本部

【神月】連動シナリオ

【神月】王の帰還

電気石八生

形態
イベント
難易度
やや難しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
24人 / 0~25人
報酬
普通
相談期間
6日
完成日
2016/08/05 18:21

掲示板

オープニング

●王道
 バグダードの都を不死の軍勢が行く。
「我が成すものは侵略であり、奪回である」
 両眼に鈍い光を揺らめかせ、アルタシャタは低く言葉を紡いだ。
 4頭のミイラ馬が引く黄金の戦車に仁王立ち、獅子のたてがみがごとき亜麻色の髪より火の粉を散らす。死せる兵どもに心があるものかは知れないが、彼奴らを付き従えて進むアルタシャタの威風堂々たる立ち姿は、まさに大王と呼ぶにふさわしいものであった。
「其が汝(なれ)の思いならばよし。が――」
 アルタシャタの墓、その黄金を器として受肉した愚神は金糸のまつ毛をまたたかせ、傍らに立つ王の横顔を見上げて重いため息をついた。
「妾に見ゆるは戯れにかきたてられし消し炭の妄執よ」
 金の愚神は、封じられていたその身を愚神卿のはからいによって放たれた。
 ゆえに愚神卿には義理があり、だからこそ巣窟――文字どおりの巣であり、洞窟だ――からこの砂の地まで出張ってきたのではあるが……。
「アンラ・マンユ(創造神)の御使いよ。お与えいただいた加護に感謝する」
 死者の軍勢に鉱石の守りを与えたのは金の愚神だった。
 先の砂嵐中での戦いに敗れた彼女は、すぐに巣窟へ帰還する心づもりであった。しかし、異質なライヴスの乱れと爆発を感じ取り、そのライヴスの発生源をたどることで、愚神卿、そして邪英として復活したアルタシャタへ行き着くこととなった。
『せっかくだから、彼の兵の体を補強してあげてくれないか? 彼らは二度と死なない代わり、生者よりももろいからね』
 かくして死者は鉱石の支えを得て再び立ち上がったのだ。
「本隊はこのまま進路を保て。各支隊は手はずに従い展開せよ。ひと息に敵の砦を落とし、次なる攻勢の足がかりを作るのだ。――我が帝国を、名を、ここに取り戻す!!」
 アルタシャタが兵に指示を飛ばし、兵は速やかに展開を開始した。
 戦車から跳び降りた金の愚神は、乾いた肉と骨とが巻き起こす黴臭い風を避け、戦場を後にする。
 死せる者は地に還る。その規約を破って蘇ったアルタシャタの行く末に興味はなかったし、規約を軽んじて奔放に振る舞う愚神卿と、これ以上つきあうつもりもなかった。
 が。彼女は一度だけ王を顧みる。
「王は愚神卿の言の葉に惑わされ、我を失くした。その言の葉の毒が祓われるならば……王はまことに蘇り、此度こそ死せる者の規約に殉じることとなろうよ」

●作戦
 バグダード近くに置かれたHOPE出張支援支部。
 発電機の音がかしましく響く大型テントの内に、作戦に参加するエージェントたちが詰め込まれている。
「アルタシャタはバグダードをドロップゾーンに換えてる。そのせいで町並みが古代ペルシア風に変わってるね。そのせいかわかんないけど、携帯も通信機もつながんない。連絡とるなら手を考えないといけないね」
 この作戦のオペレーターを務める礼元堂深澪(az0016)がプロジェクターを操作し、石と土レンガの町並を写し出した。
「ビルとか建物は石と土レンガになってるだけだから問題ないけど、道路がね。乾いた土が剥き出しで土埃がたつの。奇襲とか潜伏移動がしづらいから、特にシャドウルーカーのみんなは注意だよ」
 深澪は作戦卓の上に衛星写真を並べ。
「今、アルタシャタ軍は3隊に分かれてバグダード支部へ進軍中。で、これが本隊」
 中心を行くアルタシャタを40体の重装兵が固く守り、20体の軽騎兵が後方より弓で支援する本隊は、HOPEバグダード支部へまっすぐと伸びる大通りを進んでいる。
 背の高い建物がないこの大通りは、なんらかの策を講じない限りは正面からぶつかるしかない地形だ。
「怖いのは後ろの軽騎兵。弓もイヤだけど、チャージ攻撃が厄介だね。重装兵より先に仕末できると安心なんだけど……」
 深澪はアルタシャタの傍らを行く重装兵をピックアップ。
「こいつらが運んでるのは破城槌。支部が大通りの途中に造ったバリケードの破壊用だけど、後で説明する大型武器の破壊もできるみたいだから憶えといて」
 写真が右翼――30体の軽騎兵に10体の工兵を交えた高機動部隊へ切り替わった。
「右翼は道幅が広くて展開しやすい繁華街に回り込んでる。地形的にでっぱりとか曲がり角とかがないから、進撃スピードが早い。ここにはバリケードがないから、早めに邪魔したいね。スキルで馬がこかせると楽かな。ただ、こいつらは軽いけど勢いがあるから、1体1だと吹っ飛ばされちゃうかも。罠しかけるならふたり以上で組んで」
 と、写真が工兵に切り替わり。
「気をつけたいのは工兵だね。馬の後ろに乗ってて、いつどうやって自爆してくるかわかんないから。連携は大事だけど、密集はダメだよ」
 最後に写し出されたのは左翼――砂猫の皮をまとった獣型従魔20体と、その後ろに続く工兵20体だ。
「戦闘力は3隊中最弱なんだけど、大通りから1本外れた路地が入り組んだ居住区をゆっくり進んでる。奇襲と待ち伏せ、かけてくるだろうね。それと、居住区にフタをしてるバリケードが爆破されると、敵本隊がそこから支部に向かっちゃうから気をつけて」
 深澪が話を整理する。
「大通りと居住区のバリケードを死守すること、右翼の急襲を止めること。これができないと支部が大ピンチになるから、各担当は忘れないで」
 続けて深澪は卓の上に1枚の図を広げた。
「バグダード支部に試作型LpC(据え付け型の大型AGW。射程10~15。複数の敵への攻撃、破城槌の破壊が可能。必要操作人数2名)が3基あるの。威力は高いんだけど、プラズマの収束率が悪くて効果が出せる範囲が狭い。据え付け型だから移動もできないし。何基使うか、どこに据え付けるか、使わずに戦うか、みんなの判断に任せる」
 深澪がプロジェクターの電源を落とす。
「最後は右翼と左翼に向かったみんなも中央に集合、全員でアルタシャタと決戦になるって覚悟決めといて。大通りのバリケードは支部のエージェント10人で守ってるから、決戦になったら敵を引きつけて挟撃も手だね。それまでにどれだけ敵の数が減らせるかが問題だけど」
 深澪はエージェントたちへ力を込めた眼を向けた。
「質問があれば質問卓に書き置きしてね。誰も死なない、誰も死なせない。それが会長の命令だから……みんなで勝って、みんなで帰る。約束だよ。約束だからね!」

解説

●依頼
 敵3部隊を壊滅させてバグダード支部を守り、アルタシャタを撃破する。

●状況と作戦、敵軍の展開
 オープニング参照。

●タグ
【右】=繁華街で右翼にあたる。
【左】=居住区で左翼にあたる。
【中】=大通りで本隊にあたる。

●ミーレス級従魔データ
1.灰の重装兵
・鉛の仮面をつけたミイラ兵。
・大盾に、戦槌や片手斧、パイク装備。物理防御力が高い
・特殊能力《パイク拘束》は、パイクに装備された鉤を敵に引っかけて拘束する。複数体に連動されると厄介。

2.黄の軽騎兵
・石黄の仮面をつけたスケルトン兵。
・長槍、短弓で武装。移動力は高いが重量が軽い。
・特殊能力の《チャージ》は横列を組んでの突撃。
・《パルティアンショット》は馬上で自在に弓を操る技。

3.橙の工兵
・風信子石の仮面をつけたゾンビ兵。
・武装は短剣に投石機と軽装。
・ライヴスを込めた魔法の符を罠として設置し、触れた者を爆炎で攻撃する。
・体内に溜めたガスに点火し、自爆攻撃をしかける。

4.紫の獣(砂猫)
・菫泥石の塊に砂猫の皮を着せた従魔。
・前脚による打撃(物理単体攻撃)と牙による噛みつき攻撃(魔法単体攻撃)を行う。
・潜伏と奇襲に長け、斥候も務める。

●アルタシャタ(トリブヌス級邪英)
・愚神卿によって蘇った古代の王。
・帝国の再建と「ダレイオス」の名の奪回に取り憑かれている。
・高い攻防の力を持つが、比較的物理防御力は低め。
・《炎溜》はマグマを呼び出し、3×3スクエアを攻撃したうえで地形をマグマ溜まりに変える力。
・《夜襲》は4ラウンド消費して任意の場所に複数体の従魔を転移、奇襲させる力。
・《剣舞》は最大10人の敵を同時攻撃する物理攻撃(射程1~2)。
・パッシブスキル《誇示》は、生命力が0になってもアルシャルタを行動させ続ける。彼を倒すには、彼を妄執から解き放つ「エージェントの心が込められた言葉(内容不問)」が必要。

リプレイ

●嵐の前
 死者の軍勢が粛々と迫り来る。
「……行きましょう、ネイク」
 HOPEバグダード支部へと続く大通りのただ中に立つ努々 キミカ(aa0002)が契約英雄ネイク・ベイオウーフ(aa0002hero001)を促した。
「ああ、そうだな」
 応えはいつになく短く、鋭い。
 そしてリンクしたキミカとともに進み出る大宮 朝霞(aa0476)。
「ウラワンダーvsペルシア王。歴史に残る戦いになるわね!」
『ペルシア王?』
 内から尋ねたニクノイーサ(aa0476hero001)へ、なぜか朝霞は胸を反らし。
「アルタシャタって、古代アケメネス朝ペルシア最後の王、ダレイオス3世の幼名なんだって。歴史の授業で教わったの」
『教わっただけか。……しかし、相手にとって不足はない』
 こちらに気づき、進軍を止めたアルタシャタ軍の前に進み出たArcard Flawless(aa1024)が高く告げ。
「聞け、兵どもよ! 我が名は希望王Arcard! 此度の戦、生者を代表して見参した!」
『シャー!』
 内のIria Hunter(aa1024hero001)が威嚇を添える。
 対して、死者の軍の最奥に陣取るアルタシャタは低く。
「かかれ」
 応酬もないまま、戦いが幕を開けた。
「ヴァル、任せるぜ」
『狙い撃ちますわ!』
 赤城 龍哉(aa0090)から体のコントロールを預かったヴァルトラウテ(aa0090hero001)が九陽神弓を引き絞り、放った。
 土レンガ製の急造バリケードに身を潜めた百目木 亮(aa1195)がフリーガーファウストG3を構え。
「通ってくれよ」
『祈る前に狙うのじゃ。天運とは技を尽くし、力を尽くした後に与えられるものよ』
 内のブラックウィンド 黎焔(aa1195hero001)の言葉に口の端を歪め、亮は機械化された右目をズーム。狙い澄まして引き金を引き絞った。
「増援が来るまで支えきれば勝つわ。まずは防衛線へ接近される前に敵を減らす」
 亮のとなりに潜み、雷上動から雷を撃つ橘 由香里(aa1855)。
『両翼の味方が勝つとは限らんぞ?』
 飯綱比売命(aa1855hero001)の問いに、由香里は薄い笑みを返した。
「かならず来るわ。少なくとも右翼はね。――黒金くんがいるもの」
『威風堂々と撃てぇ! キミカ、おぬしにはこの英雄の中の英雄たる我がついておる! ガイコツの矢はことごとくおぬしを避け、ミイラの槍はみな逸れてゆこう!』
「そして、我が弾は必中なり!」
 ネイクの軽口に乗り、キミカがスナイパーライフルを撃つ。
 アルタシャタはなにも言わず、ただ上を指した。
 重装兵の最前列が前、他の兵は上へと大盾を押し出し、矢弾を受け止めた。そして。
 後方に控えていた軽騎兵が左右から前進。一斉に矢を天へと放ち。
 エージェントたちへ、矢の雨が降りそそいだ。
 さらにアルタシャタが前を指すと、大盾を構えた重装兵の一団が横列を組み、騎兵を覆うようにして前進を開始した。
「アレクサンダーの次がダレイオスとはな。わざわざ死人を起こして騒ぎたてるとは、はた迷惑な奴らだ」
 リィェン・ユー(aa0208)は屠剣「神斬」、別名“極”を肩にかつぎ、前へ。
『じゃな。が、古代の王と剣を交えられる機を得られたのじゃ。得をしたものよ』
 喉の奥で笑いを揺らめかせるイン・シェン(aa0208hero001)。
「正面からのぶつかり合いなら!」
 魔法少女が持っていそうなファンシーさの、しかし妙に巨大なステッキ、レインメイカーを構えた朝霞が横に並ぶ。
『俺たちは数で大きく劣る。出せるだけの気合とやらを出さなければならんだろうな』
 苦々しい声で言うニクノイーサだが、朝霞はぱあっと顔を輝かせ。
「聖霊紫帝闘士ウラワンダー! 愛と気合で突貫です!!」
 白とピンクのステッキを、重装兵の盾壁へ思いきり打ちつけた。
「玉砕だけは勘弁してくれよ」
 揺らいだ壁の隙間へ“極”を差し込んでこじ開け、リィェンは兵の体へ重い刃を突き立てた。
「っし。オレらも行くぜ、ルゥ!!」
『猪突猛進は……なし、ね』
「おうッ!」
 Le..(aa0203hero001)の言葉にしっかりうなずいた東海林聖(aa0203)が、まっすぐとリィェンの作った隙間へ駆けた。
 隙間を埋めるべく前進した後列の重装兵が、まわりの兵とともにパイクを突き出し、聖を迎え討つが。
「……覚悟してんだよ。アタッカーは、ダテじゃねェ!!」
 聖はパイクの柄を大剣の腹で流し、袈裟斬りでクロスカウンター。さらに刃をななめへ跳ね上げ、燕返しを決めた。
「アルタシャタとか言ったな! テメェ、黄泉帰らせてもらってここにいるだけじゃねェか! 今、送り還してやるッ!」
「ふはははは!」
 大上段から屠剣「神斬」を振り下ろして重装兵を打ち据える火乃元 篝(aa0437)。その内でディオ=カマル(aa0437hero001)が騒ぐ。
『主! 敵が捕らえに来ておりますぞぉ!』
 篝の攻撃終了を狙い、その体を絡め取ろうと迫るパイク。
 彼女はそれをうるさげに見やってひと言。
「がまんする!」
『いやいやいやいや! 意地を張っている場合ではぁ!!』
 と。パイクを突き出した重装兵が弾け飛んだ。
『障害の排除を確認。60mm弾、リロード』
 ストレイドに16式60mm携行型速射砲に再装填を任せ、焦一郎はスナイパーゴーグルごしに目線を戦場に巡らせた。
「第一目標は篝様を害する者。第二目標は騎兵」
『優先順位確認』
 ストレイド(aa0212hero001)の報告音声を聞きながら、灰堂 焦一郎(aa0212)は細くつぶやいた。
「篝様の敵を、撃ちます」
 しかし。一度は共に蘇りし同僚が二度と立ち上がらぬ骸に戻されても。兵士どもは動じることも嘆くこともなく、淡々とその骸を踏みにじり、戦列を修復する。おそらくは互いを見てはいないのだろう。それどころか敵も、自身すらも。
「……志はおろか心すらも持たぬ、動くばかりの人形か。貴様らに問うべきものはない」
 先頭に立ち、不動明王の影をコンセプトに改良を加えた無形の影刃<<レプリカ>>を振るい続けるArcardが吐き捨て、そして。
「アルタシャタに問う!!」
 戦場が動きを止めた。
「聞こう」
 アルタシャタがかすかに首を傾げ、続く言葉を待ち受ける。
「王たる者の才とはなにか!?」
 燃えたつArcardの視線が、まっすぐにアルタシャタの眼を射た。
 アルタシャタは真っ向からこれを受け止め、答えた。
「我が戦に見よ」
『王道……。影に潜み、復讐の刃を突き立てるだけのワタシには理解できないわね』
 そのやりとりの間に潜伏した迫間 央(aa1445)の内、マイヤ サーア(aa1445hero001)がため息をついた。
『為政者は剣と政治で民に尽くし、民は金と営みで為政者を養う。それで国は保たれるんだ。結局、王と民衆は同格なんだよ』
 内なる声で央が応えた。このあたり、地方公務員として働く彼としては思うところがあるのだろう。
『保つべき国はもう消えてしまった。尽くすべき民もみな死人……いったいアルタシャタはなんのために戦うのかしら』
 土埃をたてないようミリ単位での移動を続けながら、央は寂しげに目を細める。
『二度と取り戻せないはずのものを取り戻したくて、だろうな』
 マイヤが押し黙る。
 ――ちがうのね。失くしてしまったことを悔やむばかりのワタシとは。

 軽騎兵の一隊が回り込んだ繁華街。
 ミイラ馬がカロカロと乾いた足音を響かせ、全速力で支部を目ざす。
『見ろ、スズ。眼前にあるのは……死だ。死をもたらす災厄だ』
 煤原 燃衣(aa2271)の契約英雄ネイ=カースド(aa2271hero001)が、彼の内でつぶやいた。
 燃衣は頬に浮かぶ鱗から激情の焔を散らし、しかし淡々と。
「ふざけるな……王の軍勢が守るべき民草を踏みにじり、滅ぼそうというのか……。ボクは……【暁】は認めないッ」
 前を見据えたまま、燃衣が言い放った。
「訓示ッ!」
 その傍らに同じ【暁】の名の下に集いし繰耶 一(aa2162)が並び。
「されば立ち上がって」
 内のサイサール(aa2162hero001)が。
『行動せよ』
 ふたりをかばうように立つ黒金 蛍丸(aa2951)も続き。
「如何なる運命にも」
 内の詩乃(aa2951hero001)が締めくくる。
『勇気をもって』
 その言葉に、古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001)とリンクした防人 正護(aa2336)が薄い笑みを投げて。
「俺も元メンバーだったんだ。【暁】がするだろうことはわかる。……どうしてほしいのかもな」
 正面と左右の3方向へ散る【暁】に先行し、工兵の挙動を探る正護。
「魔法符は俺に任せろ。おまえらの歩みを――【暁】の輝きを鈍らせはしない」
 通りの陰に身を潜めたギシャ(aa3141)は、色すらも消し去った瞳でスケルトンの騎兵を見やり、静かに言葉を紡ぐ。
「蘇りし死者たちに正しい死を」
『亡霊をあるべき過去へ送り返してやれ』
 内で言うどらごん(aa3141hero001)へ答える代わり、ギシャは白銀の竜爪“しろ”を装着した手を開いた。
 握りしめてしまえば迅さが損なわれる。握るのは最後――死者を突き動かす魂の残り火へ爪を差し込み、割り砕く。そのときだけでいい。
『天使の世界に帰ってもらうよー』
 ギシャとは逆に内で拳を握りしめる百薬(aa0843hero001)に、同じ内なる声で言い返したのは餅 望月(aa0843)だ。
『おお、百薬が天使っぽいこと言ってる! ……意味わかんないけど』
『なんで!? すごいわかりやすいお悔やみだよ? いや――送る言葉?』
『中学校の先生か!』
 そんな餅とともに、繁華街の際に据え付けた試作型LpCの発射準備を進める鹿島 和馬(aa3414)が苦い顔を左右に振った。
「突っ込んでくる騎兵とか大迫力だねぇ……根がパンピーな俺にゃちと厳しいもんがあんですけど」
 その内で俺氏(aa3414hero001)が白装束の裾を無意味にはためかせ。
『それでもやらないとね。男の子の意地と、守りたいものがあるんでしょ?』
 和馬は「ま、そういうこったな」とあえて軽い口調で返し、餅と呼吸を合わせてLpCの発射スイッチを押した。
 色のないプラズマが20メートル先で収縮して白光と化し、先頭の4騎を蒸発させた。
「よっしゃあああああっととっ!!」
 撃ち終えた途端、壊れる勢いで激しく振動するLpC。
「和馬君そっち押さえてくださいあっち~っ!」
「そっちであっちでどっちだよーっ!?」

 複雑に小路が入り組む居住区では、見えない敵との探り合いが展開していた。
「ボクとネコの斥候対決――負けらんないね」
 チョコバーをくわえた唇をもごもご。今宮 真琴(aa0573)がフェイルノートに矢をつがえたまま、慎重に進路を探る。
『見敵必殺じゃな。と……敵はどこにおるものか』
 真琴の内から奈良 ハル(aa0573hero001)が言い。
「真琴ちゃん、背中は任せてな!」
 真琴の後ろに続く虎噛 千颯(aa0123)がニカっと笑い。
『うむ。四方八方、もれなく千颯が盾になるゆえご安心をでござる』
 白虎丸(aa0123hero001)が勝手に請け負った。
「いや、俺ちゃんと白虎丸、死なば諸共だぜ……?」
『たとえそうであろうとも!』
 なにやら決意を固める白虎丸。
 その後ろから飛んできた花火が、先頭のふたりを追い越してその先の角に落ち、ささやかな音をあげて爆ぜた。
「そこの角までは確保、ということでいいだろうかね」
 先頭からある程度の距離をとって進む鶏冠井 玉子(aa0798)が息をつく。
「この戦い、まるでモチベーションが揚がらない――上がらないね。ミイラ! スケルトン! ゾンビ! まるで食べられるものがないじゃないか」
 食にすべてを賭ける彼女の内、オーロックス(aa0798hero001)が「まぁまぁ」という顔をしてみせた。猛烈に無口な彼は、代わりに鍛え抜かれた表情筋を駆使して意思を伝達するのだ。実にまわりくどい。
「焦らず急いで敵を殲滅だ! 帰りに羊肉の串焼きを出すあの店へ寄るために」
 意気あげる玉子に、やれやれだぜ。と、かぶりを振るオーロックスであった。
 進む3組の後方、居住区の際に設置されたバリケードを意識した位置取りで攻防に備える水瀬 雨月(aa0801)と土御門 晴明(aa3499)、天狼(aa3499hero001)組。
「LpCを使う手もあったんだがなァ」
 後ろを気にしつつ、晴明がぽつり。リンク中はほぼ眠っている天狼が、今日に限っては起きていて、内から言葉を返してきた。
『こんなにくねくねした道でえるぴーしーは使いづらいんじゃないかな』
「まあな。……敵同士、合流だけはさせたくねェ」
 そんなふたりに、雨月は静かに言葉をかけた。
「バリケードを守りきれば私たちの勝ちよ。だから、進撃よりも迎撃を」
 バリケード付近には木霊・C・リュカ(aa0068)、オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)組と紫 征四郎(aa0076)、ガルー・A・A(aa0076hero001)組がキーパー役として貼りついていた。
『まずは守りきるところから、かな』
 雨月と同じリュカの言葉を受け、征四郎の内からガルーがぼやいた。
『今か今かって気ぃ張ってなきゃなんねぇのが辛いとこだけどな』
「なんでも突っ込んでいけばいいってもんじゃないだろ」
 そっけない声で切り捨てるオリヴィエ。
『なんだよ? びびってんのか?』
「そんなんじゃない。ガルーが勝手に突っ走って、俺に――俺と征四郎に! 面倒、かけるんじゃないかって」
 なぜか一度詰まるオリヴィエ。かすかな動揺も赤みも、頬の小麦色に紛れて見えはしなかったが……。
 理由を追及しようとするガルーだったが、征四郎がやんわりとこれを止め、ライヴスゴーグルをつけた目で辺りを探る。
「今は力を溜めるときですよ。おそらくはこの戦い、持久戦になるでしょうから……。問題は最後に立っているのが私たちなのか、従魔たちなのか、です」

●嵐
「チャージ!? ショット!? どっちですかー!?」
 繁華街。LpCの砲口をあわただしく振りまわし、餅が目をぐるぐるさせる。
 脳など残っていないはずなのに、軽騎兵どもは横列を組んでチャージ――と見せかけて散開、駆け抜けざまにパルティアンショット。かと思えばそのままチャージと、騎兵の特性を最大限に生かした攻撃をしかけていた。
「熱っ! あっちいからやめっ!」
 撃つたびに――どころか、チャージ中にも怪しく震えて跳ねまわる砲身を抱えて固定する和馬が叫ぶ。
『このぬくもり、ははじかにだっこされてるみたいでげきあつ』
 虚ろな声で、俺氏。
 この試作型、回路的にかなり無理があるらしく、砲身の加熱が止まらない。
「……解除完了」
 一方、ところどころに工兵がしかけていく魔法符の罠を発見、解除し終えた正護が一を招く。
「行けるか?」
 騎兵の足を止めるために掘った溝を塹壕代わりにして潜んでいた一が、匍匐前進で正護の傍らに来る。
「問題ない」
 フリーガーファウストG3を構えた一の内で、サイサールがふと口を開いた。
『不本意ですが……私は少しだけ彼に共感しています』
 ためらいながら、それでも彼は言葉を継ぐ。
『失ったものを取り戻したい。王も私も、同じ思いを抱いている。私は……彼の王とまみえることで、なにかを得られるような気がするのです』
 一は黒い影に覆われた頬をかすかに歪めた。サイサールの焦燥を誰よりも理解しているがゆえに、だからこそ、言葉を返せない。
 そしてトリオを発動。後方から攻めかかってこようとした騎兵群、その馬脚を吹き飛ばした。
 もんどりうって倒れ込む騎兵。そこから飛ばされてきた工兵を燃衣が打ち返そうとしたが――しがみつかれた。
 と。咄嗟に飛び込んできた蛍丸が、ライオットシールドと自身の体で燃衣を包み込み、自爆から燃衣をかばった。
「行きますよ」
 爆風を割って立ち上がった燃衣は、自らを守った蛍丸を一瞥すらせずに配置へついた。
「はい」
 蛍丸は短く応え、通りの中央へ戻る。
 一は次の獲物に狙いをつけ、引き金を引くばかりである。
【暁】の信はそれぞれの心に在る。その絆あればこそ、各員は己を成すべきことを成す道具にできる。その果てに【暁】が勝利すれば、それでいい。
 ……奥へと駆け抜けてきた騎兵が、唐突に馬から落ちた。
『馬は止められずとも、上に乗っているガイコツを落とすだけなら難しくはなかろうさ』
 女郎蜘蛛に巻き取られて弱々しく蠢くスケルトン。それを見下ろすギシャの内でどらごんが牙を剥き、皮肉の微笑みを形作る。
 ギシャは乾いた笑みを貼りつけたまま、“しろ”を装着した手をゆっくりとスケルトンへ伸べる。
「支部はまだ先だけどね。終点はここだよ」
 ガイコツの魂がどこにあるのか知らない。だからギシャは骨の継ぎ目を黙々と竜爪で外していく。これは殺すでも壊すでもない、ただの作業だった。
「今度こそちゃんと死んでね」
『潜伏しなおすぞ。まだ数の差が大きい。切り札のLpCを守らないとな』
 どらごんに促されたギシャは、自らの作り出した骨の小山を一瞥すらもせず、消えぬ笑顔を翻した。
 ……LpCより50メートル先、正護が蛍丸に目配せをして通りの中央へ立った。
 蛍丸が退いたのを確かめることなく、正護はミラージュシールドをかかげて降りそそぐ矢を受け止め。
「残念ながらおまえらの矢、この正護には届かんようだぞ? どうする?」
 軽騎兵どもへ魔導銃50AEを撃ち込んでおいて1歩、2歩と下がる。口調とは裏腹に怯えているかのごとく。
 そのまま逃がしてやるわけにはいかない。軽騎兵どもが横列を組み、正護へ殺到する――
 しかし、ミイラ馬が最高速に達した瞬間、正護の姿がかき消えた。
「釣り野伏・防人風といったところかな。ヒーローらしからぬ兵法ではあるが、今日のテーマはチームプレイだ。大目に見てもらおうか」
 攻撃予測からのスライディングで馬郡を避けた正護が言い置くと。
『運転中に脇見はいけません。進路はそのまま、まっすぐどうぞ』
 方向転換しようした騎兵へ、サイサールが一の内から語りかけ。
「普通に言っても聞こえないだろうさ……耳がないからな。骨伝導でお知らせしてやるか」
 一がスナイパーライフルで馬の足元をえぐり、強引に騎兵の進路を通りの真ん中へ寄せた。
 その動きに燃衣と蛍丸が連動し、さらに騎兵どもを密集させて。
「あらためて地に還るか天に昇るかしてください」
「照準セット完了ってか、動かしちゃったら最後だし! このままゴーだぜ!」
 餅と和馬が、ふたりがかりで押さえ込んだLpCを撃ち放し。
 騎兵を一気に蒸発させた。

 そして居住地。
 気配を探りながら慎重に歩を進める真琴と、彼女に危険が迫れば全方位で盾になるマゾっ気――心意気をもって従う千颯。
「ご家族に三体満足のとらさんをお返ししないとね」
『二体、足りておらぬが……』
 思わず口を挟んだハルを制し、五叉路を前にした真琴が後方の玉子に合図。
「任せておけ」
 玉子が花火を五叉路の真ん中に放り投げ――パン。
「グォッ!!」
 壁の上に潜んでいた砂猫が、音に釣られて跳び降りてきた。
 眼球ならぬ紫の菫泥石をギラリと輝かせ、艶のない毛皮に包まれた体を弾ませ、真琴目がけて襲いかかる。
『千颯今でござる! 骨は拾ってくれでござる!』
「骨は自分で回収しない! あと年金もらうまで俺ちゃん死なない!」
 白虎丸にツッコみつつ、千颯はフラメアの柄を横に寝かせて砂猫の牙を受け止め、横蹴りでその体を突き放す。
「くっそ、中身が石だから重てぇな!」
「工兵は――?」
 土の上に転がり、視線を巡らせる真琴。
『見えぬ! しゃどうるーかーがおらぬゆえ、罠には注意するのじゃぞ』
「罠があったら普通に引っかかるけどね!」
 真琴は寝転んだまま目の前に落ちてきた砂猫の鼻を功夫シューズの踵で押さえ、大きく開いた口の中へフェイルノートの矢を撃ち込んだ。
「グォゴ、ガガガ!」
 未だ家の屋根上にある砂猫がくもぐった声をあげる。
 玉子の内でオーロックスが百面相。契約主にヤツの鳴き声がおかしいぜ? と告げた。
「まずいな。ぼくたちの位置を知らせているのか。しかし、だからといって焦っても意味がない。急がば回れと言うことだしね」
 玉子はブラッディランスの石突を返し、躍りかかってきた砂猫を吹っ飛ばした。
 飛ばされた砂猫は土の上を弾みながら五叉路を形成する壁の一枚に激突し、発動した魔法罠に弾かれて転がった。
 この狭さじゃ、長すぎる槍は使いづらいな。苦い顔をしたオーロックスが、また顔だけで玉子に告げてきた。いや、それはともかく、罠があるってことは、つまり。
「――このあたりはもう敵に掌握されているぞ! 工兵の奇襲に備えてくれ!」
 オーロックスの言葉ならぬ伝言に気づいた玉子が叫んだ。
「……もう喰らってらァ」
 晴明のストレートブロウで飛んだ工兵が、壁に当たって爆散。炎と閃光で視界を奪う。
『ハルちゃん、猫が!』
 塞がれた視界を斬り裂き、飛びかかる砂猫が晴明の首筋に牙を突き立てた。
『ハルちゃん!!』
 天狼の絶叫に「心配すんな」と返し、晴明が砂猫を自分の体から引き剥がして下へ叩きつける。
 そして、晴明と同じく中盤後方でボランチ役を務めていた雨月は、敵の強襲によって偏った味方の布陣の穴を埋め、奇襲に備え続けていた。
「みんな、壁の上に意識が行っている。だから」
 駆け出しのころから愛用してきたヘカテーの杖をひと振り。
「私は下を見ていたの。きっと来ると思っていたから」
 建物の影に潜んで自爆の機会をうかがっていた工兵どもを、ブルームフレアの蒼炎で誘爆させた。
「命がないから命知らず……あなたたちが蘇った意味はどこにあるのかしらね」
 一方、最後方のリュカと征四郎もまた、砂猫に先導された工兵の攻撃を受けていた。
『砂猫はお兄さんたちに任せて。せーちゃんたちは工兵を』
 指示は内のリュカに任せ、オリヴィエは砂猫をライトブラスターで撃った。
『足をしっかり開いて踏んばれ! 押し負けたら支部まで突撃されるぞ!』
 ガルーの言葉に、征四郎は九龍城砦の裏に肩を打ちつけ、ぶつかってきた工兵を押し退けた。倒れ込んだその腹へ、刃にトリカブトの花の彫刻を施したインサニア“鳥兜”の切っ先を突き下ろし、自爆の素となるガスを空気中に吹き散らせた。
「奇襲には備えていましたが……だからといって正面から来るとは」
 立ち位置を小さく変えながら敵を牽制しながら、征四郎が眉根をしかめる。
 相手は数で勝るばかりでなく、こちらを1発で吹っ飛ばせる火力がある。こちらは幾度となく手を重ねなければならないのに、敵はただ一手を決めるだけでいいのだ。
「敵の手を減らします。この背中、預けましたよ」
 両のつま先を前へ向ける征四郎。ただ前へ進み、目の前の敵を斬るのみ。
「征四郎の勇気は俺が支えるよ。その背中、確かに預かった」
 オリヴィエも眼前の敵を焼き払うため、イグニスを構えた。

●王の力
「幅に限りがあるのであれば、塞いでしまえばこちらの思うままにできよう」
 大通りを行くアルタシャタは現在、重装兵を横列に並べて大通りに“蓋”をし、じりじりと戦線を押し上げている。
 なんと言っても厄介なのは、後方へ回り込む隙間を塞がれたことであり、こちらの攻撃のことごとくが、壁であり屋根である大盾に弾かれることである。
 さらにその守りの裏から降りそそぐ軽騎兵の矢。
 前線に貼りついたエージェントたちは序々に命と気力を削り落とされ、押し込まれつつあった。
『遠い――ですわね』
 龍哉の内のヴァルトラウテがもどかしく歯がみする。
 真っ先に潰したい軽騎兵が遠い。陣の奥からこちらを見据えるアルタシャタが、遠い。
「向こうの手自体は単純なんだがな」
 パイクを踵で叩き落としながら、龍哉。
 アルタシャタ狙いのロケット弾も、あの盾の屋根に阻まれて落ちた。
「あの盾を削らねぇとならねぇんだが……」
 次のパイクを巻き取るようにしていなし、弾き飛ばしながら、龍哉がまさに鉄壁を成す大盾の列を見やる。
『道を塞がれ、敵にもわらわたちにも死角がなくなった。それだけにやりづらいのう」
 こちらは龍哉と背を合わせ、別のパイクを肘でかち上げたリィェンの内のインだ。
「まったく……いいかげんに目を覚ませアルタシャタ! きみはあのアレクサンドロスに比肩した大王だろうが! それがなんだ、そのザマは!!」
 リィェンの言葉に対し、アルタシャタはかすかに憤怒を閃かせるが、揺らがない。
「こうなるとさすがに一足飛びに狙うのは難しいか。状況を動かしてぇな」
 その龍哉に応えたのはリィェンならぬ、ArcardとIriaだった。
「――余が引きつける。存分にやれ」
『にゃむ』
 ひとり躍り出た彼女は、影刃を高く掲げ。
「下郎どもめ、余の王道を塞ぐとは不遜の極み! 退け! これは勅命である!!」
 返答は、次々に突きだされるパイクと撃ち放たれた矢だ。
 Arcardは地に這わされたが、しかし。
「――余ひとりに対し、ずいぶんなもてなしよな」
 そしてさらに、進み出たキミカが迫るパイクをライオットシールドで打ち払い、仁王立ち。
「戦列は私が受ける!」
 守るべき誓いを発動させたキミカに目を奪われた重装兵が、次々と彼女へ引き寄せられていく。十重二十重のパイク拘束が、動かぬ彼女を絡め取り、そして。
「防御を固めよ!」
 キミカの意図に気づいたアルタシャタが声をあげたが、間に合わない。
『気づくのが遅れましたわね』
 Arcardと同じく自らを犠牲にして敵の手を封じたキミカの上を、ヴァルトラウテにコントロールを預けた龍哉の矢が飛び、1騎の軽騎兵の眉間を貫いた。
「死者をこの世に縛りつけるのが、民を護り導くべき王のやることか否か。その眼を開いて周りを見ろ!」
 ガシャリ。骨がひと塊になって地に落ち、軽騎兵どもの意識がそちらへ向いた瞬間。
「将を射んと欲すれば先ず馬から……ってな」
 これまでの時間すべてを潜伏移動に費やし、アルタシャタ軍の裏に回っていた央が動いた。
『悪いけど、こちらの土俵に降りてもらうわよ』
 マイヤが言った次の瞬間、3分身したその手の孤月が地上5ミリの空に銀光を閃かせ、ミイラ馬の脚を刈った。
「突撃が得意だそうだが、足がなくても走れるか?」
 馬ごともんどりうって倒れた騎兵3体には目もくれず、央はそのまま軽騎兵のただ中へ駆け込み、軽騎兵の陣容を大きくかき回していく。
『矢……止まった……今、だよ』
「おおッ!」
 Le..に短く応え、聖がライオンハートをかざしてリィェンの開けた風穴へ跳んだ。
『構え……逆に……』
 常の聖は右構え――右足を前に出し、右手を上にして柄を握る構え――だ。しかし、それだと重装兵が左手で構えた盾とかち合うことになる。
 だから今、彼は左構えで跳び、左から剣を振り下ろす。敵の盾を避け、その乾いた体を斬り裂くために。
『左から攻めるのは有用だな。敵がArcardとキミカに釘づけられているうち、穴を広げるぞ』
 ニクノイーサが朝霞に指示をし。
 朝霞が聖の後ろから敵陣へ突っ込んだ。左手でつかんだ大杖をバトンのように回転させて重装兵をなぎ倒し、大量のハートを散らす。
『シールドが来る』
「ワンダー・ブロック!」
 朝霞は後列からのシールドアタックを肩で受け、足捌きでその力を反らしながらさらに奥へと踏み込んだ。
『……ワンダーなわりに合理的だな』
「高度なワンダーは合理と見分けがつかないのです!」
 ニクノイーサの皮肉に対し、朝霞はどこかで聞いたような屁理屈を返した。
「さあて、前線は動いたな。後ろから支援しとくか」
 土レンガのバリケードごしにフリーガーファウストG3を撃ち込もうとした亮を黎焔が止めた。
『急くでない。敵の動きを見るのじゃ。盾が左に――向こうからしたら右じゃが、寄ってきておるじゃろう』
「寄ってる? って、ことは」
『うむ』
 亮が声を張り上げ、各員へ告げる。
「――全員、敵左翼に注意しろ! 騎兵が来る!!」
 次の瞬間、凄まじい熱気が戦場を吹き抜けた。
「え!?」
 敵陣に斬り込んでいた朝霞が振り返ると、重装兵のすぐ前から6メートル四方をマグマが覆い、エージェントの前衛を飲み込んでいた。
「騎兵の前にマグマが来やがった!」
 足元をマグマに焼かれながら、それでもパイクに拘束されていたArcardとキミカを引きずり出した龍哉が後ろへふたりを投げた。
『これでは足の踏み場がなくなりますわ!』
「それはねぇだろうが……軍も動かせなくなるからな。でも、こいつはきついぜ」
 ヴァルトラウテに答えながらマグマ溜まりから飛び退いた龍哉が眉をしかめた。
 これこそがアルタシャタの力――地底よりマグマを呼び出す《炎溜》である。
「王の力……かよ」
 朝霞同様、戦列に食い込んでいた聖が、押し寄せる熱気に冷たい汗をぬぐう。
「出るわよ!」
 バリケードの影から駆けだした由香里がふたりの体を受け止め、彼女らを今なお焦す炎を叩き消し、ケアレイをかけていく。
『守りもなにもない場所で、不用心ではないか?』
 飯綱比売命の問いに由香里はかぶりを振り。
「あの力の射程がどのくらいかわからないけど……バリケードごと燃やされたら用心もなにもないわ。それよりも戦力を減らされないほうが大事。私ひとりより、ふたりを生かす」
『由香里が黄泉比良坂を登るならば案内をしようか。黄泉路は暗いからの』
 いつもどおりの口調で、死後も共にあることを約束する飯綱比売命。
 由香里は上がりかけた口角を必死で押し下げ、治療を続けた。
 一方、黎焔の読みどおりに駆けだしてくる軽騎兵10騎。
「出てきたのは半分か。迫間ががんばってくれてるみたいだが、それでもな――って?」
 吐き捨てた亮の横をまっすぐ通り過ぎるのは篝。
「王だろうが馬だろうが、来るならば全霊をもって迎え討つ!」
 ふはははは! バリケードを跳び越えて迫る軽騎兵へ高笑いを叩きつけた篝に、ディオがげんなりとした声を投げた。
『訊くだけ無駄と心得てはおりますがぁ、どうしてそう、無意味な我を張られるかぁ』
「それが私だからだ!!」
「篝様」
 焦一郎の声が篝の耳へ届き。
 同時に飛来した60mm弾が篝の眼前に迫った3騎を撃ち、その進路を狂わせた。
 焦一郎は建物の屋根にしつらえた狙撃ポイントにいる。姿こそ見えないが、その弾は確実に篝の敵を撃ち落とすのだ。
『撃破確認。ターゲット変更、弾道計算開始。リロード完了』
 ストレイドのアナウンスが淡々と鳴り響く中、一度駆け抜けた騎兵が隊列を組み直して再び襲い来る。
「私はここだ! だから、来い!!」
『主ぃーい!!』
 ディオの絶叫に耳を貸すことなく、篝は砂を土を踵でにじって体を固定し、屠剣「神斬」で怒濤乱舞。焦一郎の攻撃で傷ついていた3騎を確実にしとめ、さらにバリケードに足を引っかけて体勢を崩した2騎の内の1騎を割り砕いたが――6騎がかりの突撃を受け、地に転がった。
 その体を馬の動線から引き抜いてケアレイをかけつつ、亮はあきれた声を漏らす。
「なあ、もしかしてあんた、考えんの苦手なクチか?」
「私は私だ!」
『主は主にございますよぅ』
「篝様は篝様です」
『篝は篝であると断定する』
 篝、ディオ、焦一郎、ストレイド。4者の返答はまあ、予想どおりであった。
『若い……』
 篝の篝っぷりに、インがしみじみと漏らす。
「あの骨に比べれば、インもずいぶん若いがな――龍哉!」
「おう。その若さってやつ、せいぜい見せてやれっ!」
 龍哉のアシストを受けて跳んだリィェンが、宙でネビロスの繰糸を飛ばし、亮と篝へ弓を撃ち込もうとしていた騎兵、その右腕の尺骨と橈骨の隙間を通した。
 骨には数多の隙間と突起がある。リィェンの技をもってすれば、糸でからめとることなど造作もない。
『名も知れぬ先達よ、いずれ黄泉にて巡り会わば、あらためて武を競おうぞ』
 着地の衝撃を使って糸を引き絞り、一気に騎兵を斬り刻んだリィェンの内で、インが厳かに別れを告げた。

●右と左
 繁華街は今、乱戦状態である。
 突撃を狙い撃たれたことで多勢を失った軽騎兵は、密集を避けて陣を散らしたうえ、パルティアンショットによるヒット&ウェイを軸にしかけてくる。
「工兵は……あと2体」
 がふ。血の混じった咳を吐き、工兵の自爆をくらった燃衣が立ち上がった。
『煤原様、もう少しだけお待ちください――』
 蛍丸の内から詩乃が声をかけるとともに、ケアレイの癒やしを施した。
 そこへ一からの合図が入った。
 見えた。ただそれだけの、しかし十二分のゴーサイン。
「抑えてください」
 燃衣が蛍丸に言った。
「了解」
 蛍丸が燃衣に返した。
 そして、始まった。
『私たちはこれより狙撃体勢をとります』
 サイサールに聞き返すことなく、正護は傘となるべくミラージュシールドを構えた。
「かゆいところに手が届く」
 伏射姿勢でスコープをのぞきこんだ一が、背中越しに言葉を投げた。
「今日だけは俺が掻いてやるさ」
 正護は仮面の奥に隠れた頬の傷を薄く歪め、笑んだ。
「……なんかあっちの4人、かっこよくね?」
 耐えがたいほどに加熱し、誰に逢いたいものか震えまくるLpCを抱きかかえた和馬は、耳をすませて聞き取った会話と自身の惨状を比べて顔をしかめた。
『ふふふ。了解だよ』
 俺氏がすかさず乗っかってきたが、チョイスがおかしい。
『よし、ワタシたちも対抗しよう!』
 和馬とともにLpCの保持に全力を尽くす餅の内で百薬が言い。
『かゆいとこないですかー?』
 いきなり訊かれた餅は内なる声で返した。
『熱い! じゃなくて、今日はあたしが掻いたげるさー。……んん?』
 さておき。
『すみません。僕の無茶に付き合わせてしまって。怒りますよね……?』
 蛍丸の内なる声に詩乃はかぶりを振って。
『独りよがりな暴走ではないこと、わかっていますから。乗り越えましょう、ふたりで』
 蛍丸が通りの中央で両脚を広げて腰を落とし、盾を構えた。
 騎兵どもが最高速度で馬の蹴りを、あるいはすれちがいざまに矢をぶち込んでいく。
 全身から血を流しながら“それ”を見極めた蛍丸が叫んだ。
「7、13!!」
「7」
 一がスナイパーライフルの引き金を引き絞り、7番めを行く騎兵の背に隠れた工兵を撃ち落とした。
『13』
 ネイが13騎めの騎兵を指し、燃衣が跳びだした。
 その接近に気づき、その後ろにいた工兵が跳び降りてこようとするが。
「裁きを受けなさい!」
 エクスプロージョンナックルが工兵を騎兵ごと吹き飛ばし、横を走っていた騎兵とともに爆散させた。
「残っているのは騎兵だけか。ならば」
 傘役を終えた正護が駆けた。
「防人流……雷堕脚!」
 後方宙返りから前方へ跳び蹴りを放つという、特撮ヒーローさながらの技で騎兵を馬から落とし、「ショット!」、魔導銃でとどめを刺す。
『ギシャ』
「わかってるよ」
 倒れた仲間を避けるように大きく横へふくらんだ騎兵の頸骨に、ギシャの腕がからみついていた。
 ギシャが本来ならば眼が収まっているはずの穴の端に竜爪を引っかけ、無造作に回す。それだけで頭蓋骨は頸骨から外れて落ちた。
『昔の技はあまり使わせたくないんだがな』
 苦い言葉を漏らすどらごんに、スケルトンの延髄を割り砕いたギシャが淡々と応えた。
「今のギシャは昔のギシャより先のギシャのほうが大事だから。先のために昔の技を使うだけ」
 ギシャは昔を振り返るよりも先を向いて生きていこうとしている。どらごんはこみあげる笑みを牙で噛み殺し、ただうなずいた。
 かくして左右の端にいた騎兵は片づいた。後は――
 餅と和馬の祈りを乗せたプラズマが浄化の白光と化し、騎兵どもを包み込んだ。

 居住区を担当するエージェントたちは、少しずつ戦線を押し上げながら伏せている敵を探す。
「符を見つけたわ。みんなはそこにいて」
 雨月が一同を制し、そっと通りの隅へ近づいた。土をなすりつけて偽装された壁にそっと手を伸べ、ひらめかせる。
「解除」
 土を払い、現われた符を剥がす。符は爆炎を放つこともなく、沈黙したままであった。
「……これで私のスキルは終わり。あとは任せる」
 引き受けたオリヴィエがイグニスの火炎で丁字路の壁をなめ、しかけられていた符を誘爆させた。
『主導権が敵に独占されているのは困りものだね』
 オリヴィエの内で耳を塞いだリュカが漏らす。
『守りの戦いだ。しょうがねぇさ』
 チェック済の印を壁につけながら、征四郎がガルーの言葉に言葉を重ねた。
「しかし、初戦で半分以上を倒せたのは倖いでした」
 ここに口を挟んだのは晴明だ。
「問題はスキルの残量ってやつだな」
 バリケードへの強襲を防ぐため、一同はアクティブスキルの連打を余儀なくされた。残るスキルで敵を追い詰め、殲滅できるのか。その後、アルタシャタと対することができるのか。不安は尽きなかった。
「ヴォアッ!!」
「残念。見えてるよ」
 丁字路の右から跳びだしてくる砂猫。建物の上を進み、斥候を務める真琴はこれを狙い射ようとしたが。
「ガアアア!!」
 奇襲をかけてきた砂猫に左脚をくわえられ、引き倒された。
 顔を引き歪めた彼女だが、脚はそのまま、砂猫の鼻腔に矢を突き立て、蹴り離した。
 その彼女を、一度離れた砂猫が反転し、襲う。
「2回はやらせないって!」
 それを今度こそ引き受けようとした千颯だったが――がつん。その背を揺らす痛みと衝撃。
『投石でござる!』
 前を向いた千颯の背を石が打った。すなわち、少なくとも工兵が1体、自分たちの後ろ――バリケード方向にいるということだ。
 槍を引いた千颯に砂猫が噛みついた。
 千颯は噛みつかれたまま後ろへ走り、通りへ跳び降りる。その目の前に工兵がいた。
「工兵1匹見つけた! バリケード方面、警戒してくれ! あとすっげぇ痛いです!」
 その報を受けた晴明が、オリヴィエ、征四郎とともにバリケードへ走った。
「こんがり焼き上げてお供えにしよう」
 最初に現われた砂猫へ、玉子がブラッディランスの穂先を突きつけた。
「グオッ!」
 玉子は砂猫の爪を石突で弾き、まっすぐに立てた柄で続く牙を防いだ。
 固い柄と衝突した牙は砕け落ちたが、砂猫は痛がることもひるむこともなく、玉子を裂こうと残る牙を噛み鳴らす。
 哀れなもんだ。見ちゃいられないぜ。オーロックスの音なき声に、玉子は深くうなずいた。
「過去に生きた獣の皮をかぶって騙る。実に醜悪だ。しかも食べられんのが腹立たしい」
 玉子が力を込めて砂猫を押し飛ばすと。
「ギャウッ!!」
 雨月のヘカテーの杖から放たれたライヴスの蒼炎がそれを焼く。
「うまく焼けなかったわね。ミディアムレアくらいかしら?」
 よろめく砂猫を見やる雨月へ獰猛な笑みを投げ、玉子が腰だめに槍を構えた。
「ぼくが串を通すから、しっかり焼きなおしてくれればいい」
 ――そして場面は、バリケード前へ。
『ハルちゃん! 工兵が!』
 天狼が指した先には、バリケードへ取りつこうとする工兵4組がいた。
「やべェな」
 ストレートブロウはもう使えない。ヘタに疾風怒濤を喰らわせれば、一気に大爆発されてバリケードごとお陀仏だ。しかし。晴明は悩んだ一瞬後に肚をくくった。
「ムラサキ、つきあってくれるか?」
「はい!」
『みんなで息を合わせよう』
 3組がうなずきあい、晴明と征四郎が工兵とバリケードの間へ跳び込む。
『狙うのは腹だぜ』
 ガルーの言葉を受けた征四郎の剣が1体の腹を裂き、ガスを抜いた。
「ここでイモ引くわけにゃいかねェんだよ!」
 晴明の戟「暴乱」が3体を打ち、体勢を崩させた。
「頼むぞ」
 オリヴィエが晴明の攻撃に重ねてライトブラスターを3連射。
 燃えながら崩れ落ちる3体に征四郎と晴明が覆い被さり――爆発を押さえ込んだ。

●転
「道を開けよ」
 アルタシャタがマグマの先にあるバリケードを指し。
 右翼の端から10体の重装兵が進み出る。
『破城槌か。狙いどおりじゃが、のう』
 対騎兵に回っていた由香里の内、飯綱比売命が煮え切らない表情で小首を傾げた。
 本部前のバリケードへ至る前に破城槌を使わせる。由香里たちがバリケードを積んだ狙いはそれなのだが……
「どうして今なの。効果があるわけ――え?」
 破城槌を抱えた4体と護衛の6体がマグマに踏み入り、そのまま燃えながら前進。
「止めないと!」
 聖と連動し、楔役として前線に留まっている朝霞が迷う。
『待て、敵の意図がわからん。いや、わかってはいる。しかけてくる気だ』
 ニクノイーサは朝霞にこのまま戦うことを指示した。
「攻めてんのに後手後手かよッ!」
 歯がみする聖をLe..がたしなめた。
『釣られたらダメだよ……エサ、食いちぎって、もっと深く……食い込む』
 ――敵陣の後方で攪乱を担っていた央。その腹にミイラ馬の蹄が食い込んだ。
「ぐうっ!」
 力も技も、軽騎兵よりも央がはるかに上回るが、数の差だけは如何ともし難い。
 続く蹄を横に転がってかわした央は、馬脚にハングドマンをからめて方向転換。撃ち込まれた矢をかろうじてかわす。
『退く道は、ないわね』
 マイヤと央が内でうなずきあった。力尽きるまで、力を尽くす。
 一方、燃える重装兵がマグマを抜け、加速した。
『罠ではあろうが、止めねばなるまいのう』
「腹立たしいがな」
 黎焔に返した亮がG3を撃ち放した。
「兵法には心得があっても、戦術とか戦略はなぁ」
『戦士は考えて戦うものではありませんわ。戦う中で考えるものですが……王の思考が読めませんわ。もどかしいですわね』
 ヴァルトラウテのサポートを受け、亮と同じくG3を撃つ龍哉。
 爆発が連鎖して護衛を吹き飛ばし、衝撃が重なって破城槌の進撃を鈍らせる。
『持ち手を狙うのじゃ』
「おお!」
 インに応えたリィェンの怒濤乱舞が破城槌を持つ4体と護衛1体を斬り飛ばし。
「灰堂!」
『心得ております、篝様』
 篝と焦一郎が連携して2体を葬り。
 最後の1体は、炎によって仮初の命を果てさせ、崩れ落ちた。
 と。
『ターゲット・アルタシャタにパターン外の動作を確認。目視せよ』
 ストレイドの警告。
 焦一郎はスナイパースコープでアルタシャタの動きを確かめた。唇がなにかを唱え、指先が閃いて――
「各員に伝達します。アルタシャタに不穏な動きがあります。注意を」
 言い終える前に、彼は背中へ次々とパイクを突き立てられて倒れ込んだ。
『背部装甲、大破。機動への影響、中』
 焦一郎を襲ったのは、時を消費してライヴスを高め、複数の兵を戦場の何処かへ送り込むアルタシャタの力、《夜襲》によって送り込まれた20体の重装兵。
 破城槌は、本命を斬り込ませるための陽動だったのだ。
「やらかしてくれたな!」
 リィェンが舌打ち、焦一郎の救援に向かった篝をフォローしに行きかけたが。
『いや、その必要はないようじゃ』
 インがそれを止めた。
「もう……遅いじゃない」
 由香里の漏らした声音はわずかな怒りと、深い安堵に満ちていた。
「橘さん、お待たせしました!」
 言いながら、蛍丸が大通りの裏を突いた重装兵をさらにその後ろから攻め立てる――繁華街に回っていた仲間の先頭に立って。
「なんでLpC使ってないんだよ! 熱いとかかゆいとか分かち合うのが仲間だろ!?」
 キーっとわめく和馬を俺氏が『どうどう』。
「撃つよ……。王にあいさつしたいんだろ?」
 一がサイサールへ言葉をかけ、そしてG3を重装兵の背へ浴びせかけた。
 そこへ追撃を重ねる正護が、その先にある王へ叫ぶ。
「貴様はなんのために戦い……勝利してなにを得るというのだ!? 民を想うのなら、民を闇雲に苦しめるのではなく、王の責務を全うするべきではないのか!?」
 アルタシャタが戦車から降り立ち、一歩を踏み出した。
「簒奪者どもにくれてやる慈悲はない」
 そのたくましい体に、禍々しいライヴスが燃え立つ。
『あれが敵。災厄の源。殺すべき“死”』
 淡々と言い募るネイ。
 燃衣は奥歯を噛み締め、アルタシャタをにらみつける。
「降臨した天使っぽく、みなさんに癒やしの雨を与えちゃいますよー」
 傷ついた仲間たちにケアレインを降りかける餅。
「人の和を得た今こそが天の時だ! 皆、余に続け!!」
 力を取り戻したArcardが、残る20枚の盾目がけて突撃をかける。
『地の利はないわけだが、おまえは行かないのか?』
 最後方、建物の屋根に跳び乗り、戦況をうかがうギシャにどらごんが訊く。
「まずは見とくよ。王様だって、暗殺者に殺されたら浮かばれないだろうしね」

 居住区担当者たちは砂猫退治に追われている。
「あー、もう! 敵はどこ!?」
 真琴が建物の屋根を跳びまわる。
『友人が心配なのはわかるが、急いては事をし損じるぞ。スナイパーは』
 ハルの言葉に、大きく息を吸ってから真琴が答えた。
「心は熱く、頭は冷静に。……うん、大丈夫。ありがと」
「獣は狩人がもっともいてほしくない場所に潜むものだ。……どこだ?」
 小路の真ん中で悩む玉子に、オーロックスは表情で答えた。曰く、さっぱりわからねぇ。
「曲がり角に注意して、一周する。どこかでかならず見つけられるはずよ」
 雨月の言葉に、真琴のサポートを続ける千颯がうなずいた。
「ダーって走ってコケたらそこにいる――!」
 神との約束を果たすがごとく、千颯がいきなりこけた。
「ガァ!!」
「ほんとに出た! よくわかんないけど、さすがとらさんーだねっ!」
「よくわからんが虎噛君だな!」
「よくわからないわ……?」
 一方、バリケードを守る3組は2体の砂猫の襲撃を受け、対応中だ。
『あと1匹、ゾンビが残ってやがるからな』
 ガルーが辺りを警戒しつつ、皆に告げた。
『見張りはお兄さんが引き受けた』
「あんたらは集中してくれ」
 イグニスを構えたオリヴィエが、リュカに続けて視線で砂猫を指した。
「来たけりゃ来いや! おどれら全員、木っ葉喰らわしたらァ!」
 先の爆発で受けた傷を高級お弁当の一気喰いで癒やした晴明が、ハウンドドッグを砂猫にぶっ放した。
『ハルちゃん、あんまり意地になっちゃダメだよ!』
「ただの気合だ気合! 生きて帰らねェといけねェからよ!」
「いけません。心を澄まさなければ……」
 砂猫の前脚を斬り飛ばした征四郎は、焦りからの大振りを戒め、構えを取りなおした。

●集結
「たあっ!」
 朝霞のレインメイカーが、重装兵の頭を仮面ごと叩き潰した。
『努々!』
 ニクノイーサの呼びかけに応えたキミカが頭を失くした重装兵を蹴り除け、敵の戦列の右端に風穴をこじ開ける。
「騎兵を討ち、友を救え!」
「行かせてもらうぜッ!」
 彼女の肩を踏み台とし、聖が跳んだ。
 その目の前に跳び込んでくる、騎兵の矢。
『……振り下ろす』
 Le..が言うより早く、その意思を嗅ぎ取った聖が大剣を振り下ろした。その回転が彼を矢から避けさせ、次の瞬間には矢を射た騎兵を叩き斬らせる。
「遅くなったな迫間!」
 続けて跳び込んできたリィェンの“極”が央を取り巻く騎兵の1体を両断し。
「よぉ、動けるか?」
 リィェンの肩を巻くようにすべりこんできた龍哉の屠剣「神斬」が馬ごと別の騎兵を串刺してしとめた。
『残念。休みそこねたかしらね』
 マイヤの言葉に央が薄く笑んだ。

「跪け」
 アルタシャタの範囲攻撃《剣舞》が前衛を打ち据えた。
 残る重装兵、12体。そのすべてが捨て身でエージェントを押さえ、アルタシャタに攻撃の機を献上している。
 こうなれば――エージェントたちが命を投げ打つ覚悟を決めた、そのとき。
 震える腿を殴りつけて立ち上がったキミカが、王へ言の葉を突きつけた。
「亡者の戦列を率い、命ある人々を害する! そのような虚しき国で、王はなにを統べるというのか!?」
 アルタシャタの眼が一瞬揺らぐ。
 キミカはその眼を捕らえたまま、自らの顔を覆うマスクを脱ぎ去った。その金の両目からあふれ出る涙をそのままに。
「王は! 英雄は! 人々の命と日々を守ってこそ! ちがいますか、ダレイオス3世ッ! 私は……この世界で暮らすみんなを護るために戦いたいんです!」
 それが英雄だから――訴えるキミカに、アルタシャタは静かに答えた。
「我が弱さゆえに失くした国を取り戻し、我が弱さゆえに失くした民を蘇らせ、我が威光をもって統べる。ダレイオスの名の下に……!」
 エージェントたちは見た。アルタシャタの瞳に揺らぐ悔恨を。過去に失ったすべてを取り戻せるのではないかとなけなしの希望にすがる、狂おしいまでの焦燥を。
「……小さいわ!」
 地に倒れたままArcardが吠えた。
「王とは誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる者! すべての勇者の羨望を束ね、その道標として立つ者!」
 彼女は顔を持ち上げてアルタシャタを見、さらに重ねる。
「すなわち! 王たる者の才とは“未来を求める”意志にあり――その栄光は、諸人の志が紡ぎ、重ねし“生”の上にこそあるがゆえに!!」
「我は取り戻す! 国を、名を、あの日々を! もう二度と失くしはせぬ! もう二度と!!」
 地の底より呼び出されしマグマがキミカを、Arcardを、そして前衛のエージェントたちを飲み込む――
「今日から昨日へ戻ることはできません! 私が皆と共に進む明日を連れてきます! ですから安らかに眠ってください!」
 征四郎のフットガードがエージェントたちに守りを。
「妄執の王。おまえの願い、俺ちゃんたちがいるかぎり叶えさせやしない!」
 続く千颯のケアレインがエージェントたちに力を。
「アルタシャタ君の大層な志は好ましい。が、死人に口なし……飯も食べられん兵を率い、民を食わせるという為政者の根本を怠るきみは王の器にあらず。ゆえに倒す!」
 玉子の槍が、
「ここまでよ。私が言いたいのは、それだけ」
 雨月の蒼炎が、
「四の五の言ってねェでとっとと墓に帰んな!!」
 晴明の戟が、重装兵どもをなぎ倒し。
「もう帰って! この時代にはボクたちがいるから……!!」
 真琴の矢が、
「今一度眠れ、古代の王。あんたが次に治めるべきは死者の都だ」
 オリヴィエのレーザーが、アルタシャタをよろめかせる。
 潜伏していた砂猫と最後に奇襲をしかけていた工兵を倒した居住区担当の7組が、ついに合流を果たしたのだ。そしてさらに。
『伸びている暇はない! ここを通せば世界に殺戮があふれるぞ!』
 ネイの強い声が戦場を揺るがせて。
 後方から、重装兵を片づけた面々が駆けつけた。
 かくして最後の戦いが幕を開ける――

●弔辞
「我は取り戻すのだ……我は、二度と……!」
「範囲攻撃が来ます!」
『固まるな、互いに距離を取れ!』
 ディフェンダーを盾にした朝霞とその内のニクノイーサが警告する。
 散開した前衛に、アルタシャタの《剣舞》が乱れ飛んだ。
「ちぃっ!」
 かわしきれず、吹き飛ぶ晴明。
『ハルちゃんっ!』
 悲痛な声をあげる天狼に、晴明は「へっ」と鼻で笑ってみせた。
「俺はくたばんねぇよ。くたばんのは、もうくたばってる王様だぜ」
 その彼に高級お弁当を投げ渡しつつ、千颯が彼の前に立つ。
「晴明ちゃん、1回下がれ。生きて帰んだろ?」
 そしてアルタシャタをにらみつけ。
「さーて、どうすっかなぁ」
『これは決戦でござる。決するしかないでござろう』
 白虎丸に応えたのは黎焔だ。
『いや。決戦はもう終わっておるよ』
「そうだ。終わっている。兵を救わずに見殺し、彼奴が独りになったときにな」
 Arcardがうなずき、
『にゃ』
 Iriaが言い添えた。
「妄執で曇った眼に見えるのは過去の栄光だけってわけだ」
 フラメアの柄を握りなおした亮が王の前へ進み出た。
「……あんたの栄光は歴史ってやつに語り継がれてるぜ。朽ちかけの体を引きずって、あんたが確かに刻んだ昨日を捨てていけるのか? 兵を見捨てたみたいによ」
「くどい!」
 アルタシャタの剣が亮を貫く――寸前、蛍丸の盾がそれを受け止めた。
「王の気持ちは、僕にはわかりません。でも、犠牲になっていい部下なんていないと思います!」
『人よりも大切なものなどありません。それがたとえ死んでしまっている人たちでも……アルタシャタ様は守らなければならなかった。王として、民を』
 詩乃の言葉に、アルタシャタが揺らいだ。
「我が民は我が帝国と共に蘇る。仮初の死に嘆くことなどない。我が傍らに将軍が、魔術師が、道化師がある限り――」
 どこにも、感じられなかった。彼の一番槍たる将軍の気配も、知の支えたる魔術師の気配も、心と闇の癒やし手たる道化師の気配も……すべてが、消えている。
「――待っておれ。我が力にて三度蘇らせよう。幾度でも……幾度でも!!」
 アルタシャタの剣が、10の軌跡を描かんと振り上げられた。
 過去を取り戻し、今に散った愛しき者を取り戻すために。
「させませんよ」
『演算終了。ターゲット、ロックオン』
「射撃開始」
 焦一郎のファストショットが、ストレイドに示された弾道を正確になぞり、アルタシャタの剣を弾いた。
「なに!?」
 アルタシャタの意識が焦一郎に奪われた。
「行くぞ! 貴様の斜陽のときだ!」
『さあ突き進みますよ! 波斯の王ォ!!』
 ディオと心を合わせた篝のヘヴィアタックがアルタシャタを押し込んだ。
『央』
 マイヤの導きを受けた央はアルタシャタの剣の影にすべりこみ、ジェミニストライクを発動。正面から分身2体を突っ込ませ、自身は横から跳ぶ。
「死者は死後の世界へ還れ。共に生きた仲間が待つ場所で……今度こそ、安らかにな」
 その次の瞬間、砲弾のごとき勢いでアルタシャタに迫る聖。
「超えるッ!」
 王の威風を。王の威厳を。その圧力に戦く自分を。全部超えて――
『ヒジリーの限界も、超える……』
 Le..のささやきが聖をさらに加速させる。
「冥途の土産に……喰らいやがれッ!」
 アステリオスの重い刃が三度閃き、アルタシャタの青白い肉を爆ぜさせた。
 続く真琴が弓を引き絞り。
『穿て!』
 ハルの指した先へ、矢を射ち放した。
「神――薙っ!!」
 果たして、アルタシャタの喉元へ吸い込まれる矢。
「アルタシャタ、あなたが王であるために、ここで終わりにさせてください。自分の意思があるなら、邪な力と妄執に囚われないで――最後に自分を取り戻して」
『ワタシは自分らしくやってるよ!』
 それはなんかちがう。そう思いながらもいつもどおりな百薬を見逃しつつ、餅がスナイパーライフルで追撃した。
 そしてさらに。由香里の雷上動から放たれた雷がアルタシャタのこめかみを削った。
「ぐ……我は……もう二度と……」
『史実とやらのとおりなら小心者であろうかと思うたが……傷ついてなお、小揺るぎもせぬか』
 飯綱比売命がため息をつく。
 由香里は小さくかぶりを振り、アルタシャタの眼にその瞳を合わせた。
「もう充分戦ったでしょう? それにもう充分に示した。ここにあなたを臆病と蔑む者はいないわ」
 返答は、今度こその《剣舞》。
「ったく、あきらめて寝ちまいやがれ!」
 リジェレネーションを自らにかけた千颯が、その舞いを半ばを受け止めた。
「もうあなたの時代は過ぎました。この地は今を生きる私たちに任せてください!」
そして残りの半ばを、千颯と並び立つ朝霞が受け止める。
 2枚の壁に守られたエージェントたちが、果たしてアルタシャタへ肉迫する。
「民草代表っつったらおこがましいけど言わせてもらうぜ……妄念に取り憑かれて誰も幸せにできてねぇおまえに、王の資格があるもんかよ!」
『和馬氏に同じだよ。同じだよ。同じだよ』
 3分身しつつ後ろへ回り込み、思い出深い海神の斧でアルタシャタを斬りつける和馬。
 その逆側からギシャの蛇龍剣「ウロボロス」――愛称“くろ”がアルタシャタの腕にからみつき、意識を奪った。
『アルタシャタ、おまえは退くことなく、堂々と戦いぬいた。それを俺は讃えよう』
 どらごんに続き、ギシャは笑みの内で言葉を紡いだ。
「ギシャは王様の首を獲りになんかいかないよ。最期は暗殺者じゃない誰かに、正面から斬られて終わってほしいから」
「最期など望まぬ! これより始まるのだ! ここより始めるのだ! 我が在る限り、帝国は――」
 標的すら見定めぬままにアルタシャタが剣を振るう。
「ちがう。そうじゃないんです」
 悲しみを瞳に揺らめかせ、蛍丸が盾をかざして襲い来る剣を押し上げ。
 その鋼の下をくぐり、燃衣がアルタシャタの顎へ燃える右拳を突き上げた。
「国とは王じゃなく“民”だッ! その民を滅ぼそうとするおまえは、王じゃないッ!」
 さらに、のけぞるアルタシャタの鳩尾へ左の打ち下ろし。
『王よ。過去を求める貴様と私は近しい者だと思っていたが、ちがうな。すがるばかりの貴様と、自らのルーツを知ることで前を向きたい私とは』
 一はサイサールの言葉にうなずき、そして燃衣を、アルタシャタを見た。
「ウチの隊長も言ったがな。民を脅かす者は王とは言えない。おまえはただの独善者だ。おまえの統治に民を導く希望はない!」
 くの字に折れたアルタシャタの体が、一のライフル弾によって浮き上がり。
 正護のグレイプニールの一打でさらに崩れる。
「その妄念に凍りついた魂、俺が全力で弔う!」
「よし、つきあおう!」
「これで本当の終わりにしたいところね」
「終わらせんだよ、俺らでよォ!」
「今こそ一条の希望を、この邪なるライヴスに侵された地に!」
 玉子、雨月、前線に復帰した晴明、Arcardの攻撃が決まる。
「……ほんとにもう、終わってたんだな」
 オリヴィエのつぶやきにリュカが答える。
『いくら強くても、独りでは、ね』
「――あまりにも、悲しい戦いですね」
 顔を歪める征四郎を内から揺さぶり、ガルーが強く言い聞かせた。
『泣いてる場合か。悲しいのは終わらせるんだよ、俺様たちがな』
 数多の刃が王を打ちのめし、数多の矢弾が王を撃ち崩した。
 そして王は、なお立っていた。
「――我は、王なり」
 それはアルタシャタに残された最後の誇りであった。
『王の命はもう尽きているはずですのに……』
 驚愕のため息を漏らすヴァルトラウテ。
「王者の気概か。見習いたいもんだがな」
 龍哉は高く息吹き、構えた。
「先人の姿を心に刻ませてもらおう」
 “極”を手に、重心を高くとったリィェンが答え。
『そして敬意をもって送ろうぞ』
 インが締めくくった。
 今までアルタシャタの意識を散らすことを主眼に立ち振る舞ってきたふたりが、ここで最後の攻めに出る。
「ダレイオスの、名を、聞け――」
「名乗りは受けとった。赤城波濤流、赤城 龍也、推して参る」
「流派はないが、武林の徒だ。リィェン・ユー、同じく推して参る」
 アルタシャタの剣が、ただ一度振り払われた。
 リィェンの“極”がその剣の腹を押し上げながらアルタシャタの胸を突き抜いた。
「その戦い、しかと見届けたぞ。ダレイオス3世」
 屠剣を上段に構えた龍哉が右足を踏み出し、まっすぐに振り下ろす。
「王様、あんたの負けだぜ。……いい戦いだった。忘れねぇよ」
「ああ――力を尽くし、真っ向から、ま、け、た」
 膝をつくアルタシャタ――ダレイオスをキミカが抱き留めた。
「お見事でした。ダレイオス3世」
 崩れゆく王を見送るエージェントたちの目に映るものは、万感。
 ただそれだけであった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 夢ある本の探索者
    努々 キミカaa0002
    人間|15才|女性|攻撃
  • ハンドレッドフェイク
    ネイク・ベイオウーフaa0002hero001
    英雄|26才|男性|ブレ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 単眼の狙撃手
    灰堂 焦一郎aa0212
    機械|27才|男性|命中
  • 不射の射
    ストレイドaa0212hero001
    英雄|32才|?|ジャ
  • 最脅の囮
    火乃元 篝aa0437
    人間|19才|女性|攻撃
  • エージェント
    ディオ=カマルaa0437hero001
    英雄|24才|男性|ドレ
  • コスプレイヤー
    大宮 朝霞aa0476
    人間|22才|女性|防御
  • 聖霊紫帝闘士
    ニクノイーサaa0476hero001
    英雄|26才|男性|バト
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
    人間|15才|女性|回避
  • あなたを守る一矢に
    奈良 ハルaa0573hero001
    英雄|23才|女性|ジャ
  • 炎の料理人
    鶏冠井 玉子aa0798
    人間|20才|女性|攻撃
  • 食の守護神
    オーロックスaa0798hero001
    英雄|36才|男性|ドレ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命



  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 神鳥射落す《狂気》
    Arcard Flawlessaa1024
    機械|22才|女性|防御
  • 赤い瞳のハンター
    Iria Hunteraa1024hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • HOPE情報部所属
    百目木 亮aa1195
    機械|50才|男性|防御
  • 生命の護り手
    ブラックウィンド 黎焔aa1195hero001
    英雄|81才|男性|バト
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 魔の単眼を穿つ者
    繰耶 一aa2162
    人間|24才|女性|回避
  • 御旗の戦士
    サイサールaa2162hero001
    英雄|24才|?|ジャ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • エージェント
    土御門 晴明aa3499
    獣人|27才|男性|攻撃
  • エージェント
    天狼aa3499hero001
    英雄|8才|?|ドレ
前に戻る
ページトップへ戻る