本部

私でなければならない理由

玲瓏

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~8人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/07/29 20:18

掲示板

オープニング

 自分でないと思う恐怖、私でなければならないという固定観念。
「確か、ここだった……よな? ゲームに書かれてた場所って」
「体育館ってここだろ。ここしかないでしょ」
 今でもまだ公立中学校として機能している場所に、今年で二十歳となる男二人が、夜に侵入していた。彼らの目的は一つだけであった。
「俺こういうの好きなんだよ。あのゲーム考えた奴天才じゃねえの」
「斬新なアイデアだったよね。でもちょっと怖くね。夜の中学校ってだけでさ」
「まあね。ってか寒いなー……肝試しやってるみてえだな」
 重苦しい扉には鍵がかかってはいなかった。不思議な話である。普通大きな鍵がかかっているはずなのにだ。
 二人はゆっくり扉を開けた。
「ってかさ、本当にいいのかな」
「何がだよ」
「不法侵入だよどう考えても。ゲームに書かれてあるのが嘘でさあ、何もなかったらどうすんだって話。最悪教師に見つかるんじゃない」
「ここまで来て戻りたくないだろ……! それに大丈夫だ。なんとかなるって」
 といいつつ、二人とも中々扉の先に踏み込めずにいる。しばらく固まっていると、横から不意に声が聞こえた。
「あの。もしかしてゲームをやってきた人ですか」
「あ、ああびっくりした。そうなんです。えっとここが正解ですよね?」
 声の主は一人の子供と大人だった。声を出したのは子供で、大人の方はニコニコとしながら二人を見ている。
「多分、そうだと思いますよ。中に入らないんですか」
「今から入ろうと思っていたところです! えっと、お先にいいですか」
「分かりました」
 二人の男は決心がついたようで、中に足を踏み入れる事に成功した。後ろで子供と大人が体育館の扉を閉めた。
 夏の夜の体育館はどこか蒸し暑かった。


 プロジェクトコード『ドミネーター』その言葉ばかり、坂山の脳を巡っていた。友人と遊んだり、食べ物を食べたりする時はあまり表に出る事はなかったが、一人の時間が完成した時、その文字が目まぐるしく回っていたのだ。
「深い意味はないんじゃないかな」
「どうして?」
 ノボルは坂山の気を少しでも和らげようと努々言葉を紡いだ。
「あの違法改造組織は捕まったし、スチャースだって今は立派な幸福ロボットになってるんだよ。もう終わった事じゃないかな」
「違法改造の組織は一般人だけで構成されていた。だけどリンカーがいた事が発覚したわ。そして待ち伏せ、謎の男の存在。国籍不明のヘリ。そんな事ばかりあって、裏がないとは思えないのよ」
「あまり考えすぎると恋人もできないよ」
 素っ頓狂な声を上げた坂山は、ノボルの顔から笑みを誘った。
「そ、それとこれとは別よ、別。別……よね?」
「男性は、笑顔の素敵な女性が好きだと思うよ。今の坂山は、ちょっと笑顔成分が足りてないかな」
「はあ。いや、確かに恋人は欲しいわよ。だけれどそれと同じくらい、この事も大切なの。……若作りよりも、笑顔作りが先かしら……」
 犬型ロボット、四足歩行のスチャースが坂山の部屋に入ってきた。
「坂山、ドミネーターに関する情報が入ってきた」
 机に突っ伏していた坂山は瞬時に姿勢を正し、スチャースに向かい合った。
「詳しく教えてもらえるかしら」
「今インターネットで騒がれているフリーゲームがある。そのタイトルが『C.H.D.C』と呼ばれる物なのだが、それぞれ英語ドイツ語フランス語イタリア語で全て"支配"という単語の頭文字を取った物であって、問題のドミネーターという単語は支配者という意味を持つ」
「ただの偶然じゃない?」
「なぜこのゲームが騒がれているのかというと、ゲームをプレイした人間は行方不明になるという事件が相次いでいるからだ。都市伝説ではなく、本物の事件だ」
「なるほど……ね。ドミネーターに関連するか関連しないかはさておき、事件なら調べる必要があるでしょうね」
「その通り。坂山、すぐにエージェントを招集しなくてはならない。このゲームの事を調べなければならないだろう」
 都市伝説のような事件で、都市伝説でない。ところが危険な任務なのだろう。本当にドミネーターが絡む事件であるならば、一層の事。
 この組織は、得体のしれぬ強さを持っているからだ。

解説

●目的
 ゲームの調査。消えた人物達の捜索。

●坂山の提案
 この事件を解決するために、坂山は「ゲームをプレイするエージェント」「捜索するエージェント」二つのグループに分けた方が良いのではないかと提案する。

●ゲームについて
 フリーゲームで、インストールすれば誰でもプレイできる。制作したのはH.Bというハンドルネームの人物で、その人物のサイト等はない。
 あらすじはこうだ。苛められていた女の子が仕返しのために主人公を暗い学校に閉じ込めて、主人公はその仕返しから逃げるというストーリー。普通のホラーゲームかと思えば違って、プレイヤーは主人公を操作するのではない。学校の外にいる主人公の友人複数人を使って、主人公を脱出させるというゲームなのだ。
 ドット絵だが所々CGの絵等も組み込まれて、本格的なゲームである。
 主人公を助け出す友人達はプレイヤーが作る事ができる。名前、性別、年齢、主人公との繋がり等。リアルの時間で一時間以内に主人公を学校から脱出させる事ができなければゲームオーバーとなる。ちなみにそのキャラクターは何人でも作成可能。
 脱出方法は複数あるが、ヒントは一切ない。道具等は様々な物の組み合わせで作成する事が可能。作れる道具は非常に幅が広い。
 ちなみに学校というのは普通の学校で、中学校である。

●誘拐された人物
 H県O市にある公立中学校の体育館には、土地の管理者の知らない所で、勝手に地下が建設されている。
 ゲームをプレイしてクリアした人物は体育館にくるように言われ、行ってみると組織の人物が待ち伏せして地下室に連れ込まれてしまう。連れていかれた人物は人体を改造され戦闘員にさせられる他、適正でなければ殺害される。
 そこに出向くと人体改造を終えられた人間達がエージェントに襲いかかるが、彼らを助ける事は難しい。洗脳装置が脳内に埋め込まれているからだ。
 数人の人間は、まだ改造されずに監禁されている。

リプレイ


 この任務を遂行させるためには二人一組、各々に別れて行動するバランスが求められていた。問題のゲームをプレイして調査する組が一つと、行方不明者捜索が一つ。
 前者の作戦を担当する赤城 龍哉(aa0090)と橘 由香里(aa1855)は坂山の家へと招かれていた。
 本部でゲーム調査を行う事が本来のやり方なのだろうが、万がウィルスである可能性も捨てきれないため念には念を入れて坂山の家でのパソコンを使って行われる事になった。
「あんまり小奇麗な家じゃないけれど、よければ寛いでいって」
「坂山さんの家ってこうなっていたのね。ちょっと意外かも」
 一戸建て住宅の、広い間取り。観葉植物が置いてあったり、薄いピンク色のソファーが置いてあったりと私生活に投じるお金に糸目はない風貌が見られる。
 ぬいぐるみもまた特徴の一つだろう。ソファーで仲良くテレビを見ている。テレビは付いていないが。
「お茶を用意してくるわね」
 パソコンのスイッチが入り起動している間、坂山は繋ぎを保たせるべく茶菓子の用意へと向かった。
 ところで、今度の作戦にはスチャースの顔も見えていた。赤城と橘は二人とも顔見知りだった。パソコンの横、机の上に座って尻尾を振っていた。
「研究所以来だから久し振りだな。色々大変だったみたいだが、再会できて嬉しいぜ。スチャース」
「私もだ。赤城と、そして橘……二人には非常に助けられた。本当に感謝している」
「スチャース、以前の命令はもうないのよね。幸福探求……のような命令」
「既に消えている。だが、人々を幸福にするという性格は残ったままだ。故に私は、人を幸福にさせる事、それだけに生きがいを感じられる事になっている」
 赤城は力強く彼の頭に手を置いた。撫でるのではなく、そのまま頭上で親指を立てた。
「よろしくな!」
 茶菓子が二人の手元に運ばれた。和風であり、チョコモナカと緑茶だった。
「それにしても、二人ともゲームってやった事あるのかしら?」
「得意分野じゃねえんだけどな。実際、行方不明者が出てんだろ? なら苦手とか言ってる場合じゃないぜ」
「飯綱がいないのは痛いわね。私はこういうのやったことないからなぁ」
 二人の言葉に頷きながら、坂山はマウスを動かしてゲームのアイコンをダブルクリックした。
 モニターは真っ暗になった。すると白い文字だけが、真っ暗な背景の前に浮かび上がった。
「ルール説明だけは目を通しておきましょうか」
 かいつまんだルール説明が表示される。終わらない暗闇の中に明朝体の白い文字だけが浮かぶ。
 このゲームは脱出ゲームのようだった。しかし主人公は操作できない。操作できるのは閉じ込められていない、外野の人間のみ。外から主人公を助け出すために様々な道具を支給するのだ。
 場所は学校。プレイヤーはNPCを作成し、コンビニや家等から材料を調達する。更に材料を組み合わせて学校の中に道具を投げる。必要に応じた判断力と、作成できる道具を思いつくための発想力が求めらる。
 後、校舎内には幽霊が徘徊している。一体しかいないが、主人公は無力。全ての攻撃が通用しない。捕まると敗北となる。
 幽霊という文字に赤城は少なからず戦いた。
「大体のルールは分かったかしら」
「おおよそは。実際プレイしてみないと分からない事も多いでしょうね」
「そうね、私も同じ気持ちよ。さて、じゃあさっそく始めてみましょうか」
「よっしゃ、任務開始だな。最初は俺がプレイして、感覚を掴んでやるぜ、ゲームオーバーになっても誰かが死ぬ訳じゃねえし、気楽にできるあたり融通が利くぜ」
 パソコンのモニターの前に赤城が座って、その隣に橘。坂山は後ろからたってモニターを見つめていた。


 捜索するにしても、行方の分からなくなった人々の場所に閃きがあるはずもなく、まずは情報収集だった。ギシャ(aa3141)は坂山の調べの元、ゲームをプレイした可能性のある人物の家族に事情聴取に乗り出していた。
 靴底をすぐに無くす刑事達よりも、随分フランクだった。
「やっほー、エージェントのギシャだよ」
「あ、エージェントの方でしたか」
 ギシャは非常に軽装で、服の部分よりも肌の割合の方が多かった。男性はその事に気を取られ緊張しているのか、言葉の発生が遅かった。
「何かメモとかないかなー?」
「いえ、メモはないんですが……えーっと、友人とどこかに出掛けるといっていただけでした。夜だったので、まだ弟は高校生だったので、えっと危険だと思って止めたんですが」
「へえ! いきさきは分からないんだ?」
「はい、すみませんお役に立てなくて」
「本当に役に立ってないねっ!」
「えぇ……」
 お兄さんはその言葉を真に受けたのか、残念そうな顔になった。
「そのお友達はどこにいるのー?」
「住所を後ほど。えっと、ちょっと待ってくださいね。確か俺、弟がそのゲームをやってる所をみたんですよ」
「ふーん。それでそれで?」
「なんだか街の風貌がこの街と似ているなという事が分かったんです。ゲームにはコンビニや道具屋等が出てくるのですが、地理や道順等が全く同じでした」
「へー!」
 ギシャは弟の友人の住所を教えられ、四苦八苦しながらもそこに向かった。道順も教えてもらったものの、この街は少し乱雑なのだ。
「あった! ぴんぽーん!」
 当たり前のように訝しい顔をされた後に、エージェントという言葉を聞いて家の住人は安心感を取り戻した。出てきたのは多分母親と呼べる人物だろう。
「息子がいなくなってから私も必死になって探してみたんです。町内会の役員で、顔見知りは多いもので……。そしたらね、面白い事が聞けたんです」
「面白い事ー。どんな事?」
「確か一人のお母さんの人が、最近O中学校の体育館が夜勝手に解錠されているっていう話をしてね。閃いちゃって、息子がいなくなった日、一昨日の事なんだけれど、一昨日はどうだったのかって聞いてみたの」
「返事は?!」
「分からないって」
「ありゃぁ」
 ギシャは強く目を瞑りながら右手で自分の頭を簡単に叩いて大きなリアクションを示した。
「でも、夜体育館が開いているっていう事が大きなヒントになると思うの」
「今のところヒントっぽいヒントそれしかないしねー。調べてみるよー!」
 他の家にも事情聴取しなければならないが、ギシャはそのヒントを防人 正護(aa2336)へ教え、早速調査! と歩を進めた。


 このゲームはステージが存在しない。脱出するために開けなければならない鍵は校舎の出入り口である大きな扉だけ。その扉の鍵を探す旅を主人公は求められるのだ。
「予想だが、出入り口扉の鍵はどこかの教室の中にあるのだろう。一階の職員室、そこが一番可能性が高いのではないだろうか」
「おっけー! そんじゃあ早速向かってみるか……って、そういや俺主人公操作できねえんだよな。どうやって向かわせるんだ?」
「これも予想だが、何か手紙のようなものを主人公に書いて、それを投げ入れるのではだめなのだろうか?」
「なるほどな! さすがスチャース先生! で、主人公はどこにいんだ?」
 モニターには先ほど赤城が作った青年NPCしか存在しない。主人公と呼ばれる人物に関する情報はどこにもなかった。
「そこからなのね……。案外、このゲーム侮れないかもね」
「つか、見た目と違って随分と校舎の構造が本格的じゃねぇか、これ」
 手紙を書くためにコンビニへと向かう最中、道の途中に携帯電話ショップという文字が赤城の眼についた。
「携帯電話か。これならば手紙を書く必要はないが、主人公の携帯のアドレスを知っているのだろうか?」
 そう言っている間に、突然画面がホワイトアウトした。
「うお、なんだ?」
 どうやらゲームオーバーとなってしまったらしい。突然テロップがあの白文字で表示され、「犠牲者」と大きく表示された文字の下に赤城の作ったキャラクターの名前がある。
「次は私が挑戦してみるわ。赤城さんのを見ている間に、良い案が思い浮かんだから」
 再び開始のボタン。橘は赤城と違って、最初から複数人ものキャラクターを作成した。それぞれ携帯で主人公と連絡が取れる親友、作戦を考える相談役、力任せの筋肉男、アイテムを校舎に投げ入れる弓道部員。
「脱出が大扉だけとは限らないわ。教室の窓とか、屋上から逃げられるという事も考えられる……」
 結果はこうだ。教室の窓は全て嵌め殺しとなっており、力任せで開けようにも外れない。屋上に出るにも鍵が必要で、その鍵を探す間に一時間が経過した。弓矢や連絡で良い援護をしたものの、クリアには及ばずだった。
「はぁ……そうよね、簡単にはクリアさせてくれない……わよね」
 橘は横眼でスチャースを見た。
「落ち込む事はない。大きく進展を迎えたと私は思っている。大扉以外からの脱出、その事に気づかせてくれただろう。赤城、橘の後を継いで、クリアするのだ」
「おう、任せとけ! ったく、俺がここにいりゃ窓の一つくらいぶん殴って壊してやったんだけどな」
 坂山は次の茶菓子を持ってくるといって、二人から離れた。もうしばらくゲームは続きそうだ。


 学校に一足早くきていた防人は、授業中の子供達を邪魔せずに職員室へと向かった。担任に体育館の鍵について尋ねるためだ。
「それなら、頻繁に起きているんですよ、最近。本当に困ったもので。鍵を変えたり鍵の保管場所を変えたり工夫はしてるんですが、どうしても開けられてしまって」
「一昨日も開いていたのだろうか」
「そうですねえ。はい、空いてました。ですがここの所毎日空いてるようなものなんですよ。昨日も空いとりましたし」
「ふむ……。今体育館を調査する事はできるだろうか?
「今は授業中でして。来賓の方々をお出迎えする部屋があるので、そこで待っていていただけますか」
 防人は革で出来た、中々上質なソファのある部屋に案内されてコーヒーが出された。
 その時、橘から通信があった。
「進展があったのか?」
「ええ、それも大きくね」
 何度もゲームオーバーを繰り返し四時間程の格闘の末、ようやく主人公を脱出に導いたという。クリアの道筋を見つけたのは赤城で、偶然であった。
 職員室に一つだけナンバー形式に仕掛けられた机があり、四文字の暗号なのだが赤城はゲームを開始するたび我武者羅に挑戦していた。それが功を奏したというのだ。
 中には屋上の鍵が入っており、橘の提案通り屋上からの脱出が可能となった。
「それで主人公は脱出……なんだけれど、スタッフロールが流れた後にもゲームは続いたの。最後に選択肢は二つ出たわ。"幽霊の正体を確かめにいく"と、"帰宅する"……。幽霊の正体を確かめにいこうとすると、主人公は体育館へ向かい始めたの」
「体育館?」
「そう。偶然かもしれないけれど、可能性は十分に大きいでしょう?」
「……分かった」
 電話を切った防人は、先ほどの担任に会いにいった。危険だと話すと、生徒を避難させるべく彼は急いで体育館へと向かった。


 ギシャと二人、防人は体育館を調べていた。するとどこからともなく二人の親子が出てきた。親子というのも、一人は大人一人は子供だったせいでそう見えただけだ。
「あのゲームをクリアしたんですね」
「あぁ、俺はクリアした友人の代理で来ている。……特典とやらがもらえると思い込んで人を使いやがって」
「ははは。実は私も先ほど終えましてね。向かいましょうか」
 防人はこの間、ゲームの内容を橘にざっくりと説明してもらったが、全く分からないといった様子だった。
 体育館には扉があり、中の床が一つ開いて地下に続く梯子が伸びた。親子に連れられるよう、二人は降りていく。
 突然、床がしまった。
 そして更に突然は重なった。親子は防人の目の前で銃を取り出し、二人に突き付けたのだ。真っ暗だった地下室に明かりが灯る。付近は生気を失った人々が二人を取り囲んでいた。
「この人々らは、行方不明になった人間だな」
「おや、あなたはエージェントでしたか。なら好都合。この人達と同じ様、改造を施してさしあげよう」
「改造……? もしや行方不明の人々は……!」
「私のために、全員改造させてもらいました。力が強いんですよ?」
「……改造人間だと、そんなもの俺は絶対に認めないぞ! 変身っ!!」
 先手に乗り出したギシャは何十人もの改造人間を蜘蛛の糸でまとめて行動を阻害した。一般市民だと分かった以上、殺人はできない。
「ギシャ、向こうの方見てくるよ! 防人にここは任せていいかな?」
「分かったッ」
 犯人の親子は奥へと逃げた。ギシャはその後を追うように、隠密行動に気を付けながら追う。
 橘と赤城が駆けつけ、場所を防人から報告を受けると地下へと突入する。
「随分と趣味の悪い事だな」
「そうね、無駄に力を入れないようにしないと……」
 改造人間の力は強く、油断をすればリンカーですら大ダメージを食らう程であった。慎重な作業の元――漸く全員気絶させる事ができた。
 ギシャは犯人を追い詰めていた。
「逃げられないよ!」
 犯人の近くには人質が数名いた。まだ改造を施されていない人間だ。……ここで知る事がある。子供もまた改造人間であった。
 逃亡は許されない。犯人の前には、改造人間達を退けた三人のエージェントが合流し、四人に囲まれていた。
「夏のバカンスシーズンを前に誘拐されるのは嫌ね。もうあなたの逃げ道はないわ、投降しなさい」
「――ネーター様のため……。――メス様のため……し、死ぬのは怖くない!」
 犯人は橘の胸に銃口を合わせた後、ニヤリと笑って自分の頭に持って行った。防人は逃さず、弾丸で銃を弾いた。呆気ない幕切れながら、犯人は簡単に降伏した。

 改造人間と人質は全て救急車に乗せられて病院へ向かう。その中、坂山はエージェント達を労った。
「結局、幽霊の正体ってなんだったのかしら」
「あーそういやそうだな。うーん……。改造人間、じゃねえだろうな? にしても幽霊って一人だけだったしな……。犯人? にしてはなんかパッとこねえな」
「なんだか後味が苦い終わり方ね。パッとしない……。製作者は私達に解釈を丸投げしたって事?」
「あそこまで本格的なゲーム作ってた奴がか?」
「そうよね。ちょっと不自然だけれど、もしかしたら帰ってゲーム画面に何か表示されているかもしれないわ。戻ってみましょうか」
 防人とギシャも連れて、一同は坂山の家へ再び集った。二人ともゲームについては全く分からないが、任務がどう終わるのかを見届けるのだった。
「これ……」
 モニターには赤文字でこれだけ描かれていた。
 "犯人"、"犠牲者"、"主人公"、"お前"。謎めいた文字列はやがて消え去り、人を嘲笑うピエロの顔だけが映し出された。
『ドミネーターが世界を殺す。お前はその材料となる』
 最後はピエロのお面が外れ、血の付いたナイフを持った主人公が笑っていた。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
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