本部

【卓戯】連動シナリオ

【卓戯】漆黒に蝕まれた館、壊せ魔法陣

時鳥

形態
イベント
難易度
やや難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
21人 / 1~25人
英雄
21人 / 0~25人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2016/10/21 19:15

掲示板

オープニング

●ガーディアン、デュース
 真っ暗な目の前の指先さえも見えぬ闇の中。完全に人ではない、得体の知れない姿をした者が蠢いていた。
 デュース、それが魔の者の名。
 人ではないデュースにとって、この暗闇は意味を成さない。
 ここは館の中。本来であれば扉を潜れば洋館特有の広い玄関ホールがあるはずだが、デュースが通る度に姿を変えていく。
 壁は狭まり長い長い廊下に変化した。幅は人5人がぎりぎり並べるほどだが、左右にそれぞれドアが三つ存在する。
 デュースはドアの向こうに興味を示すことなくずるずると耳障りな音をさせながら先へと進んだ。
 廊下の最奥に地下へ降りる階段が姿を現す。
 ゆっくりと階段を下っていったその先は広い広い空間。部屋というには何もなく、ただ奥の方でぼんやりと何かが青白く光り始める。
 直径10m程度だろうか。魔法陣。これを設置する為だけの地下室。
 ヘドロのようなぬめった体を引きずってそのぼんやりと光を発し始めた魔法陣の上へと這い上がる。
 与えられた役目を果たすために大きく広がる魔法陣の上に自らの体を横たえた。
 ごぽごぽと不快な音を立て魔法陣をヘドロのような何かが覆い隠していく。
 魔法陣の光は飲み込まれ、光の消えた闇の中大きな一つの眼光が瞬いた。
 デュースの目には床から生える無数の黒い手が海中の海藻のようにその姿を躍らせている様と、自分を守るように立つ、大剣を構えた複数の甲冑の姿が映っていた。
 ガシャリ、ガシャリ、と甲冑が音を立てて暗闇の中を移動する。まるで敵を探すかのように。その中の数体が階段を上っていく。
 その時、デュースは気が付かなかった。漆黒の闇の中、他の者にも唯一見える赤い血の足跡には。

●配られる資料
「デュース、ね。前の借りもあるし、今度はわたし達もちゃんとがんばらないと!」
 オペレーターから一通りの説明を受け、配られた資料に目を通しながらタオ・レーレ(az0020)は意気込んだ。一度「VR-TTRPGシステム」で侵入する依頼を受けたものの敵デュースに操られ、他のエージェントに襲い掛かってしまったのだ。
「犯した失態を返上する為ならば、この俺の偉大なる力を貸すのは当然だ」
 主にゼファー・ローデン(az0020hero001)のせいではあったが、そのことを気にしてか珍しく彼はやる気を見せている。
「パスワードの構築用に作られた魔法陣を破壊するのが目的ね」
「元になっているシナリオ名は”漆黒に蝕まれた館”。嵐に見舞われ、墓地の傍に立つ洋館に避難したプレイヤー達が悪夢のような幻影に精神をすり減らしながら中を探索していく、か」
 二人で改めて依頼内容を確認していく。多くのエージェントともに4つあるパスワードを構築する為に作られた魔法陣の一つを破壊するのだ。
 シナリオに記された館の地図も資料に印刷されている。大きな玄関ホール、左右に三つの部屋があり、一番奥はパーティールームと、二階と地下にそれぞれ階段が伸びている。
 玄関からみて左の一番手前はキッチンで、隣がリビング。キッチンとリビングはホールに出て移動しなくてもいいように室内の中にある一枚のドアで繋がっている。一番奥のドアの先は使用人室。
 右手の一番手前は物置、その隣が浴室。一番奥のドアの先はトイレ。
「内容は同じじゃないかもだけど、シナリオ特有のゾーンルールがある可能性が高い、んだよね」
「あの愚神がいるからな。前と同じように歪めているかもってことだろ」
 資料の敵の欄を見つめながらゼファーが眉間に皺を寄せる。

 ・デュース
 ケントゥリオ級愚神と思われる。
 得体の知れないクリーチャー。怪しく光る眼光をひとつ備える。資料に前回エージェントの一人が撮った写真を添付。(靄かかったようなモザイクがかかったような姿が映し出されている)
 物理攻撃のみならず魔法攻撃にも一定の耐性を持ち、耐久力に優れる。ダメージを受けても痛覚が無い為、回避行動や防御態勢は取らず攻撃を繰り出してくることが多い。
 ヘドロを対象にまとわりつかせて発火させる《自然発火》や、対象の脳内に直接声を響かせ、時折BS翻弄を付与する《呪詛の呻き声》といった攻撃を駆使する。
 愚神であるものの知能が他のガーディアンより低く、咄嗟の判断は人間に及ばないものと思われる。人間の言葉を解さない。

 デュースを目視すると特殊な発狂状態となる。この発狂状態は【卓戯】世界から抜け出れば影響がなくなるが、その姿を目撃すると「目がひとつ」という情報以外を忘れてしまう。しかし、眼光を見ない行動をしても発狂状態になる報告が上がっている。
 諸所得られた情報を精査の上、推測として眼光を見ることで発狂状態となるが、デュースの体の何割かを目視すると体が動かなくなり視線をデュースが合わせてくるものと考えられる。
 発狂中の行動は本来しないであろう行動であること以外特に共通点は見られない。
 一定の時間で発狂状態は収まるものの何回も発狂状態に陥ると【卓戯】世界から抜け出さない限り元に戻らなくなる。発狂状態は発症回数が増える度、解けにくくなる。

 鏡や写真など一度何かを経由させると発狂はしない。映る姿は霧かモザイクか何かかかったように映る。(添付写真参照)
 全長は変化するため、最大の大きさなどは不明。
 だが、ダメージが蓄積されると全長は縮んでいく。

 先の依頼で直接デュースと対峙したエージェント達が得た情報、また数々のミッション達成により間接的にH.O.P.Eが得ることが出来た情報が纏められていた。発狂状態を引き起こす厄介な敵ではあるが、対策も立てられそうだ。

●いざ、漆黒に蝕まれた館へ
 強い風が木々を揺らし暗雲が空を埋め尽くす。敷き詰められた墓石とその中に佇む古びた洋館。
 「VR-TTRPGシステム」でシナリオの中に入ったエージェント達は墓地と洋館の間に姿を現した。
 ここがスタート地点。
「よし!」
 と、タオが意気込んだ時、墓石の下の土がボコッ、と膨れ上がった。
 ドロリ、と溶けた皮膚、白い骨が垣間見える腕が虚空へと突き出る。
 腐った悪臭が辺りに満ちた。
 墓地から這い出るゾンビの群れ。
 天候は荒れ始め、まもなく嵐が訪れるだろうことを感じさせた。木々を薙ぎ倒す程の雨風も襲ってくるだろう。
 館の扉は侵入を拒むように固く閉ざされ鍵が掛かっている。
 ガラス張りの窓の先はただただ漆黒の闇が鎮座し、中の様子を見て取ることは出来ない。
 さあ、時間はない。
 ゲーム、スタートだ。

解説

●目的
パスワードが構築される前に魔法陣を破壊する

※以下PL情報
●敵
・デュース
ケントゥリオ級愚神
パスワード構築陣を上から自身の体を被せ守っている。

・ゴーストナイト(甲冑の騎士)×?
デクリオ級従魔
廊下に数体、地下室に十数体。
洋風の甲冑姿のゴーストナイト。暗闇の中を徘徊しており、一定の範囲にエージェントが踏み込めば襲い掛かってくる。戦闘能力は高いレベルでまとまっており、特に物理魔法両面において防御力の高い欠点の無さが特徴。動くとガチャガチャと音がする。

・ブラックハンド×?
ミーレス級従魔
廊下、地下室共に姿を現す。
床や壁から生えてくる真っ黒な手。エージェントを掴み拘束しようとする。

・ゾンビ×?
ミーレス級従魔
墓地から続々と這い上がってくる。装備はなく徒党を組み館を囲むように迫ってくる。数は圧巻だが個々は強くない。腐った腕で殴りつけてきたり、抱き着いて拘束しようとしてくる。館の中に入れば武器を手にする場合もある。

●ゾーンルール
館内部は見た目よりもずっと広い。
ホールは長い廊下に変えられているが左右三つの部屋は地図の通りとなっている。二階は存在せず、地下室は25人が戦っても問題ない広さ。
真っ暗で何も見えない暗闇に支配されており、時折悪夢の幻影がエージェント達を襲う。

・悪夢の幻影
暗闇の中にエージェント達はトラウマや苦手なものの幻を見る。BS狼狽がかかることがあるが、乗り越えられれば3スクエアの視界を得られる。
ライトアイ使用時プラス3スクエア先まで視界を得ることが出来る。

・血の足跡
転々と床に浮かぶ血の足跡のNPC。その真意は不明。触れても何も起こらない。
通常時、3スクエア以内であれば血の足跡だけは見える。ライトアイ使用時、幻影克服時はそれぞれでプラス2スクエア先まで目視可能になる。
ただしその床を誰かが踏んでいた場合は見えない。
以前のシナリオでエージェントが解放したために、このシナリオに現れた。

リプレイ


 墓地と洋館の間。送り込まれたエージェント達、40人強がこのおどろおどろしい世界へと姿を現した。
「何でこんな依頼受けるのぉ!?」
「後で全部忘れるんです。我慢しなさい」
 匂坂 紙姫(aa3593hero001)が悲鳴に近い声を上げる。彼女が振り返る前にキース=ロロッカ(aa3593)は一言を告げると共鳴をした。共鳴をしている間の記憶を紙姫は覚えていないからだ。わざわざ怖い思いをさせる必要ない。
「……有り得ると思う、Alice?」
「どうかなアリス。そこまでさせてみない事には、ね」
 Alice(aa1651hero001)とアリス(aa1651)、二人のアリスが意味深に顔を合わせて言葉を交わす。何のことだかは当人同士にしか分からない。
(直視すれば発狂の危険が高くなります)
「では最初から視界を制限します」
 共鳴をしたラウラ スミス(aa1148hero001)のアドバイスに頷く六鬼 硲(aa1148)。ライヴスゴーグルの視界が10m以内に制限される弱点を逆手に取り、ライヴスの動きだけを見るようにしてデュースの発狂から逃れようというのだ。
 他にもスマフォを応用したVRゴーグルの持ち込みなども計画されたがすぐに取り寄せられるものではなく、パスワード構築完了まで差し迫っていること、簡易では戦闘に耐えられないであろうことが考慮され実行に移すことは叶わなかった。
「出たわねゾンビ共! ニック、変身(共鳴)するわよ!」
「このポーズに慣れてきた自分に戦慄するぜ……」
 一方、ゾンビの方に向かいやる気満々で宣言するのは大宮 朝霞(aa0476)だ。隣のニクノイーサ(aa0476hero001)は慣れてきている自分に対し呟きを零す。
「変身! ミラクル☆トランスフォーム!!」
 ビシィッ、と決めポーズを付け、朝霞は共鳴状態『聖霊紫帝闘士ウラワンダー』に変身した。マントが風で翻る。朝霞達も事前に
「直接みるのはヤバイらしいな」
「ライヴスゴーグル越しなら平気かな?」
 と資料を見ながら相談し合いライヴスゴーグルを装備していた。もしライヴスゴーグルの効果がなかった場合も考慮し鏡も持ってきていて準備は万端だ。
「偽りのない真実を述べよ、前へは進めるか?」
「ユエリャンも、皆もいるから、大丈夫です!」
 紫 征四郎(aa0076)にユエリャン・李(aa0076hero002)が問いかける。征四郎もあまり怖いのは得意ではない。だが、英雄のユエリャンも友人の木霊・C・リュカ(aa0068)、朝霞、会津 灯影(aa0273)とたくさんの心強い顔を見渡してやる気を込め大きく頷いた。
「ついに来たよ。お化け屋敷~」
「時間との勝負だ。臆している暇はないぞ」
 館を見上げながら北条 ゆら(aa0651)が零した言葉にシド (aa0651hero001)が気合を入れるようなことをいう。
「とりあえず、すべてシドにお任せ」
「おい」
 が、すぐに丸投げされて思わずシドは短い突っ込みを入れた。
「さて、行きますか! 無形の落とし子退治!!」
「……それ、違うと思うわよ?」
 と、やる気満々なのは世良 杏奈(aa3447)。少しずれた発言内容にルナ(aa3447hero001)がこちらも突っ込みを入れる。中々いいコンビが揃っているようだ。
「失礼しますね……よいしょ」
 アイリス(aa0124hero001)と共鳴したイリス・レイバルド(aa0124)を一ノ瀬 春翔(aa3715)と共鳴したエディス・ホワイトクイーン(aa3715hero002)が担ぎ上げる。
 イリスは共鳴時に黄金のオーラを発している。更に自らの黄金の羽と同化させ旗と見なす特殊運用を行っている救国の聖旗「ジャンヌ」と、改造済みの無形の影刃、これら全てが光を発するものだ。その代りあまり移動速度は速くない。
 その為、エディスに担いでもらっている。
「ボクを見失う事はないんじゃないかな?」
(まぁ、常時光っているのだしね)
「隠密には向かないけどね」
 と、イリスとアイリスは互いに思考を交わす。だが特殊なルールに則った闇。ライトアイですら見通せない暗闇の中、どれ程の効果を発揮するだろうか。
 それぞれが共鳴や準備を終え、館へと駆け出す。ゾンビの動きは鈍く、すぐに追いついてくることはないだろう。
 扉を無理やりこじ開けると漆黒の闇が身に纏わりついてきた。
(うぅ……また真っ暗闇、怖そう……)
「大丈夫! 敵はゾンビとかだし物理で何とかなる!」
 藤咲 仁菜(aa3237)が目の前の闇に及び腰になる。だが相方のリオン クロフォード(aa3237hero001)は逆にあっけらかんとしていた。
 詩乃(aa2951hero001)と共鳴した黒金 蛍丸(aa2951)、朝霞の二人がライトアイをその場の全員に掛ける。
(スキルがないと見え辛いのは厳しいですね)
「その為にできる事で味方を助けます」
 ライトアイを受けラウラが硲の中で現状を評する。硲が通信機を確認しながら連絡を取りあい連携できるよう調整していた。
 闇の中、浮かび上がった景色はルールブックにあった玄関ホールではなく、人が5人ぎりぎり通れる幅の廊下だった。しかし、6メートル先からの闇は晴れない。壁や床からは無数の黒い手が海藻のように突き出、泳いでいる。
 黒い手――ブラックハンドの奥、晴れぬ闇の際に扉が二つ見えた。
 そしてもう一つ、赤い足跡が闇の向こうに浮かび上がる。
「何故ここに」
 七水 憂(aa0041hero001)と共鳴した化野 燈花(aa0041)が僅かに驚きの混じった呟きを零した。
 その声音に足跡は見知った顔を見つけたかの如く先頭にいる燈花と凛道(aa0068hero002)の元に近づいてくる。
「デュースの居場所、教えてくださいませんか? ……なんちゃって」
 ふざけて口にしたつもりだった。しかし、燈花の言葉に足跡はくるり、と向きを変え、先導するように奥へと移動を始めた。燈花、凛道、そして凛道の後ろにいるユエリャンが顔を合わせる。凛道の後ろにユエリャンがいるのは、はぐれない様長い紐で双方を繋いでいるからだ。
 燈花、凛道、ユエリャンは一度前の依頼で足跡と遭遇している。そして、その足跡を解放した当人が凛道だった。
「教えてくれていると思います。行きましょう」
 凛道が確信したように言った。


 蠢くブラックハンドの注意を哭涼(aa3892hero001)と共鳴したエリヤ・ソーン(aa3892)が守るべき誓い使い、引く。活性化したライヴスの流れは視覚のない敵でも分かるだろう。黒い腕を伸ばしエリヤを掴もうとしてくる。
(魔法陣やデュースと戦う方々を通す事を最優先に動きましょう)
「わかったよ哭涼。敵は仲間に近づけさせない」
 哭涼が内からエリヤにアドバイスを送る。頷き、ライヴス通信機で後方に控える仲間と通信をしながらアガトラムを構えた。
 少なくともパスワード構築まで敵は時間を稼ぎたいに違いない。その場合、ボスがいるのは最奥と思って間違いはないだろう。
 こちらの戦力にも限りがある以上、全員でいきなり戦うわけにはいかない。
 事前にデュースまで力を温存するグループ、デュースの周りにいるであろう配下を駆除するグループ、そこまでの進路を確保するグループ、と3つの部隊に別れる作戦が立てられていた。
 エリヤとミルノ(aa4608hero001)と共鳴している藤岡 桜(aa4608)がブラックハンドを狙撃し道を切り開いていく。
 ガチャッガチャッ
 廊下の前方から金属のぶつかり合う音がする。ゴーストナイトが近づいてきているようだった。
(音を鳴らして近づく敵が強い種類のようですね。来たら報せます)
「その敵の攻撃も私に誘引し防げば仲間達の戦いも少しは良くなるでしょうか?」
 まだ遠く、微かに聞こえる音に耳を澄ませながらエリヤは哭涼と内心で会話をする。
 だが、エージェント達を襲うのは従魔だけではなかった。このシナリオの特殊な闇。ライトアイでも払いきれず、前方を暗く覆う黒。その中から生み出されし悪夢が獲物を捕らえた。
 キースの目の前に過去の記憶が呼び起こされる。
 陰湿ないじめ。
 それを受ける自分。
 悪夢の幻影が精神を蝕む。
 だがキースは目の前に映る過去を振り払うかのように大切なリンカーとの何気ない日々を心の中に思い浮かべた。
「ボクは今を……英雄や、友と過ごすんです。こんな幻で止まっていられないんです!」
 強く、力を込めて、言い放つ。
 と、同時に目の前に元の景色が戻ってくる。他の者には分からない一瞬の出来事。しかし、闇がキースから少し遠のいた。視界が更に奥まで開けている。
 ほぼ同時に桜にも悪夢は牙を剥いていた。
 家族がおらず1人で過ごしてきた、その時に桜は戻っていた。
「……過去なんて……関係ないし……気にしない……今……それが……あればいい……」
 桜が呟く。
 今はもう、1人ではないから。と。
 目を開けると元の暗い廊下。いや、視界は少し先まで見通せる。
 桜はアンチマテリアルライフルをぎゅっ、と持ち直した。ブラックハンドが目の前に迫っていた。
 引き金を引いて打ち散らす。
 そう、今しなければならないのは、この初めての作戦で味方の足を引っ張らないように頑張ること。
「…………邪魔は……させない……から……」
 無表情に呟く。だがその声音には強い意気込みが感じられた。
 廊下に1体。キースと桜は他のエージェント達より先にゴーストナイトを捉える。
 キースが他の進路確保グループに指示をしながら、エリヤの肩越しにLSR-M110を放つ。痛みを感じないゴーストナイトは射撃に怯むことはなくエリヤへと襲い掛かった。自身の体を盾として攻撃を受けつつ、他の仲間が横を抜け奥へと駆け出すのを見送るエリヤ。
 エリヤのことを気にかけつつ、蛍丸がエリヤに手を伸ばそうとしているゴーストハンドを拳で排除していく。
 百花堂 蘭丸(aa4475hero001)と共鳴している咲魔 聡一(aa4475)がゴーストナイトの横に回り味方に当たらないようにファンタジーソードを多数召喚し、放った。武器と鎧がぶつかり合う高音が響き渡る。壁に打ち当たるも何事もなかったかのようにゴーストナイトは起き上がった。
 イリスの姿が少しばかり闇の中で輝いてたかと思うとすぐに黒く飲み込まれる。やはりあまり遠くまで闇は光源を捉えることを許してはくれないようだ。
 ゴーストナイトと数名が向き合う。しかしこの一体だけではないだろうことは容易に想像がつく。キースが蛍丸に先に行くように促した。残っている面子で十分やれる、と判断したのだろう。
 キースとエリヤ、聡一を残し、エージェント達は廊下の先を目指して足跡を追いかけ全力で走っていく。
 といっても狭い通路、時折足をブラックハンドが掴んでくる。全速力、という程のスピードは出せない。
 サイサール(aa2162hero001)と共鳴している繰耶 一(aa2162)が鬱陶しいブラックハンドを蹴り散らす。
「土に還るべきやつはおとなしく還っときな」
 ふんっ、と鼻を鳴らして言い放ち、どんどん先に進む。
 だが、すぐにまた前方からガチャッ、という特有の音が聞こえた。
 次に動いたのはマイヤ サーア(aa1445hero001)と共鳴している迫間 央(aa1445)だった。央は味方への目印に英雄経典を展開させ発光させている。シナリオ特有のルールに則っている闇に効力の程は定かではないが、自分が飛び出していったことくらいは伝わっただろう。
「おっと……お前達の相手はこの俺だ」
 目の前に二体のゴーストナイトを認めるとライヴスで分身を作り出し仲間がすり抜けようとしている側のゴーストナイトに同時攻撃を行い狼狽させた。二体の注意が央に向かう。央に支援を頼まれた桜と蛍丸も足を止めた。
 壁の近くからブラックハンドが邪魔をしてくるのを警戒しながら央は武器を持ち変える。
(新しい刀、今回は使えそうね)
「叢雲と龍剣の力を見るにはお誂え向きだ、一気に仕掛ける」
 マイヤの考えが央の中に流れ込む。 天叢雲剣と忍刀「無」の二本を構える央。
 桜は央がゴーストナイトに集中できるよう、彼を掴もうと床から這いだすブラックハンドに弾丸を打ち込んだ。蛍丸は央のアシストを務める。
 三人がゴーストナイトに向き合ってる頃、また悪夢がその毒牙を剥いた。
 青槻 火伏静(aa3532hero001)と共鳴している無明 威月(aa3532)の目の前に死んだ兄が姿を現したのだ。
(……威月……お前も、こっちに来いよ……)
 兄が、そう言って手招きをしている。威月はただその場に立ち尽くす。ふらっと行ってしまいそうになる。だが――
「違ェだろ威月! お前は遺志を継ぐんだろうが!?」
 威月の耳に火伏静の声が届いた。
 そして身に着けていた形見に視線を落とし、思い出す。
 どんな状況でも《諦めない》事を。
 強く胸の内と火伏静に誓ったことを。
「兄様は……本当の兄様は……そんな事言わねぇです!」
 はっきりと強く言い放つ。すると幻影は揺らめいて姿を消した。
 闇が退き視界が一段明るくなる。
 もう、兄の姿はどこにもない。
 闇は次々と標的を変え、恐怖を引きずり出そうとする。
 見殺しにした親友の少女が燈花の目の前に立っていた。
「怨んでいる、でしょうね」
 呟く燈花。しかし、彼女は少女をじっと見つめた。
「……それでも、目を逸らさないと約束したんです」
 強い決意。
 じっと見つめていると少女の幻影はさらさらと砂のように溶けいく。
 現実に戻ってきた燈花の目には闇が遠のいて見えた。
 更に悪夢は畳みかける。
 杏奈の目の前に悪霊らしきものがずらりと並んだ。周りにいたはずの仲間の姿はない。
 驚く杏奈。
 しかし、すぐに空気を大きく吸い込み。
「今はアンタ達に構ってられないのよっ!! どっか行け!!」
 大きな声で一喝する。すると霧のように悪霊の姿は四散した。
 目の前に仲間の背が戻ってくる。先ほどより遠くを見渡せるような気がした。
 一にも魔の手が迫る。唐突に眼前に失ったはずの故郷が現れた。
 光に包まれ消え去ったはずの風景。
 昔ならば茫然自失としていただろう。
 何もできずにこの悪夢に飲み込まれていたかもしれない。
 だが、今は違う。
 忌まわしく歯噛みするもそのまま突っ切る一。すぐに故郷は姿を消した。
 ゆらにも幻影は纏わりつく。しかし、こればかりは相手が悪かったようだ。
 彼女の目の前に現れたのは苦手な、カエル。
 大したことはない、シドが主導を握っている以上、障害でもなくカエルは最初からいなかったかのように姿を消す。
 視界が開けた。

 入口近くでゴーストナイトと戦っていたキース、エリヤ、聡一だったが、リオンが合流し、ゴーストナイトの撃破に成功した。リオンは扉をゾンビが入ってくることを遅らせるため板を閂使い閉めていた為、遅れていたのだ。負った怪我はリオンが回復させる。
 しかし、ドアの向こう側からガタガタと不穏な音がした。窓からゾンビが入ってきたのか。
 キースとエリヤが武器をフリーガーファウストG3へと切り替える。扉から飛び出てきたところを撃つ構えだ。後方に聡一とリオンが並ぶ。
 全撃破よりも敵を抑える事が目的のため、リオンは後方から遠距離攻撃で味方の援護を行うつもりだ。だが、仲間に危険が迫れば前に飛び出すつもりでもいる。またライトアイが切れたらすぐにかけられるよう心の準備も怠らない。
「ここから先は互いの攻撃が被らない様、互いの着弾点に配慮して掃射していきます。大丈夫、安心して。キミならきっと出来ます」
 キースの言葉にエリヤが頷く。と、同時にドアが破壊されわらわらとゾンビが狭い廊下に現れた。交互に波状攻撃を仕掛ける。
 二人が打ち漏らした敵やゴーストハンドにリオンのアンチマテリアルライフルと聡一のカオティックブレイド特有の武器の束が降り注いぐ。
 そこに先行しているグループから通信が入った。階段を見つけた、という報告だ。
 廊下の少し行った先では蛍丸達が二体のゴーストナイトと交戦中。エリヤから通信でゾンビの群れの件を聞いた蛍丸は多勢に無勢、近接戦闘は行わず、あくまで魔法陣破壊までの時間稼ぎをとアドバイスする。頷くエリヤ。
 そのエリヤの腕を壁から生え伸びてきたブラックハンドが拘束する。
「俺が守ってる戦いで、だれもやらせないよ!」
 リオンがすかさずアンチマテリアルライフルでエリヤを掴むブラックハンドを狙撃する。解放されすぐに体制を立て直すエリヤ。
 後方の守っている側からガタガタと音がした。
 ルールブックの部屋は6つあったはずだ。もし外からゾンビが侵入してきてるとしたら奥のドアから挟み撃ちにされる可能性がある。
 蛍丸達と連絡を取りながらキースは徐々に後退し、合流を目指すことを指示した。

 ゴーストナイト2体と対峙していた央と蛍丸。初めての依頼であり自身が誘った手前、桜に負担を掛け過ぎないよう央は意識していた。
 分身を作り出し場を錯乱させ、次いで潜伏を使い気配を消す。
「悪いな……力押しだけで決まる程、俺も甘くはない」
 狼狽するゴーストナイトの首を天叢雲剣で叩き落した。ゴトッ、と鈍い音がする。
 残る一体も蛍丸のLSR-M110の弾丸が脳天を突き破り、物言わぬ鎧へと変わった。
 ガタガタと近くのドアが揺れる。キース達からゾンビの侵入については情報が回ってきていた。
 徐々に銃撃音が廊下の先から聞こえてきている。キース達だろう。合流まではあと少し、と言ったところか。
 蛍丸はドアの方にLSR-M110を構える。
 と、逆の方向の扉からゴーストナイトが一体ドアを裂き襲い掛かってきた。すぐ近くにいるのは桜。鋭い刃が桜に振り下ろされる。
 突き刺さるか、その直前、近くまできていたエリヤがハイカバーリングで桜を庇った。
 魔法陣破壊まで今この場の仲間達を守りぬく。エリヤの瞳に決意が燃えていた。
 その隙をついて央と蛍丸がゴーストナイトに仕掛ける。敵の攻撃はいなし軽やかに避ける央。
 ゾンビにゴーストナイト、ブラックハンドが7人を囲む。倒せない敵では、ない。
「いいですか、ここを死守するのがボク達の役目です!」
 キースが士気を上げるように高らかに言い放った。


 廊下での混戦が繰り広げられている頃。階段を下りている最中、弄ぶかのように悪夢が這い上がってきた。
 凛道の動きが止まる。本人はただただ何も見えなくなり、動いている感覚が無くなってしまったのだ。後ろからユエリャンが凛道を引っ叩く。しかし、次にはユエリャンもその闇に飲み込まれていた。
 突然、凛道の姿が消え、ユエリャンの足元には倒れ臥す沢山の獣、『我が子』達が姿を現す。足を止め呆然とするユエリャン。
「我輩が殺した、踏んで先に行く事はできぬ」
 辛そうに零すユエリャン。
 思い出す。
 思い出したくないことを。
「目を覚ますのです!」
 そのユエリャンの耳に征四郎の声が飛んできた。
 その声は強く、今の現実を揺さぶり起こす。
 視界が開けた。
 元の場所に戻っている。
 征四郎がユエリャンの悪夢を打ち破ったのだ。
 凛道とお互い顔を見合わせるユエリャン。悪夢からは解放されたようだった。
 エディスも幻影を見ていた。姉の。
 しかし、既に受け入れていること。
 むしろ逆に何かが漲る。
 エディスがふふっ、と歪んだ笑いを零すと幻影は姿を消した。
 灯影は夢を見ていた。曖昧な記憶。幼少期に首を絞められ殺されかけたような。
 その時見た、憎悪と悲哀と綯交ぜになっている表情。
 そんな顔は見たくないから――そう、思った。
「俺が握りつぶしてあげよう」
 静寂(aa0273hero002)がその夢に干渉した。英雄だからこそ同じものを見れる。
「おや、灯影君? ――目を閉じて。それは憐れな残響さ。全ては狐のままごとで君は開花を待つ椿。ぼとって落ちる前に害虫は駆除される」
 ぐしゃっ、と何かが潰れるような音がした。目を瞑った灯影には何だか分からない。
「ほら! おはよう灯影君」
「あ……え? お、おはよう」
 静寂の声にハッ、と我に返った灯影は既に元の世界へと戻っていた。暗闇が少し晴れた気がする。
(狐さん的には俺も害虫なんだろーけど)
 ふふっと、静寂は口には出さず思いながら小さく笑った。
 煤原 燃衣(aa2271)の目にも悍ましい幻影が映し出されていた。
 異形の存在に殺される肉親。
 転がる家族の死体。
 忘れたことはない。
 その光景。
「スズッ! ……全員、死人だ。だから仇を取る為、武器を取った……違うか?」
 ネイ=カースド(aa2271hero001)が強く燃衣に呼びかける。
「……は、い……」
 声は、届いた。ネイの一喝に飲み込まれそうになった意識を取り戻す燃衣。
 まるで霧のように幻影は消え去る。
「最高の気分です……デュース……ブチ殺すッ!」
 沸々と沸く憎悪に燃衣が殺意を滾らせた。

 階段を下り切ると風の流れからとても広い所へ出たことは分かる。奥からは何かの呻き声のような低い不協和音と、ガチャガチャとなる金属の擦れ合う音。
「花園では逃がしてしまったからな……ここで追い込むぞ」
(目と声とヘドロには重々警戒を……)
 デュースの気配を一は肌で感じる。サイサールが改めて警告を告げた。
「この前はしてやられたからね……やられたらやり返す主義なんだ」
「……まぁ、とは言っても今回のオーダーはパスワード構築前に魔法陣を破壊、だからね」
「オーダークリアが最優先」
 アリスも前回対峙したデュースの気配を感じ言葉を零す。しかしそれはどちらのアリスの言葉なのか。誰にも分からない。今のアリスはどちらかではなく、どちらでもある。
 その手前で凛道が足跡に攻撃に巻き込まれないよう少し離れていてほしいと伝えていた。
「ここは危ない。下がっておれよ、子供」
 と、ユエリャンも視線を合わせ屈み優しく諭すような口調で続ける。しかし、足跡は何かを訴えるようにぐるぐると回る。力になりたい、と懸命に訴えているようだ。
 広い場所に出て列である必要性もなくなった一が凛道の横に出て初めて足跡を目撃する。闇の中に浮かぶように深紅の色を湛えていた。
「ん……たしか塔とやらで目撃されたやつか」
(報告書のモノですね。塔から解放された彼らの導きに……従ってみましょうか)
 サイサールの言葉に頷く一。
「ねぇ……教えてくださらない? 貴方の指し示す物を……壊してあげるから」
 その横から今度はエディスが足跡に話しかけた。それに応えるかのように足跡が向きを奥へと変え導くかのように動く。
 足跡の後を追い、燈花、凛道、ユエリャン、静寂、ゆら、硲、タオが対デュース班を守るように囲んだ。デュースの周りにいるであろう配下を駆除しいち早く対デュース班をデュースの元へ導く、と決めたグループだ。
 凛道とユエリャンが対デュース班を先導するように足跡を追いかける。硲がライトアイの準備をして後に続いた。まだ彼らには温存しておいてもらわなければならない。
 静寂がライヴスで鷹を作り出す。鷹の視界は作り出した静寂と同じほどだった。闇は完全には晴れない。しかし、上空から鷹を使い状況を確認する。デュースの姿を捉えることはまだできない。
 迷子対策として、サイリウムの蛍光液で地面に矢印を書き進路を残して行く威月。しかしその光にブラックハンドが吸い寄せられたのか威月に腕を伸ばしてくる。それを硲が天雄星林冲で薙ぐ。炎のオーラがブラックハンドを赤く染めた。
 炎のようなオーラが照明代わりになるか、と半ば試していた硲だったが、思ったほどの効果は得られないようだ。
 時折生え進行を妨害しようとしてくるブラックハンドをユエリャンが猫騙で牽制したりし、順調に進む。
 唐突に目の前を行く足跡が分かれた。一つだけは導くように前へ前へと進んでいるが、分かれた足跡はその場を動かない。急に動かない方の足跡が消えた。
(足跡が途切れた? もしかして、敵が踏んでる?)
 憂が燈花に問いかける。すぐにグレートボウを構えた。矢に純度の高いライヴスを込め、放つ。
 ガキッ!
 固いモノに強い圧力で刺さった音が響く。
 燈花の矢がゴーストナイトの一体を捉えた。
 そのまま駆け抜けざまに凛道がゴーストナイトの首を狙ってグリムリーパーを振るう。そこへ、妨害するかのように、にゅっと床から生え凛道へ伸びるブラックハンド。様子を伺っていたユエリャンがすかさずブラックハンドにライヴスの針を放って行動を阻害した。
 ゴーストナイトの首が飛ぶ。
 タオがゴーストナイトの腹部に拳を叩き込んだ。
 その隙に対デュース班を庇いながら横を抜け足跡を追いかけていく。
 そして、前方。
 足跡が横に行ったり来たりを繰り返している。まるで、ここだ。と教えているようだった。
 対デュース班を先へと向かわせ、駆除班の数名は彼らを庇うように向きを変える。
 先程のゴーストナイトへの一撃の音のせいか、鎧がぶつかり合う音が複数も徐々に迫ってきていた。

 徐々に見えてくる嫌悪感を覚えるようなぬめったヘドロ。一がライヴスゴーグルで一番にその体を確認する。視覚にぎりぎりで入りきらないくらい、その体は伸びて横たわっていた。ライヴスがうねりデュースの体を覆っているせいか巨体がより大きく見える。ライヴスしか見えないせいか、はたまたライヴスを見るための特殊な加工をしてあるが故か、一の体に変化はない。自由に意思を持っていられる。
 エディスは担いでいたイリスを下ろした。
「到着です。なるほど……これが狂気の使者とやらですか」
 VR-RPGデータリンク越しにその姿を確認する。正しい大きさでエディスの眼光にデュースの姿が映し出された。
「うふ……いいですね。壊し甲斐がありますよ。うふ……」
 体が固まることもなく魔法陣に横たわるデュースに楽し気に笑みをこぼす。その表情は狂気に満ちていたがそれは決してデュースの力ではない。
 同じようにVR-RPGデータリンクを使っている燃衣の目にデュースの姿はっきりと見えている。
「で、有り得るかどうかって話だけど……あいつ、小さくなるんだって?」
「周囲は暗いし、もし相当に小さくなった場合、逃げられたら見つけられない」
「後々回復した奴と再戦、なんて面倒くさい事ごめんだよ」
 見る気はない、スマフォの動画画面ごしにデュースを慎重に確認しながらアリス達はぶつぶつと二人言を零した。
 エディスの瞳に大きな単眼が映る。
「はじめましょう」
 通信機へ一言、コールを送った。仲間それぞれが通信機で繋がり、コールで呼び合う。もし返答がなければ発狂中だと判断できるように、事前に立てられた対策。
 全員から帰ってくる返答。そして、デュースが低く唸った。


 静寂の鷹もデュースを捉えていた。しかしその眼光と視線が合わさった瞬間コントロールが効かなくなる。墜落しブラックハンドに握りつぶされライヴスが四散し鷹は姿を消した。しかし、静寂に直接影響はないようだった。
 後方からの銃撃戦を耳にシドがルールブック「完全世界」を開き構えている。
 足跡を辿ったおかげが敵の少ないルートを上手く進めたようだった。音に反応し、散っていた敵がじわじわと集まってきている。
 仲間がその方向にいないことを通信で確認し、音に集中して闇の中から複数の鎧が姿を現した瞬間、ブルームフレアを炸裂させた。そのままシドは従魔の数を出来うる限り減らすことに全神経を注ぐ。
 燈花は発狂覚悟で後方対デュース班の側にも注意を払いながら伸びるブラックハンドを見つけ次第、矢を放つ。
 一撃でブラックハンドはその姿を散らした。
 捕まれている味方がいれば優先的に撃破していく。対デュース班が陣形をとれるまで、気を抜くことは出来ない。
 ライトアイのみでも届く視界内に敵を視認出来る距離に接近。盾役を先頭に全員一塊で、相互支援に集中してもらう。その盾役の前衛の後ろに射撃部隊を配置。可能なら炎や光線など、継続性のある銃器で攻撃してもらう。残る近接武器のリンカーは挟み撃ちをするように動くよう、燃衣の元、作戦が立てられていた。
 威月が花火に火をつける。光源の代わりになれば、と。
 そんな侵入者たちの動きにデュースがついに鎌首を擡げる。といっても僅かに中央付近が膨れ上がっただけだ。そして、醜い、呻き声。近くの者の脳内へデュースの理解できない悍ましい声が直接響いてくる。じわじわと内側からダメージが体と精神を蝕んだ。
 咄嗟にイリスがサウザンドソングを翳す。千の想いを込めたライヴスの結晶であるサウザンドソングは、悪しき力を退ける聖なる歌を奏でた。
「絆が紡いだ音楽が胸の奥から沸きあがって来るんだ……それを呻き声一つでかき消せると思うな!」
 一時的に脳内への声がかき消された。イリスと一定の距離を保ちつつ杏奈が「正体不明のオイル」をデュース周辺に撒き始める。ブルームフレアで火を付ける事で光源に出来ないか試みようと思ったからだ。多少の光源にはなるかもしれないがオイルはすぐに燃え尽きるだろう。
 移動をしながら杏奈はスマホのカメラ機能越しにデュースを確認する。その時、体がどこが動きにくさを感じた。しかし、完全に固まるというわけではない。面積の多くなったデュースは逆に視界に入る面積比率が減っているからだろうか。
 だが、デュースはただひたすらに呪詛の呻き声を発するだけで今は動くことが出来ない。一番大切なのは魔法陣を守ることだからだ。単眼がせわしなく獲物を狙うように動いている。
(回避をしないというなら、思い切り攻撃を叩き込めるな)
「任せといて! ウラワンダー☆アタック!」
 ニクノイーサの声に頷いて朝霞がレインメイカーを思いっきり振るう。白地にピンク色の、まるでアニメの魔法少女が扱うような可愛らしい見た目の杖だが全長200cm。先端のハートマークのオブジェからハートマークのエフェクトが舞う。
 ぐちゃっ!
 なんか生々しい音がした。嫌がるようにデュースの体が波打つ。
 アリスは極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』を開きウィザードセンスを発動させた。これで呻き声だろうと威力を軽減できるだろう。
 もう一度コールを行う。
 杏奈から返事がない。威月が急いで急行する。デュースに対して猛烈な殺意を抱き、通常攻撃とスキルで攻撃しまくり、頭に響く呪いのダメージはそのまま受けている。
「見敵必殺! 見敵必殺! 冒涜的な存在は殲滅すべし!!」
 叫んでいる杏奈の肩を掴み呼びかける威月。しかし杏奈は威月の手を振り払い極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』を開く。威月はビンタを繰り出した。しかしまるでぶたれたことに気が付いてないかの如く杏奈が魔術を展開し始めた。
 威月はクリアレイを掛けつつ再度強力なビンタをお見舞いした。ハッ、と我に返る杏奈。記憶の飛んでいる杏奈には何故頬がひりひりと痛むのか分からなかった。
 そんな中、対デュース班にゴーストナイトが向かわぬよう、凛道とユエリャンが移動しながら敵を引き付ける。
「ちょっとユエさん、離れ過ぎないでください。紐が締まって痛いです」
 途中ユエリャンが敵を追い過ぎ繋がった紐に凛道がやや引きずられたりもした。
 タオもゴーストナイトを相手取り健闘している。
 そこへ廊下をキース達に任せ全力でかけてきた央と蛍丸が地下へと姿を現す。
 潜伏で自身の存在を秘匿した央はゴーストナイトが密集している場所を見つけるとそのまま飛び込み、敵に捕捉される前に繚乱を放って場の均衡を崩した。凛道達が誘導していたゴーストナイトだ。
 央の乱入の隙をついてユエリャンは女郎蜘蛛を使いゴーストナイトの動きを止める。凛道がそこへ畳みかけた。
 一方、蛍丸は対デュース班へと合流すべく更に駆け抜ける。ミラーシールドでデュースの姿を映し直接見ないように気を付けた。
 シドのルールブック「完全世界」から放たれる炎が冷たくゴーストナイトを貫く。傍目に大きな変化はないがトランス状態にあるゆらが暴走気味になりシドが制御不能に陥ってるのだ。気が付いた硲が声を掛けるも応答がない。クリアレイをかけるとシドが制御を取り戻す。
 それぞれの役割をしっかりと全うすることによってデュースに戸惑いが生じる。ゴーストナイトと自身の間の空間にエージェントが現れると予測していなかったようだ。
(さて、光を遮る暗闇のようだが……音までは遮れるかな?)
 アイリスの綺麗な歌声が暗い中に響いた。リンクバリアが発動し対デュース班の周りにライブスによる結界が姿を現す。結界越しに闇が僅かに後退した。
「この黄金(キズナ)に陰り無し! どんな暗闇だって切り開く!」
 闇をすべて払拭するほどではなかったものの予測通りゾーンに影響を及ぼせ、イリスは強く言い放った。
 視界がより良好になると、エディスが無形の影刃から海神の斧に持ち変えアックスチャージャーにライヴスを蓄える。
「隊長さん、お願いしますね」
 その声に燃衣がエディスを掴みデュースの真上へと投げた。それと共に通信機で全員に後退を指示する。燃衣もエディスと同じようにブレイジングソウルから海神の斧へと切り替えた。アックスチャージャーにライヴスを注ぎ込む。
 これから、あの面倒な目を、潰す。
 一がタイミングを合わせ、合図を発してからフラッシュバンを放つ。
 ――閃光が、暗闇に咲いた。
 燃衣は更にライヴスを集積して身構え、エディスは武器としての魂と本能を思い起こす。
 閃光に眩んだデュースの目はエディスを捉えられない。
 エディスが大量の斧をその場に降らした。ウェポンズレイン。無差別だが大量の斧はデュースの眼光やその肉体に降り注ぎまるで削ぎ落していくかのよう。
「消えうせろ……《三貫連弾》ッ!」
 直後、エディスが攻撃した箇所を狙い燃衣は息もつかせぬ連続攻撃をデュースの単眼に叩き込んだ。
 更に後方から蛍丸がデュースの眼光に攻撃を放つ。
 オオオォオオォオオオオッ
 例えようのない咆哮が響き渡る。
 見事な連携で眼光は潰れた。というべきか、VR-RPGデータリンクで見える映像は光を持たない穴だ。
 そして大きなダメージに耐えることは出来ずデュースの体は縮み、覆い隠されていた魔法陣が淡い光を放ちながら地下室にその姿を現した。
 ヘドロをまき散らし激怒するデュース。まだその巨体は魔法陣の3分の2程を覆っている。
 イリスが盾でヘドロを受け流す。炎が燃え上がるが盾の前には意味を成さない。守るべき誓いを発動させ、出来うる限り自分へ攻撃を集めようとするイリス。ライヴスブローで反撃をするチャンスを伺いながら他所に飛ぶヘドロも射線を読んで回り込んでいく。
 威月はイリスを援護。アガトラムを張り続け隙間を塞ぐ。呪詛やヘドロでダメージを重ねる者が居ればリジェネーション使う準備も怠っていない。
 仲間に纏わりつくヘドロを硲は天雄星林冲で、自然発火する前に焼き払う。姿を現した魔法陣がライヴスゴーグルで何か破壊に繋がる何かがないか、と視線を巡らした。
 射線上からイリスが身を反らせたタイミングを見計らい杏奈がサンダーランスを放った。スマホ越しの為、標準は甘くなったが雷の槍がデュースのヘドロを貫き四散させていく。
 一がローブを投げて被せヘドロの一部と共にデュースへと返す。
 ぼろぼろのローブはぶわっと燃え上がった。
 それに目がけ更に飛び来るヘドロが自身に当たらぬよう傘状のスカーレットレインを広げ、ロングショットを放つ。エディスが傷を広げ深く抉ろうと重点的に傷跡へと最大火力叩き込む。
「皆! 回復は任せておいて!」
 荒々しく呻き声と燃えるヘドロをまき散らすデュースに向かっていく仲間に朝霧が声をかける。
 威月、朝霧、蛍丸と回復の手は十分だ。
 自身に纏わりつくヘドロをアリスはブルームフレアで燃やす。範囲内に沸いたブラックハンドも共に燃え上がった。目の前が赤い光で照らし出される。新しい情報はないか、と常にアリスは神経を張り巡らせていた。
 徐々にデュースの体が削れていく。
 対デュース班の他にも魔法陣の漏れた光は見えていた。
 燈花が鋭い一射を魔法陣へと打ち込む。
 静寂も陣を破壊すべく駆け出し童子切を突き立てた。魔法陣へ弾丸を放つ蛍丸。
 やや距離を取った位置からシドも『プランシェット』の自動筆記機能で魔法陣にでたらめを書き足す。乱されてか文字から受けるダメージやそれまでの攻撃の累積か、魔法陣の光が僅かにぶれた。
 廊下の敵をキース達に任せ地下に向かっていたグループが丁度そこへ合流する。
 桜は魔法陣の光を捉えデュースがいるであろう位置にアンチマテリアルライフルを放った。
「あの恐怖をまた味わいたい気持ちもあるが……流石にこれだけの人数に迷惑のかかることはできないな。無念だ……。せめてデュースが死んだらその亡骸を解剖して事細かにメモするとしよう。ふふふ、次の作品はきっと世間を驚かすものになるぞ」
(先生、先生。世間をドン引きさせるの間違いな気がします)
 桜の隣で聡一が闇の向こうにいるであろうデュースを見つめながら呟く。最後に一目、その姿を見てみたかった。
 見たならば、また狂うだろう。今度はどのようになるだろうか。炎に撒かれる自身が見えたような、聡一はそんな気がした。
 ほぼ総攻撃と言ってもいい攻撃を受け、デュースの体が半分以下程になるのを見計らい、燃衣がストレートブロウを使い、大きく吹き飛ばした。魔法陣の全貌が露わとなる。
 燃衣は魔法陣上に移動を指示し、デュースから魔法陣を奪った。もうデュースの体は人一人覆い尽くすことさえできない。体は崩れ始めヘドロがぼたぼたと床に落ちる。
 魔法陣の上、燃衣は仲間と共に残りのスキルを力いっぱい魔法陣に叩き込んでいく。
 多くのライヴスの攻撃を受け魔法陣の光がでたらめに点滅を始めた。
 ――そして。
 ビシッ
 ひびの割れるような音がして魔法陣がまるでガラスのように弾け飛ぶ。
 注がれたライヴスに耐えきれず魔法陣は崩壊した。
 破壊に、成功したのだ。
 と、同時に暗闇にもひびが入り隙間から暖かい日差しのような光が差し込んでくる。
 パスワード構築魔法陣を守る世界は、魔法陣が壊された以上存在意義はない。
 陽の光が全てを浄化するのかゴーストナイトも光を浴びた後はただの鎧に戻ってしまう。床から突き出ていた黒い手も溶けて行った。
 凛道がぽつんと一つ佇んでいる足跡の前へユエリャンと共に向かう。世界がなくなってしまう前に。
「では、今度も一緒に帰りましょうか」
 足跡に声をかける。そして凛道は上を見上げ、崩れた天井から覗く青空を見た。
「空色の方が貴方には似合ってますよ」
 その声を聞いてかそれともゴーストナイトやブラックハンドと同じなのか。
 きらきらと小さな光に溶け込むように足跡はゆっくりと消えていく。
「最高に気持ち悪くて、最高に怖い依頼だったけど、なんとかなったねー」
「ああ」
「けど、あの床から生える手だけは、もう二度とごめんだわ……」
 共鳴を解いてシドに話しかけるゆら。シドは軽く頷く。ゆらがもう一度辺りを見回し呟いた。
 そして凛道の前から消えていく足跡を眺め、きちんと解放されることをゆらは心から願ったのだった。

「よくみんな、持ち応えてくれました。素晴らしい」
「お疲れさまだよっ! みんなありがとう!」
 廊下でゾンビを止めていたキース達も屋敷が崩れ陽の光でゾンビがただの肉塊に戻り、通信で終わったことを知ると、残っているエリヤとリオンに労いの言葉を掛ける。
 共鳴を解いた瞬間、紙姫も元気に笑顔を向ける。
 エリヤは守りきれたことに小さく息を逃がす。見た目ではあまり判然としないが無事に終わって安心したようだ。
 リオンも笑顔を向けて返した。
 廊下でゾンビを食い止めたことにより地下には無駄な邪魔が入らなかった。目立たなかったかもしれない。けれど、これも大切な役割だった。
 二人からの返答を受け取るとキースは視線を後方の足元へと向ける。
「……勿論、キミもです。赤い足跡の持ち主さん?」
 挨拶に訪れたのか、そこには薄くなった足跡が一つ。しかしすぐにスーッと姿を消した。

 徐々に崩れていく世界の中、殆どの者が余韻に浸っていたが一人、アリスだけは違った。
「……三度目は要らないな」
 と、手の平程のサイズになり残っている闇の中へ姿を眩まそうとするデュースの前に立ちはだかる。そして、とっておいたリーサルダークを放つ。
 気絶させ捕まえよう、そう考えていた。
 ライヴスの闇がデュースを襲う。闇の中に小さなデュースは飲み込まれた――かに見えた。しかし、そのまま姿が見えなくなってしまう。放たれた闇に紛れどこかの闇の奥へ逃げたのだろうか。
 だが、特殊な眼光をなくし、無痛覚故に引き際を間違え多大なダメージを負ったデュースが戦場に復帰することはとても難しいだろう。
 ガーディアンの一角の戦力を削ぎ落せたといっても過言ではない。
 そしてエージェント達は現実へと戻る。
 まだ彼らにはやることが残っているのだから。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 泣かせ演技の女優
    化野 燈花aa0041
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
  • アステレオンレスキュー
    エリヤ・ソーンaa3892

重体一覧

参加者

  • 泣かせ演技の女優
    化野 燈花aa0041
    人間|17才|女性|攻撃
  • エージェント
    七水 憂aa0041hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 美食を捧げし主夫
    会津 灯影aa0273
    人間|24才|男性|回避
  • マイペース
    静寂aa0273hero002
    英雄|26才|男性|シャド
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
  • 天啓の医療者
    六鬼 硲aa1148
    人間|18才|男性|生命
  • 羊狩り
    ラウラ スミスaa1148hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • 魔の単眼を穿つ者
    繰耶 一aa2162
    人間|24才|女性|回避
  • 御旗の戦士
    サイサールaa2162hero001
    英雄|24才|?|ジャ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 守護する“盾”
    リオン クロフォードaa3237hero001
    英雄|14才|男性|バト
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 暁に染まる墓標へ、誓う
    無明 威月aa3532
    人間|18才|女性|防御
  • 暗黒に挑む"暁"
    青槻 火伏静aa3532hero001
    英雄|22才|女性|バト
  • 天秤を司る者
    キース=ロロッカaa3593
    人間|21才|男性|回避
  • ありのままで
    匂坂 紙姫aa3593hero001
    英雄|13才|女性|ジャ
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 希望の意義を守る者
    エディス・ホワイトクイーンaa3715hero002
    英雄|25才|女性|カオ
  • アステレオンレスキュー
    エリヤ・ソーンaa3892
    人間|13才|女性|防御
  • エージェント
    哭涼aa3892hero001
    英雄|18才|男性|ブレ
  • 撃退士
    咲魔 聡一aa4475
    人間|31才|男性|回避
  • エージェント
    百花堂 蘭丸aa4475hero001
    英雄|13才|男性|カオ
  • 薄紅色の想いを携え
    藤岡 桜aa4608
    人間|13才|女性|生命
  • あなたと結ぶ未来を願う
    ミルノaa4608hero001
    英雄|20才|女性|バト
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