本部

【神月】連動シナリオ

【神月】壁は砂塵、縁は嵐

電気石八生

形態
ショートEX
難易度
普通
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/07/13 14:59

掲示板

オープニング

●ホッグさん墜ちた
 薄青の空を、人が造りし渡り鳥どもが行く。
 鳥とは近接航空支援専用機。機首はアメリカ空軍伝統のノーズアートで飾りたて、腹にはレーザー誘導式の500ポンド爆弾をたらふく飲み込んでいる。
「HOPE出張事務局か? こちらアメリカ産の“腹ぺこホッグのみなさん”だ。これよりシャールにお邪魔する。ノッカーがどこにも見当たらないんだが、ノックは必要かい?」
 編隊長がかるい口調で、作戦の司会役であるHOPEへ連絡を入れた。
『こちらHOPE出張事務局です~。シャールさんはドアを開けて大歓迎の構え。そのまままっすぐ突っ込んで、ハグしてキスって感じでどうぞぉ~』
 返ってきた女子オペレーターの声にニヤリ。なるほど、この子はノリがいい。
 編隊長は無線のチャンネルを編隊全機に解放した。
「“ホッグ・リーダー”より各員へ。これより我々は、シャール共和国で大規模作戦とやらに取りかかろうとしているHOPEの連中に支援爆撃をお届けする。上手にできたご褒美は、夢のアラビアンナイトだぞ」
 スピーカーから音の割れた歓声が飛んでくるのを苦笑いでやり過ごし、編隊長があらためて告げた。
「ピンポイント爆撃の準備に入れ。突入角度をまちが」
 編隊長機のコクピットが上へへし折れ、糸を切られた人形よろしく真下へ墜ちた。
「え?」
 リーダーが撃墜された。
 訓練されたパイロットたちは、状況を理解しようとするよりも先に散開を開始した。
「本部! こちら“ホッグ2”! リーダーが撃墜された! 状況から見て地対空をぶち込まれたようだが、どこから狙われたのかも敵の正体も不明! 至急救援を請う!」
『こちらアメリカ空軍イラク方面駐留軍本部! 救援要請には応じられない。不時着でも脱出でもなんでもいい、すぐに機体を捨てて逃げろ!』
 航空管制士官がホッグ2に負けない焦り声で叫び返してきた。
「腹ん中の爆弾ひり出してもないのにか!? どういうことだ!?」
『現在駐留軍本部は強烈な砂嵐に巻き込まれている! 新しく戦闘機を飛ばすのも、そちらを迎え入れるのも不可能だ! HOPEは砂嵐の原因が愚神にあると予想してくれたもんだがHell no! 知ったことか!』
 腹に抱えた爆弾ごとななめ下からぶち抜かれたホッグ2の耳にはもう、管制士官の声は届かなかった。

●HOPE出張事務局ブリーフィングルーム
 砂漠の縁に軍用テントを並べて形作られたHOPE出張事務局、そのブリーフィングルームにエージェントたちが集結している。
「アメリカ空軍イラク方面駐留軍本部から出動要請が入ったよ」
 礼元堂深澪(az0016)がいつにない悲痛な表情で一同に告げた。
「今、駐留軍本部は正体不明の砂嵐に巻き込まれてるんだ。砂嵐の発生源は本部から南東に1キロ離れた砂漠」
 深澪は続けてホッグ編隊が撃墜されるまでの事情を説明し、彼らを屠った砲撃が砂嵐の中から撃ち出されたことを示す。
「それだけでも厄介なんだけど、砂嵐の中に対空特化型の従魔が2体いるの。射程距離、最低でも1000キロメートル。そいつらのせいでまわりの友軍も手が出せない状況。戦闘機もミサイルも全部撃ち落とされちゃうから……」
 そこでHOPEの出番だよ! 深澪は空気の重さを吹き飛ばすために力を込めて声を張り。
「みんなにお願いしたいのはまず、砂嵐の中に潜んでるこの特化型従魔の掃討! 2体は別々の場所にいるから、できれば2チームに分けてそれぞれ攻撃して。成功したら支援攻撃で砂嵐を吹っ飛ばしてもらえるから、続けて砂嵐の中心部で合流して愚神を撃破。このふたつ! よろしくぅ~! 」

●水晶の愚神
「アバタが軽いわぁ。これじゃ見つかったらすぐボカチン食らってサヨーナラね」
 透きとおる指先で嵐を成す砂を受け止め、愚神は固い顔を器用にしかめた。
 豊満なボディラインを描く体は水晶。砂に含まれる石英を編んで造った“アバタ”である。先日使った黒鉄のアバタに比べて重さは半分程度だが、かわりにもろい。
 そして彼女の言葉づかいは、体の重さに大きく左右される。体が軽いほどに口調も軽くなるのだ。
「でも、悪くはないわね。ワルツでも踊りましょ。左足から」
 左、左、右。左、左、右……
「ふふ。みんなワルツのステップは得意かしら? ダンスがヘタな子とは遊んであげないけど」

解説

●依頼
1.砂嵐に突入し、対空特化型従魔2体を掃討してください。
2.砂嵐の中心にいる愚神を撃破してください。

●砂嵐
・複雑に逆巻く砂嵐です。
・愚神の「規約」に従って歩を進めることで、ダメージを受けずに進むことができます。
・「規約」に従わずに進むこともできますが、1層ごとに生命力に5パーセントのダメージを受けます(最大45パーセント)。
・この砂嵐はライヴスによるもののため、無対策だと規約を守っていてもダメージを受けます。装備は入念に。
・昼間ですので光源には小間負いませんが、耐えがたいほど暑く、視界は極端に悪いです。

●対空特化型従魔×2
・長距離砲を背負ったエリマキトカゲ。
・攻撃力は非常に高いですが、背中の砲が重くて動きは鈍く、しかも体がやわらかいので撃破は簡単。
・長距離砲で無理矢理、前衛を攻撃してきます(物理単体攻撃/命中率:低)
・2匹はそれぞれ別の場所に隠れています。

●護衛型従魔×8
・身長2メートルの白雲母石像で、Lv25のドレッドノートと同様のスキルを備えます。
・対空特化型1体を4体で護衛としています。
・曲刀二刀流で、流れるような剣技を見せます。
・遠距離攻撃武器を装備したエージェントを優先的に狙います。
・熱と電気を通しません。

●水晶の愚神
・身長30センチほどの女性型で、4本の腕を持ちます。
・小さいうえに透明度が高く、通常状態での目視は難しいです。さらによく潜伏します。
・Lv45相当のソフィスビショップとシャドウルーカーのスキルを使います。
・1ラウンド2回攻撃可能。通常攻撃は魔法単体攻撃になります。
・レーザー等の非実体系攻撃は通じません。
・会話にはよく応じます。

●チーム分け
・2チームに分かれ、別々の対空特化型従魔へ向かってください(チーム分けができていれば、自動的に別のルートへ向かいます)。
・「規約」へどう従うかはチームで意見を統一してください。

リプレイ

●砂嵐直前
「うーわー」
 たった2メートル先で吹き荒れる砂嵐を見、褐色龍娘のギシャ(aa3141)が声をあげた。
「この距離で砂ひと粒飛んで来ないとはな……これも愚神の規約というやつか」
 嵐に吸い寄せられそうになるギシャを後ろからつかんで引っぱり戻すのは、3頭身のディフォルメ着ぐるみ龍ならぬ、ギシャの契約英雄であるどらごん(aa3141hero001)だ。
「荒れていますね……。嵐が過ぎるまで待てないのが、この仕事の難儀なところです」
 相棒とすでにリンク済みの九字原 昂(aa0919)がつぶやいた。いつも浮かんでいる人当たりのよい笑みは消えている。今の彼は、目的を達成するための道具だ。
「おお、なんと……!」
 見た目“ちょい悪オヤジ”な英雄、宍影(aa1166hero001)が唐突に顔を上げた。
「どうしたんだ宍影? 香辛料にあたったか?」
 宍影の契約主で土地の食べ物になじめず苦戦中なジャージくノ一、骸 麟(aa1166)が訊く。
「いえ、舌と胃腸が丈夫でなければ忍は務まらんでござるゆえ。麟殿も帰りましたらばザザムシづくしの7日行に入っていただきますが――そうではなく」
 ザザムシづくしと言われて思いきりおののく麟。
 そんな主の顔を見ないふりで、宍影は説明を加えた。
「この規約、骸忍術秘伝の歩法禹歩千鳥足にそっくりでござる。魔を出し抜き、障りを避ける……確かにあの愚神らしき拘りかと」
「さすが宍影、読みが深いな。だからザザムシは」
「ザザムシづくしの7日7晩でござる!!」
「佃煮! せめて佃煮で!」
「SI・O・YU・DE。で、ござる」
 忍者たちの騒ぎの横で、負けずに騒ぐ輩もある。
「なにコレ! 暑すぎじゃね!? 超暑くね!? 鬼暑くねぇっ!?」
 カール シェーンハイド(aa0632hero001)が「げー」という顔をした。なにせこれからこの酷暑の中、砂嵐に突入しようというのだ。夜の眷属たる彼がげんなりしないはずがない。
「……カール。ぎゃーぎゃー騒ぐな鬱陶しい。余計に暑くなるだろ」
 相方の騒ぎを気だるげなため息で吹き落とすレイ(aa0632)。
「……ん、めんどくさい。暑い。帰りたい……帰る?」
 中学生というカテゴリーを超える見事な胸を備えた佐藤 咲雪(aa0040)が、傍らに立つ契約英雄アリス(aa0040hero001)の顔を見上げたが。
「そろそろお金稼がないと、ご飯が3食もやしになるわよ」
「もやしは……辛い。帰るの、めんどくさい。……ん、仕事、する」
「まあ、日本へ帰るよりも砂嵐の真ん中へ行くほうが近いですしね」
 と、苦笑いしたのは、本職が地方公務員という眼鏡男子、迫間 央(aa1445)だ。
『髪やドレスが砂を被るのはごめんよ?』
 幻想蝶の内よりクールに言い放つ契約英雄のマイヤ サーア(aa1445hero001)。
 央はそっと幻想蝶に触れて。
「ああ。共鳴するまではそこで休んでいてくれ」
 一方で、すらりとした体に豊かな胸をたたえるイン・シェン(aa0208hero001)は、すでに砂をかぶって不機嫌顔だ。
「こう暑いところで砂まみれにされると、汗で貼りついて気持ち悪いのじゃ」
「ま、砂漠ってのはそういうところさ」
 彼女の契約主の偉丈夫、リィェン・ユー(aa0208)の返事はこれ。
「これ、リィェン。砂は体に障るゆえ、幻想蝶の中で休んでおれ。くらいのことは言えんのか」
「リンクすれば俺がかぶった砂がインにも貼りつくんだぞ。意味がない」
「神よ、リィェンさんの愛が。愛が足りていません……」
 そっと胸の前で両手を組み、修道衣姿のリリア フォーゲル(aa0314hero001)が祈りを捧げる。彼女はリィェンに助言してあげてほしい意を込めて、自分の契約主である大学生兼銭湯の支配人、天城 稜(aa0314)を見たが。
「米軍の空飛ぶご神体! あなたの仇は僕が絶対! 取ってみせますから!」
 特定方向に愛が突き抜けてしまっていて、とても使い物にはならないのだった。
「あぁぁ、貴重な近接航空支援専用機がもったいない。あれは40年以上も現役稼働しておる空の至宝だぞ。あとで回収に向かわなければ……そしてわらわのコレクションに」
『……暑い。面倒だからリンクは絶対に解かないでね』
 技術というものに魅入られ、その深淵へと突き進む和装技術者カグヤ・アトラクア(aa0535)が嘆き、彼女と早々リンクして現在避暑中の契約英雄クー・ナンナ(aa0535hero001)が淡々と訴える。
「砂嵐か……難敵だけどよ、突っ切ってやるぜ! 最短! 最速でッ!!」
 アタッカーであることを自らに課し、その誇りを胸に突っ走る東海林聖(aa0203)が気合を入れた。
 それに契約英雄のLe..(aa0203hero001)は小さな頭をこくりとうなずかせ。
「……お腹すいてきた。砂、面倒……敵も面倒そうだし……早く叩いて、ごはん……」

●守る者・守らぬ者
 2方向に分かれ、2カ所に潜んだ特化型従魔を同時攻略する。
 作戦を遂行するためにエージェントたちは2チームに分かれるが、チーム分けの方法は単純だ。愚神の課した規約を守るか、守らないか。
「みなさん。はぐれないようにこのロープを体に巻きつけてください」
 稜の用意したロープで体を結んだのは、規約遵守を選んだ6組だ。
『不思議な砂嵐ですね……愚神の力はどれほどのものなのでしょう?』
 不安げに言うリリア。いざ有事にのぞめば凜然と引き締まる彼女だが、それ以外のときにはバニラアイスをこよなく愛するぽやっとシスターなのである。
『大丈夫だよ。規約を破らなきゃね』
 内なる声で稜がリリアをはげました。
 この砂嵐は単一の渦ではなく、薄い渦がバウムクーヘン状に折り重なってできている。渦と渦の間に隙間があり、6組はこの隙間を通路として進んでいるのだ。
「HOPEからの情報では、愚神はワルツを規約だと述べていたようです。踊りにはあまりくわしくないのですが、基本のステップに沿って左折、左折、右折の順で歩いていきましょう」
 連続するT字路状の砂の切れ目を差す昴。彼はさらに念を入れて左足、左足、右足の順で足を踏み出し、それこそワルツを踊るように歩を進めていく。
『ワルツ? なんか言葉の響き的に好みの範囲外かもー』
 内で顔をしかめるカールへ、対砂塵装備で身を固め、さらにライオットシールドを砂嵐の壁に向けて接触事故を防いだレイが答える。
「音をえり好みしてると音楽に魂を込められなくなるぞ」
 とはいえ、この環境では満足にギターの音も響かせられまいが。いや、ワルツなのだからヴァイオリンか。
『武辺のくせに意外と舞うのじゃな。どこで覚えてきた?』
 達者な3拍子を踏むリィェンに、インが内からあきれた声をかけた。
「昔取った杵柄だ……こういった技能も必要だったのさ」
 彼がにおわせたのは暗殺者時代の過去。リィェンの記憶の底にわだかまる闇の残滓だ。
 人は話すことでその苦しみや悲しみを浄化するもの。しかし、無理矢理にそれを引き出そうとすれば心に大きな傷を残すことにもなる。リィェンがいずれ、自然に語りだすのを待つとしよう。
 インはひとりうなずき、心地よい三拍子の揺れに身を任せた。
「左は茶碗を持つほう、左は茶碗を持つほう、右は箸を持つほう……」
 逆に央の足取りはおぼつかない。しかもずっとブツブツ。
『央、大丈夫?』
 内のマイヤがそっと尋ねてきた。
 央は一瞬足を止め。
『不幸な事故を防ぐためだ。報連相で確認できる上司や同僚がいないからな。自分に確認して、しっかりと安全を確保――』
 内なる声で説明するが。
 マイヤは眉根を引き下げ、その言葉を止めた。
『……央、身体のコントロールを渡して。ダンスならワタシのほうが得意だから。ステップはマニュアル頼りじゃだめ。心に任せて踏むものよ』
 ぎこちないばかりだった央の足が、華麗な3拍子を刻みだす。
『綺麗だな』
 央の嘆息に、マイヤが固い声で答えた。
『ステップが? だからそれは』
『いやその……ステップじゃないよ。ステップじゃ、ないんだ』
「これは見ないふりをするべきですよね」
 一瞬だけ素の彼に戻った昴が、顔を央から反らした。
『なーんかさ、砂とか吐いとく?』
 カールのコメントに、レイはかるく肩をすくめてみせ。
「これ以上砂が増やすな。進みづらくなる」
『シスターとしては祝福を送るべきでしょうか? おふたりの未来に幸せがありますように?』
『うーん、迫間さんがもうちょっとはっきり甘いこと言ったらでいいんじゃない? もしかしたら勘違いかもしれないし。まわりばっかり盛り上がっててもねー』
 リリアと稜も内でこそこそ言い合ったりして。
 辛いばかりの砂嵐が、なにやら甘い、別の嵐に成り果てる――
『今んとこ敵はいない! あー、でも、なんだろうね!? 味方の中に敵がいる感じ!? 提案なんだけどさぁ、見つめあうより前見て行こうよ!!』
 ロープを伸ばして進路の安全を確かめに行っていた麟が、妙な千鳥足――歩法禹歩千鳥足ってやつだ――で乱入。その背後に怨霊よろしく浮き上がっている宍影が麟の口を借りて叫んだ。
 そして麟自身も。
「オレの目が黒いうちは、絶対誰にもらぶこめらせやしない。それが忍……独身妙齢女子の使命だぜ」
 実に大人げない忍者どもであった。

 一方、規約無視チームは絶賛阿鼻叫喚中。
「砂嵐に突撃とかバカのすることだよねーえーえーえーぇー」
 砂に巻かれて飛んでいくギシャ。
『いいかギシャ、無謀と無策のもたらす結果ってやつを、その体に刻んでおけ――』
 ギシャの内でなにやら格言めいたことを唱えるどらごんだが、もちろん彼も吹っ飛び中である。
「これギシャ、どこへ行く。砂嵐はまだまだこれからじゃというに」
 砂の彼方へ消えゆこうとしたギシャを引っつかんで引き戻し、カグヤはゴーグルに守られた顔をほくほくとゆるめた。
「さて、貴重な砂嵐体験といくかの。レアケースを堪能じゃ」
『カグヤが汚した服を洗濯するの、ボクだよね。できれば染みとかつけないでほしいんだけど』
 淡々と言うクーにカグヤはへらへらと。
「心配いらぬ。砂は乾いておるのじゃぞ? 染みなどつこうはずがない」
『黄ばみ……繊維の隙間に入り込む汚れ……アラビア料理』
 家事担当のクーからすれば、気になることがいろいろあるのだ。
『アラビア料理……お腹……すいた……』
 盾代わりにディフェンダーを押し立て、砂嵐へ真っ向勝負をかける聖の背後から、ふらふらと迷い出るLe..の影。
「おいルゥ! 今はッ! 砂をぶち抜くことだけ! 考えろッ!」
 顔は防護マスクで守っているが、体を鎧うのは普通の衣服のみ。ライヴスをまとう砂が容赦なく隙間から潜り込み、彼の肌をザリザリ削る。
「くっそ! これじゃオレ、すり切れちまうぜ……!」
 剣を砂に突き立て、飛ばされないよう体を支える聖。
 そんな彼を見ながら、Le..がぽつり。
『ヒジリーのは……うん、大丈夫』
「どこ見て言ってんだぁーッ!!」
 いろいろと大変な感じの仲間たちを差し置き、淡々と砂の中で佇む咲雪。
『足を動かさないと、いつまでも砂の中よ?』
 内からのアリスの言葉に、同じように内なる声で咲雪が返す。
『……ん、砂、痛い。歩くの、めんどくさい』
 砂に覆われたアラビア地方で生きる人々の知恵にならい、白地の厚着でのぞんだ彼女だが、暑さはともかくライヴスの砂を防ぎきることはできず、ダメージを受けている。そのせいで、ただでさえ低いやる気ゲージは今やゼロを通り過ぎてマイナスだ。
 無数のナノマシンの群体であるアリスは一斉にやれやれと息をつき。
『もやしもやしもやしもやしもやし』
「前進する……」
 群体全員で最終呪文を浴びせかけ、契約主に偽りのやる気を注入。先へ進ませるのだった。

●シャドウルーカーズ
 規約遵守チームは砂嵐のダメージを受けることなく、T字路を左折、左折、右折の順に進んでいた。
「伏せろ!」
 麟の警告に、一同が砂へとその身を投げ出した。
 頭上をぶっ飛んでいった砲弾が衝撃波でまわりの砂を弾き飛ばし、エージェントたちの背へ打ちつける。
「敵ですね! あとは戦うだけ、です!」
 仲間同士を結んでいたロープに孤月をあてがい、次々切り離しながら昴が促した。
「あれはAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、ご神体を殺った弾……ゆるせません! ゆるしませんよ!」
 銀の髪を怒りで逆立てた稜が、弾の飛んできたほうへダッシュする。その手にはフリーガーファウストG3――多連装ロケット砲が構えられていた。
『あんなものを連射されたら、わらわたちもまずいのではないか?』
 G3は標的を殲滅するだけでなく、その爆発の衝撃で周囲にも影響を及ぼす。インの懸念は当然なのだが。
「巻き込まれそうになったらタンゴのステップで切り抜けようか。昔取った杵柄でな」
 体から銀の陽炎を噴き上げたリィェンが、事もなげに答えた。
『……そのように腰を据えておいてなにを言う。そちはそちらしく、闖歩でも踏んでおれ』
 砂嵐の壁と壁の隙間の向こうに、従魔の姿が垣間見える。
『大砲をかついだトカゲが1、石製の兵士が4。無勢でござるな』
 告げる宍影の姿は見えない。麟がすでに潜伏に入っているからだ。
「ASAP(「できる限り早く」を差す米軍用語)!」
 稜のG3がミサイルを連射した。
 2発は特化型の砲弾が起こした突風に巻かれてあらぬ方向へ墜ちたが、残りは無事に着弾。従魔にダメージを与えることに成功した。
「石人形のみんなは俺と遊ぼうか」
 立ちのぼる爆煙を割って跳びだした央が、九陽神弓につがえた矢の鏃を4体の石兵へ向けた、その瞬間。
 ごくん。関節部まで石でできているはずの石兵が動きだし、央目がけて次々と曲刀を振り込んでくる。
「いい反応だがな」
 背を砂に投げて3本の刃を空振りさせた央は、剣を止めようと動きを硬直させた石兵に下から狙い澄ました一射を撃ち込み、その顎を跳ね上げた。
 さらに、残る1体が振り下ろしてきた剣を横に転がってかわし、その回転力を利用して立ち上がる。
「肝心のステップが硬すぎる。ストレッチでもしてきたらどうだ? 割れずに伸ばせるなら手伝ってやる」
「遠距離武器装備の従魔を守って、遠距離武器装備の敵を狙う、か。なら――」
昴が服の内に手を突っ込み、なにかを引き出した。
 石兵どもの石眼が一斉に集まったのを見計らい、昴がそれを投げつける。
 石兵の剣が殺到し、それを斬り刻んだが。
「おつかれさま。ただの保冷剤だよ」
 砂漠の熱気を避けるために用意してきたものだ。中身のゲルはすでに溶け、本来の役目は果たせなくなっていたが……十二分に牽制の役には立ったようだ。
「仲間が特化型を仕末するまで動きを封じさせてもらうよ」
 昴の放った女郎蜘蛛が石兵どもへからみついた。
 と。
 サンドエフェクトを跳ね上げて潜伏を解除。麟が背後から特化型へ襲いかかった。
「骸登りゅっ、しぇん回刃!」
 それは3分身した麟が横回転しながら跳躍。ゲッターデメルングの回転刃をヘリのメインローターさながら振り回し、遠心力を乗せて敵を連撃する恐ろしい技だ!
「宍影、技の名前長すぎて、言ってる間に砂噛みそうなんだけど!?」
『麟殿――無念ながら素で噛んでござる!』
 ちなみに正しい技名は「骸登龍旋回刃」でした。
 護衛すべき特化型が大きなダメージを負い、蜘蛛糸の拘束を逃れた石兵2体があわてて駆けつけようとするが。
「考えるだけの頭がないんだろうが、もう少しいろいろと疑っておくべきだったな」
 2体の前にリィェンが立ちはだかった。
 あわてた特化型の砲撃がその背に向かって撃ち出されるが、しかし。
『どれほど強い攻撃じゃろうと、当たらなければどうということはないのじゃ』
 上空へ消えていく弾を見送りもせずにインが笑む。
 その間にリィェンは両足を砂に埋めてその身を固定し、屠剣「神斬」を斜に構えた。
 が、石兵は大剣に無反応。そのままリィェンをやり過ごそうとする。
「悪ぃが……こいつならこういったこともできるんだよ」
 刀身に彫り込まれた龍紋に沿って刃に流れ込むライヴス。その輝きが、多数埋め込まれた結晶でさらに増幅されていく。これこそが屠剣煉獄仕様、別名「極」だ。
「はっ!」
 リィェンが斬り上げた剣先から飛ぶライヴスの刃。リィェンという存在そのものを映すかのように重い斬撃が1体の石兵の肩を砕いた。
 長距離攻撃を備える大剣。対応が設定されていなかったのだろう得物を前に、残る1体の動きが惑い、鈍る。そこへ。
「今度はオレとジャムろうぜ」
 嵐の壁を蹴り割り、レイがライトマシンガン片手に跳び込んできた。完全に虚を突かれた石兵どもが混乱し、両手の曲刀を闇雲に振り回す。
「おまえらのリズムは単調なだけでつまらない。言い出しておいてなんだが、セッションは遠慮しておこうか」
 トライバルタトゥーを刻んだ左頬を歪めて吐き捨てたレイが、ふわり。
 剣の峰につま先をかけて、そのまま石兵の頭上を跳びこえた。
「オレから3拍子をプレゼントしよう。気に入ってもらえたらなによりだ」
 9mm弾が123、123と、3点バーストで特化型のやわらかな胴をえぐった。
『やっぱワルツとかってのは性に合わねーワ。弦は弾くよりかき鳴らすもんだよな』
 カールの言葉をBGMにしてもがく特化型。護衛はエージェントに抑えられ、頼りにならない。せめて一発、この生体弾を撃ち込んで――
「KIA(戦死)の報告はどうします? 伝令はいないみたいですけど」
 トカゲの砲を上から踏みつけて射角を潰した稜が、トカゲの頭にスナイパーライフルを押し当て、引き金を絞った。
『迷える従魔に神のお導きがあらんことを』
 リリアの祈りが厳かに響く中、特化型従魔はその体を砂の中に散らしていった。

 順調とは言えないが、とにかくスピード重視で突き進んできた規約無視チームはあいかわらず大変だった。
「向こうの向こうに敵がいるっぽいよ」
 砂をかぶりすぎて砂ぼうず状態のギシャがぜいぜい。荒い息をつきながら、2層奥にいる従魔群を指差した。
『7回突き抜けてきただけでえらい有様になったもんだ。早くすませてボイラー・メーカーでもやりたいところだな』
 ビールのウイスキー割りという男前なカクテルの名前をあげるどらごん。砂とハードボイルドの相性、相当よろしくないようだ。
『咲雪、気合入れてよ。もやし生活を玄関先で追い返すんだからね』
「……ん、従魔1体倒すと、もやし生活が1食分、減る」
 アリスの言葉にうなずき、右手をきゅっと握る咲雪(砂ぼうず)。彼女の論によればもやし生活は2日めの晩に戻ってくるわけだが……今はそんなこと、気にしていられないのだ。
「っし、残りの砂嵐もぶち抜いてケリつけてやる! 行くぜルゥ!!」
『早く……終わらせて……ごはん』
 Le..の影を引き連れ、聖(砂ぼうず)が嵐の壁目がけて突貫する。
『ボクも早く終わらせて寝たい』
 起きていることがすなわち不幸というわけではなかろうが、寝ている時間がとにかく幸せというクーが、カグヤの内で言う。
「はっはっはっ。なにを言っておるのじゃ! 吹きつける砂がどれほどの威力を発揮するのかを測れた最高の人体体験じゃったろうに」
 なぜかひとりだけ砂ぼうずではなく、綺麗をキープしているカグヤが高笑う。
「聖が接敵したら、それ以外の者に回復をかけるぞ。ギシャ、咲雪、そのつもりでおるのじゃぞ」
 ふたりの女子を連れて、カグヤは堂々と砂嵐に突っ込んだ。
「おおおおお!!」
 最後の壁ごしにいちばん近くにいた石兵をぶった斬った聖が、そのまま肩で砂嵐を割って押し入った。
 剣撃でバランスを崩していた石兵は続くショルダータックルをもろに食らい、仲間を巻き込んで転倒する。
「よっ――がッ!!」
 よっし! 言い切る前に、こめかみを強く弾かれ、砂に顔をめり込ませる聖。
 特化型の砲撃が彼の頭をかすめていったのだ。
 直撃していないのにこの威力。
『ヒジリー……敵』
 Le..の声で失いかけていた意識を取り戻した聖は、激痛鳴り響く頭を無理矢理引き上げる。だが、すでに2体の石兵が、彼の眼前にまで迫っていた。
 動かなければ、殺られる。しかし、ダメージが重すぎて体が動かない――
「そーはさせるかー」
 横から飛んできたギシャのドロップキックが1体を押し退け。
 もう1体を背後から女郎蜘蛛でからめとった咲雪が、石の肩ごしに目だけを見せて。
「……ん、動き止めた、から、後は任せる」
『私たちは攻撃力低いからね。敵の動き、止めていくわよ』
 そんな彼らに、きらめくライヴスの癒やしが降りそそぐ。
「助かったぜカグヤ!」
 命に新たな火がくべられるのを感じながら、聖が立ち上がった。
「よいよい。それよりも行け。聖の骸はわらわがきっちり拾うて、余さず人類の未来に役立ててやるからの」
『仲間の死体は普通に弔おうよ』
 クーのツッコミは完全無視。カグヤは両手の双銃「ドイスプレザ」を石兵に見せつけ、艶然と笑んだ。
「雑兵どもよ。不得手のない万能な技術者がおること、思い知るがよい」
 この双銃は普通に撃つばかりでなく、銃口からライヴスの刃を伸ばして斬ることもできるという代物である。
 石兵2体とカグヤが剣劇を繰り広げている間に、ギシャは自分が蹴り飛ばした1体へ襲いかかった。
『相手は石、ただ斬っても効きが悪そうだな』
 どらごんの声にギシャはうなずき、
「頭使っていくよ」
 リンクすることで5歳分の未来の姿を得た顔、その頬に貼りつく笑みをかすかに深める。
「だって手加減とか考える必要、ないからね」
 背の龍羽で風を捕らえ、尻から伸ばした龍尾で均衡を保ちながら、ギシャが駆ける。ここは彼女が生まれた場所と似ている。どうすれば自分の体を取り回せるかを悩むことはない。
 石兵の右手の剣が横薙ぎに襲い来る。
『上だ』
 ギシャが上に跳んだ。
 石兵は即座に左手の剣を上に突き上げ、ギシャを貫いた――
「頭使うって言ったよ?」
 ジェミニストライクで作った分身がかき消えて。
 残るもう1体とともに身をかがめていたギシャが伸び上がり、聖竜の鉤爪「しろ」で石兵の首を掻き斬った。
『……特化型が射撃体勢に入ったわ。風速0・5メートル。弾道計算修正完了。このままだと東海林様に直撃よ』
 飛ばした鷹から送られてきた情報と視認情報とを併せて計算を終えたアリスが咲雪に報告した。
 聖は今、特化型目がけてひた走っている。「斬る」、それを成すためだけにすべてを剣に集中して。
「……ん、発射2秒前に合図して」
 咲雪は聖のような熱血漢が苦手だ。なぜあんなに一生懸命になるのか理解できない。でも。
 熱血漢の聖は嫌いじゃない。だから、めんどくさいけれども、やる。
『2秒前!』
 果たして咲雪の手から5本のシャープエッジが放たれた。
 そのうちの1本が砲身に当たり、砲口を1ミリ左へずらす。
 聖の脇を飛び去く砲弾。
 聖は短く吠え、ダズルソード03「紅榴」の赤い刃を特化型の砲口ならぬ口へと突き込んだ。
『もっと……強く……心を……燃やす』
 Le..のサポートが彼の技を高め、言葉が彼の心を滾らせる。
「おおおおおおおおお!!」
 刀身がライトグリーンの輝きを帯び、赤刃をさらに深く潜り込ませた。
「テメーにゃ悪いが、カグヤの研究素材になってもらうからなッ!」
『トカゲは……意外と……おいしい』

 規約遵守、規約無視、どちらのチームでもシャドウルーカーたちのスキルが石兵を抑え、特化型の早期撃破を実現させた。
 あとに残ったのは硬いだけの雑魚。6組でのぞんだ遵守チームは確実に、4組の無視シームは進撃スピードの速さで稼いでいた時間をいっぱいに使って力押しを決め、ほぼ同時に従魔群を殲滅していた。
「こちら、天城 稜。敵を掃討しました。これによって制空権を確保したものとみなします。再度の空爆支援を要請します」
『了解! 安全空域で待機中の支援爆撃部隊に連絡するよぉ』
 稜の報告を受けたオペレーターの深澪が即座に連絡を繋ぐ。すると。
『こちら“腹ぺこホッグ・ゾンビのみなさん”だ! 機体は変えてきたが、変わることない爆弾屋魂、今度こそ見せてやる』
 通信機から飛びだしてきたのは、撃墜された機体から無事脱出、さまざまな規則と規定をぶっちぎって再出撃してきたらしいホッグリーダーの声だった。
『さっさと男気見せて、夢のアラビアンナイトとしゃれこみましょうぜ!』
 ホッグ2も健在。陽気な声音を響かせる。
 その直後、ピンポイント爆撃が砂嵐を吹き飛ばし、エージェントたちの視界を拓いた。
「砂嵐がいつ復活しないとも限りません。急ぎましょう」
 昴が遵守チーム一同に声をかけて走り出した。目標は、飛来した全翼機編隊が示す砂嵐の中心部だ。
「あれは――アメリカ空軍が誇るステルス戦略爆撃機! みなさんのスピリット、見せていただきましたよ!」
『今日の稜にはぜんぜんついていけません……これも神の与えたもうた試練でしょうか』
 感涙&敬礼で編隊を見送る稜の内で、リリアはひっそり頭を抱えるのだった。

「……ん、砂嵐、やんだ」
『私たちも行くわよ。あの先にお給料が待ってるんだから』
 咲雪とアリスのやりとりはともかくとして、無視チームもまた中心部へ――愚神へ向けて進撃を再開した。

●反響
「……シャドウルーカーだらけじゃないの。あー、最初っからわかってたらなぁ。もうちょっと護衛、強くしといたんだけど」
 迫り来るエージェントを見やり、水晶の愚神はがっくりと肩を落とした。
 石兵の強さ設定は、普通のエージェントが1体1ならそこそこ苦戦するだろうものにしてあった。ただ、弱点として抵抗力を落としておいたのが運の尽き。結果としてシャドウルーカーたちの女郎蜘蛛に次々引っかかり、ほぼ役に立たないまま破壊されてしまった。
「ま、落ち込んでてもしょうがないわね。反撃よ反撃」
 愚神が再び砂嵐を呼び起こす。これは別にエージェントを巻き込むためのものではない。もろい彼女の体を守る“カーテン”と、声を届ける“スピーカー”の役割を担わせるためだ。
「卑怯未練の比べ合いになるかしら? そういう湿っぽいの、好きじゃないんだけどねー」
 透明な体が、砂にまぎれて消えた。

「愚神の姿が見えません。みなさん、奇襲に注意してください」
 昴が仲間に声をかけ、目をすがめて愚神の気配を探る。
「……ん、潜伏、されてるね。めんどくさい」
『言ってもしかたないことだけど、機体が使えればね――』
 咲雪とアリスが外と内で顔を見合わせた。
『たとえ姿は見えずとも、いることにはちがいないでござろう』
 宍影は麟の口を借り、さらに言葉を紡ぐ。
『あー、本日はお日柄もよく』
「宍影、今日は砂嵐だぞ」
『しばらく。しばらくでござるよ麟殿。……愚神殿、先日はお世話になり申した。貴殿のこと、いかようにお呼びすればよいのでござるかな?』
 応えは――あった。
『あんた、謎かけ娘のおつきのゴザル? これも宿縁ねー。……名前なんか別にないけど、ウルカグアリーって呼んどけば? アリーとかでもいいけどね』
『なんかV系にいそうな名前じゃね?』
 カールの軽口にカグヤが「そうではないぞ」と口を挟み。
「ウルカグアリーとは、インカ神話に語られる金属と宝石の神の名じゃ。あの辺りは研究対象が多いゆえ、神の名を目にすることも多い」
 その間に央が、内なる声をマイヤへ向けた。
『マイヤ、愚神の声の発信源はわかるか?』
『だめね。このフィールドを囲っている砂嵐に反響させて、位置を特定できないようにしているわ。……絶対に見つけ出す。見つけ出して、殺すわ』
 愚神という存在に対する激しい憎悪が、彼女の心を突き上げ、駆り立てる。
 その炎の熱と暗さを知る央は、ただ静かにうなずいた。
『して、ウルカグアリー殿。貴殿は先日、あの短剣は門を開くためだけのものにあらずと言われていたが、それはどのような意味でござったのか?』
 宍影の次なる質問に、姿なき声がまた答えた。
『短剣はワタシを封印する鍵でもあった、それだけのことよ。近場にあったネツァクは鍵じゃなかったけど、愚神卿ってのが持ってきたケセドのおかげでワタシは解放されたってわけ。だから』
 エージェントたちの足元で、砂がざわざわ蠢いて。
『ここであんたたちの相手してる理由の半分はその義理。あとの半分は……こないだからの宿縁よ』
 瞬時に凍りついた。
 強力なディープフリーズがエージェントたちを捕らえ、その脚を拘束する。
『足……凍ったね……』
『引っこ抜くぜ!!』
 Le..に叫び返し、脚を引き抜こうと全力を出す聖。
『舞いを強要しておいて脚を封じるとは、なかなかにいい根性じゃの!』
 同じく脚を止められたリィェンの内で、インが忌々しげに吐き捨てる。
 リィェンは氷を砕くべく全身に力を巡らせながら不敵に笑んだ。
「もう消えたが、さっきちらりと姿が見えた。つまりは潜伏しながら攻撃できるわけじゃない。そういう規約なのかは知らんが、ずいぶんフェアにやってくれてる」
『スキルからスキルへ繋ぐなど、十二分にアンフェアじゃがな。とはいえ見えたところであの体。どれほど強い攻撃じゃろうと、当てられなければどうということにもならぬぞ?』
 先ほど特化型従魔に対して述べたセリフが、今度はそのまま自分たちへ返ってくる。
「それでも、な。やりようはあるってことさ」
 一方、迫る氷をグランガチシールドの縁で叩き割りつつ回避したカグヤは、空いた右手で袂からくず鉄を引き抜いて。
「ウルカグアリーと言うたか。わらわはカグヤ・アトラクア。いずれ世界を手中にする女じゃ。あ、これはつまらぬものじゃが手土産じゃよ」
『純度低すぎて使えないから、気持ちだけもらっとくわ』
 このあたりはさすが鉱石を操る愚神というべきか。しかしカグヤはめげずに言葉を繋ぎ。
「ふむ。ならばわらわの気持ちに報いて答をくれぬか? そなたのアバタとは、分身のようなものか?」
『そうね。鉱石で造った仮のワタシが“アバタ”。この世界でワタシがアバタの素に困ることなんかないから、ワタシを殺すのはタイヘンよ?』
『ほうほう、では、此度はいかほどがんばられるおつもりでござる? 死なぬのであれば必死になる道理もござらぬよ。ほどほどでお帰りいただくというのはいかがでござろう?』
 跳躍して拘束を逃れた麟の後ろから宍影が問うた。
『いやいや、このアバタが壊れるまでは全力で相手するわ。それが規約だからね』
 氷の拘束を逃れたエージェントたちを、砂嵐の壁から噴き出すブルームフレアの炎が押し包む。
「寒いからの熱い。ギシャがガラスだったら割れてた」
 ごろごろと砂の上を前転し、体にまとわりつく炎を振り切ったギシャ。
『見えた、あそこだ!』
 どらごんの示した中空へすかさず虹蛇を投げ打つが――砂にまぎれてちらつく小さな水晶の体を捕らえることはできなかった。
「むー、消えた」
 体勢を立てなおして辺りに目線をはしらせてみても、ウルカグアリーの姿はどこにも見あたらない。
『潜伏されたか。これは予想以上に難しい戦いになるぞ』
 ようやく拘束から抜け出した聖に、その背の上に浮かび上がったLe..の影がささやいた。
『相手が見えないなら……感じる』
 聖が眼を閉じ、下段に構えた「紅榴」を握る両手へライヴスを注ぎ込む。
「心を研ぎ澄まして、見極めて――斬るッ!」
 衝撃波が砂を高く巻き上げながらはしり、そして。
『まだまだ修行が足りてないわね突撃坊や』
「目で探せないなら、これはどうだ?」
 レイがコンビニで入手した安い香水を振りまいた。
『うわ、安いニオイ。色男がだいなしね』
『やっぱそう思う? オレもオレも!』
 ウルカグアリーとカールが言うのに構わず、レイは香水にまみれた空気の動きを探る。たとえ見えなくとも、彼女がそこで動けば空気が乱れ、においも動くはずだ。
「砂嵐が祟るか」
 においはフィールドの外側で激しく渦巻く砂嵐に巻き取られ、すぐにかき消えた。この手は失敗に終わった。そう思われたが。
「目も鼻もダメなら――そうか」
『はい。もうひとつありますよね』
 稜とリリアがうなずきあった。
「……よう見えぬが、そなた水晶なのじゃろう? 石兵もそうじゃが、いかような技でもって体を曲げたり伸ばしたりしておるのじゃ?」
 仲間を癒やし、共に戦う中で、カグヤはウルカグアリーへまた問いかける。
『技ってより業ね。自然にできちゃうのよ。ニンゲンはいちいち小難しい機械とか使わなきゃいけないからタイヘンよね』
「確かに。わらわもその機械を使っておるよ。しかし、自然にできてしまうよりもおもしろいぞ? 試行錯誤は技術者にとって最高の娯楽じゃ。ウルカグアリーの楽しみは規約とやらかの?」
『規約を守るのはワタシがワタシをワタシでいさせる手段よ。アバタを変えるってのはワタシが我に、我がアタシに変わるってことだからね。気ぃ抜いたらワタシが誰なのかわかんなくなるでしょ』
 質問を重ねようとしたカグヤだったが、ここでクーの声に引き留められた。
『カグヤ、時間稼ぎはできたみたいだよ』
「……アリーさんが音を反響させてるなら、それを逆手にとれるかもしれないと思ったんです」
『カグヤさんがアリーさんの言葉を引き出してくださったのでうまくできました』
 戦闘用ヴァイオリンであるFantome V1を構えた稜と、その内で微笑むリリア。
 稜はその弦を弓で弾き、優美な音を奏でた。
「音の流れを歪ませる場所には自然と目が引き寄せられる」
『こいつは音楽屋のサガってやつだね』
 カールが言葉尻を噛みちぎるように、膝撃ちでスナイパーライフルを撃ち込むレイ。砂に突き立つかと思われたライフル弾はその寸前で弾かれ、砂嵐の壁に巻かれて消えた。
「してクーよ。わらわは別に時間稼ぎなど考えておらなんだぞ? わらわのトークはただの興味じゃ」
『いやそこは時間稼ぎって言っておかないと他のみんなに悪いから』
「特化型の砲身は奴の体とともに塵となってしもうたし! 楽しみはもう、興味本位の質問くらいしかないじゃろうが!」
 などと、仲間たちの連携の裏でがちゃがちゃ言い合うカグヤとクーはさておき。
「やっと逢えたか。今度は水晶の身体、なんだな」
『綺麗だけどさ、壊させてもらうゼ?』
 レイとカールの前に、4本の腕の1本、その小指の先を欠けさせた愚神――ウルカグアリーが姿を現わした。
「やってくれるわね」

●デスマーク
「まだ終わりじゃないぜ」
 五感を研ぎ澄ませてこのときを待ち受けていたリィェンが、ウルカグアリーになにかを投げつけた。薄く砂をまぶしたそれは、愚神の体をこすって砂に落ち、びしゃりと爆ぜる。
「なによこれ?」
 ウルカグアリーの左脇に、べたりと赤いものが付着していた。
『糊に紅を混ぜただけのものじゃ。ただの目印じゃよ。そちのつるりとした体であればすぐに取れるじゃろうよ』
「言われなくても! こんなのすぐひっぺがしてまた潜伏するし」
「それはもう少しだけ待っていただけますか?」
 ウルカグアリーの小さな顔の前で、ぱん。昴の両手が打ち鳴らされた。
「!?」
 糊は目印というだけでなく、目くらましでもあった。だからこそ、そちらへ意識を向けていた彼女は潜伏して近づいていた昴に気づかず、虚を突かれることとなったのだ。
「実力はわかりませんが、数では圧倒的にこちらが優位です。連携を取ることで、こんなに他愛のない“手”が決まる」
「あんたほんっと、小賢しいわね!」
 ウルカグアリーの怒声を静かに受け流し、昴は彼女から距離を取った。
「目的達成のために手は惜しみません。全力で事に当たるだけです。だから僕は油断も手加減もしませんよ」
 その昴の言葉を継ぎ、ウルカグアリーへささやきかけたのはマイヤだ。
『はがすならはがせばいいわ。それはほんの少しの間、あなたの位置を知らせてくれればいいだけのものだったから』
「本命の目印はこちらだ」
 央の親指が弾き出したライヴスの弾が、リィェンのつけた糊の真ん中へ潜り込んだ。
「デスマーク!? やっぱりえげつないわねシャドウルーカー」
「ジャスト100秒――おまえが絶望するまでに残された時間だ。……ここまでさんざん俺たちを振り回してくれたんだ。最後まで未練たらしく逃げ回ってくれよ。90秒はつきあってやる」
『今日の央を怒らせたのは悪手だったわね。それがあなたの敗因よ』
 押し詰めた声音を発する央の内、マイヤが薄い笑みを浮かべて言った。
「怒る? 狭間がか?」
 リィェンの問いにマイヤは肩をすくめ。
『彼女とのデートがポシャったのよ』
 え? 彼女と、デート?
 一同の目が央へ集中した。男女間の諸問題は、目に見えるものだけでは判断できないことが多い。いや、それはわかる。わかるのだが、じゃあさっきのアレな雰囲気はなに? いやいや、突っ込んだら藪蛇だから訊かないけれども。
「……ん、逃げられたり隠れたりされるとめんどくさい」
 戦場へ着くと同時に潜伏し、状況が動くのをただひたすらに待っていた咲雪がウルカグアリーの背後に現われて。女郎蜘蛛の糸を放った。
「うわっ!」
 糸に乗せられた減退のBSによってウルカグアリーの水晶の体が劣化。薄白くくすんで透明度が損なわれていく。
「後ろとったら普通攻撃してこない?」
 ウルカグアリーのあきれ顔に、咲雪は小首を傾げてみせて。
「適材適所?」
『敵の動きを止めるのが私たちの仕事ですからね』
 アリスの言葉を最後に残し、咲雪はウルカグアリーから大きく跳びすさる。
「後の仕事は、お任せだから」
「まかされた」
 彼女の頭上を跳びこえてきたのはギシャだ。
『姿が見えているとはいえあのサイズだ。回避能力も高いだろう。振り回すだけでは当てられんと思え。フェイントとフェイク、あとはわかるな?』
 どらごんの助言を受け、ギシャが加速する。
 そしていきなり前転からの胴回し蹴りと見せかけて起き上がり、膝蹴りと見せかけて跳躍、くるりと前方宙返りを決めながら、攻撃と見せかけて普通に着地する――と見せかけて。
「ほい」
 小指の先から伸びた竜爪で、水晶の首を掻いた。
 ギシャの「しろ」は普通の鉤爪とは異なり、5又――彼女の5本の指それぞれに沿って装着するよう造られている。それゆえに自分自身の爪さながら操れるのだ。
『だからこんな小技も使えるわけさ』
「小ずるいわねー」
 ウルカグアリーにギシャは乾いた笑みを投げ。
「今日は頭使う日だから」
 さらに。
「テメーの砂嵐、余計だったって後悔させてやるぜッ!」
 砂上をすべるように低く駆け、聖がウルカグアリーへ迫る。
『ヒジリーは……考えても……ダメ。体と心全部で感じて……思いっきり……突っ込んで』
 Le..のサポートで見極めた聖は「紅榴」を砂に突き立て、その反動を利して強く前方へ跳ねた。
 カグヤが計算によって治癒のコントロールを施した結果、彼の命は半分と少し削れた状態になっている。
 かくして発動した反撃の狼煙がライトグリーンの輝きとなって噴き上がり。
「喰らいやがれッ! 千照流、破斥・紅椿ッ!!」
 斬り上げ、横薙ぎ、直突きの3連撃が、ウルカグアリーの体を鈍く打ち鳴らした。
「どうだッ!?」
 聖の突き込んだ切っ先が食い込んだ水晶の胸元を見下ろし、ウルカグアリーは痛そうに顔をしかめた。
「効いたわよ、効いた。でもね、まだよ。まーだ、壊れてあげない」
 女郎蜘蛛の拘束を振り払った彼女が3分身、一斉に聖へ襲いかかり、魔力の刃でその体を切り刻む。
「マークされちゃったら隠れたってムダだからね。壊れるまでぶっ放すわよー!」
「壊れる手伝い、俺がしようか」
 かついだ「神斬」から狂気に濡れたライヴスをしたたらせ、リィェンが進み出た。
「ありがと。じゃ、そう言ってくれたお礼をあげるわ」
 ウルカグアリーの右腕2本がサンダーランスを生みだし。リィェンのがら空きの胸に叩きつけた。
「――ははっ。信じてたぜ。最高に痛いのを、俺にだけプレゼントしてくれるってな」
 血とともに狂った笑みを吐き出したリィェンが足を強く踏みしめ、ウルカグアリーの右腕2本を削ぎ落とす。狙っていたのだ、カウンターのタイミングを。
「な、なによ!?」
 残る左腕から新たなサンダーランスを生みだそうとするウルカグアリーだが、しかし。
 ぱん。
「……ひとりにだけ目を奪われることなく、範囲攻撃を撃つべきでしたね。なにせ今日はシャドウルーカーぞろいなんですから」
 横から突きだされた昴の手が、猫騙。
 彼はリィェンを囮に潜伏し、忍び寄っていたのだ。先ほどと同じように。今度こそ確実にウルカグアリーを壊すきっかけを作るために。
 果たしてシャドルルーカーたちが潜伏を一斉に解除、他の仲間とともにウルカグアリーへ殺到した。そして。
「骸登龍旋回刃!」
 麟の背後からのジェミニストライクで上空へ弾かれたウルカグアリーにレイが言う。
「ワルツを踊らせてくれた礼だ。オレの音がおまえの耳に届くかまではわからないが、この1拍子を贈ろう」
 ブルズアイを乗せて撃ったライフル弾が音を置き去りにして飛び、魔法を撃ち出す機を失ったウルカグアリーの左腕2本を砕いた。
「あっ」
 空中で体勢を大きく崩したウルカグアリーの真ん中に、リィェンの唐竹割りが打ちつけられ。
 無数のヒビで白く濁った水晶の体が爆ぜた。

●砂塵を抜けて
「次はどこでなにをやらかすつもりじゃ? おとなしくしておるつもりはないのじゃろう?」
 カグヤの問いに、砂の上に転がった水晶の顔が答える。
「そろそろ1回巣に帰る。なにかするならインカよね。ああ、遊びに来るなら歓迎するわよ」
『ぜひうかがいたいところでござるが、その際にはまたそれがしどもも規約を課せられるのでござろう? それはいったいどのようなもので?』
「簡単なやつ! 簡単なやつを希望する!」
 忍の本分であるところの諜報にいそしむ宍影と、諜報そっちのけで謎解きに心を燃やす燐。
 ウルカグアリーはしばし考え込み。
「宿縁の謎かけコンビに言われちゃ、謎解きにするしかないわねぇ。あとはアドベンチャー? お楽しみにね」
 パキリ。乾いた音をたてて水晶の笑顔が砕けた。
『そこの機械女、ワタシの顔、記念にあげるわ。お土産のお礼のお土産よ』
 そして砂嵐が消え。
 ウルカグアリーの気配も消えた。
「土産の土産か。なかなか粋なことをする」
 水晶の顔だった欠片を、いそいそとカグヤが拾い集める。
 その内からクーが淡々とコメントした。
『くず水晶だね。役に立ちそうにはないけど』
 それに乗ってきたのはレイの内のカールだ。
『水晶ってピンキリだからな。あー、アリーはキレーだったけどなー。あれプレゼントしたら喜ぶぜー』
「カール、気に入りのオンナに水晶を、なんて考えるなよ。痛い目を見ることになるぞ」
 見た目に反して実にストイックなレイの言葉。バンド関係者にとって女性問題は実に深刻だ。
 カールは首をすくめて『はいはい』と返すよりなかった。
「……がっちり戦って、きっちり倒した。なのにスッキリしねぇな」
 聖がため息をつく。アタッカーとしての務めを正しく果たしただけに、始めから倒せないことが確定していた愚神にもやもやするのだ。
『追っかけて……追い詰めて……いくしかない……ね。その前に……ごはん』
 幻のはずのLe..の腹がダミった音をたてた。
『私も日課を。日課を果たさないと。白くて冷たくて甘いあれを』
『それより広いお風呂で砂落としたいよ。終い湯にしか入れないのが風呂屋の宿命だけどさ……』
 Le..の腹の虫に触発されたリリアがバニラアイスを、銭湯を預かる稜は風呂を求めてため息をついた。
「やっと終わったのじゃ! ――おお、あんなところにオアシスが」
「いやあれ蜃気楼! 幻だから惑うな行くな脱ぐな!! おいギシャ、どらごん、手伝ってくれ!」
 風呂というワードでなにかの限界を超えてしまったインがリンク解除。豪快に衣服を脱ぎ放とうとするのをリィェンが必死で羽交い締め。
「え? どこ刺す? 首の裏? 耳の後ろ?」
『おまえ、暑いのは慣れてるんじゃなかったのか……?』
 頭を使いすぎてショートしたらしいギシャの内で、どらごんがやれやれ、かぶりを振った。
『央にとって、今日はいい日ではなかったのよね』
 幻想蝶の内へ戻ったマイヤが、苦い顔を砂漠へ向けていた央へ静かに言葉をかけた。
「え?」
『でも、ワタシにはいい日だったわ。央が不幸だったおかげで央を自由にできたから』
「マイヤ……」
「これは――僕が砂を吐いておくべきシチュエーション、なんでしょうか?」
 真剣に悩む昴。
 リンク中は感情を思考から切り離し、目的の達成だけを考えて行動する彼だが、いざ任務から離れれば普通の男子なのだ。
 そんな彼のお年頃な葛藤を、彼の内にある英雄は生暖かい目で見守るのみであった。
「……ん、暑い。帰る」
 そんな仲間たちの輪から、ふらふら咲雪が離脱した。
『今回は戦う以外のことが辛い任務だったわね』
 リンクを解除してしまうと咲雪が倒れてしまいそうでリンク継続中なアリスもまた、重いため息をつく。
『でも、いろいろわかったんじゃない? 砂嵐がどんなものかとか、アバター使う愚神がいるとか』
「……ん」
 咲雪がこくり。そして。
「あたしの計算だと、2日めの夜ごはんが、もやしになるってこと、とか」
『今さら――!?』

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535

重体一覧

参加者

  • 魅惑のパイスラ
    佐藤 咲雪aa0040
    機械|15才|女性|回避
  • 貴腐人
    アリスaa0040hero001
    英雄|18才|女性|シャド
  • Run&斬
    東海林聖aa0203
    人間|19才|男性|攻撃
  • The Hunger
    Le..aa0203hero001
    英雄|23才|女性|ドレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避



  • 捕獲せし者
    骸 麟aa1166
    人間|19才|女性|回避
  • 迷名マスター
    宍影aa1166hero001
    英雄|40才|男性|シャド
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • ぴゅあパール
    ギシャaa3141
    獣人|10才|女性|命中
  • えんだーグリーン
    どらごんaa3141hero001
    英雄|40才|?|シャド
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