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広告塔の少女~霊石採掘の旅2~
掲示板
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【相談】納涼旅情殺人事件
最終発言2016/08/15 22:26:21 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/08/13 15:07:29
オープニング
● 第二弾、夏のドキュメンタリー?
「今回も夏のフレッシュさあふれる絵を取りに、今度は山に行きます」
そう遙華は高らかに宣言した。
と言っても、前の霊石採掘の旅は、冬だったので、今回こそが正真正銘夏の映像なのだが。
「皆さんにはこれから山のコテージで二泊三日を過ごしてもらいます」
そう、手を振りながらテンション高めに遙華は言う。
場所はバスの中、片手にバスガイドさんがよく持っているマイクを持ちながら意気揚々と案内をしている。
「例のごとくドキュメンタリー撮影です。今回は皆さんの生き生きとした表情を撮りたい、そうです」
「でも霊石をとると言ってもサンプル程度よ、今回も遊び半分。楽しんでいきましょう」
そう言うと、遙華は意気揚々と、バーベキューがどうとか、夜はトランプがしたいとか言い始めた。
けっこう楽しみにしていたのだろう、今日という日を。
山でキャンプ、それは青春には欠かせない思い出。
だが、そんな思い出が恐怖に彩られることになるなんて、この時はまだ知らない。
● いわくつきの宿
バスの移動時間は二時間、暇だろうということでレクリエーションが企画されたが、遙華は怪談をするつもりらしく声を低くどんよりした声で言った。
(機嫌の悪い時の遙華にそっくり)
そうロクトが思ったのは内緒である。
「みんな、知ってる? これからいくコテージはね。なんのために建てられたと思う?」
「その近くには粗末な温泉があるばかりで、周りには特に何もない、霊石が発見されたのも最近だしね。ではなぜか」
「そこはね昔から自殺の名所だったのよ」
「自殺する時に死体が出てくることを気にする人は結構いるわ。死体が出てこなければ生きていると信じ込ませられる、そのことについてメリットはたくさんあるのよ」
「だから、しばらく文明開化に取り残されたように未開拓だったその一帯は磁石も使えないし、人も来なかったから自殺には最適だったんだけど、いつの間にか融資で小屋が作られていてね、自殺する前に一休みする人が増えたらしいわ」
「その小屋を作った人のもくろみとしてはね。その小屋で人らしい生活を送るうちに、自殺者の気が変わればいい、そんな思いがあったみたい。でもねその思いは踏みにじられる出来事が起きたのよ」
「異常者がね。でたの」
「自殺する人って、身辺整理や発見されないための工作を済ませてくるでしょ? だから、殺されたとしても、わからないのよ」
「殺人者はそれからという物、その小屋に宿泊する人間を殺しまくったらしいわ。その骨や遺体を隠す場所を増やすために、その殺人者は小屋を大きく改造していって、今はコテージ二つ分になったってわけ……」
「という、まぁ、作り話なんだけどね」
「感想があったら教えてね、私今怖い話を作るのにはまっているの」
《洞窟》
洞窟はいくつかの小部屋に解れており、そこで霊石の採掘を行っていただきます。
ここでとれる霊石はわずかな衝撃で光を放つそうです、壁一面に埋め込まれており、叩くと一斉に光ってロマンチックです。
●?の理由《PL情報+仕掛け人情報》
ちなみに今回、ドキュメンタリーとか言いつつ、ドッキリ企画です。
企画名としては《納涼!! 暑い夏をひんやりシーンで乗り切ろう》
らしいです。
まず自分のPCが仕掛け人か脅かされる側か決めてください。
ちなみにすべてのドッキリに参加する必要はないです。
多くて二つくらいがバランスとれててお勧めです。
ドッキリ企画に参加しなくても問題ないですよ
ちなみに遙華は脅かされる側で、ロクトは仕掛け人です。
視聴者さんは皆さんの純粋なリアクションを期待しています!!
1 《一日目》 心霊現象
これは夜に二十四時以降、被害者たちが目覚めます。目覚めると悲鳴やら、人形が動くやら、様々な怪奇現象に見舞われます。
内容に希望がある場合、心霊現象担当の仕掛け人が決めておいていただいて構いません、その場合、さらっとみんなに周知しておくと、食い違いを防げるでしょう。
最終的にはコテージの地下室に大量の死体を見つけますがバーチャルです。
2 《二日目》 洞窟に閉じ込められる。
洞窟の入り口が閉じられます。他に何かトラブルがあるわけではないですが。暗い洞窟内に数人だけです。
ちょっとしたら人が助けに来てくれるのでひたすら耐えましょう。
仕掛け人が一緒になってパニックをあおったりしても楽しいかも。
場所がロマンチックな場所なので恐怖演出以外にも使えるかも!
トイレとかどうするのでしょう、それは謎ですが、そこまでPCの精神にダメージはないと思います。
ちなみに、洞窟の個室は沢山あるので、別れて閉じ込められることができます。
3 《三日目》 殺人事件が起きます
朝目覚めるとロクトの死体が。そこから短時間で連鎖的にばんばん殺されていきます。
仕掛け人の誰か、死んでください(連鎖殺人です)
ダイイングメッセージなど残していただいて構いません
ここで仕掛け人側にお願いなのですが。仕掛け人の人はパニックをあおる、探偵役を買って出るなどして、死体に触らせないでください。触ると絶対ばれるので。
そして十三時 帰宅ごろにネタバラシをします。
-----------ここまで《PL情報+仕掛け人情報》----------
解説
目標 納涼を楽しむ
夏の思い出を作る
今回はホラー企画ですが、普通に花火やBBQでたのしんでいただいても構いません
● 日程表
《一日目》
十二時 到着
夕食まで自由時間
十三時 BBQ
完全消灯まで自由時間
二十四時 完全消灯
《二日目》
起床、ご飯。
十二時 洞窟に向けて出発
探索
十九時 帰宅予定。ごはんのあと河原で花火を予定。
二十四時 完全消灯
《三日目》
六時 起床
自由時間
十三時 帰宅
● 地域情報
《施設》
・コテージ(男女別)
リビング、キッチン、二階と一階含めて十の寝室。
・野外露天風呂(男女別)
事前に近くにある発電機に油を入れてください、出ないと真っ暗です。
リプレイ
プロローグ
「という、まぁ、作り話なんだけどね」
そう遙華は怪談話を終えると静まり返った一同にそう言葉を投げかけた。
「な、何だ作り話か。怖がらせないで下さいよ遙華さん」
そうほっと胸をなでおろす『世良 霧人(aa3803)』しかし『クロード(aa3803hero001)』は不吉さを感じていた。
「おー、遥華さん結構怖いの作ったねー」
そんなクロードの意味深な視線を尻目に『大宮 光太郎(aa2154)』と怪談談義を始める遙華。
「えっとね、例えばその殺人者の人が死んじゃって、そのコテージにその幽霊が出たり……っていうのも良くない!?」
「ええ、とても面白そう、他に何かない?」
『オウカ(aa2154hero001)』はそんな二人を横目にもう一眠りしようとアイマスクをかけた。
そんな光太郎の後ろの席では女の子たちが騒いでいる。
席にかじりつくように身を乗り出しているのは『楪 アルト(aa4349)』
前の席には『蔵李・澄香(aa0010)』が座り、何やらお話をしていた。
「今日はあたしの友達を紹介するよ」
そうアルトが『アリソン・ブラックフォード(aa4347)』を手招きすると、アリソンは澄香の隣の席に座る。
もともとこの席は『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』が座っていたが、彼女はロクトとお話しているので問題はないだろうと判断した。
助手席を下ろして隣に『ホワイト・ジョーカー(aa4347hero001)』が座る。
「アリソンとホワイト・ジョーカーだ」
「ホワイトと、ジョーカーどっちが名前なんですか?」
そんな華やかな場面に『天宮 愁治(aa4355)』がシュークリームを持って現れた。ひんやり冷たいのが夏にうれしく、女性たちにひどく歓迎された。
『ヘンリカ・アネリーゼ(aa4355hero001)』は呆れてそれを眺めている。
「怪我で撮影とか、大丈夫かなぁ」
そう疲れた体を座席に横たえるのは『イリス・レイバルド(aa0124)』である『アイリス(aa0124hero001)』が甲斐甲斐しく看病していた。
「採掘と聞いてきたけど、半分バカンスみたいなものかしらね。折角だから楽しみましょう」
「そうね、日ごろの疲れを癒すには最適だと思うわ」
そう『水瀬 雨月(aa0801)』は遙華に話しかける、例のごとく『アムブロシア(aa0801hero001)』は幻想蝶の中である。
そうこうしている間にバスは到着する。コテージの前にとまって。ロクト指導の元機材を下ろしていくリンカーたち。
「おぉ……さっきの話に出てきたようなコテージだにゃ」
「フム、存外に利用できそうですね」
光太郎とオウカは満足そうに頷いた。
そんな二人の前をせっせと行き来する男がいる。『カイ アルブレヒツベルガー(aa0339hero001)』であるが、彼が背負って運んでいるのは酒類ばかり。
「ちょっとそんなにたくさんのビールどうするのよ」
『御童 紗希(aa0339)』が抗議の声を上げた。
「飲む!」
「一人で?」
「違う、二人で」
「二人で一ケース!?」
「三ケースはあるな」
そんな二人にロクトが、機材チェックをしながら言葉を向ける。
「二日目はワインで、三日目は日本酒よ」
「すごく楽しんでるじゃない!」
のんべぇ二人は酒の樽を見て微笑んだ。
「さて、カギを渡していくわよ」
そう遙華が部屋のリーダーたちを集めると、アイドル班班長の澄香が突如遙華に抱き着いてくる。
「ねぇ、遙華」
「え? どうしたの澄香」
「遙華、強く生きてね」
そう澄香は心の中で謝罪しつつ、遙華に優しくしてあげた。
「え? うん。わかったわ。なに、あなた死ぬの?」
少し顔を赤らめつつも、まんざらではない遙華であった。
*** 一日目 ***
「周囲に従魔はいないようだな」
そう炎天下の哨戒に出ていた『リーヴスラシル(aa0873hero001)』は靴を脱ぎながら、出迎えてくれた『月鏡 由利菜(aa0873)』へと言った。
由利菜は麦茶をさしだす。
「これはとてもおいしい」
「まだまだありますよ、ごくろうさまです、みんなと一緒に今は休みましょう」
そうリーヴスラシルの手を引いて広間まで行くと、そこにほとんどのリンカーが集まっていた。
その中心には台が置いてあり、その上に立っているのはアリソン。
彼女は切り刻んだ紙や人形、ましてやリンカーから急遽借りた物までもとに戻すというマジックをやって見せた。
「種も仕掛けも、あったりなかったり」
そう可愛く微笑むアリソンが台から降りると、代わりに上がったのはクラリスである。彼女は昼間なのに蝋燭を片手に持っていた。
なぜと問いかける暇もなくクラリスは低い声で語り出す。
「怪談ですか。実際はこのような話が伝わっております」
それはこんな内容だった。
件のコテージ周辺では時折行方不明事件が起こる。
白い服を着ている女の子ばかりが被害に奇怪な事件で、事件の前には必ず、赤い服の女が目撃されるようだ。
「そして、彼女と目を合わせたら一生追いかけられるようですよ……」
遙華の何倍も怖い話にリンカー全員が震えあがった。
「……愚神事件?」
その中で一人違う反応を返すイリス。
「いや、そういう具合ではないな……山が静かだ」
「……この話本当?」
「事前の下調べは怠りません。そう言えば澄香ちゃん、服が白いですね」
「…………」
「――別の血生臭さが染み付いているな」
「……え?」
リビングはさらに温度を下げる。
誰もが氷像のように動けなくなっていると、突然救いの声が響いた。
「炭をおこしたわよ」
* *
「ラムはとてもおいしいわ」
ここは庭先のBBQ場、そこで遙華は澄香の皿に肉を盛る。
「あたしも負けていられないな」
アルトはそうおかわりと叫ぶと、特大のジャーが開いて、雨月がご飯をよそってくれた。
「やりますね」
「ふふん、まけてられないからな」
アルトと澄香の視線がまじりあった、まるで戦場にて予想以上の手練れと会いまみえた武将のような目をしている。
「肉追加で!」
「ご飯追加で!」
「野菜も食べなさいよ、あなた達」
雨月がご飯をよそいながら言った。
「手伝ってくれてありがとう」
遙華は雨月に言う。
「たまにはね」
そう雨月はご飯を盛る、盛る。
「肉はワタシが焼いておきますので、皆様楽しんでいてくださいな」
そうオウカが新たな肉を網の上にあげていく。
「オウカー、肉ちょーだい?」
そう光太郎が皿を挿しだすも、食べきるころには網の上に焼けている物はない。
「ご自分で焼いて下さいな」
「えー!ケチー!
「ちょっとアルト。あなたお腹壊すわよ」
そう呆れぎみのアリソンである。
「あら、霧人さん。グラスがすすんでいないようだけど」
前言撤回、ロクトが霧人に絡み始めた。
「お? ジュースじゃねぇか、酒はたくさんあるぞ」
カイも絡み始める。
「いえ、僕ゲコでして。ひっく」
おやっと霧人がグラスの中身を見た時にはもうすでに遅く、そこにはブドウジュース(アルコール入り)が注がれていた。
これはグラスを間違ってしまったかな?
そう霧人は思い自分のグラスを探しているとカイが言った。
「すり替えておいたぜ」
故意であった。
「私が許可したわ」
誇らしげなロクト。
倒れる霧人。
「何やってんのよ!!」
突如響く紗希の声。
焼肉の豪勢さに加え。愁治のケーキもおいしいものだからついつい監督責任を投げ出していた紗希である。
「カイ! 釈明の余地はないわ!」
「その、炭で焼けた火ばさみを下ろしてくださいませんでしょうか」
怯えるカイの隣で霧人を介抱する遙華。
「奥さんに怒られるの私なんだからね、ロクト!!」
「あらあら、ごめんなさい」
そんなこんなで、事件があっても賑やかさを増していくBBQ。
「アルト、その容器は何よ」
そう引きつった笑みで尋ねるアリソン。
「知らないの? これはタッパーっていうのよ」
「いや、なんでタッパーがここに」
「さ、最近のタッパーは保存がきくのよ!!」
そんな光景を優雅に見守る由利菜。彼女は少し離れたところで紅茶と茶菓子で午後の一時を楽しんでいた。
「うふふ。やっぱりティータイムは至福の時間ですね」
「……肉がなくなるぞ。いいのか?」
「うう……で、でも紅茶がなくなる方が私には……」
「これも英国人の血の影響なのか……?」
そんなご飯もそこそこに全員が持ち込んだゲームやトランプで遊び始める子ども組。大人たちは別室に引っ込んで酒盛りをするようだ。
各々が最高の休日を過ごすため行動を開始する。
その後に悪夢が待ち受けるとも知らずに。
* *
草木も眠る丑三つ時……より二時間ほど前。コテージが消灯したことを確認し光太郎は行動を開始した。
「よし、準備よしだにゃ」
「此方も用意できました」
インカム越しにオウカの声も聞こえる。
「ふふふ、それでは第一回ドッキリ作戦、開始いたしましょう」
そんなクラリスの不吉な声で大参事の火ぶたは切って落とされる。
直後、夜に響く乙女の悲鳴。いち早く電気が灯ったのは男子コテージであった。
と言ってもブレーカーは落してあるので使えるのは部屋にある非常灯だけである。
「敵襲!」
なので、複数の男がパニックに陥って、右往左往する姿が影絵のように見える。窓の向こう側に。
「なんだ、今の悲鳴何が起こったんだ」
「まさか昼間の怪談の?」
「そんなバカな話があるかよ」
「ちょっと、外を見てくる」
……………………
「うわああああああああ!」
「愁治さん!」
「悲鳴!? 何かあったんですかって、……ああ! 窓に! 窓に!」
「旦那様、どうなさいましたか!? ……こ、これはどういう…!?」
「そんな! マリがあぶねぇ、マリ!」
「ちょ! 一人にしないで」
「カイさん! 一人は危険です!!」
「え? え? ぎゃああああああああ!!」
「カイさああああああああん!!」
ほくそ笑む光太郎。
「作戦成功だにゃ」
続いて女子の番である。男子部屋と違って女子は人数が多い、罠にはめるには慎重にならなければ、そう仕掛け人たちは一丸となって行動を開始する。
「アルトちゃん、アルトちゃん起きて、起きて」
女子コテージ、アイドル組の部屋にて。揺り起こされたアルトが観たのは女子達の怯えた表情。
「様子がおかしいんです、野太い悲鳴が何度も……」
澄香が言う。
そしてその後ろには同室のアリソン、そして遙華と雨月も一緒にいた。
「ねぇ、ひょっとして昼間の怪談……」
全員がクラリスの怪談を思い出す、白い服の少女を襲う、赤い服の幽霊。
「……あたしも服白なんだけど」
震えあがるアルト。
「とりあえず、御童さんと月鏡を探しに行った方がいいのでは?」
「女の子の悲鳴って、聞こえるとしたらあとはあの二人しかいないし」
ここでアリソンはみんなに見えないように舌を出す。あの悲鳴はあらかじめ録音しておいたアリソンの悲鳴だ。
「とととと、とりあえず二人の部屋へ」
アルトがおびえながらも布団をめくり、意を決したその瞬間。
「ぎゃあああああああ」
「痛い痛い痛い痛い」
「なんでそんな殴っ。ぐふぉ」
そんな悲鳴が廊下の奥から響いてきた。
「また、甲高い悲鳴が」
「でも女性にしては声が汚い、甲高いだけで男だな」
そう顔を見合わせたアルトとアリソンは弾かれるように廊下へ……すると。
そこには凄惨な光景が繰り広げられていた。
カイが、血まみれになって……倒れている。
その目の前には蒼い顔して立っている紗希。
遙華がヒッと悲鳴を上げた。
「死体だ……」
そうアリソンが脈を量って告げた、どうやらもう彼は生きて笑うことはないらしい。悲しい。
「鈍器で頭をがんっとやられてるよ」
アリソンは言った、その言葉に首をひねる澄香。
なぜなら、澄香の見せられた台本にはこんな描写なかったから。
そうだ。本来なら澄香は本来仕掛け人のはず、なのに仕掛け人が知らない大参事が目の前で巻き起こっていて。澄香は混乱の真っただ中に放り込まれる。
「ふふふ、まだ三日目じゃないですよ」
何かの間違いかも、そうカイに耳打ちするとカイはわずかに口をあけた。
「死体がしゃべった」
「それは生きているってことじゃないですか?」
「赤、あかい……」
そうカイはつぶやいて気を失ってしまった。
紗希はその発言に顔を真っ赤にして腹部にもう一発蹴りをたたきこんだ。
「これは、赤い女にやられたってことなんじゃ」
アルトがそう振り返りアリソンに同意を求めようとする、しかし彼女はどこにもいなかった。
「あれ? アリソンがいない」
その直後。廊下の向こうから響いてくるうめき声。そして。
曲がり角から突如見えたのは、ぼろ布を身に纏った怨霊のような何か。
「で、でたああああああああ」
ガールズは叫びその場を逃げ出す。
「あの扉に隠れましょう!」
そう遙華が指さした先には倉庫の扉が開け放たれていて。全員がそこに入ったことを確認してから締める。
「うわ。みんな無事だったんだね」
直後女子達の背後から声が。
「きゃあああああ!」
悲鳴を上げる遙華。恐る恐る懐中電灯で照らした先には黒猫がいた。
「あれ? クロードさん?」
イリスが歩み寄る。白猫の友達がいるので安心感でも覚えるのだろうかテシテシと叩いていると楽しそうである。
「みんな、大丈夫?」
そう声をかけてきたのは霧人。
「ああ、ここらへんはおばけが徘徊してて、追い立てられてここまで来たんだ」
(あれは台本通りなんだよなぁ)
澄香は思った。
「どうします? 朝まで待ちます?」
イリスがあたりを見渡す。ちなみにこれも台本通り。
「それは嫌です!」
紗希が言う、寒くもないのに歯をがちがち鳴らして言った。
「だったら、ねぇこっち。こっちから逃げられるかもしれないよ」
地下室に続く道を指さす。
「どうします?」
そう澄香が言うと、イリスが頷いた。
そんな二人に引っ張られる形になり、一同は地下室に向かう。
「もう地下室って時点で嫌な予感しかしないんだけど」
しかし、そこは行き止まりだった。
そして代わりに。
「まって! あれ! なに!」
そうライトで照らした先には大量の死体。死体の山があった。
「ぎゃあああああああ!」
「旦那様、落ち着いて下さい! 旦那様!!」
「いやいや、クトュルフ・フタ……」
「……かくなる上は、精神分析(物理)でございます!」
そう霧人の顔に爪を立てるクロード。
「ギャアッ!」
怯えて悲鳴も出せない遙華、雨月にしがみつく。
その姿を見て胸を痛める澄香。
(ごめんね、遙華、全部、全部ドッキリなんだ。さっきのカイさん以外全部こっちの台本通りなんだ)
そんな遙華の姿を見て思う雨月。
(死臭がしないあたり詰めが甘いわね)
その瞬間、電気が一瞬ついた。あまりの眩しさに一同の目がくらむ。
そして電気が消えて、目が慣れた時にはもう、死体はなかった。
その後完全に疲れ切った一同はとりあえず部屋に戻ることにした、幸いにして道中で幽霊らしきものは見当たらなかったが。
赤いスタッフさんが廊下を歩き去っていくのが見えたので澄香はその人にグーサインを出しておいた。
しかし、スタッフさんはノリが悪くそのまま何処かへ去ってしまう。
「わー。あの女の人も仕掛け人としていたんだね」
「え? 誰です?」
イリスが頭にハテナマークを浮かべる。
「薄い――いや、濃いのか?」
そうアイリスはフムと考え込んでしまった。
「ふむ、こういうものは気に留めないのが吉だよ。サッパリと忘れたまえ」
「えっと……危ない話?」
「さてね、私の側から離れなければ問題ない話だよ」
「……え? ほ、本物?」
*** 二日目 ***
「霊石を取りに行きます」
そんなてんやわんやの夜が明け朝のこと。いったんリンカーたちは庭に集められた。
遙華がエンジェルスビットを使ってリンカーたちに呼びかけている。
「これから霊石採取に向かいます。たくさん撮って帰りましょう」
果物狩りのような気軽さで言う遙華。洞窟へはわりとあっさりたどり着き、全員がマトックを取り出して洞窟内部に向かった。
「おお! ロマンだな」
そんなリンカーたちを置き去りにぐいぐい先に進んでいくカイ。
「ちょっと、待ちなさいよ。カイ!」
それを追う紗希である。
つられて全員が真っ暗な洞窟の中へ、ただわずかな衝撃でも霊石は光を放つらしく、歩くと地面がぼんやり明るいし、壁を叩くと発光して幻想的だった。
「アイリス、よろしく」
「まかせたまえ」
遙華がそうマトックをさしだすと、圧倒的パワーによって採掘を進めていくアイリス。
他のメンバーもそれに習う。
「スキルで壊したほうが早いんじゃないかな?」
不吉なことを言い出すアリソン。
「天井が崩れてくるのは目に見えてるねぇ……。ダイナミックに自殺したいなら止めないけど」
そうジョーカーが言ったその時である。
洞窟全体が震え、耳を抑えたくなるほどの轟音が洞窟内に響いたのである。
「ええええ!」
アルトは真っ青になって叫んだ。
「私たちがじゃないよ!」
アリソンは必死に首をふる。
見れば二人がやってきた道は見事なまでに塞がれていたのだった。
「いや、知ってるけど、閉じ込められた!!」
アルトが叫ぶ。
「これこそスキルで……」
「生き埋めになっても本当に知らないぞ」
ジョーカーは言う。
「結構脆いみたいだな」
その時である、落盤の影響で光り輝いていた霊石の光がだんだん薄れそして。
世界は闇に閉ざされた。
「暗いのは……へ、平気にき……決まってるじゃない!!」
「おお、よしよし、私がいるから平気だよ」
そうアルトへ飴玉を上げるアリソン。
「いちゅやしゅけぇぎゃきゅるにゅおきゃしぃりゃねー(いつ助けがくるのかしらねー)」
「口から物出してしゃべってよ!」
ちなみに二人は小さな洞窟の小部屋に閉じ込められてしまったが、その隣では澄香と遙華と雨月が由利菜と一緒に閉じ込められてしまっていた。
「しまったわ、どこにも脱出できる経路がない」
「ら、ラシル。怖い……」
そう由利菜はリーヴスラシルにしがみついて震えている。
むしろ幽霊より暗闇が怖いのだろう。昨日とは打って変わって臆病な姿を見せている。
「私の側を離れるな。契約した頃みたいに発作を起こされたら、かなわないからな」
「は、はい。ラシルの腕の中って暖かいです……」
「意外ね、幽霊はそんなに怖がっていなかったようだけど……」
雨月が尋ねる。
「地元にいた頃、私の両親はしばしばお仕事で家を空けて……」
由利菜は語る、自分の過去を。
「一人で過ごす夜は心細かった。今でさえ、それを完全に克服できてはいません」
「その気持ちはわかるわ」
そう遙華は同意した。
「私も、両親なんて家にいなかったわ……。怖い時誰も隣になんていてくれなかった」
「やめるんだ、遙華」
「なんで? 澄香?」
「ラブロマンスの香りがする……」
「ん? それはどういうこと?」
首をひねる遙華である。しばらくその言葉の意味を考えていたが、すぐにそれどころではなくなった。
突如洞窟の霊石が輝き始めたのだ、そして振動する室内。
「何が起こっているのです?」
次の瞬間、細く、硬く、長いものが洞窟の壁を穿ったそれは。
アイリスのマトックであった。
「見つけた、これであとは御堂さんたちだけですね」
「え。あの人たちもいないの?」
そんな噂の御堂さんたちはというと。
「あれ? カイは? さっきまで居たのに。もー、また勝手にどっか行っちゃった! 単独行動はしないでってあれほど言ったのに!」
そう紗希ははぐれたカイを追って洞窟に入って行っていた。
最初の数分は探検気分で楽しかったのだが、すぐに自分が帰り道を記憶していないことに気が付いて焦った。
「しまった、戻れない……」
涙目になる紗希。
「もぉ、探しに来て損したわ」
そう座り込んで大きめの声で叫んでみるも、自分のこだまする声が聞こえるだけ。
「誰か助けて」
そう小さくつぶやいても、いつも軽口で応じてくれる相棒はいない。
「カイ、お願い、そばにいてよ」
そう紗希がつぶやいた瞬間
「お。マリの声が聞こえる」
のそりと、大柄な黒い影がすぐ目の前に姿を現した。
「きゃあああああ! くまあああああ!」
「ごぽぉ」
見事なダッシュストレートであった、加速度、角度、インパクト、全てがそろったボクサーも真っ青な一撃、それがカイの腹部を貫いた。
「ええ、カイ!」
「おお、このパンチはマリ……。無事だったのか」
がくり、そう意識を失うカイ。
「そんな、ちょっと意識を失うなら私をここから出してからにしてよ」
そんな人使いの荒いお姫様の願いは別の形でかなえられる。
「こんなところにいたんですか?」
壁をマトックが突き崩し、アイリスとイリスが現れた。
地獄に仏、ならぬ、地獄に天使である。
その後一行は霊石を抱えてコテージに戻り、温泉を浴びると一日の疲れを癒したのだった。
*** 三日目 ***
そして三日目。アルトを含め、澄香や遙華が目の下にくまを作って、やや遅い時間にリビングに登場した。
「昨日変な赤い服を着た女の人が……」
澄香は思い出す、昨日の恐怖を。
ふと悪寒がして夢から覚めると、自分を見下ろす女性が……。
「そんなのいた?」
アリソンは穏やかに珈琲を嗜みながらそんなことを聞いてきた。
「いたわ! きっと雨月も見ているはずよ、私も見た」
遙華が猛抗議をしつつ雨月を探すが、彼女はどこにもいない。
それもそのはず雨月は朝の散歩に出かけていた、優雅に朝露の煌きを観察している。
「ふう、いろいろあったけど、なんだかんだ言って羽は伸ばせたわね。さて。戻りましょうか」
その直後である、コテージから鋭い女性の悲鳴が響く。
「絹を裂くような乙女の悲鳴が……何回目よ」
しばらく考えたのち、しばらくここにいようと思う雨月であった。
そしてコテージ内部では。
「そ、そんな!!」
全員が悲鳴を聞きつけ駆けつけると。物置のど真ん中にロクトが倒れている、その隣に由利菜が体から血をしたたらせて倒れていた。
「そんな……。ロクトさんがどうして」
霧人がおびえた表情で半歩下がる。
「旦那様下がって! ここは危険です私がお護り致します」
「うかつでした、ロクトさんの悲鳴を聞き駆けつけると後ろから……」
その時由利菜が蠢いた。安堵の表情を浮かべるリーヴスラシル。
「……ユリナ、まだ癒えない傷を狙われたのか!?」
「え、ええ……油断していました」
「犯人は一体誰なんだ」
「幽霊?」
「そんなばかな!」
「みなさん、あまり離れないで、一塊になった方が」
パニックに陥った人間たちが思い思いの言葉を口にする、ここにきてパニック状態。まとまりがない集団と化してしまったこのコテージ内に、鶴の一声が響き渡る。
「これは、殺人事件ね」
アリソンが言う。胸を張って不敵に笑った。
「私の灰色の脳細胞が告げてるわ。これは密室! つまりロクトさんはロクトさんしかいない部屋で一人で殺されてしまったのよ!」
「加害者は0なんて、お涙頂戴の臭い小説でもない展開だねぇ……そんなわけないって誰かツッコんでやってくれないかな?」
ジョーカーが苦笑いを浮かべた。その時である。
「うわあああああああ!」
「今度は誰だ!」
「この無駄に黄色いけど野太い絶叫はカイさんだ!」
澄香が駆けていく、その後ろにイリスやらいろんな人が続いた。
「ああ、みんなバラバラに動いたら」
そして一行がキッチンに到着すると、そこには紗希がいた。
震えながら、頭からだくだくと血を流すカイを抱きかかえている。
「カイ……」
「そんな! 死んでる!」
「これは連続殺人ね、二人が殺された時間にアリバイのなかった人間は!」
アリソンが推理を始めた。凶器がどうのこうの。動機がどうのこうの、アリバイがどうのこうの。
だがそんな言葉澄香の耳に入っていない。そんなことはどうでもよかった、それより目の前に広がる光景が問題だ。
(あれ、こんなこと台本に、というより前もおんなじことが……)
そしてイリスも思う。
(ちょっとやりすぎだったかも?)
「あ、澄香さん、澄香さん。そろそろ次の死体が出るころだよ」
「うん、わかった! え? 次の死体?」
小走りでその場を後にすイリス、それをよくわからないで追いかける澄香。それを見ているアイリス。
クラリスが微笑んだ。
そしてイリスと澄香はコテージをぐるっと一週すると首をひねりながら帰ってくる。死体なんてどこにもない。台本と違う。
そしてリビングに戻ってみれば、その中心でオウカが全員のアリバイを聞き出していた。
「犯行可能なものが誰かあぶりだします」
その事情聴取をアルトが受けていた。
「あたしはずっとアリソンといた」
そうアルトはリビングを見渡す。
「あ、あたしにはアリバイがあるわ!! ほら友達と一緒に……?」
その視線の先にはアリソン、確かに彼女が存在しているが何やらおかしい、青ざめた顔でソファーの上に横たわってる。ピクリとも動かない。
そんなアリソンの脈をクラリスがはかる。
「お亡くなりです」
「えええええ!」
絶句するアルト。
そしてアルトは眠るように死んでいるアリソンへ歩み寄る。ソファーには赤い文字が。
「まさか、犯人の正体を知って殺された?」
そしてアルトは文字を読み上げる。
「『わかりませんでした』ちょおおお無駄死に……、そしてあたしのアリバイが」
崩れ落ちるアルト。
「嘘でしょ! 実は生きてるのよね!」
「だめです!」
割って入るオウカ、アルトの手を掴んで止めた。
「死体を無闇に触ってはダメです、皆様を疑う訳ではありませんが、一応……で御座います」
「え! なんで」
「一応です!」
「あ、澄香ちゃんたちが帰ってきましたよ、今までどこに?」
そうクラリスに指さされる澄香とイリスはびくっと背筋を跳ねさせる。
「え、えっと……トイレに」
「澄香ちゃんたち、貴女達だけが、アリバイが無いのです。……まさか」
オウカがそれに同意した。
「わかりました蔵李さんたちが犯人です。ロクトさんを撲殺。返す刃でカイさんを撲殺、アリソンさんは毒殺。全て辻褄が合います」
「ええ! 毒殺って、その血文字は一体」
「気にしなくていいのです!」
クラリスが高らかに言い放つ、そしてじりじりと二人ににじり寄り始めた。
「どういうこと!!」
「澄香さん何かおかしいです!」
「うん、こんなの台本になかった、私達仕掛け人なのに」
「捕えてください!」
その号令に触発されたリンカーたちはわけもわからず澄香とイリスに群がる、しかし二人はそれを華麗に回避、扉を閉めて廊下を走る。
「どどど、どうします?」
「とりあえず私は、死ぬ!」
「え? ああ、そう言うことですか」
「イリスちゃんは?」
「な、流れが怪しいし……発起人のロクトさんに話の流れをどう修正するか確認しなきゃ……っ」
二人は頷いて別れると、澄香は自分の部屋に戻った、クローゼットに隠してあったバケツに入った血のりを見つめると意を決したように頷いて。それを頭からかぶる。
「私は死人、私は死人」
そのままクローゼットに隠れた。一方イリスは。
「ロクトさん! っていない」
ロクトは血痕ごときれいさっぱり消えうせている。これは一体どうしたことだろう。そうあたりを見渡していると。
「来た! 証拠隠滅だな」
天井に張り付いていた光太郎が上から降ってきてイリスを取り押さえた。
「違います、ボクは犯人じゃなくて仕掛け人で」
「何をしているの?」
その時である、場違いなほど冷静な声がフロアに響く、見れば雨月が扉を開けて立っていた。
「こいつ殺人犯で」
「違います?」
「何か事件があったの? あら、だったら警察に連絡しないとね」
そう雨月は踵を返すとリビングの受話器を取った。そしてダイヤルを回そうとした瞬間。
「潮時ね」
電話線を引っこ抜くロクト。
そして事情説明を開始した。
エピローグ
結果的にすべてが仕掛け人のいたずら、番組であったことを説明され、一部の人間は魂が燃え尽きたようにその場に蹲った。
さめざめと涙を流す澄香。
そんな澄香の手を取ってアルトは言う。
「今回は災難だったな、けど楽しかった。また一緒に撮影に参加したいわ」
そんなアルトの手を取って澄香は言う。
「だったら、ぜひモノプロへ」
こうして、今回の一騒動の幕が下りた。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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