本部

【神月】連動シナリオ

【幻島】秋島で食べて食べて追いかけろ!

時鳥

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/07/05 22:29

掲示板

オープニング

●謎の小部屋
 「くっ、なんだよ、コレ!」
 若いセラエノの男が目の前の小さな四角いテーブルに置かれた皿の上の料理に顔を顰める。
 ここは小さな部屋であり、まるで通路を無理やり区切ったような作りだ。ドアも窓もない。入ってきたドアさえ消えている。その中央に2人用ぐらいの白いテーブルクロスのかかった四角いテーブル。椅子は二つ。取り分け用の小皿にナイフ、フォーク、箸なんかもある。調味料も塩、醤油、砂糖、タバスコ、七味、にんにく、と豊富に並んでいた。
 そして注目の料理は、カエルの姿焼き。串に刺さっており表面には味噌を他の調味料と和えたソースがかかっている。所謂ゲテモノ料理だ。
 ガシャンッ!
 男が苛立った様子でカエルの乗った皿を床に叩きつける。
「くそ、ばかにしやがって!」
 カエルを踏み潰す男。
「しかし、見事に閉じ込められましたね。開けようにも引っかかりすらない。壊そうにも幻だからでしょうか、できませんね」
 仲間の女性が壁を調べたり、持っていた魔導書を開いて壁を壊そうと光の玉を生み出し放つも、壁には何の変化もない。
「どうすりゃいいんだ? こっちであってるんだろうな?」
「そのはずですが……おや……」
 テーブルに振り返った女が怪訝そうな顔をする。テーブルの上には男が床に叩きつけ踏み潰したカエルの料理が元の通りに置かれていた。
 その隣には一枚の紙。

 完食せよ。

 ただその一文だけが記されていた。

●秋島
 夢のような時間を過ごせる「季節島」。「春島」「夏島」「秋島」「冬島」の四島からなるセレブ御用達のリゾート地だ。
 オーパーツ『クリュリア』の力により他では実現しない願いの叶う島。
 その中の秋島は赤や黄色の紅葉で人々の目を楽しませ、そして何より島中央の大きい建物、レストランゾーンにて世界中のご馳走を堪能できる。
 しかもなんと! 秋島で食べれるもの全て幻であり、いくら食べても太らない!
 カロリーを気にすることなく油の塊口の中でとろけて消えるフォアグラや黒い宝石のような輝きを放つキャビア、フォークを入れれば肉汁が溢れるステーキに衣がカリッと上がったエビやアナゴなどの天ぷら、鮮度の高い魚介類で握られた寿司に色とりどりの甘い香り漂う生クリームたっぷりのケーキなどなどなど、好きなだけ食べることが出来るのだ!
 レストランで食事をするだけでなく、果物狩りやキノコ狩りなど、食べ物に関したレジャーも楽しむことができる。
 そんな地へセラエノが毒牙を剥いた。
 五年前、イギリスの運輸会社『グラノール』が古代遺跡オーパーツ、『クリュリア』を発見。リゾート地として再開発をし、三年前にオープン。しかし最近になって『クリュリア』の作動原理がおぼろげながら判明し、『クリュリア』が地脈より膨大なエネルギーを吸い上げライヴスを蓄えていることが分かった。
 H.O.P.Eは悪用されない為に島の権利の買取を提案していたが、その隙に情報がセラエノの手に渡ってしまったのだ。
 そして各島で起こる騒動。
 秋島は先に始まった他島の騒動を受け、機転を利かせたグラノールが『クリュリア』でレストランゾーン内の幻を構築しなおした。顧客はレストランゾーンの一角に退避。グラノールの私設軍隊がセラエノ達に応戦し現在は均衡状態。
 だがしかし、セラエノ4人がその応戦から抜け出、『クリュリア』の元へを向かってしまった。もし万が一セラエノが『クリュリア』に辿りつき、幻に影響を与えれば一気に形勢が悪化してしまう。
 元々秋島の『クリュリア』に向かうのにはレストランゾーンを通過する他ない。そして今、『クリュリア』の元へ向かう道は通路を区切るように小部屋が連続する作りとなっており、料理が出され、全てを完食しないと次の部屋に進めないトラップが構築されていた。
 セラエノは二つのルートから分かれて侵入を試みたようだ。追いかけて捕まろ!
 ただし、H.O.P.Eのエージェントだからと言ってトラップを解除することはできない。相手はそれぞれのルートに二人。素早く完食していけば追いつくことが出来るだろう。

解説

●目的
二手に分かれ『クリュリア』にセラエノが辿りつくことを阻止する

●セラエノについて
急遽再構築した為、『クリュリア』の元へ向かう道は何本か出来ており、二つのルートに計4人のセラエノが入り込んだ。
一つのルートに二人ずつ分かれている。
セラエノは全員リンカーで、どちらもソフィスビショップとシャドウルーカーの組み合わせ。

●小部屋について
出された料理を完食しないと出られない部屋です。
料理は幻なのでいくら食べても太ることも満腹で苦しくなることもありません。ただし、味、食感などは完全に再現されています。
一部屋に人数の半分の数の料理が出てきます。(4人であれば2つ、3人であれば1つ)
部屋にいるPCの苦手な料理、好きな料理から出ますがどれが出るかはダイス判定でランダムです。
料理を破壊しても食べきるまで同じ料理がテーブルの上に現れます。

●プレイングについて
プレイングに
・苦手な料理
・好きな料理
・それらを食べた際のプレイング
上記の三点を書いてください。
もし苦手な料理が他の方が食べられるものであれば、お互い相談の上、食べるものを交換することも可能です。その際は苦手な料理を食べるプレイングではなく交換した料理を食べるプレイングを書いてください。

リプレイ


 秋島へ向かいグラノールの私設軍隊から情報得、二手に分かれそれぞれの小部屋へと進んだエージェント達。
 こちらはAチーム。桐ケ谷 参瑚(aa1516)、巳勾(aa1516hero001)、煤原 燃衣(aa2271)、ネイ=カースド(aa2271hero001)、桃井 咲良(aa3355)、ジャック・ブギーマン(aa3355hero001)、キース=ロロッカ(aa3593)、能力者と英雄合わせ計7名である。
 つまりテーブルの上に並ぶ料理は3つだ。中央のテーブルは7人用が座れる大きさであり、椅子も七つ用意されていた。まぁ、小さめの通路なのでテーブルだけでも結構ぎちぎち感溢れている。
 そして気になるテーブルの上にはお皿が3枚。一つは真っ赤なイチゴの乗ったショートケーキ6号四つ切り一切れ、小さめの温泉まんじゅうが2つ、ドーナツ一つが乗った詰め合わせ古今東西甘味セット。もう一つは瓶に入ったお洒落なプリン一つ、ピンク緑黄色のハート型マカロン、エクレアとシュークリームが一つずつというスイーツセット。最後の一つは夏野菜たっぷりの激辛カレーライスだ。
 若干スイーツ関連の量が多いような気もするが、皿に乗るだけ出てきた、ということだろうか。
 しかし、Aチームが部屋に入る前、
「おもしれー趣向の島っすねー。ここなら好物食べ放題とかすげー。お仕事でなけりゃ、ケーキとかードーナツとかーゆっくりいっぱい食べたいところなー。好きなものが当たったら嬉しーんだけどー」
 とか、
「……スズ……行くぞ。俺たちは……いや、俺は……全身全霊を以てこの戦いに臨まねばならん……。それが……俺の……《宿命》……だ……ッ」
(タダ飯が食えるからってハリキってますね……。ホント、ボクの財布使うの止めて欲しいです)
 とかとか、
「よーし、美味しい物たくさん食べるためにセラエノを捕まえるぞー!」
「手段と目的逆になってんじゃねぇか」
「……間違えた! セラエノ捕まえるために美味しいもの食べるんだ!」
「本音は?」
「美味しい物たくさん食べたいです!」
「キヒヒ♪ だろうな」
 ってな感じでほぼほぼ全員やる気満々だったので問題はないだろう。
「法的にはこの施設は『飲食店』か『娯楽施設』なんですかね? ……ま、今日は深く考えずにやることをやるとしましょう」
 などと、一人だけ真面目で冷静な方もいらっしゃったようだが……そんな面々の前に早速現れた料理3皿。
 好きなものがスイーツ、というのが3人もいれば、この菓子類の量が出るのも納得である。
 さて、そんなわけで各自テーブルに寄る。早々に咲良がスイーツに手を伸ばしマカロンを一つぱくりっ!
「わ~♪ 甘くてすっごい美味しいよ~♪ んー、幾らでも食べられるね!」
「見てて胸焼け起こすわ。とっとと食いきれ」
 すごく幸せそうに笑顔を浮かべる咲良へ横からジャックが蹴りを入れる。
「痛い! わかったから蹴らないでよー!」
 などとわいわいしているその横、甘味セットの前には燃衣とネイ。
「何はともあれ、食わねば追い付けんのだろう? さぁ喰うぞ」
「……はぁぁ……まぁ……そーですね、折角だし味わいましょう」
 全身全霊を以て臨む意気込みのネイもすぐにショートケーキに手を伸ばす。ヌォ……っという効果音がつきそうな見てると恐怖を覚えるような食べ方でショートケーキを食するネイ。
 キースは咲良と共にスイーツ皿を摘まむ。味方に譲ろうかと思っていたキースだが思ったよりも量があるようなので美味しく頂くことにした。
「……俄かには幻だと信じがたいですが、これだけ好物が目前に揃うと、抗えないものです」
 エクレアを口に運びながら行儀よく食べるキース。さて、ここで一人スプーンを持った体勢で固まったように椅子に座っている者がいた。参瑚だ。彼の苦手な辛い苦いものが目の前にある。夏野菜の中でも特にピーマンがたっぷりのカレー。味はもちろん激辛。彼の表情に変化はないが、中々箸をつけないことから嫌いなことは明白だろう。
 苦手なものでも挑戦する心意気だがやっぱり少し迷いが生じる。
「イイ機会だ、ガキみてェに甘いもんばっか喰ってねぇで、大人の味ってヤツも覚えな」
 巳勾が適当な応援を口にし、早く食べろと参瑚をせっつく。巳勾は元々食べる気はなく、高みの見物に来ているようなものだった。スプーンで掬いぐっ、と堪えて口に運ぶ参瑚。口の中にすぐに広がり鼻に抜けるスパイシーな辛み。
「ぐぬぬ……寧ろ辛いっていうか痛い……」
 呟きと共に参瑚の目にじんわりと涙が浮かぶ。辛みを通り越して舌がひりひりとしている。水で流し込んで一気に無理やり食べるしか――。と、水をぐいっと飲んだ瞬間。
 なんか目の前からカレーが消えた。
「……ウム……この、痛みに近い辛み……濃厚に幾重にも絡み合う数々のスパイス……素晴らしい」
 と、参瑚の目の前でぶつぶつと言っているのはネイ。既に甘味セットを食べ終えた彼女は唯一残っていた参瑚のカレーも呑み込んだのだ。
 そして、来た方向とは逆の壁にドアが現れる。
「よーし! このままジャンジャン行こう♪」
 そう言って一番に突っ込むのは咲良。次のドアの向こうにはまだ流石にセラエノはいないようだ。
 初めの部屋に入った時と同様、代わり映えの無い景色。そして入ったドアは跡形もなく消失する。
「今度は美味しいもの食べたいなー。もう一回出たし、辛いものはでないだろー」
 と、呟きを零した参瑚だったが……残念。テーブルの上には先程見たのと同じカレーが一皿鎮座していた。他二つの皿は、トマトチリソースが魚の白身にかかっているタイ風料理。蜂の子の煮付けと五平餅が乗っている田舎風セットだ。
「イイ機会だ。今度は一人で完食してみな」
 くく、と笑い巳勾が参瑚を促す。仕方なく再度カレーに挑戦する参瑚。
「あ、それ美味しそうだね! 僕貰ってもいい? いっただっきまーす! んー♪ すごい美味しいよ!」
「許可取る前に食ってんじゃねぇか。キヒヒヒ♪」
 タイ風料理の皿に早々にフォークを立てて咲良が食べ始める。残った田舎風セットに哀愁を感じているのが燃衣。
「……あ、これ……っ! 懐かしいなぁッ!」
 口に運ぶと燃衣の故郷で食べていた味そのままだ。懐かしさに胸がいっぱいになる。
「……うん……味付けもボクの地域のだ……懐かしい……なぁ……あ、皆もどーぞっ!」
 そう言って咲良の前に皿をぐっ、と差し出した燃衣。
「ぴにゃあああああ!? 虫!? 虫はムリぃぃぃいいい!!」
「キヒヒ、こりゃまた綺麗に原型残ってんなオイ」
 蜂の子を目にした咲良が飛び上がり叫んでキースにしがみつきながら泣き出す。ジャックがその様子に面白そうにキヒヒ♪ と、もう一度笑った。
 咲良の反応に「すみません……」と項垂れる燃衣。食べれば美味しいものであるが、女の子に蜂の子の煮付けの見た目はキツかったようだ。
 食えず嫌いか、とネイが言おうとした時、折角なのでと、キースが蜂の子に手を伸ばす。
「ボクが頂きます。昔、孤児院にいたときはこの手のものをよく食べてました」
 彼は虫の類に抵抗はないようだ。咲良は五平餅の方を頂いた。虫もなくなり、ネイは残っていた鯛を摘まんでいる。
 そうやってワイワイしている間に参瑚は水で一気にカレーを流し込むことに成功していた。胃の中まで燃えるような熱さを覚える。
「嫌いなものがもっと嫌いになるやつだコレ……」
 うっ、と俯きながら呟きを零す参瑚。
「よし……次だ……」
 この部屋ではあまり食べ物にありつけなかったネイがすぐに次の部屋へと進んでいく。まだ、次の部屋にもセラエノの姿はない。
 そして、この部屋での料理は……芋虫の姿串焼き特製タレ得体のしれない黒い付け合わせ付き。茹でたズワイガニの足4本とお椀がついていて鯛のお頭汁のようだ。そして、最後の一品。例の激辛カレーだった。参瑚が激辛カレーをもっともっと嫌いになるかもしれない。


 さあ、今度はもう一つ、Bチームがどうなっていたかを見てみよう。
 Bチームは黒金 蛍丸(aa2951)、詩乃(aa2951hero001)、飛岡 豪(aa4056)、ガイ・フィールグッド(aa4056hero001)、夜代 明(aa4108)、アジ(aa4108hero001)、速水 奈緒美(aa4257)、ローゼリィ・アルディア(aa4257hero001)の八8人だ。
 しかし、最初に部屋に入る際、豪はセラエノを警戒し共鳴して最初にドアを開ける役目を担っていた。中に入るとAチーム同様、7人分の用意がされている。
 皿の料理は大きめな鶏のから揚げ骨付き×5と鯛のお刺身の居酒屋盛り合わせ、ところてんお茶碗一杯、チーズとろけるピザ、クアトロフォルマッジ丸ごと一枚だ。
 しかし豪が共鳴を解くと全員が瞬き一つした瞬間、椅子が8つに料理が一つ増えていた。6号の八つ切チョコレートケーキとクリームチーズケーキだ。
 ちなみに後から共鳴をしても料理が減ることはないことを補足しておく。
 Aチームより一皿多い上にこちらでは始まる前、
「初めての依頼、緊張しますが頑張らなくては」
「おーい、奈緒美?」
「ローゼリィ、もうちょっと緊張感を持ってよ」
「えー、奈緒美の緊張を解そうとしただけだよ」
 と、緊張でがちがち気味の奈緒美をローゼリィがつついたり変な顔したりして和ませようとしていた。初々しい光景であるが少々不安でもある。
 というわけで、それぞれが料理を手に取る。唐揚げは蛍丸と明の好物だったので取り皿に分けた。
「お刺身もあるなんて嬉しいです!」
「蛍丸様、いいですか? 美味しいと言っても食べ過ぎは体に毒なんですからね? 聞いていますか?」
 骨付き唐揚げと刺身が好物の蛍丸は特に大喜び。それを詩乃が心配して嗜める。
「旨いには旨い……が、アジの目がうるさいな……」
「いつもは野菜も食べろって怒るとこだけど、今日はまぁいっか」
 一方、唐揚げを嬉しそうに黙々と食べる明を、アジは母の如き目で眺めつつちょっともらって食べる。
 奈緒美達は豪の隣でケーキを、そして豪は調味料にハチミツを探していた。
「チーズが何にでも合うのは、ピザが証明しているよな。どんな具材が乗っかっていてもうまいぞ。……ハチミツないか?」
 初めは見当たらなかったが瞬き一つすると手元にハチミツが現れる。流石は幻、中々に便利だ。
 そして彼は優雅な手つきでハチミツをピザに掛けて手に取り、――完食。とてもそんなスピードで食べるような素振りではなかったが現にもうピザは全部消失している。あの一枚まるまるあるピザをぺろっと平らげた。
 そして皆に避けられているのか残っているところてんを手にしそれもさらり、と食べきった。その食べっぷりたるや神速の域。
「清滝の、水汲ませてや、ところてん。芭蕉。うむ、美味い。幻じゃなくともいくらでも食える食べ物だな。ところてんは」
 と、そこで次のドアが現れた。他の全員が豪が二品食べる間に皆が他の二品を食べ終わったようだ。
「完食すると次が出ないのなら、幻じゃなくても足りないぞ」
「名残惜しんでないで、さっさと次行くぜゴウ!」
 豪がガイと共鳴をし、次の部屋へと一番に滑り込む。しかしまだ、セラエノに追いついてはいないようだ。
 次の4品の料理は……、蛇の鱗が印象的な蛇胴体の唐揚げ山盛り、鳥の唐揚げ骨なし山盛り、お洒落なオムライス、山盛りパセリ。
 奈緒美がオムライスに表情を輝かせるも、大量のパセリにすぐ涙ぐむ。天国と地獄が一辺に来たようだ。パセリを頑張って食べてもいいが、涙目が酷くなること必至だ。
「見事に緑の山だね、どれどれ……」
 と、ローゼリィが一つつまんで口に含むがすぐに難しい顔をして「んー、これ、薬草類?」と呟いた。そこで豪が助け舟を出してくれる。漬物は苦手だがパセリならばいけるだろう。
「いただきます」
 ということで奈緒美は両手を合わせてから美味しそうに、幸せそうにオムライスを食べ始める。
「ふかふか卵、ケチャップライス……幸せ……」
「それ、美味しいの? ねえねえってば!」
 ローゼリィがオムライスに興味津々で騒いでいると奈緒美が無言で一口分差し出した。
「あ、美味しい! 良いね良いね」
 そんな感じで和やかにオムライスを食べる二人。
「僕、一度でいいから食べきれないくらい大好物の唐揚げを食べてみたかったです!」
 蛍丸は唐揚げの大盛りを嬉しそうに食べている。食べきれないくらいの量、といった感じだ。
 もう一つの唐揚げ、それが何か分かっておらず手に取ってしまったアジ。
「どんな味がするのかな? アジくんの好奇心は止められないよぉっ!」
 と、食べ始めようとした直後、鱗に気がつき血の気の引く味。遅ればせながら明も気が付いた。 ヘ ビ だ 。
「絶対無理(だよぉ)!!」
 明とアジの声がハモる。そして暫くどちらが食すか口論の末、どこでどう行き着いたのか唐突に共鳴! ちなみにその間好奇心に刺激されたローゼリィが摘まんでいったが口論に熱くなってる二人は気が付かなかった。
「これは破壊じゃない……ある意味、調理だっ!」
 いきなりヘビの唐揚げに向かいブルームフレアを炸裂。それぞれ消費をしていた全員の視線が集まる。既に豪とガイが個々を手伝い蛇以外食べ終わるところだった。
 そして皿の上には原型が残っていない消炭が……。しかし、それは消えず、新しく蛇の唐揚げが現れることはない。
 食べる意志がある以上、それは調味料をかけることと同じ、と判断されたのか。二人は消炭に絶望的な味を感じつつ完食する。
 すると新たにドアが現れた。再度豪が共鳴を行い次の部屋へと進む。


 Aチーム、3部屋目。芋虫の姿焼きはキースとネイが片づけた。
 キースは特に感情を挟まず、淡々と食べ続け、ネイは
「……ウム……この、一件醜悪な外見の奥に潜む、確かな旨み……素晴らしい。雑味はダシと溶け合う事で調和し、後を引くエグ味は、付け合わせが爽やかに潤す……実に良い。……お替り無いのか?」
 まさかのお替りご所望。
「め……目玉……あ、あぁ……ダメだ……ブニュブニュとしてて、噛むとブチッと音が鳴る触感……うぷ……ッ……それに……あ、あぁぁ目線合わせちゃ……った……」
 鯛のお頭汁を懸命に飲みながら血の気が引く燃衣。
 ズワイガニは黙々とつい黙って咲良達が食べていた。激辛カレーはネイが既に完食済みだ。流石に3回も参瑚は食べる気にはならなかった。
 そして進む次の部屋。ドアに手を掛け更に奥の部屋に行こうとしている人影が二つ。セラエノだ!
 早速共鳴を行うエージェント。彼らに気が付いたのかセラエノが振り返る。
「さ……って、腹ごしらえしたら……運動の時間……ですよ……ッ!」
 まずは燃衣が爆発的な俊敏性を発揮し、怒涛の勢いで当身を食らわす。セラエノ二人が体勢を崩し、その場に倒れる。すかさずジャックが縫止を発動。
「キヒヒヒ! 文字通り引っ掻き回してやるぜ♪」
「くっ、まさか……やりますね」
 ソフィスビショップのライビスが掻き乱れる。
「へいへい、こっからは俺っちの仕事だぁな」
「よくも辛いもの食わせてくれたなぁこのやろー。お礼参りにぶっ飛ばしてやっから覚悟しろっつーの」
 続いて参瑚が共鳴を終えると八つ当たり気味にソフィスビショップに追い打ちを掛けようとする参瑚。
「うるせぇな! 俺だって食いたくねぇカエルとか食わされたんだぞ!」
 そんな参瑚に鋭い刀で切りつけるシャドウルーカー。しかし辛いモノを目いっぱい食わされた怒りの勢いか、ソフィスビショップに向かった参瑚に刀は掠ることなく、シャドウルーカーは勢い余ってテーブルに突っ込んだ! ちなみにテーブルの上には4つの料理が並んでいたがぐちゃぐちゃになってしまう。まぁ、すぐ新しいテーブルと料理が再生するわけだが、如何せん狭いのでちょっと暴れるとすぐ料理が体についてしまいそうだ。
 ちなみに豚骨ラーメン、ドーナツ10個セット、小さい種類の多いお洒落なケーキ詰め合わせ、チョコレートパフェだ。べったべたな上に熱かった。
 そんなドタバタな様子をキースは一人被害が出ない位置で眺めている。
 ライヴスの流れを整えようとしているソフィスビショップに参瑚の冷気をまとった青く輝く大刀が振り下ろされる。大刀の腹が敵の頭上にごつんっとぶつかり。昏倒するソフィスビショップ。
 燃衣がぐちゃぐちゃなまま立ち上がろうとするシャドウルーカーの顎を叩き、気を失わせる。短期決戦ではあったがうまくいった。
 キースが敵の目をタオルで隠し、ジャックがロープで体をしっかり縛っておく。何故か亀甲縛りだ。
「……何でこんな縛り方?」
「この方が屈辱的だろ? キヒヒヒヒ♪」
 共鳴を解いた後、縛り方に咲良が疑問を投げかけると楽しそうにジャックは答える。
 こうしてAチームは無事、セラエノの捕縛に成功した。


 そしてこちらはBチーム。3部屋目。美味しそうなチョコマフィンにレアチーズケーキ。マシュマロを乗せてこんがり焼いたスイーツピザ。ピザの定番マルゲリータ、と美味しそうなもの尽くめだ。
「和菓子も洋菓子も好きだが、やはり洋菓子派かな。こんな状況じゃなければ、もっと味わって食べたいところなんだがな」
 豪がチョコマフィンをさらっと食べる。珍しいスイーツピザを奈緒美とローゼリィ、明とアジの4人で味わい、マルゲリータを蛍丸達が食す。
「チーズの濃い味がいいですね。なかなか普段だとお腹いっぱいで食べれなくなりそうですけれど、沢山食べれるっていいですね!」
「蛍丸さまぁ……私、ちーずというものの匂い、まだ、慣れないです。」
 途中、マルゲリータにも豪が参戦し、安全な食卓は終わった。
 次の部屋へと向かう一行。と、そこでは丁度セラエノの二人が焼き鳥盛り合わせを懸命に食べているところだった。いい匂いがする。
 まさかセラエノも食べている時に入ってこられるとは思っていなかったのだろう。妙な間がある。その間に一斉に共鳴を終えるエージェント。
「待てい! 俺は秋を喰らい尽くす赤色巨星。爆炎龍装ゴーガイン! セラエノよ、お前たちの好きにはさせん!」
 先に共鳴していてテンポが一歩早い豪はセラエノに向かい前口上を言い放つ。そうするとやっと我に返ったセラエノ二人が構えた。ちなみにこちらのテーブルも焼き鳥の他に追加で4つ料理が現れた。そして急にでかくなったテーブルがセラエノ二人の腹部を直撃する。テーブルの上はパセリの山×2と唐揚げの山×2だ。鳥料理のいい匂いが余計部屋に充満する。
 全長600cm程の非常に長い槍を蛍丸がブンッと勢いよく振るう。気絶を狙う為に槍の先ではなく柄をソフィスビショップに向かい振り下ろす。ゴィンッ! といい音がした。
 そこに豪が爆発的な俊敏性を発揮し、怒涛の勢いで鎖鎌を振るう。ジェットに噴射による推進力があるのですごく、痛い。
「お前らの無駄な探究心のせいで損害(ゲテモノ)を食らったぞ……」
 そしてこちらのチームにも怒れる人物が一人。その怒りをのせてゴーストウィンドを放つ。不浄なライヴスを含んだ風や霧が巻き起こり、大量のパセリを舞い上げセラエノ二人に直撃する。
 ダメージを受けながらもソフトビショップが立ち上がり魔導書を開いて呪文を唱える。光の玉が明の腕を貫いた。
 そこへ奈緒美が長さ200cmの薙刀をソフトビショップの足元に振るい転倒させる。まだレベルも他の仲間には遠く及ばずかつ、初の依頼だ。それでも緊張を克服し自分のできることを精一杯にやっていく。
 蛍丸の槍が再度振るわれ、ソフトビショップが気を失う。もう一人も既に動けない程のダメージを負っていた。四対二の状況、不意打ちに近い形だったが故に早く片付いたということだろう。
 蛍丸と奈緒美がセラエノ達を縛り上げる。そして奈緒美は明の腕にケアレイを掛けた。少しであれば、とセラエノの二人にも同じように治療を施す。
 こうして両チームとも無事、セラエノの捕縛に成功。『クリュリア』への到達を阻止できたのであった。


 全てが片付き、任務完了後。グラノールの私設軍隊が頑張ったおかげもあって秋島は無事平穏を取り戻した。
 奈緒美が同じルートだった仲間に「ありがとうございました」と、頭を下げる。そして、Aチームには「お疲れ様です」と挨拶。
 ローゼリィは、各々の肩を叩きながら「上手くいって良かったね」と声をかけていた。
 二人の初めての依頼が無事終わることができ、良い思い出になればいいだろう。嫌いなパセリが舞っていた地獄絵図は忘れた方がいいかもしれないが。
「美味しかったです!」
「蛍丸様! 食べ過ぎです! よくありませんよ!」
 と、詩乃にお叱りを受ける蛍丸。好物を好きなだけ食べ過ぎた結果、詩乃のお叱りを受けるである。
「あ、でも……詩乃の料理の方が僕は好きですね」
「うー、急にそんなことを仰らないでください」
 さらっと蛍丸が言った言葉に顔真っ赤になる詩乃。大変微笑ましい光景だ。
「もう自力でレシピ考えるよぉ」
「もういいだろ。……その、悪かったな、ごめん」
「ハル……っ!」
 あまり目的を果たせず落胆するアジと色々な意味で消耗した明。アジの元々の目的は最近明がアジのお料理に飽きたみたいで、弁当ばっか買ってくるから保護者として他の料理に触れながら、責任を持って新レシピを見つける。だったわけだが……まぁ、消炭食べてたし。後日、アジの料理の為暫くは弁当を明は控える、かもしれない。
「ふぅ……嫌いなものが出たとは言え、懐かしいものが食べれて良かったです。これで、ネーさんの腹も暫くは……」
 と、燃衣はネイの方を見る、前にヌッと手が出てネイが燃衣を捕まえる。
「ウム、喰っても幻な所為でな、逆に腹が減ったぞ……というワケでスズ、金寄越せ」
 燃衣の財布の危機は全然去ってなかった。
「うーん、たくさん食べれて満足な気もするけど、やっぱ幻だし……今度はお腹いっぱい食べたいな! 何か食べに行こうよジャックちゃん!」
「あー? メンドクセ……って、オイ、手ぇ引っ張ってんじゃねぇよ、わーったっつの、オラ、行くぞ」
「痛い痛い痛い! だからってなんで僕の耳引っ張るのさー!?」
 咲良もなんだか満足していないようだ。
「巳勾ーー帰りにカフェ寄ろー。ドーナツ食べたくなっちった」
「はァ? カフェ? まあ別にいいけどよ……秋島じゃねーんだから、喰い過ぎると太るぞ」
 先程、最後の部屋でやっとドーナツを口にし
「マジ美味ー。これならいくらあっても大歓迎っす~」
 と表情は乏しいながらも幸せオーラ満載だった参瑚だが、やはりお腹に溜まらないせいか、カフェに行く、と言い出している。
「ふう。味はあるのに満腹感がないのでは物足りないですね……。部屋に戻る前にケーキでも買って、今度はきちんと栄養補給をしましょうかね……」
 と、キースも大体みんなと同じようだ。
「いつも以上に腹が減った。良かったら皆でバイキングにでも行かないか」
 そこで全員に向かい豪が折角だから、と誘いをかけた。ドーナツやケーキもあるところならケーキバイキングなどもいいかもしれない。往々に誘いに乗る一同。
 やはり食の魔力は人間を離さないということだろうか。
 こうして、秋島を離れてからバイキングに行く約束を取り付け、島を離れるまでは自由行動。そこで詩乃と蛍丸は二人で散策へ。海を初めて見る詩乃。想いを寄せている蛍丸と共に海を見られた島を彼女が好きになるのは必然かもしれない。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 助けるための“手”を
    桐ケ谷 参瑚aa1516
  • エージェント
    速水 奈緒美aa4257

重体一覧

参加者

  • 助けるための“手”を
    桐ケ谷 参瑚aa1516
    機械|18才|男性|防御
  • 支える為の“手”を
    巳勾aa1516hero001
    英雄|43才|男性|バト
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 愛しながら
    宮ヶ匁 蛍丸aa2951
    人間|17才|男性|命中
  • 愛されながら
    詩乃aa2951hero001
    英雄|13才|女性|バト
  • Allayer
    桃井 咲良aa3355
    獣人|16才|?|回避
  • TRICKorTRICK
    ジャック・ブギーマンaa3355hero001
    英雄|15才|?|シャド
  • 天秤を司る者
    キース=ロロッカaa3593
    人間|21才|男性|回避



  • 夜を取り戻す太陽黒点
    飛岡 豪aa4056
    人間|28才|男性|命中
  • 正義を語る背中
    ガイ・フィールグッドaa4056hero001
    英雄|20才|男性|ドレ
  • 掃除屋
    夜代 明aa4108
    人間|17才|男性|生命
  • 笑顔担当
    アジaa4108hero001
    英雄|6才|?|ソフィ
  • エージェント
    速水 奈緒美aa4257
    人間|23才|女性|回避
  • エージェント
    ローゼリィ・アルディアaa4257hero001
    英雄|20才|女性|バト
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