本部

銀の雨が降る

弐号

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~8人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/07/23 20:40

掲示板

オープニング

●H.O.P.E.の隙
「これはチャンスだ」
 愛用のスナイパーライフルの整備を終え、照準の点検をしながら男が仲間たちに告げる。
 ここは時代から取り残された工場地域の一角。ガラの悪い連中のたまり場となって久しく、地元住民も近づかない半ばスラムとなりつつある場所である。
「チャンス?」
「そうだ」
 部下と思わしき大柄な男がおうむ返しに聞き返す。
「なんでも今、中東の方で随分忙しい事になってるみてぇじゃねぇか」
「そうだねぇ。よくニュースで見かけるけど。あんまり詳しい情報は出てなくてよく分かんないな、あれ」
「一般的にはな」
 男の放った弾丸が遠く離れた壁に掲げていたH.O.P.E.のロゴを貫く。
「昨日、裏が取れた。H.O.P.E.の連中は今中東に掛かりきりだ」
「その隙を狙うってわけか」
 部下の言葉に男が無言で頷く。
「そうは言ってもさ。H.O.P.E.にはアレがあるだろ?なんだっけ、ワープするやつ? 中東に手間取ってるって言っても、あんまり関係ないんじゃないのぉ?」
「ワープゲートがある場所は限定されてる。そこまでの移動には時間が掛かるし、なによりでかい戦いだ。人員の疲労や損耗もかなりのものだろうよ。そりゃ来れないわけじゃないだろうが、腰が重いのは間違いない。誰だって疲れたら休みたいもんだ、組織にしろ、個人にしろな」
「ふーん、そんなもんか」
 興味なさげに細身の男が呟く。
「まあ、賭けてみる価値はありそうな話だ」
「だろ? こんなチャンスを危ねぇからなんて腰抜けた理由で逃したら『シルバーバレット』の名が泣くぜ」
「ふふっ、まあ、僕も楽しそうだし賛成、かな?」
「決まりだ」
 ダンッとテーブルにナイフを突き立てる男。
「そうと決まれば即決行だ。時間を掛けちゃ意味がねぇ。明日の夕方、以前からマークしてた現金輸送車を狙う!」

●裏方の戦い
「くっ、よりにもよってこんな時に……」
 警察からのヴィラン逮捕の支援要請の連絡を受け取り、奥山 俊夫(az0048)は思わず目元を眉をしかめた。
「いや……このような時だから、か」
 狙われたのだと悟る。中東の騒動に乗じて手薄になるタイミングに動き出したのだ。
「……ならば馬鹿者どもに示してやる必要があるな」
 気を取り直してパソコンを操作し、各方面への手回しを始める。とにかく時間が勝負だ。
 ワープゲートの使用許可、タイムスケジュール管理、現場の周辺地域の情報の確認、警察との情報の交換。やるべきことは無数にある。
「H.O.P.E.に狙うべき隙などないという事を」
 事務手続きもまた、奥山にとっては一種の戦いだった。

解説

●目的
ヴィラン集団『シルバーバレット』の壊滅と捕縛

●敵
ヴィラン集団『シルバーバレット』
 ジャックポットを中心としたヴィラン犯罪集団。地方を中心に暴れまわっており、戦闘経験もそこそこ豊富で厄介な相手である。
 今回地方の都市間を移動していた現金輸送車を襲撃し、多額の現金を奪い取った。
 廃工場を根城としており、多数のジャックポットで周辺を警戒している。警察も場所は把握はしていたが、なかなか踏み込めずにいた。
 現在奪った現金をもって一時的にここに集合し、それから逃亡しようとしているようだ。

・『シルバーバレット』リーダー 佐藤 良一
 高レベルのジャックポット。スナイパーライフルによる狙撃を得意とする。
 リーダーシップはそれなりに持っており判断力もあるが、土壇場ではプライドを優先してしまう面も持っている。

『シルバーバレット』構成員
 ジャックポット×5
 ブレイブナイト×2
 ドレッドノート×1
 バトルメディック×2

●場所
 『シルバーバレット』が根城とする廃工場。以前は機械で占められていたが、それらは撤去されており中は広くガランとしている。 入口は一つで、大きな部屋が一つあり、奥に高所へ向かう梯子がある。梯子を上るとぐるりと外周に沿って足場が組まれており、各ジャックポットはここから窓を覗き工場周囲を警戒している。
 工場の広さは幅10マス、奥行き15マス。二階の足場までの高さは6mである。

※逮捕捕縛について
 警察との共同作戦となっております。戦闘不能となった敵に関しては警察が隙を見て捕縛し専用の護送車へと収監します。

リプレイ

●予感
「どうやらうまく行ったみたいだな」
「ま、今のところはな」
 暗い工場の一角、『シルバーバレット』の面々がテーブルを囲い祝杯を挙げる。
 そのテーブルの上には銀のアタッシュケース。中にぎっしりと詰め込まれているのは人の欲望の源だ。
「一先ずのお小遣いだ、ほれ!」
「よっしゃー!」
 リーダーである佐藤がアタッシュケースから札束を数個取り出し雑に放り投げる。
 まるで電灯に群がる羽虫の如くばら撒かれた金に群がる男たち。
「いいのか?」
「いいんだよ、餌が無くちゃやる気も出ないだろ」
 アタッシュケースを閉め、奥にある業務用バンの荷台に放り込む。そこには同じデザインのアタッシュケースが大量に積まれていた。
「今一番困るのは裏切りだ。多少の消費は経費の内だよ」
 わざわざリスクを侵してまでこのアジトに一度集合したのもその為だ。金は惜しまず払うという事を行動で示してやる必要があったのだ。
「まあ、僕は楽しければなんでもいいけどねぇ。さて、と、じゃあ――」
「……シッ! 少し静かにしろ」
「?」
 金には目もくれずスマホを弄る仲間を指で黙らせ、佐藤が手近な窓から外を覗く。
 裏手は森と呼ぶには少し物足りない程度の雑木林だ。特に変わった様子もなく、風に揺れる木々が日差しを揺らしていた。
「……いるな」
 その風景に一体何を感じ取ったのか佐藤がポツリと呟く。
「何だと、警察か?」
「分からん、H.O.P.E.も来てるかもしれん。油断するな」
 傍らに置いてあった愛用のスナイパーライフルを手に取り天井に向かって弾丸を放つ。
「野郎ども、宴は一旦中止だ!」
 轟音に驚き静まり返った工場内に佐藤の声が響く。
「お客さんだ! 歓迎の準備をしろ!」
 先ほどのお金をばらまいた時と同等の歓声が上がる。
 ここは彼らの縄張り。縄張りを荒らす者には銀の弾丸を食らわせるのが彼らの流儀だ。

●偵察
「気付かれたか?」
「そう考えた方がよさそうですね」
 霧島 侠(aa0782)の呟きに傍らの九字原 昂(aa0919)が頷き同意した。
 今、彼らがいるのは工場からは少し離れた建物の影。耳に届いた鋭い銃声が、接近の発覚を告げていた。
「勘がいい連中ッスな。へばここから行ぐしがないッスべな」
 同じく潜んでいた齶田 米衛門(aa1482)が建物の角から少しだけ顔を出して工場の方を見る。
 距離にしておおよそ100m強と行ったところだろうか。そこまでは駐車場になっていてちらほらと置いてある古い車程度しか遮蔽物はない。
「少し待って下さい。周囲を探ってみます」
 言って昂が腕にライヴスで作り出した鷹を出現させる。
「そうだな、頼む」
 こくりと頷き、昂が手元から鷹を解き放つ。
「入口の扉は開いていますね。そこに見張りらしき敵が二人……」
 鷹の目を通して敵の布陣を確認していく。流石に屋内まで見る事は出来ないが、周囲の情報はあればあるほどいい。
(少しでも探りを……)
 と、鷹を操り工場の横手に回った瞬間、工場の天井近くの窓が突如開く。
「――!」
 そこから伸びたスナイパーライフルが鷹を瞬く間に撃ち貫く。強制的に接続を絶たれ、昂が微かに表情を歪めた。
「……っ」
「九字原さん、大丈夫ッスか!」
「大丈夫です、別にダメージがあるわけではないですから。驚いただけです」
「そいだば良いども……」
 心配する米衛門を片手で制して、脳内で見た事を整理する。
「勘づかれたか」
「ええ、でもそれで分かったこともあります。まず、事前の情報通り敵の天井付近の窓にはジャックポットがいること。それと、リンカーの知識についてもそれなりに詳しい事」
 リンカーは自分のクラス以外のスキルに拘泥しない者も意外と多い。野良で活動するヴィランでは特にだ。特に鷹の目に関しては遠目で普通の鳥と区別するのは困難だ。あの速度で気付き、撃墜するには知識と経験が共に必要だろう。
「まさか、半周もさせてもらえないとは思いませんでした」
「佐藤とか言う男、大分用心深い性格のようだな。国塚、そっちはどうだ」
 侠がライヴス通信機を手に取り、そう問いかけた。

●害虫駆除
「ええ、聞こえてました。まったく社会のゴミのくせに忌々しい限りです」
 通信機を通じて裏手に回っていた国塚 深散(aa4139)が心底憎々し気な声をあげる。
「こちらは遮蔽物の多い林ですから、そちらよりは近づけているはずです。おおよそ2、30mと行ったところでしょうか」
 見つからないように慎重に木陰に身を隠しながら記憶を探る。流石にここまで近づくと顔を出すのも危険だ。
「ただ、見たところ後ろに扉は無いようです。突入の際は多少強引になると思います」
『分かった。何とかこっちで気を引く。タイミングを見計らって突入してくれ』
「ええ、お任せください」
 侠との通信を一旦切り、静かに深呼吸をして気を落ち着かせる。
「ふふっ、駆除してあげましょう、害虫ども」
 昏い笑いをかみ殺しつつそっと刀を構えた。

●バックファイア!
「へば行ぐッスべ!」
 米衛門が気合一喝、叫んで立ち上がる。その手には何故か花火。
「……だな。結局いくら待っても事態はよくならないか。なら自分たちでこじ開けた方が早いか」
「賛成です。これ以上時間をかける意味は薄いと思います」
 三人で意志の統一を図り、頷きあう。
「それぞれ分かれていきましょう。一か所に集まるのは危ない」
「次に会うのはあっこに着いた時ッスな!」
 米衛門が工場の入口を指さす。
「行くぞ!」
 侠の叫びと共に三人は一斉に飛び出した。
「おりゃぁ! こっちゃ見れ!」
 米衛門が突撃する際にとった行動は驚くべきものだった。持っていた設置型の花火を着火し、背中に背負い大量の火花をまき散らしながら真っすぐに入口へと突撃していく。
「なんだぁ、ありゃあ?」
 面を食らった二階のジャックポットが思わず反射的に持っていたオートマチックの弾を米衛門へ向かって放つ。
「わっとっと」
 まだそこそこの距離があった為それは何とか避ける事に成功する
「驚いだども、一先ず注目を集めるのは上手ぐいっだッスね」
 上の窓を覗きジャックポットの射撃を警戒する。あとの二人は少し身を隠しつつ迫るようだ。
「オイがここは頑張るところッスな」
 二つ目の花火に火を点け、米衛門が不敵に呟いた。

●壁の花
「妙だな……」
「ああ、どこからどう見ても妙だねぇ。いいね、嫌いじゃないよ、ああいうの」
 銃弾が飛び交うこの戦場で花火を背負って走るという姿が余程ツボに入ったのか団員の一人がカラカラと笑う。
「そうじゃない。いくら仲間から気をそらすと言ってもあれは――」
 やりすぎだ、という言葉が出てくる前に頭をよぎるものがあり、佐藤は急いで工場後部――雑木林の方へ駆け出した。
 勢いよく窓を開け下の雑木林をスナイパーライフルのスコープを通して覗く。
 スコープの視界は狭い。しかし、だからこそ細かい捜索には向いていた。人は視界が狭い方が広い時よりも確実に目当ての物を発見できるのだ。
「見つけた」
 木陰に隠れた深散の服の切れ端を見つけ、佐藤が引き金に指を掛けた。
「壁の花は寂しいだろう? 今誘ってやる」

●点火
「動き出したようですね……」
 何発か発せられた銃声を聞きながら、深散は突入のタイミングを図っていた。見誤ればただ敵中へ身をさらす事になる。彼女が慎重になるのも当然と言えた。
 しかし、現実はそれほど悠長でないというのが世の常である。
「――!」
 突如、工場の窓が開く音が聞こえる。側面や正面の窓ではない。明らかに音が近い。
(気付かれた……?)
 落ち着いて呼吸を整え、気配を消す。潜伏のスキルも一応使用してはいるが、これはヴィランには効果が薄いのは承知の上だ。だから、ここは単純に敵との我慢比べになる。
(とはいえ……)
 深散は半ば見つかる事を覚悟していた。隠密はそこにいるかどうか分からないから効果があるのであった、そこにいると確信をもって探せば発見はそう難しい事ではない。
(来た!)
 故に深散は銃声が響くよりも一瞬早く回避する事が出来た。隠れていた木から飛び退き、地面に伏せる。
 ライヴスで強化された弾丸に貫かれ木に大穴が開く。
 深散は急いで体勢を立て直し、狙撃してきた窓を望む。
「……っ!」
 窓の男は深散が弾を避けたの見て、満足げににやりと笑って見せた。その態度が深散の闘争心に火を点ける。
「いいでしょう、そのにやけ面、青ざめさせて差し上げます!」
 これ以上身を隠していたもジリ貧だ。深散は武器を構え工場へ向かって駆け出した。

●突入
「ちっ、何やってんだ、早く仕留めろ!」
 飛んでくる銃弾を避けたり防いだりと何とかやりくりしていた米衛門に焦れたのか、入口にいた大柄な男が大剣を担ぎ米衛門へと迫る。
(大した腕でねけと……さすがに上から狙われてっどキヅイな)
 その立ち振る舞いからおおよその実力を図る。タイマンであれば相手になるまい。しかし、いまは前方の窓二か所から狙われている状態である、長引けば危険だ。
「もらった――ん、ぐっ?」
 男が大剣を振りかぶったところでギシリとその動きが鈍くなる。
「のこのこと出てくるからですよ」
 その脇を昂が駆け抜けていく。米衛門の前に立つ男の脇腹にはライブスで作られた長い針が突き刺さっていた。
「おお、九字原さん、ナイスッス!」
 鈍った攻撃など問題にならない。ひょいと横に避け、そのまま肩から突撃し男のバランスを崩す。
「わりな。寝てもらうッスよ!」
 そのままホイールアックスで殴りつけ気絶させる。
「ちぃ!」
 すかさず上方から昂と米衛門を狙ってそれぞれ一発ずつ撃ち込まれるが、何とか直撃は避ける。
「おし、順調ッスな!」
 そう米衛門が呟いた瞬間、工場の奥からガラスの割れる音が響いた。

●賭け
 窓を突き破り工場内へと跳び込む深散。
 一か八かの賭けのつもりではあったが、まんまとおびき寄せられたという感触も深散の中には存在した。
「まったく忌々しい……」
 苛立ちを隠そうともせず呟いて深散は立ち上がった。
 素早く視線を巡らし周囲の状況を探る。
 まったくの偶然であったが深散が跳び込んだ場所は敵の配置を見通せる場所であった。
 現在近くにいる敵は3人。入口の方に1人。そして、二階部分に5人――いや、真上にあの腹立たしいにやけ面がいるはずである。すなわち6人。
「なに?」
 状況が把握しきれていないらしく突然背後に現れた深散の姿に疑問符を浮かべる男たち。
 好都合だ。
「愚鈍!」
 ライヴスで作り出した分身と同時に攻撃を仕掛け、混乱に乗じて男の体を切り裂く。
「おのれ!」
「落ち着けよ、お嬢さんだぜ」
 激昂して深散に迫りかけた男たちに上から声が掛かる。
「退路を塞げ」
 そうとだけ告げて佐藤が右腕を上げる。
 意図を理解し、深散の背中に寒気が走る。
「撃て!」
 爆竹のような連続した破裂音の後、工場内に銃弾の雨が降り注いだ。
「あ……くっ!」
「ほう、まだ動けるか。大したもんだ」
 逃げ場のないほどの銃弾だったが深散は恐るべき身体能力でこれのほとんどを躱して見せた。
 しかし、さすがに全ては避けきれない。数発の弾丸に体を削られ思わずその場に膝を付いた。
「くっくっくっ、覚悟はいいかい、お嬢ちゃん」
 嫌らしい笑みを浮かべて男の一人が武器を構えて深散に迫る。
「非常に三下らしい台詞だ。逆に感心するぞ」
「なに!」
 今日に声を掛けられて驚く男が振り向くよりも早く、侠のバンカーメイスがその脇腹に突き刺さる。
「深散、無事が」
「ええ、この程度……」
 差し出された侠の手を頼りに深散が立ち上がる。
 入口の方に視線を向けると米衛門と昂の二人の手にるところだった。
「ゴミ掃除もいよいよ大詰めですしね」
 二階から顔を出す佐藤を睨み付け、深散が言い放った。

●ショータイム
「随分な嫌われようだ。……まあ、確かに前衛担当は全員ノビちまったな」
 工場を見わたし、佐藤が呟く。一階に陣取っていた男達は全て倒されている。残ったのは二階にいるジャクポット達だけだ。
「だが、俺達『シルバーバレット』は元々ジャックポットの集まりだ。ここからが本番だぜ」
 そう言って素早くスナイパーライフルを構え、大型の狙撃銃とは思えない軽々しい動作で連続で三つの弾丸を撃ちだす。
 一発は深散。一発は侠。そして、一発は未だ遠くにいる米衛門。
 その何れもが正確無比な狙いであった。
「このっ!」
「あがっ!」
 侠と米衛門が避けきれずダメージを食らうなか、深散はスレスレ掠る程度に留め、近くに遭った梯子に手を掛けた。
「行きますわよ!」
 梯子を高速で登っていく深散。だが――
「それは悪手だ、お嬢ちゃん」
「――くっ!」
 梯子の頂点で頭を出したところを狙い打たれ慌てて引っ込める。
「梯子の嬢ちゃんを狙え!」
 即座に佐藤から指示が飛ぶ。慌てて梯子から手を離し地面に落下し、何とか蜂の巣になるのは防いだ。
「悪いな。ここは逃げさせてもらうぜ、お嬢さん方!」
 その隙に佐藤は足場を走り、金の詰まった車へと向かう。
「くっ、待ちなさい!」
「落ち着け、国塚」
「落ち着いてなどいられますか! 逃げられますよ!」
 慌てて追おうとした深散の肩を侠が掴む。激昂した深散が振り返るとニヤリと満足げな笑みを浮かべる侠の顔があった。
「まあ、見てろ。なかなか面白いショーが見れるはずだ」
 侠が指を指した先には今まさに車に乗り込む佐藤の姿。周りのジャックポットも二階から文字通り車に飛び乗り、エンジン音が工場内に響いた。
「――!」
 そして同時に響く甲高い金属音。
 深散は気付いた。左側のタイヤの前輪と後輪が――いや、その呼び方はおかしいかもしれない。何せそこにはタイヤはなく、金属のホイールが全力で回転しているだけだったのだから。
「見ないよな、急いでる時に壁際のタイヤがあるかどうかなんてな」
 ひとしきり火花を巻きちらした後、コントロールを失った車は思いっきり壁に激突した。

●駆除
「いつつ……」
 ひっくり返った運転席から身を起こし佐藤が頭を振る。リンカーである以上この程度の事でどうにかなったりはしない。
「あー、そうだな」
 顔を上げて自分たちが完全に包囲されてることを悟って頭を掻く。何せここにいるのは全員ジャックポット――しかも、狭い車内に閉じ込められているおまけ付きだ。
 そこを高レベル近接リンカー4人に取り囲まれている状況。――どうあがいてもチェックメイトである。
「降参、と言ったら許してくれるかな」
 苦笑いを浮かべて問う佐藤。その言葉に面々は一度顔を見合わせて、そして最後に深散の方へと視線を向けた。
「だそうですが」
「ええ、もちろん」
 聞く昂にニッコリと満面の笑みを返す。
「害虫を捕まえる時はしっかり弱らせてからじゃないと、逃げられてしまいますでしょう?」
 その後の事は報告書には記されることは無かったという。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • エージェント
    霧島 侠aa0782

重体一覧

参加者

  • エージェント
    霧島 侠aa0782
    機械|18才|女性|防御

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避
  • 我が身仲間の為に『有る』
    齶田 米衛門aa1482
    機械|21才|男性|防御
  • 喪失を知る『風』
    国塚 深散aa4139
    機械|17才|女性|回避
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