職員分用に多めに作ります。
●トリュフチョコレートを作る手順
1.手の消毒。(二度の石鹸洗いとアルコール消毒)
2.チョコレートを溶けやすいように細かく刻む。
3.ガナッシュ用に生クリームを中火で騰直前まで温める。(沸騰はさせないこと)
4.刻んだチョコレートを入れたボウルに生クリームを注ぎ混ぜ合わせる。チョコレートが完全に溶けてなめらかなクリーム状になるまでよく混ぜること。
5.ガナッシュ用は暫く冷やす。冷えたらティースプーンなどで適当な大きさに分けクッキングシートに並べ再度冷やす。
6.コーティング用のチョコレートを刻んだり、コーティング素材を選んだりする。
7.冷えたガナッシュを掌でころころと丸める(手が暖かすぎると溶けるので時々手を冷水などで冷やすこと)
8.コーティングをする。(チョコレートでコーティングする場合は湯煎したチョコレートを掌につけ、手の平でコロコロとガナッシュを転がす)
※全ての工程をプレイングに記入しなくて構いません。描写が無くともやっていることになります。
●他、アレンジ用の素材
上級者向けにトリュフチョコレートをアレンジできるよう様々なものが用意されている。
・チョコレートの種類
ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、ビターチョコレート、99%カカオチョコレート、ストロベリーチョコレート、抹茶チョコレート
・コーティング
ココアパウダー、コーンフレーク、クッキークランチ、チョコチップ、チョコスライス、チョコフレーク、ヘーゼルナッツ、チョコペンなどなど
(プレイングに記載していただければOPに記載がないものでも使用していただいて構いません)
リプレイ
●
「おっ!今度のショコラール先生のお料理教室はチョコレートかぁ。そうだよねぇ、もうすぐバレンタインデーだし!」
「ばれんたいんでい? 朝霞、なんだよソレ?」
大宮 朝霞(aa0476)と春日部 伊奈(aa0476hero002)が貼り紙を見ながら話しこんでいる。
「えっと……仲が良い友達に、チョコレートをプレゼントする日の事だよ」
少し考えてから朝霞が答えた。「好きな人」と言うと誤解を与える気がしたのでそこはぼかす。
「チョコレート!? いいなそれ! 朝霞、私それやりたい!」
「よし。じゃあ一緒に参加しよっか!」
ぱぁ、っと顔を輝かせる伊奈。朝霞も笑顔で頷いた。
「メテオ、本当に好きなんだね……」
朝霞達と同じように貼り紙を真剣に見ているメテオバイザー(aa4046hero001)の隣で桜小路 國光(aa4046)が零すように言う。
「久しぶりのお菓子作りなのです!」
と、おおはしゃぎのメテオバイザー。
さて、そんな彼女が楽しみにしていたお料理教室。今回は二組増えての開催だ。
場所は縦横四列の長テーブルが並ぶ調理室。ボードの前、真ん中横二列と一番後ろ四列目は講師ショコラールが実践を行う為と必要な器具、材料などが置かれているので参加者の配置はない。
コルクボードから見て左側、一列目が桜寺りりあ(aa0092)と新津 藤吾(aa0092hero002)。一列目右側には薫 秦乎(aa4612)とベネトナシュ(aa4612hero001)。その後ろ二列目、三列目には知り合いの夜城 黒塚(aa4625)とエクトル(aa4625hero001)。椿原 悠里(aa4663)とガレシュテイン(aa4663hero001)が続いている。
二列目の残りはコルクボードから見て左から七森 千香(aa1037)、呉 琳(aa3404)、そして世良 杏奈(aa3447)とルナ(aa3447hero001)とこちらも知人を並べての配置だ。
三列目に左から國光とメテオバイザー、朝霞と伊奈。炉威(aa0996)とエレナ(aa0996hero002)となっている。
「ショコラール先生、よろしくお願いします!」
「よろしく!」
「マドモワゼル朝霞、お久ぶりデス。よろしくお願いシマース!」
最初に講師に挨拶をする朝霞と伊奈。前に見た顔に嬉しそうにショコラールは答える。そしてショコラールは琳やメテオバイザーと、二回目以降となる顔ぶれに声を掛けて行った。
「よし、もうすぐバレンタインだもんな。自分で作りたい気持ちもわかるし今日は俺が付き合うぞ」
「藤吾さん……ありがとう、ございます。上手に作れるようになって本番でも成功させたいの……」
手を洗っている最中、藤吾がりりあに気合を入れるように言う。その気持ちを受けて小さく頷くりりあ。
「バレンタインねぇ……好きな行事とは言えないが、何か作れるのはまあ、嬉しい……か」
「毒を入れるのも魅力的……でも、苦しむ姿が醜いのは嫌ですわ」
バレンタインという言葉が耳に入り手を洗いながら炉威が呟く。その隣でエレナが物騒なことを零した。炉威は聞かなかった振りをする。
「バレンタインデーにね、お兄ちゃんお姉ちゃん達に手作りチョコプレゼントするんだよ! 美味しいの作れるよーにがんばる!」
と張り切っているのは少年エクトルだ。
(インスタントしか作った事無ェだろうに、ちゃんとできんのかよ)
そんなエクトルを見ながら黒塚は不安を覚える。とりあえず、彼が変なことをしないよう見張り、ということで黒塚はついてきていた。
「失敗しても俺が責任持って処分してやっから、まあがんばんな」
エクトルの背中を励ますように軽く叩く黒塚。
「楽しみですね、ゆーり!」
「くれぐれも人に迷惑かけないようにして下さいね、ガレスさん」
来る前から「なんだか面白そう!」とそわそわしていたガレシュテイン。彼に引っ張られる形で来た悠里は注意を促す。
「ベネトもエクトルくんも一緒に作りましょう!」
が、悠里の言葉を聞いているのかふわふわと彼は見知った二人の元に駆け寄り笑顔を浮かべていた。
「いつもガレスさんがお世話になってます」
遅れて悠里も黒塚と秦乎の元に向かい、丁寧に挨拶をする。英雄同士知り合いで面識もあるが、二組とは付き合いが深いわけではなく、むしろ黒塚も秦乎も強面なので悠里は距離の取り方に少しばかり悩んでいた。
「……チョコ、もしかしたら貰えんのかな……いや、クロのは要らねぇけど、チョコ」
ぼそっと呟くと黒塚が振り返り何を言っているんだ、という顔をしたので続いて付け加える秦乎。
秦乎は黒塚とは仕事上の知り合いである程度交流があるが、悠里とは面識が少ない上、日本人の女子大生と聞いていて内心そわそわしていた。
「女子高生たるもの、一大イベントのある二月に向けて、練習を兼ねて……!」
一方、ぐっ、と拳を握り気合を入れているのは千香だ。英雄は居ないが
(確り、私頑張ってきます!)
と、気合は十分。エプロンと三角巾を着用し、長い髪は一つに纏めた。その隣で、こちらも英雄のいない一人ぼっち、琳。
「今回俺一人だからな……チカ、よかったら……手を組もうぜ!!」
「もちろんです! 一緒に、頑張りましょうね」
バッと琳の差し出された手を両手でがしっと千香は握る。
お互いボッチであることは禁句であり、そのことには絶対に触れない。
「琳君、こんにちは! 今日はがんばろうね!」
「なんだよ琳、1人かよ。手が足りなかったら手伝うからな!」
そんな千香と手を握り合ってる琳の後ろのテーブルから朝霞と伊奈が声を掛けた。
「イナも手伝ってくれるのか……!! 心強いぜ!!」
振り返り琳が嬉しそうに目を輝かす。
「琳君、私たちも手伝うわよ」
右隣の杏奈も琳に声を掛けた。ルナも杏奈の隣で頷く。英雄が居なくても友達はたくさんだ。若干、ハーレム感が漂ってはいるが。
準備をそれぞれが進めていく。
「朝霞、甘いのにしようぜ!」
「そうだねぇ。ホワイトチョコとミルクチョコで、白黒2色作ろっか」
朝霞が並ぶチョコの中からホワイトチョコとミルクチョコを選択する。
メテオバイザーも横からホワイトチョコを持っていく。お酒抜きのガナッシュをホワイトチョコで作るつもりだった。
「ちか! いっぱい作ろうな! 俺達ならできる! 作れる!! やるぜ!!!」
「はい! いっぱい作りましょう! たくさん頑張ればきっとうまくいきます!」
手を洗い終えた琳はボールを天にかかげ、隣の千香はその掲げられたボールに洗い立ての手を添える。
いざいざ! とめいっぱいやる気満々だ。
琳は前回のスイートポテトで自分の分を忘れた為、今度こそは自分の分を作りたかった。
「トリュフ……聞いた事はあるぜ!」
「そうですね、とても美味しいきのこを模してトリュフっていうんですよ」
ボードに書かれたトリュフチョコレートの文字を見ながらキリッ、とする琳。そこへ千香がこそりと知識を付け加える。
「トリュフの中身がガナッシュなのか……なるほど……帰ったら二人(英雄)にも教えてやらないと……」
トリュフを見たことも食べたもない琳は勘違いをしてメモをしながら納得して頷いた。
そんな琳達の斜め後ろのテーブル。炉威達が準備を進めながら話をしている。
「炉威様はチョコレートを貰った事はお有りですの?」
「まあ、普通にはそこそこ貰うよ。ただ、ね……」
エレナが炉威に問いかけると途中で炉威が言葉を切る。
「バレンタインは2月14日……炉威様の誕生日ですわね」
「ん……まあ、ね」
バレンタインの話が続いていた。その日は炉威の誕生日。得てしてそうなればプレゼントがチョコになることが多いことは自ずと想像できる。
「ま、つまりそんな感じでくれる奴ばっかりだったんじゃないかね。如何でも良いけどね」
「あら、冷たいお言葉ですのね」
エレナがうふふと微笑んだ。そして……。
「でも、炉威様に贈るなんてなんて、随分身分知らずの方達ですこと」
彼女の微笑みの瞳には光が無かった。ちょこっとでも誕生日を祝おうとすれば危ないかもしれない。
「で、お前さんは料理できるのかね?」
「まさか。でも、炉威様の為ならば何でも致しますわ」
炉威の問いかけにエレナはうふふと嬉しそうに微笑み、くるりと回る。
ぼんやりと見るともなく見ていると、何事も楽しそうなのが不思議だ、と炉威は思った。
「お前さんは何とも楽しそうだね」
「あら、炉威様が一緒だからですわ」
「じゃあ、始めるか」
また笑うエレナに炉威は包丁を手にした。
●
そんなこんなで、チョコ作りの工程に各々が手を付け始めた。
りりあが包丁を掴む。前に一度、チョコを溶かしてつけるだけのものを作った事があるがチョコは藤吾が刻んだものを使っていた。
「今回はチョコを刻むのも自分でやってみるか?」
「はい、なるべく自分の力で頑張りたいの……です」
という事で、少し危なっかしい手つきでりりあがチョコを刻む。それを見守りながら藤吾も横で別途量産用を作り始めた。
「伊奈ちゃん、手を切らないように気を付けてね」
「大丈夫だって!任せとけ!」
包丁でザッシュザッシュ勢いよく伊奈がチョコを刻む。
「本格的なのを作るのは初めてだけど、レシピ通りにやれば美味しく出来るわよね」
「わーい! 美味しいチョコ、いっぱい作るわよー♪」
杏奈とルナもやる気満々で二人揃ってチョコを刻み始めた。
「………チョコ、だよな……匂いはまぁ、チョコだが……」
秦乎がベネトナシュの様子を見ながら呟く。元々付き添いで見学兼味見係のつもりだった。
とはいえ秦乎は黒毒蛇のワイルドブラッド。蛇舌ゆえに味覚はあまり無いため、匂いでチョコを楽しむ。
ベネトナシュにとって前の世界ではエクトルは義理の祖父に当たり、ガレシュティンは一つ上の兄であった。そんな二人と料理がしたくあっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。
「お爺様、包丁で刻む時は猫の手、猫の手が大事ですぞ!」
エクトルがチョコを刻んでる横で添える手を自分でやってみせながら保護者風を吹かす。
「ねー……クロ、チョコ、レンジでチンして溶かしちゃダメ? 手が疲れた……」
手をベネトナシュの言う通り猫手にしながら刻んでいたエクトルだったが、数分後に包丁を置いてしまった。
「早速手間を惜しむな」
黒塚からはデコピンが飛んでくる。いたっ、と額を押さえるエクトル。
「先の手順確認してろ、刻むのは俺がやってやる」
包丁をエクトルの代わりに手に取り、黒塚は次の指示をエクトルに与えた。
一方、ガレシュティンは器用に包丁を扱い、刻むのは綺麗に出来ている。だが悠里はそんなガレシュテインが余計なことをしそうで怖く、付きっ切りで見守っている。
ベネトナシュはエクトルにアドバイスをしたものの少々刻むのに苦戦しているようだった。
「他人に食わせならまともなの作れ、さっさと包丁貸せ」
秦乎が無愛想ながらベネトナシュから包丁を受け取る。一応のチョコ作り経験はあるため、多少手を貸そうと言うのだ。
「……オイ、生クリーム強火でかけんな! 沸騰させんなって言われただろーが!」
ハッ、と気が付いた黒塚が思わず声を荒げた。慌ててエクトルが火を止める。
「湯を沸かすのと違うんだからよ……。菓子は繊細なんだよ、分量と手順間違えたら美味いものはできねェぞ」
エクトルのおっちょこちょいにため息を逃がす黒塚。
「分かったらちゃんと椿原達のしてるの見て倣え」
「むう……分かった」
黒塚はエクトルの頭をぽんぽん、と撫で軽く悠里たちを指さす。頷くエクトル。しかし――
「そうじゃないです、ちゃんとこっち見て」
「ゆーりは心配性なんですから。これくらいはできますよ」
ガレシュティンも生クリームは強火だった。悠里の指摘に頬を膨らませるガレシュテイン。
続いてガレシュテインは湯煎と聞いてお湯にチョコを入れようとする。
「待ってください」
「にっ、兄さま! 皆様の進め方をチラッと拝見してから進めてもよいのでは!」
慌てて止めに入る悠里。ベネトナシュも寄ってきて口出しをする。ガレシュティンは人の話をきちんと聞かず余計なことをするタイプのようだ。
その後もチョコに何か得体の知れないものを入れそうになったりとやらかしてはいたが、はりきってシャカリキ頑張る姿は楽しそうだった。
悪意はなく素直に悠里の指示に従うガレシュテイン。
「これでいいですか?」
「そうそう、その調子です」
うまくいった時など悠里はきちんとガレシュテインを褒める。
他の人もチョコを刻み、生クリームへと進んでいる。
生クリームを温めるのは少し難しい為、杏奈がルナの分を温めていた。
りりあも生クリームを温めていたが、うっかり沸騰させかける。
藤吾がすぐさま気が付きばっちりガード決めたため、大事には至らなかった。
●
適当な大きさで並べたガナッシュが冷えて丁度いい具合になった頃。
「お~、こりゃ面白いな! どうよ朝霞、私のチョコ!」
ガナッシュを掌でコロコロと形作る作業を気に入った様子の伊奈。
「……伊奈ちゃんの、大きすぎない?」
「え~、だって大きいのが食べたいじゃん?」
「一口サイズのをたくさん作るんだよ。ほら、これぐらいの」
伊奈が作ったサイズと朝霞が作ったサイズでは一目瞭然。伊奈のガナッシュはすごく、大きい。
「あさかはやっぱり上手だな! イナのは大きくて食べごたえありそうだ……!」
二人の様子を見ようと振り帰った琳が二人のチョコを見ながら素直な感想を口にする。
「あんな♪ ルナ♪ そっちはどうだ?」
琳はそのまま隣の杏奈とルナに視線を向けた。
「レシピ通りにできてるわよ」
「琳君は?」
丸くかわいらしいサイズに丸まったガナッシュを琳に見えるようにしながら笑顔を浮かべる杏奈。流石家事全般が得意な主婦だけはある。ルナが琳の手元を覗き込む。
まだ丸めては居なかった。
「でも、トリュフって丸くないといけないのかな……ちか……色々作ってみるか……?」
くるり、と今度は千香の方に琳は振り返った。千香は毎年チョコを作っている為、こういう細かな手作業は余裕だった。さくさく手早く今までこなしてきたが、琳の発想に驚いて手を止める。
目から鱗、とばかりに瞬く千香。
「お星さま、とか? ……それとても可愛いと思います!」
「そんなら型抜きとかあるか聞いてくればいいじゃん!」
すごい、とはしゃぐ千香の後に、伊奈がショコラールの方を指し示してアドバイスを口にする。「いいな!」と速攻で琳はショコラールの元に向かった。
そして伊奈は温まった手を冷水で冷やす。
「ひぇ~、冷てぇ~」
「我慢だよ、伊奈ちゃん! おいしいチョコを作るためなんだから!」
時々冷やすことによって、手の温度でチョコが溶けないようにするためだ。
一方りりあは少し大きさにバラつきができてしまいながらも一生懸命ガナッシュを丸めている。
「ま、普通じゃ面白くないからな。いろいろ作ってみるか」
りりあの様子を横目で観察しながら藤吾も自分の分のガナッシュを作り終える。折角だから、とアレンジしてみることにし、纏わせるチョココーティングを抹茶チョコレートにした。そして更に抹茶パウダーも塗す。
「あたしも少し飾ってみたいの……」
丸め終わるとアレンジしたトリュフチョコを作っている藤吾の手元を覗き込み、彼の服を引っ張るりりあ。藤吾は一度手を止め。
「簡単なのならできると思うぞ。チョコペンとかどうだ?」
「ふむ……」
と、簡単なアドバイスをした。りりあはチョコフレークやピンクのチョコペンを取りに行く。ピンクのチョコペンで桜を描こう、と思ったのだ。
藤吾は更に女子受け狙いにストロベリーチョコガナッシュをホワイトチョコでコーティングしピンクのチョコペンでデコしていく。もう一つ、大人向けとしてラム酒を混ぜたビターガナッシュを99%カカオチョコレートでコーティングしココアパウダーを塗した。
「しかし、折角のチョコレート物なら、ザッハトルテでも作りたかったね」
「あら、炉威様はザッハトルテがお好みですの?」
「いや。何となくだよ」
エレナに指導を行いながら炉威が零す。一通り作って手順を教え、エレナのサポートをしながらガナッシュまでは作った。
後は軽くコーティングの仕方を教えるだけだ。
丸めてココアパウダーをふりかける。
「大体こんなトコだ」
「意外と簡単ですのね。では、わたくしも作ってみますわ」
エレナが見様見真似でガナッシュを丸め始める。
炉威はアレンジしたものを作ろうと苺を取りに行った。
柔らかいガナッシュで苺をまるごと丁寧に包み込む。苺トリュフチョコ、といった感じだろうか。ココアパウダーをかけて見た目は少し大きめの普通のトリュフチョコに見えた。
(然し、男がバレンタイン用にチョコレートを作るのも何だかねぇ……。贈る宛てがあるのも何とも言えないけどね。自作の物は基本食わないしね)
炉威は完成したチョコを見てお物思いに耽る。その隣でエレナが覚束ない手付きで一つずつチョコを完成させていた。
(ま、エレナにでもやれば良いだろう)
彼女を見て炉威はそう思った。
着々と進むコーティング作業。
メテオバイザーが何やら真剣な顔をしていた。作業中、いつもショコラールが食材を投げて形成するので、そろそろ自分も出来るんじゃないかなぁ……と感じつつガナッシュをガン見。
(共鳴すれば出来るかも……?)
閃いたメテオバイザーはすぐに國光を見るが腕に幻想蝶が見当たらない。いつもなら右腕にブレスレットがあるはずだった。
「え? サクラコ!! 幻想蝶がないのです!! どこやったのですか?!」
國光に慌ててメテオバイザーが駆け寄る。しかし、國光は無心でコーティング用チョコを刻んでいた。
いや、無心のように見えて実は彼女のことを無視している。
いつかこんな日が……彼女がショコラールの技を『真似したい』と気の迷いを起こす日がくると國光は予感していた。
「無視しないでください! サクラコォ!」
「刃物持ってるんだからちょっかい出さないで!」
國光のエプロンを引っ張るメテオバイザーにめっ、と叱る國光。メテオバイザーが楽しむ為に協力を惜しまないつもりの國光だったが危ないことは駄目だということだ。
結局メテオバイザーは諦めるしかなく、コーティング作業を楽しむことにした。
粉砂糖を塗し、トリュフを二段重ねにして板チョコの嘴を突き刺しデコしたアヒルさんチョコレート。
そして、チョココーティングしたものにチョコペンで(・∀・)、(´・ω・)、(ΦωΦ)、(*´∀`*)、(*´ω`)などなど所謂顔文字を書いていった。
一部、持ち帰り用には花形の佐藤細工や食用銀粉、食用花びらで飾り付けをし、綺麗な箱に収めていく。
(ぱっと見は、高級なブランドのチョコだよな……)
黙って横目で見ながら國光は思った。
「なんでマツタケチョコ作ったらダメなのですかな!! きのこの形をした可愛いチョコですぞ!」
「大人の事情、っつーか、里の連中に消されたいなら勝手にしろ」
一方でベネトナシュが秦乎に止められポコポコしていた。
「チョコ丸めるー! 綺麗なまんまるにする!」
隣でエクトルがコロコロとガナッシュを丸めている。
「蛇おじちゃのは卵の形にしてあげるねー♪」
エクトルが秦乎の方に笑顔を向けた。秦乎は彼ら英雄勢にはあまり良い感情は抱いておらず、接し方はいつも以上に淡白だ。しかし見た目が若い子供寄りであるため、邪険に扱うことはない。「勝手にしろ」とだけ答えた。
ガレシュテインもデコレーションに入っている。悠里がこれなら問題なく出来るだろうとチョコペンで動物の顔を書くように指示していた。悠里は耳パーツなど細かいところを作る。
「エクトルくんもやってみます?」
悠里たちの作業を見ていたエクトルに悠里が優しく声を掛けた。大きく頷くエクトル。
「デコペンで、トリュフの表面に動物さんの顔描くんだ~。ねこさん、いぬさん、とりさんー♪」
拙いながらも一生懸命にアニマルトリュフをエクトルは完成させていく。
「上手にできました! えへへー♪」
「ほっぺや鼻の頭にココアパウダーついてんぞお前……」
出来た! とばかりに胸を張るエクトルの顔を黒塚がタオルでごしごし拭いた。
その様子に微笑ましくて悠里はくすっと笑ってしまう。
(いい人なのかも)
悠里は黒塚のことをそう思った。
アニマルトリュフを作るエクトルとガレシュテインに対し、ベネトナシュは色々とアウトなチョコを作るのは諦め、トリュフチョコを重ねて雪だるまを作る事にした。
掌に乗る可愛らしいサイズで騎士団の仲間達とそのパートナーの名前を雪だるまのお腹に書いていく。
が、内一つだけ妙にデカい、明らかに食用には向かないサイズで、お腹には「ちちうえ」の文字。
「黒塚殿、持って帰るの手伝って欲しいですぞ!」
黒塚にちゃっかり頼み込む。額を押さえて沈痛な面持ちの黒塚。しかし、断ることはしなかった。
「いっぱい借りてきたぜ……ジャーン!」
こちらは元気よく小さ目のクッキーの型を取出し千香に見せる琳。
「流石!」
と、千香は拍手を送る。
千香は型抜きの一つから星形を借り、綺麗にくり抜きホワイトチョコペンで縁取ったり、飾りをつけたりした。
その後ろでミルクチョコは普通にココアパウダーを塗した朝霞だったが、ホワイトチョコのガナッシュを前にして首を傾ける。
「ホワイトチョコは、どんな風にコーティングしたらいいんだろ?」
「先生にきいてみようぜ! お~いショコラール先生~!」
伊奈がぶんぶんっ、と手を大きく振りショコラールを呼んだ。
アドバイスを求められ少し考えてから粉砂糖を手渡すショコラール。
白いパウダーが掛かったようでココアパウダーの掛かったトリュフと色違いのお揃いのように見えた。
●
「良かったらショコラールも味見してくれ」
という藤吾の一言や、
「ししょくかいしよー♪ 皆の美味しそうだねえ……v」
というエクトールの言葉にショコラールが頷いた。
「では皆さん全員で試食を始めまショウ!」
真ん中のテーブルを神業で綺麗に整理し、全員が囲んで試食できるようにするショコラール。個性豊かなチョコがテーブルに並ぶ。メテオバイザーが全員に飲み物を用意し、わいわいと参加者全員による試食が開始された。
「上手に出来てるじゃないか」
藤吾がりりあのを味見して褒める。見てるのは少しひやひやしたけど回数をこなせば大丈夫だろ、と藤吾は思う。
「えへへ……藤吾さんのは上手すぎて凄いの、ですね」
藤吾の作ったトリュフを見ながら(これは上手すぎる気がするの……)と、つい自分のと見比べてしまうりりあ。
後で持ち帰る分は和風な包装グッズでラッピングするつもりでいた。
「……うん! いいかも!」
「おいしいな!」
自分達の白黒チョコレートを味見しながら朝霞と伊奈が頷いている。
「おいしいな……中がやわらかいんだな……」
今回こそ琳は自分の分を試食しながら感動しているようだ。
「やっぱり美味しいなぁ……」
千香も食べながら感想を口にした。一緒に作ると特に、美味しく感じる気がする。
心を込めて作った。職員の分ももちろん、英雄に持っていきたい分も。
そして琳に渡す分は「それはもう、英雄さんたちに渡す分よりも!」と一人で燃えていた。これは誰にも言えないが。
琳の分にだけをホワイトチョコでコーティングし猫顔をペンで描いた。一番に渡してある。
「はいコレ! 琳君の分だよ! バレンタインにはちょっと早いけどね」
「良いのか!? ありがとーな!!」
朝霞が琳にチョコを手渡す。すごく喜ぶ琳。
「コッチは私が作ったんだぜ! どう? どう?」
「うまいぜ! さすがだな!!」
続いて伊奈が渡した。大きめのチョコを齧り更に嬉しそうに返す。
「レシピ通りのだけど」
「美味しいわよ♪」
杏奈とルナも続いて琳へ試食用にチョコを渡した。
「これはあさかの分な! こっちはイナ! あんなとルナはこれだ♪」
琳は丸じゃないクッキー型で抜いたトリュフチョコをそれぞれに配って行く。
「コレはちかの分だぜ。今日はありがとーな!」
と、琳は千香に小さい花型のチョコを渡した。
「……お花! わ、ありがとうございます!」
渡された形にぱぁっと表情が明るくなる千香。さりげない花形チョコがとっても嬉しかったようだ。
(また一緒にお料理したいな……)
千香は琳を見つめながら心の中で呟いた。
そして試食用の皿の上の一角でチョコが審議中。
( ´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・` )。
メテオバイザーのチョコだ。
「これ、もらうn」
「あっ!」
國光が手に取って食べようとしているチョコは「(´;ω;`)」だった。メテオバイザーの声に手を止め不思議そうにする國光。
「……なに?」
「えっと……あの……」
メテオバイザーの顔が食べようとしているチョコと似たような顔をしていた。
ベネトナシュはエクトルにシュガーパウダーをまぶした雪だるま、ガレシュティンに小さな砂糖菓子の花をあしらった雪だるまを直接プレゼントする。
「私、昔から誰かと一緒にお料理したかったですぞ! その誰かがお二人で、本当に嬉しいのですぞ!」
「ベネトお兄ちゃんの雪だるまチョコかわいーねv お写真撮っていーい?」
貰った雪だるまにエクトルがはしゃぐ。ガレシュテインも礼を言う。
「はい、ゆーり。あーん!」
「ゆーりお姉ちゃん、ガレスお兄ちゃん、あーんして~~」
続いてガレシュテインが悠里にチョコをあーんするとすぐエクトルも反応しチョコを差し出して背伸びした。
「美味しいですか?」
エクトルに食べさせながらもドキドキしているガレシュテイン。
「……まあ、皆何とか完成して良かったな」
そんな仲間を眺めながら黒塚が小さく零した。
「蛇おじちゃには卵のやつ!」
黒塚や悠里の作ったチョコを貰っていた秦乎にエクトルは自分が作った卵型のチョコを差し出す。丸のみを期待した眼差しでじっと秦乎を見ている!
「……仕方ねぇな」
ため息一つ、仕方なさげに卵型のチョコを丸のみしてやる秦乎。黒塚がツッコミをしたそうな顔をしている。そんなやり取りを見ながら悠里が目を瞬かせた。
(薫さんはよくわからないけど、悪い人ではない、のかな……?)
少しばかり首を傾げる悠里。怖いのは顔だけなのかもしれない。
そんな風に顔見知りでの交換が終わると改めて自己紹介などをしながら他の人とも交換を始めた。
「はじめまして、ガレシュテインと申します。どうぞガレスとお呼び下さい」
「それ、美味しそうですね。どうやって作ったんですか?」
ガレシュテインが先陣切って自己紹介をし、様々な個性豊かなチョコに悠里が興味津々だ。
一方で、皆で交換をしている中、炉威に女性からチョコが回ってきそうになるとエレナが間に割り込む、というヤンデレっぷりを発揮していた。
が、炉威から彼が作ったチョコを貰い、全てが吹き飛ぶエレナ。
最後にそれぞれに少しばかり持ち帰り分と、講師からのどのアレンジも素敵でどれも美味しかったデスという一言と共に今回のお料理教室は終了した。
今回は賑やかで楽しい教室だった。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
---|