本部

反・省・会!

高庭ぺん銀

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/12/23 22:36

掲示板

オープニング

●誰かが足りない忘年会
 只今HOPE東京海上支部では忘年会が行われている。とはいってもHOPEの所属者は膨大な数だ。ここで行われているのは無数にある忘年会のうちの一つ。たまたま今日都合がついた者たちによる会である。
「スマホ? 別に難しくもねぇだろ、あんなもん。せんたっきだってもう回せるしな!」
 呉 亮次は、大好きな酒が呑めて上機嫌である。急に全く知らない世界に呼ばれ、いきなりお縄につく羽目になりかけたのが半年前。エージェントになってからも何件かの依頼で危機に陥ったが、無事帰還。多分これからもこんな感じでやっていけるはずだ、と彼は思っていた。
(ん、まことが居ねえな)
 元猟師は鋭い目つきで部屋を見回す。が、すぐに思い直す。別に敵地でもあるまいし、と。
(ま、いっか。家にさえ無事届けりゃ怒られねぇよな! 野犬も熊もいねぇし、余裕余裕!)
 まだまだ飲み足りない彼は他愛もない会話を再開しつつ、新しいビール瓶を栓抜きで器用にあけた。

●赤い女と懺悔部屋
 忘年会が行われている会議室の隣。その部屋も普段は会議室として使われていたが、今日は誰も訪れないはずだった。しかし立ち止まって見るとドアには紙が貼られている。『シスタークリムゾンのざんげ部屋』と書きつけてあるのは、ルーズリーフのようだ。
「ワ」
 ドアを開けると、裏返った声が聞こえた。声の主は咳払いをして仕切り直す。
「わたくしはシスタークリムゾン。志高き者よ、よくいらっしゃいました」
 大判の真っ赤な布をかぶった女が、ろうそくの灯りに照らされて着席していた。布が目深にかぶったフードのようになっていて、顔はよく見えない。シスターというよりは占い師に見える
「さあ、座って。そして懺悔しなさい! この部屋にはわたくししかいないから、遠慮はいらないですわよ!」
 彼女を知る者がいたらすぐにわかったことだろう。シスターの正体は新人エージェントの赤須まことである。平凡な女子高生だった彼女はひょんなことから力を手に入れ、戦いの世界へ飛び込んだ。今まことが無事でここにいるのは、先輩エージェントたちのお陰だ。感謝してもしきれない。けれど。
(ヘコむっちゃヘコむんだよ~! 焦ったって急に強くなれる訳ないんだけどさ!)
 彼らへの恩返しがまだまだできそうにないことは、ちょっと悔しい。
「さあ、今年一年を振り返ってみて」
 赤い女は張り切って問う。演じる前に決めた『お上品っぽい言葉遣い』という設定はブレ始めている。
「貴方の反省点は何? 失敗談や愚痴でもOKですよ。私は何でも受け止めます」
 救いを乞うているのは、本当は彼女の方。少女は思う――教えて、先輩。あなたたちにも後悔することはありますか? それをどうやって乗り越えるの?
「最後に、来年への目標を教えてくれますか? あなたの願いが叶うように、私も祈りを捧げましょう」

解説

パーティを抜け出して、シスタークリムゾン(シスターC)に懺悔をしましょう。

・懺悔部屋へは、一人で来ても、誰かと一緒に来てもかまいません。
・まことは演技が下手です。ポロっと正体がバレるような失言もします。もし彼女が悩める新人エージェントだと勘づいた方がいましたら、よければ激励してあげてください。
・隣の部屋ではエージェントや職員が飲み倒しています。懺悔ですっきりした方や、単純に年忘れがしたい方はお好きなように飲み食いOK。ソフトドリンクも用意してあります。
・宴会部屋ではホットプレートで焼肉パーティができる他、オードブルやお寿司、チーズフォンデュ&チョコファンデュ、スナック菓子などもあります。
・会費は特にいりません。差し入れがあれば歓迎します。
・まことの英雄、亮次も楽しく飲みまくっています。顔は怖いですがノリは良いので、その辺りにいる人に話しかけるかも。
・お友達同士での会話も大歓迎です。

リプレイ

●忘・年・会!
「あっという間に忘年会の季節ですわね。時が流れるのも早いものですわ」
 ずらりと並んだ酒瓶を吟味しながら、御手洗 光(aa0114)が後輩の廿小路 沙織(aa0017)に言った。
「光様に誘って頂けて良かったですわ。こういった催しには疎くて」
「ぐる、ぼーねんかい? 年を忘れる、よく分からない……でも、飯たくさんある。楽しい」
 オルトレーヴェ・メーベルナッハ(aa0017hero002)がオードブルの唐揚げをつまむ。マリナ・マトリックス(aa0114hero002)は穏やかな笑みを湛えて彼女らを見守る。
 ペンギン皇帝(aa4300hero001)も華やいだ雰囲気の室内を興味深そうに見た。
「賑やかであるな」
「ええ。この時期は色々宴会が多くて楽しいです」
 酒又 織歌(aa4300)が答える。クリスマスパーティや忘年会、そして新年会。美味しい物の存在は幸せに直結する。ただし食べすぎには注意だ。これ以上胸が大きくなってしまうと、泳ぐ時に邪魔になりそうだ。
「クリスマスには早いですが、ローストチキンもありますね」
「ほう、独特な形であるな」
「トリのモモ肉です。柔らかくて美味しいんですよ」
 絶句する皇帝に織歌はにっこりと微笑んだ。
「……重要任務と聞きましたが?」
「飲み会は重要だろ。何言ってんだ」
 宇津木 明珠(aa0086)は大人びたため息をついた。
「なぁ、ここの酒って英雄酔えんの?」
 かまわず金獅(aa0086hero001)は、参加者に話しかける。
「知らん。俺は酔ってるが」
 男――亮次は口の端を上げてグロリアビールの瓶を掲げた。
「ふぅん、あんたも英雄?」
「まぁな。あ、食う?」
「いや、俺つまみ要らない派。つかそれなに? 全部肉?」
 金獅は皿にこんもりと肉を積んだ男、そして缶と瓶に埋もれんとする猛者たちと酒を酌み交わし始めた。明珠は亮次の相棒を名乗る少女に話しかけられて、愛想よく挨拶を返した。
「今回はお酒も飲むのだな」
 Ebony Knight(aa0026hero001)が言うと、加賀谷 亮馬(aa0026)は穏やかな笑顔で問いを返した。
「ん? 意外かい?」
「そうではないがな。珍しくは思う」
「はは、まあ家では飲まないものなぁ……エボちゃんもいくか? 不味いが美味いぜ?」
 酒特有の苦味は好みではないがたまにならば、というタイプなのだ。
「不味いのなら遠慮しておく」
 エボニーは山盛りご飯を片手に焼肉を黙々と食べる。亮馬はその目にかすかな喜色を感じ取った。
「……いける」
 案の定、サムズアップを決めるエボニーに亮馬は苦笑した。
「満足してるようで何よりだよ」
 亮馬の妻である加賀谷 ゆら(aa0651)は酒や肉よりスイーツ派らしい。
「おー、チョコフォンデュもあるー!」
 バナナを串に刺してチョコをとろーり。それだけでも天国だけれど――。
「ゆら。今年も色々お疲れ様……もう、間近に新年が迫ってるんだなぁ……早いもんだ」
 振り向いた先には愛しい人。
「亮ちゃん。一年おつかれさま―。今年は今までの人生の中で一番幸せな年になったなー」
「俺もだ」
 満ち足りた気持ちで微笑み合う。
「俺の肉!」
「もごもごご?」
「くっ、戦場で隙を見せた俺が悪い……存分に食え」
 幼女に屈するオッサンの図。金獅が亮次の背を叩いて笑っている。
「何やってんだ?」
「行こっか。エボちゃん、私がお肉焼いてあげる!」

●懺悔部屋・開
(懺悔……ですか。思えば確かに懺悔と言うか反省すべき点は色々ありますから……良い機会なのかもしれません)
 沙織が扉を叩こうとすると、男女の言い争う声が近づいてくる。
(聞かれると恥ずかしい話ではありますし、他の皆さんが一通り懺悔を終えられた後にでも)
 沙織は身を翻して、仲間たちの元へ戻った。
「もー!なんであたしも行かなきゃなんないのよ!」
「懺悔っつったら俺とお前でニコイチだろ!?」
 同じ声を室内のまことも聞いていた。
「あたし関係ないじゃん! イギリスでの事だってアレ、カイが勝手にやった事だし!」
「ソレ言ったらマリだって自分の欲望で御童家の経済が根底から覆される非常事態を起こしかけただろ!」
「だって……! アレあたしが悪いんじゃないもん! 全部従魔のせいだから!」
 欲望を解放させる仮面型従魔の話だ。名前にも心当たりがありすぎる。
「なのになんで俺だけ?」
「だって……アレは……アレは無いと思うよ? 街中であんな事大声で……」
 少女の声がもにょもにょと何か言う。――『潜伏』したい。共鳴していないから無理だが。
「……とにかくっ!あたしは焼肉食べたいんだからカイ一人で行ってきなよ!」
「俺だって酒飲みたいよ」
 扉が開く。文句を言う女子の手を引いて大男が入ってくる。やはり声の正体は御童 紗希(aa0339)とカイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)だった。
「あー……」
 言い辛そうにするカイに紗希は「ホラ」と催促する。
「ア、焦らなくて良いデスよ」
(なんか声ひっくり返っちゃってるけど大丈夫かなこのシスター……)
 カイは従魔のせいで行ってしまった公開告白について説明する。
(うん、全部見てた)
「け……けどな、マリ」
 カイが纏う三枚目オーラが霧消した気がした。
「俺は……嘘は言ってないからな……俺はマリが好きだから一緒に居るだけで……いくら契約能力者でも何とも思ってない奴と一緒に居たいなんて俺は思わないから!」
 紗希は突然の告白に真っ赤になる。
「あっわっ……べっ別にあたしもカイの事嫌いじゃないし、一緒に居てくれるのべ……別に嫌じゃないし……! 色々助けてくれるの凄く嬉しいし。カイが居てくれたから今迄エージェントやってこれたから…その」
「えと……だから……だから……」
「マリ……」
 微妙にノロケる2人。逃げたい。
「……だからってあんな告白無いでしょ! クソ英雄! 何であたしまで恥かかなきゃなんないのよッ!」
「結局そっちかい!」
 ビンタの音が鳴り響く。
「有難うございました!」
 残念なイケメン、復活。
「はい終了! 喧嘩はだめです!」
 まことが割って入る。手に負えないからとっとと追い出そう。
「所であんたの声なんか聞き覚えあんだけど……?」
「え?!」
「どっかで……会ったこと……」
 息ぴったりで覗き込む紗希とカイ。後退るシスター。すべり落ちる赤い布。
「あーッ! お前こないだの失礼な新人JKエージェント!」
「あ……赤須さん!?」
 紗希の顔がみるみる内に青ざめていく。
「わ、やっぱ顔に出てましたか?」
「顔どころか、低音で『うわ』とか言ってただろ! 傷つくわ!」
「すいません! 私、嘘つくの苦手で!」
「フォローになってねぇ!」
 紗希は床に崩れ落ち、遠い目をしていた。――ああ、2016年が終わろうとしている。来年も騒がしくなりそうだ。
「バレたのは知り合いだからだよね!」
 シスターは布をかぶり直す。その頃明珠は、茶をお供に談笑に勤しんでいた。30分ばかり耐えただろうか。
(これだけの人数なら一人欠けても分かるはずありませんし……)
 帰宅しようとした彼女を引き留めたのは、稚拙な「ざんげ」の文字。
「……そうですね。今年も多くの反省や失敗が御座います。思い出すだけでも恥ずかしい……」
 でまかせを述べながら明珠は観察していた。作り込みの甘いキャラ設定に、シスターとは程遠い衣装。正体も目的も察しがついてきた。
「シスターにも反省や失敗はありますか。それを今でも後悔したりもしますか?」
 明珠は攻勢に転じる。しおらしい口調は至極自然。恥ずかしそうに視線を斜め下へ漂う視線がいじらしい。
「ありますよ! わたくしHO……教会ではまだまだ下っ端で。役に立とうと張り切るんですが、弱すぎて先輩に迷惑をかけてしまいますの」
「心苦しいでしょうね」
「この前なんて……えーと悪い神様の生贄になりかけまして」
 舌と文脈のもつれた述懐。不安そうに布の裾を掴む手。明珠は共感に徹する。
「でも、そもそも私が強ければ自分で解決できるっていうか。まぁ急には無理なんですけどね」
「ありがとうございます。自分だけではないとわかると励まされるものですね」
「それなら良かった」
 安堵のにじむ声。力の抜けた手が机に置かれた。
「その……私もここにいらっしゃる皆様の前途をお祈りしたいのですが、後ろに控えていても宜しいでしょうか」
 明珠の申し出にシスターは驚いたようだが、やがて言った。
「えらいなぁ、明珠ちゃん。好きなところに隠れてて」
 この部屋では名乗った覚えのない明珠は心中で苦笑した。観察対象としては悪くないのかもしれない。
「紗希さんが妙にぐったりしてたのって、もしかしてこれのせい?」
「かもな」
 亮馬とゆらが懺悔室の扉を叩く。
「今年に限ったことじゃないんですけど……」
 シスターは頷く。
「シドの存在に甘えてきたこと。シドの幸せを考えてもみなかったこと。『幸せになる』って誓約したのに」
 自分は今、この上なく幸せだから。
「だから……来年はシドのお嫁さん探しを頑張ります!」
「それは素晴らしい目標です!」
 シドにとっては迷惑この上ないことを、ゆらは気付いていない。
「そちらの方は?」
 亮馬の後悔は戦闘で無茶ばかりをして、ゆらやその友人達に心配を掛けた事だ。特にケントゥリオ級に真正面から挑み、その身を挺して味方にチャンスを託した戦いは記憶に新しい。
「片腕がもがれたりもしたからな……」
「ええ!?」
 シスターが子供のように驚くので、亮馬は思わず破顔した。
「すまない、義手の話だ。驚かせたな」
「いえ、大声出してすみません」
 亮馬は首を振って、視線を落とす。
「俺が大怪我して、大事な人達を悲しい気持ちにさせるのは本末転倒って奴だったから……心配かけてごめんな、ゆら」
「ほんとにねえ。命にかかわるような怪我だけはしないでね。新婚さんで未亡人はやだなー」
 新妻は冗談めかした口調の奥に、不安さを隠す。亮馬は彼女の両肩を掴み、まっすぐ目を見た。
「何があってもゆらの元に帰って来る。約束だ」

●幕間
 シド (aa0651hero001)は部屋の隅で持ち寄られた一升瓶に囲まれていた。まだまだ呑む気満々の様だ。
「シド殿? ……お酒は付き合えぬが話くらいは聴いてやるぞ」
「俺のことは気にするな。お前たちは忘年会とやらに興じていればいい」
「騒がしい連れを見失ってしまってな。一人寂しくしているのだ」
 そういえば亮馬とゆらの姿が見えない。仕方のない奴らだ、とシドはエボニーを手招く。
「ヤケ酒……には見えんな」
 シドがかすかに破顔した。
「ゆらがあんなにいい顔をして過ごしているんだ。ヤケ酒になる理由がないな」
 出会いは彼女が天涯孤独になった直後だった。あれからもう10年。あんなにも遠く見えた「幸せ」は今確かにゆらを包み込んでいるのだ。
「お酒とかも飲めるようになれば、宴会はもっと楽しくなるのでしょうか」
 幸せそうに頬を赤らめ騒ぐ大人たちを織歌は見ていた。
(我慢……我慢ですよ、私)
 成人するときを楽しみに待つとしよう。
「……あれ、陛下?」
 彼女もまた、相棒の姿を見失ってしまったらしい。とんだ失踪日和である。

●懺悔部屋・転
「……まぁ愚痴で良いなら」
 シスターと対峙した日暮仙寿(aa4519)は言う。
「あけびの師匠と俺は顔立ちも名前も同じ」
 彼女は彼を並行世界の仙寿だと考えているらしい。彼らの共鳴時の姿は師匠そのもの。仙寿の成長した姿でもあるようだが。
「酔って『どうせお前は俺の顔目当てなんだろ』って言ったらしい。ああ、ドイツって16歳以上はビール飲めるんだ。おまけにイギリスでは変な仮面に欲望解放されて……」
「な、何したの?」
「……ケーキとコーヒー奢っただけだ」
 優しくしたいという願望。叶えたって罰は当たらないだろうに。
「優しく出来ねぇんだ」
 その感情は暗く重い。
「あいつが俺と誓約したのは師匠と重ねてるから。俺は暗殺者の自分が後ろめたくて、能力者になった時は堂々と剣を振るえるって嬉しくて。でもあけびは忍の自分も誇りに思ってる」
 名前を与えるなら、劣等感。
「劣等感持ってる相手に慕われて。でも本当に慕われてるのは俺じゃない」
 その顔が目に浮かぶ。「忍だからって誰かを守ったらいけないの? 殺す力は救う力にもなる。侍だって目指せるよ!」。目を閉じたいくらいに眩しい。
「俺は俺を見て欲しい。対等な相棒になって欲しい」
「そのために仙寿君は何をする? 来年の抱負!」
 仙寿の口から強い思いが放たれる。
「師匠を越える位強くなってあいつに『仙寿』って呼ばせてみせる。それが目標……ってお前まことか!」
 偽シスターは謝罪し、問われるままに犯行動機を語った。
「仮面事件災難だったな。新人同士頑張ろう」
 騙されても尚、落ち込むまことを気遣う彼は優しい。いつか彼女にも届いて欲しい。
「あと今の話誰にも言うなよ!」
 数分後。
「珈琲飲みませんか?」
 シスターは子供舌だった。珈琲好きと同じ量の砂糖を入れたところで。
「苦っ」
「あ、やっぱりまことだ」
 手と声で分かったと不知火あけび(aa4519hero001)は笑う。
「仙寿様の愚痴って何?」
「黙秘します」
 彼が来たこともバレている。彼女の視線が助けを求めるように、闇へと投げかけられる。
「誰かいるの?」
「モクヒシマス」
 あけびは噴き出した。
「ま、いっか」
 もう一人の『シスター』は、ボロを出すタイプではなさそうだ。
「元いた世界の仙寿様は憧れのヒーローで、師匠で、目標。でも人類の敵だった」
「人類、の?」
「人の感情を糧とする、人を家畜程度にしか思わない天使に似た種族。私を自分の使徒……従者とするべく教育してた。途中で私が他種族に対抗し得る力に目覚めて失敗したけど」
 そして彼女は『人』側の英雄となった。
「色々な事を教わった。剣技とか、侍の格好良さとか! ……優しさとか人を信じる心とか。感情を食らう彼が『笑っていろ』って。大事にはして貰ってたと思う」
「そっか」
 あけびを通して見る『師匠』は、憎むべき相手には思えなかった。
「私ね、戦争が終結した時の記憶が曖昧なんだ。仙寿様を殺したんじゃないかって考えてる」
 他種族を人道的に許せない人情、自分の陣営への恩義。それも彼に教わった事だったという。
「此処にいる事が罰でも救済でも仙寿様の傍にいられれば幸せなんだ」
 もう敵じゃない。今度こそ笑って手を差し伸べられるから。
「強くなって彼の剣になる。それが私の目標……内緒、ね?」
 賢木 守凪(aa2548)は俯いている。何度も顔を上げようとして、言葉を紡ごうとして、失敗してはただ空気を吐く。懺悔しなければいけないことはある。覚悟を決めるように大きく深呼吸をする。
「……たくさん、間違ってきた。赦されないような事もしてきた。それに関して……俺は背負っていくしかないと、思う。どれだけ謝っても足りない事だから」
 意気地のない人だと思ったのは、ひどい勘違いだった。彼は強い。彼が危うく美しいのは、他の人なら投げ出してしまうほど辛いことでも背負い込むからだろうか。
「ただ、それでも俺は……幸せになりたいと……思う。……幸せにしたい人がいる。その人と一緒に幸せになりたいから……その為に、頑張りたい……いや、頑張る……だな」
「私は、幸せになってほしいです」
「……ありがとう」
 守凪は立ち上がる。せっかくの会だ、楽しまなければ。
 懺悔部屋の噂を聞いたペンギン皇帝は、一人、もとい一羽そこへ向かう事にした。
「懺悔をどうぞ」
 反省したい事は一つしかない。記憶の彼方にある帝国とそこに暮らす臣民の事だ。
「ペンギンの国?」
 それは憂いを知らぬ楽園のような響き。しかし彼はその国を追われた。愛する臣民は彼を排した。
「あやつの感じているような幸せを、余は帝国の臣民に与えてやる事が出来なかったのだろうか」
 答えはない。考えようにも、足掛かりとなる記憶がおぼろげだ。
「余は如何すれば良かったのか……世は出来うる限りの努力をもって、帝国に、そして臣民に奉仕してきたつもりだ」
 織歌は言う。「駄目だったなら次に上手くやれるように頑張れば良い」。どうしたら良い? 何を頑張れば良い? 後ろばかりを振り返っては足踏みする自分を、きっと織歌は不思議そうに見るのだろう。
「……すまぬ、このような話をされても困ろうな」
 声から察するに相手は若いのだ。
(案外、似たような……もっと上手くやるには等の悩みを抱えておるのかもな)
「皇帝さん……私、役に立たなくて」
 彼はかぶりを振った。
「悩んで立ち止まるのは誰にも出来る。そこから再び歩き出す事が大事よな」
「はい! ……あ、どっちへ歩けば良いかわかんないときは?」
「間違えたら、次は別の方向に進んでみるが良い。そして今度こそ上手くやれるように頑張るのだ」
 受け売りみたいなものだが。
「は……はは~」
 シスターは印籠を向けられた庶民のように、机上にひれ伏した。
「ふむ……話していてすっきりしたぞ。見知らぬそなたよ、礼を言うぞ」
 てちてちと歩き出す皇帝を見て、まことは反射的にドアノブに飛びついた。
「うむ、ご苦労」
 皇帝はドアガールを振り返って鷹揚に手を振る。可愛いのに、溢れる威厳。
「ペンギン恐るべし」
 犬派の少女は呟いた。その眼に、ほのかな希望が灯る。
「お礼、言われちゃった……少しは力になれたんだよね?」
 力を取り戻した声。明珠は闇から這い出して頷いた。――来訪の間隔も空いてきたことであるし。
「私はそろそろお暇いたします。御礼と言ってはなんですがこちらをお納め下さい」
 帰りに飲もうと思っていたお茶と押し付けられた菓子を渡すと、シスターは大層喜んだ。
「シスタークリムゾンの前途に光多からん事をお祈り申し上げます」
「ありがと。シスター明珠ちゃんの仕事も上手くいきますように」
 笹山平介(aa0342)は「ざんげ」の文字を無言で見つめた。
「行け……俺は聞く気はない」
 ぶっきらぼうに言うゼム ロバート(aa0342hero002)に微笑みを返し、平介は入室する。扉の向こうの平介を見つめるようにゼムは佇んだまま。
「何か懺悔するようなことでも?」
 いつから見ていたのか、イコイ(aa2548hero002)が姿を現す。
「お前こそ」
「私は特にありませんので」
「お前は何かなくても懺悔しろよ……」
 ゼムはイコイから顔を反らし、不機嫌を隠さない様子で宴会場へと戻って行く。
「別にだましていたわけではありませんしねぇ。懺悔と言うのもおかしいでしょう?」
 イコイが女だと思い込んでいたゼムを揶揄しているのだ。
「あなたが罰を下してみますか?」
「奪ってほしいならもっとわかりやすくねだれ。どちらにせよ、ここではしないがな」
 開かれた喧騒が二人を出迎える。
「聞いて頂いてもよろしいでしょうか?」
「あ……えっと、どうぞ?」
 平介は部屋を見回すが、奥の机でろうそくの明かりが揺れるのみ。シスターを名乗る女の顔を覗き込むと、ガタガタと音を鳴らしながら椅子ごと後退る。
(笹山さんは優しそうだし、バレても怖くはないけど……)
 まことは耳を塞ぐようなポーズで布を抑え、後ろを向く。部屋は静まり返り、隣の部屋の声がわずかに漏れ聞こえてきた。平介は正体の追求をやめてくれたらしい。
「懺悔ですが……」
 静かな声が届いた。
「昔約束を破ってしまった事がありまして……その子は後に膝から下を失いました……」
 まことは彼へ視線を戻さないまま、言葉を待った。平介は頼りなく揺れる炎を見ている。
「あの時もっとよく探していれば……あの子は自分の足を失う事はなかったかもしれない……」
 幼い日に彼と交わした約束。連れて行きたかった場所と、そこにあったはずの優しい時間。壊したのは嘘吐きの大人たちだ。しかし――奴らを信じた愚かな自分に罪はないのか。諦めてしまった馬鹿な自分は、罪人ではないのか。
「今も私の事を慕ってはくれていますが……私は一度あきらめた事を言えず隠している。大好きだから傍に居たいが……今更謝る事もできず……」
 途切れた言葉。恐る恐るまことが振り向くと、彼は笑顔だった。
「以上です♪」
 「お疲れ様でした」と間抜けな返事を返す。
「素直な内に出来る事は沢山ありますよ。今君がこうしているように」
 羞恥に頬を赤らめた彼女は言う。
「…お幸せに」
 『彼』が幸せになってくれるなら――。平介は手を振り、暗い部屋に別れを告げる。

●幕間
「ちゃんと食べられていますか?」
「いや、まだ何も……」
「では、一緒に食べましょう♪」
 守凪が笑う。――これから沢山の幸せを感じられるように、生涯守り、幸せにしてあげたい。
「まだ敬語だな」
「ご、ごめん……」
 慌てて口調を戻す。まず、現在進行形の約束を守らなくては。
「! 平介、チーズフォンデュがあるぞ! それからあの黒いもの……チョコか? チーズの後にチョコも掛けるのか?」
 目を輝かせる彼は白いウサギを追う少女のように、災難へまっしぐら。小さなことかもしれないが――今は、その腕を掴める。
「え、違うのか」
 そして、彼を守るために全身全霊を捧げることもできるのだ。
「どうした」
 何かに注目するイコイにゼムは問う。
「楽しそうだなと思いましてねぇ。良ければ、ゼムさんの分も貰ってきますよ?」
 イコイが示したのは平介と守凪と、煮えたぎるチーズ。
「……いらねぇよ」
 ゼムは眉間にしわを寄せて寿司桶の側に陣取った。側には緑茶のペットボトルもあったのでコップへと注ぐ。
「和食党とは意外ですね」
 イコイは当然のように彼の隣に陣取る。ルビー色の切り身がゼムの口の中に消えていく。
「美味いな」
 ゼムはもうひとつ、と手を伸ばす。
「それが食べたいです」
 イコイはゼムが持ち上げた寿司を差し示す。しかし別に最後の一つと言う訳でもない。
「……そこにあるだろ」
 イコイは微笑むばかり。ゼムは呆れたように息を吐く。
「……俺の選んだ物が欲しいなら、お前が選んだ物をよこせ」
 一瞬も間をおかず、イコイは隣のテーブルを見遣る。正確には皿に乗ったチーズを。
「お前……」
「冗談ですよ。向こうにも色々あるみたいですし、取ってきます」
 イコイは笑みを浮かべて立ち上がり、背を向ける。
「なんだ? 彼女と喧嘩か?」
 その言葉に顔をしかめるゼムを思い描けすぎて、振り向くまでもない。半開きのドアから覗く暗闇に手招かれるように、そのまま部屋から姿を消す。
「素直に従っていれば、寿司のひとつくらいくれてやっても良かったんだがな」
「……何だそれ? 亭主関白、ってやつかい?」
 声の主でチーズの持ち主――亮馬はゼムの隣に移動してきた。皿に手を付けないのは待つ相手がいるからだ。
「おせっかいかもしれないが、仲直りは早い方がいいぜ? 酔った誰かにナンパされるかもしれないし」
 ゼムは鼻で笑う。頑固で、したたかな奴だ。声を掛けられてなびく姿も、力任せに連れ去られる姿も想像できないが。
「……あの見た目に惑わされる奴なら、いるかもな」
 全てを奪いたい相手。それは、ひとかけらたりとも、他の者に奪わせたくない相手。
「一番惑わされてるのは自分だろ? ま、俺も惑ってる側だけどな」
 亮馬はつややかな黒髪をゆらす妻の背を見遣った。ゼムが仏頂面のまま室外へ出て行く。
「亮ちゃん、ワインもらって来たよー……ん? 席、移動したの?」
 亮馬の隣には二人分開いたスペース。そこにゆらが収まる。
「サンキュ。じゃ、改めて乾杯」
 ゆらはすこぶる酒に弱い。一口煽ると、たちどころに体が熱くなる。
「いろいろあったけど、私が今すごく幸せって、亮ちゃんわかってるかなー……」
 柔らかな手が、亮馬の手をきゅっと握る。頬を上気させたゆらに見とれたつかの間のうちに、彼女は眠ってしまった。亮馬はゆらの頭を撫でて、他の者が騒ぐ声を聞くともなく聞く。
「弱いくせに、呑んでしまったのか」
 ゆらを間に挟んだ位置に腰掛け、亮馬に話しかけるのはぐい飲みを持ったシドだ。
「義兄さんは強いですね」
「本当にな。着いてからずっと飲みっぱなしだろう?」
 シドの膝の上に収まったエボニーが言う。さっき焼肉をしこたま食べたはずなのに寿司をぱくりとやっている。
「人のこと言えないだろ」
(義兄さん、か……妙な気持ちだな)
 シドは安心しきった顔で眠るゆらを見る。そうしていると思わずにはいられない。――ああ、本当にいい年だった。
「私が懺悔することなんて、一つしかありませんよ」
 無人の廊下。懺悔室は遠い。
「……私がいなければ、死なせずに済んだのに」
 誰にも聞かれないように。
「頼って、寄り掛かって……生まれてきて、ごめんなさい」
 光届かぬ場所で落とす言葉。
「ただ……もう少しだけ、生きさせて下さいね」
 希死とも聞こえるそれを咎めるように、背後から足音が響いた。
「懺悔部屋?」
 光は酒を片手に尋ねた。宗教家のマリナはノンアルコールドリンクを手にしている。オルテはというと開始から今まで各種の料理を食べ続けている。今も別テーブルでハント中だ。
「貴女が悩んでいるとは知りませんでしたわ。わたくしが付き添ってさしあげますわね♪」
 追々わかると思うが、光こそが沙織の悩みの主な元凶の一人である。
「……あ、光様も、いらっしゃるのですか……? で、では一緒に……」
「シスタークリムゾン……どのような方なのでしょう。お話するのが楽しみです」
 マリナがふわりと笑って立ち上がった。
「ぐる? 沙織、どっか行った。追いかける」

●懺悔部屋・終
 扉を開けると、赤い布で顔を隠した小柄な女が座っていた。もじもじする後輩の代わりに、光が口火を切る。これといって反省するべきことはないが、強いていうならば今年は思うように活動できなかったことに多少の心残りがある。
「今年は色々と停滞していた気がしますし、来年はもっと頑張りませんといけませんわね♪」
 単純明快な悩みは偽シスターを安堵させた。ただし次の者は強敵そうだ。
「そっちの方は、懺悔とかなさそうですけど……」
 まことは委縮していた。マリナが全身から神々しいまでの大司祭オーラを発していたからだ。
「いいえ、私は自分を恥じておりますの。貴女のような活動が出来ていなかった自分を! わたくしも、まだまだ精進が足りないということですわね」
(なんていうか……ごめんなさい)
 まことの脳裏を罪悪感が埋め尽くす。彼女の思いを知る由もないマリナは、慈母のように微笑んで相手の手を握る。
「シスタークリムゾン。貴女のような方に出逢えたのも、神の思し召しです」
「……あの、頑張ってください」
 マリナは力強く頷く。ああ、背後に大聖堂が見える。
(浄化される……)
 まことは燃え尽きていた。なので、ここからの記憶は曖昧である。
「懺悔の内容は……その、お恥ずかしい話なのですが……どうもこの一年、欲望に流されて良からぬことをしてしまう事が多かった……と。今年を振り返って思うのです」
「ほう」
「素行のよろしくない方々に身体を求められたり、電車で痴漢に遭ったり……本来であれば、はっきり拒絶すべき処なのが、つい拒めずに、身を委ねてしまう……ということが多くて」
「なるほど」
「……ええ……正直に申しまして…そうした行為を受けて、悦んでしまっているんです……。このまま流されるままでは、いつか、取り返しのつかないことになりかねません……それは分かっているのに……」
「反省なさい」
 定型文がいい感じにハマっている。予想外の告白に困惑していたマリナはシスターの泰然自若とした態度に感銘を受けている。すれ違いだらけの懺悔の時間は、唐突に終わりを迎えることになる。
「……話、全部聞いた!」
 派手な音を立てて、扉が開いた。
「欲望任せ、別に悪くない。人間、欲望の生き物。我慢する、良くない。好きなだけ食べて、好きなだけ遊ぶ。それ、一番。楽しいなら、全部良い」
「……誰?」
 首を傾げるまことに人差し指がつきつけられる。
「お前も! 難しいコト、必要ない。やりたいようにやる、一番。だから一緒に食う。遊ぶ」
「……って、オルテ様。そんな欲望任せの生き方ではそのうち……って問答無用ですかー!?」
 沙織とまことを両わきに抱え、オルテは宴会場へと戻って行く。
「あ、あの、そのような邪な感情は……」
 状況の変化についていけないマリナを他所に、光は前髪の奥の義眼を妖しくきらめかせペロリと唇を舐めた。
「え。ちょ、光様、オルテ様ぁぁぁ」
「うふふふっ♪ 大丈夫ですわ、わたくしに任せて下さいな♪」

●懺悔の後は
 大きな音を立てて開いたドアに、注意を向ける者は少ない。呑む者は深く酔い、呑まぬ者も満たされた腹を抱える時間だ。
「おかえり、まこと」
 あけびが言った。紗希はオルテに引きずられるまことに問う。赤い布だけは握っているが、目が虚ろである。
「大丈夫?」
「たす……けて……」
 ふたりは光とオルテが沙織とマリナを構っている隙に、こっそりと奪還に成功した。
「赤須さん、シスターはもういいの?」
「引退する……エージェント頑張る……」
 紗希とあけびは顔を見合わせて苦笑した。
「みなさんもチョコファンデュですか?」
 織歌が振り返った。仙寿は気まずそうにチョコタワーを後にする。皿にはチョコにくぐらせたイチゴが載っていたのだが、幸い誰にも見られなかった。女子たちは果物にマシュマロ、ポテトチップやさきイカをディップしては、年忘れのおしゃべりに興じる。
(また黒歴史が増えちゃった? でも)
 まことは復活し始めた頭で部屋を見渡す。
(ありがとう、先輩たち。私はまだ弱いけど、皆の助けになれるように全力で走り回るよ)
 新たな年は、もうすぐそこ。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • Analyst
    宇津木 明珠aa0086

重体一覧

参加者

  • 胸囲は凶器
    廿小路 沙織aa0017
    人間|18才|女性|生命
  • エージェント
    オルトレーヴェ・メーベルナッハaa0017hero002
    英雄|12才|女性|ドレ
  • きみのとなり
    加賀谷 亮馬aa0026
    機械|24才|男性|命中
  • 守護の決意
    Ebony Knightaa0026hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • Analyst
    宇津木 明珠aa0086
    機械|20才|女性|防御
  • ワイルドファイター
    金獅aa0086hero001
    英雄|19才|男性|ドレ
  • エロ魔神
    御手洗 光aa0114
    機械|20才|女性|防御
  • 天然エルフ
    マリナ・マトリックスaa0114hero002
    英雄|22才|女性|ソフィ
  • 革めゆく少女
    御童 紗希aa0339
    人間|16才|女性|命中
  • アサルト
    カイ アルブレヒツベルガーaa0339hero001
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 分かち合う幸せ
    笹山平介aa0342
    人間|25才|男性|命中
  • どの世界にいようとも
    ゼム ロバートaa0342hero002
    英雄|26才|男性|カオ
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
  • コードブレイカー
    賢木 守凪aa2548
    機械|19才|男性|生命
  • Survivor
    イコイaa2548hero002
    英雄|26才|?|ソフィ
  • 悪気はない。
    酒又 織歌aa4300
    人間|16才|女性|生命
  • 愛しき国は彼方に
    ペンギン皇帝aa4300hero001
    英雄|7才|男性|バト
  • かわたれどきから共に居て
    日暮仙寿aa4519
    人間|18才|男性|回避
  • たそがれどきにも離れない
    不知火あけびaa4519hero001
    英雄|20才|女性|シャド
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