本部

厨二病戦記

アトリエL

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
9人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/10/14 20:24

掲示板

オープニング

「ふ……俺の力が欲しい……そういうことだな」
 その男は意味深な笑みを浮かべ、空を見上げた。
「だが、我の助力を欲すると言うのならば、それ相応の能力を見せてもらわねばならん……」
 瓦礫の上に立ち、彼はそう言った。自らの人称が変わっているのは彼の力を無理やり抑えているからに他ならない。

「と言う感じの人なんですけど、リンカーとして目覚めたばかりの中学生です」
 HOPEの通信で流されたのは『異世界出身の英雄さんですか?』と思わず聞きたくなるような服装の中学生の姿。
「一応勧誘したんですが、自分達を引き入れたいのであればそれ相応の人材が来るべきだと言い張って仕方がないんです」
 因みにHOPEの幹部クラスが勧誘に行ったのだが、そういう立場とかの問題ではないと突っぱねられている。
「まあ、色んな人に聞いてみたところ……彼の設定を上回るような『ちゅうにせってい?』があれば勧誘できるんじゃないか、と言う話で……」
 因みに彼の設定では世界の覇者と戦って友情を深め合ったと言うところから始まり、自分の力を抑えるために引きこもり……もとい、封印しているのだとか、毎回聞くたびに変わっていたりする。変わらないのは世界の覇者と友情を深めた点だけで……相棒である英雄はその世界の覇者らしい。当人は異世界から来た時点で記憶が薄れており、それがリンカーとなった最大の理由のようだ。
「なので、皆さんで彼の『ちゅうにびょう』設定を上回る設定で彼を説得してきてください」

解説

 というわけで、ちゅうにびょう対決をしてください。
 主な戦いは口頭による設定のぶつかりあいです。
 設定の裏付けを要求される可能性もあるので、その点はご注意ください。
 ただし、物理的な説得は彼の敵として認識されてしまい、説得は失敗と言う扱いになりますのでご注意ください。

 厨二事項:この戦いにおける設定は公式・非公式を問いません。使い捨てでも問題ありません。
 痛々しければ痛々しいほどダメージを与えられます。
 一般的なスキル・エターナルフォースブリザードなどは対策済みのようなので反撃にご注意ください。

リプレイ

●依頼は選べない?
 リンカーが駆り出される事件は多い。都市丸ごと一つを救助するような大きなものから、迷子探しやベビーシッターといった一見するとリンカーの力など必要と思えないようなものまで様々だ。
 そこに共通するのは、一見どんなにばかばかしく見えようと決して蔑ろにしてはいけない案件であるということだ。
「ちょ、ちょっと!! 何故こんな訳の解らない仕事を受けたのですかっ!?」
「え? なんかよくわっかんねーけどおもしろそーじゃん?」
 シュビレイ・ノイナー(aa0196hero001)の怒りをさらっと流し、咲山 沙和(aa0196)はにやりと笑った。
「面白そう……!?」
「……上からの命令であればやるしかあるまい」
「うむむ……」
 シュビレイは複雑な心境ながらも天原 一真(aa0188)はすでに割り切って腹をくくっているらしい。
「仕方ありません……」
 そんな姿を見せられればあまり長い時間唸っているわけにもいかず……小一時間後にシュビレイはそう口にした。決して面白そうという気持ちが勝ったからではない。断じてない。
「一度受けた仕事を断るわけには……」
 既に沙和が受けてしまったことをキャンセルする訳には行かないのだから。いや、決して面白そうと言う部分に反応したのではない。絶対……と言うのは憚られるが、多分、恐らく。
「と言うわけで、今回の依頼は少年の説得ッスよ」
「で、その『ちゅうにびょう』というのはどういった病気なのだ?」
「ええっと……」
 依頼の内容をざっくりと説明するDomino(aa0033)にMasquerade(aa0033hero001)は詳しい説明を求める。それがどんなことか知らないからこその疑問だが、知っている側からすると答えにくい問題である。というか、どんな説明をすればいいのか判らないのが本音であろう。
「説明が難しいっすね。例えば『俺の左目を開くと本当の力が目覚める』とか……」
「……なるほど。つまり本当の能力を隠してる輩のことなのか」
 Dominoの説明をケルト神話のバロールの如き邪眼とでも勘違いしたのか、Masqueradeは余の配下にする価値はありそうだと、機嫌を良くしていた。
「ええと……。本当に隠してる場合もしかり、隠してない場合も然りで……」
「……ともかく。その少年と一度会ってみることにしようか」
 もうめんどくさいのでそれでいいと思いながら、口篭るDominoの態度に首を傾げながらもMasqueradeは歩き出す。それに続いて歩いてゆけば、様々な設定と格闘するリンカー達の姿があちらこちらで確認できた。その状況はまさに十人十色といった様子でどこも色々苦労しているらしい。
「陰陽師って……。これどこまでホントなの? ハルちゃん」
「ちゃん付けやめれって。狐憑きなのはホントじゃな。阿部なんちゃらってのは知らん」
「安倍晴明が狐の子供でしょ?」
 身を乗り出して質問する今宮 真琴(aa0573)に奈良 ハル(aa0573hero001)は突っ込まれつつも準備を続行する。
「何かいろいろ怪しいグッズまであるんだけど……。これ、どうしたの?」
「安心と信頼のネット通販で購入したのじゃ!! 後『厨二病』もネットでちゃんと調べた!! 信用せい!!」
 目の前に並べられた『幸運のナイフ』だの『人工精霊の砂』だの『魅惑のガラナチョコ』だの、怪しげなアイテムを手に取りながら問いただす真琴にハルは胸を張って答える。
 しかし、その買い漁った怪しげなグッズの中にいかにもヤバそうなグッズも混じっていたので、思わず呟いた。因みにやばいといっても893ではなく801方面である。
「……なんだか余計不安になってきたんだけど。大丈夫かなぁ……」
 遠くを見つめる真琴にハルは同じ方向を見ながら自信満々に胸をそらしていた。二人の抱える心境が真逆なのは言うまでもない。
「とは言ってもどうするの? 力ずくとかはNGみたいだけど」
「元よりそのつもりはない」
 確認するミアキス エヴォルツィオン(aa0188hero001)に一真は断言した。
「ましてや子供に暴力なんてもっての他だ」
「あれ? なんかいつもと雰囲気違わない? ……もしかしてキャラ作り?」
「……うむ。語らねばなるまい。俺の過去を!!」
 一真は、厨二病には厨二病と言う作戦だ。思いっきり、客観的にどう見えるのか悟らせてやるのが目を覚まさせる近道なのだから……例え、それがどんな諸刃の剣であろうとも。
「……まぁ、難しいことは考えず。他の方々と話を合わせればうまく行きますよ、きっと」
「とはいっても、具体的にはどうすればいいかわからへんのよ」
 そんな周囲の雰囲気に飲み込まれそうになりつつもJehanne=E(aa0583hero001)とArianrhod=A(aa0583)はマイペースに相談していた。
「そう言うと思って一応アリアの設定を考えてみました。どうぞ」
「……これ、ホントにやらんといかへんの? わっちにはちょっと……」
「とりあえず口調を変えてみるだけでもなんとかなりますよ。後は私がフォローしますから」
「ううむ……胃がイタいでやんす……」
 Jehanneに差し出された設定資料を前にArianrhodは心労を抱えつつあったが、ここまできた以上はやるしかない。そう腹をくくって胃を締め付ける。……あ、なんだかキリキリと痛み始めたっぽい。
「あ、これ、設定考えといたから。一通り目を通しといてねー」
 そんな二人を見て思い出したらしく、沙和は相方にゲームを発売当日に手に入れた子供のような笑みを隠さぬままでメモを渡した。それを受け取った当人の気持ちはあえて伏せることとする。

●聖霊紫帝闘士……現る?!
「彼がその能力者ね。私がきっと説得してみせるわ」
「自信満々だな。どうするつもりだ?」
「私のヒロインとしての魅力を知れば、彼もきっと共感してくれるはずよ!」
「……まぁ、その可能性も少なくないかもな。話を聞く限り、朝霞とアイツはなんとなく似ている気がするぜ」
「世界を救うヒーロー同士! 話せばきっとわかってくれるはずよ!」
「……」
「相棒の英雄が、世界の覇者ってトコロも同じだしねっ! あ、ニックは覇者になる一歩手前だったんだっけ?」
「うっすらと覚えている記憶では、今頃はまぁ、きっとそうなっていたろうな。こんな世界に飛ばされなければ」
「やっぱり! 私達と彼らは似た者同士ねっ!」
(なにか釈然としないがな)
 大宮 朝霞(aa0476)の勢いに半ば呆れながらニクノイーサ(aa0476hero001)は状況に流されていた。
「はじめまして、私は大宮朝霞。こっちは相棒の英雄で、ニクノイーサよ。よろしくね」
「聞こえていた、自己紹介は必要ない。僕には君達の素性は判っている」
「きくところによると、君は相当な実力者らしいわね。どう? 私と一緒に、世界を守るヒーローになってみない?」
「世界は支配するもの……君達とは相容れないようだ」
 朝霞の言葉に少年はそう返す。聞こえていたなどと正直に言っているのだが、まるで最初からお見通しであったと言うような雰囲気を作り、ヒーローよりも悪に憧れているかのような……そんな少年の説得は別の存在によって遮られた。 
「静粛に、静粛に!! 今から勇者、天原 一真の物語、始まるよー」
 真顔で宣伝するミアキスに場を作らせ、一真は周囲が静まるのを待ってから淡々と語り始める。
「……そう。俺はあの戦場を生き抜いてきた。戦わなければ生き残れない生き延びたければ戦うしかないと信じ、数多の命を切り伏せた先に神々に挑み敗退し烙印を刻まれ幾星霜……」
 人が放浪の狩人だった時代。バンドを束ねる族長として略奪された娘を取り返す為に石斧を振るった話。文明の曙……豪傑が中心の乱戦が勝敗を決した時代。鉄の武器を用いるヘテ人とロバの下顎を武器に戦った話。
 真に迫った告白が続く。
「夕べ共にカコダイモーン(悪しき霊)に誘われ、エウダモニア(幸福)に至る道を歩んだ戦友が……」
「調子に乗って過去世の悪所通いを美化しない!」
「余り第三者に宣伝したくないような愉快な話を共有する親しい友人って……。弱み握って脅してたんじゃないの?」
「ん? まあ、そう言う言い方も出来るな」
 ローマの百卒長として、ダキア兵のファルクルに戦友が脚を切り飛ばされた話ではミアキスが、興に乗り過ぎて暴走しかけた一真の頭に手首から当たる由緒正しき空手チョップを落とす一幕があり。中世の傭兵隊長だった過去世では、出資者でもあった友人に裏切られ、敵中に残された苦衷を赤裸々に告白する。一真がほぼアドリブででっち上げる内容に、律儀に突っ込むミアキスに苦笑しながら話は続く。
「ええと、時は数年前、とある王国のお話だって」
 言葉足らずを補うミアキスの助けもあって、少年は彫像のようにじっと話を聞いていた。
 その表情からは何も察することは出来ないが……憧れや悔しさのようなものが時折垣間見られるのは記憶が共有されているからか、それとも単に厨二病設定的にそのような感情を抱いただけなのかはわからない。
「それでも確かに、生まれ変わるたびに貴公と出会った事だけは覚えているぞ。今世は敵か味方か或いは……! すまんな烙印が疼いてな……これ以上は思い出せそうにない」
 漸く一真の話が終了した。
「一応解説するとね、君と一真は過去に出会ったことがあるんだってさ」
 ミアキスが長い長い一真の話を総括すると、一真は少年に決断を迫った。
「今世では既に御使いに出会っている、アレらは嘗ても今も変わらず奪っていったよ……さあ? 卿はどうする? 戦うか否か? 今世は何を選ぶ?」
「ふ……それは今後の運命が決めること。今までもこれからも我らの邂逅はそのような定めの内にあるものではなかったか?」
 だが、少年はそれを軽くかわす。内心でここで素直に頷いてたまるか。といった対抗意識が芽生えていたりするのはきっと気のせいだ。

●前時代的ヒーロー像と表裏一体の悪魔憑きと神に選ばれた救世主
「あー! 超探したじゃんリーダー! こんな所で生まれ変わってるなんて聞いてねーし。あたしだよっと、あ、転生前はジャクリーンって名前だったからわっかんねーか」
 自分とお揃いの真っ赤なコスチュームを用意した沙和が飛びついた。
 リーダーカラーは昭和50年以降赤と決まっている。ランドセルの色とは関係ない。
 兎に角、このまま遊園地のヒーローショーに出演出来そうな一揃えを突き出した。
「失礼。今の彼女のことは覚えておられないかもしれませんが……お、どうやら共鳴が始まったようですね……」
 シュビレイがそう煽ると沙和の瞳が金色に変わり、辺りにコウモリの影が舞う。
「あなた様の転生をずっとお待ち申し上げていました。私達の頂点にまた君臨してはいただけないでしょうか、我らがリーダーにして世界の覇者を従えし者……」
 沙和は騎士の如く恭しく一礼した。その背後から流れるのは前時代的なBGM。悪乗りしたHOPEの研究者達の様々な協力は今回の依頼においてのみ、ボランティア精神で動いているらしい。
 大丈夫か、HOPEの研究費用とは思うが、そこは心配ない。何故なら請求書が切れずにあとで研究者達が自腹で支払ったからだ。
「今の彼女なら思い出せるのではないでしょうか? 私は彼女とともに数々の戦場を駆け巡ってきた死神……」
「……そうだった、かも知れないな」
 反応する少年に畳み掛けるように沙和は手を取る。
「ああっ!! 思い出してお頂いたのですね!! あなたがこの世に生を受け、力に目覚めるのをお待ちしておりましたっ!!」
「あ、ああ……」
「貴方様ほどの実力者、他にはおりません。どうぞ私どもに力を貸してはいただけませんか? あなたがそろえば我らの力を統括する事が出来ましょう……それだけの器、それが貴方です」
 いけしゃあしゃあとシュビレイは言ってのけた。
「……貴方を迎えに参りました、リーダー」
「えっと、ジャンヌは異世界の敵を退治してたんだけど、そいつがこっちの世界にやってきて……えっと」
 続けて、JehanneとArianrhodは語り始めた。H.O.P.E.はかつて、Esperanzaという名前の組織だった時代の話を……その時のリーダー……今は目の前にいる少年の話を。
「そう!! 貴方は私が元いた世界でのリーダーだったのです!! 記憶を封印されていて思い出せないかもしれませんが……」
「何か時間が経って、封印が緩んできたらしいですよ、うん!!」
「そういわれてみれば何か思い出しそうな気が……」
 ちょうど都合よく思い出してくれそうなタイミングでそんな事を言えば少年の方もしっかりとのってくる。ここまでは計画通りッ!
「そうです!! 思い出せませんか!! ……今までの戦いのこと!! そして貴方の使命を!!」
「俺の……使命……くっ、頭が割れるように痛い……ッ!!」
 そう言いながら少年は後ろに下がっていく。どうやらかなり効いているようだ。しかし、同時にこれ以上畳み掛けても効果が薄いようにも見える。
「少し、休んでもいいか?」
 そんな少年の言葉を聞き、ここぞとばかりに動き出す影があった。

●陰陽師と不幸な少年?
「八隅八気、五陽五神、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具、安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る! 封印式『朱雀五式』!」
「ええと……。次のセリフは……。セリフは……!!」
「そう。我と同じ能力を持つ者はこの世にたくさんいるが、そ奴らが全て善人とは限らない!!」
 ハルの始めた詠唱に戸惑う真琴を放置し、勢いに任せて少年に指先を突きつける。
「えっと、つまりは。その人たちを退治するために力を貸して欲しいってことなんだけど?」
「むむ? よく見ればお主、顔色がすぐれんの。……よし、ワタシが見てやろう!!」
 なんとか誤魔化す真琴だが、そんな必死のフォローをスルーしたまま、ハルは亀の甲羅を取り出して、火箸をバーナーで焼き、真っ赤に焼けた火箸を押し付けて吉凶を占った。
「それで……なんとでた?」
「ふむ。待て、もっと詳しく看ねばならぬ」
 結果を不安そうに見守る少年を制し、更に別の道具……筮竹を取り出し占いを続ける。
「天山遯……か。お主、身を慎むが良い。百年に一度の難が迫っておるぞ」
「我が身に降りかかる苦難など、覇者の力でなんとでも出来る……が、対処法を知って置いて損はないからな……」
 ハルに不安なことを言われた少年は毅然とした態度を崩さないが……しっかりと対処方法だけはメモを取っていた。ところで説得はどこにいったのだろうか。

●第三舞踏帝国帝王のハーレム?
「私は帝王に仕える従者、Dominoと申します。どうでしょうか、その力を私達の美しき帝王の為に使う気はありませんか?」
 続くDominoは人目を憚らず、少年に向かって恭しく片膝を着き勧誘する。
「ふむ……確かにこの少年。何かしら不思議な力は感じ取れる。それが何かはよくわからんが……」
 Masqueradeは少年がこの歳では発することの無い一種の脅威とも取れる威厳を感じていた。それをはっきりと感じとれないのは、見た目に普通の少年にしか見えないことと発している威厳があまりにもアンバランスなことが一因なのだろう。
「こちらは我が王は第三舞踏帝国帝王――Masquerade。ご覧下さい、あの美しき姿を」
 示す揃えた指先の先に、うっとりした表情の女の子達を侍らせたハーレムの主。
「えへへへっ」
「やー! ゆっちゃんも!」
「あーん!」
「こらこら。余の寵愛を争うでない」
 その数ざっと六人。いずれ劣らぬ可愛い子ばかり。
 実にモテている。爆発しそうなほどにモテている。
 惜しむらくは、全員めちゃくちゃ歳が若過ぎるくらい。演技と遊びが大部分を占めているようにも見えるが、それはきっと気のせいだ、そうに違いない。それだけ現実とかけ離れていて、楽しんでいるだけなのだ。きっとおそらくかなりの高確率で。
「こらこら。こらこら」
 Masqueradeを取り囲み、しがみ付き、ぶら下り。一部よじ登っているのも居る。なんだか明らかに玩具にされているだけのような気もするが、きっと気のせいである。だって帝王だよ?
 それを遠巻きに、二十代と思われる女の子達のお母さんが、ほのぼのとした眼差しで眺めていた。
「……ロリコンのために力を振るう気にはなれないな」
 少年はそう言うと再びあらぬ方向を向く。ちらちらと玉に様子を伺っているのは彼が思春期真っ只中だからなのか、それとも帝王の威厳をしっかりと感じ取ったからなのか。それは判らない。
 だが、帝王のターンは終わった。

●怒涛の闘争?! 異界獣シャルキトリとの再会?
「私を忘れてしまワれたのですか? ハイプリンス・セルベルダニョー! 地獄のような第八煉獄解放闘争で共にタタ勝った魔夭女将クネルリヨネーゼの事を!」
「地獄のような戦闘を幾度も繰り返してな……」
「確かに奇想代の前世が黒歴シである事は我ら完徳者に取っては事実、でも……それでも廃プリンス様にはわた串の事は憶えていて欲しかった……何故なら不戒殲メツ術法ガイうすグラティウスの発動条件である黒の刻印を持つのは私と……転輪弥勒予定者であるあなた様ダケなのですから!!」
「だが、今の私にはそれが空虚に思えてならぬのだ……」
「……そレデは如何しても八翼黒曜諸界をわた櫛と共に救いにデラれるのは嫌であると……でもそれでは六陣光輝諸界の覇者でR不在帝ブータンノワール様と友誼を結ばれたのは何故なので茣蓙います?それは永劫諸世界の平穏を共に勝ちトランと欲したからでは無いのですか?!」
「それは……」
「徴! 私が穴た様のパートナーである至宝守護転セイ者である事の徴を魅せよと……そう仰るのですか?」
 シャンタル レスキュール(aa1493)は少年の反応を見ながら、しかし反論する隙を与えず理解困難な設定を続けざまにぶつけていく。
「……それは、憶えておられますか?」
(えーっと。どのセリフの後に言うんやったっけーなー……まだ時間かかりそーやなー……)
「我々の守護獣であった異界獣シャルキトリの事を……そうです! 敵将境界破壊者チン邪オロースを打ち破り、第208神聖機甲機動兵団の退路を確干したあの強大な神獣です!」
(ふぁ……あぁぁ……さすがにねむーなってきたなぁ……少しぐらい寝ててもばれへんか……)
「これが……あくびはヤメて、スケジロー……いえ、シャルキトリの転生した菅たなのです!」
 隣で飽きてきたスケジロー(aa1493hero001)にあくびをされて、一瞬素に戻りかけたが、即座に復帰。幸いなことに設定が混戦した部分で少年は余計に混乱してくれたらしく、余計な反応はない。
「ユー! ワシと誓約して魔法少女になってーな……って、男や無いかい! ……これでええか?」
「守護者と守護獣は共転生をなし不離の損材。これ以上の証明をどうせよとハイプリンス様は仰るのですか?」
「いや、今最後だけ思いっきり突っ込みどころ満載だったぞ?!」
 スケジローのセルフ突込みを見逃さず、シャンタルの怒涛の攻勢を少年は凌ぎきった。
「ワカリマシタ。ではこうしましょう。あなた様は私と水平界軌道貫通試験場に参るのです。そこでは幻想破壊者との戦闘趣味レーションを行うコトが出来ます。そこで一度共に戦いまショウ! 戦いの記憶こそ我らに取って最も輝かしい価値のあるもの! 必ずや綿串達の前世の想いが蘇るでしょう!」
「くッ、俺の右手……鎮まれ……すまない……今の俺が力を振るうことは世界の崩壊の呼び水となりかねないんだ……」
 どうやらシャンタルの説得も失敗したらしい。
「おかしいデスねぇ……上手くイクと思ってタデスけど……」
「いやいや。大成功やったやないかい!! あのジャリ、えろーわろったでぇ!!」
 それは失笑である。
「これはセイコウといってイイのでしょーカ? なんだかマンザイ……」
「おうよ! 次のネタ考えるでぇ!! できたら他の連中に披露や!!」
 少年の説得には失敗したが、ある意味前進したシャンタルとスケジローであった。

●傍観者の見てきたもの
 少年の右腕が勝手に動き回る中、次なる挑戦者が立ちはだかる。
「よっし、これで準備完了!! 設定はちゃんと覚えてるか?」
「な、なんとか覚えてるけど……この格好、暑い……」
「まぁ終わるまでの辛抱だ!! 我慢してくれ……あだっ!? 何かにぶつかったぞ!?」
「前も見えづらいっ!! ねぇ、今からでも変更できないの!?」
「ま、まぁ……キミは俺のあとをついてくれば大丈夫だから!! 安心してくれ!!」
 色々聞こえたような気もするが、少年は自身の右腕との格闘に忙しいらしく、特にこれといった反応はないので大丈夫だろう。
 そして、少年の前に姿を現したのはフードが付いた黒のロングコートを羽織り、手には鎖の装飾を付けたバンクルを着け、片目に金の装飾を施し幻想蝶をはめ込んた眼帯を付け、首に懐中時計型のホロスコープをぶら下げている谷崎 祐二(aa1192)と黒のヴィクトリア朝の喪服、頭に帽子を付け垂れているヴェールで顔を隠し、片腕に縁を金の装飾を施した赤黒い本を持ち手を繋いでいるプロセルピナ ゲイシャ(aa1192hero001)の二人であった。
「便宜上、谷崎を名乗っているが……まぁ、傍観者の真名は語らなくてよいか」
「今日、多くの方々が貴方を迎えにきたと思われます。私たちにはそれも全てわかっています」
「そう。このホロスコープで彼らの行動を見守り続けてきた。この書物にすべてが記されている」
「法、では早速見せてもらおうか」
 二人の持つ書物に対し興味津々と行った様子の少年だが、実際は何も書かれてなどいない。即興で何か書き込んでおく手もあったが、それはそれで矛盾が生じたときに取り返しがつかなくなる。故に、白紙であり、答えはすでに準備してあった。
「すまない。その書物はセリーと契約した私にしか読めないのだ。君にはまだ見ることさえできない」
「そう。今日貴方のところにきた方々は皆、真実を語っているのです」
「さぁ、君のことを教えてくれないか? 君のことは君が1番よく知っているじゃないか」
 二人のことをしばらく見つめ、少年は思案顔で俯く。
「そう……だな。その時が近いのかもしれない……君達には感謝しよう『傍観者』達よ」
「君の決断次第で、私の誓いは達成し、魂の記憶は封印され、また新しい魂で見守ろう」
 再び頭を上げた少年は何かを決意したような目をしていた。それをプラスの意味に捉え、祐二は最後にそれだけ告げると素直に部隊袖……もとい、少年から見えない場所へとそそくさと移動した。
「あぁ……動きにくかった……もう脱いでいいよね、これ」
「さぁ。後はあの子が誰の話を1番信用してくれるかだよな。俺の予想だと……」
「えぇ!? いくらなんでもそれはないよー!! 私の予想だと……」
「いやいやいや、それこそないだろ!!やっぱりあの話……」
「……全て聞こえているのだが……」
 部隊袖に隠れてすぐに着替え始める二人の声を聞きながら、少年は小さく呟き……そして、自らの出した結論を実行することに決めた。

●覇王の道
「お前の配下にはなれない。だが、同じ道を進むことはできるかもしれない」
 そう言って少年が手を差し出したのはMasqueradeに対してであった。
「同じ道を進むのであれば、今手を取る必要もなかろう」
「ならば好きにさせてもらおうか。俺の護りたいものを護るためにもな」
 毅然とした態度で応じるMasqueradeに少年はそう答えると歩き出す。そう、未来のハーレムへ……ではなく、HOPEに向かって。こうして、少年はHOPEに所属することを決めた。
「オレが護りたいものを護れるように……」
 中城 凱(aa0406)にはそのための何かが必要だった。礼野 智美(aa0406hero001)が与えてくれたリンカーの力は確かに護るための力だろう。だが、それだけでは足りないことも理解していた。
 だからこそ、今回裏方仕事を色々手伝っていたりする。BGMをタイミングよく流したり、カンペを用意したりと忙しかった気もするが、結果だけ見れば問題はないのだろう。
「うぅ……やはりわっちには無理だったけん……」
「まぁ上手くいったみたいでよかったじゃないですか。……胃薬飲みます?」
「もう厨二病はこりごりじゃ……変な話は辞めてくれ……」
 そんな中、ArianrhodはJehanneに差し出された胃薬(HOPEからの特別な支給品)を飲み干して、現実から目を背けるのであった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 罠師
    Dominoaa0033
  • フレイム・マスター
    Arianrhod=Aaa0583

重体一覧

参加者

  • 罠師
    Dominoaa0033
    人間|18才|?|防御
  • 第三舞踏帝国帝王
    Masqueradeaa0033hero001
    英雄|28才|?|バト
  • うーまーいーぞー!!
    天原 一真aa0188
    人間|17才|男性|生命
  • エージェント
    ミアキス エヴォルツィオンaa0188hero001
    英雄|15才|女性|ブレ
  • 黒白月陽
    咲山 沙和aa0196
    人間|19才|女性|攻撃
  • 黒白月陽
    シュビレイ・ノイナーaa0196hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • エージェント
    中城 凱aa0406
    人間|14才|男性|命中
  • エージェント
    礼野 智美aa0406hero001
    英雄|14才|男性|ドレ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
    人間|15才|女性|回避
  • あなたを守る一矢に
    奈良 ハルaa0573hero001
    英雄|23才|女性|ジャ
  • フレイム・マスター
    Arianrhod=Aaa0583
    機械|22才|女性|防御
  • ブラッドアルティメイタム
    Jehanne=Eaa0583hero001
    英雄|19才|女性|ソフィ
  • Foe
    谷崎 祐二aa1192
    人間|32才|男性|回避
  • ドラ食え
    プロセルピナ ゲイシャaa1192hero001
    英雄|6才|女性|シャド
  • 悲劇のヒロイン
    シャンタル レスキュールaa1493
    人間|16才|女性|防御
  • 八面六臂
    スケジローaa1493hero001
    英雄|59才|?|ブレ
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