本部
ネコミミと猫
掲示板
-
【相談】にゃんこ対策会議室
最終発言2016/12/03 13:38:59 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/12/03 13:36:57
オープニング
●ネコミミパニック
「社長!」
とある地方の中小企業。
そこの社長は苦虫をかみしめるような顔をした。
「君たちは逃げなさい。逃げて、HOPEに連絡をぐはぁ!」
社長は自分の姿を部屋の姿見で確認して、リバースした。中年男性の頭に生えているのは、真黒なネコミミ。ちなみに、社長室にいる社員(全員中年男性)の頭には、ネコミミが生えていた。
「にゃふっふー!」
社長室の棚に、一匹の愚神が着地する。
「ボクになめなめされるとネコミミが生えてしまうのだ!」
人間の言葉をしゃべる猫に、会社勤めの中年男性たちは恐怖におののいた。
――なんで若いOLにネコミミを生やしてくれなかったのだ。互いに互いを見ているだけで、ちょっと地獄ではないか。ハゲてる課長など、どういうふうにネコミミが生えているかよくわかるからマジマジと見てしまうわ―――
……たぶん、社員たちは猫愚神を恐れていた。
●ぜったいはえーる
「嫌な予感がする……絶対に僕に生えるんや」
正義は恐れながらも、とある会社に訪れた。
会社の受付には人がごった返しており、そのなかのほとんどがネコミミをはやしたおっさんである。
男性社員(おっさん)ばかりにネコミミに生やす愚神が現れたとHOPEに連絡が入ったのだ。猫愚神を逃がさないために、会社は社員がいる状態で封鎖されている。
リンカーたちは、会社のなかに入った時に驚いた。
おっさんのネコミミ!
一体、どこに需要があるのだろうか。
『ネコミミ愚神は、ネコミミからライブスを吸収しているらしいですぅ』
「小鳥、それやと愚神にネコミミがついているみたいやで」
ああ、それだったらどれだけ幸せだったことか。
支部の話によると、ネコミミが生えってしまったのはオジサンばかりらしい。
気乗りがしない。
とても、気乗りがしない仕事だ。
「なぁ~」
足元にすり寄る猫が一匹。
「なんや、こんなところに猫がおる。君、踏まれてしまうで」
正義は猫を抱きかかえた。他のリンカーたちも、こんなところに猫がいたという物珍しさからそれぞれ猫を抱っこする。
「ん……なっ、なんやこれは!」
『あー、やっぱりですぅ』
●受付に現れたおっさん軍団
「そっちに行ったぞ!」
「部長のカツラがネコミミで取れたぞ!」
「若いOLにネコミミ生やしてくれ!!」
封鎖された会社のなかは、今や大混乱に陥っていた。リンカーたちはネコミミがついていない無事な社員を会議室に避難させることにした。そこにはいれなかったネコミミ世代もといおっさん世代は、自分たちで愚神を捕まえようと箒を振り回して躍起になっていた。
普通だったら逃げるだろうが、この愚神の姿は猫の姿をしていた。
おっさんたちは、なんとなく捕まえられるような気がしたのだろう。
「にゃはははは!」
『正義、あの猫が愚神みたいですぅ』
愚神だから今はかわいいけど危険な予感がするですぅ、と小鳥は言う。
その頃、正義は
「だから、嫌やったんや……。男のネコミミとおっさんのネコミミなんて、誰トクやねん」
受付の端っこで体育座りをしていた。
解説
・愚神を退治してください
※このシナリオでは全員にネコミミが生えます。
・愚神……フツーの三毛猫姿。舐められると、相手はネコミミが生える。そこからライヴスを吸収するが、愚神を撃退するとネコミミは取れる。会社のなかを自由に歩き回っており、色々な場所にランダムに表れる。長年猫として生活しており、猫の行動が身に沁みついてしまっている。追いかけると素早く逃げ回る。社長室に追い込まれたり攻撃を受けたりするとトラほどに巨大化し、凶暴化する。凶暴化すると、ネコミミが生えているものから捕食しようとする。
ネコミミが生えたおっさん……総勢三十人ほど。その内十名が、猫追い込み作戦を立てている。なお、作戦と言っても猫を見つけたら箒で猫を追い立てる程度のもの。
・会社(昼の12時)
受付け(1F)……社員が一番集まる場所。愚神は人の頭と頭の間をジャンプして移動することもある。ランダムに人をぺろぺろしてネコミミを増やす。
会議室(1F)……ネコミミが生えていない社員を集めた部屋。カギがかかっており、社員は事件が終わるまで出てこない。
資料室(2F)……過去の資料がたくさん詰まった部屋。ほとんどが紙資料なので、散らかると非常に困る。本棚がたくさんあり、その上に愚神は登ったりする。
作業室(2F)……パソコンがたくさんある部屋。騒ぎが起こった時のまま。猫はパソコンとパソコンの間に入り込み、ときどき飛び出してきて覗き込んだ人の顔に張り付く。
食堂(2F)……普段は職員でごった返しているが、今は無人。猫を追いかけると厨房まで走ってしまう。
厨房(2F)……現在調理中の料理が数多くならぶ。逃げ込まれると鍋をひっくり返したり、鶏肉を取られたりしてしまう。
社長室(2F)……社員が罠を仕掛けた部屋。ネズミ取りを利用して、罠を仕掛けている。ネコミミが生えたおっさんたちは、この部屋に猫を追いこもうとする。
リプレイ
●ネコミミ!
「にゃはははは!」
猫の形をした愚神は、受付から逃げて行った。
だが、リンカーたちはそれどころではなかった。
「やだ……お兄さん可愛くない? ベリーキュートじゃない??」
木霊・C・リュカ(aa0068)は自らに生えてしまったネコミミにご満悦だった。ぴこぴこ動く真っ白な耳は、我ながら結構な可愛さではないか。
『おっさんにしてはマシな方だと思うが、可愛いかと言えばそうでもない……』
オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は自分のネコミミを引っ張りながら、ため息をつく。どうやら、痛覚があるかどうかを確かめているらしい。
「あれっ……何か、何かなつかしい……!? しっくりくる! なんだこの気持ち!」
ビシュタ・ベリー(aa4516)は自分に生えていたネコミミを動かしながら、目をぱちくりさせていた。
「な、なんなんですかこれ~~!」
瑞葉 美奈(aa4650)はわなわなとふるえていた。仮面で表情はうかがえないが、耳はぴーんと立っている。緊張して、警戒をしているのが丸わかりだ。
「ううう、自分のフェチ的記号の多さに胃もたれしそうです……」
『……なんというか興味深いですね。何がどうなってネコミミ生えるのか』
構築の魔女(aa0281hero001)は、辺是 落児(aa0281)に生えたネコミミを眺める。長身で無愛想な男が生やすネコミミは、罰ゲームのようであった。構築の魔女は、そっとカメラを取り出す。そして、ぱしゃぱしゃと写真を撮り始めた。
「ロロ――」
落児はその様子に、若干あきれていた。構築の魔女は、その視線に気が付いてコホンと咳払いをする。
『えぇ、まぁ、こんなことしている場合ではありませんが……だって気になるでしょう?』
こんな機会は二度とないかもしれないし、と構築の魔女はカメラを握りしめる。
『それに……あちらのはしゃぎようよりはマシというものです』
『ああああああ!! オリヴィエ! 猫耳の愛らしさは流石我が子であるぞ!』
ユエリャン・李(aa0076hero002)は、ハッスルしていた。
いつの間にか構築の魔女がもっていたカメラをかすめ取り、撮影会に余念がない。撮られているオリヴィエの目は、若干死んでいる。
『おチビちゃんも撮ってあげよう。そこの帽子も並ぶが良いぞ』
ピピ・ストレッロ(aa0778hero002)を手招きするユエリャンは、可愛くて小さな子供たちを集めた写真集を作ろうとしていた。
『わーい、可愛くおねがいね。あっ、ワカバも一緒に入っていいかな?』
「証拠写真を残すのはやめてよ!」
皆月 若葉(aa0778)は、両手で耳を隠す。
獣人の友人もいるので見慣れてはいるが、自分に付くとなると恥ずかしい。
『かわいいから、大丈夫だよ』
「……うん、ありがとう。全然嬉しくない」
若葉は、ユエリャンのカメラから逃げるように身を隠す。そこで端っこで小さくなっていた正義に躓いた。
「良田さんそんな落ち込まないで。意外とにあって………うん、みんな一緒ですし!」
「はははっ。あんがと」
正義の笑いは乾いていた。
「女の子は、かわいいからいいですよね」
「そやな」
若葉と正義は、そろって端っこで途方にくれていた。
「な、なぜ私達にまで猫耳が生えているのですかにゃん!?」
『面白い能力の愚神だにゃあー。……でも、倒さないとダメだけどにゃん』
月鏡 由利菜(aa0873)とウィリディス(aa0873hero002)は、互いに互いを見つめあった。ネコミミは確かにパートナーの頭の上に、ひょっこり生えてしまっている。
「はっ、つい口調まで猫に……」
『にゃん?』
ウィリディスは、首をかしげる。
「リュカさんや征四郎さん、それに若葉さんや飛岡さん達まで……。スーツを着ていてもお構い無しですか!?」
一般人への被害はおっさんばかりだが、リンカーの被害の年齢はまちまちだ。ちなみに、一部のおっさんたちは愚神を取り押さえようと活動中らしい。
『……今更だけど、愚神に常識は通用しないんだよ。ユリナ』
ぽん、とウィリディスは由利菜の肩をたたく。
「モ、モテ期きた……!? ついに私の魅力が世間一般に理解されたってこと!?」
内田 真奈美(aa4699)は、震えていた。恐怖や緊張ではない、歓喜である。だが、果たしてネコミミパニック中にモテ期など来襲するのだろうか。モテたとしても、おっさん比率がとても高いというのに。
「中年男性に猫の耳が生えたからなんだっていうの? 男女平等じゃないわ! 女からみれば魅力的かもしれないじゃない! まずはこの眼で見ます!」
アビゲイル・ヘインズビー(aa4764)は、叫んだ。さすがはナントカ活動家である。声が大きい。幸いにして、仲間たちの年齢層は若い。おっさんがネコミミつけた光景よりは、見られたものであろう。
『いくら愚神とはいえ、ネコを攻撃するのは気が引けるぜ……薬で無力化してライヴス払うだけで退治とかできねーかな?』
「うむ……俺も攻撃は少し……出来そうにない……」
だが、成人男性コンビ飛岡 豪(aa4056)とガイ・フィールグッド(aa4056hero001)の姿をみたアビゲイルは目じりを釣り上げて叫んだ。
「保護するよ!」
どうやら大変お気に召したらしいが、ネコミミは絶滅動物でも少数民族でもない。
「撮影会なんて、やってる場合じゃないのですよ!」
ネコミミに対して、若干浮かれ気味な大人たちに対して紫 征四郎(aa0076)は叫んだ。
『ビデオカメラが無く、動画を永久保存出来ぬことが只々口惜しい!』
だが、残念なことにこの想像に一番浮かれているのは彼女のパートナーである。
「猫に見えても相手は愚神、いつ何が起こるか分からないからおじさん達が危険だよ。猫は刺激せず、まずはおじさん達を避難させてから猫を何とかしよう」
若葉の言葉に、全員が頷いた。
「愚神は、無人の食堂におびき寄せるのが最善だな」
豪は、自分の荷物からキャットフードやマタタビなど猫が喜びそうなものを取り出していく。
『猫。好きなんだね、にゃん』
ウィリディスは未だに「にゃん」が抜けない。
『可愛いだろ、にゃん』
「ガイ……うつっているぞ」
女の子の「にゃん」はいいが、男の「にゃん」は聞きたくない豪であった。
●猫の前におっさんだ!
征四郎は、ユエリャンからもらった台本を持ったまま立ちすくんでいた。愚神を追いかけるためにも、まずは今現在愚神を追いかけているおっさんをどうにかしなければならない。一同の意見はまとまっていた。まとまっていたが……。
『がんばれー。ネコミミ使った色仕掛けだよ』
『カンペを読むだけの簡単な仕事であるぞ』
「……」
ピピ、ユエリャン、若葉が三人そろって、征四郎の行動を物陰から見守っていた。若葉だけは、征四郎に対して申し訳ないような気持ちを抱きながら見ていた。ネコミミをつけて暴走するおっさんの説得など罰ゲームのようなものである。
ちなみにユエリャンは鼻血を流しながら、カメラを握っていた。
「そっちいったぞー」
「周りこめ!!」
「待ってください!」
征四郎は叫んだ。
大人たちは、そろって振り向く。
「猫型といえ愚神は愚神。ここはエージェントに任せて欲しいです」
征四郎は、猫愚神を捕まえようと息巻くおっさんたちに前に出る。
おっさんたちの頭には、ネコミミ。剥げたおっさんの頭にもネコミミ、カツラをかぶっているおっさんに至ってはネコミミが生えた後にカツラをかぶりなおしたらしく――若干カツラが浮いていた。
「えっと、おじ様が怪我をする所は見たくないですにゃん。安全な場所で待っていて欲しいですにゃん……」
征四郎は、カンペを見るふりをして笑いをこらえていた。
色々とひどすぎて、直視に耐えない光景だ。
特に、カツラのあたりが……。
「征四郎は、よくやってるけど……やっぱり説得は難しそうだよね」
たとえ、リンカーであっても小さな女の子に「守る」と言われて大人しく従うようなおっさんたちではないだろう。もし、従うような大人だったら、ネコミミ生やしながら猫を追いかけてはいない。若葉は黒猫の書を取出し、黒猫を出現させた。
「これで、おじさんたちの気はそらせるよね」
若葉が呼び出した猫の幻影を、おっさんたちは「待てー!」「追い込むぞ!!」「カツラ取れましたよ!」と叫びながら追いかける。
『むむ、おチビちゃんの勇士が見れなくなったではないか』
ユエリャンだけが、とても残念そうであった。
●猫だ、ようやく猫がでたぞ~
『追い込む前に少し準備をしておきましょう』
構築の魔女と美奈は、食堂で準備をしていた。猫を追い込むための準備である。
『唐辛子や食用のハーブはあるでしょうか?』
構築の魔女の疑問に、落児は厨房から探してきた唐辛子を手渡す。
「ローリエって、猫が嫌がるでしょうか?」
美奈は首をかしげる。ペットボトルに水をいれたものが猫避けになるとは聞いたことがあったが、ハーブに関してはあまり聞いたことはない。
『ペットボトルに水をいれて庭におくのは、火事になる可能性があるのでやめた方がいいそうですよ』
「そうなんですか……」
『机や椅子の下にもぐりこまれる面倒ですし……壊してしまうのも問題でしょうしね。あと、お肉置いておきましょう』
そうですね、と美奈が椅子をテーブルの上にあげるようとした。すると、突然椅子にずっしりとした重さが加わる。
「にゃ、美味しそうなごちそう発見!」
椅子に乗っていたのは、黒猫であった。
「ふんにゃー!」
と、驚いた美奈は椅子を落してしまう。
『瑞葉さん、何かありましたか?』
「ねっ、ねこが現れました!」
テーブルとテーブルの間をぴょんぴょんと飛び跳ねる猫に、構築の魔女は戦闘の構えを取る。
『もうお肉の匂いに誘われるとは』
「……」
落児は、何か言いたげだった。
「まさか、もう現れるとはな」
『準備をしていたかいがあったんだぜ』
豪とガイは、なぜかキャットフード片手に登場した。
「このキャットフードには、マタタビや惚れ薬を混ぜさせてもらったぞ。さーて、にゃん子はこっちだぞ」
『猫じゃらしだぜ、うりうり~』
豪とガイは、猫じゃらし片手に猫を引き付けようと必死であった。だが、その光景は猫カフェで猫に相手にされない寂しい男性そのものである。
「人がメシ食ってる時になにやってんだ!」
何故か食事をしていたらしいビシュタは、カレーを片手に厨房の奥から出てくる。
「会社の食堂のカレーって、美味しいんだな。一度にたくさん作るからなのか?」
もぐもぐとカレーを食べていたビシュタは、ふと手を止めた。
彼女の目の前には、猫に向かって猫じゃらしをふりふりする男性二人。だが、肝心の猫愚神は「ふにゃー」と気のない返事をするばかりである。
「猫にモテないんだな……」
ビシュタは、かわいそうな目をみるような目で二人をみていた。
●尻尾も欲しいにゃん
「食堂に猫が出て、見失ったんですね。はい、食堂におびき寄せ作戦は予定通りで。囮作戦で行くんですか」
由利菜は、スマホをしまう。
「まだ、愚神おびき寄せ作戦をやる気なんだよね? うまくいくのかな」
真奈美は、資料室のダンボールに腰を下ろしていた。
ここならば愚神もこなくてサボれるかなー、と真奈美は思っていたのである。
「こんなところで巨大化されたら部屋が滅茶苦茶です!」
その反対に由利菜とウィリディスは、やる気に満ちていた。
「にゃん」
そんな、資料室に猫が現れる。
「ねっ、猫!?」
真奈美は驚いたがすぐに真顔に戻って、猫に向かって叫んだ。
「せっかくだから、ネコミミだけじゃなくて尻尾もつけなさーい。可愛さが半減してるのよ!」
『クレアの尻尾!』
ウィリディスの言葉に、由利菜が思わずお尻を抑えた。
こんなところで尻尾まで生えたら、目も当てられない。
「尻尾を生やしなさい。尻尾!」
『尻尾! 尻尾!』
真奈美とウィリディスは一緒になって、猫を追いかける。猫は本棚に飛び移り、ゆらゆらと本棚を揺らした。
「コラっ! まじめにやりなさーい」
由利菜が二人をしかりつけるが、尻尾を求める二人は止まらない。
降りしきる髪の雨の中で由利菜は、悲しげにつぶやいた。
「掃除……」
●カツラVS猫
「これ、どうするべきだろう?」
オリヴィエは、カツラを持ちながら途方に暮れていた。社長室にあった仕掛けを運ぶ途中に、偶然発見してしまったのだ。本当にどうすればいいのだろうか、このカツラ。
そして、食堂にたどり着いたオリヴィエが見たものは、クーラーボックスに腰掛けながら『ご飯です。美味しく食べてね』という看板を首から下げたリュカであった。その側には、肉やらキャットフードやらが置かれている。こっそりと持ち込んでいたらしいビデオカメラまで持っているリュカの姿は、一瞥しただけでは何をやっているのかわからなかった。
「9割は誰得映像だけど、せーちゃん達ちびっこの猫耳姿はまさしく宝だよ大事にしていかなきゃ!」
別にビデオカメラを持ち込んでいた理由は聞いていない。
求めているのは、どうしてリュカがクーラーボックスに座って囮をやっているのか説明である。
『お供え物か?』
「うーん、最近相棒のお兄さんの扱い雑じゃない?」
こんなに美猫なのにー、とリュカは頬を膨らませていた。
『猫は大層愛らしいが、生えているのがおっさんというのは如何にもそそらぬな。色男……ああ、貴様のは可愛いと思うぞ』
「今のユエリャンも同じなのでは……」
厨房のほうから、ひょっこり征四郎とユエリャンが顔を出す。
「ユエちゃん、聞こえてるぞー」
どうやら、リュカは若干傷ついているらしい。
大人の心理は複雑なのである。
「来たよ。皆、隠れて」
食堂に入ってきた若葉が、全員を厨房のなかに隠れた。
『ふふふ、良いもの見れるかな』
ピピも隠れながら、楽しげに笑う。
何が始まるのだろうか、と思っているとアビゲイルが猫じゃらしを持って食堂にやってきた。どうやら、あれで猫を誘導しているらしい
「にゃにゃにゃ、いにゃ~ん。体が逆らえないにゃ」
愚神は体をくねらせながら、アビゲイルの持つ猫じゃらしに猫パンチする。
「こうだよね。これだよね」
うりうりとご満悦でアビゲイルは、猫じゃらしを動かす。
「猫じゃらしにも才能は必要だったんだね」
真奈美は、うんうんと頷く。
「いや、どちらかといえば猫との相性の問題のような気が……」
美奈は、ちらりと豪とガイの方を見る。彼らの猫じゃらしはことごとく失敗し、アビゲイルの猫じゃらしは何故か気にきったらしい。
「猫は気まぐれですね」
はぁ、と由利菜もため息をつく。
「逃亡するかもしれません、気をつけてください」
構築の魔女も固唾をのんで、猫の動きを見守る。
「よし、追い詰めるぞ」
豪も唾を飲み込んだ。
「つっかまーえた!」
リュカは、自分から膝に乗ってきた猫をギュッと抱きしめる。
ところが、猫はリュカの腕の中で巨大化したのであった。
『危ない!?』
「仕方あるまい……行くぞ! 俺は闇夜に佇む白色矮星! 今日だけ特別! 爆炎猫装ゴーニャイン!」
豪とガイは共鳴し、リュカをかばった。
全員が攻撃の態勢に入る中で、アビゲイルは腰に手をあてて発言をする。
「猫をみんなでよってたかっていじめるですって!? 猫とかクジラとかは愛護されるべき存在よ! 愚神といえどもむやみな退治は許さないわ!」
「あれ、もうトラだよね」
ビシュタの呟きに、アビゲイルはもう一度猫をまじまじとみた。
「退治もやむなしね」
さすがのナントカ活動家も会社のなかで暴れるトラは保護できない、と判断したらしい。
「正体を現しましたね! お覚悟なのです!」
征四郎はユエリャンと共鳴しようとするが
『色男、後でビデオカメラを貸すのだぞ!』
とあまり人の話を聞いていなかった。
『ドアに気を付けてください。トラの大きさといえど、逃げるかもしれません』
「……」
構築の魔女と落児はリンクし、トラの前に立ちはだかった。
「……」
『ええ、深追いをする気はありません』
構築の魔女は、猫の鼻先を狙った。
「隙ありだな」
豪は一気呵成を使用するが、猫はさすがの身のこなしでそれを避けてしまう。ガイはそれを見て、思わず呟く。
『でかいトラのくせに、素早いにゃー』
「にゃーは止めてくれ……」
豪は、唇を噛む。
本当に、男の「にゃー」は聞いていても可愛くない。
「猫……というかトラに合気道は効くのでしょうか?」
美奈は構えを取りながら、若干あわてていた。なにせ、目の前にいるのはトラである。猫を捕まえる任務だと思っていたのに、これでは猫かぶりにもほどがあるというものだ。
「とっておきの虹蛇の威力をみなさい!」
虹蛇を振り回すアビゲイルに猫が驚き、飛びのいた。武器が強力なことを嗅ぎ取った愚神は、真奈美のほうへと牙をむける。
「うわぁ、こっちにも来た」
真奈美は慌てふためいたが、由利菜がそんな彼女をかばった。
「世の中可愛いだけで生きていけると思ったら大間違いです……! 撃ち抜け、神の槍!」
由利菜とウィリディスが戦う後ろで「可愛いだけでは生きていきたのか」と真奈美ががっくりうなだれていた。
「それが落ちたら割れてしまいますよ……っと」
『うーん、なかなか攻撃があたらないね』
「なにか、猫の気をひくようなものがあればいいのだけれど」
ピピの言葉に、若葉は周囲を探る。
だが、トラとなった猫の気を引けそうなものなどない。猫じゃらしはまだあるが、トラを相手にするにはアレでは小さすぎるであろう。
『……まさか』
オリヴィエは呟く。
彼の手のなかには、タコ糸。そして、そのタコ糸の先にあったのは――ふわふわの毛を揺らす魅惑的なカツラであった。ちなみに、通販で五万六千イエンである。
『まさか……これがこんなふうに役に立つとは思わなかった』
「にゃっ! にゃにゃにゃ! 体が、勝手に反応しちゃうのにゃ」
オリヴィエのあやつるカツラ猫じゃらしに、トラとなった猫はメロメロになってしまった。大きな体をくねらせて、もっと遊んでと強請っている。
『流石は我が子であるぞ! 色男、しっかり撮影をしておくのだぞ』
『……仕事してほしい』
ユエリャンは目を輝かせたが、オリヴィエの目は死んでいた。
『やっぱり、猫は猫なんだよね』
ウィリディスは『にゃん』と嬉しそうであったが、他の面々の心情は複雑だった。
『止めさしづらいな……』
ガイが皆の心情を代弁する。
「オリヴィエさん、もうちょっとそのままで……」
由利菜も色々とやりづらそうである。
「トラは保護されるべき存在よ」
アビゲイルの言葉に全員が声をそろえて
『それ以前に、愚神だ!!』
と突っ込みを入れた。
●ネコミミのあとに
『むー、ネコミミかわいかったのに消えちゃったー』
鏡でネコミミが完全に消えてしまったことを確認したピピは、頬を膨らませていた。どうやら、あのネコミミがそうとうお気に召してしまったらしい。
「お願いだから忘れて……」
一方で、若葉はほっとしていた。耳が消えてなくなったことで、ようやく普段の自分に戻れたような気がしたからだ。
「あー、耳がないって素晴らしい。黒歴史がなくなれば、もっとだけど……」
残念ながら、今回の記録は他の方々の手によってばっちり記録されている。女の子中心に記録されていたことが、救いと言えば救いかもしれない。
『あー、本当になくなってるね。せっかくだから、尻尾もつけて欲しかったのに』
ウィリディスの呑気な言葉に、由利菜は冷や汗をかいた。
「……尻尾までついたら、スカートがめくれあがっちゃうのに」
今回ついたのがネコミミだけで、本当に良かった。
「やっぱり、記号は多すぎてはいけないものですよね」
美奈もほっと胸をなでおろしていた。
「可愛いだけじゃだめなの。可愛いだけじゃだめなの……どうしたらモテるのよ!!」
真奈美は頭を抱えて叫んでいた。
どうやら、色々なことがトラウマになっているらしい。
『怪我がなくてよかったにゃ』
「ガイ、爆炎猫装ゴーニャインは今日だけだ」
だから早く「にゃん」の語尾を取ってくれ、と切実に豪は思った。
『でも、本当に怪我がなくてよかったですよね。まさか、猫がトラになるだなんて』
「……」
構築の魔女の言葉に、落児もうなずく。
『ところで、色男? ビデオカメラは?』
ユエリャンはさも当然のように、リュカにビデオカメラに要求した。
「うん、ごめんね。壊れちゃった」
『は?』
「さっきトラが暴れたときに危ないから非難しなきゃなー、と思ったらバキ、ゴキ、バン、という感じで……」
ちなみに元カメラだったものがこちらです、とオリヴィエはユエリャンにビデオカメラを差し出した。
『ふぎゃー!』
ユエリャンの猫の様な悲鳴が、会社に響き渡ったのであった。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
---|