本部

焼肉が食べたい

アトリエL

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/10/11 12:55

掲示板

オープニング

「あー、腹減ったなあ……」
 ぐきゅるるる~……と、盛大に音を鳴らしながら彼は歩いていた。
「何食べるかなあ……」
 思い浮かぶのは肉。肉。肉。
「やっぱ肉だよな」
 普段はリンカーとして身体を動かす仕事をしている彼にとって肉とは必須食材。むしろ他のものは不要!
「どっかに肉が転がってねえかな」
 そんな妄言を吐きながら歩く彼の横には焼き肉屋の看板。焼き鳥屋の看板。マンガ肉。ジンギスカン屋の看板。
「……」
 脳内のイメージが見た幻なのか、それともそういった種類の看板の一種なのか。
「……」
 ジンギスカン屋の看板。焼き鳥屋の看板。焼肉屋の看板。
「ふう、やっぱり気のせいか」
 先ほど見えた何かを妄想のせいにして青いお空を眺めてみれば再び鳴り響くのは盛大なお腹の音。
「こんなマンガ肉が街中にあるわけないよな」
 はっはっは、と笑いながらぺちぺちと隣に存在するマンガ肉を叩く。
「いやー、俺の妄想もたいしたもんだなあ。こんなうまそうな肉を……」
 そこまで独り言を言った所で通信が入る。
「あ、その辺りにマンガ肉っぽい従魔が出現したそうです」
「……ぇ?」
 そして、彼はマンガ肉に襲われた。

「……えーっと」
 別の通信回線を開きながら通信担当の彼は困惑していた。
「なんか、マンガ肉にHOPE所属のリンカーが襲われてるっぽいです」
 通信回線がまだ生きているのだろう。その通信に誰かが押しつぶされてるような音まで混ざっているが、そこは気にすることではない。
「元は加工済みの牛肉のようです。従魔化して脱出した際にすでに被害届が出ており……あ、はい。そうですか」
 他にもどこか別の場所と通信しているのだろう。一時的に保留音が鳴り、少しして再び通信が復活した。
「元の肉は80キロ相当で、討伐を終えた段階で土がついていたりするだろうから、皆さんで処分してください」
「おっしゃーーー、足止めは任せろおおおお」
 通信士の言葉で足止めをしているリンカーの気力が復活したらしい。直後にべちゃっと音がしてまたうめき声に変わったところから察するに足止めはそう長い時間は続きそうにないが。
「では、皆さんマンガ肉の討伐をお願いしますね」
 通信士はそう言って通信を切った。

解説

 というわけで敵は従魔マンガ肉です。
 攻撃?
 体当たりしか出来ません。
 現在空腹で力の出ないリンカーが従魔と交戦中で香ばしい匂いの漂うレストラン街で潰されています。
 がっちりと喰らいついて離れる気がないので……広範囲攻撃などは巻き込む危険はありますが、多分問題ありません。
 注意しても離れないほうが悪いので遠慮は無用です。
 問題は討伐後の食用肉の処分法です。
 昨今衛生上の観点から一部であっても土のついた肉などは売り物になりません。
 また、食材を無駄にするなどの行為も問題になります。
 なので、問題のない処分方法でしっかりと処分してください。

リプレイ

●マンガ肉を見た人の反応
「これは中々に、シュールな光景ですね」
「珍しいお肉。マスター、あれは美味しい?」
「私も食べた事は無いので、なんとも断言できないですね」
 マンガ肉が動いているシュールな光景をスマホで撮影しながら填島 真次(aa0047)は目をキラキラと無邪気に輝かせながら問うエコー(aa0047hero001)に答える。
 リンカー達に通達された依頼内容に書かれた『適切な処分』とはすなわち『後でスタッフが美味しく頂きました』と言うアレである。そんな事を言われて、マンガ肉を前にしてキラキラとおめめを輝かせない存在がいるのだろうか。否、断じて否であるッ!
「白虎ちゃん! マンガ肉だぜマンガ肉! 憧れのやつだぜ!
「なんだ……あれはそんなに珍しいのか?」
「白虎ちゃん…あれは少年男子の憧れだぜ……?」
「そうか……記憶に無いが向こうの世界では良く食べていた気がするぞ」
「……今初めて白虎ちゃんが憎いと思った」
「その程度で憎まれてもだな……」
 虎噛 千颯(aa0123)も例外ではなく……白虎丸(aa0123hero001)の方は例外だったが。
「……帰って良いか?」
「お肉~♪ お肉~♪」
 御神 恭也(aa0127)は例外側であったが、伊邪那美(aa0127hero001)が思いっきり食う気満々なので帰るに帰れない。英雄と能力者はセット扱いなのである。それにHOPEからの依頼を受理した後に断れば今後の仕事の保障がどうなることかわからない。

「冗談の様な相手だが成長すればクトゥルフ神話的なエネミーに進化するかもしれないしな」
 天原 一真(aa0188)は慎重な姿勢を崩さず、マンガ肉へと視線を向ける。
 その姿は現実世界においては異質で、触手を伸ばしたり分裂したりといった珍妙な能力を有していると言われても納得しただろう。だが、異質に見えてもそれは肉。ミアキス エヴォルツィオン(aa0188hero001)の目はすでに獲物を狙う猫のそれになっていた。
「……うん、こんなに確り肉を食えるのも久しいな……」
「……(おにく、おにく…おにく)」
(……こんなにやる気のあるルゥってのも中々見ねぇな……)
 東海林聖(aa0203)がリンカーになってから食費はうなぎのぼり。しかし、自身の口に入る量は反比例している。その元凶たるLe..(aa0203hero001)の目はキラキラと輝き、その目は口以上に物を言っているように見え……誰の目にも期待しているのがわかる。
「マンガ肉じゃ。マンガ肉じゃ」
「マンガ肉。幼き頃からの憧れの食材。一度は食してみたいと思っていた。まさか、こんな所で合間見えるとはな」
 王 紅花(aa0218hero001)とカトレヤ シェーン(aa0218)は自分達の持つ好奇心が一般人も持っていると考えていた。マンガ肉に喰らいつくリンカー。これほどシュールな光景はめったに見られない。
 リンカー達の活動はテレビなどで流されることも多く、危険度の低いと思われた現場には野次馬が押し寄せることも少なくはない。
 従魔がどんなに間抜けな存在に思えても、一般人では対処できるはずもないのだが、テレビの向こう側から見ていると自分達にも出来るのではないかと思ってしまうのが人のサガである。
「ちょうどいつもよりおなかが減っている」
「お、お肉が空飛んでる?! ……おなかすいた」
 佐倉 樹(aa0340)とシルミルテ(aa0340hero001)がマンガ肉を見たときの感想はそんな感じで……判りやすく言えば、『ちょうどいいところに肉がある』であった。
「……肉!!」
「はいはい、分かってるから落ち着けって」
 尻尾をぶんぶんとちぎれんばかりの勢いで振るユフォアリーヤ(aa0452hero001)を抱き上げ、麻生 遊夜(aa0452)はその背中をぽんぽんと叩いて落ち着かせる。
「食べても良いとなると……やらない訳にはいかないよな」
 不敵な笑みを浮かべる遊夜のその言葉を肯定と受け取り、ユフォアリーヤは目をキラキラと輝かせていた。
「成程どこの部位とも分からぬ骨と肉。現実では有り得ない形状のそれは、確かにマンガ肉を名乗って良い代物だろう」
 鶏冠井 玉子(aa0798)はマンガ肉を前に冷静に分析をしていた。
「だがしかし、ただ一点惜しむべきは、端から肉そのものの姿を纏い出現したところだ。例えばこれがマンモスや恐竜型の巨大従魔として姿を表し、それを倒した結果……この肉が手に入ったとしたら、その価値は二倍、いや五倍以上に膨れ上がっていたハズ。惜しい、ただただ惜しい!」
 玉子は本気で口惜しそうにそう叫ぶ。……どうやら冷静に見えていたのは気のせいだったようだ。
「『適切な処分』の一言で、エコーもやる気になっているようですし、あんな物でも放置すれば被害が出る可能性もありますし。襲われて? 居る人も早く助けないといけませんね」
 真次の目の前にいるのはマンガ肉とそれを抱えてるのか潰されてるのかわからない通りすがりのリンカーの姿。
「幾ら空腹とは言え、せめて焼いて食べろ……」
「恭也……突っ込む所が間違っているよ」
 それに対し突っ込みを入れる恭也に伊邪那美は呆れ顔だ。
「それはそうと、紛い物とは言えマンガ肉ですし、スマホで何枚か撮影もしておきましょう」
「マンガ肉の前でみんなで記念写真を撮りたいなあ。僕、シャッターを押してくれそうな人に声を掛けますよ」
「とりあえず、証拠写真撮っておくか。土産話のネタに最適だろう、切った後だとマンガ肉の神々しい姿が損なわれるやもしれんしな。……腹ペコさんが食らいついたままだが」
「っておい、気付いてるなら早く助けろよ?!」
 真次や夜刀神 シン(aa0322hero001)、遊夜が集合写真撮影会を始めれば、流石にマンガ肉を押さえ込んでいるリンカーから突込みが入った。なんだかんだ言ってもきついのだろう。何しろ相手は80キロの肉に宿った従魔なのだから。
「……まだ?」
「いてぇっ、悪かったって……そんじゃ行きますか!」
 ユフォアリーヤに首筋を甘噛みされ、撮影を終えたリンカー達は準備を開始した。
「私は周辺の安全確保に動きます」
 撮影を終えた真次はそう宣言すると野次馬達への対応に向かう。
 それと同時にマンガ肉の処理のための準備も別働隊が進め始めていた。
 リンカーの様子からするとまだ押さえ込むのに余裕はありそうだから、準備を優先しても問題はない。まったくない。断じてない。少なくともリンカー達はそう判断した。
「今からあのマンガ肉倒すんだけど~終わったあとで焼肉パーティーしたいから協力して~?」
「食材の一部提供を約束する代わりに、調理場所および食事をするスペースをお借りしたい」
「えーっと、アレ食べるんですか?」
「お肉……食べたいデス。お腹スイタノ…。オカタヅケちゃんトしマス。おねがいシマス」
 千颯と玉子の提案に戸惑う料理人。その裾を掴んだシルミルテが涙目で訴えかける。
「多めの肉がただで手に入るしここで協力するとただで宣伝も出来ると思わない~テレビとかも来そうだし~」
 千颯の言葉に最初は若干抵抗を示していた料理人だが、リンカー達の活動はテレビで流れることも珍しくはない。もし、そのときに店が映ればそれは宣伝効果が期待できるだろう。そんな打算と計算の結果……。
「そうですね。リンカーの皆さんの頼みを善良な一般市民としてはお断りできませんね!」
「ありガトーございマス!」
 承諾した料理人の打算や計算を罪悪感に変える魔女シルミルテの笑顔がそこにはあった。

●マンガ肉調理中?
「あんな見た目でも、危険な従魔です。それ以上、近付かない様に」
「あんなんですが一応従魔です。安全のため離れてください。只今H.O.P.E.のエージェントが従魔を討伐しております。危ないですから離れてください」
 真次や樹は従魔の動きから判断して、安全と思えるラインを設定して、そこから先に一般人が入らないように注意を促していた。
「こっから先に入って来たらこの後の焼肉パーティ参加資格無しね~危ないからきちゃ駄目だぜ~俺ちゃんとの約束なー」
 千颯は見世物か何かと勘違いした一般人が近付かないように牽制……もとい、注意喚起をする。
「マンガ肉じゃ! どうするのじゃ」
「一気に接近戦に持込むぜ。体当たりは脅威だが、それはスピードがついてこそ、接近戦で抑え込めばいい。それに、周りの群集や店に突っ込まれてもかなわんからな」
 紅花の問いにカトレヤはそう解説した。被害を抑えながら戦うのはリンカーとしての基本でもある。何しろ事件が起こればそれがテレビで放送されるご時勢だ。下手なことをすれば悪評が立つだけでなく、状況によっては指名手配される危険すらある。
「冗談の範疇で済む間に決着をつける」
「仕留め、捌き、調理することに一切の躊躇無きことをまずは宣言しよう」
 一真の言葉に玉子も頷く。今はこんな姿であっても時間が立てば周囲のライヴスを吸収し、別の異形へと変化しかねない。それこそ、玉子が期待したような姿に変化しないとも限らないのだ。
「……さて、やってやるぜ!! 行くぜ、ルゥ!! 飯の確保だ!」
 リンクすると同時に聖の思考が『おにく』一色に染まる。これほどまでに英雄の思考に能力者が犯されることは普通はない。しかし、おにくを前にしてマテというのは生命への冒涜であるッ!
「おい、あの肉に喰らいつくリンカー、どうするのじゃ」
「どうもしねぇよ。マンガ肉を抑え込んでくれてるんじゃないか。それに、俺はリンカーの傷は治してやれるけど、店の被害は直せねぇぜ」
 紅花の問いかけにカトレヤは淡々と答える。つまりは気にせずに攻撃を仕掛けるということだ。
「そういえば、この前TVで長い白い帽子を被ったおじさんが肉は叩くと柔らかくなっていいと言っていたのじゃ」
「その知識正しいぜ。なら、殴る」
 紅花の知識を肯定し、カトレヤは拳を握る。
「ま、奇麗なままの方が食欲も増すってものか」
「……食べれる量は、多い方が良い」
 切り刻んでしまえばそれだけ汚れる部位も増える。遊夜の意図を理解し、ユフォアリーヤも頷いた。
「ぼっこぼこのギッタギタのメッタメタにしてやんぜ!」
 剛田 永寿(aa0322)もやる気満々だ。そして、リンカー達は一斉にマンガ肉へと向かった。
 一気に間合いを詰め、全員で下ごしらえ……もとい、調理……ではなく殴りつける。永寿の拳がリンカーまで殴っているような気もするが、わざとではない。尤も遠慮もしてはいないが。
「只管殴る!」
 リンクした千颯は宣言通りに殴る!
「肉を食べるまで!」
 ジャブの連打。
「俺ちゃんは殴るのを!」
 強烈なフック。
「やめない!」
 そして、マンガ肉を空中へと浮かび上がらせるほど痛烈なアッパー。
 それら全てがピンポイントでマンガ肉に打ち込まれていた。
 打撃する箇所を限定することで食べられるところを多く残そうとする食い意地の成せる高等技術。足止めをしていたリンカーまで一緒に空中に殴り飛ばされている気もするが、完全に無視!
 彼もまたリンカーであるのならば従魔を倒すための犠牲になる覚悟くらいはきっとあるはずだッ!
 だが、空中に投げ出されたことで踏ん張りが利かなくなったのだろう。マンガ肉は自由を取り戻し空中で方向を変えるとリンカーをその背に乗せた形で体当たりを仕掛けてきた。
「こんな奴相手に死んだり大怪我をしたら末代までの恥だ!」
「確かにお肉潰されて怪我をしましたって、報告したら大笑いされるね」
「その図体では急な方向転換は出来んだろ。なら発動後に隙が生まれるスキルも使用可能だ」
「言ってる事は正しいけど、相手があれだと恰好付かないね」
「……黙っていろ」
 必死に体当たりを避け、カウンターを狙う恭也は先ほどからちゃちゃを入れる伊邪那美にそう言うと、オーガドライブを叩き込む。
「正直邪魔だ……!! 斬られたくなかったら動くんじゃねぇぞ!! 削ぎ落としてやる!!」
 聖はそう宣言すると大剣を地面に突き立て、カウンターを狙う。
「こいつで沈みやがれ……! 我流……轟刃必断ッ!!」
 衝撃を受け止めて殺した瞬間に地面から抜き放った獲物をそのまま斜めに振るえば、マンガ肉の背に乗っていたリンカー部分の肉がそぎ落とされた。
 だが、それでもまだマンガ肉は動き続けていた。その動きは若干ふらふらと頼りないものへと変わっていることからすると、かなり弱っているのだろう。……見た目はほとんど変化してないが。
 最後の力を振り絞るように飛来するマンガ肉……それを一真は全力の一撃で一刀両断した。

●肉の調理
「マンガ肉、Getだぜ!」
「マンガ肉、Getじゃ!」
 カトレヤと紅花はマンガ肉だった加工肉を持ち上げると高らかに宣言する。
 周囲に響くのは歓声。それは従魔の恐怖から開放されたからではなく、肉を得たことに対するものであるのは疑いようもない。
「……がう♪」
 ユフォアリーヤは上機嫌で切り落とされた部位をキャッチしていた。地面につかなければ、そこはセーフである。
「さぁ、さっさと処置して肉パーリィと行こうぜ!」
 遊夜はそういうと、その肉の塊をトリミング設備のある店へと運んだ。
「洗浄ぐらいじゃ、駄目だろう。この戦闘もそうだが、それ以前に何処に居たかもわからんしな。トリミングする。食あたりが怖いので大きめにカットしよう」
 カトレヤはそう言うと肉を切り分けてもらい、それぞれ別の更に移す。
 外側も勿体無いので捨てたりはしない。これはこれで使い道はあるのだ。
「こちらとしては食う分があれば良い、土産に持ち帰れるなら尚良しだ」
 遊夜はペットへのお土産用に使う気満々だ。
 もちろん、洗浄などの処置を行ってもらうことは忘れない。
「……」
「…食うなよ?」
「……ん」
 じっと肉が焼かれていくのを見守るユフォアリーヤに遊夜は一応釘を刺す。
 好奇心は猫を殺すと言うが、ユフォアリーヤはむしろ生き生きと肉を眺め続けていた。

●やきにくぱーてぃッ!
「最初に肉を文字通り食い止めた方に、最初のお肉を食べて貰おうかと思います」
「お? いいのか?」
 真次の提案にマンガ肉リンカーの表情が明るくなる。
「勿論、一刻も早く食べたいと言う方まで、止めるつもりはありませんよ」
 真次がそう言いながら周りを見渡すが、割り込もうという者は名乗りでない。むしろ、とりあえず食わせてやるからさっさと食え。と言う雰囲気の原の音が盛大に鳴り響いてたりするが、それは食べていいという意思表示として処理される。
「じゃあ、遠慮なく……」
 そして、彼は食べた。嘗てはマンガ肉だったものを。
 口の中に広がる肉の味に今までの苦労が吹き飛ぶような快楽を得る。
 それは空腹と言うスパイスだけが出せる最高級の味であった。
「人が食べるのには問題だろうが洗えばペット用には出来るだろう。家にいる番犬達用に貰っても良いか?」
「ぇ? 俺もしかして外れ食わされてんの?」
 その肉の山を指差し尋ねる恭也を見て、リンカーは漸く何かを悟ったらしい。まあ、そのまま食べ続けたので本人も肉さえ食えればどうでもいいのだろう。……そうでもなければ肉の形をしているとはいえ、従魔に喰らいつくなんて、普通はしない。
「こっちは食い意地張った連れが居るんでね……! 食える量にはシビアだぜ……!!」
「……おにく、食べる……!」
 聖がそう断言するようにルゥはもはや我慢も限界といった様子だった。
 そのまま雪崩れるように焼肉パーティが開始される。
「労働の後の食事は格別だぜ! 俺ちゃんビールが飲みたいな~。あ、怪我した人居たら言ってね~俺ちゃん回復させるよ~」
 ビールの注文と同じ感覚で治療をしながら千颯は肉を頬張り、ビールで流し込む。
「俺はザルだ。強い酒が好きだ。いくらでも飲むぜ!」
 永寿もそれに続いた。酒代は宣伝費代わりということでロハである。ただ飯とただ酒が昼間から楽しめるのはこれ以上ない贅沢かもしれない。
「皆さんに飲み物を作りますね。美味しい料理には美味しいお酒が必要でしょ?」
 シンは未成年にはソフトドリンクを希望者にはカクテルをカウンターの中で作り続けていた。そうしながらもちゃっかり肉は持ち込んでいる。肉の味を確かめながら最適と思われる飲み物を提供するのはバーテンダーだった経験を活かせば難しいことではない。
「マンガ肉の最も美味い食べ方はシンプルに塩胡椒のみ、と凡百の料理人なら考えるだろう。だが超一流ともなれば、ヴェリー・ウェルダンに焼いたそれにオニオンベースのソースを添える。これが正解だ」
 玉子は自らの持論に基づいた調理法で料理した肉を喰らう。それは自ら断言したように正解であると思えたが……他のリンカー達の様子を見る限りでは正解は人の数だけあるのだろう。
「お肉、美味しい」
「恐らくはもう食べられないでしょうから、よく味わうんですよ」
 幸せそうにお肉を頬張るエコーの隣で真次は自分も肉の味をよ~く味わう。喰らうのは肉ばかり。
「ひたすら喰う!!! 腹いっぱい肉が喰える機会なんて滅多にねえからな」
 永寿は酒も飲みながら肉も喰らっていた。腹一杯になったかどうかなんてことは考えない。それは考えた時点で負けだ。なんに対する勝敗かはわからないが。
「気にせず食べられる機会に思いっきり食べることにする! いや、と言うか……遠慮してたら食えねぇ!!」
 聖も負けじと肉を取り皿に移し、がっつく。隣ではルゥが落ち着いた様子で……だが、それ以上の速度で肉を処理し続けていた。
「ヒジリーおかわり、早く」
「……戦闘よりも食う方が本気じゃねぇか……!?」
 ルゥはそう言うと聖の持っていた皿ごとお肉を奪い取る。いつの間に取られたのかもわからない早業に恐怖すら感じながらも聖は次の肉へと手を伸ばした。
 一真もミアキスと共に一心不乱に肉を食べている。リンカー達の食事事情はどこも似たようなものなのだろうか。
「ほれ、ゆっくり食いな」
「……ん!」
 遊夜に手渡された肉をユフォアリーヤは言われたとおりにゆっくり食べる。ゆっくりでもちゃんと山盛りに積まれているので足りなくなる心配はない。
「肉はまだ有るようだし落ち着いて食べろ……食べかすを飛ばすな」
「昔と違って今は色々な味が楽しめて最高だね~」
「口の周りが汚れている。はぁ……拭いてやるからじっとしていろ」
「ん……」
 恭也は保護者のように伊邪那美の世話を焼く。色々なたれをつけてはひたすら肉を頬張るその姿はとても神とは思えない。
「その姿で料理をしろとは言わないが、食べ過ぎではないのか? 太るぞ」
「恭也……」
 思わず口にしてしまったその一言で恭也は伊邪那美に思いっきり踏まれた。
「俺ちゃんお肉食べたいから白虎ちゃんお願い~」
「……本当にお前は欲望のままに……まぁいい」
 食べることを優先する千颯に呆れながらも白虎丸は一般人の誘導の手伝いに回る。
「こちらの肉は先ほどまで従魔だったものです。食後の責任は一切取らないと明言しておきます」
「焼肉ぱーてぃーの参加はこちらでござるよ」
 真次が注意事項を説明し、白虎丸が一般人を案内する。
「肉は沢山あるが……あるでござるが、無くなり次第終了でござる」
「あー序でに白虎ちゃんモフりたい人は好きにモフモフしていいよ~」
「な!? 千颯お前は何を言っている!」
 半ば無気力に案内していた白虎丸は千颯のその言葉の意味を理解するのがほんの少し遅れ、一般人や一部のリンカー達からもふられた。
 そして、焼肉パーティはお土産用の肉以外全てが消えるまで続き……。
「弱いのに飲みまくるの、やめてくれないかなあ」
 後片付けをしたシンは飲み潰れた永寿を背負って店を出る。
 騒がしかった喧騒は今は落ち着きを取り戻したが、それは活気を失ったともいえた。
「折角なので『マンガ肉が出た町』として、この辺りの焼き肉店などで、マンガ肉もどき料理とか作って、売りにしてみては?」
 元より活気を取り戻すためなら従魔をも利用した場所である。
 真次が提案したその案は後日無事に採用された。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123

重体一覧

参加者

  • 魔王の救い手
    填島 真次aa0047
    人間|32才|男性|命中
  • 肉食系女子
    エコーaa0047hero001
    英雄|8才|女性|ジャ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • うーまーいーぞー!!
    天原 一真aa0188
    人間|17才|男性|生命
  • エージェント
    ミアキス エヴォルツィオンaa0188hero001
    英雄|15才|女性|ブレ
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • エンプレス・ルージュ
    カトレヤ シェーンaa0218
    機械|27才|女性|生命
  • 暁光の鷹
    王 紅花aa0218hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • エージェント
    剛田 永寿aa0322
    人間|47才|男性|攻撃
  • エージェント
    夜刀神 シンaa0322hero001
    英雄|27才|男性|ブレ
  • 深淵を見る者
    佐倉 樹aa0340
    人間|19才|女性|命中
  • 深淵を識る者
    シルミルテaa0340hero001
    英雄|9才|?|ソフィ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 炎の料理人
    鶏冠井 玉子aa0798
    人間|20才|女性|攻撃



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