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凱歌遠い冬の空
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しっつもーん☆
最終発言2016/11/27 00:00:03 -
で、温泉は?
最終発言2016/11/27 21:32:20 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/11/27 08:43:13
オープニング
● 凱歌遠く、ここは冬の地
とある氷に閉ざされた地域で、プリセンサーはとある未来を予知した。
水蒸気爆発とと共にあたりに発散される熱、そしてその影響で氷が解け、海面が上昇、海に近い町は避難もできずに海に沈む、そんな未来をプリセンサーは見た。
直ちにH.O.P.E.はグロリア社に調査を依頼。
その結果驚くべきことが分かった。
「これは、なるほど、そう言うこと」
遙華は研究データを見つめて告げる。
「この水蒸気爆発は地球の機能を利用したものよ」
そう、遙華が示したのはこの星の断面図。
「ここ、溶岩だまりがある、そしてその上には地底湖、この溶岩だまりと地底湖の間にルートを作りだせば、一気に水が蒸発して水蒸気爆発、高温の爆風は雪や北極の氷を溶かして水面が上昇、近隣の海面が一気に上昇、津波によって町が飲まれて大災害」
そう一気に説明を終えた遙華は今度は別の映像を公開した。
「これが原因となる愚神」
それは、まるで地球に撃ち込まれた弾丸のように見えた、しかし巨大、全長五十メートルほどあり、さらに全長百メートルほどの鳥の翼がその背から生えている。
「コードネーム、神鳥ケツァル。かなり厄介な能力を持った愚神よ。」
それが猛烈な勢いで地面を砕いて下へ、下へと進もうとしていた。
「さて、作戦説明が遅くなってしまったわね、これが直下、今私たちが乗っているヘリの真下で起こっていること。これからみんなには降下してもらってこの愚神を倒してもらう必要がるわ」
そう言って遙華は全員を見渡した。
「作戦を説明するわね」
●作戦内容
まず陸戦部隊か空戦部隊を選択していただく。
選択したのち、戦闘環境に目を通してもらう。
・陸戦部隊戦闘環境
神鳥の放つ熱によって、雪がすでに解けだしている。傾斜の緩やかな盆地は溶けた雪と、水たまりがまだらに配置されており、二本の足では移動がしにくい。
そのためALBを装着してもらう。
このALBは全て寒冷地仕様に調整される。バージョンは二つの中から選ぶこと。
また神鳥は地面にめり込み、土をかきだして地中へと掘り進んでいるが。翼からのエネルギー弾に注意せよ。
・空戦部隊戦闘環境
基本的にグロリア社で貸し出している『翼』を装備してもらうことになる。
神鳥の放つ熱は上空にやけどを負うほどの熱帯気流を作り出している。
つまり、上空で戦闘する部隊は突発的にダメージを受ける可能性がある。
熱は揺らめきとして目視は可能だが、その方向に吹き飛ばされる可能性に注意せよ。
全員が陸戦部隊でも空戦部隊でも構わない。今回は時間がなかったため作戦はリンカーに丸投げである。
しかしここまでの戦いを潜り抜けてきた君たちであれば、我々より効果的な作戦を立ててくれるに違いないと信じている。
● 支給アイテム。
・ALB強化について。
ALBは自動的に雪上使用に変更される。もともとのALBの性能に加え、下記の機能が追加されるため、片方を選択せよ。
《ドリアード》
水を吸収し防壁として展開することが可能になる。
回避とに+100、両防御力に+50の補正がかかる。
さらに、壊れても2ラウンドで修復される、自己修理機能を有する。
《スカジ》
水面を氷結させる機能があり、この機能のおかげで高速機動が約束される。
スケート靴のような感覚。
イニシアチブに+3 移動力に+4 される
・翼について
エネルギーウイングは霊力をエネルギーとして出力する翼の総称だ。
今回は二種類用意した。
状況に合わせて選択し使用してほしい。
また形状は装備者によって大きく変わる。基本的にはオレンジ色の火焔が翼のように広がる。
ただし、エネルギーウイングは研究段階のため壊れやすい点に注意。
エネルギーウイング・メギド
戦闘を想定し作られており、翼が自動で攻撃、防御の補助を行うように設定されている。
両攻撃力を+100し、両防御力を+50する
エネルギーウイング・フレア
もともとレーシング用に開発されていた翼であり。持続力と自在に飛ぶことに秀でている。
イニシアチブに+3 移動力に+3する
解説
目標 デクリオ級愚神ケツァルの撃破。
● 神鳥ケツァルについて。
その翼は熱をはらみ周囲に熱波を振りまいている。そのため近づくだけでダメージを受けるが地上から近づいた場合、その影響は受けない。
その体を覆う鋼鉄の殻は一度破壊すると生成に時間がかかる。
しかしその殻に攻撃してもダメージは通らない、したがって、最初に攻撃して効果があるのは翼のみである。
ちなみに神鳥が地底湖に突っ込むまでが20ラウンド。
さらにそこから溶岩だまりまで穴を掘り進めるのは10ラウンド。
計30ラウンドで勝負を決める必要があるということだけ気を付けてほしい。
神鳥の攻撃方法を下記にまとめた。
1 フェザーダーツ
エネルギーを纏った羽で攻撃する、威力は軽めだが、射程距離とホーミング性能に秀でる。同時に多数の敵を狙える、メインウエポン。
2 フレアブレス
殻がある状態では使用できない
口から火を噴く、射程に難があるが、面を攻撃できる優れ技。
3フェニックスダーツ
穴を掘る作業を3ラウンド停止しないと使えない。一度空に舞い上がり、自身に高エネルギーを纏って敵に突撃する。
ものすごい火力を持つ上に、ターゲットの付近にいる敵にもある程度のダメージを与えるため注意。
4 灰化
自身の体から放つ温度をゼロにして、自分の体の中にエネルギーをためる。
その後大幅にHPを回復する。
耐性 この愚神には耐性があり、下記の行動は効果が無い
守るべき誓い等、ターゲット集中系。
移動封じのBS
リプレイ
プロローグ
「ハッ、ああいうわかりやすい化物はいいな。人間同士の争いなど矮小化してくれる」
『豪徳寺 神楽(aa4353hero002)』は感慨深げにそうつぶやいた。
「すこしは怖気づくくらいの可愛げはないわけ?」
『梶木 千尋(aa4353)』は呆れたように言葉を返す。
ここはH.O.P.E.がチャーターした輸送ヘリ内部。その中から神鳥ケツァルをまず上空から見てみたいという話が上がり、熱波の影響のない遠い範囲から愚神の姿を眺めている状況だった。
「わたしは人間相手の方が怖いからな」
望遠鏡を神楽に差し戻し千博はそう言った。
「スケートやスキーが得意なあなた向けって言うから仕事に出ることを了承してみたら……これ死ぬような仕事じゃないの?」
『ヘルガ・ヌルミネン(aa4728)』は慣れないヘリの揺れに耐えながらそう、苦言をこぼす。
そんな泣き言を耳に鋏『スカジ(aa4728hero001)』は一瞬の真顔を浮かべた、しかし。
「てへぺろ」
舌をだして自分の額を叩いた。不穏な空気が流れ始める。
「今日は翼、使えないね」
そうヘリ内部に余した翼を指さして『大門寺 杏奈(aa4314)』は告げる。
「仕方ありませんわ。今日はひたすら攻めましょう!!」
『レミ=ウィンズ(aa4314hero002)』は残念そうに項垂れる杏奈を励ますように告げた。
「火力が高くなかろうが一人でないならやり方はあるものじゃ」
そう告げたのは『ヴァイオレット メタボリック(aa0584)』はすでに『ノエル メイフィールド(aa0584hero001)』と共鳴状態だ。
そんな賑やかな一行を眺める大人しい女性が一人『カグヤ・アトラクア(aa0535)』である。
彼女はそんな集団を一瞥すると、頬杖をついてこの地球内部を目指して進む神鳥をじっと見つめている
そして、そんな彼女をじっと見つめている『クー・ナンナ(aa0535hero001)』
「…………やれることをやるかの」
「最近テンション低いね」
物憂げに頷き、カグヤは溜息をつく。
「わらわと相対してくれる敵がおらぬ。世界的に代わり映えのない状況が続いてどうしようもない」
「…………色々難儀だね」
第一章
作戦開始の号令がなった。
ALブーツ組は低空を飛んでいたヘリから投下され、翼組を残すヘリは高度を上げる。熱線が届くギリギリの範囲を見極め、そこで停止。
その分厚い扉がスライドし開いた。
そのヘリの淵に立つのは『Arcard Flawless(aa1024)』そして『八朔 カゲリ(aa0098)』
そんな二人の間には怪しい空気が流れている。
Arcardは悪辣な笑みを浮かべてカゲリを見つめた。
「今回も勝手に死んでくれないでよ、八朔君?キミはいずれボクが手ずから殺すんだから」
その言葉を受けてカゲリは、つまらなさそうにArcardを一瞥。『ナラカ(aa0098hero001)』は楽しそうに喉の奥で笑う。
そんな小競り合いにあまり興味がないArcardの相棒『Iria Hunter(aa1024hero001)』が計器を指さす。
「なぅなぅ」
リンカーとしては平気でも、ヘリとしては危険な温度になりつつある、その渓谷であった。
「じゃあ、行きますか」
そうArcardは大空に飛び立つ。
エネルギー翼を展開し、風を切り裂くように飛んだ。
――翼は壊れやすいそうです。無理はできませんね。
『ルビナス フローリア(aa0224hero001)』の声が空に凛と響く。
『月影 飛翔(aa0224)』はそして、目を見開く・
眼前を覆う蒼天。その蒼天にも似た蒼い粒子が噴出させ飛翔は、大きい上翼二枚と小さい下翼二枚の計四枚の翼を展開。天に軌跡を描く。
「だが多少はやらないとアレはどうにかできそうもないけどな」
――いつぞやの依頼で飛んだ経験が活かせますね。
ノエルが告げた。
そんな空戦組のインカムにヴァイオレットの相棒、ノエルから通信が届いた。
――すまんが、空の情報は流して欲しい。
ALブーツで陸路を行く舞台に飛翔は目を向けた。
――愚神の情報を流すが、各自の判断に任せる。祭りを始めよう。
その号令に合わせて飛翔は熱波を避けるように下へ。
地面すれすれを飛び、ALブーツ組と並走する。
「もうすぐ射程圏だ……」
――随分と堅そうな殻ですね。
ルビナスが告げる。
「なら殻は陸に任せる。こっちは攻撃が届く翼から削っていくぞ」
飛翔の隣を黒い翼をはためかせカゲリが追い抜いていった。
その黒い軌跡をなぞるように飛翔も加速する。
「真正面からの殴り合いこそが本懐でしょう?」
千尋が唸る風をものともせず叫ぶ。
「器用な戦い方は我らには向かぬ。悪い選択ではない」
神楽が告げた。
「行きます…………」
『イングリ・ランプランド(aa4692)』は静かに告げると千尋の後に追従する。
「予言された未来なんて起こさせるわけにはいかないな!」
飛翔がそう高らかに宣言すると、カゲリの魔導銃。飛翔のフリーガーがさく裂する。
それは翼に吸い込まれるようにせまり、着弾。
爆発する。しかしその直後。巨大な帆のような、ケツァルの翼が揺れ動き、そして、はじかれたように振るわれた。
そこから発射されたのは無数のエネルギー弾。フェザーダーツ。
「ざっと数えて50以上です」
杏奈が冷静に告げるのと同時にALブーツ組は広範囲に散った。
そのダーツをふせぎ、そらし、あるいは弾き。切り捨て、それでも進路は護り直進する勢いは失わせない。
「行くぞ!」
ヘルガは両足に力を込める、スカジの名前を与えられたALブーツは自分の足のように意のままに動いた。
解けた氷の上であっても足を取られることなく進めるのは、回避という点において絶大な効果を上げた。
ヘルガは弾丸を掻い潜って前へそして反撃。カグヤの砲撃が翼へと飛来する。
その弾丸を受け、身をよじるように振るわれる、ケツァルの翼。
ダメージは通っているようだとカグヤは分析する。
「まずは壊さないと話にならないもの」
そう千尋が見据えるのは、ケツァルの生成した鋼の防御膜である殻。
「攻撃を集中させていきましょう」
「はい」
千尋の言葉に頷いて。イングリは魔術を放つ。その歌声から生成された魔素の弾丸は、鋼鉄の殻に殺到し、それを歪ませた。
「私たちが殻を劣化させます」
――怪獣さん、おおきい!
喜ぶ『アリス・ドリームイーター(aa1416hero001)』を嗜めて『北里芽衣(aa1416)』はゴーストウィンドを放つ。
その部分は腐蝕し色を変える、その一帯めがけ千尋は加速する。
ギアを上げ、速度を上げる、ハルバードを構え、その切っ先を殻に叩きつける。
「はああああ!」
直後高音がなり響き、いっそう深く殻が歪む。
「一発目、行くわ!」
――怒涛の三連、目にもの見せてやるぞ。
そう千尋はハルバードを振り上げた。
一撃のもとに殻を歪ませて、二撃目で食い破るそして、三撃目で穴を中心に切り開く。
そしてその穴の向こうで見たのは、地面にエネルギー弾をひたすらに叩き込み、地面を掘り進めるケツァルの姿。
殻を食い破った千尋に何の興味も持っていないようだ。
「この…………」
そんな神鳥の姿に苛立つ千尋。
殻内部への一番のりの愉悦を味わう暇もなく、神鳥に切りかかっていく。
二章
千尋が内部に突入したのと同じころその逆サイドでは、杏奈が殻へ到達していた。
「剣を持つのは久しぶり……何故か気分が昂ります」
そう杏奈は剣を地面と水平に構えるとジグザグに走行して、ダーツの直撃を避けた。さらに体制を立て直し加速、ALブーツが唸りを上げて急激に速度を上げた。
「はあ!」
そして接敵、その刃と硬い鋼鉄の殻を鳴らす甲高い声を連ねて、その殻を食い破るべく連続攻撃をみまう。
――いっけー、ですわ。
直後襲いかかるダーツ。だがそれも切り払いそらしながら、杏奈は決して攻撃の手を緩めることはなかった
飛んできたダーツを切り払いながらも、一心不乱に殻を叩く
「な、殻を突破した?」
ヘルガはその報告を受けて、初めてケツァル本体に意識を向ける。
こちら側も早く突破したいところではあったが、ヘルガ自身があまり攻撃に参加出来ていなかった。避けるだけでなかなかに神経を削られる。
そんなヘルガがこの時までまともなダメージを受けずに済んだのは、相棒スカジのアドバイスと。故郷で磨いたスキーの腕故だろう。
しかしそれでは囮程度にしかならない。
「なかなか近寄れない」
隙を見て援護射撃をしているが、効果がなさそうに見えた。
翼への攻撃へ切り替えようか、いったん距離を置いて考えるヘルガだったが。そんな彼女の視界に装甲で身を包んだ乙女の姿が移った。
輝夜である。
カグヤはまるで攻撃を避けられていないが、その必要もないと言いたげなほどに余裕がアル。
持ち前の防御力故に涼しい顔をしながら、目標に弾丸を叩き込んでいた。
常に一定の距離を保ちつつ、弾丸の雨を降らせるカグヤだがその表情は出荷されていくヒヨコを眺めるように無表情で。
「徐々に、穴が深くなって言うようじゃのう」
――早く倒さないとだね。
クーが何気ない口調でそう言った。
「うむ、上空組、頑張るのじゃ」
* *
上空は無数の陰炎が層となって存在する特殊地帯と化している。
その陰炎は信じられないほどの熱量を受け、さらにはその熱量をてばなし、光を歪ませ見せる、熱波断層である。
それをカゲリは掻い潜り舞い上がる。
――覚者よ。
襲いくるダーツを、前に加速し抜き去ることで回避。
「まだ来ます!」
そんな芽衣の警告を受けてカゲリは進路を変えた。
翼を翻して地面すれすれまで高度を下げた。翼を大きく広げることで体制を整えると、銀色の水面に、煌く黒色の翼が、無機質に映った。
衝撃波で飛び散る水しぶきを蒸発させて、カゲリはさらに加速。
イングリの隣を体を回転させながらぬく。
杏奈の背後から援護射撃、両手を前に構え。そのまま銃を乱射する。
その弾丸は殻に切り取り線のように穴をあけていく。
「これなら!」
杏奈はそれをなぞるように剣を叩きつける。すると人が通れるほどに巨大な突破口が開かれる。
「力に自信はないですが、これならっ!!」
杏奈は羽ばたくカゲリに追従するように加速。
見ればすでにその胴体は土にめり込み翼のみが露出していたが。
構わずに、その刃に霊力を乗せた。
――喰らえ、怪鳥!
霊力の輝きを湛えた二連撃、二人のライブスブローが神鳥を襲う。
この時初めて悲鳴が上がった。
空気を割くように長く甲高い悲鳴、神鳥は身をよじらせる。
「負けてられないね」
フェザーダーツを干将・莫耶で切り払いながらArcardは告げる。
突如流れを変えた熱波を盾で遮りながら、その地帯を抜けるべく加速、翼を切り付け、離脱する。
「先生!」
芽衣の声を受けArcardは彼女が何をしたいのか瞬時に理解した。
残り一回分のゴーストウィンドウを翼に放ち、腐蝕した一帯へと再びArcardが切りかかる。
その攻撃に対して反撃とばかりに放たれるフェザーダーツ。
「しつこい!」
飛翔はダーツの追尾性能に悩まされていた。
「ぐああああ!」
背後から迫るそれをよけきれず、翼に受ける飛翔。
ただここで翼を止めてしまえば残る弾丸も全て受けてしまう。
飛翔は上へめがけて加速した。
気流を利用し、上下左右に複雑な機動を描いて回避。ファウストの全弾を翼に叩き込む。
――前!
ダーツを放つさいの予備動作で、翼を大きく羽ばたかせるが、その翼が目の前に迫っていた。
それを回避すると同時にカラミティエンドで切り付ける。
そして放たれるフェザーダーツ。
――誘導弾が来ます。上に避ける場合は熱風に注意を。
「抜けたところで一撃離脱だ」
* *
そんな上空での奮闘をインカム越しに感じながらもカグヤは先ほどとは変わらない体勢で弾丸をばらまいていた。
「大体50M程度かの」
穴の深さを目算で図りつつ、弾道を調整。弧を描くように軌道を調整、そして着弾地点をコントロールする。
的確に弾丸を、地面に潜る本体に当てるために調整しながら放っていく。
そんな技術に感心しながらも、近接アタッカーたちはその背中に降り立っていた。
千尋は掘り進める愚神の眼前に立ちはだかりストレートブロウでその勢いを止めようとする。
さらにドリアードの最大出力で、ケツァルを押し上げようとその刃を向ける。
「壊れたって勝手に治るんでしょう? 少しくらいの過負荷には耐えなさいよ!」
悲鳴を上げるドリアード。そして千尋にダーツが殺到する。
「翼には攻撃しやすくなりましたね」
イングリは周囲をグルグル回りながら翼にひたすら攻撃している。
先ほどから地上組への攻撃が苛烈になっているように感じられた。
「水の精霊ヴォジャノーイ、盾となりて私を守れ!」
眼前に迫るダーツ、それを片手をあげて防ぐイングリ。
その手を中心に水の盾が生成されていた。
水を吸い上げるドリアード、そしてその水を利用して自身を防護する水の精霊。
地形と状況自体はイングリにとって有利に働いている。
今ならば、そうイングリは反撃の意思を見せる。解放されるガルドル。
「Snow a little faintly singing eat the chin of the enemy, torn it,」
イングリ、つまりノルウェーの魔女は多数の魔術に精通している。だがその中でも好んで使うのは呪歌である、その呪歌が響く。
「 sprinkle the organs, draw the picture with splashed blood」
水の刃は過冷却され、その翼を切り裂きことごとく熱を奪っていく。
神鳥は更なる悲鳴を上げた。
その一瞬ひるんだ状況を逃すまいとヴァイオレットが翼射に切りかかる。
速度にまかせてダーツを掻い潜り、ダメージの蓄積している翼の付け根へ武器を引っ掛け食らいつく。
そしてグリムリーパーを振りかざし羽を刈り取っていく。
突き、斬り、たたき割り、殴打。その鬼神のごとく。
自分が傷つくのも構わずにフェザーダーツを放つケツァル、それは見事に背中にまとわりつくヴぁいおれっとに直撃する、だがしかしヴァイオレットは止まらない。
その翼の熱で皮膚がただれても、服が焼け焦げてもその手の鎌を止めることはしなかった。
その激痛、そしてあまりのリンカーたちの野蛮さに。怒りをあらわにする神鳥。
初めてケツァルはリンカーたちを敵として認識したのだ。
その翼をはためかせるケツァル、しかしそれはダーツを放つ動きとはまた違う、まるで空気を掴むような、ゆったりとした動き。
直後ケツァルは高速で空へと飛翔した。
振り下ろされるヴァイオレット。
そしてすべてのリンカーが見た。その猛々しく広げた翼、シルエット、それはまさに神鳥と呼ぶにふさわしいほどの神々しさで。
それを見たナラカは感慨深げに頷いた。
――やはり、想像通りだな。
「何がだ」
カゲリは武装の調子を見つつ答えた。
――確かに私の本来の姿である太源と通じるものも感じられる。ならば試してみるのも悪くはない。
そう楽しそうに告げるナラカ。
――温い方が焼き尽くされる、単純明快な真理だろう?
「まさかお前…………」
ナラカは言外に語る、自身の劣化、火焔の神鳥を射殺してみよ。と。
その瞬間、ケツァルは全身に炎を纏った。
まるで蘇る不死鳥のように黄金めいた炎を纏い、荘厳で、美しいその姿を衆目にさらす。
そして小手調べと言わんばかりに放たれたフェザーダーツ。
それを撃ち落とそうとヘルガはヘイルストームを構える。細かに動きながらの射撃は難易度が高いためそうそう当たるものではないが、追尾性能の妨害でもなればよいという判断。
しかしその思惑に反して、ヘルガを多数のダーツが狙う。
しかしその姿は世界を滅ぼす熱の塊でもある。は大気を熱で歪ませ、熱波で辺りの氷を溶かし、熱波で気化させる。
そしてケツァルはその熱量をわが身を持ってヴァイオレットに叩きつけようとしてた。
「リーサルダーク」
芽衣が放つ暗闇も、その輝きを押し込めることはできず、逆に羽ばたきによって吹き飛ばされてしまう。
「どうするんだ、あれ」
そう飛翔が叫ぶと。Arcardが告げた。
「一度だけなら…………。防いで見せよう」
「先生!」
芽衣が止めるのも構わずArcardはヴァイオレットの前に立ち、盾を装備。
直後神鳥が笑った、ように見えた。そしてその翼をはためかせ、一直線にArcardめがけ進撃する。
「"我等が総体は殺意より成りて―"」
Arcardの全身を霊力が包んだ。それは火の鳥が纏う真紅のオーラと同じくらいに赤い霊力、しかし。逆にArcardが纏うそれは冷え切っていた。
そしてそれは花の形を持つ。更に何層にもわたり障壁が展開されフェニックスダーツを迎え撃つ。
「開け、《徒花の円環》!!」
直後衝突甲高い音が鳴った。
ほとばしるバックファイアー、隕石のような威力で飛来したそれをArcardはその身全てを盾として受け止める。
花びらが二つほど消し飛んだ。
「おお」
一瞬カグヤは機体の眼差しを向ける。その表情に生気が戻って行く。
花びらが一枚消し飛んだ。
「ああああああああああ!」
さらに花は成長し、ケツァルを抑え込んでいく。
そして、直後大爆発が起こった。
そのたちこめる炎を払ってArcardが姿を見せる。
「「期待外れだな、貴様……弱い」」
獰猛な笑みを浮かべるArcard、心底残念そうに肩を落とすカグヤ、二人は同じセリフを同時に吐いた。
その光景を見あげていた千尋は唖然とつぶやいた。
「なんなの、アイツ。あんなの繰り返されたら持たないわよ」
――この阿呆、弱音なぞ吐いてる場合か。いいか、千尋。こういうのはな、最後はハートなんだよ。怯んだら負けだぞ。派手に生き抜くとかいう戯言を、この程度で終わらせていいのか?
だが、そんな千尋の驚きなどつゆ知らず、その敵へとネビロスをからませ、その動きを封じようとするArcard。
「何よ、甘えさせてくれないわけ? ……らしくなかったわ、ごめん」
――殊勝な千尋など気味が悪いわ。わざわざ掘るのを止めるくらいだ、奴も追い込まれているだろう。行くぞ!
神楽の言葉に頷くように飛翔は告げる。
「アレの直撃は勘弁願いたいな」
――穴から出てきて動きを止めた今が狙い目です。
飛翔とカゲリは翼を震わせて突貫。
飛翔はその左翼根本に三連撃を放つ。
「試練か…………」
カゲリは重たくつぶやいた。
「なめるな」
そうナラカに言い放つと、全弾右翼根元に叩き込む。
落ちる体。真下には杏奈。
「この黄金に輝く剣の錆となれ!」
打ち上げるようにライブスリッパーを放った。
「何回でも切り裂く! 私は絶対に諦めない!!」
直後四方からの集中砲火。
響く神鳥の断末魔、そして。その炎は光に代わり、世界を満たすように天に昇っていく。
エピローグ
「ぷー、怪獣さんが消えちゃったわぁ」
共鳴を解いたアリスは長靴で水を跳ねさせながら告げる。
「消えちゃったね。アリス、後で一緒にお墓作ろ」
そんなアリスに芽衣はやんわりと語りかけた。
「怪獣さんの?」
「うん、どんな怪獣さんだったか、忘れないように」
リンカーたちは被害の報告のために、広範囲に散らばっている。幸いなことに気温が下がりつつある。解けた氷も形を変えて再度凍るだろう。
「この翼も発売されるのでしょうか? 自在に空を飛ぶのはちょっと楽しかったですね」
ルビナスが飛翔に告げる。飛翔はその言葉に頷いた。
残念ながら、コスト面整備面の問題で実用化にはやや遠いのだが、それはまた別の話。
そんな中、氷塊の上で頬杖をついている者が一人。
「今日の感想は?」
クーが問いかけた。
「ALBがドリアードじゃなくて、ドリルじゃったら面白かったんじゃがのぅ」
「…………割と末期?」
「どこか旅に出て、帰らなくなりそうな程度にはのぅ」
そしてこの戦いで一番傷ついたArcardは、ふらふらと一人ヘリに乗り込んだ。
その様子が心配になりかけよる芽衣。
「帰って寝る」
Arcardはだるそうに眼を細めて告げた。
「先の戦闘で、ボクは霊力の大部分を消費したにも関わらずこのザマだ。全く、ボクが持ち得る最強の護りを行使したのにさ」
そんな彼女に芽衣はペットボトルを差し出した。
「その、アル先生、お疲れ様でした」
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結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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