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クリスマス関連シナリオ

【聖夜】クリスマスマーケットへご招待!

時鳥

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/12/31 19:12

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掲示板

オープニング

●クリスマスマーケット
 ヨーロッパでは11月末から12月25日まで、街々の広場でクリスマスマーケットというイベントが行われる。
 発祥の地とされるドイツの言葉ではWeihnachtsmarkt(ヴァイナハツ・マルクト)と呼び、各地大小の違いはあるもののドイツでは150以上は開かれる一大イベントだ。
 グリューワインと呼ばれるホットワインは香辛料などが混ぜられており、クリスマスマーケットによって味が変わったり、ロゼや白ラインがベースのものも存在する。
 また、グリューワインのカップは年や場所により全く異なり、特殊なのではカップの上から覗き込むとハート型になっているものもあるのだ。
 そんなクリスマスマーケットに目を付けた息抜き企画部。いつも楽しそうである。
「慣れてない方にも是非、一度行ってみて欲しいですね」
「グリューワインもさることながら焼きソーセージやヴァイツェンビールも最高だからな」
 女性職員の言葉にうんうん、と頷く男性職員。
 こうして、ここ最近、様々な依頼で忙しいエージェント達の息抜きになれば、とバスを手配し、大きなドイツのクリスマスマーケットへ案内する企画を立ち上げた。

●バスの中で
「グリューワインのカップは様々な形があります。買ったお店で、飲み終わった後に返却すればデポジットが返ってくる仕組みです。そのまま持ち帰ることも出来ますよ」
 ドイツのクリスマスマーケットへ、H.O.P.E.が手配したバスでゆったりと向かう中、クリスマスマーケットでの過ごし方を職員が説明している。
 ヨーロッパ出身者でなくても存分に楽しめるように、と。
「オーナメントって結構いろいろあるんだね! あ、これカワイイ!」
 クリスマスマーケットに良く売られているものがまとまっている冊子の一ページを指さし、タオ・レーレ(az0020)がはしゃいで隣に座るゼファー・ローデン(az0020hero001)へと話しかけた。
「くっ……ホーリーナイトゥに捧げられた光の民の祭りにこの俺が何故向かわなければ……」
 腕と足を組み意味深にぶつぶつと呟くゼファー。いつものことなのでタオは気にせずぺらぺらと冊子を捲る。
「焼きソーセージとかバームクーヘンとかシュネーバルとか美味しそうなものもいっぱいだよ!」
 そしてゼファーが好きそうな食べ物のページを見せた。わざと苦渋に満ちた表情を浮かべていたゼファーだったが中身は流石14歳。食べ物のページにすぐ表情が明るくなる。
「どうしてもってタオが言うなら食べてやってもいい」
「うん、買ってあげるからね! 未成年でも飲めるホットワインみたいのもあるみたい」
 小心者のゼファーが出店で一人で買い物できるはずがないのは容易に想像できるので、楽し気にタオはうん、と頷く。
 周りがクリスマスマーケットのイルミネーションで明るくなってきた。
「見てみて、ゼファー君! メリーゴーランドがあるよ!」
 バスの窓から見えるメリーゴーランドを指さしテンションがより上がるタオ。
 そして、バスが止まる。
「着きました。皆さん、是非楽しんできて下さいね。お困りのことがあればお渡しした冊子の番号に連絡をください」
 職員がバスの中にいる参加者を見て微笑んだ。

解説

●目的
クリスマスマーケットを楽しむ。

●マーケット
比較的大きなドイツのクリスマスマーケット。
様々な出店が並び、出店が電飾で彩られ、薄暗いドイツの夜を明るく演出している。
中央広場には大きなクリスマスツリーと、移動型メリーゴーランドが設置してある。
クリスマスツリーにはドイツ特有の木のオーナメントや光り輝く鮮やかな電飾が飾られている。

●出店
飲み物や食べ物の他、キャンドル、オーナメント、木のおもちゃ、帽子やマフラーなど、種類は多岐に渡る。
飲み物は有名なグリューワインの他、ホットビールや生ビール、アルコールが入っていないキンダープンシュやホットココアなどがある。
グリューワインのカップは紺色の長靴型、年号とクリスマスマーケットの絵が描かれている。持ち帰ることが可能。
グリューワインは赤と白の二種類。
焼きソーセージはパンに挟まっていたり、種類は豊富。フライドポテトやフラムクーヘンなどもある。
ワッフル、シュネーバル、クレープ、焼き林檎など甘いものもたくさんある。
※外見年齢が20歳未満の方のアルコール摂取はマスタリングします。
※クリスマスマーケットにあるものであれば何をプレイングに書いても問題ありません。基本の範囲の買い物であれば通貨は減りません。

●NPC
タオとゼファー。息抜きに参加した。タオは可愛い置物やオーナメントに興味がある。
マーケットを回っている間、ゼファーはタオの後ろに引っ付いて行動するので迷子の心配だけはない。
二人ともクリスマスマーケットは初めてで見るもの見るもの新しく、特にタオは色々なものに興味を示す。
※NPCはプレイングに絡みの記述が無い場合、リプレイに出てきません。

リプレイ


「今年のクリスマスは新鮮なものになりそうだなぁ……」
 揺れるバスの中、加賀谷 亮馬(aa0026)はシド (aa0651hero001)と一緒に買い物リストを見直しながら呟いた。ドイツという異国でのイベントにわくわくしている。
「むむ、我もお洒落する必要があったのだろうか……?」
 加賀谷 ゆら(aa0651)に服を整えてもらいながら、Ebony Knight(aa0026hero001ことエボニーが零す。エボニーは普段全長2mの黒い機械の鎧を纏っているが、今回は鎧を脱いできていた。見た目は少女であり、普段そんな大きな鎧を着ているようには到底見えない。
「ドイツのクリスマスマーケットかー。可愛いもの、いっぱいあるだろうなー」
「ふむ。まあ、今年一年もバタバタと過ぎたからな。最後くらいのんびりと過ごすさ」
「そうねー。いろいろあった一年……。買い物でどーんと発散よー!」
 ゆらがエボニーの面倒見つつシドと話す。忙しい日々で今までスケジュールも上手く取れなかったがやっと亮馬と一緒に出掛けることが出来た。さながら新婚旅行の気分だ。
 期待に胸を膨らませ、ゆらは窓の外を見る。
 空回りしがちなゆらの気合に苦笑を浮かべていたシドだがゆらに釣られるように窓の外のイルミネーションを見た。
(エボニーとゆっくり見て回るのも悪くないか……)
 そう、心の中で呟いたと同時に、バスが目的地に到着した。

「何コレ、何コレー!!超スッゴイんですケド……っ」
「ああ、アドベンドに行われる祭り、みたいなもんだ……」
 バスから降りたカール シェーンハイド(aa0632hero001)がおおはしゃぎで辺りをきょろきょろと見回している。その隣にレイ(aa0632)が並び彼も瞬くイルミネーションに彩られ並ぶ出店に感嘆の声を漏らした。
「人もスゲー沢山居るじゃん。でも……大勢だけどさ、何か皆、幸せそー」
「……思う所は色々在るだろう……だが……アドベンドを心待ちに過ごす……その心が現れるのかも、な」
「で、さ……レイ……」
 カールが人混みにやや圧倒されている。うんうん、とレイは頷いて相槌を打つが、カールがレイを振り返り
「……そのアドベンチャーだか何だかって……何?」
 真剣な表情で問いかけた。
 アドベントとはドイツ語でクリスマス前の4週間のことを指す。つまり今日もアドベントに該当するのだ。
「メリークリスマス、アイリスちゃん! 今日は目いっぱい楽しもうぜ!」
「メリクリだよ佐助! いつもお仕事お疲れ様、今日はいっぱい遊ぼ!!」
 古賀 佐助(aa2087)がロングブーツでバスを降りる古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001)に片手を差し出し、改めて今日一日を’一緒に’楽しもう、と言葉を掛ける。大好きな夫の手を握りながら菖蒲も笑顔で答えた。
 ちなみに菖蒲の能力者、防人 正護(aa2336)は年末まで仕事でいない。グロリア社は鬼畜なのです。
 菖蒲は黒いジャケットの上着の下、水色のタートルネックのセーターを着こみ、スカートの下からニーソが覗いている。肌を露出させておらず、きちんと寒さ対策をしていた。
 二人の吐く息が白く染まる。
「クリスマスマーケットって初めてだけど、綺麗でスゲー楽しげだな!」
「クリスマスマーケットって言うんだ……確かにクリスマスの物ばっかりだね!」
 しっかと手を繋ぎ初めてのクリスマスマーケットに目を瞬かせる二人。
「わー賑わってるね!」
「想像以上ね」
 そして、こちらも初めての二人、アキト(aa4759hero001)と美咲 喜久子(aa4759)だ。話にはよく聞くし、映像も見たことはあったが、実際に目にするとやはり大幅に違う。
「きっこさんは何買うー?」
「そうねぇ……やっぱりプレゼント類かしら。自分へ……って言うのも切ない気がするけれど、自分への贈り物も良いかな……」
 楽し気に問いかけながらも興味をひかれたお店に向かっていくアキト。その後を追いながら喜久子は問いへの答えを口にしながら続く。
「ドイツまでって、結構遠出しちゃったわね。スヴァン、疲れてない?」
「大丈夫です、先生!!」
 バスから降りてきたオリガ・スカウロンスカヤ(aa4368)が振り返り、英雄であり、弟子であるスヴァンフヴィート(aa4368hero001)の顔を覗き込む。元気に答えるスヴァン。
 最後にバスから下りてきたのはレイラ クロスロード(aa4236)だ。車椅子を職員が一緒に下ろしてくれる。
「クリスマスマーケット! キトラちゃんやN.N.と来れて嬉しいよ!」
「そう、ね。精思う存分楽しみましょうね」
「キトラも嬉しいヨ! イフねぇいっしょだヨ!」
 レイラは一緒に来ていた彼女の英雄、N.N.(aa4236hero002)とキトラ=ルズ=ヴァーミリオン(aa4386)に声を掛ける。N.N.が一つ頷く横で、キトラが元気よく答えた。そして、自分の英雄イフリート=ドラゴニア(aa4386hero002)もレイラ達に紹介する。
 生まれ故郷でもあるドイツで友達や英雄と共に買い物を楽しめることにレイラの胸はとても弾んでいた。
 そうして各々がそれぞれ好きなようにクリスマスマーケットの中に向かったのだった。


 珍しくきちっとスーツを着こなしているティテオロス・ツァッハルラート(aa0105)。しかし相方のディエドラ・マニュー(aa0105hero001)はいつもと変わらぬエルフの巫女の姿だ。
「今日もワインですか」
 いつも『飲める』というだけで仕事を選んでくる疑惑があるティテオロスをディエドラは咎めるように見つめる。
「半分程は当たりと言っておこうかね。残り半分の半分は仕事だよ」
 ティテオロスはディエドラの視線を気にした様子もなく、素直に答えた。
「では四分の一は何処へ?」
「ワイン以外を頂くのさ」
 再度のディエドラの問いにティテオロスは口端を釣り上げて見せた。
 そして、ティテオロスはグリューワインが売っている店へと足を向ける。
 先にそこでグリューワインを頼んでいたレイとカール。
 赤ベースと白ベースを一つずつ頼んでいた。
「んー……この赤の芳醇な香り……」
 赤ベースの香りを吸い込みうっとりとするカール。
「白も悪くない……幾らでも行けそうだ」
 レイが白ベースを口の中で転がし感想を零す。グリューワインを楽しみながら行きかう大勢の笑顔を見送り、自然と暖かい気持ちになるレイ。
 そして、グリューワインを堪能し終えると今度はドイツビールを頼みに行くレイ。
「あれ? きっこさーん?」
 その近くできょろきょろとアキトは辺りを見回して、喜久子の姿を探していた。
「ふむ。迷子ってやつなのかな? お、何だか良い匂い」
 喜久子が見当たらず首を傾げたアキトの鼻孔を香ばしい匂いが擽る。ふらふらと吸い寄せられるように店へ向かうアキト。
「ホットビール? 初めて聞いた。飲みたい飲みたーい!」
「あ、さっき同じバスにいた人じゃん!」
 店の人にホットビールの説明を聞きはしゃいでいるアキトに気が付きカールが声を掛けた。
「本当だー。アキトだよ! 二人ともビール飲んでるの?」
 アキトがホットビールを受け取りレイとカールが使っている立ちテーブルに寄ってくる。
「オレはカール。こっちはレイ! 折角だから一緒に乾杯しようぜ」
 カールも答えるように自己紹介をしグラスを軽く掲げて見せた。気軽に頷くアキト。
 三人がグラスを合わせちんっ、と軽やかに音を鳴らす。
「わぁ! ビールなのにあったかい! あったかいのにビール!」
「へぇ! すごいじゃんっ」
 ホットビールを飲んでこれって凄いー!! とばかりにはしゃぐアキトにおぉ、とカールも陽気に返した。わいわいと盛り上がり始めている。
「……何て言うか……早めの忘年会ってトコか」
 そんな二人を見て苦笑交じりにレイが零す。
「じゃあ、忘年会ってことでたくさん飲もうぜ!」
「いや、カールには反省会でも良いんじゃないかと思うが」
「……っ! お、オレに……は、反省することなんか1個も無いんじゃねーの?」
 ぐいっと煽りかけたカールにレイがしれっと酷いことを言うと、心外そうにカールはレイを見遣った。
「胸に手を当てて良く考えてみろ……。聖夜に向けて……な」
「うーーーーーっ!」
 胸を指でとんとん、と叩きながら意味深に言うレイに、言葉が無くなるカール。二人のやり取りをホットビールを飲みながら不思議そうにアキトは見つめていた。
 そんな風に早速、お酒の類を堪能する成人組に対し、未成年や未成年連れは買い物を楽しんでいた。
 エボニーを肩車しゆらの行きたい場所へ一緒に並んで歩いていく亮馬。
「寒い」
「だからって何で肩車なんだ」
「新居に飾るクリスマスツリーのオーナメント、欲しかったの」
 身を縮めるエボニーに亮馬がため息を零すも、ゆらが見てみて、と亮馬の腕を引き、色とりどりの様々な模様や大きさが並ぶお店を指さした。
 綺麗だな、と答えながら亮馬が頷く。これがいいか、あれがいいか、と色々と手にとっては悩むゆら。
 そこにビールと三種類のソーセージを持ってシドが戻ってくる。エボニーに半分に割ったソーセージを一つ差し出した。もきゅもきゅと満更でもなさそうな顔でエボニーが頬張る。
「次はあっち!」
 ゆらが別のお店を指さす。木のおもちゃが飾れているお店の前に亮馬は知った顔を見つけた。
「お、ヌーちゃん。やっほー!」
 手を振りながらN.N.に声を掛ける亮馬。
「一緒にいる子が……話してたレイラちゃんだな」
「そうよ。レイラ、こちら亮馬。そして……」
「英雄のエボニーに、妻のゆらだ」
 車椅子に座るレイラを見て言う亮馬の言葉に頷きながらN.N.は亮馬の肩に乗るエボニーと隣のゆらを順に見た。すぐに亮馬が二人を紹介する。
 そして、亮馬がレイラ達と一緒に居るキトラ達にも視線を向けた。
「キトラだヨ! こっちはイフねぇ!」
 視線にキトラが答え、にっこりと笑って挨拶する。
「少し見ない間に大所帯になったな」
 フラムクーヘンを買って戻ってきたシドの一言が飛んできた。
「なぁなぁ、手に持ってんのなんだ?」
「美味しそうだネ!」
 シドを紹介する前にイフリートとキトラがフラムクーヘンに反応しシドの傍に寄って行く。10代に見える二人にシドは食べて見るか? と、フラムクーヘンを分け与え、更にエボニーにも食べさせた。
「折角だからお話ししながらグリューワインでも飲まない?」
「あぁ、折角だしな。ただワイン……飲んだ事ないんだよなぁ……ゆらに万事任せるぜ」
 亮馬の言葉にゆらが任せて、と頷く。8人が連れ立って近くのグリューワインの店へと向かった。
「グリューワイン大好き―。カップいただけるなら、お揃いで使おうね」
 赤ベースを頼み、貰ったカップを持ちながら同じカップを持つ亮馬に微笑むゆら。未成年たちはキンダープンシュというグリューワインに似たアルコールの入っていない飲み物を買う。
 8人でテーブルを囲みながらわいわいと暖かい飲み物を口にしながら楽しく交流を深めていく。シドはさり気なくつまみのつもりかソーセージを買ってきていた。
 そして、隣の席、レイ達三人が話が盛り上がっているところだった。キトラが「ロック」という言葉を耳にし、レイ達の三人のテーブルに向き直る。
「今、ロックって言ったよネ?」
「あれ、バスの中にいた人二人目……もっとじゃん!」
 振り返りカールがキトラの顔を見て瞬き、先程見たような面子に瞬く。
「そう言えば……せっかくですから一緒に飲みませんか?」
 と、少し飲んでほどよく体も温まり、ほろ酔い加減のゆらが気が大きくなったのか三人を誘った。

 フラムクーヘン、シュネーバルを買う古賀夫婦。二人は歩きながらまずフラムクーヘンを菖蒲が手に取る。もぐっ、と齧ると薄い生地がカリッ、と音を立てた。
「いつも食べてるのとちょっと違うよこれ……ほら佐助も食べて見てよ! あーん……」
「この辺のとか、あんま聞き覚えないけど……お! 美味いなコレ!」
「あ、口の周りについてるよ……ほら!」
 菖蒲がフラムクーヘンを佐助に差し出す。ぱくっと食べて満足そうにうなずく佐助。サワークリームが口元についてしまった。指ですくって菖蒲が自分の口の中に入れる。照れくさそうに佐助が笑う。
 続いてシュネーバルを佐助が頬張った。
「これもサクサクして美味しいぜ、アイリスちゃんも食べてみる? あーん」
 今度は佐助が菖蒲に、という完全にイチャイチャカップルの二人。
「あらあら、デート中の人たちもいっぱいみたいね」
「やだ、先生とふたりきり……」
 そんな超らぶらぶ古賀夫婦とすれ違ったオリガとスヴァン。微笑まし気に呟くオリガの言葉にスヴァンはハッとした。しかし、オリガは何のことかさっぱり分かっていないようだ。
 二人で様々なものを見て歩く。
「いろいろ見るのもいいけど、はぐれないようにしないと」
「あ、あの、手とか腕とか……」
 そして色々と話しながらもスヴァンの腕を取り絡めるように繋ぐオリガ。スヴァンの頬に熱が籠る。
「あら、可愛い。スノードームかしら??」
 と、おかまいなしにオリガはスヴァンの繋いだ手を引き、気になったお店へと引っ張って行った。
 大きいのから小さいのまで所狭しとスノードームが置かれている出店。
「サンタクロースにトナカイに……あら、こちらのはクリスマスツリー?」
「これは研究室に、これは家に……よし、買っちゃいましょ♪」
 スヴァンがその種類の多さに瞬いている間にオリガは気に入ったものを手に取って行く。
「わ、私もこれ、買っちゃってもいいですか??」
「あら、自分が好きなのを買っていいのよ?」
「こ、これがいいんです!!」
 オリガの手にしたスノードームと同じものを手にし問うスヴァンにオリガは不思議そうに首を傾げた。しかしはっきるとスヴァンは自分の気持ちを言い切る。オルガがよく分からない、と反対側に首を再度傾げるも、スヴァンの嬉しそうな様子にまぁ、いいかしら、と微笑んだのだった。
「定例的にマーケットが開かれる規模の街には、定まった需要がある。需要があれば供給者が住むようになり、それらが集まれば徒党か、或いは競争が生まれる」
 そんなオリガ達の横を通り過ぎ、グリューワイン片手にクリスマスオーナメントや職工品、技巧品の並ぶ店舗巡りをするティテオロス。買い物をしているのではない。美術商としての調査を行っているのだ。
 気に入った出店では声を掛け、若手の職工に名刺と残り香を残して歩く。ワインは一体何杯目か分からない。
「美が常に高尚で、一握りの天才に依って生じるというのは有触れた誤解だ。80年代アメリカンフィルムの粗製乱造から現代に通じる多くの“名作”が生じたように、こうした生活の中の金銭的遣り取りからも見るべき物が生まれる事はある。日本風に言えば青田買い、という所哉」
「……でー、私はなぜそのお買い物に付き合わされたとー?」
 不満げなディエドラ。ティテオロスは新しいワインを買いそれを彼女に手渡しながら
「その前に、少々飲み給え、ね」
 と、言いつつ意味深な笑みを口元に刻んでいた。


 わいわいと大所帯で過ごした後、少しして各々が買い物へと出かけた。
 レイは一人でマーケットの中を歩いている。
 普段は邪険にしているように見えるカールに偶には贈り物をしようと思い立ったのだ。
「カールの好きな物……料理に動物に……音楽、か」
 呟きながら何気なしに一店一店眺めるレイ。或る店の前で足を止めた。小さな木で彫った猫が細工されたオルゴールをそっと手に取る。ネジを回すとオルゴール特有の音色がゆっくりと流れ始めた。曲はドイツの民謡だろうか。
 美しく奏でられる音の鼓動に、これをカールへのプレゼントにレイは決めた。
「……どう思う、だろうな。ま、熱でもあんのか……とか言われそうだが」
 渡した時のカールの反応を考えて苦笑いするレイ。そんなカールは食べ物関連の出店を一人で回っていた。
「こっちは……ドーナツに似てる、けど……んと、シュネーバル……?」
 美味しそうな匂い、食べたことの無い物達に食指が動く。
「ソーセージ焼いただけでこんなに美味いとか無くねぇ?」
 更に料理好きとして、作ってみたい気持ちも大きく膨らんでいく。
「帰ったら作って、レイに食べて貰うってのもイイかも! アルコールのお供なら、普段よりは食も進むかもしれねーし!」
 あっちこっちで食べ歩くカールだった。
 こちらもキトラ達と別れ買い物にでたレイラとN.N.。お互いに相手に送るクリスマスプレゼントを探す為だ。
 レイラは目が見えない為、お店の人に触ってもいいか、N.N.が確認しながらゆっくりと色々と見ていく。
 そして様々な店を回り、冷やかしたり小物を買ったりしながら見て回っている古賀夫婦とかち合った。
 レイラが菖蒲と知り合いだと知ると、折角だからと焼きソーセージでも食べながら話さない? と、提案する佐助。
 もちろん、とレイラは快諾した。
 歩き出す四人。佐助はレイラ達と菖蒲が話している隙をついてなにやらやっていたようだが、誰も気が付かなかった。
 そして、喜久子を探しに出たアキト。
(あー、何かキラキラしてて良いカンジ♪)
 と、楽し気に店を回っている。折角だから、と留守番している第二英雄に何か、と縫い包みを見つめる。
「これ下さーい!」
 少し悩んでから白い可愛らしいティディベアを買った。別の店で喜久子の為にマフラーも購入する。
 その頃、ゆら達四人。ゆらがお酒に弱く抜けるまで少しかかったが買い物を再開していた。
「エボちゃん、このマフラーと帽子可愛いよ。似合うー。クリスマスプレゼントにしよーね」
 ゆらが買った二つを、暖かくなるようにその場でつけてあげる。
 そんなゆらの手を亮馬がそっと引いた。
「このネックレスとかどうよ。ゆらにピッタシだと思うぜ?」
 亮馬は手にしたネックレスをゆらの首元に合わせて見る。
 その間に今度はワッフルをエボニーに食べさすシド。完全に餌付けだ。
「うむ。シド殿も食べておるかな。我ばかりに与えても仕方なかろうて」
「あぁ、食べるよりこっちのがいい。日本酒もいいが、これもなかなかいけるな」
 白ベースのグリューワインを呑みつつシドは答えた。こんなに様々な種類の酒を飲めるのは酒豪にとっては至福のひととき。
「亮馬よ。あれがメリーゴーランドか……初めてみたな」
 光り輝き軽快な音楽を流しながら回るメリーゴーランドを見つめエボニーが呟いた。
 エボニーが見ていたメリーゴーランドに差し掛かる佐助と菖蒲。折角だから乗ろうとする二人。
 普通よりは小さめだが、装飾は可愛らしく雰囲気がある。
 二人乗りを選んで前に菖蒲を乗せ、後ろから佐助が彼女を抱えるように乗った。体が密着し、寒空の下相手の体温がじんわりと伝わってくる。
「コレ乗るとか相当久しぶりな気がするな、2人乗りはアイリスちゃんが初だけどな!」
「メリーゴーランド……実は乗るの初めてなの、ちょっと怖いからちゃんと離さないでね」
 にっ、と笑う佐助を振り返り見上げながら言う菖蒲。佐助はぎゅぅっと強めに菖蒲の体を片手で抱きしめた。もう片手は支えるようにしっかりとポールを握っている。
「任せとけ」
 その一言と佐助の腕の力に菖蒲の緊張は霧散した。軽やかな音楽と共にメリーゴーランドが回り出す。電飾に彩られ、あまり人が乗っていないメリーゴーランドは、世界を切り取り二人だけのもののようだった。

「おぉ……これはふくよかで良い樹から産まれたものでしょう。名も知れぬ樹ですがよいものです……ひっく」
 酒が周りながらも木工芸術の多い民芸品を見つめ、何度もよい、と繰り返すディエドラ。木材を鑑定する目は確かだった。
 ティテオロスのあの笑みの理由。それはこれだった。この乳がでかいだけで集客をしているエルフに、掃除洗濯炊事庭師以外の仕事が出来るのか試しに来たのだ。
 この世界の樹木を知っているかどうかは別として、豊穣神ハルュプを奉じる巫女ならば樹の善し悪しは分かる筈、と。
 そしてこれは当たっていた。ディエドラの目利きを元に木材を安定的に調達できる職工かどうかを確認していく。
「御苦労、これで温まるといい」
「ほんとぉにー、いいものですよー、これはぁー」
 ディエドラへワインを渡すティテオロス。自分は強いのを良い事に、酒で上手い事相棒を操りつつ、ティテオロスの“営業”は続く。

「これが噂のグリューワインね。シナモンと……オレンジかしら??」
「スパイスが入ったワインってどんなものかしらと思いましたけど、結構おいしそうですわね」
 クリスマスツリー前にあるワイン売り場にて、オリガがグリューワインを嗜んでいた。スヴァンが興味深そうにまだ飲んでいない自分のカップを覗き込む。
「いい、スヴァン。酔っぱらっちゃダメよ? 絶対よ?」
「大丈夫ですわ、先生」
 改めて念を押すように言うオリガにキリッ、と顔を引き締め答えるスヴァン。
 そんな風に各々が楽しんでいる最中、喜久子はずっとさ迷っていた。
(どの店もキラキラしてて綺麗ねぇ……)
 そう思いながらふらふらと歩く。独りでじゃつまらないかとも思ったが、この賑わいを少し離れて見るのも一つの楽しみ。などと、自分にいかせてはいたが、多分強がりだろう。
「綺麗で可愛い……! これオルゴールかしら? 折角だから買ってみようかな」
「それ可愛いですね! 誰かへのお土産ですか?」
 オルゴールを手にした喜久子。その横にタオが顔を出し問いかけた。びっくりして喜久子は振り返る。バスの中で見た顔だった、と思い出す。
「自分へのクリスマスプレゼントに……さ、寂しくなんてないんだからねっ! これなら持って帰って飾れば、英雄二人も喜ぶ気もするし」
「オルゴールの音色はこの世界で最も純粋な福音に満ちているからな」
 タオの質問に答えながらオルゴールを鳴らしてみる喜久子。オルゴールの音を聞いてゼファーがタオの後ろから訳するといいチョイスだ、と言った。
「一人、一緒に居ませんでした?」
「ちょっと迷って……でも独りでも大丈夫よ。つ、強がってなんかいないんだからね! 勘違いしないでよっ!!」
 顔を見合わせるタオとゼファー。なんとなく、察したようだった。


「あ、ゆらさん! お久しぶりですっ」
 亮馬とゆらが二人並んで歩いているところへ喜久子を連れたタオが一歩遅れて声を掛けてきた。
「この世界の隠された(中略)で、出会うとは運命を(以下略)」
 ゼファーが長々と何か言うが省略してつまり、再会出来て嬉しい、ということらしい。タオがゆらから亮馬に視線を向けた。
「そちらは?」
「あぁ、私の旦那さん」
 亮馬の腕を引きゆらは二人に彼を紹介する。
「結婚されたんですか!? おめでとうございますっ」
「ほぉ、祝辞と祝福を(以下略)」
「それで今日は新婚旅行の代わりに来てみたの」
「わっ、いいですね! 新婚旅行が異国でクリスマスとか素敵!」
 お祝いの言葉に礼を返しながら答えるゆら。新婚旅行代わりと聞いてタオは目を輝かせる。
「ところで……その方は?」
 ゆらは視線を喜久子に向けどちら様、と首を傾げた。あっ、とした顔をするタオ。喜久子とアキトの話をする。
「その人ならさっき会ったぜ」
 亮馬とゆらは顔を合わせ、大勢で飲みながら喋っていたことを話した。
「そうか。わざわざすまない。礼を言う」
 話を聞いて喜久子が落ち着いた様子で加賀谷夫婦に一礼する。
「今からでも、そっちに行ってみるか?」
「そうだね。シドさんもよろしく伝えてください。お二人ともお幸せに!」
 一つ頷くタオ。喜久子とも話し合い、そっちの方向に三人で向かう。
 二人きり、残る亮馬とゆら。人に改めて紹介すると何だかより現実味を感じるように思う。
 丁度、綺麗なクリスマスツリーの前だった。
 夫婦だという事実を改めて噛み締めて、亮馬はゆらへと向き直った。ゆっくりと口を開き――。
「……ゆら。これからもよろしくな?」
 彼女の瞳を見つめ心を短い言葉に込めた。
「ドイツに来て良かったねー。こんなに綺麗で幸せなクリスマス初めてかも。私こそ、よろしくね。亮ちゃん」
 愛らしい笑顔を浮かべ、ゆらは亮馬の手をそっと握った。
 ゆら達が見つめるクリスマスツリーの袂、レイラ達四人が顔を合わせる。
 それぞれが用意したプレゼントを手に四人でプレゼントの交換をした。
 レイラは綺麗なも模様が入った白い手袋と黄色の宝石がハマったロザリオネックレスをキトラに渡す。
「わあ! 嬉しいヨ! どっちもかわいいナ!」
「手袋はお揃いなんだよ!」
 大はしゃぎ大喜びのキトラに自分がしている青い同じ模様の手袋を見せるレイラ。余計にキトラははしゃぐ。
「キトラ、今日とっても楽しかったし嬉しかったヨ! だからキトラの好きなのでレイラ達も楽しんで嬉しくなって欲しいナ!」
 そう言って、キトラはレイラとN.N.に自分が付けている者とは色違いのヘッドフォンとCDを一つずつ手渡した。N.N.が私に? と驚いたような顔をしている。
「イフねぇも、いっつも遊んでくれてありがとナ!暖かいやつ選んだヨ!」
 キトラはイフリートの首にもふっ、とマフラーを巻き付けてにひーっと笑った。イフリートも驚いた顔になる。それを見てN.N.はレイラの首に黄色いマフラーを巻いて。
「レイラへ私からもプレゼントよ」
 小さな優しい声で伝えた。嬉しそうに微笑むレイラ。目は包帯で見えないが、口元だけでもレイラが嬉しいだろうことはよく分かる。
 ツリーの下、四人で思いを込めてプレゼントを贈り合った。その想い出は、永遠に四人の記憶の中に。

「きっこさん、無事ー?」
 結局アキトはレイ達とまた合流して飲んでいた。やってきた喜久子に手を緩やかに振る。
「なんとか大丈夫よ。アキちゃんは楽しめた?」
「バッチリ!」
「折角だし後から来た三人も飲まない?」
 カールがぽんぽんと、テーブルを叩く。ワインを飲みゆっくりと雑談を楽しみながら時間を過ごす。
「来年も……来れるといい、な」
 レイがぽつり、と呟いた。
「それ! オレも思ってた……っ!!」
「また来れると良いね!」
 カールとアキトが続き、喜久子がそれを眺めながら「そうね」と微笑んだ。
「う~、オリガがふたり~。ん~」
「あら……どうしましょう?少し休もうかしら」
 のんびりと過ごしている五人の横のテーブルでオルガに絡み甘えるスヴァン。
「優しい……。さすがです、お姉さま!!」
「うん、少し休みましょう」
「さすがです、お姉さま!!」
「あら……」
 カップを遠ざけよしよし、とスヴァンの頭を撫でながらオルガが寝てもいいのよ、という風に促す。しかし、あと数回、何を話しかけても「さすがです、お姉さま!!」と繰り返すスヴァンだった。
 酔いが醒めた後で後悔するだろう。「あんな醜態を晒すだなんて……」と。

 ベンチに寄り添って座り、クリスマスツリーを眺めている佐助と菖蒲。
 菖蒲がココアを、佐助が長靴型のカップに入ったキンダープンシュを手にしている。
 吐き出される息は白い。そっと菖蒲が佐助の頬を両手で包んだ。一瞬びくっとする佐助。
「えへへ……温かいでしょ~ビックリした?」
 ココアで温めた菖蒲の手は暖かく、冷えた頬が溶けるように暖かみを帯びていく。頬からゆっくりと手を放し今度は佐助の手を握った。
 雪が、微かにちらつく。
 クリスマスツリーの光が雪を光らせ、幻想的だった。
「クリスマスツリー綺麗だね……」
「ツリー綺麗だなー、ま、アイリスちゃん程じゃねぇけど……!」
 照れ笑いしつつ、佐助は菖蒲を見つめながら答える。その黒い瞳を見返して、菖蒲は柔らかく目を細めた。
「……来年も絶対に見ようね。一緒に」
 こく、と頷く佐助。そして、そっと可愛らしい包みを菖蒲の前に差し出した。
「サンタさんの代わって、クリスマスプレゼントだぜ、アイリスちゃん!」
 中身はレイラ達といるときにひっそりと買った木製の可愛いオルゴールだ。
 菖蒲は嬉しそうに受け取り、自分も毛糸の手編み手袋を取り出し佐助に手渡す。
「初めて作ってみたの……佐助の手いつも握ってるから大きさ測らなくても分かるんだよ!」
 嬉しそうに破顔する佐助。早速つけてあたたかい、と感想を笑顔で零す。くいっ、と少しだけ佐助の袖を引っ張る菖蒲。ほんの少し伸びをして、唇が触れ合った。
「これからもよろしくね、佐助」
 夜は更けていく。

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • きみのとなり
    加賀谷 亮馬aa0026
    機械|24才|男性|命中
  • 守護の決意
    Ebony Knightaa0026hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 己が至高の美
    ティテオロス・ツァッハルラートaa0105
    人間|25才|女性|命中
  • 豊穣の巫女
    ディエドラ・マニューaa0105hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
  • 厄払いヒーロー!
    古賀 佐助aa2087
    人間|17才|男性|回避



  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 今から先へ
    レイラ クロスロードaa4236
    人間|14才|女性|攻撃
  • 先から今へ
    N.N.aa4236hero002
    英雄|15才|女性|カオ
  • ダーリンガール
    オリガ・スカウロンスカヤaa4368
    獣人|32才|女性|攻撃
  • ダーリンガール
    スヴァンフヴィートaa4368hero001
    英雄|22才|女性|カオ
  • 四人のベシェールング
    キトラ=ルズ=ヴァーミリオンaa4386
    人間|15才|女性|攻撃
  • 四人のベシェールング
    イフリート=ドラゴニアaa4386hero002
    英雄|18才|女性|ドレ
  • エージェント
    美咲 喜久子aa4759
    人間|22才|女性|生命
  • エージェント
    アキトaa4759hero001
    英雄|20才|男性|バト
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