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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/12/21 20:38:55 -
青藍に質問!
最終発言2016/12/20 00:34:11 -
相談卓
最終発言2016/12/22 08:44:17
オープニング
●クリスマス・リンクス
人々がそわそわし始める季節――クリスマス。
街頭にはクリスマス・イルミネーションが輝き、商店のショウウィンドウには赤と緑と白の三色が飾られる。恋人や家庭人たちはその日を待ち望み、一部の者たちは自嘲的に当日の予定を語る。
世界蝕以降、創造の二十年を経てなお変わらないもの。
愚神が出現しても、大きな事件が起こっても。
商業主義的だとか本来の意味が失われているとか、そんな批判も何のその。多くの人々が、以前と変わらずイベントを楽しんでいる。変わったことと言えば、「どこかの異世界にはサンタのような英雄がいる。だからサンタは実在する」とまことしやかに語られるようになったことくらい。
これはそんなクリスマスの一角で起こった事件――。
●リア充とは何なのか
「……ここ、こうして、このプログラムを組んで、ふむふむ、前に作った言いくるメガホンの仕組みを応用して……よしよし。後はちゃちゃっと細部を……」
ブツブツと独り言を呟きながら、一人の貧乳メガネっ娘がガラクタの山に向かい合っていた。彼女の名前は仁科恭佳。現在はアメリカを中心に絶賛非リア生活中のエージェント、澪河青藍(az0063)の自称舎弟(妹?)である。今回澪河青藍は忙しくて出番がきっとない。よって彼女が出張ってきた次第である。今まで彼女に関わってきた人間なら知っているかもしれないが、彼女は天才過ぎてどっかのネジが狂ってる類の人間である。いや、わざと狂わせているといった方が正しいか。その技術力は本物であり、誰もが見向きもしないようなジャンク品から多彩な発明品を作り出してきた。だが、アホだ。マラソン大会開こうとしたり、壁ドン大会開こうとしたり、その突飛な思考回路は誰も理解できない。それでも、これまでは彼女が一般人だったから何とかなった。澪河青藍も白髪を一本見つけるくらいで済んだ。だが、これからはそうもいかないのである。胃薬常備だ、備えよう。
『……恭佳様、恭佳様』
「はいはい、なぁにヴィア」
こちらもまた多くの文献やら雑誌やらに囲まれた一人の儚げな美貌を持つ女性。その名前はヴィヴィアン・レイク。何の因果かアーサー王伝説めいた世界から、かのガネスとレイリィが作り出したドロップゾーンに迷い込んだ英雄である。一組のエージェントによってドロップゾーンから救い出された彼女は、その後恭佳と運命的な出会いを果たした。恭佳もシリアスな時はシリアスである。ここではその詳細は述べないが、ヴィヴィアンは恭佳と共に『戦いの運命を越える』という誓約を結び、パートナーとなった事だけはお知らせしておこう。そこでヴィヴィアンはレイクという姓をひとまず名乗り、今までの常識が全く通用しない世界で生きるために、社会勉強を始めたのである。
だが、ヴィヴィアンもヴィヴィアンで中々に曲者だった。
『あの、この図版ばかりの書物に記されている「りあじゅう」とは一体何を指す言葉なのでしょうか』
いきなりの爆弾質問。
「リア充? ああ、リア充ってのは、リア充の事だよ」
むっとした恭佳、適当な返事。
『トートロジーですか』
冷静に合わせる。
「正確に説明すると、生活が充実している人間の事を指す言葉。こういうと毎日毎日研究で充実している私みたいな奴らにも当てはまるけど、一般的には恋愛関係を保持している人間の事を指すかな」
口が尖る。
『なるほど。恋愛関係を保持……クリスマスまでに「リア充」になるとは、即ち生誕祭までに男女で恋愛関係を造り上げる事を指すのですか』
「そういう事。ほんと楽しんでんだろうな、くそっ……というわけで」
彼女はドライバーを脇にほうり、テーブルの上に完成させたグレネードランチャーを手に取る。その側面にはハート形の意匠が。
「観察に行こうか、ヴィア。フィールドワークは大切だって教えたでしょ?」
『その武器は必要なんですか?』
冷静に突っ込むヴィヴィアン。
「これはラブテストカノン。人々を強制的に恋に陥らせる、なんかヤバい必殺の武器よ」
興奮して語彙がめっちゃやばい。
『強制的に、恋……運命めいたものを感じます』
これだから運命厨は。
『ですが、本当にその武器は必要なのですか? 既存の恋愛関係にある男女を観察すればいいのでは』
「えー。外寒いし。本部の中にカップルいるって限らんし。って考えたら、こいつで作るのが手っ取り早いと思って」
『さらりとものすごい事をおっしゃいますね、恭佳様。男女の出会いは常に運命であって、それを……』
「越えるんだよ! さあ、運命を越えよう!」
ヴィヴィアンの言葉を遮ると、恭佳は彼女の手を取り引っ張り立たせて共鳴する。弓兵のような軽装を身にまとう少女が、そこには立っていた。
「……くそっ。何で、どうして。俺は今、お前を無性に愛してしまっている……!」
『いきなり、何言ってんだよ! ば、ばかかよ……』
『お前のことが好きだったんだよ!』
「あのさぁ……」
「キマシタワー!」
『うわあああああっ!』
『(……これが、リア充なんですか……?)』
「ふふん。大体こんなもんよこんなもん!」
そんなわけで、HOPE内の一角で、一人のラブハンターが壮大なクリスマス悪戯を敢行し始めたのだった。
解説
メイン:変なもの開発してHOPE内でいたずらを働く仁科恭佳を取っ捕まえなくていいのでリア充プレイしてください
サブ:カップルを成立させるかどうかは皆さん次第
エネミー?
仁科恭佳&ヴィヴィアン・レイク
クリスマスイベントをきっかけに良からぬことを思いついた仁科恭佳。まだまだ社会勉強中のヴィヴィアンに『リア充』の概念を教えるために、狂気的()重火器を作り出してHOPE内で悪戯を始めた。出会いこそそれなりにシリアスであったが、基本的に運命厨で世間知らずなヴィヴィアンには恭佳のギャグ補正を止める手立ては無かったのである!
脅威:イマーゴ級相当
クラス:ジャックポット
武器:ラブテストカノン
ライブスの波動を特定の周波数に調整することによって能力者や英雄の脳髄にダイレクトアタックして恋愛脳にする実際すごい感じの武器
(真面目な効果説明)回避or防御不能、共鳴している場合それを強制的に解除し、能力者、英雄双方に魅了or拒絶(X)のデバフを付与する。選択権はPL持ち。リンクレート6以上の場合は無効化することも出来る
以下PL情報
※魅了…異性同性問わず自分のパートナー+αに惚れる
※拒絶…異性同性問わず自分のパートナー+αが嫌い
(交友キャラを対象に取ることも可能)
(X)は強度。指定無い場合は6-リンクレート値で、指定ある場合それに準ずる。当然数値が高いほど深刻。
1:友達以上恋人未満(ツッコミ役可能)
2:恋しちゃったんだ絶対に
3:リンブレラブストーリー
4:101回でもプロポーズ
5:お前が欲しいいいいいい!
6:Nice boat.
※同性でも影響があります(迫真)。単純に男の友情でも大丈夫です。
※拒絶も大体同じくらいの深刻度だと思ってください。
※このデバフの解除はプレイングによってのみ行うことが出来ます。
※恭佳はほっといたらたまたま帰ってきた青藍にボコされます。自分達でお仕置きしてもオッケーです。
リプレイ
●ロリ二人
イリス・レイバルド(aa0124)とアイリス(aa0124hero001)は、食堂内の惨状に目を見張る。
「お前が欲しい!」
『私は死にましぇん!』
至る所で騒ぐ男女。こんなとこ居られないと二人は引き返す。その背後で天井の蓋が不意に開いた。
Bang!
擲弾銃から放たれたライヴスが二人に直撃する。しかし元より深い結びつきを持つ二人には効かない。幼女達は振り返るが、そこにはもう誰もいなかった。
『今、何かされたか』
「え? よくわかんないけど……」
顔を見合わせる。そんな二人へ目の色を変えた男が近づいていた。
「よ、妖精、萌えー!」
刹那、イリスはアイリスと男の間に割って入った。
「駄目ですよ? お姉ちゃんから離れてください。ね?」
「妖精が好きで何が悪い!」
男は聞く耳を持たず、イリスを押し退けアイリスへと迫ろうとする。
刹那、その顎に小さな拳が炸裂する。イリスの目は、小さな修羅のものになっていた。
「警告はしたんだぞ」
『おやおや』
●不健全に行こう
「榊さん、何か、あったの?」
『いえ別に』
泉 杏樹(aa0045)と榊 守(aa0045hero001)は廊下を歩いていた。とうとうぼっちでクリスマスを迎えた守。彼は自分が情けない。
『(今夜だけでも彼女欲しい……)』
のろのろ歩く守と、心配そうに窺う杏樹。その二人がゴミ箱を通り過ぎようとした瞬間、蓋が突然弾け飛んだ。中から擲弾銃を構えた少女が姿を現す。
「メリークリスマス!」
恭佳の放ったライヴスが直撃し、二人は頭の中を毒される。まず動いたのは杏樹の方だった。今にも泣きそうな顔をして、彼女はぽつりと呟く。
「榊さん、臭い、です。さよなら……です」
『えっ。御嬢様?』
「あっちいって、なの!」
言うが早いか、杏樹はとことこ逃げ出す。娘のような杏樹に臭いと言われ、守は一瞬真っ白になる。衝撃を反芻しきれない。
『(何だ、この感覚。どうして悲しい? これは)』
まさか、と言いかけ守は首を振る。
『なわけあるか。冗談じゃねえ。そうか。アレだ。クリぼっちのせいで頭が狂ったんだ。今夜の相手さえ用意すれば、治る!』
色々アレな結論に至った守は、目を見開いて周囲を物色。風深 櫻子(aa1704)とシンシア リリエンソール(aa1704hero001)の姿が見えた。櫻子はスルー、守はシンシアに狙いを定める。
『さあ行くぜ……俺は今、とても不健全だ』
その頃、シンシアは杏樹を見かけて興奮する櫻子を横目に溜め息をついたところだった。
「い、今した! 16歳の匂いがした! 今の子!」
『そろそろ捕まるぞ、サクラ』
「お姉さんがた!」
背後から快活な少女の声。
「今度は17歳! 流石のロリ密度!」
『とりあえず黙っておけ』
二人が振り返ると、擲弾銃を構えた恭佳がいた。櫻子は手を合わせて嘆息する。
「その控えめなスタイル! いかにもロリロリしてて――あばっ!」
ライヴスが二人に直撃した。二人の思考回路が融けていく。
「感じる。ロリの匂いを感じるわ……」
櫻子は振り向く。そこには、ちょっとだけ角から顔を覗かせている杏樹がいた。その姿に発奮した櫻子はすぐさま走り出す。
「ねえ、お姉さまとお友達になりましょ!」
「お友達……?」
固まる杏樹に向かってダイブ、もろとも床へ倒れ込む。エンジン全開の櫻子はいきなり杏樹のボディチェックにかかる。
「お? 見かけによらず持ってますな!?」
「ふ、ふえ。や、やめて、です」
杏樹は櫻子を突き飛ばし、真っ赤になって逃げだす。しかし櫻子はめげなかった。
「待ってぇ!」
『また。お姉さま、小さい子ばっかり』
取り残されたシンシア。櫻子への親愛の情は増幅され、彼女の胸をはちきれんばかりにしていた。目を潤ませ、シンシアはその場でぐずぐず呟く。
『いつも、お姉さまのために綺麗にしてるのに……』
『叶わぬ恋を追いかけても苦しいぜ』
その時、不意にシンシアは肩を掴まれ壁へと押しやられた。よろめく彼女に、すかさず守は壁ドンをかます。そのまま顎にそっと手をあてがい、シンシアに顔を近づける。
『俺の物になれよ――』
『いやっ! 私はお姉さまがいいの!』
しかしシンシアはぐずって叫び、守を乱暴に突き飛ばした。そのままシンシアは零れる涙を拭き、お姉さまを追って走り出した。
『くっ……前途は多難か……』
●この想いは烈火のごとく
『まだ日も高いのに……わたし、あなたが欲しくて仕方ないわ……』
「俺もだ……! 俺も、レミアに滅茶苦茶にされたい……ッ」
悪戯の爆心地、食堂内でレミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)と狒村 緋十郎(aa3678)は迸るリビドーに身を任せていた。入り口の方ではイリスがアイリスに迫るロリコンを全て薙ぎ払っているのだが、二人は気にも留めない。
『服が邪魔よ。緋十郎、わたしの奴隷のくせに、服が必要なの……?』
少女に衣服を剥ぎ取られるいい年の男。高まる熱が人化を解かし、狒々は尻尾を振り回して歓喜する。変態だ。そんな変態に向かって、レミアは釘付き鞭を振り上げる。
『悲鳴をあげなさい。豚のように……!』
「はいっ! 我がッ! 愛しきッ、主ぃっ……!」
※ご想像にお任せ※
「うわっ、緋十郎さんキモ……じゃなくて何してるんですか?」
十分後、五体投地で鞭打たれているドMを、哀れなロリコン達の返り血を受けたイリスが見下ろしていた。ドン引きである。レミアは乱れて胸元が露わのドレスを整え、満足げに微笑む。
『ふふ……』
「おお。イリスさんに、アイリスさん」
立ち上がったロリコン、アイリスを見てズキュンとくる。尻尾をぴんと立て、緋十郎はいい笑顔になる。
「アイリスさん、今日はいつにも増して愛らし――」
「おやぁ? 緋十郎さんも、ボクから、お姉ちゃんを、奪おうとするんですか?」
イリスは地獄突きを見舞う。さらに脛蹴り、頭突き、蛙飛びアッパー、止めにドロップキックで突き倒して馬乗りになる。
「浮気を? レミアさんの目の前で?」
「イリスさんが馬乗り、馬乗り……」
顔面右フック。
「変態!」
『緋十郎。わたしというものがありながら、この尻軽猿……!』
レミアもカンカンだ。どこからともなく荒縄を取り出すと、鮮やかな手つきで縛り上げてしまった。先程からずっと黙っていたアイリスは、すっとレミアにスマホを差し出す。
『面白いものが録れたよ。後できみのスマホに送ろうか』
『ええ。受け取っておくわ……躾に使えるかもしれないし……』
呟き、レミアはぎらぎらした目で周囲を見渡す。繰り広げられる惨状を見て目を点にしている内田 真奈美(aa4699)が入り口に立っていた。その首に掛かる十字架。それを見た瞬間、レミアはくつくつ笑い始めた。
『……あの娘、穢したくなるわね』
「待て! レミア、それはどういう……」
『罰よ。わたしが他の女と睦びあう様、死ぬほど眺めるが良いわ……!』
悪い笑みを夫に見せつけ、レミアは緋十郎を引きずり真奈美の方へと走り出す。
「うわっ。ちょ、なんかヤバげ……」
真奈美は顔を青くして、慌てて逃げ出した。
『わたしが貴方をジュデッカへ導いてあげる……!』
「ひっ!」
全速力で逃げる真奈美、追うレミア、引きずられる緋十郎。それとすれ違ったのは、調査報告をしに来た澪河組だった。
「今の、レミアさんじゃ……?」
『そうだな』
「……」
顔色を変えた青藍は、そっと踵を返す。床に落ちていた写真には気づかないまま。
その写真に気付いたのは守。そこに写る妙齢の女を見つめ、彼は拳を固めるのだった。
●ああ神さま
「助けて! 神様助けて!」
倉庫の中、真奈美は斜な態度をかなぐり捨てて必死に祈る。しかしレミアは扉をこじ開け、深紅の目を爛々とさせて中に踏み入る。
『わたし、シスターを見ていると、全て穢してしまいたくなるのよ……!』
「ひぃぃいっ!」
顎を細い指で撫でられ、真奈美は鳥肌を立てる。レミアの冷たい胸元に必死に十字架を押し当てるがまるで効果がない。レミアはその力も弱点も“向こう”に置いてきたのだ。レミアは青褪める真奈美の首筋に牙を軽く突き立てる。うっすらと滲む血。彼女はぺろりと舐め上げた。緋十郎は悲鳴を上げる。
「やめろ。俺以外の血を吸わないでくれ……!」
※血を吸いました※
「う、うう……もうお嫁に行けない……」
うずくまる真奈美を見下ろし満足げなレミア。千筋に涙を流す緋十郎。そんな微妙な沈黙を崩す大きな声が響く。
「ねぇー! お姉さまとあそぼー!」
「こ、こないでです……!」
『アレは風深の声……ふふ。もう少し見せつけようかしら』
「や、やめてくれ……!」
無視して、レミアは緋十郎を引きずり走り出す。取り残された真奈美は魂が抜けたようになっていた。やがて、貧血でぼんやりしたまま乱れた襟元を整え始めるが、そこに一人の男が飛び込んでくる。
『おい、こいつ……お前の英雄か? 今は幻想蝶の中か?』
「へ……?」
『今すぐ会いたいんだ』
守の切ない懇願に、真奈美は目を逸らしながらぽつりと呟く。
「ブリギッドは、『クリスマスはケルトの祭りよ』って、家で不貞寝してます……」
『何だと!』
「ひっ」
守は叫ぶ。真奈美は悲鳴。やがて守は肩を落とし、そっと真奈美の頭を撫でる。
『……お前じゃ若すぎるしな。もっと大人になってから、また会おうぜ』
「は、はぁ?」
意味が分からない。が、ばかにされた気がした。真奈美は弾かれたように立ち上がると、ムッとした顔で部屋を飛び出す。
「ちょっと待ちなさい! それどういう意味!?」
●薔薇も百合もあるんだよ
「いきなりやられるなんて……ラシル、大丈夫!?」
『共鳴していれば、心眼が使えたものを!』
月鏡 由利菜(aa0873)は倒れたリーヴスラシル(aa0873hero001)を助け起こす。背後から恭佳に襲われ、ラシルが由利菜を庇ったのだ。恭佳の去った方角を見つめ、由利菜は顔を顰める。
「やってくれたわね。ラシル、早く追いかけ――」
『姫よ』
ラシルは不意に由利菜の首元へ手を回す。頬を軽く染め、由利菜を腕の中へ引き寄せる。
『姫よ、どうか我が元へ……』
「え? 急に、何を」
『姫。我が最愛の……』
「(まさか、さっきの銃撃で……?)」
ラシルの乱心に思わず由利奈は真っ赤になる。常々断ち切ろうと思っているラシルへの想いが、彼女の豊かな胸を締め付け始める。
「由利菜さん、助け――」
必死に走ってきた杏樹だが、由利菜達にとても近寄れない空気を感じてそそくさ立ち去る。それを追うように現れる櫻子。
「おおっ! 18歳、そして巨乳! 今日だけで三人のロリに遭遇とは! HOPEに入ってよかったー!」
『なんだお前は』
由利菜を見るなり騒ぎ出した櫻子。ラシルは慌てて立ち上がり、剣を抜き放つ。
『姫との甘い一時、邪魔はさせんぞ』
「むっ!? あんたみたいな24歳お呼びじゃないわい!」
『言ったな!』
「え、ちょっと……」
火花を散らすラシルと櫻子。由利菜はおろおろ二人を見渡す。
『櫻子! いるのでしょう? 出てきなさい!』
そこに水を差すレミアの声。櫻子ははっと息を呑んだ。
「来た、来たわぁ。ロリ人妻のレミアたん! 待ってぇ! お姉さまは今行きますぞー!」
風のように櫻子はいなくなる。取り残された二人は、ポカンと立ち尽くすしかなかった。
「ま、まだあの吸血鬼この辺うろついてるの……? ホントもう勘弁して……」
影から様子を窺っていた真奈美は、顔色悪くしてするすると引っ込もうとする。そんな彼女を櫻子が襲う。
『17歳! レミアたんに呼ばれててもお姉さまは見逃しませんぞ!』
「ひぃ……」
『(……成程、アレをもらうと面白い事になるみたいですね)』
多々良 灯(aa0054)と水澤 渚(aa0288)の背後を歩きながら、リーフ・モールド(aa0054hero001)は悪い笑みを浮かべる。三人は遠くでラシルの暴走をしっかり見ていたのだ。だが、灯と渚は戦々恐々だ。
「おい、ヤバいぜ。さっさと帰った方が……」
「無駄だ。帰ったら帰ったで……」
渚が震える横で、灯はうんざりとため息を吐く。相方のリーフは生モノ上等の生粋腐女子。灯と渚の絡みで毎度毎度鼻血を出している紛う事無き変態だ。
「仁科恭佳、参上!」
そして現れる恭佳。床下からのエントリー。リーフはその瞬間目を輝かせる。
『さあ灯、私に見せてください! いつもの約束です!』
「うわっ」
リーフは灯と渚の背中をどんと押す。バランスを崩した二人は、そのまま弾丸の直撃を貰ってしまう。
「……灯」
「渚……」
いつも思っていたんだ。毎日俺の部屋に押しかけて、顎クイとか壁ドンとか……。リーフのせいとか言ってたけど、本当にそうなのか? ファッションBLなのか? ……なんだ、この胸のモヤモヤは。これって、もしかして……
なんだ。この気持ちはなんだ。違う。こんなのは違うんだ。アレはリーフとの誓約なんだ。一日一回の餌の時間なんだ。壁ドンとか顎クイとかしてきたが、アレは、ただ、それだけ……違うんだ……
真剣に己が想いに向き合う渚と、あくまで抵抗する灯。見透かした渚は、灯へ飛び掛かる。
「お前、ノンケのつもりかよ!」
跳ねる心臓。灯を押し倒した渚は、灯の胸元を撫でながら、そっと耳元で囁く。理性は既に弾け飛んでいた。
「俺は認めてるぞ。灯に恋してるって……やべぇ。言っちまった……」
真っ赤になって首を左右に振る渚。それを見上げて灯は目を見開く。そして悟った。渚の手を取り、真っ直ぐに灯の目を見つめる。
そうか。これが、恋か……思えば、あの日あの時、あの場所で渚に逢った時から、俺は……ただ誓約のためにと言い聞かせていたが。そうか。これは俺の望みでもあったのか……
もう二人の精神はばかになっていた。どこまでが魅了の力でどこまでが本心なのか、既にわからない。
「俺もだ、渚。幼稚園の頃、俺のお嫁さんになるって言ってただろ……? 今も有効か?」
「……ああ。そうだな。言ってたな。有効かなんて、聞くなよ」
二人は見つめ合う。リーフは鼻血を拭う。
「ここじゃ二人きりになれないな……家に帰ろう。今夜は燃えさせてくれよ……?」
「ああ。お前こそ、中途半端は許されないんだぜ……?」
『ふふふ、夢みたいです……』
スマホを取り出したリーフ、サイレントでパチパチ二人の絡みを写真に収める。魅了なんぞなくても彼女の頭のネジは既に外れていた。
『……俺にはわかるぜ、ここだろ……?』
「待て、榊、俺だ、さか――アッー!」
※尻尾です※
野獣の雄叫び。リーフは聞き逃さない。二人で立ち去る灯達をよそに彼女は駆けていく。
『あ、間違えた。悪い……』
「間違えたってなんだ……? レミアに置き去りにされて泣いていたのに、榊、お前は……!」
『やめろその目』
『ふふ、オッサン×オッサン! 全然いけますね……!』
今まさに、リーフの目の前は天国であった。
「申し訳ないけどホモはNG……キリスト教的に非生産的、うん」
一方影から見ていた真奈美は、胃のムカつきさえ感じる。その服は乱れていた……。
●悪い夢から醒める時
「……」
杏樹は震える事しか出来なかった。絡み合うレミアと櫻子、芋虫のように這い寄り涙を流す緋十郎。杏樹は踵を返して逃げ出した。その彼方には、見慣れた幼女達の姿。
「イリス、さん……」
だが、波来るロリコン達を鮮やかな拳打で征し続けるイリスの身体は返り血に塗れていた。はっと息を呑むと、イリスが挨拶を返す前に再び逃げ出す。
「杏樹さんどうしたのかな?」
『まぁ、後で見に行けばいいさ』
踊るように敵を排除し続けるイリスを眺め、アイリスはふっと笑う。
『まずはイリスが落ち着かないとね』
「(怖い。誰か、助けて……)」
青褪めて逃げる杏樹だったが、ようやく気が付き足を止める。
「(……そうだ。榊さん。いつも、守ってくれてるの。榊、さん)」
拒絶の解けた杏樹は、顔を上げとことこ走り出した。
『ラシル様、わたくしは貴方の僕でございます』
だが守はラシルに跪いていた。ラシルはあからさまに迷惑顔だが、不意に思い直す。
『おい、守……いや。守がいればより確実にユリナを守ることが……守』
守へ熱い目を向けるラシル。由利菜への想いが昂じてもうダメだ。
『ええ、由利菜様も、ラシル様もわたくしがお守りしましょう』
「(……ど、どうしてこんな……いけません、このままでは大変なことに!)」
ラシルの暴走をおろおろ見ているだけだった由利菜、ついに覚悟を決めた。
「主君として命令します! 目を覚ましなさい!」
由利菜は守を押し退け、ラシルに平手打ちをかました。その痛みが、ラシルをハッとさせる。顔を顰め、ラシルは由利菜に頭を下げた。
『すまないユリナ。守るべき姫を押し倒すなど、騎士失格か……!』
「ううん、ラシルはいつだって私を守ってくれているもの。今回は相手がひどいだけよ」
『……そうだな。行こう、奴に鉄槌を下す!』
『あ、ちょっ――』
二人は走り出す。由利菜は未だに高鳴る鼓動を耳で聞き続けていた。迫られた時の感覚が蘇る。普通の恋に憧れながらも、彼女は改めてラシルへの想いを感じるのだった。
「(この気持ち、無理に抑え込んだら余計に溢れてしまいそう……本当に重症ね、私)」
『これで懲りたかしら? 緋十郎』
「ああ、もう勘弁してくれ……!」
『じゃあ二度とこんな事の無いように、後で躾けてあげるわ……』
魅了の解けても二人は相変わらずである。その横には、死んだ目のシンシアに迫られる櫻子。
『どうして私の方を向いてくれないの?』
「か、可愛……はっ! この櫻子さんが、二十の年増に萌える!? 惑わされちゃダメ櫻子、ロリコンは遊びじゃない!」
『ひどい、そんな事言うなら……』
「待って。それはダメ」
二人を見つめる緋十郎達。色々達観している彼らはこれも一つの愛のカタチと納得し、連れ立ってその場を後にした。
「恭佳!」
青藍のげんこつ。頭を手のひらで押さえながら、恭佳は青藍を睨みつけた。
「いったいな!」
「いい加減にしろ! 大変な事になってるでしょ!」
「面白い道具思いついたから……」
恭佳は口を尖らせ、銃を撫でながらぽつりと呟く。怒る青藍は一気に胸倉へ掴みかかる。
「そんなノリでこんな事するな!」
「本当ですよ!」
華々しい鎧を纏った由利菜は叫ぶと、高々跳び上がって恭佳に突っ込む。
「悪戯の代償、払いなさぁい!」
「おっと」
青藍は素早く身を翻す。由利菜の蹴りが恭佳の肩にクリーンヒットした。
「あいええっ!」
「……全く、もう」
恭佳は床を転がっていく。由利菜は呆れたように溜め息をついた。青藍はそんな由利菜に向かって深々頭を下げた。
「本当にすいません……」
「ひたい! はにふるんでふか!」
『決まっているでしょう。因果応報よ』
一方、飛んでった恭佳は共鳴済みのレミアに両頬をぐにぐに引っ張り回されていた。その横ではイリスとアイリスが足つぼマッサージを始めている。
『君のせいで難儀に巻き込まれたからねぇ。ちょっと思い知ってもらわないと』
「そんな道具ボクは認めないからね!」
「ふえ! ねえしゃんはふへへ!」
「だめ」
青藍があくまで彼らに背を向けているうちに、一人の男が絡み合う女子達の中に紛れ込む。
『……どいてくれ』
『ん? 守、一体どうしたんだ?』
女子達を下がらせた守は、急に恭佳を掴み上げる。
「あ、そいつヤバい! 本当に! 色々馬鹿になってる!」
守を追いかけてきた真奈美が叫ぶ。青藍はその叫びで振り返る。刹那、恭佳は守に鋭いボディーブローを貰って吹っ飛んでいった。上体を起こし、恭佳は目を白黒させて叫ぶ。
「ナンデ!? ナンデ!?」
『なあ、ヴィヴィアン、出てきてくれ。緋十郎に君の事を聞いてから、俺は君に会いたくて仕方が無いんだ。戦えなくなったら出てくるよな……』
「え? 何言ってんですかこの人!」
さすがの恭佳も青くなる。
「だからヤバいんだって! クリぼっちこじらせてるんだってば!」
『なあ、頼む。出てきてくれ……』
拳を固め、さらに恭佳へ襲い掛かる。しかしその時、風のように鋭い一閃が守を横から襲った。不意を突かれた守は横倒しになって派手に転がる。
「この子は私の妹みたいなもんなんです。無為に痛めつけるような真似は許しません」
刃を横に構え、青藍は守に向かって冷たく言い放つ。その凛とした佇まいに、恭佳は目を輝かせた。
「姉さん……!」
「うるさい。お前は反省しろ!」
「疑似姉妹丼! 最高じゃないかぁ!」
そんな彼女達に向かって、シンシアと一つになった櫻子が飛びついていく。青藍はもろに巻き込まれてどうと倒れる。
「何すんですか!」
「うーむ。20歳なのが惜しいスタイル……」
「ひぃっ!」
『(恭佳様。収拾を……)』
「……そろそろつけないとね」
恭佳はむくりと起き上がると、銃のダイヤルを弄って引き金を引いた――
●ラスト
「元に戻ったか。いやぁ、良かった良かった。お姉さん安心」
『サクラは、何にも変わらないな』
シンシアは元に戻り、ムッとした顔を主に向ける。
『本当にすみませんでした』
その横で、青藍に向かって守は土下座する。恥じるあまり顔が上げられない。
「悪いのは恭佳ですけど……アレはダメです」
「よく、わからないけど、一緒にあやまるの。ごめんなさい」
青藍の横に妙齢の女性が一人立つ。ヴィヴィアンだ。彼女を見上げ、守は引き攣った笑みを浮かべる。
『あなたが、ヴィヴィアンさんですか? ……あの、アレでしたら、今日お茶とか……』
『……おっしゃっている意味がよく分かりませんが……』
『ですよね……ハハハ』
一方、レミアはガタガタ震える真奈美に向かって小さく微笑む。
『悪かったわね、真奈美。つい苛めてしまって』
「あ、ああ! いやそのそんな! 血を吸われるなんて、非常に新鮮な経験でしたよ、ええまあはいそりゃまったく!」
「相当トラウマになっているようだな……」
「そりゃなりますよ。あれ。そういえばもう一組被害者がいたような気がしたんですが」
真奈美は顎に手をあてて首を傾げる。恭佳は肩を竦めると、小さくため息を吐いた。
「別に寝れば治る程度の強度ですし、大丈夫だと思いますがね……」
『思いつきました……渚と灯台! 売れますね、これは!』
※二人が幸せなキスをしたかもしれないエンド※
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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