本部

【卓戯】連動シナリオ

【卓戯】終わってしまった世界の話

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
4日
完成日
2016/10/09 18:45

掲示板

オープニング

*注意 このシナリオは英雄参加前提です。また英雄が二人いる場合は両方とも参加します。さらにこのシナリオで共鳴する必要はありません、してもいいですけど、戦闘はしないのでビジュアルが変わる程度の意味合いしかありません *

● 終わってしまった世界の話。

 残念、君たちの世界は滅びてしまった。
 はるか昔に『死と終端』をつかさどる愚神が現れて世界を滅ぼしてしまったんだ。
 その愚神は強かった、それこそ水晶の乙女なんて目じゃないくらいに。
 強大な力と……何より殺したリンカーを蘇生して自身の戦力として加える、その能力が厄介だった。
 その能力のためにH.O.P.E.は戦力の八割を失った。
 このままでは人類の存亡にかかわる。
 そう判断したH.O.P.E.の最高権力者たちは禁断の技術に手を伸ばす。
 それこそが、太古に滅びたはずの屍霊術の解放だった。
 屍霊術とは絶対の禁忌、死しても思考能力を失わず、魂なくとも動き続ける、永遠の命を求め開発されたが、その効果は似て非なるものとなってしまった悲しい術、忌まわしい人間の黒歴史。
 それが屍霊術の実態だ。
 その人間の英知の中でもトップクラスの禁忌それを用いて人間は最後の戦いに挑む。
 生きて挑み、死して兵となるならば命失い挑めば死兵にはならないだろう。
 そう願って。
 だが、結果から言うとそれは最悪の判断だった。
 愚神の滅びることを知らない愚神の軍団。そして滅びることを知らないH.O.P.E.の軍勢。その両戦力が衝突して、世界の方が耐え切れなかったのだ。

● デットエンドステーシーズ
 あなた達は目を覚ますと、そこは見知らぬ廃墟だった。
 古びたコンクリート、むき出しの骨組み、地上には申し訳程度に花が咲いた花壇。
 その中心には少女が佇んでいた。
 あなたはその少女に駆け寄る。
 きかなければいけないことが沢山あった。
 ここはどこか、そして自分の英雄はどこに行ったのか……。
 しかし君はそれを公開することになる。
「お母さん?」
 その少女は君が肩を引くと振り返って笑った。
 青白い顔だった、まるで血が通っていないような。
「ねぇ、お母さんはぁ。あああああああああ」
 直後、少女の穏やかな顔が苦痛にゆがんだ。そして肩を揺さぶった衝撃が伝わって、首が落ちた。
 君が何をしたわけではない、ただ。首が九十度曲がったかと思うと、ペリペリと紙をはがすような音共に、首に赤いラインが浮かび上がって、それが一周したかと思うと、ぼとりと首が落ちたのだ。
 あなたは思わず後ずさった。生首が転がり君と視線が合う。
 その瞬間目だけでその首は笑った。
「どうかされましたか? お困りのようですね」
 次の瞬間、突如声がした。
 しかし首がしゃべったわけではない。
 声は、少女の胴体から聞こえていた。
 少女の胴体は君の奇異な視線に気が付くと。ブラウスのボタンを外す、すると、少女の胸には人の顔が埋め込まれていた。
「ようこそ、デットエンドステーシーズの世界へ。私はリゼル。案内役です」
 少女は突然わけのわからないことを話し始めた。

「ここは愚神との争いで滅びてしまった世界です。さらにこの世界の技術と愚神の力が合わさり生者は死者に、そして死者は形ある限り動き続けるようになってしまった世界なんです」

「この世界では痛みは存在しません、死なないのに痛みなんて必要ないでしょう?」

「ああ、でもあなたを作成した技術系統によっては痛みが残っている可能性もありますね」

「え? 技術系統って何かって? 詳しくはルールブックの四十二ページを見てください」

「ここでは基本的に何か目的があるわけではないんです。だって死んだ後に何かを目的に頑張るっておかしいでしょう?」

「だから、退廃的で荒廃的な空気と、汚染されて破壊しつくされた世界を楽しむだけのお話なんです」

「理解していただけましたか?」

「よかった、それではよい、死後の生活を」

● 町の施設について。
 この世界は死んでしまった屍たちが意識を持って黄泉がえり、生活しているという世界です。
 グロリア社の比較的新しいテーブルトークRPGですが、あまり人気はありません。
 なぜかと言うと、すごくリアルな感じでグロテスクだからです。
 都市部は全て廃墟、人の手が入っていない森や湖などは全て毒に侵され、カビが生えていたり腐っていたりします。
 栄養は豊富な世界のようで、虫や菌類などは元気なようです。
 なので巨大な虫や、人を食べるキノコなどが存在します。この町でも遭遇するかもしれません。
 朽ち果てた街です。
 構造はあなた方が住んでいる町に似ています、どうやらイメージで形を変える用です、つまりマッピングが意味を成しません。
 よって、みなさんが想像する存在してほしい施設が突如目の前に現れたりします。

● あなたは魂の片割れを求める。

 こんな世界で何をやってもらうかというと。
 あなたの相棒を探してください。
 あなたの相棒とは第一英雄のことで、彼等、もしくは彼女らは今あなたのいるこの町のどこかにいるようです。あなた達を迎えに来てくれると信じている英雄たちを見つけてください。
 そうしなければ元の世界に戻れません。
 え? なぜそうしなければ戻れないとわかったかって?
 それは簡単です、あなたの開いたシステムコンソール。これのログアウトがロックされていて、アンロック条件が第一英雄を見つけることだからです。
 第一英雄を見つける手がかりは今のところありません。
 しかしこの町には第一英雄の残留思念が焼き付いています。
 第一英雄にゆかりのありそうな場所に行くと記憶が再生され次の行先を示してくれるでしょう。 
 思い出しながらこの町を探索してください。
 普段あなたの第一英雄はどんな風に過ごしていますか?
 本が好きなら本屋に通い詰めていませんでしたか? 珈琲が好きなら喫茶店に、あなたのバイトの帰りをいつも同じ公園で待っていたりしませんでしたか?
 またこの世界に英雄自身の過去の記憶がこびりついている可能性があります。
 幽霊のように半透明な英雄がいればそれです、それに触れると英雄の過去が見えます。


● そのころ英雄たちは
 英雄たちはそれぞれ別々の場所で目を覚まし、能力者たちを探しに出ます。
 しかし、能力者たちは異形の姿となっていて、一目ではわからないかもしれません。
 英雄の性格によっては、恐怖するでしょう、攻撃行動をとるかもしれません。
 もしかしたらあなたの姿は英雄のトラウマを刺激する何かに類似しているかもしれません。
 その時英雄がどういう行動をとるのか、そして英雄に拒絶された能力者はどんな行動をとるのか、そのあたりを考えてみると楽しいかもしれません。

解説

――――――――――
ミッションタイプ:【エリア探索】
 このシナリオはクリアと成功度に応じて様々なボーナスが発生します。
 詳細は特設ページから「ミッションについて」をご確認ください。
――――――――――

目標 第一英雄との合流


● やれること
 今回は、能力者と英雄の絆を深める回を想定しています。
 能力者としては英雄の記憶をたどりながら探す旅となりますし。
 英雄は、たった一人で異形のはびこる町を探索し能力者を探す旅になります。
 どちらに比重を置いて描写するかはお任せします。
 どちらの視点に立つかによってこの物語は大きく様相を変えるでしょう。
 もし迷った場合はどちらか片方にだけ絞ってプレイイングをかくとよいです。
 どちらか、というのは。
1 能力者視点で、英雄との日常の思い出、もしくは英雄の記憶をたどりながら探すか。
2 英雄視点で、普段さらされることのない命の危険を感じながら、ホラーな街並みを探索策するかのどちらかです。

●見た目の変化について
 この世界では能力者の見た目がかなり変わっています。
 出血、つぎはぎ、内臓がぼろりは当たり前として、翼が映えていたり、腕が増えていたり、目が増えていたり。
 見た目の変化はお任せします。

●クリーチャーについて
 この世界のルールにのっとって改造されている能力者。そして能力者と共鳴できる第二英雄はこの世界のクリーチャーは敵ではありません。
 大きな虫だったり、キノコだったり、ゾンビだったり、異形の化け物がうようよしていますが蹴散らせます。
 問題は第一英雄です。もともと戦闘力が高い英雄なら、そこそこ善戦できますが勝つことは絶対に不可能です。
 殺される前に逃げましょう。

リプレイ

プロローグ


「いったいなんすかこれ」
『Domino(aa0033)』は下半身が引きちぎられた状態でそこにいた、ご丁寧に臓物もきちんと再現してあり、見るに痛々しいが痛覚はほとんどない。
「まるでてけてけじゃないっすか……。そして、あちらさんは体の左半分がないと」
『煤原 燃衣(aa2271)』を抱きかかえるのは『赤目 炬鳥迦(aa2271hero002)』
「兄貴、兄貴……ッ!」
「大丈夫ですか? 煤原さん」
 そんな燃衣を気遣って駆け寄る『大門寺 杏奈(aa4314)』彼女もまた異形へと変貌している。
 肌が黒っぽい茶色に染まり腐りかけ少しの衝撃で崩れ落ち骨がみえる。黒髪はまるで深淵を思わせる黒に変色し、手入れもされず伸びっぱなしになっていた。
「この姿はいったい」
『世良 杏奈(aa3447)』はそうつぶやいて、一人震える『まいだ(aa0122)』を抱き留める。
「こわい……こわいよ……」
「全員が、体に傷を負っているようだな」
 全員の目覚めを確認して『八朔 カゲリ(aa0098)』が告げた、彼は一番最初に目覚めていたらしい。
「アンタは平気そうじゃねぇか」
 炬鳥迦がそう尋ね返した。
「これをそう呼んでいいならな」
 カゲリはおもむろに外套のボタンを全て外すと、そこにあったのは燻った細い黒い体。
 永遠の焔によってすでにその体は炭化していたのだ。
「なくなっているのはそれだけじゃないぞ」
 カゲリは眉をひそめる。
「ええ、キョウちゃん……ぼくら」
「お姉ちゃんとはぐれました!!」
『イリス・レイバルド(aa0124)』がそう宣言すると、リンカー全員が胸に手を当てたり幻想蝶を眺めたりした。
 そしてここでやっと。目覚めてから確かにあった違和感の正体がはっきりした。
 そう絆がないのだ。常に自分に寄り添ってくれていた、第一英雄の絆が。ない。
「えー!?」
 ルゥナスフィア……つまりイリスの第二英雄は素っ頓狂な声を上げた。
「どどどど、どうするんですかママ!」
 取り乱したルゥナスフィアを抱きしめてイリスは思う。
(本当に不安なのはこの子だ、だからボクが取り乱しちゃダメなんだ)
 ざわめく一同。そんな混乱の中一人の少女が立ち上がった。
「榊さんを探して、助けます」
 その場に凛とした声が一つ響く『泉 杏樹(aa0045)』である。
 その目は町の中央を向いていた。
「ああ見えて榊さん。寂しがり屋さんなの。一緒にいて、そばにいてあげないと」
 杏樹は知っている。彼が夜に悪夢でうなされること。
 偶然見てしまったのだ『榊 守(aa0045hero001)』が自分の知らない名前を呼んで、苦しそうに、切なそうに表情を歪める彼を。 
 杏樹はそんな時彼の手を握ってやることしかできなかった。
「そうですね、なんでこんなことになっているのかはわかりませんけど」
 イリスが同意して一歩前に歩み出した。
「探さないという選択肢はありませんからね」
「このゲームを終わらせる為に、何としてでも王様と合流しねーといけないンスが」
 Dominoがつぶやいた。
「ボクもです」
 燃衣は頬をかいた。
――っていうか、あんたはどうすんだよ。動けんのか?
 炬鳥迦が尋ねるとDominoは苦笑いを浮かべる。
「駄目ッスね。全く動けねーッスよ、こりゃ。映画とかだと両腕使って超速く動いてたンスけど、自分の筋力じゃ這いずるのが精一杯ッスね」
「乗っていく?」
 杏奈が言った。彼女は今鋼鉄の乙女だ。体のあちこちにつぎはぎがあり
一見それだけのように見えるが。中身がごっそり鉄にすり替えられている。
 だから普段より頑丈。人を一人背負うくらい、わけはない。
「いや、いいっすよ」
 だがその申し出をDominoは断ってしまう。
「こうなったら、王様が自分で探しに来てくれる事を祈る他ねーみてェッスね……果てしなく不安ッスけど、あのポジティブ思考ならこの程度の事で絶望とかしねーハズッス」
 その言葉に全員が頷いた。わけのわからない状況だが指揮は高い。
「はい。ルゥはすぐ迷子になるから手を繋いでいこうね」
「わぁい! ママとお散歩、お散歩♪ アイリスママも見つけて一緒にお散歩、お散歩♪」
「うん、きっと迷子になったのはボクらのほうだね」
 それにつられてまいだも宣言する。
「こわいけど、まいだなかないもん。つよいこだもん! ぜったいみつけてかえるんだもん!! ……あれ?なんでまいだ、ないちゃいけないんだっけ」
 まいだがいうと、世良も焦った様子で口走る。
「ルナを探さなきゃ。あの化け物達から守らないと!」
「お姉ちゃんがよくいる場所ってボクのそばだよね」
 全員が英雄のいそうな場所を思い描くが、状況がもう少し明確になるまでは一緒にいようという話になった。
「ところで、ママいつもと違うカッコだね?」
 ルゥナスフィアが問いかける。
「中途半端なキメラっぷりを指摘しないでルゥ!?」
 イリスは尻尾をぴんと伸ばしてルゥナスフィアの目をふさいだ。
 イリスは猫耳猫尻尾カラスの片羽に片腕片目のない、つぎはぎだらけの空だったからだ。
「では出発しましょうか」
 大門寺の号令で皆が町の中心向けて進撃を開始した。

第一章 


・アイリスの場合
 灰色の町に一つだけ埃をかぶらない白い傘があった、それがくるくると回る。
『アイリス(aa0124hero001)』は日傘を使って滑空していた、眼下には悲鳴と呻き群。
 だがそんな風景も冷静にやり過ごし、彼女は着地した。
「イリスとルゥナに合流しなくてはね」
 そうアイリスは背後の森を見て眉をひそめる。
「しかし、ユニークな成長を遂げた森だねぇ」
 人によって異形に変えられてしまった森、それだけが悲しかった。


・獅子道の場合。

「壊れた世界……何故か凄く懐かしい、感じがする。でもこんな場所、あいつには似合わねえよな」
『獅子道 黎焔(aa0122hero001)』は瓦礫を押しのけ先に進んでいた。
 この世界にいるとあふれ出る郷愁、黎焔はまいだを探す。
 ただ一つ問題がある。
「おいおい」
 黎焔はとっさにコンクリートの柱に身を隠す。
 見上げるほどに大きなムカデが瓦礫を乗り越えながら進んでいった。
「あいつこんなとこ一人でいんのかよ……!」
 この町はどうやら従魔でもない何かが住みついているらしい。今の自分たちでは力が今一つ足らず倒すことは難しいが、たとえ力がもどったとしても。腐ったなにかやら、おおきな虫などは相手にする気が起きない。
「あいつこんなとこ一人でいんのかよ」
 そうまいだを思い浮かべ、黎焔は進軍を再開した。

・ルナの場合

『ルナ(aa3447hero001)』はとある工房で目覚めた。
 壁につるされた無数の人形、そしてその破片。触ってみると柔らかい、人間のようだ。
 そこでは死体技術を高めるために研究がおこなわれているようだった、そんな資料が投げ捨てられていた。
「杏奈、どこにいるの?」
 そうルナは工房を出ると町を見渡す。その町並みは破壊しつくされていたが、自分の住んでいる街に似ている。 
 あそこに見えるのはよく杏奈と遊びに行く公園ではないか、そう思い一瞬明るい表情を見せるが。
「え?」
 目の前に現れた心臓を露出させた肉の塊に驚き悲鳴を上げた。
 一目散に逃げ出すルナ。
「助けて、杏奈。みんな」
 そんなルナが走りついた先はとある民家だった。それは世良家にとてもよく似ている。
 彼女は迷わず家に入り、カギをかけた。


・龍子の場合

『新城 龍子(aa4314hero001)』は幸福な夢から目覚めてあたりを見渡す。
 手に残る刃の感触。それが鮮明にまだ残り、さらには体がその感触を求めているんだとありありとわかる。
「なんだい、ここは?」
 腐った、冷たい肉の山、そこで目覚めた龍子にはここに来る前の記憶がおぼろげだった。
「今度はまた寂しいとこに来ちまったねえ……杏奈はいないみたいだし」
 そう言いつつ体にくっついた肉片をはがしてその山を下りる。
 無数に植え付けられた腕はまるで、風に揺れる木の枝のように左右に振れていた。
「ああ、くそ。夢が追いかけてくる」
 夢、それは自分の夢大門寺と契約する前の出来事。
 そのころ龍子は傭兵で。
 目の前の敵を血染めにすることが生き甲斐だった。
 別に人間が憎いとか、そういうことじゃない。
「好きだったのさ、血肉躍るって感覚が」
 そう血の沸き立つ沼を尻目に龍子はやっとコンクリートの町まで戻ってこれた。
 その町の光景は不思議と夢の中の風景とかぶる。
「戻ってきたのかあるいは……」

 その時、だった町の中央で煙が上がる。
 ネイが目覚めたのだ。
 しかし姿は彼女の生前の姿。
 色黒、癖毛を押さえつけヘッドフォンは今は首にかけている。その目はうつろ。しかし何かを求めるように両足は止まることなく町の中心を目指していた。
 彼は探している、自分が殺すべき相手を。
(声、が聞こえ……る……『コロセ』……殺す、殺してやる……)
 そのネイの目覚めをもってして、燃衣は脳に鋭い痛みを受け崩れるように倒れ込んだ。
「がああああ!」
「どうしたんですか、煤原さん」
 大門寺が駆け寄る、するとその場にいる能力者全員が同じものを見た。
 薄い透けた陰炎のような誰か。その誰かが跪いて何者かに嬲られている。
「そいつをタコ殴りにしたら皆助けてあげる」
 全員がどよめいた。
 なんだ、今のは。
「今のはネーさんの、人生を狂わせたその一コマです」
 燃衣が直感的に得た情報を皆に与える。
「ネーさんはその一連の騒動の後。記憶も家族も失い。魔人として目覚めます」
 燃衣はそう告げて立ち上がった。
「その後ネーさんは人も異形も敵になった彼女も仇も全て諸共に全て殺し続けます」
「おい。兄貴、それっていったい……」
 炬鳥迦の戸惑いを遮って燃衣は言った。
「みなさん聞いてください、ここはそう言うものが見える場所みたいです」
 英雄が能力者には話せなかった。心の奥の絶望や、トラウマ、狂気性。属性などがこの赤アでは引きずり出される。
「心してかからないと飲み込まれますよ」
 英雄が味わった絶望に。
「だとしたら、一刻も早くルナを見つけないと」
 そう告げると、世良はあわてて走りだし大門寺も心当たりがあるのか全員に手を振って駆けだした。
「私は龍子が行きそうな訓練施設を探してみます。私思い出したんです、龍子は身体を動かすのが大好きでトレーニング施設ではいつも剣を振り回したり筋トレとかしてましたから」
 唐突に脳裏に浮かんだイメージがあったのだ。それは彼女が自分の腕を磨いている風景。
「私そこで、いつも龍子が練習用に使っている武器を探します」
「ボク達も行きます」
 イリスは森の方を向いて告げた。
「きっと、あれが気になるんじゃないかなって思いますし」
 そうかけていく二人の背中を燃衣は見送った。
「さて、八朔さんはどうするおつもりで?」
 燃衣はただその場に立ち尽くしているカゲリに声をかけた。
「八朔さんもここでお別れですか?」
「ああ、ここにたぶん」
 あいつがいる、そうカゲリは高層ビルの最上階に目を凝らす。
「まいだちゃんはどうする?」
「よくわからないから一緒にいく!」
「だったら。危ないから手を繋いでいくの」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
 そう杏樹とまいだは手を繋ぎ二人を先導して燃衣が先を進んだ。
 

・殺戮の女王の場合。
「……あれ? ここは? お~い、ハルト~…ん?」
 金属の擦れる音が、暗い路地にこだまする。
「ハルトってなんだ……? ……ああ、そうだ……壊さなければ……」
 曖昧になった記憶、手に握るは一本のナイフ。赤の少女は夢見心地につぶやいた。
 壊す、それはとても楽しそう。
 彼女は本能に従い「ハルト」を壊すために彷徨う。


第二章

『黄昏ひりょ(aa0118)』は長い夢を見ていた。
『フローラ メルクリィ(aa0118hero001)』の夢。
 それはとても断片的で、しかし一瞬一瞬が確かに記憶に残るくらい、鮮明だった。
 禁忌の箱の蓋を開けてしまい、封じられていた邪念が解放された。その日。
 邪念は人に憑りつき邪悪な存在へと人を変貌させた。
「そんな……」
 彼女が絶望する声が耳元で聞こえた気がした。
「癒しの巫女」と呼ばれていた彼女ではあるが、変貌した人を元に戻す事は叶わず、安らかな死を与える事しか出来なかった。

「たとえこの手が血にまみれ穢れきろうとも、皆を救わなきゃ…」

 でもその一方で思う事がある。
「もし、叶うのならば……周りの皆の笑顔を護りたかったな……」

「フローラ君は!!」

 目覚めるとひりょは診察台の台の上にいた。
 その時だった廊下の向こうを彼女が通った気がして目を凝らす。
(いかないと……)
 あの悲痛な声を聴いてしまったあとでは、彼女を一人にすることなんて、できなかった。
「フローラ!」
 そんな彼に手を差し伸べる少女の幻影、その手を取ろうとすると光の粒となってひりょへと流入し。一つの記憶を見せた。
 見知らぬ世界に召喚されたフローラ。
 自分の世界とは異なるものの、それでも助けを求める人達が沢山いた。
 従魔による襲撃で負傷する人々を必死に治療するフローラ。
だが、エージェントと契約する前の彼女にとって、それは自分の存在を消滅させかねない行為。
 自分の存在が消えかかる中、不思議な術を使う少女の噂を聞きつけ村へ立ち寄った俺と出会う。
 それは彼女とひりょとの最初の記憶。
「迎えに来てほしいんだな、わかった」



   *    *

 
『一ノ瀬 春翔(aa3715)』はその豪奢な作りに圧倒され周囲を見渡していた。
 彼もまた異形化しており、身体の半分はほぼ肉塊と化し原型を留めてはいない。更に心臓が露出し規則的な鼓動で耳を障る。
 そんな春翔は自分を見て思った。
「まるで……」
 ハートのエースではないか。
 そして彼が第二英雄と一緒に放り出されたのは血で紅く染まったエントランス。ここは城らしい。
「ああ……ここって……おねぇちゃん………! おねぇちゃん!」
 一緒に飛ばされてきたエディスは何かに気が付くと一目散にかけていく。
「また面倒事に巻き込まれやがって……クソッ! おい、エディス!」
 今、自分とアリスとの間に絆はない、その事実を受け止め噛みしめる間もなく状況は転がり始めた。
 その町の端々で春翔は赤い少女の後ろ姿を何度もみた。
(なんだこれは)
「お姉様は、どんな声で壊れてくれる?その声を私に聞かせてくださいな。あはははは!」
 ここと同じ様な、何処かで。
 紅の少女は何度もナイフを突き立てる。
「おねぇちゃん……やだよぉ……おねぇさまがぁ……」
 その悲鳴を聞くまいと側で耳を抑える白の少女。
 しかし、目と耳を閉じてもその光景は鮮明に脳に叩きつけられる。
 つまり無意味だ。
 動かなくなったそれに飽きた紅の少女は立ち上がり、白の少女に目を向ける。

「私の可愛い妹、貴女も壊してあげよう。もっと良い声を聞かせてくれる様になるまで……あはは!」

「くそ、ろくでもない場所だな……」
 春翔はその幻影を振り払うべく頭を叩いた。

第三章

『Masquerade(aa0033hero001)』は羽をパタパタゆらし、町を闊歩している。
「ふむ、どういう訳か世界は滅びてしまったようであるな。しかし余は生きておる。つまり余の国は滅んでおらぬ。例え世界が滅びようと、余が生きていれば国の再建なぞ容易い事よ! うむ、何も間違っておらぬな!」
 彼は相棒が予想した通りポジティブでくじけてはいないようだった。
「しかし国を再建するにしてもまずは従者を探さねばな。余の第一の従者だ。あれがいなければ何も始まらぬ。余が生きているのならば、あれも生きているはずだ。草の根を分けて……いや、瓦礫を撤去してでも探すぞ!」
 その瞬間壁を破壊して目の前に現れたのはネイだった。
「むっ、矛を収めよ! 我が民よ!」
「その人とやりあっちゃだめだ!」
 そんなMasqueradeを後ろから捕まえて燃衣と逆の方向に走り出したのは燃衣。
「おお、化け物に攫われてしまった」
「煤原ですわかります?」
「おお。変わり果ててしまったな……」
――おい兄貴! 何でにげるんだ!
 炬鳥迦が叫ぶ。
「……キョウちゃん、あれは戦っちゃダメな類の奴だ。ネーさん……いや、憤怒の魔人…《不破 炬鳥介》は…ッ! ……《カウンターの天才》なんだッッ!」

「……死ね、よ……みっともなく」

 その声が燃衣には妙にはっきり聞こえた。
 次いで、後ろから爆音。
 追いかけてくるネイ、しかしそれを遮るように現れたのは。龍子だった。
「あなた! 大門寺さんの」
 しかし彼女はその呼びかけに答えずネイへと向かって行ってしまう。
 
「止まってください」

 その杏樹が叫ぶ時鋭く
「なんですかこんな時に」
「榊さんが」
 そう指さす先には確かに、燃衣も見知った榊の後ろ姿、だがおかしい、その姿は半透明でなおかつ、複数見える。
 路地に、死体の前に。そして杏樹の目の前に。
「どうしてですか?」
 一人は兵士服着た榊の後ろ姿だった。
 その榊は駆け寄った杏樹に銃弾を放つ。
 その弾丸は見知らぬ少女に突き刺さりそして。それは虐殺の狼煙でしかなかった。
 榊は街中に少女の幻影を見つけてはそれを撃つという作業に没頭する。
 二人目の榊は無愛想に周囲を眺めている。隣に立つのは顔がぼんやりとした誰か。その誰かに少年が走り寄る。
 その男は子供が好きなんだろう、笑顔を見せるが。しかし。
 少年の突き立てたナイフによってあっさりと。その場に崩れ落ちる。
 無言で涙を流す榊。
 それだけではない、周囲には杏樹が想像もできないほど残酷な映像が榊を主人公に放映されている。
 これが、これが彼の傷なのだ。
 涙をぬぐって杏樹は高らかに告げた。
「榊さんこの近くにいるのですよね? どこにいるんですか?」
 だがその言葉におびき寄せられたのは真紅の少女。
「あれ、アリスさんですか!」
「うしろからあのひとがきてるよ」
 魔人と真紅の少女は明らかに正気を失った瞳で一向に歩み寄る。
「なんで! まいだたちわるいことしてないよ」
「そこらの化け物とおんなじ見た目だからだろな」
 Masqueradは言った。
 その刃はまいだにむけられていて、けれど杏樹はそれを素早く察知、たてになる。
 だがナイフが杏樹を貫くことはなかった、目の前に榊がたっていたから。
「榊さん」
 だが彼はかばうために出てきたわけではないらしい。今までの幻影と打って変わって穏やかな表情を浮かべた彼は誰かに手を振った。
 振り返る杏樹。そこには幼い少女と女性が立っていた。少女は杏樹に似ている。
 だがその二人が突如崩れ落ちた。
 顔を歪めて駆け寄る榊。
 二人は死んだのだ、理由はわからない、だがそれは彼の心を壊してしまうには十分だった。涙を流し声にならない叫びをあげる。
 そして彼は……。

「もう、あの人を苦しめるのはやめてください!!」

 絶叫が響き渡った。その声にかき消されるように目の前の榊も消え去る。
 悲しくて悲しくて涙を流す杏樹。
 その声が響いてなのか。魔人と真紅の少女は立ち止まった。その時である。
「こんなところにいたのか、アリス……」
 春翔の声が響いた、優しい声だった。
「見つけた……見つけた…… 貴様も壊してあげよう」
 春翔のむき出しの心臓にナイフを突き立てる。
「あはははは! さあ! 聞かせなさいな! 壊れる音を!」
 そう、何度も何度も、しかし春翔はそれを悲しそうに見つめるだけだった。
「やだよぅ……またエディスを壊してくれないの? やだよぅ……」
 そう泣きじゃくるエディス。そしてナイフで服がきれたためか、一枚のカードが地面に落ちたのがアリスには見えた。そこに描かれていたのは。
「……一ノ瀬、春翔……。ハルト?」
登録証に見たそれは記憶を。アリスの中に呼び覚ました。春翔はアリスを抱き寄せる。
「……スッキリしたか?」
「うん」
「じゃ、行くか」
「そんな。どうして」
 茫然とつぶやエディス。
「ま、あと10年は一緒に居ないとねー」
「一ノ瀬さん!」
 その燃衣の声を受けて春翔はネイを見据える。
「その人ぶっ飛ばしてください」
「お安い御用だ」
 直後アリスと春翔は共鳴。その大斧でネイを吹き飛ばした。
 そのネイは見えない壁に激突、次の瞬間空間に穴があき、その向こうにもまた別の世界が広がっていた。
 そしてそこに横たわっていたのは本物の、女性の方のネイ。
 そして。
「榊さん!」
 杏樹はその背に駆け寄った。本物だ今回は確信があったから。
「ネー……さん」
 燃衣はネイへと歩み寄る。
「……スズ、リンカーども。覚えておけ……この世界は《予言》だ……お前等が負ければ。世界は本当に《こう》なる」
 その言葉に燃衣と春翔は頷いた。
「大切な者を《こう》したくないなら。負けるな、絶対に」
「榊さん! そちらに行ってはだめです」
 杏樹の声に全員がそちらを向いた。
 榊は抱き留めていたのだ、腐った自分娘の死体を。杏樹によく似たそれを。
「痛いよ、苦しいよ、助けて、酷い人皆殺して」
 そしてその彼を包み込むように、陰が立ち上がり、榊への怨嗟を唱え始めた。
 榊は泣き叫ぶ、死んだ娘を抱きかかえながら、生きた誰かをひたすら殺した。その果てに生まれるのが屍の世界と知っていながらに。
「誰か……だれか俺を」
 その時だ。その影たちが風に巻き込まれるようにどこかへ吹き飛ばされていくのを見た。
 振り返ればそこには杏樹、そこでやっと二人の視線がまじりあう。
「お約束した、です。榊さんを、癒すの」
 そう杏樹は優しく榊を抱きしめた。
「俺に生きる価値などない」
「杏樹は、榊さんじゃないと、ダメなの。生きていいの」
「俺の事はいい。1人で生きてくれ」
「1人は、怖いの。だから、一緒、です。2人なら、怖くないの」
 そして杏樹は歌を口ずさむ。まだ曲にすらなってない、メロディーラインと歌詞だけのもの。
 その歌が、榊の心にしみていく。
 その時、榊が抱きしめていた死体はいつのまにか消えていた。

(俺を癒した恩人だ)

(お嬢を守る為に自ら守と名付けたのに)

「守られてどうする」
 そう榊は涙を流しながら微笑んだ。


 第四章
 

 とある高層ビルの前、瓦礫の上に一羽の鳥が留まっている。
 それは陽炎のように揺らめく焔の鷲。
 神鳥とは彼女の本来の姿であり。
「そこにいるのか?」
 そうカゲリが手を伸ばした瞬間。彼の意識は黄金の焔に呑まれる。そして垣間見るのは神話に謳われる闘争の記憶。

百の腕を持ち、その総てに武器を携えた愚神が焔に巻かれ消滅する。
炎に水、風に大地に数多の神が、そして最後に雷の神も。
 遂には創造の神が、維持の神が、破壊の神が、その他諸共に焔に焼かれて斃れていく。

――地上を埋め尽くすほどに巨大な白皮の蛇神もまた、例外ではなく――
それは浄化の王――「鳥の王」と謳われた彼女の記憶であった。

 いつの間にかカゲリはこの世界の頂上に立っていた。隣には中途半端に神鳥の姿を残した『ナラカ(aa0098hero001)』がいる。
 彼女は見つめていた。人のあがき、そして終わってしまった物語に苦しむもの達の姿を。

   *    *

・たとえばアイリス
 イリスとルゥナスフィアが迷い込んだ森は本来腐食の森のはずだったしかし、いつの間にか世界自体が塗り替わり、色鮮やかで美しい森に替わっていた。
 そこで彼女はただ踊り歌っていた。
 周りには妖精の仲間がいたが、どれも花くらいの大きさで彼女より小さかった。
 さらにその幻影を追いかけイリスは先に進んでいく。
 そこは深い深い森の中だった仲間と悪戯を笑いあう彼女がいた。
 たまに一人で空を見上げる彼女がいた。
 それがただただ繰り返されるだけだった。
「ママ、みて。あれ……」
 ルゥナスフィアが恐ろしげに何かを指さした。そこに見えたのは人間同士が争っている風景。
 ただし片方側の勢力には妖精が参加している。巧妙に人間を装ってはいるがイリスには分かる、彼女は妖精でそして片方の人間に肩入れしているようだった。
 装う鋼の武器は重いので魔法で素手で操ったように見せていた。
 それから幾星霜の時が過ぎた。その間戦い続けた彼女は魔法を使わずに手馴れた様子で鋼の武器を操る。彼女は戦争に完全に興味を失っていた。
 周りの人間も彼女の存在に興味を失っていた。
それでも武器を振るい続けた彼女は何を思っていたのだろうか。
 それをイリスは、問いかけることができなかった。
 その背中を見つけても。
「おや、イリスじゃないか。ずいぶん可愛らしい見た目になったね」
 そうアイリスは振り返って笑うと二人を手招きした。

・フローラの場合。

 ひりょは言うことを聞かない体を引きずってひりょはフローラを探していた。
 思い返していたのは契約時の記憶。
「ここにいる人達の笑顔を護りたいから」
 そうフローラにひりょは言い放ち。
「私も皆の笑顔を護りたいから」
 そう頷いた彼女と契約を結んだ。
 消滅を免れたフローラと力を得たひりょ。
 二人は束ねた力で従魔を撃つ。
「なんだか、似てる所があるんだね」
 と二人は笑いあった。

「やっと見つけた」

 そしてひりょは光さす庭園にたどり着く、そこだけはその世界で美しく、彼女に染め上げられたようだった。
 だがフローラはひりょの姿をみて言葉を失う。
 血まみれで背中に翼を生やしたその姿は痛々しくも神秘的に見えたからだ。
 そしてひりょは倒れ込む。
 そんなひりょを抱きかかえて彼女は言った。
「会えてよかった」

・黎焔の場合。

 まいだは合流を果たす英雄たちを見ていていたたまれなくなり輪を離れた、英雄の記憶をほぼ失い誓約すら忘れながらも、帰るため言われた通り英雄を探しに行く。
 依然として世界は怖いままだったが、それでも胸の中を占める寂しさの正体を探る。
(そうだ……おゆはん、まいだのたべたいのつくってくれた……かならずなにがたべたい? ってきいてくれた。たまに……のすきなのいうと、ちょっとうれしそうにするのしってたよ)
 やがてまいだは見知った公園にたどり着く。
(うん‥まいだ、なくなっておこられて、なかないっていって、そしたらいっしょにいれるようになって‥でもまいだがないたらきえちゃうから。だからまいだ、れいえんをまもるんだって。なかないってきめたの)
 そして最後にやってきたのは、見覚えのある事務所あと。 
「うん! おもいだした! まいだ、れいえんとずっといっしょだよ! だからねれいえん、だいじょうぶ! だいじょうぶだよ?まいだがれいえんまもるから! だからね、なかないでいいんだよ!」
 その時、風景から浮上するように黎焔が現れる。
「思い出すのがおせーよ」

・杏奈の場合
 杏奈は記憶を頼りに公園にたどり着いた。
 ブランコが揺れている公園に。
「ルナ?」 
 ブランコを揺らしていたのはルナの幻影。
 それだけではない、彼女が他の子供たちと一緒に遊んでいる風景。そしてそのルナの手を引いて変える自分の姿。
「追えばいいのね?」
 そう杏奈が駆けだして、その幻想を追い越すと。
 脳裏によぎる光景があった。
 それは自分たちが初めて出会った時に幻影。
「……ホントに良いの? アタシ、ここに住んで良いの?」
 ルナが言った。
「ええ、もちろんよ。だって私達は、もう『家族』なんだから!」
「!! じゃ、じゃあ……。ただいま……?」
「お帰りなさい♪」
 気が付けば杏奈は自宅そっくりの扉の前に立っていた。入ろうとしても鍵がかかっている。
記憶を見終わった杏奈は玄関から家に入ろうとするが、鍵がかかっていて開かない。
 杏奈は裏手に回ったそこには大きな窓がありそこから中を見ようと思ったのだが。
 杏奈の目に入った光景はルナが大量のゾンビに襲われそうになっているところ。
「ただいま、ルナ!」
 そしてダイナミック帰宅。
 その勢いのままにゾンビを蹂躙した。
「ええ! 今度はなに?」
 その杏奈の姿にどんびいているルナだったが、左手薬指のリングには見覚えがあった。
「ルナ、無事で良かった」
「あんなぁぁぁ!!」
 そう、ルナは泣き叫び杏奈の胸に飛び込んだ。


    *   *

 その光景全てをナラカとカゲリは見下ろしていた。
「ここはなんだ?」
「わからんよ、ただ、食わず嫌いをされたらしい」
「どういうことだ?」
「詳しくはわからないが、私たちはうまく取り込めず、その結果この場所に放逐されることになったようだよ」
 そこで初めてナラカはカゲリを見た。
「見たか、私の記憶を。如何であった、文字通り総ての神を討ち滅ぼした鷹の姿は」

「余り、嘗めるな。
 お前が言った事だろう、俺は「燼滅の王」だと。
 ならお前の焔程度に、屈したりもしない」

 そうカゲリは告げると、ナラカは笑いそして伸ばされた手をカゲリが取る。
 その瞬間だった、世界が天井から砕けはじめた。


エピローグ
「青空が……」
 大門寺ははらっぱの上でぼろぼろに傷ついた龍子に膝枕をしていた。
 彼女はネイだけではない目に映るものすべてに戦いを挑み、疲れ果てて機能を停止していたのだ。
「戦いの中でアタシより強い奴に負けて死ぬなら本望だって思ってた」
 龍子は淡々と語る。
「だから、いつだって全力で剣を振るって――最初は威勢がよかったのに背を向いて逃げる野郎どもを見るたびイライラして、呆れながら殲滅したもんだね」
 その言葉を大門寺はうんうんと頷きながら訊いた。彼女が自分のことを話すのは珍しい、だからそんな独白を大門寺は聞き続けた。
「おー。探したぞ。こんなところにおろうとは」
 ただ、そんなおおらかな声を聴いて二人は振り返る。
 そこには地面に半身埋まったままのDominoがいて。
 必死に掘り起こそうとするペンギンの姿があったのだった。


結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 罠師
    Dominoaa0033
    人間|18才|?|防御
  • 第三舞踏帝国帝王
    Masqueradeaa0033hero001
    英雄|28才|?|バト
  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 闇に光の道標を
    フローラ メルクリィaa0118hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 止水の申し子
    まいだaa0122
    機械|6才|女性|防御
  • まいださんの保護者の方
    獅子道 黎焔aa0122hero001
    英雄|14才|女性|バト
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • 責任
    赤目 炬鳥迦aa2271hero002
    英雄|15才|女性|ジャ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 生命の意味を知る者
    一ノ瀬 春翔aa3715
    人間|25才|男性|攻撃
  • 生の形を守る者
    アリス・レッドクイーンaa3715hero001
    英雄|15才|女性|シャド
  • 暗闇引き裂く閃光
    大門寺 杏奈aa4314
    機械|18才|女性|防御
  • 猛獣ハンター
    新城 龍子aa4314hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
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