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【秋食】収穫祭からテーブルを守れ!
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【相談】テーブルは大事
最終発言2016/10/18 12:51:00 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/10/18 12:25:26
オープニング
そろそろ樹木の葉が赤や黄に色づきだす。
野山が秋色に染まるには暫しの月日が必要だがそれよりも早く、秋を感じさせるものがいくつかある。
夏の日射しをたっぷりと浴びた作物がたわわな実をつけていた。厳しい冬に備える野生動物達がそれらを食らって肥え太っていく。
豊富な穀物と果実、そして脂がのったジビエ。それらを黙って見過ごせるほど人の食欲は軽いものではない。
秋のある日に収穫したばかりの食材が調理されて食卓に並べられる。家族や友人知人で囲み、舌鼓を打って心を潤すひとときもあるに違いなかった。
穀物や果実はときに酒となる。肉も長い冬に耐えるためのハムやソーセージ、燻製肉、塩漬け肉に加工されることもあるだろう。
人の営みに欠かせないのが自然の恵みだが、一年を通じて秋の季節は格別のご褒美といえた。
「せっかくですし、一般の方に迷惑がかからない範囲で許可しましょう。但し、強力すぎるのはダメですからね」
ここは大英図書館の館長室。H.O.P.E.ロンドン支部長、キュリス・F・アルトリルゼインは目を通したばかりの書類に判を押す。それは支部が所有しているオーパーツの貸し出し要望書であった。
「ほ、本当によろしいのですか?」
「もちろんですよ」
駄目元で要望をだしたH.O.P.E.女性職員はキュリスの前で両の瞳を大きく見開く。余程信じられなかったらしく、何もない絨毯の上で転げそうになりながら退室していった。
期間限定なものの、こうしてリンカー主催の宴やピクニック等のプライベートな催しにオーパーツが持ち出せるようになるのだった。
●楽しい秋のピクニック
秋晴れの下、茨城県つくば市にある羽衣峰自然公園では、エージェント達貸切の秋のピクニックが行われようとしていた。
「これ、すごいね!」
提供されたオーパーツを見て颯(ワタル)は目を輝かせた。
それは、一見すると単なる古い折り畳みテーブルだった。六角形のそれは細かい装飾のアンティーク風ではあったがアルミのような材質で出来ていた。
「軽い……!」
実はこれはオーパーツである。同じテーブルを七枚組み合わせて大きなテーブルにすると、そこには触った者がイメージした秋に関わる料理が並ぶという……。
「過去に試した時は、スイートポテトパイ、かぼちゃのスープ、山ぶどうのジュース、ワイン、日本酒、新米、栗やキノコのおこわなんかも並んだらしい……」
プリントアウトされた説明書を読みながらニハルが呟く。しかし、この世界に来たばかりで字をようやく覚えたばかりのニハルにはそれらがどんな料理なのかさっぱりだ。けれど。
「ピクニック、楽しみだね!」
颯が笑顔で笑いかけたので、ニハルも自然と笑顔になった。
「うん、たのしみ。────颯、皆の手伝いに行こう」
まだ車から降ろしたばかりの折り畳み椅子やレジャーシートの山を目指して、ふたりは駆けて行った。
●楽しい秋の収穫祭
「────秋と言えば?」
「いきなりなんだ?」
灰墨こころの問いかけに、アーサーは課題のノートから顔を上げた。
「こころさん、秋と言えば紅葉ですね」
アーサーの英雄のクレイがすかさず答えた。ここ、つくばは道路沿いに木々が溢れているお陰で、秋になると紅葉が美しい。
「確かに────しかし、わたしたちに今必要なのは”食事”じゃない?」
彼らは大学のカフェテリアに居たが、カフェテリアは不意の水道管の破裂のために休業中であった。
「学生にとって脳への糖分はとても大切よ────空腹による怒り制御するために、身体を制御しなくてならない」
「さすが、こころさん!」
「何言ってるんだ」
呆れ顔のアーサーだったが、こころの次の言葉を聞いて顔色を変えた。
「エージェントたちが、いくらでもご馳走の出るオーパーツ持参でピクニックをしているそうよ」
ガタッ! カフェテリアで課題をこなしていたC.E.R.のリンカーたちが一斉に顔を上げた。
「ちょっと秋の収穫祭にでも出かけない?」
アーサーが不敵に笑った。
「よし、ショータイムだ」
●紫峰翁大學より提供のあった学生データ
以下が当校の学生ヒーロー組織の概要です。
〇アシスト・シーン(A.S.)assist scene
・リーダー:灰墨 こころ(はいずみ こころ)
灰墨が申請して作った、大学の支援を受ける最新鋭の設備を持った組織。各学部の秀才も多く在籍する。
リンカーもリンカー以外も在籍し、AGWの研究なども行っている。
勉学を実践できることが楽しくて意外にも単位を落としたりレポートの締め切りに追われる学生も多いが、課外活動として評価されているので留年まで追い詰められる生徒はまれである。
・灰墨 こころ(はいずみ こころ) 理工学群情報システム学科
日本人、肩までの黒髪、黒目、眼鏡、美人。リンカーではない武装した一般人。秀才。
自分の勉学の内容を実用できるのが楽しくて、本業の課題やレポートの締め切りに追われることも多い人間の筆頭。
〇ヒーロー組織:C.E.R(クリムゾン・イーグル・レンジャー)crimson eagle ranger
リーダー:アーサー・エイドリアン
部室のひとつを使って、アーサーが個人的に組織した同好会扱いの組織。A.S.を真似て作り、リンカーのみが在籍する。
アーサーが計画性のある性格をしているため、本業である学業に無理のない範囲でシフトを作り活動をしている。
資金を稼ぐ為に、仕事を請け負うこともある。
・リーダー:アーサー・セドリック・エイドリアン(Adrian Cedric Arthur)物理適正
体育専門学部 スポーツマネジメント学科
イギリス人留学生、金髪短髪碧眼。リンカー。熱血、正義漢。
・クレイ・グレイブ アーサーの英雄、ドレッドノート
薄い金髪に褐色の肌、黒い瞳。性格は冷静で理屈屋。大学には所属していない。
契約は「正義のために」(ただし、自分たちが判断する正義)
解説
目的:ASボスとCERボスの捕獲、テーブルを破損すると失敗
紫峰翁大學事務局「この度はうちの学生たちがご迷惑をおかけします。
こちらで回復させますので、共鳴済の能力者の学生については重傷レベルまではお仕置きしてくださって結構です。
灰墨こころに関しては多少の怪我は認めますが、非リンカーの為、手加減をお願い致します。
この度の騒動、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。重ねてお詫び申し上げます」
ステージ:羽衣峰自然公園(はごろもみね-)
地区基幹公園(地区公園)であり、広さは小学校の校庭くらい(5ヘクタール前後)。
芝生と多数の松の木が特徴の静かな公園。普段はベンチと噴水がある程度。
パラダイム・クロウ社と紫峰山センターの敷地に挟まれており、両施設の職員の憩いの場でもある。
今回はエージェント達の貸切状態。
西:大きな道路、東:松林、北:紫峰山センター、南:パラダイム・クロウ社。
公園内にはまばらな松林が点在する。
●敵情報(大学提供)
各組織は無線機使用
・A.S.
カオティックブレイド×1
バトルメディック×1
ブレイブナイト×1
ソフィスビショップ×1
一般人×1(灰墨)※ドローン使用
・C.E.R.
ドレッドノート×2(うち一人、アーサー)
ブレイブナイト×1
シャドウルーカ―×1
ジャックポット×1
●登場NPC
颯&ニハル:カオティックブレイドの新人リンカー
颯は小学校六年生、気弱な男子。
ニハルは颯と同じ年くらいの緋色の差し色の白い作務衣姿の少女。
●その他の情報
紫峰翁大學:茨城県つくば市にある日本で二番目に広大な連続した敷地を持つ大学
●PL情報
A.Sは公園外の松林に陣を敷き、そちら側から攻め、リーダーの灰墨は陣で指揮を執る
C.E.R.は道路側から分散して公園内の松林に身を潜めながら襲撃
※学生たちを鎮圧しないとお茶会は始められません。鎮圧後ではないと話し合いも無理です。
リプレイ
●戦闘準備!
「今日も青春してるね、学生諸君!」
大学からの連絡を受けた木霊・C・リュカ(aa0068)は機嫌よく公園を見渡した。
「リュカは学生たちを応援するのですか?」
紫 征四郎(aa0076)の疑問に優しくリュカは答える。
「大人だからね、大人気なく、真正面から跳ね返してあげる」
そんなやりとりをなんとも言えない表情で見るユエリャン・李(aa0076hero002)とオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)。
ユエリャンは征四郎に尋ねた。
「偽りのない真実を述べよ、……つまりこれはどういう状況だ?」
秋空の下、ついさっきまでピクニックをする準備していたはずのエージェントたちがいそいそと戦闘準備を始めている。
ユエリャンの問いに征四郎は胸を張って答えた。
「これは挑戦なのです。征四郎は勝負に、負けるわけにはいかないのです!」
「ふむ────ならばサポートしてやろう、感謝せよ」
征四郎のアンクレットにユエリャンが跪いて触れる。
幻想の蝶が舞い、そこに成人した女性────ユエリャンと共鳴した征四郎が立つ。
共鳴した征四郎は偵察のための《鷹の目》を飛ばそうと手を伸ばし、少し考える。
「スキルが割れていますし、バレないように飛ばしたいですが」
『雀鷹、という鷹がいる。今回は此れを模す』
征四郎が創り出したヒヨドリほどの小さな鷹が空を旋回する。その姿を見てオリヴィエが呟く。
「鷹が出せるの、やっぱりいいな」
『オリヴィエも鷹が気になるか、可愛いであろう?』
共鳴したユエリャンが得意げにした。
「な、なんでこんな事に……」
突然の事態に呆然とするのは浅水 優乃(aa3983)だ。対して彼女の英雄はテーブルを横目に見ながら呟いた。
「……お腹空いたなぁ……」
食欲に興味が振り切れている親友ベルリオーズ・V・R(aa3983hero001)に優乃は訴える。
「へ、平和的に解決って、出来ないのかな。愚神でもヴィランでもない人と戦うなんて……私……」
「ん……難しい、んじゃないかな。大丈夫だよ、優乃。訓練、って思えばいいと、思う。……優乃がやりたくないなら、わたしがやっても、いい?」
「え? でも、ベル……大丈夫? ……ごめんね、有難う」
「うん……任せて」
テーブルの説明書を読んでもらっていたまいだ(aa0122)は目をキラキラと輝かせた。
「まいだね! えっとね! やきいもたべたい! やきいも!! あとあまいの! おかし!! あとね、かぼちゃのね!」
自分のリクエストを全部最後まで聞いてもらおうと、一生懸命早口に訴えるまいだ。そんな相棒を獅子道 黎焔(aa0122hero001)が止める。
「あー、はいはいはいはい、先ずはやることやってからな! ったく、なんだってタダのピクニックで邪魔がはいんだよ」
「はーい!! まいだがんばる! がんばるからおなかいっぱいたべていい!? いい!?」
「おう。そのためにもめっちゃ腹ぁ空かせようぜ!」
黎焔はやる気に満ちたまいだと軽く手を打ち合わせた。
それにしても、と黎焔は思う。
「大学も、こっちに来る前に連絡くれればダミーのテーブルとか用意できたのにな」
「仕方ないんじゃない、あるものでやるしかないんだぜ」
「そうですね。彼らは、私たちがここでピクニックをやっているのを見て、思いついたようですから」
虎噛 千颯(aa0123)の言葉に月鏡 由利菜(aa0873)が頷く。そして、リーヴスラシル(aa0873hero001)が眉を顰める。
「それにしても、どこから情報が漏れたのか……」
北に紫峰山センター、南にパラダイム・クロウ社。正直、そのどちらかだと思われた。センターはバイトが居るそうだし、パラダイム・クロウ社はA.S.リーダーの兄がいる。
「折角の憩いの時間が……」
「食べ物の恨みは恐ろしいよっ」
仲間と話しながら、襲撃者に嘆くキース=ロロッカ(aa3593)と匂坂 紙姫(aa3593hero001)だったが、顔を強張らせた颯に気付いた。キースは颯を一瞥すると、静かに少年の傍に近づき、目線を合わせた。
「キミは避難していて下さい。そして」
一旦言葉を区切ると、彼は双眼鏡を颯に持たせた。
「安全な場所で、みんなの活躍を見ているといいよっ!」
颯を安心させるかのように紙姫が元気よく笑った。
「で、でも、僕もエージェントなんだ……」
そう言いながら、相変わらず震える颯。その肩をポンと千颯が叩く。
「怖いか? 大丈夫、俺が守ってやるよ」
「安心するといいでござるよ」
白虎丸(aa0123hero001)が頷く。
彼らの様子を見たキースは少し考えて、頷き、双眼鏡を仕舞った。
「わかりました。ボクも気を配りますが颯たちのことは千颯たちに任せます」
「ありがとな! さてと~、お仕置きタイムかな~」
「千颯……お前はやりすぎる時があるからほどほどにしておけでござる」
すでに近くの松林にハングドマンで罠を仕掛けて来た千颯が両手の指を組んでグッと伸ばした。
「じゃあ、食欲の秋の前に、スポーツの秋といきますか!」
加賀美 春花(aa1449)が張り切った掛け声に、エージェントたちは声を上げた。
「はてさて、最初の仕事が人間というのも、何かの縁でしょうかねえ……」
アルベルト(aa4639hero001)の言葉に椎屋 嵩経(aa4639)は答える。
「殺し合いをするわけではないだろう。何の事はない」
「主殿は年かさも経験もご不足の割には余裕なご様子……差し当たり私めは、お手並み拝見として置きましょう」
「……体よく、さぼろうとしているのではないのか」
「……さてはて」
「おい」
「はてさて」
その時、フィールド見渡すために近場の木に登っていた征四郎の瞳と空を旋回する鷹の瞳が腹を減らした挑戦者を映し出す。
「チハヤ、まいだ! 西と東から二人ずつ敵が向かっています! それから、ドローンを確認です」
「じゃあ、ちーちゃん。机防衛お願いねー」
通信を聞いたリュカはオリヴィエと共鳴して東の松林へと走り出した。
●テーブルの攻防
Hoang Thi Hoa(aa4477)と共鳴したJeanne d'Arc(aa4477hero001)は護るべきテーブルの傍で剣を構える。とは言え、彼女たちも駆け出しのリンカーである。
『フランスの英雄ジャンヌは”アーサー”とはさすがに無関係そうよね』
「今はそれどころじゃない。私たちは足手まといにならないようしっかりしなくては!」
『見よう見真似だけど、トラップを仕掛けてみる?』
「シロウトの罠で仲間が怪我をしたら目も当てらないですよ」
嵩経もテーブルの周りに陣取って敵を待っていた。
テーブルの周囲に固定で防衛をしているのはレベルが低めなエージェントたちだが、力が無い分、情報と助け合いが重要になって来る。
「つまりは来た者から打ちのめせば良い、そういう事だろう」
『左様。打ちのめせる力あっての事でしょうがね。遊撃陣に期待するのがお手軽でしょう』
キースは双眼鏡で偵察しながら、各自の情報を整理していた。
「道路側から松林に隠れながら、という感じでしょうか」
LSR-M110を下げたキースはリーダーを月鏡に任せつつ、そのサポートに徹する。
果たして松林に身を隠すように進もうとする学生リンカーの姿はすぐに見つかった。
しかし、足を狙い、機動力を奪うことを目的にしたキースの銃弾をブレイブナイトの《心眼》が弾く。
「メンバーの顔ぶれで、そう来るとは思っていましたけどね」
キースは《白鷺》/《烏羽》に持ち替えた。
「勝手な理由で騒動を起こすのは止めなさい!」
《守るべき誓い》で敵の攻撃を引き付けながら、”シュヴェルトライテ”と”九陽神弓”、”光翼の盾”を使い分けながら学生リンカーたちを捌く。
「熾天の羽よ、剣に宿りて渦巻く雑念を切り裂け!」
一閃を放ち、鮮やかに戦う由利菜の前に、アーサーが姿を現した。
「……ちょっと、他の奴らじゃ無理そうだな」
C.E.R.のリーダー、アーサーを認めて、由利菜が剣を構え直す。
「私はHOPEの騎士、月鏡由利菜。英国騎士よ、剣を取りなさい!」
『お前達は過去にもエージェント相手に騒動を起こしたと聞いた……厳しく指導する!』
「俺のトップスピードを、止められるものなら止めてみろ!」
アーサーの繰り出した《ストレートブロウ》が、ぎりぎりに由利菜を捕らえ、彼女は大きく弾き飛ばされる。だが、アーサー自身も、由利菜の機動力に驚きを隠せない。
「うわっ、強えぇ……」
敵はどこかに身を隠すジャックポットとドレッドノートだった。
竜玉を持つ嵩経は遠隔攻撃を選んだ。陣の穴を埋めるかのようにドレッドノートを近付けない。
例え、倒し切らなくても、自分の役目は敵を押し戻し、テーブルを護る事なのだ。
「ありがとう!」
ジャックポットの放った矢がジャンヌに刺さる前に嵩経のインタラプトシールドでやわらげられた。
『柄にもない事をされますな』
「必要な事だ」
『まったくもって』
H.O.P.E.の印を刻んだ”希望の御旗”を掲げたのはまいだたちだ。その加護で周囲のリンカーたちを護る。
そして、まいだや千颯たち練度の高いエージェントたちは練度の低い仲間にテーブル前の守りを任せて積極的にテーブル周囲の敵を撃退していた。
「俺ちゃんを倒せるかな? 糞ガキ共~」
『ちょっとやそっとでは倒せないでござるよ!』
近付く敵はイフリートで薙ぎ払い、離れれば純白と漆黒の二対一組の双槍”《白鷺》/《烏羽》”の《白鷺》を放れば敵を貫く。
それどころか、テーブルの張り巡らされた《ライヴスフィールド》に踏み入れれば、力が奪われる。
「くそ、あのバトルメディック、いくらやっても倒せる気がしねー!」
松の陰から矢を放つ学生リンカーのジャックポットが毒づくと、通信機から《潜伏》していたシャドウルーカーの声が応える。
「近づけさえすれば、弱いところをやれると────あ」
『はッはぁー、情報収集不足だぜ、残念だったなぁ! 七人で足りると思ったか!? 十人くらいは必要なんだよばぁーか!』
「ばーか!」
黎焔の真似をして胸を張るまいだ。
共鳴した二人の姿はまいだ同様の六歳の子供の姿に変わったが、エージェントの強さや能力は外見では測れない。
戦闘経験の浅い学生リンカーが与し易い相手と侮ったために返り討ちにあって、慌てて後退する。
まいだはライオットシールドを構えると、テーブルへと飛んでくる流れ矢を攻撃を受け止める。そして合間に二メートルもある”ヴァリアブル・ブーメラン”を投擲する。
『あんまり無理しないでね』
「ん、頑張るね。早く終わって、美味しい物いっぱい食べたいな」
心配する優乃にベルリオーズ応えた瞬間、同意するようにお腹が鳴る。
「食欲の秋、だって。いっぱい食べよう……?」
キリッと”インポッシブル”を構えるベルリオーズ。
『ベルの食欲が凄い……』
《威嚇射撃》を行いながら、怯んだ敵の間を駆ける。
『うわわっ!? べ、ベル、そんな前に出ちゃ……!』
「優乃は、後ろから撃つもんね。びっくり……した?」
『びっくりというかはらはら、かな』
テーブルを挟むように、テーブル前で防衛する仲間たちと挟み撃ちを狙う。
「回復役から狙って……」
通信機を通したベルリオーズの言葉に、まいだたちはタイミングを合わせて《ブラッドオペレート》を放った。
●松林の攻防
────灰墨こころが使用するドローンについての情報は得ている。ならば。
木に登っていた征四郎がオリヴィエの隣にストンと降り立つ。
軽やかにドローン対策に芝を映した傘、スカーレットレインをさしている。
目的地であるテーブルがある場所、そしてドローンを視認できる場所を繋げばこころが潜んでいる場所がわかるに違いない。
空撮のためのドローンではあるが、相手もリンカーならばそのドローン自体を攻撃する方法だって警戒しているはずである。
オリヴィエは双眼鏡を使い、紫峰山センターやパラダイム・クロウ社をざっと観察する。
「こっちは無さそうだな」
さすがに、H.O.P.E.の研究施設と”魔術”を扱う企業である。とりあえず、今は学生が侵入できる隙は無いように見えた。
「────聞くしかないか」
そっと身を隠しながら進む学生リンカーをオリヴィエの双眼鏡は捕らえていた。
「敵数が多い時は頭を狙え、が鉄則ですが……」
征四郎がいつでも飛び出せるように剣を引き抜く。
目標はテーブル周りのリンカーに《サンダーランス》を放つリンカーとカオティックブレイドである。
《心眼》要員のブレイブナイトとカオティックブレイドの《サウザンドウェポンズ》を避けて春花は後退する。
「早くお腹いっぱい食べたいね、エルちゃんっ」
『うむっ。我の食事を奪う不届き者を成敗するのであるぞ!』
エレオノワール アイスモア(aa1449hero001)は張り切っている様子だった。
『ハルよ! 例のライフルを使わぬのか!?』
「他の物を壊しちゃいそうだと思うから今回は無しだよ」
『使いたいのであるー!』
そんなやりとりをしていた春花の頭上にドローンが来ていることに気付いた。途端に、閃く。
「────こちら加賀美。公園東側の松林地点にてドローンを発見したので閃光弾を撃ちます。周辺にいる方はご注意を」
即座に理解したエレオノワールがカウントダウンを始める。
『三、二、一……、今であるぞ!』
オリヴィエは春花のフラッシュバンに合わせて学生リンカーへ《トリオ》を撃ち込む。続く征四郎の攻撃にソフィスビショップはあっさりと沈む。カオティックブレイドは全力で逃走した。
さて、簀巻きにされて悲鳴を上げる学生リンカーへ、共鳴の主導権を握ったリュカがゆっくりと近づく。
「う、うわああああははははは!」
その辺から折って来た猫じゃらしを使って、リュカは学生リンカーの首筋をくすぐる。
「や、やめろ……くす、ぐりは、由緒正しい拷問なんだ、ぞ……!」
「なら、黙秘なんてしなければいいのに」
腰に手を当て、軽くため息をついたリュカに、学生リンカーが恨めしそうに見上げる。
「う、灰墨……松林に……」
「じゃあ、これ借りるよ♪」
しっかりと縛り上げた後、学生の通信機を手の中で楽しそうに回しながらリュカはそこを後にした。
「結構居ますね」
松林を覗き込むと、しっかりとテントまで張ったA.S.の本陣が見えた。
主人格を代わったオリヴィエが、入手したばかりの通信機のスイッチをオンにする。
「テーブルの方へ救援頼む」
すると、目の前の学生リンカーたちがそれぞれの通信機に目を走らせる。
『うまくいった……かな?』
しかし、視界の回復したドローンのモニターをチェックしていたこころが叫ぶ。
「待ちなさい!」
だが、時すでに遅し。オリヴィエの《フラッシュバン》が炸裂する。
「チェックメイト、ですよ!」
駆け寄った征四郎がこころの腕を押さえ込んでいた。
「雪以来、か?」
銃口を向けたオリヴィエに、こころは悔しそうな表情で黙って手を上げる。
「──雪合戦ではどうも」
「やぁ、御嬢さん、ケーキのお礼をまだ頂いてなかったのでこちらから参上してしまいました」
ふふっと柔らかい口調で笑う『リュカ』に、こころは一瞬、目を丸くしてから大きくため息をついた。
「ケーキならいつでも。でも、今日は必要ないんじゃない?」
不貞腐れたようなこころに、オリヴィエは──多少わくわくしながら──、手持ちの”LpC PSRM-01”をこころに見せた。
こころの身体を電撃が走り抜ける。
「そ、それは、”ライヴスプラズマカノン プリシジャンスナイパーライフルモデル-01”!」
「これ、撃ってる所、見たくない、か?」
「もち、ろん。見たいわ……っ!」
興奮を抑えきれないといった状態のこころに、オリヴィエがちらっと学生たちが居るであろう方向を見る。
意図を察したこころが頷いた。
「目標はC.E.R.で。松林に居るハズだから」
銃器にオプティカルサイトが取り付けてあるのを目ざとくチェックして、こころは力強く頷き、征四郎は困ったようにそれを見送った。
茂みに身を隠すC.E.R.のジャックポット。その頭部を狙うオリヴィエの横でキラキラに瞳を輝かせたこころ。
銃身を地面に置き、固定したオプティカルサイト。
そして。
『あーん、これ痛い!』
思わず叫ぶリュカに対して、オリヴィエは淡々と言った。
「……また、使い勝手が良くなる様に、とか研究してくれ」
真顔でグッとサムズアップするこころだが、加減したとは言え頭部を撃たれてのたうっているのは彼女の同窓生である。
そして、A.S.とC.E.R.の仲間がそんなことになっていることなど露程知らず、由利菜のライヴスブローにアーサーが沈んだ。
●反省!
「余の食事を奪おうとするとは、いい度胸であるぞ」
子供の姿のエレオノワールがライフルを学生たちに向けると、優乃が止める。
「どうどう。エルちゃん、ライフルしまって」
バトルメディックを中心にエージェントたちは、怪我をした仲間や学生の治療に当たっていた。
「はぁ……と、とりあえず終わってよかった、のかな?」
怪我をした大学生リンカーたちを手当に奔走する優乃とベリオーズ。
「あっれ?」
一通り治療にあたってスキルを使い果たした千颯が、手に持ったスマートフォンを見て不思議そうな顔をした。
「千颯、どうしたでござる」
白虎丸が尋ねると、千颯が画面に指を滑らせて首を傾げる。
「信義ちゃんに電話しようと思ったんだけど、さっきから『ただいま電話にでることができません』って」
「くそ兄貴なら、着信拒否なんじゃないの?」
何人かがチラっと思って言わなかったことをこころが平然と口にする。
「あのくそ兄貴、すぐに着拒するのよ」
こころが自分のスマートフォンを投げてよこす。
「これなら繋がるわよ。でも、兄貴、今、ロンドンだからネット使ってかけて欲しいわ」
「あちゃー、なら無理か。信義ちゃんとライラちゃん、マナちゃんも呼べたらいいかなって思ったんだけど」
「マナは保育園だし難しいかなあ」
「ま、いいや」
千颯が信義に電話する様を見ているこころの耳に「兄として」「妹の暴走」「責任」「貸し」などの不穏な単語が聞こえて来た。
「俺ちゃんとしては貸し、一、でも全然良いけど俺ちゃんの貸しは高いよ~? マナちゃんの教育上も良くないと思うんだよね~? ちゃんと妹ちゃん叱って欲しいな~」
そして、千颯がスマートフォンをこころに渡す。スピーカーからは刺々しい声が漏れ聞こえる。
「お兄ちゃん、ごめんなさい」
平然とした顔で、声だけはしおらしく謝るこころ。
彼女が平然と電話を切った後、一連のやり取りを見ていた由利菜がこころの前に立った。
「何が学生ヒーローですか……! 身勝手な正義を振りかざして!!」
ぽろりと手から落ちるスマートフォン。いつもは穏やかな由利菜だが、美人なだけに怒ると迫力が違った。
「もし、騒動に巻き込まれてオーパーツが傷物になれば、遺産の損失に繋がりかねなかったんだぞ」
普段、教師として勤めるリーヴスラシルの説教は的確で迫力があった。
ふたりの注意はこころだけではなく、こころの隣で静観を決め込むアーサーへも向けられた。
「あなたもイギリス人ですよね……私の血の半分も英国人です」
由利菜の語りかけにアーサーは怪訝な顔をする。
「イギリス人として”誇り”を持ちなさい。勝手な理由で騒動を起こすのは止めなさい!」
その言葉にアーサーは目を見開く。
「刑法第ニ三六条の強盗未遂罪、同法第204条の傷害罪或いは第二〇四条の暴行罪……」
淡々とキースの読み上げる罪状に、学生たちが震える。
「犯した罪は多くありますが、ボクは貴方に罰を与えるつもりはないです」
「学校からお叱りは受けると思うけどねっ」と紙姫。
「ですが、反省はして下さい。特に」
一旦言葉を切ると、キースはテーブルの準備をしている颯とニハルを指差した。
「彼等に、間違った力の使い方を示したことに」
「だって、リンカーなら────ううん。ごめんなさい」
ピクニックの準備くらい手伝おうとおろおろとしている子供の新人リンカーの姿に、こころはしゅんとした。
「そうね。力には責任が伴うんだったわ」
そんなこころたちへ征四郎が声をかける。
「こころ達も、一緒にピクニックしませんか?」
さらりと紫の髪を揺らしながら誘う天使の姿に学生達は息を飲む。唾を飲み込んだのかもしれないが。
「いいのか?」
アーサーが恐る恐ると尋ねると、征四郎──天使──は笑顔で答えた。
「沢山動いたら、お腹空いちゃったでしょう。勝負がついたら、あとは仲良くが正義なのです!」
「みんなでわいわいするのは好きなので、皆さんがよければなんですけど」
「最初からこう出来れば良かったんだけど……」
「そうだね、皆でピクニックしたいなっ」
征四郎に続いて、春花と優乃、そしてリュカも笑顔を浮かべる。天使──と天使のお兄さん──がここにも居た。
天使たちの誘いに、叱られた子供よろしくちらっと上目遣いでキースを見る学生達。
そんな彼らにキースも頷く。
「反省したなら、もちろんです」
「あたし大賛成! ご飯はみんな一緒に食べるともっと美味しいんだよっ!」
紙姫の言葉に大学生たちが野太い歓声を上げる。
「うぉおおおっ!」
負傷して唸っていたはずの大学生たちも現金にも跳ね起きた。
「これ……あっ!」
畳んだテーブルクロスの山を持つ颯とニハル。その手からひょいと一枚が取り上げられた。
慌てて見上げる颯の視界に、背の高い千颯の姿が映る。
「白虎ちゃん、そっち持って!」
白虎丸が端を掴むと、千颯はふわりとそれを広げる。
颯とニハルも真似しようとしたが、小学生の身長にはそのテーブルクロスは大きすぎた。
「手伝います」
キースと紙姫が現れて、六人は次々にテーブルクロスを広げていった。
「颯楽しんでるか? 怖くなかったか?」
千颯の言葉に、颯は勢いよく頷いた後、ちょっとだけバツの悪そうな笑いを浮かべる。
「うん! あ、でも────まだ怖くてうまく戦えなかった」
「ごめんなさい!」
突然、颯の後ろでこころが勢いよく頭を下げた。突然のオトナの登場に、颯が目をまるくする。
「エージェントって、見た目が子供でも、みんな戦闘経験を積んで戦い慣れていると思ってたわ」
たまたま傍に居た黎焔が不機嫌そうにこころを睨む。
「例え戦闘経験があっても、無駄に襲ってきていい理由にはならないだろうよ」
「まいだ、こわくなかったよ!」
「そうだな、まいだはつよいもんな」
すっかりしょげたこころに、黎焔がカトラリーケースを積んだトレイを押し付ける。
「ほら、反省してるならあんたも準備を手伝えよな」
ぱっと顔を上げたこころは恐る恐るトレイを受け取ると、口早に「ありがとう」と言ってテーブルへと向かった。
●秋空の下のピクニック
「これが目的だったわけではないのだが……」
歓談しながら食事を始めた一同を見て、嵩経は困惑した。
「これもまた、必要な事というものですよ。人の環というモノで」
そんな能力者をアルベルトは多少嫌味っぽいいつもの口調で諭す。
「……わからん」
「わからんながらにでも、取り敢えず壁のシミにでもなっていればよろしいのです」
秋晴れの、少し肌寒い風の吹く公園を見渡して嵩経は「壁がないぞ」とぼやいた。
そんな嵩経たちの前にポンと秋鮭の炊き込みご飯と薩摩汁、鶏手羽と大根をとろりと煮たものが差し出された。
「食べるなら、食べたらいいと思うわ」
こころが押し付けたそれを、ふたりは黙って食べた。味が染みた大根の軟らかさと鶏肉の肉汁が口の中に広がって、甘く優しい和風だしの味が身体をほっこり温かくした。
「美味しい」
高経の漏らした感想にアルベルトも素直に頷いた。
優乃の隣でベリオーズもそわそわとテーブルを見渡す。
しかし。
「案外思い付かない……」
秋の料理が思いつかない。楽しみにしていたベリオーズもそれは同様のようだった。
「他の人のやつ、貰えばいい、よね」
テーブルの料理はたっぷり出てくるのだ。
「……うん、むこうから甘い匂いがする。デザート……かな?」
ふたりが見たのはホアのテーブルだった。
戦闘と違って、今度はホアの独壇場だった。
彼女の前に並べられているのはベトナム料理だ。
しかも、種類も量も十人のエージェントたちの中で一番多く、そのため、他のエージェントたちが入れ代わり立ち代わりに彼女の周りにやってくる。
ちなみに、何故か彼女の周りには季節と関係ないものもたくさん並んでいる。
主食としては、滑らかな舌触りの麺があっさり優しい味のスープに入った牛肉のフォー、ベトナム風プリンであるバインフランはコーヒーミルクと砕かれた氷がかけられて濃厚ながらさっぱりとしていくつでも食べることができそうだ。
ベトナムはバナナの種類が豊富なせいだろうか、数と香りで特に目を引いたのはベトナムのバナナケーキ、バンチュイヌン。これは焼いたものと蒸したものが並んでいた。小麦粉や米粉、バゲット、練乳などで作られたそれは甘い、もしくは甘酸っぱいバナナの味と生地が口の中で混ざり合っていくらでも食べれそうだった。もちろん、ココナッツミルクのソースも用意されている。
秋らしいと言えば、秋野菜と肉やぷりぷりの海老などをライスペーパーで巻いた生春巻き、日本のぜんざいに似たサツマイモとトウモロコシのチェーだろうか。
「Ngon qua!」
細い身体で美味しそうに食べていくホアを横目に、ジャンヌもそっとテーブルを触れてみた。
「やはり、あやふやな記憶じゃ碌な物は」
ジャンヌの目の前には沢山の肉や野菜が入ったポタージュスープと硬いパン、野鳥のパテが現れた。
無意識にパンをスープに浸してそれを口に運ぶ。とても懐かしい味を感じて彼女は言葉を詰まらせた。彼女を『ジャンヌダルク』たらしめる何かがそう感じさせたのかはわからない。
一方、まいだと黎焔の前にはまいだ希望の焼き芋と、甘いお菓子ことスイートポテト、そして、南瓜のスープが並んでいた。
「食べすぎるなよ」
焼き芋だけで随分と種類があった。
黄金色の甘い芋はじゅわっと蜜が出ているし、定番のホクホクとしたものもあれば、ほろほろと崩れるようなもの、スイーツのようなねっとりとした滑らかさ、甘すぎない紫芋、おまけに干し芋まであった。
南瓜のスープはパンプキンスープはもちろん、ポタージュ、シチューも揃い、色も薄い黄色からオレンジ、緑の皮が付いたままの具がたっぷり入っているものもあった。それどころか、南瓜の味噌汁まで。
「温まる……」
スープカップを両手で口元に運び、思わず安堵のため息をついた黎焔と、同時に同じポーズでまいだがほうと息をついた。
隣のまいだのスープと自分たちの目の前に並んだ料理を何度も交互に見るエレオノワール。
前にあるのは南瓜のプリン、梨のタルトタタン、栗饅頭……見事に甘味ばかり。
「甘いものの誘惑には勝てないんですよ……!」
思わず頬を赤らめる春花。
とは言え、エレオノワールも甘いものは好きだし、他の料理は他の仲間から分けてもらえるので問題は全くない。
紅茶を啜りながら、エレオノワールはふと思う。
────前に姉君が作ってくれた豆腐南瓜白玉なるものは出てくるのであろうか……。
途端に、白玉粉に豆腐と南瓜をまぜて、黄色い小さな可愛いかぼちゃの形をしたデザートが現れる。
「ハル、すごいぞ!」。
スイーツを紙姫と食べながら、キースはオータムブレンドの珈琲を、紙姫はアップルティーソーダを。
「どういう仕組みなんでしょう」
「美味しければいいよっ!」
「あのドローンはなかなか良く出来ていたな。他のAGWも見てみたいものだ!」
ユエリャンの言葉にこころとその傍にいたA.S.の学生の目つきが変わった。
「お分かりになりますか!」
長話の気配にアーサーたちはサッと目を反らした。
「いいね、学生たちは青春! って感じで」
にこやかに笑うリュカはアップルカモミールティーを口に運ぶ。ユエリャンはジャムとウォッカが入ったロシアンティーだ。
目の前に現われたマロンクリームティーとリュカたち大人組のそれを一度交互に見てから、ううむ、と言った感じで啜った征四郎とオリヴィエはその程よく甘いおいしさに思わず無言で顔を見合わせた。
由利菜たちは透明なガラスに果物を詰め込んだフルーツティーを分け合って楽しんでいる。
切り分けたフルーツケーキをたっぷり乗せたトレイを慣れない手つきで白虎丸が運ぶ。秋風に揺れる白虎丸の後頭部に気付いたユエリャンが「もふもふしたい」と視線を送っていた。
「こういうのもいいな」
「たまには」
嵩経とアルベルトは林檎とカスタード、栗と無花果のロールケーキにフォークを刺す。
「おるすばんしてる薄のぶん!」
まいだが黎焔とタッパーに詰めてる姿に、家で待つ英雄のいるエージェントたちははっとした。
「これで良ければ」
大学生たちがおずおずと取り出したドギーバッグの数々。
「ガルーに持って帰りましょう!」
「リンドウも喜ぶかな?」
征四郎が立ち上がると、ユエリャンがひょいひょいと自分の好きなものをそこに詰めた。
「リディスは何を喜ぶだろうか」
悩むリーヴスラシルに、ホアが自分も詰めていたバインフランとバナナケーキをお薦めした。
「たくさん食べてたくさん戦えて満足──」
満腹になって思わず呟いたアーサーの踵を、こころがテーブルの下で蹴とばした。
「反省はしてるんだぞ?」
ふたりのこそこそとしたやりとりは、幸い、エージェントたちには聞こえなかった。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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