本部

【神月】連動シナリオ

【神月】君たちこそ希望

鳴海

形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/08/05 18:21

掲示板

オープニング

●砂塵を渡る襲撃者
 H.O.P.E.バグダード支部。
 そこでは絶えず入り込む大規模作戦の情報を整理、統合するため。数十時間にわたって祭りのような騒がしさを保っていた。
 さらには突如開いた門の影響。大量に現れた新しい英雄たち。そしてその英雄と契約してしまう現地の人々。
 支部はパンク寸前の状態だった。
 ただ、幸いにして戦地から離れてはいたので今まで敵の襲撃におびえずに来れた点はよかったが。
 それも、たった今終わりを告げようとしていた。
「おい、あれなんだ!!」
 見張りの男がさけんだ。
 その指をさした方向をバクダート支部の支部長は見た。突如広がっていくドロップゾーンそして。
 風がやみ、収まった砂塵の向こうから流れてくる臭気。
「この匂いはなんだ……」
 そして、次の瞬間に展開されたのはドロップゾーンだった。しかもきわめて大きく、強い。
「これは一体なんだ、愚神など付近で確認されていないはずだ……」
「そんなことより支部長見てください。不死者です」
 その視線の先には無数の腐った人間が蠢いていた。
 まるで再び目覚めさせられたことを、恨むような声を上げて。

●絶望への道しるべ
 敵の進軍速度は異常だった。無差別ではなく人が集まる場所を優先して襲い。
 敷いた防衛ラインを軽々と突破し。町は不死者であふれかえった。
 このままではまずい。そう思いつつも支部長にはどうすることもできない。大規模作戦のために戦闘員は出払い、いるとすれば事務員を兼ねたリンカーや、契約したてのリンカーばかりこれではまともな戦列も組めない
 結局は逃げ遅れた生き残りの一般市民を支部内に避難させるだけで精一杯だった。
 その現場指揮を高台から行う支部長とその補佐のH.O.P.E.職員。
「直ちに警戒態勢。この支部に生き残ったもの達を収容し、立てこもる」
「立てこもってどうするんですか!」
「……本部の助けを、待つ……」
「それしかないでしょうね……」
 しかし、その時だった。希望はたやすく陥落する。
 ヒュンという風切り音が聞こえたかと思うと。
 支部長の体が傾いだ。そして。
 鮮血の雨が屋上にふる。
 見れば、支部長の首がざっくりと切られ、そこから血が空に向けて噴出している。
「ぐ、ア……。皆を…………」
「支部長!」
 直後屋上に響いたのは、息を吸うような笑い声。
 振り返ればそこには一体のゾンビが立っていた。
「お前がやったのか」
 そうリンカーが問いかけると、ゾンビはにやりと笑う。
 その時点でリンカーは、町にあふれかえる不死者とは、このゾンビが別格だとわかった。
 何せそのゾンビは、体の腐敗した部分を青銅で繋ぎ留め、鋭く、よく手入されたナイフを握っている。
 他にも足や腕のバンドに投擲用のナイフを装備している。
「お前だけは行かせるわけにはいかない!」
 その瞬間、リンカーはAGWを召喚、短い杭のようなそれはゾンビの背後にあった扉に突き刺さり。縫いとめる。
「俺がいるかぎり、下にはいかせない。下にはたくさんの一般人がいるんだ!!」
 震えながら、リンカーは大剣を取り出す、そして。リンカーは青銅のゾンビへと突貫していった。

●戦いの舞台
 今回の戦いの舞台は閉ざされたH.O.P.E.支部です。
 三階建ての建物で長方形です。豆腐建築で屋上は真っ平らで見張り台とは名ばかりです。
*一階
 一階にはエントランスや資料庫、リンカー指導のための教室。そしてバスケットができる程度の多目的スペースが増設されています。
 この多目的スペース、正面玄関、裏口が正規ルートです。
 北側に正面玄関。西側に多目的スペース。裏口は南にあり、ここが激戦エリアです。
*二階
 二階へ続く道は二種類です。階段は建物の中央に一つ。そしてエレベーターがエントランスの左手に二つあります。エレベーターの電力供給は止めてあります。
 二階には多数の重要施設があります。医務室や会議室。薬品庫。武器庫。重要度が高い資料をしまう部屋。いずれも重要度の高さからカードキーでないと開きませんし扉はかなり頑丈です。
 ただし電力が供給されていないので今は開きっぱなしです。
*三階
 三階への階段は一つです。
 階段には発電機。支部長の執務室。大会議室。第二武器庫が存在します。ここは最重要施設なので、屋上、そして二階からの侵入を阻むための非常扉がついています。
 こちらは手動で内側からロックがかけられます。立てこもるには最適ですが。はたしてケントゥリオ級にどこまでもつやら……

*地下室
 地下には長く脱出用の通路が掘られています。ここから脱出可能ですが。ここにつながる道は二つしかありません。
 一つ目は一回資料室の地下への階段。
 そして二つ目はエレベーターです。

● 戦場
 バグダート支部では敗戦の匂いがたちこめ始めた。
 すでにH.O.P.E.支部前の広場は不死者で埋め尽くされ。人間たちはバリケードをたて、支部内に立てこもることしかできない。
「くそ! 弾薬がつきた!」
「武器庫に行ってとってきてくれ」
「負傷者がいるの、手当てを!」
 さらに時を追うごとに戦場は混乱していく。当然だろう。戦う訓練などまともに受けたことのないもの達ばかりだ。精神的に限界が来たものもいる。
「もうだめだ。おしまいだ」
 誰かがそう言ったその瞬間。
 希望の光がさす。
 この絶望の舞台に登場したのは君たち。
 これから君たちは知恵と勇気と絆の力で、腐敗臭漂うこの支部を救わなければならない。

解説

目標 増援到着まで耐える(シナリオ「【神月】王の帰還」の解決)
    『青の暗殺者』の撃破 
    上記のどれかの達成
注意
 時間経過と共に状況は悪化します。出入り口が突破されれば。支部員たちはどんどん上へと逃げるでしょう。

●ケントゥリオ級愚神『青の暗殺者』
 腐った体を青銅で補強したゾンビ・アサシン。
 体中に各種BSを引き起こす毒を塗り込んだ短剣を刺しており、これを使用しての奇襲攻撃を好む。
 また身体能力が高く、潜入も得意とする。
 特殊能力の《子守》は、自分の体を激しく揺すって毒を振りまき、まわり3スクエアにいるエージェントを眠らせる業。

●使役従魔
・ミーレス級 紫の獣
 ドーベルマンに酷似した外見を持つが肉が腐っている、筋肉が発達し露出しているので犬体模型のように見える。
 体が小さく、運動能力に秀でるので厄介。

・ミーレス級 橙の工兵
 風信子石の仮面をつけたゾンビ兵士。支援特化型で、破壊工作や特殊行動などを行う。
 自爆攻撃や、爆発効果による魔符によるトラップ攻撃のほか。
 壁の破壊なども行える器用な奴。

・死兵
 身体能力は一般人と同等程度のゾンビ。そのためリンカーの脅威にはなりにくいが、数が多い上に青の暗殺者を仕留めない限り数時間で再生する。
 
●若手リンカー&H.O.P.E.職員
 彼らは君たちのことを知っている、H.O.P.E.内で君たちはある程度名の通ったヒーロー扱いをされているようだ。
 彼らは君たちを二つ名で呼び、希望だと褒め称えるだろう。
 また、君たちが戦場で活躍をすればするほど、指揮は上がり、チームワークがとれるようになる。
 あなた達の指示も素直に聞いてくれることだろう。

●シナリオ連動について
 今回の一連の騒動は一つの町の中で起こっています。
 従魔や愚神を撃破すると「【神月】王の帰還」の難易度が下がります。
 余裕があれば積極的に従魔を倒していくといいでしょう。

リプレイ

プロローグ
 バグダートに向かうヘリのなかで『カグヤ・アトラクア(aa0535)』はいつもと同じ不敵な笑いをもらしていた。
「くふふ、いずれはわらわの役に立つ雛鳥や市民達をすべて助けてやるかの」
「……はぁ。いつも通りやるつもりなんだね。心配も止めもしないよ」
『クー・ナンナ(aa0535hero001)』はそう溜息をつく。
「雛鳥は刷り込みという……」
「カラーヒヨコはおいしそう」
 適当な会話のドッジボールをしながらヘリの揺れに耐える二人、その眼前には死者の大河が広がっていた。
「好き放題攻勢に出られているのは気に入らないな」
『志賀谷 京子(aa0150)』が弓に弦をはりつつぽつりとつぶやいた。
「死兵を使うというのも気に入らないやり方ですね」
『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』苦虫をかみつぶしたような表情で告げる。
「……このような敵をわらわの住む魔界では不死と呼んでおったが」
「どうしたのカグヤ?」 
 アリッサの言葉を受けて『輝夜(aa0175hero001)』はぽつりとつぶやいた。『御門 鈴音(aa0175)』が何事かと問いかける。
「わらわの世界ではこれを使うのは魔界でも禁じ手じゃった……なんせ生きとし生きる者が根こそぎ死者となって収集がつかんくなるからの……」
「……輝夜でも苦戦する相手だったの?」
「馬鹿もん! わらわは『鬼』ぞ! わらわがこやつらを駆逐する方法を教えてやろうか? それはのぉ……動かなくなるまで何度も何度も叩き斬れ!」
「見た目に相反してどんだけ脳筋なのよアンタ!」
「全く、やれやれじゃ、緊張感がないのう」
 カグヤはそんな鈴音たち、そしてそれ以外のリンカー全員を見渡すと、笑った。
「このメンバーであれば不思議と不安は感じぬのう」
 それもそのはずだ、ここにいる人間はみな数々の死線を潜り抜けてきた。
 覚悟も十分、力も十分。なにも不安に思うことはないのだ。
 それをカグヤ達は今から知らしめに行く。
 絶望の淵に沈む人々に。H.O.P.E.、希望ある未来を届けるために。

第一章 コーリングH.O.P.E.

「ぐあああああ!」
 リンカーが悲鳴を上げる。
「くそ……、俺ももう、だめか」
 屋上ではケントゥリオ級愚神。『青の暗殺者』が愉快そうに笑っていた。余裕そうな表情をリンカーに向けて、彼の脇を通り過ぎていく。
 そして扉を踏み抜こうと足を上げた瞬間。
「させない!!」
 リンカーは暗殺者の足に組みついた。暗殺者はうっとおしそうに首を降り、ナイフを構える。
「ここから先へは行かせない、いかせてはいけないんだ!!」
 所長が死んでしまった今、この支部でまともに戦闘できるのは自分だけだ。
「H.O.P.E.は希望でなくてはいけないんだ!!」
 しかし、止まらない血。眩暈と吐気が襲い、指先が。
 ナイフの毒が完全に体に回っているのだ。もうだめかもしれないという言葉が脳裏をよぎる。
「俺が、護るんだああああああああ!」

「よく守ってくれましたね。あとは任せてください」

 その声は戦場の只中でもやけに綺麗に響いて、彼の耳に届いた。
 気がつけば暗殺者は動きを止めている。
 リンカーが一緒になって空を見れば金色の少女が羽ばたきながらこちらに向かってくるではないか。
「はあああああああ!」
 そして少女は弾丸のようなスピードで暗殺者の顔面を殴りつけた。盾の縁の尖った部分で。
 普通の人間なら頭蓋骨に穴が開いているだろう。
 吹き飛ぶ暗殺者、そして靴をすり減らし着陸したのは一人の少女。
「アンタは?」
「ボクの名前は……」
 少女は土をほろって立ち上がる、滑空に使った翼をたたみ剣を召喚して構えた。
「イリスだよ。イリス・レイバルド」
――そして、姿は見えないと思うがアイリスだ。
「アンタたちが、邪英から帰還したもの達。〈輝盾の天使〉<アンチ・アンブラル・スティーラー>」
――ん? あんち……、なんだって?
「どうしよう、お姉ちゃん、思ったより恥ずかしい名前で広まっているよ」
『イリス・レイバルド(aa0124)』そして『アイリス(aa0124hero001)』両名の名は戦場に轟いている。
 かの愚神ガデンツァの間の手に落ちつつも意志とそして絆の力で脱却した。鋼の意志を持つ少女であること。
「なぜ、あなたがここに……」
 その言葉に答える前に、暗殺者がナイフを放つ。それをイリスは盾で弾き肉薄。暗殺者のナイフが翻るが、それを盾で真っ向から抑え込む。
「この程度!!」
 イリスの剣がぎらついた。それを恐れるように暗殺者は宙返りして、ナイフを放つ。放たれたナイフをイリスは剣で叩き落とし、大きく一歩踏み込んだ。
 敵のナイフを盾で払い。そして大きくあいた敵の懐に剣を突き立てるも。暗殺者は器用に青銅化した部分で剣をはじいた。
「チッ!」
 イリスは歯噛みする、いったんバックステップで体制の立て直しを謀った、それを見た暗殺者は反撃として、ジグザグにバックステップしながら無数のナイフを放つ。
 よけられない、わけではない。避けない。
 大剣を閃かせて少女が間に割って入ったから。
「はああああああ!」
 それを落下してきた鈴音が、大剣の衝撃波で弾き。
 残りを全て『ハーメル(aa0958)』がハングドマンで絡め捕った。
「最初から!」
――全力全開じゃ!
 ロケットダッシュ。鈴音は、タイルが爆ぜるほどの勢いで前に飛ぶ。敵の防御ごと問答無用で切り裂くつもりだ。
 そ瞬時に察知した暗殺者はあわてて回避を選択。
 そのせいで周囲に張っていたハングドマンの糸に絡め捕られてしまう。
「同じタイプみたいだから、動きを読むのは楽だね」
「あれは!《軍師 ハーメル》こんなところでお目にかかれるとは」
 ハーメルは先の戦いでの功労者である。敵の戦術を看破し、
「そしてあれは『鈴音 御門』イリスと合わせ。ここに最強の盾と矛、そして知略がそろったわけだ」
 そのでたらめな攻撃力から、『羅刹』鬼の頂点に立つという意味で『百鬼敷く大牙』と呼ばれて久しい。
 誰もがスターキャラクター。知名度実力ともに十分。
 ここでやっと、リンカーの目に希望が灯った。
――ちょっとだけ、寒気がしたのは 私だけかな?
『墓守(aa0958hero001)』が言うと、ハーメルは頬をかく。
「いざ、自分たちの評価を聞いてみるとむず痒いよね。まぁ、ぼろくそ言われるよりはましだと思って、頑張ろう」
――期待に応えられるように……か。
 三人は武器を構える。ここは通さない。そんな彼の、そして所長の意志を継いで。ケントゥリオ級にさえも恐れず挑む。
 一瞬でも気を抜けば即死する、そんな戦闘が今から始まる。
――指揮官が前に出てくる……やりやすい事だよ
「簡単に後ろに通すわけ――ないだろうが!」
 ごうっと風切り音が鳴るほどに盾を振り上げ肉薄するイリス、そして鈴音。ナイフを弾き飛ばすイリス。今日のイリスはちょっと乱暴だ。
――勿論、歓迎が半端なままお帰りいただく訳にもいかないな
 直後ハングドマンで絡め捕られる暗殺者。その首の根を狙って鈴音は大剣を振りかぶる、それを暗殺者は右手を盾に受けた。
――まずい! ハーメルさん、御門さん下がるんだ。
 はじかれたように二人は後方へ、その瞬間周囲に毒ガスが噴出される。
「これがあいつのスキルか」
 イリスは歯噛みする、うっかり近づこうものなら催眠ガスを受けてしまう。
 そして全員が闇雲に距離をとったものだから陣形が崩れてしまった。その結果
「おととと」
 ハーメルは屋上の縁に着地することになった。そのヘリから偶然見えたのだが。
 明らかに他のゾンビたちと趣が違う死兵。大きなカバンのようなものを背負い、頭にヘルメットを着けている。
 そんなゾンビが壁をひたすら叩いているのだ。絶対何かある。
「あれは、まずそうだな」
 その結果支部側面に張り付こうとしている工兵を発見する。
「ちょっと行ってくる!」
 そう飛び降りたハーメル。
 イリスと鈴音は挟み打つように暗殺者と相対する。


第二章 エンジェル・フォール(天使が舞い降りた日)

「もうだめだ。おしまいだ」
 戦場には絶望が溢れていた。正面玄関前。
「もう逃げましょうよ!!」
「いったい、どこに逃げるっていうんだよ。もう囲まれて逃げる場所なんてないんだぞ。一体俺たちはどうすればいいんだ」

「あきらめないで」

 その時、戦慄が聞こえた、戦場に場違いに軽やかな歌が、空から降ってきていた。
「おい、あれを見るんだ」
「……天使が、舞い降りた」
 天から光を浴びて、ゆっくりと降りてくるのは『アル(aa1730)』それは戦場にはあまりに似合わず、その歌声はあまりに優しく。
「なんだ、あれは、天使。天使なのか」
「どうか、希望を捨てないで」 
 そして彼女が口ずさむのは『光の音』と対になる、新たな曲……『影の音~shade~』

《今は絶望(影)が濃く見えているのかな……
  でも、影のないところに光は無い。表裏一体》

「みんなごめん。お待たせ!」
 京子と『卸 蘿蔔(aa0405)』が降下しながらゾンビの頭蓋を割っていく、その結果的集団の中にぽっかりと開けた場所ができた。
 その中心にアルが降り立ち、周囲を固めるように、
 京子、蘿蔔『天城 稜(aa0314)』『桜木 黒絵(aa0722)』『柳生 楓(aa3403)』が舞い降りる、そして。
「しかもその影が濃ければ濃いほど。希望(光)は眩しく美しく見えるんだ」
 そのアルの歌いながら両手を上げると共にリンカーたち武器を構える。
 ぐるりと360°展開する全ての敵めがけて、ありったけの火力を放った。
 死兵たちの頭が砕け。足が弾き飛ばされ、火焔に包まれる。腹部を切り裂かれ、力なく呻く死体の山がその場に出来上がった
「ね、諦めないで。ボクも諦めない」
 アルがそう頬に指を沿えて可愛く言うと、支部の面々は拳を突き上げて彼女を讃えた。
 しばしの時間が稼げたところで、その場にいる全員とリンカーたちの情報交換が始まる。
「これを使って」
 アルはそう盾をいくつか手渡すと、また戦場にとって返した。繰り返し歌を口づさ見ながら。
「避難する人への攻撃を防ぐ
バリケード代わりに瓦礫を押し上げる手段にする
死兵は弾いて倒せる殴れる。使い方は色々だよ!」
「ありがとう、天使様」
「ボクは天使なんかじゃないよ、アルっていうんだ。テクノポップアイドルだよ」
「アイドル……だが、あなたは私たちにとって天使ほどの価値がある」
「なんだか、照れるな。でも悪い気はしないよ」
 そんなアルにリンカーたちは手を振って各自の持ち場を目指す。
「稜君 楓ちゃん。よろしくね」
 蘿蔔もするりと人ごみをすり抜けて。ホイホイと二階を目指す。
「建物内の一般人はわらわにまかせよ、なに建物の仕組み構造は熟知しておる。安全のため避難誘導を」
「カグヤさん」
 稜が声をかける。
「治療しなくていいんですか?」
「よい、それに他の者の前で言わぬことじゃ。気遣いありがとうのう」
 カグヤはそう腹部に手を当てる。
 彼女の傷はまだ癒えていなかった。それどころかヘリから降下するだけで傷口が開く始末。
(長くは持たぬか)
 普通の人間であれば、悲鳴を上げてのた打ち回っているはずの激痛、それを全て意志という力だけでねじ伏せカグヤは前を向いた。
(科学者にあるまじき根性論じゃな)
 そう自嘲気味にカグヤは笑った、直後施設の通信設備が回復する
「想いを伝えるには相応の強さが必要。見せてあげましょう、敵に、人々に私達の力を。希望を。これが私のアイドル活動、です」
 バツンと蘿蔔が配電盤を操作したのだ。それと同時に周囲の新人リンカーたちにインカムを配っていく。蘿蔔。
 これで施設の全ての機能を使うことができる。
「反撃開始しましょう」
 直後施設内に響き渡ったのは稜の声。
「最悪、八割のH.O.P.E職員が、愚神の総攻撃で死ぬだろう……しかし、まだ戦える。我々が生きている限り……」
 支部内に同様の声が広がる。
 まだあきらめていないものがいることへの動揺。
「我々が、戦闘放棄していないことを形で示す必要がある」
――どうするのかしら?
「この戦線の指揮官を倒せば、それで良い。そうすれば、この事態を引き起こした奴に伝わると思うよ」
 稜は屋上の上で激しく鳴り響く戦闘音に耳を傾けた。
 その彼の声を皮切りに駆け出していくアル、それを唖然と見送る戦闘員たち。
「先の戦いでマスターしたんだ」
――あら、なにを?
『雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)』は楽しそうに問いかける。
「新しい、歌。《セイレーン》って言うんだ」
 【ジェミニストライク】分身はわずかの間でも実態を持つ、そしてアルが告げるとその喉から声を発する、その歌声は残響となり何重にも重なる。

《砂の階段降りて行って美しい海の魔物になるの
あたしの元に来て  光届かない海の底》

そうアルは死兵の列を切り裂いて見せた。
(かつて愚神に奪われ悪用された曲……今度はボクが、ボクの正義のために)
 その様子を見て『シウ ベルアート(aa0722hero001)』判断する。
――ここは大丈夫だ! 行こう黒絵
「裏口だね」
――準備はいいかな黒絵、
「皆と連携を取って少しでも被害を出さない様にしないと……」
――激戦エリアってところか……気張っていこう!


第三章 二人のスナイパー
「たのもー!!」
 京子は突如多目的スペースの扉を開いた。その音に驚き、身をすくめるリンカーたち。
 そう、ここには戦場の恐怖から戦闘を放棄した新人リンカーが立てこもっていたのだった。
「こんなところにいた……」
 そうため息をついてリンカーたちに歩み寄っていく京子、そしてその後ろからおずおずと蘿蔔が顔を出す。
「だめなんだ、俺たちは戦えない」
 そう膝を抱えて震えるリンカーたちに京子は歩み寄った。
「ここには何人もの歴戦のエージェントが集まってるんだから、大丈夫だよ!」 
 そう京子は男性リンカーの手を取って言った。
「怖いのはわかる、当然だと思う、みんなこんな状況でよく耐えてくれたね。ありがとう」
「でも。もう終わりです」
 蘿蔔が言葉を継いだ。
「私達が来ました、大丈夫です、この戦い勝てます」
「わたしたちを信じて、落ち着いて行動してね」
「私達、皆さんが来てくれること、信じて待っています。きっと契約を結んだからには皆さん思いとか、護りたいものとかあると思うのです」
 その場にいる全員に、二人は語りかける。
 恐怖に負けることは罪ではない、けれど、誰かを守れなかった時、苦しむのは自分自身だ。 
 それを二人は知っている。
「無理にとは言わないわ。でもこれだけは信じて、私たちが来たからにはもう、誰一人被害者は出さない」
 そう言って京子は彼等に背を向けた。
「私たちは二階から攻めてくる敵を狙撃する、よければ来て、あなた達の助けが必要よ」

   *    *

「本部防衛は困難じゃ。一般人は先に避難させる。地下通路より脱出させる。資料室にあるらしいから、そこの者達は確認。そっちは職員に協力を要請し、一般人の避難の準備をせよ。そなたは負傷者がおれば案内せよ」
 そうカグヤは施設内を闊歩しながら、職員に案内を命じている。
「そしてリーダーシップをとれるものが責任を持って、各階の状況を確認してまいれ、お主とお主じゃ」
「あと、バリケードの材料ももってきていただけないでしょうか。少しでも時間を稼げればと思います」
 そう蘿蔔がインカム越しにカグヤへと言葉を駆けた、蘿蔔は三階へ続く階段に消火器のをぶちまけ侵入すればわかるように細工を施している最中である。
「もっていかせる、他に必要なものはないかの?」
 蘿蔔は電子版を制御。エレベーターを操作、一階で停止させ機能を停止させる。
 これでエレベーターの穴を使っての侵入はできなくなった。
「あと、飲み物を少し。あとは……」
 蘿蔔は見つけた負傷者に駆け寄った。その患者の足はズタズタに裂かれて出血がひどい。
「安心してください。すぐに治療します」
「これを」
 その声に振り返ってみれば、そこにカグヤがいた。
 カグヤは水を手渡し蘿蔔に言う。
「ふむ、傷を縫うが、我慢できるかの?」
 カグヤの額に汗が浮かんでいた。
「いくら手が足りんからと言って、患者をこう放っておくのは感心せんのう」
 そう手早く傷を縫いながらカグヤは無線機越しに入ってくる情報を整理していた。
「一階に集めるのじゃ、順番に通す。これより避難を行うが何も心配するな。生きる為に逃げるだけじゃ」
縫合を済ませたカグヤは汗をぬぐって立ち上がる、その背後にはこの施設内すべての新人リンカーが立っていた。
「卸さん」
 それを先導しているのは京子である。
「俺たち、戦います、見ているだけなんて……」
「来てくれてありがとう。心強いのですよ」
 そう蘿蔔は微笑むと、幻想蝶から武器を召喚する。カグヤも頷くと幻想蝶からありったけの武器を取り出した。
「いい機会じゃから経験を積むのじゃ。絶望を知ったのなら、希望も知るがよい」
 それをリンカーたちに手渡しながら手早く班を形成していく。
「わたしは近づいてくる敵を排除しにいくよ。AGWは貸すから、手伝ってくれる?」
 こんな状況でも人とは高性能なアイテムを与えられると楽しいようで、少し緊張が解けていた。
「まぁ、私たちの集めた武装だから、ここの倉庫で眠ってるものよりははるかに扱いやすいわよ」
 京子と蘿蔔は頷きあい。左右に散った。
 京子はそのまま西側のカバーに向かう。そして西側ではすでに楓が戦闘を始めていた。

――行こうか楓、ここにいる皆の物語の続きを紡ぐために

 上がる悲鳴を聞きながら『氷室 詩乃(aa3403hero001)』は言うすると、楓が静かに告げる。
「ええ詩乃……彼らに希望の光を与えましょう」
 そう楓は二階西側の窓から飛び降り、多目的スペースの大扉へと群がる死兵たち、それに殴り込みをかけた。
「支援をください。私がこの先には絶対進ませないですから」
 ナイトシールドを振りかざし、ゾンビたちの波を押し返した。
「楓さんは!!」
 新人リンカーが叫んだ。
「私は大丈夫です」
 そう微笑むとデュアルブレイドを手に突貫。戦列を切り開いていく。
 確かに楓は戦場を押し返す一齣になりえた、防衛能力と強靭な意志によって確かに敵を食い止める。
 しかし。
「うっ……」
 敵の爪が肌をえぐる。敵の牙が服の上から楓につきたれられる。
「あの子から引き離せ!!」
 そうリンカーたちの支援射が飛ぶが楓に当たることを恐れていまいち的にあらならない。
 だから楓は自力で敵を振りほどいて、また眼前の敵に刃を向ける。
「それ以上先に言ったらだめだ!!」
 敵が多すぎた、徐々に体力を奪われていく楓
「はあああ!」
 腕に食いついたゾンビもろともライブスブローでゾンビを薙ぎ払い。
「なさけねぇ、俺たちは何もできねぇ、あんな女の子に守ってもらってるのに、足が震えて、ここで銃を撃ってることしかできねぇなんて」
 ゾンビの呻き声の合唱、その中で、彼等の嘆きだけが妙にはっきりと聞こえた。
「違いますよ」
 楓は一歩後退して振り返る。
「諦め、絶望する必要なんてありません。私達には、この状況を覆すための力が、勇気が、友が……そして絆があります」
 次の瞬間、死者の群を切り裂いて何かが高速で飛来した。
 それはどろどろに溶けた獣のような外見。
 紫の獣が唸りを上げて楓に一直線に襲いかかってきたのだ。
「きゃっ」
 食いつかれるが蹴り飛ばして距離をとる、いつの間にかバリケードへ死兵が群がろうとしていた。
「いかせません!!」
 そう楓が地面に剣を突き立てて、高らかに宣言すると。霊力の波動が周囲を覆った。
 若手リンカーたちに殺到していた死兵は楓へと視線を移す。
「そんな、あなただって余裕があるわけじゃ」
 誰かが叫んだ、死者の海の中に沈みそうになる楓へと。

「いいんですよ、私に守れるなら。守らせてください」

「私が絶対の盾になります」

「ここから先には、絶対に行かせません……!」

 完璧なる守護者がそこにいた。わが身を顧みずただただ弱きのために。
「さぁ、私が相手になります」
 その時だった。
 銃声が戦場に轟いた、そして風切る音も。
 それら全ての精度が、リンカーたちががむしゃらに放ったものと違い、性格に死兵を打ち砕いていく。
「待たせたわね」
 それは京子の率いる射撃部隊だった。
「狙いやすいゾンビから撃って行って。当たればいいよ」
「はい、隊長!!」
「紫の獣は私にまかせて」
 楓へと最接近した紫の獣は吹き飛ばされる。
「アルテミス、弓の女神のようだ」
「あなたの旗のもとに集まった我々に勇気を与えてくれる、我らは貴方を現代によみがえったアルテミス讃えましょう」
 その言葉を聞きながら、京子ははにかんだ。
「楓さん!!」
 その隙にいったん救出される楓、リンカーたち総でのケアレイで傷を癒されていく。
「ありがとうこれでまだ戦えます」
「そんな、これ以上我々のために傷つかないでください。お願いします」
 その言葉に楓は首を降って、立ち上がる、そして盾を拾った。
「なぜそこまでして守ってくれるのですか?」
 その言葉に楓は笑みだけ返して、戦場に向かった。
 その輝く後ろ姿から、守護の聖女と呼ばれるようになることを彼女はまだ知らない。

第四章 ハッピーエンドメイカー

 黒絵とシウは裏口にいた、通路が狭く敵の壁が分厚い。ここを守りきるのは骨だった。
黒絵は早速敵の中央に躍り出ると魔導銃を腰うちで、ひたすらに弾丸をばらまいていく。これだけ敵が密集していると外す方が難しいのだ。
――黒絵!
 シウの叫びに反応して黒江はふりかえる、眼前に迫ったゾンビを足台にジャンプ。
 空中で反転してブルームフレアを放つ。
 極大な傷跡を残して、かなりの数のゾンビを灰に変えた。
「これだけやっても、全然減らない」
――黒絵……トラップだ!!
 着地後黒絵はそれを見た。地面と同系色に着色された魔符。モーションセンサー式の魔導トラップである。
 それをシウはたやすく解除する。
「いったい誰がこんな……」
 そう黒絵がつぶやいた直後、上からハーメルが降ってきた。
 その視線の先には工兵が。
「こいつだけは野放しにしておけない!!」
――同感だ。黒絵
 それを合図に表面意識をシウにバトンタッチする黒絵。
「周囲にあるトラップを一括で解除する……誰か援護を」
 その言葉に対する返答は銃声で行われた、見れば蘿蔔が指揮する銃撃部隊が待機している。
 それを見届けたシウは周囲に魔方陣を最大展開。サーチ、そしてアンロックを繰り返す。
「数が多いな……」
 そんな彼の行動を止めようと、工兵に命ぜられるまま、死兵がシウに群がっていく、だが誰一人として到達できない。
「自分のペースで大丈夫。落ちついて、よく狙って」
 蘿蔔の指示の元統括された銃撃部隊がそれを阻んでいるのだ。
 それを感心したように眺めている『レオンハルト(aa0405hero001)』は今回は自分の出る幕はないと笑う。
「工兵さん、困ります……」
 蘿蔔の正確無比な射撃は工兵の右足をを弾き飛ばす。
「とりあえず動けないようにしないと」
 ハーメルはお得意のハングドマンで工兵を釣り上げて、両足をバラバラに切り分けた。
「ハーメルさん、なげて!」
「ええ! どういうこと?」
 シウのオーダーに応じハーメルはハングドマンを操作、敵の中心へ工兵を投げた。
 その瞬間である。
「シウ ベルアートが命じる、ありったけの力で自爆せよ」
 直後、地面を揺らすほどの衝撃と熱波。米軍も真っ青なほど極大の火焔球体が死兵たちを覆った。
「なんて、火薬量だ……」
 これは本当に危なかったとシウは汗をぬぐう。

    *    *

 やがてアルの歌が耐えた後、僅かばかりの空白時間。
 その合間にH.O.P.E.の支部内に声が響く
「バグダード全域がもし、全て壊滅しているのだとすれば、貴方達、バグダード支部の生き残りは全人類に向けて目を覚ませと警告しなければならないんだ……」
 それは稜の声だった。
「その為にも、この局面を打開しなくちゃいけない……愚神に負ける事無く生き延びるために……」
 彼は負傷者の手当てや、他方への通信など全て終えて屋上を目指していた。
「くっ……」
「さすがにきついですね」
 屋上では鈴音とイリスが暗殺者を押しとどめていた。お互いにほとんど無傷。
 暗殺者はイリスの防御を突破できず、二人の攻撃は暗殺者に当たらないためだ。
 ただこうなると、暗殺者の毒が価値を持ってくる。
「毒が……」
 幻覚、眩暈、吐気、出血、様々な症状に悩まされる二人。徐々に武器を持つ手の感触、それすらもあいまいになってきた、しかし。

 その耳に響く音が全てを浄化していく。

《集いたて 能力者達! 
 絆を交わすなら》
 
 音楽もない、彼の肉声だけの旋律、しかしそれは戦場に染み渡り。傷ついた戦士たちを癒していく。

《友よ行こう明日を歌い
 新たな地平へ》

 稜が立っていた。いつの間にか屋上の縁に断ち。戦場を満たさんとばかりに大きな声で歌を謳っていた。
「さぁ、みんな、絶望的なこんな状況だからこそ、希望を持つことを忘れてはいけないよ」
 そんな稜の声に歓声がついてくる。支部内すべての人間が、拳を突き上げて、希望を忘れていないことをアピールする。
「希望が見いだせないっていうなら僕らが支える。希望がないなら僕らが希望になるよ」

「だから信じて戦おう、僕達は絶対生きて帰れる。生きた目で大切な人たちの笑顔を身に行こう」

《残り僅かな 旅路よ
 幾重の時を駆け抜け
 愛の言葉を その身へ纏い
 蘇る宿命よ 今こそ有れ!》

 その時、誰かが音響機器にプレイヤーを繋いだのだろう。彼の曲が再生された。
「まだいける?」
 稜が暗殺者のナイフをはじきつつイリスに駆け寄った。
「いける!!」
 BSから解放された鈴音は早速暗殺者へと張り付いていく。
「お二人とも、援護をお願いします!」
「遅くなってごめん!!」
 その時屋上のドアをぶち抜いて、ハーメルも帰還した、その背後に二人のスナイパーが立っている。
「任せてきちゃいました」
「みんなやる気十分よ」
 戦場の指揮は高まり、もはや元からあった戦力だけで戦場を維持できるほどになった。
 そうなれば、あとの問題は目の前のケントゥリオ級だけ
「教えてやるよ。邪英化がただの弱体化だってことをな!」
 イリスが高らかに叫ぶ、その背後には歴戦の仲間たちが控えている。
「この黄金(キズナ)に陰り無し! これが無影の光刃だ!」
 そう放たれた輝きが暗殺者の体を走る。
 そして次の瞬間響いたのは。イリスの曲《雨晴の音~Brave~》である。

《心に灯火を
絶望が雨と降ろうとも決して消えない灯火を
心に希望を
絶望が闇となり覆い隠そうとも決して曇らない希望を
心に旋律を
絶望を討ち払う気高き旋律を》

――イリスより、涙雨の派生、雨晴――涙雨も未完成のままで派生とはねぇ。
「そこは気分だよ、お姉ちゃん!」
 バルムンクのコーラスと共に、全員が駆けた。
 屋上のもっとも適した位置に陣取り、それだけで暗殺者の動きを規制していく。

《歌え!歌え!歌え!》

「ゾンビってさ、痛くないの?」
 イリスは盾で足を払い腹部に剣を突き立てる、青銅が火花を放って削れ。反撃にと差し出されたナイフは蘿蔔によって打ち落とされた。
「だったら、覚悟(イタミ)のない体がどれだけ脆いか教えてやるよ」
 いったん距離をとった暗殺者へ京子が弓を放つが、それはかわされた。しかしそれはかなりギリギリのタイミングだった。
「誰かの攻撃の直後を狙ってみて、反撃はされなくなるはず」
 稜が告げる、敵の行動を素早く分析し、有効な戦術を組み立てていく。
「次は外しません」
 蘿蔔の放った弾丸が、青銅を撃ちくだいた。
 よろけた敵をハーメルがハングドマンで縛り上げる。
 反射的に放たれたナイフは稜とイリスが全て盾ではじいた。
 あからさまに暗殺者の表情が歪んだ。

《音楽で繋がり同じ光を共に見よう
光を束ねて絶望の雨空を吹き飛ばそう》

 その宙につるされた暗殺者へと、鈴音が迫る。
「アアアアアアアア!」
 その時初めて暗殺者は悲鳴らしいものを上げた。死人といえどケントゥリオ級にもなれば恐怖という感情くらいあるのかもしれない。

《人の心は、どんな理不尽にだって、負けないんだから!》

 イリスの声が響く中。鈴音はありったけの霊力を剣に込める。
―― やれ鈴音!
 鈴音を纏う霊力が赤い色味を帯びる
「はああああ! 鬼刃・連舞の型」
 高速で放たれた連撃が。暗殺者の体をつぎはぎする青銅すべてを粉砕していく。防壁はすべて爆ぜその弱弱しい肉体が露わになった。
「やったの?」
 だが、それでもさすがケントゥリオ級、まだ息がある。
「アアアアアアアアア!」
 直後反撃とばかりに毒ガスが噴出されるも。
 稜がクリアレイで回復していく、だが今回は一人では手が足りない。
「全く世話の焼ける奴らじゃのう」
 そうぶつくさ言いつつクリアレイを駆けていくのはカグヤ。
 屋上の階段あたりに隠れて様子を見守っていたのだ。
 結果毒の影響は最小限で済んだ。
「非難はあらかた完了した。派手にやってもよいぞ」
 そうカグヤが全員に告げる。
「と言っても……」
 まともに攻撃が入ったのはこれで計四発程度。べらぼうに高い回避能力の敵を攻め落とすのは難である
 だが、戦闘は突然終わりを告げた。
「あれを見て」
 ハーメルが指さした先、まるで暗雲が空に溶けて消えるように、光が切り裂き浄化するように、ドロップゾーンが消えていく。
「勝ったんだ、僕達の勝利だ」
 鬨の声が上がる、それに重なるように暗殺者の悲鳴が重なって。そして……

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535

重体一覧

参加者

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 遊興の一時
    御門 鈴音aa0175
    人間|15才|女性|生命
  • 守護の決意
    輝夜aa0175hero001
    英雄|9才|女性|ドレ
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • 病院送りにしてやるぜ
    桜木 黒絵aa0722
    人間|18才|女性|攻撃
  • 魂のボケ
    シウ ベルアートaa0722hero001
    英雄|28才|男性|ソフィ
  • 神月の智将
    ハーメルaa0958
    人間|16才|男性|防御
  • 一人の為の英雄
    墓守aa0958hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 銀光水晶の歌姫
    アルaa1730
    機械|13才|女性|命中
  • プロカメラマン
    雅・マルシア・丹菊aa1730hero001
    英雄|28才|?|シャド
  • これからも、ずっと
    柳生 楓aa3403
    機械|20才|女性|生命
  • これからも、ずっと
    氷室 詩乃aa3403hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
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