本部

【神月】連動シナリオ

【幻島】海と水着ときみの理想

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/07/05 22:57

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愁仁
棗 葉

掲示板

オープニング

●幸福のまぼろし
 エーゲ海に浮かぶ四つの島。そこには古代遺跡と鋼の樹木が一本ずつ植えられていた。島に一つずつ、建物に守られたそれは、樹木のかたちをしたオーパーツ『クリュリア』。
 五年前、イギリスの運輸会社グラノールはこの四つの島で遺跡とクシュリアを発見した。
 クシュリアは触れたものの望む季節の再現と幻を、島とその周囲に発生させることが出来るオーパーツだ。
 グラノールは巨額を投じてその島々を再開発した。そして、三年前からそこは春島、夏島、秋島、冬島と命名され、総じて季節島と呼ばれるようになり、世界中のセレブが利用するリゾート地となった。
 ────優秀なオーパーツとは言え、娯楽でしか活用されなかったそれに、利用価値を見出したセラエノが目を付けた。


 セラエノによって春島・秋島が占拠されてすでに十八時間が経過。
 ようやく、グラノールからの救援要請を受けて派遣されたエージェントたちが季節島のひとつ、夏島に辿り着いた。
 夏島はグラノールの私設軍隊が抵抗していて、まだ完全にセラエノの手に落ちたわけではない。
 幻が発動しないぎりぎりの位置で停泊した船でエージェント達は作戦を練った。

 ────そんな船の一角で、不穏な挨拶が交わされた。
「やあ、お久しぶりだね、ミュシャちゃん。相変わらず、色々追いかけて忙しそうだね」
 にこやかな笑顔で片手をあげて挨拶をしたのは灰墨 信義 (az0055)。今回の依頼に協力するパラダイム・クロウ社の研究員だ。
「……ああ。久しぶりだ、灰墨さん」
 ────二度と会いたくはなかったが。
 ミュシャ・ラインハルト (az0004)は信義に挨拶を返すとそのまま船室へ戻ろうとした。
「おやおや、つれないねえ。せっかく久しぶりに会ったんだ。積もる話もあるだろう? 早々会うこともないだろうしな」
「会いたくもないしな」
 パラダイム・クロウ社は世界蝕発現後に現れた新技術『魔術』を研究する企業であると一般的には認知されている。しかし、元を辿れば魔術を研究する小規模魔術結社であり、秘密結社セラエノに異を唱え、対抗すべく独自に活動する組織でもある。そこに所属する灰墨も『魔術師』である。
 セラエノが『クリュリア』を外に運びだすためには丸一日ほどかかる魔術的な作業が必要である。信義とその英雄ライラ・セイデリア(az0055hero001)はその作業の妨害もしくは解除を依頼されて同行していたのだが────。
「俺はそんなことは無かったよ。ライラだってそうだろう?」
「あら、ワタシは普通にお久しぶりねって感じよ?」
「俺だってそうさ」
 きょとんとするライラの隣でにこやかに笑う信義。だが、ミュシャはその笑顔に騙されて今まで散々辛酸を舐めて来た。正直に言えば、ミュシャは信義を嫌っているし信義もミュシャを嫌っている。この因縁は、かつてミュシャが信義をヴィランと間違えて捕まえたところから始まった。その時は信義も充分不審な行動をしていたこともあって、ミュシャが信義に謝罪してライラも許したのだが────信義本人は許す気など更々無かったようで、ミュシャは彼に偶々会うたびに様々な小さな嫌がらせをされてきたのだ。
「依頼は依頼、しかも、相手はセラエノ────灰墨さんも因縁のある相手だ。邪魔はするな」
「俺はいつも邪魔なんてしないだろう」
 信義がそう言った時、他のエージェントたちが船室から出て来た。
「おっと、H.O.P.E.の皆さんの話はまとまったかな?」



●誰かの理想を顕現した島
 信義とパラダイム・クロウ社は先日のH.O.P.E.所属のエージェントたちとの依頼で、セラエノの捕虜をひとり預かっていた。今回、その捕虜から夏島襲撃の作戦を聞き出していた。

 まず、この夏島では基本的に武器・スキルを使うことはできない。要人も遊べる安全なリゾート地を目指したここでは、武器は効果も含めて水鉄砲に変化してしまう。ただし、相手を気絶させることができれば、気絶した人間はこの幻からログアウトし、幻影の効果が無い島の周囲にある浅瀬まで放り出される。
 そこで、セラエノは魔法と科学である物質を作り出した。それは、幻を『食う』物質で、子供が遊ぶ粘々したゲル状の物質。それはモンスターの名前から取って『スライム・ブロークントイ』と名付けられた。『スライム・ブロークントイ』は特定の幻を食うアイテムで、この使用により水鉄砲の幻などを取り去り、武器・スキルの使用を可能にする。

「────さて、準備は整ったみたいだし、そろそろ行くかい?」
 信義は船の傍に浮かべた小舟に目線を移した。
「灰墨さんは行かないのか」
 ミュシャの剣呑な視線に、信義は意外、というように目を丸くしてみせた。
「戦闘は君らエージェントの仕事だろう? 私のような非力な魔術師は役目まで船で寂しく待ってるさ」
 そして────信義に見送られて、小舟は夏島の幻の世界へと入って行った。


「きゃああああっ!?」
 まず、船の先頭に居たミュシャが異変に気付いて悲鳴を上げた。パートナーのエルナー・ノヴァ(az0004hero001)が驚いて目を丸くする。ミュシャのこんな女の子らしい悲鳴は今まで聞いたことが無かった。
「やだ、これ……何!?」
 両肩を抱いてしゃがみ込むミュシャは、何故か今までの鎧姿ではなく、水色のフリルスカート付のビキニ姿に変わっていた。
「夏島の、幻────、っ!」
 言いかけて、ミュシャは何かに気付いて顔色を変えた。真っ青になって露わになったはずの背中の傷を隠そうと引っ掻くように指を伸ばしたが、その手はエルナーによって止められた。
「……傷は、無いから大丈夫だよ。水着だけじゃなくて身体自体が幻のようだね」
 その言葉に、ミュシャは恐る恐ると自分の身体を見る。細身とは言え剣を振い戦うために鍛えてあったはずの身体が、折れそうなくらい細く、しかし、まるく滑らかなものに変わっている。
「…………」
 …………胸は、そんなに変わってない、と思う。特に小さくも大きくもない、はずだし。
 手に持っていた武器は水鉄砲に変わっている。
 自分の身体ではない、と気付いたものの、また別な妙な恥ずかしさが湧き上がって、そしてはたと気付いた。
「あの詐欺師……っ」
 船の上でにこやかに手を振った信義。彼は恐らくこの現象を知っていたはずだ。ミュシャはぎりっと奥歯を噛みしめた。
 それでも、目的を思い出し、なんとなく胸元を隠しながら仲間の方を振り返った。
「エルナー、共鳴を…………」
 目の前で面白そうに笑って立って居るエルナー。
 その身体が、ボディービルダーのようにむきむきになってたので、ミュシャはどうしていいのかわからず絶句した。

解説

目的:セラエノ全員を追い出して、『クリュリア』の樹を守れ

ステージ:夏島海岸(水辺・砂浜)

夏島の幻
とてもリアルで強力な幻です。
男女ともに水着姿になり、下記のような体系へ変化します。
スライム・ブロークントイにぶつかると水着はそのままですが、
現実の体型で同じ水着を着た姿に戻ります。※この状態ではスキル・AGWの武器を使えます。
女性:子供用着せ替え人形や女優などのような均整の取れたスタイルの良い姿に。
※ただし、胸は大きすぎず小さすぎずになるので、元々大きい方は相対的に小さくなります。
男性:筋肉ムキムキのマッチョに。
スキル・AGWの武器を使わない場合、共鳴する必要はありません。

味方:グラノール私設軍隊(セラエノより少数)
グラノール チームA:幻の姿のまま水鉄砲を撃っている
グラノール チームB:AGWの武器・スキルを使用できる(少数)

敵:セラエノ兵(総人数不明)
セラエノ チームA:幻の姿のまま水鉄砲を撃っている
セラエノ チームB:AGWの武器・スキルを使用できる(少数)

アイテム:『スライム・ブロークントイ』
よくあるジェル状玩具とモンスターのスライムに似た物体。
ベタベタ絡まり付き、幻の効果の一部を奪う
しかし、戦闘により大半のスライムが海や浜辺に散らばっている。
使用したい方は、自分で見つける・敵に投げつけられるのどちらかを選択してください。

注意事項
・利用規約に引っかかるような表現は大幅なマスタリング対象です
・水着の幻はスライムには食べられませんし、幻なので脱げることも破れることもありません
・セクシー過ぎる水着は出現しないので、せっかくなので可愛く素敵な水着を着用しましょう
・全員がセラエノと戦うプレイングが無い場合ミュシャ一人で戦うので失敗もあり得ます
・スライム・ブロークントイについてはPL情報です
・間違って性別の違う幻(体の性別に合った水着付)になる方は明記してください
・台詞・RPの記載をお願いします

リプレイ

●引きずり落ちた
 灰墨信義の言葉を聞いた虎噛 千颯(aa0123)は、友人の麻生 遊夜(aa0452)に目配せをした。
「信義ちゃんを引きずり落とそう!」
 エージェントたちが小舟に移る中、こっそりと遊夜と物陰に潜んだ千颯は悪巧みを始める。
「信義ちゃんが船に残るなんて、何かあるに違いないぜ」
 千颯は信義からの依頼を受けたことがあり、彼の癖のある性格は知っていた。銀の瞳が子供のようにきらきらと輝く。
「しかしな」
 声をかけられた遊夜はさっきまでの信義の尊大な態度を思い浮かべた。遊夜は三十を超えた千颯たちより年上の男だ。
「……灰墨さんを拉致るなら悟られないようにしないとな」
 遊夜の横顔にも少年のような表情が浮かぶ。悪意はどちらも──少しだけしかなかった。
「おふたりは待機かな?」
 丁寧に、しかし、明らかに面倒臭そうな視線を投げてよこした信義に、千颯はにやりと首を振る。そして、彼の英雄である白虎丸(aa0123hero001)を呼び寄せて、不思議そうな彼を「いいから」と抑える。
「まあ、俺ちゃんに任せて、な!」
 バーンと信義の肩を叩くと、共鳴した千颯は上陸用の小舟に身軽に乗り移った。あと船に残っているのは遊夜と九龍 蓮(aa3949)と月詠(aa3949hero001)だけである。
 信義が船内のエージェントに声をかけようと背を向けた。
「ふふふ……、一人だけ高みの見物などさせるかぁ!!」
 その瞬間、千颯はリンカーの人非ざる力で、掌に隠していた釣り糸を引っ張った。透明な糸の先は先程、信義のスーツの襟首に仕掛けた釣り針へと繋がっていた。引っ張られ、バランスを崩した信義へ遊夜の容赦ない足払いが襲う。
「ライラ!」
 信義に呼ばれたライラが仕方なさそうにナイフで釣り糸をふつりと切った。大きくバランスを崩した信義だったが、辛うじて船内に留まった。信義は大きく肩で息をすると、遊夜の背中を強めに叩いて小舟へと押し込んだ。
「──悪いね、虎噛君。前の依頼でも君の罠は特に見事だったよ。だが、その君が共鳴までしていたんで、ちょっと警戒させてもらったよ。悪戯が過ぎるんじゃないかい?」
「いやぁ、『寂しく待ってる』とか言うから一緒に遊ぼうかと。いい機会かなって」
「やっぱりこういうのはみんなで『協力』してやるのがいいと思うんだ~! ほら! 信義ちゃん友達いなさそうじゃん! 一緒にやる事で一体感が生まれると思うんだぜ!」
 しれっとのたまう遊夜と千颯に、信義はにっこりと笑ってみせた。
「嬉しいことを言ってくれるね。私はもう友人のようなものだと思っているよ。でも、残念ながらゲームは始まっているんだ。非力な私のことは気にせずに、どうか役目を果たして欲しい。
 ────それとも、ミュシャちゃんは俺の手を借りないとお仕事は難しいかい?」
 突然声をかけられたミュシャだったが、信義の嫌味ったらしい言い回しに眉を吊り上げる。
「灰墨さんの協力など不要だ」
 千颯と遊夜が軽く苦笑いをして顔を見合わせる。
「楽しいこと、嫌い、じゃないし。折角だし、遊夜たちと信義も、一緒」
 蓮が、不意打ちでポーンと信義の背中を押した。そのまま、信義は確かに船上から『引きずり落ちた』。
「あらぁ……」
「謝謝────」
 申し訳なさそうな蓮からお菓子を受け取りながら、ライラは堪えきれずに笑う。
「灰墨殿、うちの馬鹿がご迷惑をかけてすまないでござる」
 共鳴を解いて、慌てて信義を引き上げる白虎丸であった。

「よろしく頼むよ」
 一行を見送る信義は、小舟が完全に離れてから崩れた前髪をかきあげ毒づいた。
「くそったれ。H.O.P.E.の悪童どもが」
「あらあら、千颯君とは同じ年くらいじゃないの」
 再び吹き出したライラは夫のジャケットを受け取ると、ずぶ濡れの彼をタオルでガシガシと拭いた。
「まあ、いいさ。彼らも夏島で楽しんでくれるだろ」
 ライラに大雑把に拭かれながら、船べりで頬杖を着いた信義は意地の悪い笑みを浮かべた。



●水着と理想体型
 オーパーツ『クシュリア』により生み出された夏島の幻影は水着姿だった。
 誰の理想なのか、もしくは、セレブの遊ぶリゾート地にそれが相応しいと決められたのか、その幻影の力により『女性はモデルや女優のような程よく美しい体型』に、『男性は古代の戦士のようなムキムキの筋肉質な体型』になっていた。もちろん、それぞれ水着は着ているし、身体を含めた幻なので、身体的な特徴────例えばミュシャの背中の傷などは無かった。そもそも、全員実際は服を着ているはずなのである。

「ひぅ、な、長袖の服っ」
 ミュシャと同じく、いつもは服の下に肌を隠している姚 哭凰(aa3136)が狼狽える。そんな能力者を英雄である十七夜(aa3136hero001)が優しく宥める。
「島の幻みたいですね。一先ず龍鱗は見えてないみたいですので落ち着いてくださいな」
 そして十七夜はしみじみと哭凰を見つめる。
「それにしても、くーちゃんの水着がこうなるとは……、普段出来ない格好への憧れですかね?」
 哭凰は、背中が大胆に開いたモノキニを纏っていた。
「確かに思ったこともあるけど、こんなに心臓に悪いのはごめんなの!」
「それにしても……体形変わった方もいるみたいですが、くーちゃんは相変わらず可愛いですねぇ」
 十歳の少女も着せ替え人形のようなモデル体型になっていたが、残念ながら背は伸びなかった。発育のいい子供マネキン人形の体型だと思えばおかしくも無いが……。
「うーん……」
 すらっとしたパレオ付きの水着が似合う十七夜と、成長の止まった自分の身体を見比べて、哭凰は複雑な想いを零す。
「もう体形については諦めたよ……。共鳴時の体形もナギの体なんじゃないかと」
「いやいや、わたくしには龍翼も龍尾もありませんからね?」
 自分の実年齢相当に変化する獣人形態すら疑問に想う哭凰に、十七夜はおっとりと否定する。

 月鏡 由利菜(aa0873)とリーヴスラシル(aa0873hero001)に起きた変化は、ある意味、顕著であった。
「……AGWが出せない。ネルトゥスもフォールクヴァングも錬成できないようだ」
「こ、このまま戦うしかないんですか!?」
 リーヴスラシルの言葉に由利菜が不安そうに小さく叫んだ。
 そんな、真面目な二人の実戦的な話はともかく。
 リーヴスラシルは黒字に紫の薔薇の模様が入ったビキニだった。対して由利菜は青地に白薔薇の模様のビキニに銀色のティアラを合わせた姿に変わっていた。両者ともとてもよく似合っていたが、ふたりを知る者には違和感があった。
「減るんだ」
 ぽつり、と思わず呟いたのは由利菜たちの友人でもある早瀬 鈴音(aa0885)だ。
 ふたりの平均より大分ふくよかな胸は揃ってサイズダウンしていた。
 一瞬、ちょっと遠い目になりかけたが、他の女性陣のスタイルの良さに気付いて改めて鈴音のテンションが上がる。
「凄い、見て見てこの抜群のプロポーション」
 くるりと回る鈴音を見て、英雄のN・K(aa0885hero001)はこてんと首を傾げる。
「別に鈴音はそんなに変わってないわよ?」
「そんな事無いって、ほらお腹触ってみて」
 元々バランスの良いスタイルの鈴音だったが、幻はモデル並みの体型とあってウェストなどは各段に引き締まっている。女子にしかわからないかもしれないが。
「N・Kもモデルみたいじゃん」
「でも何だか落ち着かないわ。自分の体じゃないみたいで」
 おっとりと応える英雄は元々肉付きが良いので全体的にサイズダウンしていた。特に胸とか────いや、そこから離れよう。
 N・Kとふたりでああだこうだと、自分たちの変化したスタイルを見せあったあと、鈴音はもう一人の友人にも声をかけようと笑顔で振り返った。
「ね、ね。真琴ー、見…………幻、頑張り過ぎじゃん!」
 驚愕。一緒に温泉に入った仲の友人、今宮 真琴(aa0573)のスタイルはちょっと嵩増しされていた。また胸の話ですが。
 真琴はラッシュガードを羽織ったモノクロサロペット姿の水着だった。外してポケットにひっかかっていた眼鏡を慌てて掛け直す。
「……おぉ……凄い、ぼりゅーむ!」
 真琴は目をまん丸にして、ふっくらとした胸を押してみる。ぼいんぼいんという弾力が、確かにそこにバストと言う存在があることを教えてくれた。
「これが……幻覚だと……?」
「ワタシは若干サイズ小さくなったのぅ」
 ぺふぺふと無造作に己の胸を叩くのは、普段、立派なバストの持ち主の奈良 ハル(aa0573hero001)である。頭にサングラスをかけ、派手な赤が基調の三角ビキニがよく似合っている。何の因果か真琴の英雄である。別に何の因果も無いが。
「体型がみな一緒でつまらんのぅ」
 鈴音たちに気付いたハルが言う。
 ────これだから、Voluptuous陣は。
 ハルの感想に、ミュシャを含めた一部の女子たちはちょっとだけ釈然としないものを感じた。
「しゃ、写真とっておこう! これは自慢できるの!!」
 顔を輝かせた真琴が言う。
「……依頼忘れていないかの?」
「くくく……これを見せて……」
「またはたかれるぞ?」
 はっ! とした真琴の目線が自分の胸から周りの男性陣へと移る。
「わー、まっちょだねぇ」
 変化に気付いたユフォアリーヤ(aa0452hero001)がふさふさの尻尾をピーンと立てる。彼女の目の前で遊夜はムキムキの筋肉に似合いのブーメランパンツ姿に変わっていた。
「……ん!? ユーヤが、ムキムキに……」
 そんなユフォアリーヤの姿に遊夜も首を傾げる。
「む? リーヤ、何時の間に水着に……」
 ユフォアリーヤ自身も、長い黒髪と気だるげな雰囲気に似合いのチューブトップにデニム風の水着姿に変わっていた。胸元やすらりとした美脚が際立つ。
「なるほど、だから待とうとしたのか」
「……ん、情報なかった、嫌がらせ?」
 信義のふてぶてしい顔を思い出しながらも、筋肉がむっきむきに増えた身体で面白そうに力こぶを作ってみる遊夜。そんな遊夜の胸元を、警戒しながらつつくユフォアリーヤ。
 きわどいブーメランパンツ姿でけろりと状況を楽しんでいたのは千颯だった。信義の予想に反して男性陣はノリノリだった。
「俺ちゃんフルオープンパージしてるから別にこの姿でも何とも無いんだぜ~!」
 ちなみに、英雄の白虎丸に関しては現状をよく把握していないようだった。しっかり防水使用の白虎の被り物は変わらずそのままで、ボクサータイプの水着を履いた筋肉隆々な身体はむしろ常時よりスマートにさえ見えた。
 一方、灰川 斗輝(aa0016)は不満そうに自分の身体を見ていた。
「力を籠められる、という意味では筋肉も悪くはないが、ただごついだけの筋肉など重りなのでな。私には邪魔だ」
 そんなクールな灰川と対極をなす反応が隣で起こっていた。
「みずぎじゃーーー! おんなのこじゃーーー!! むちむちぷりんじゃーーー、ひゃっ」
「メイドぱーんち! 旦那様お仕事の時間にございます」
 満面の笑顔の獣臓(aa1696)、八十六歳の横顔へ拳をめり込ませたのは彼の英雄キュキィ(aa1696hero001)である。ぐふ、と呻いてぶらりとした獣臓を女性陣から離れたところへ引き摺って行く。
「旦那様」
「はっ!」
 キュキィの声に獣臓は我に返る。
「おお、そうじゃった。今回の目的は女の子たちの水着をたんの……ごほん、わしは世のため人のためセラエノを倒すのじゃ!!」
「さすが旦那様でございます!!」
 ビシィッ! と島を指す獣臓にキュキィは拍手する。
「しかも、わしの水着はふんどしじゃ! 古式ゆかしい水着じゃぞ!!」
 筋肉隆々に変化した身体を誇らしげに見せつけて、獣臓は十三歳の美少女メイド姿のキュキィへ嬉しげに視線を────。
「え」
 キュキィ、十三歳。百六十センチ、四十キロ。己の職務に忠実なあまり、メイド姿で働く『美少年』である。
「私の水着は上半身もカバーするタイプの競泳用水着です」
 つまり、幻はムッキムキマッスル。


「これはこれで気味悪いな」
「ハルちゃんそんなことないよ! あぁもう、ちょっとこう絡んでくれないかなぁ」
 ちゃっかり右や左が重要な×の公式のオーラをせおいながら真琴はスマートフォンをフル稼働して写真を撮っていた。
「……依頼忘れてるよな?」
 ハルのツッコミは果たしてその耳に届いたのか。


 一方、なぜか幻が間違ったエージェントも居た。
「……女の子に、なった」
 蓮が自分の身体を見て淡々と感想を述べた。元々少女と見間違えるほどの見た目だったが、スタイル抜群のモデル体型の身体にチャイナ風のパンツビキニが良く似合う。
「月詠」
『わ、私は絶対に出ませんからね。どちらになったとしても無理です』
 月詠はいつの間にか、さっさと自分の幻想蝶の中に引きこもっていた。蓮の水着の胸元に光るスフェーン石の胸飾り、その中から戸惑った声が聞こえる。
 ────どんな姿でも月詠は月詠なのに。
 だが、やはり体型には違和感があった蓮は武術の型を取ってみる。
「……ん、動ける。問題なし」
 元々共鳴時も自分が主体だからなんとかなるだろう、と水鉄砲を手に取った蓮だったが。
『蓮の水着姿を写真に収めておきたいものですが、ここからは出たくありませんし。どうしたら……』
 ブツブツ、幻想蝶から声がする。
 ────月詠、とっても聞こえてる。
 はあ、とため息を漏らして周りを見回した蓮の目にミュシャが目にとまる。
「え、写真!?」
「ミュシャは、ボクと、嫌?」
 潤んだ瞳で見つめられて、ミュシャの眉尻が困ったように八の字に下がる。そこへ真琴や鈴音、哭凰たちがやってくるのが見えた。

 最後に、赤毛に良く似合う黒いセクシーなワンピース型の水着を身につけた”彼女”が叫んだ。
「なななななな何たるnot英雄的ダイナマイト!? これは、なんというか、これは、なんなのだ!?」
 常に英雄の英雄である在り方に括る英雄らしいネイク・ベイオウーフ(aa0002hero001)。百八十四センチ、七十八キロのたくましい男性だった彼は、なぜか女性化していた。ネイクの男声のままの地声や精悍な顔つきはしなやかな女性の身体とはミスマッチである。
 驚愕のネイクの声にその場のエージェントたちは彼を見た。そして、発見する。
 努々 キミカ(aa0002)は図書館が良く似合う、眼鏡をかけた小柄で少し地味な少女だ。
 幻によって彼女はグラマラスな水着の美少女に変化────はせずに、むきむき雄っぱいの逞しいヒーロー体型へと変化していた。
「えっ、私、こっちの方ですか……!?」
 確かに筋肉で盛り上がったその胸は普段のキミカよりも、失礼ながら雄々しくふくよかでグラマラスではあった。
 とりあえず、獣臓があんぐりと大口を開けてキミカを見つめた。その視線を受けて、キミカの頬がみるみる紅潮する。
「……私、昔は虚弱体質で、それでヒーローに憧れてたんです。だから……一度なってみたかったんです、こんな身体! わぁ、まるで英雄譚の中の勇者みたいです!」
 あろうことか、キミカはノリッノリでボディビルダーのようなポージングを決め出した。
「この身体を思う存分堪能させていただきます!」
 キミカの発言に、灰川以外のエージェントたちはセラエノを撃退しに来たことを思い出した。


「とにかく、倒しましょう!」
 うっかり女子の写真撮影会に混ざってしまったミュシャは頬を赤らめながら、砂浜に降り立った。だが、その視線の先で各種ポージングを決める遊夜が目に入ってしまって思わず顔を伏せた。
「うむ、中々に新鮮な反応だ」
 必死に視線を逸らすミュシャを笑わせるべく、今度はモストマスキュラーをキメながら遊夜が面白そうに笑うと、ユフォアリーヤがその遊夜の肌に指を這わせてクスクスとわらう。
「……ん、慣れてきた……傷がないのも、新鮮」
「これが幻とはなー……ちと体鍛え直すかね」
「……ん、ムキムキに、なるの?」
 ユフォアリーヤがダブルバイセップスをキメる遊夜の腕にぶら下がりながら首を傾げた。
「程々に、な……さぁ、仕事と行こうか!」
「……ん!」
 遠目にグラノール私設軍隊とセラエノが戦っているのが見える。水鉄砲を構えた遊夜に、ユフォアリーヤも水鉄砲を構え嬉しそうに尻尾をぶんぶんと振る。
 千颯と白虎丸は水鉄砲を腰に差し、楽し気に体術を絡めてセラエノに果敢に向かって行った。

「はしゃぐのは良いけれど、遊びに来たわけじゃないのよ?」
「解ってるけど、どうすんのこれ。武器も使えないぽいし?」
 N・Kの言葉に鈴音は問い返す。
「でも……使ってる人もいるみたいなのよね」
 確かにグラノールやセラエノで明らかにスキルが発動している様子が見て取れる。それに────。
「体型、違うのよね」
 逞しいビール腹のリンカーがブルームフレアを使っている。
 由利菜とリーヴスラシルも全く同じことを考えていた。
「グラノールはともかく、何故セラエノにAGWや技を使えるリンカーが混じっているのでしょうか……?」
「外部からクリュリアの幻を無効化する何かを持ってきたのか?」


 砂浜に降りた蓮はむにっとなにかを踏みつけた。ぬめぬめとしたそれは砂浜に横に広がった。
 ────気持ち悪いっ。
 張り付いたそれを放りなげたのは仕方ないことだ。それが赤毛の美女体型のエージェントを襲ったとしても。
「あ、不好意思」
 突如現れたねばねばに顔面を襲われたネイクは軽いパニックに襲われた。
「やめろ、やめんかっ! こんな英雄的筋肉野郎にまとわりついても誰も得せんぞ! 離れろ、離れーい!」
 恐怖がネイクを襲う。ありえないけど、水着とか溶かされちゃったらどうしよう? 現にネイクの胸元を覆っていた水着が溶けるように消えて────思わず、悲鳴を上げそうになったネイクはあることに気付く。
「……ハッ、戻った!?」
 ワンピース型の水着は変化し見慣れた大胸筋があった。辺りを見回すと空の瓶がいくつも転がっている。ラベルには『マジックアイテム:スライム・ブロークントイ ※幻の効果を奪います。セラエノ製』と書かれていた。


 セラエノと接敵したキミカは絶望していた。
「食らえ、超ヒロイックスーパーラリアットォー!」
 繰り出したラリアットは敵にやすやすと振り払われてしまった。
「これただの幻じゃないですか! やだー!」
 そう、この肉体はあくまでも幻、彼女自身は攻撃力126のか弱い乙女なのだ。
 ヒーローとして拳で戦うつもりだったキミカは水鉄砲を持っておらず、一時撤退をせざるえなかった。そこへ彼女のヒーローが現れる。
「えぇい、鎮まれ、鎮まれー!」
 彼は砂浜のあちこちから拾い集めた砂の混じったねばねばスライムを山にして抱えて走って来た。
「ええええええっ!? そういう力技やめてください、ネイク!?」
 ボーン! 空から降り注ぐスライムの塊……!
「……は、あ!」
「キミカ、共鳴だ!」
 スライム状の粘々がぶつかった瞬間、頑強な胸のふくらみが無くなり、見慣れない新しい水着へと細い身体へと変化する。顔を上げるとネイクがいつもの笑顔でキミカに手を伸ばした。
 赤い髪がぱらぱらと舞う。共鳴したキミカはアメコミヒロインのような水着姿で、ビシィ! っとセラエノたちを指差した。
「乙女の純情を弄んだ罪、万死に値すると知れ悪党どもっ!」
「な、なにっ!?」
 グラノール私設軍隊から謂れない非難の眼差しを受けるセラエノには、なんのことかわからない。だが、そんな彼らをキミカの悲しみと正義の心を乗せたライヴスショットが襲う。


「ふぉふぉふぉ、可愛い女の子たちの水着はええのぉ。広がる海あおい空! むちむちぷりんちゃんたち! ところで、きゅきぃや……いや……なんでもない」
 獣臓はマッスルなキュキィに視線を合わせられず、ついつい波打ち際のセラエノたちを見る。そこで、ネイクが派手にスライムを投げたのを目撃した。
 ────わしのこの姿はなかなかイケてると思うのじゃが……キュキィが……似合わぬのぉ……。
 あのスライムは幻影から元に戻る力があるようだ。ならばキュキィも。獣臓が何か言う前にキュキィはすでにスライムの元へ走っていた。それに安心し、獣臓はセラエノの方へ向かう。
「可愛いミュシャちゃんへ加勢じゃ! ふぉふぉふぉ、助太刀致すぞぃ」
 ついでにセラエノの女兵士へ触れ合い求めて突撃! と駆け出そうとした獣臓に聞きなれた声が聞こえた。
「旦那さまー! あたらしいスライムです!」
 まるでどこぞのパンヒーロー顔の交換とばかりに、殺意さえ感じられる球速のスライムが獣臓の顔面を襲う!
「ふぐぅう!」
 ばっしゃーん! 波の上で昼寝するマンボウ状態と化した獣臓も無事キュキィと共鳴を果たした。

 一連の騒動を見ていた鈴音、真琴、由利菜たちは英雄と共にばらまかれたスライムを眺めた。
「さあ、鈴音。あれよ、飛び込んで?」
 N・Kがこともなげに言う。
「え、嫌だけど……普通に気持ちわるそうだし、絵面的にも何か嫌じゃん。もっとまともな解除方法は無いのって思うよ」
 本当に。
 しかし、由利菜とリーヴスラシルは躊躇わずそのスライムを身体に塗り付ける。途端、ずんとした重みに由利菜が思わず水鉄砲を投げ捨てて胸を抑えた。すらりとしたスタイルからめりはりのある体へと変化し、急に羞恥心が由利菜に芽生える。
「み、水着では、胸が固定できません!」
「……今の状況でそんな贅沢は言っていられんぞ!」
 正直、リーヴスラシルだって赤面した由利菜に同感するところは大きかった。けれども、彼女は凛と背筋を伸ばした。
 胸とは、張りがあって造型良くたって柔らかくたって、キロ単位の脂肪。大きければ大きいほど、水着だけの軽装備で戦闘などもってのほか。揺れたりなんだりと、本人も周囲も色々気になって戦えない。
 しかし、これは幻なのだ。
 実際はがっちり固定されているはずなのである。揺れるのも恥ずかしいのも、全部幻。気のせい気のせい。水着だってずれたりしないし、胸だって実際は揺れてないはず。
「……」
 一瞬、醒めた目で友人たちの変化を見ていた女性陣だったが、自分たちも恐る恐るスライムを手に取る。
「結構気持ちいいわよ、ボディソープみたいな感じかしら。あ、どっちかってゆうとサンオイル?」
 極めて自然体で両手に取って腕に塗ってみるN・K。彼女曰く、ジェル状の冷たい美容液のようで、日焼け後に塗ったら効きそうな感じだそうだ。そうやって、ワンサイズからツーサイズばかりボリュームアップした英雄がにっこりと鈴音を見る。
「塗ってあげようかしら?」
「のーせんきゅー!」
「それじゃ……えいっ」
 投擲されたスライムはたしかにヒンヤリ心地よかった。鈴音は恨めし気に相棒を見る。
「幻影を消す効果があるのか」
 ペタペタと自分の胸に塗ってみるハル。みるみる胸とそれを包む水着が大きくふくらんでいく。
「うわぁ……ハルちゃん無いわぁ……」
 ドン引きする真琴を始めとした周囲の視線が敵味方関係なくなんとなくハルに集まる。
「おう、やっぱりか! 真琴! このスライム幻覚消せるぞ! 力も戻ってくる!!」
「え、あのボクはちょっと遠慮を」
 ずり、砂浜を抉りながら真琴は後退した。詰め寄るハル。
「あ、あのだったらこのまま……っ!」
「問答無用! ヤルぞ!」
「あ゛ーーーっっ」
 抵抗空しく、真琴はスライムを遠慮なく塗りたくられた。
「しくしく……汚された……」
「何言っておるんじゃ。はやく片づけんかい」
 安心ボディを抱えてはらはらと涙をこぼす真琴を軽く小突いて二人は共鳴した。
「うっうっ……、セラエノめ。ここからいなくなれぇーー!」
『気合い充分! 突撃じゃー!』


「効果はあるようだな」
 周りのリンカーたちが続々と幻を解いて共鳴しているのを確認すると、灰川も幻を解除して共鳴した。
「レジャー気分、というわけにもいかないか。仕事である以上、私事は抜かしておかないとな」
 攻撃可能となったのなら手加減は不要である。砂浜にいるセラエノたちをまずブルームフレアで焼き尽くし、抜け出した者には銀の魔弾を撃ち込む。そして、更にそこから漏れた者たちに襲い掛かる。
 それはまるで真夏のビーチを闊歩するキリングマシーン。
「う、うわああ!」
 反射的にタガーを抉るように突き出して来たセラエノの一人の攻撃を灰川は盾で弾く。そして、ケラウノス・プロトを振り上げる。
「尋問用に多少生存は許す。だが、基本原則は鏖だ」
 だが、トドメを刺そうとする灰川を抑えた者がいる。ミュシャだ。
「灰川さん、ヴィランは、原則殺しては……」
 血を吐くような忠告。その過去からヴィランに対し過激なまでの攻撃性を見せるミュシャにそれを言わせる灰川を、事情を知るエージェントたちは恐ろしいものを見るような眼差して見守った。

 共鳴せずに、連携した行動で敵を潰して行ったのは哭凰たちと千颯たち、遊夜たちだった。哭凰たちはスライムを避けながら水鉄砲で戦い、千颯たちは効率的に関節技をかけた。
「よくわからないでござるがこれでいいのでござるか?」
 白虎丸の指投げがセラエノに決まる。
 遊夜たちはツープラトンでのプロレス技などを仕掛ける。
「……ん、ユーヤとの連携で、負けるはずないの」
「ま、長い付き合いだからな」
 誇らしげに胸を張るユフォアリーヤに遊夜がしみじみと頷いたところへスライムが飛んでくる。幻影が解除され、胸筋が少ししぼんだことに遊夜は残念がった。
「しぼんだ。リーヤは大きく……?」
 すると、ユフォアリーヤが遊夜に抱き着く。
「……これが何時もの………ん、共鳴」
 砂を蹴って相手の目を潰してから、ナックルとイグニスで対応する。
「綺麗に焼いてやんよ」
 遊夜と共鳴したユフォアリーヤがクスクスと笑った。


 敵の攻撃をいなし、潰し、戦っていた蓮は、どこからか飛んできたスライムの塊にぶつかる。幻が解けたが胸のふくらみが無くなっただけでほとんど違いは無かった。彼は足元に転がったスライムを拾い、水鉄砲で苦戦しているミュシャを見る。
「ミュシャ」
 振り返ったミュシャは蓮にぺたぺたとスライムを付けられて固まる。
 蓮には悪気はない。苦戦している彼女を助けようとしたのだ。
「ミュシャ、これは幻だよ」
 背後に回ってミュシャの両肩を掴んだエルナーが強く言い含めるように言う。混乱しかけたミュシャが慌てて願うと、ふわりと真琴とよく似たラッシュガードが現れ彼女の背中を隠した。
「──ありがとう」
 息を吐くとミュシャは蓮と相棒に礼を言い、とりあえず、ムキムキのエルナーに残りのスライムを無言で塗り付けた。
「可愛いから、恥ずかしがる必要ない」
 それこそ可愛い見た目の蓮に言われて、ミュシャは改めて笑った。
 そして、蓮がどう月詠を呼び出そうか、と考えた時だった。
「姉ちゃんたちも、セラエノのスライムだ!」
 蓮にスライムを投げたのと恐らく同じなのだろう、グラノールの兵士の一人が哭凰と十七夜にスライムを投げた。



●夕陽の下で
「こんなところでおいたをしてねーで、とっとと家にかえってままのおっぱいでものみな!」
 金の瞳と闇色の肌を持った壮年の男性、共鳴した獣臓が退散するセラエノ兵に毒づく。
 十七夜のパレオを羽織った哭凰がごめんなさい! と謝っていた。龍麟に触れられたショックで共鳴してうっかりデストロイしてしまったのは仕方ない、とは元凶のグラノールの兵士の言葉である。
 ……とにかく夏島を守ることには成功した。

 落ち着いた一同は夕陽に染まる海岸で、信義たちが来るまで多少リゾート気分を味わおうとなんとなく写真を取ってみたり、水鉄砲で遊んだりしていた。どうやらセラエノの撤退により幻はコントロールが効く状態に戻るらしい。
「む、胸は小さいままの方が服が着やすくて良かったです……」
「……私も胸の重さには悩んでいたが……いざ小さくなると、自分を否定されたと感じた。やはり元の体格が良い」
 由利菜たちの共感できない会話を聞きながら、真琴は呟いた。
「この島にはまた来よう……遊びに」
「オーパーツの効果じゃしなぁ……無理なんじゃ?」
「……なんと……」
 ハルの無情な一言に、いつものスイーツを取り出す余裕すらない真琴は砂浜にへたり込んだ。
 そんな女子の会話など我関せずの様子で、仕事をしっかり果たした灰川が砂浜で求人雑誌をめくった。

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愁仁
棗 葉

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 夢ある本の探索者
    努々 キミカaa0002
    人間|15才|女性|攻撃
  • ハンドレッドフェイク
    ネイク・ベイオウーフaa0002hero001
    英雄|26才|男性|ブレ
  • Loose cannon
    灰川 斗輝aa0016
    人間|23才|?|防御



  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 撃ち貫くは二槍
    今宮 真琴aa0573
    人間|15才|女性|回避
  • あなたを守る一矢に
    奈良 ハルaa0573hero001
    英雄|23才|女性|ジャ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 高校生ヒロイン
    早瀬 鈴音aa0885
    人間|18才|女性|生命
  • ふわふわお姉さん
    N・Kaa0885hero001
    英雄|24才|女性|バト
  • エージェント
    獣臓aa1696
    人間|86才|男性|回避
  • エージェント
    キュキィaa1696hero001
    英雄|13才|?|シャド
  • 『成人女性』
    姚 哭凰aa3136
    獣人|10才|女性|攻撃
  • コードブレイカー
    十七夜aa3136hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 任侠の流儀
    九龍 蓮aa3949
    獣人|12才|?|防御
  • Knight of 忠
    月詠aa3949hero001
    英雄|24才|男性|バト
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