本部

もふもふわーるど

紅玉

形態
イベント
難易度
易しい
オプション
  • duplication
参加費
500
参加制限
-
参加人数
能力者
25人 / 1~25人
英雄
25人 / 0~25人
報酬
寸志
相談期間
5日
完成日
2016/06/30 18:58

掲示板

オープニング

●もふもふを求めて
「ここ、天国?」
 弩 静華(az0039hero001)が紅玉の様な瞳を輝かせた。
「眠ってるのか? 現実だよ?」
 圓 冥人 (az0039)は静華の両頬をぎゅーと引っ張った。
「痛い、夢じゃない」
「何の話ですの?」
 二人の後ろからティリア・マーティス(az0053)が声を掛けた。
「これ……!」
 と、嬉しそうな声で言う静華の手に持っているチラシには『もふもふわーるど』と大きな字で書かれており、さまざまな動物の可愛いイラストが目に入る。
「うふふ、この犬のイラストがダブリスに似ていますわ」
 ティリアは微笑む。
「皆、呼ぼう?」
 静華はティリアを見つめ、小さく首を傾げた。

●もふもふわーるど
「と、いう事で皆様に『もふもふわーるど』で日頃の疲れを癒してもらう為に……なんと、H.O.P.Eが1日だけ貸しきりにしてくれましたわ」
 ティリアは意気揚々とアナタ達に向けてチラシを掲げた。
「色々な動物と触れ合えるそうですわ。小型から大型動物まで、もちろんフードコートもありますわよ」
「乗馬、ショー、餌付け、羊毛フェルトでぬいぐるみ作り体験、あるよ」
 静華は、さまざまな体験のチラシをテーブルの上に広げた。
「広場もあるし、わんにゃんルームじゃ好きな犬と散歩に出れるそうだよ。どう? 君も来るかい?」
 と、冥人は言ってアナタにチラシを差し出した。
 

解説

『もふもふわーるど』
【施設案内】
●小型動物ルーム
うさぎ、鳥などの小動物が放し飼いされています。

●草食動物ゾーン
アルパカ、羊などの動物が放し飼いされています。

●わんにゃんルーム
世界中のわんにゃんをもふもふできます。
※お散歩する為に連れ出す事が出来ます。

●期間限定『あかちゃん』
虎、ライオンのあかちゃんをもふもふ出来ます。

●体験ルーム
乗馬(馬、ゾウ)、犬のショー、羊毛フェルトでぬいぐるみが作れます。

●広場
芝生が生い茂っており、寝転んだりすると気持ち良い。

●時間
朝から夜まで

●NPC
声をかけてくださればお相手をします。
ぼっちで参加してる方には話しかけたりしますので、ぼっちで楽しみたい方は『NPC不用』など一言書いて下さい。

●友達、恋人と同行
・団体の場合:文頭に団体名を書いて下さい。
・恋人の場合:文頭に相手の名前とPCIDを書いて下さい。

リプレイ

●もふもふわーるど
「もふもふわーるど?」
 月鏡 由利菜(aa0873)はティリアから貰ったチラシにを見て呟く。
「ねぇ、リーヴスラシル。動物に触ったりした事が無いのだけど大丈夫なの?」
 と、由利菜は隣に居るリーヴスラシル(aa0873hero001)を琥珀の様な瞳で見つめた。
「大丈夫だ」
 リーヴスラシルは由利菜に向かって微笑んだ。

 月は西へ隠れ、太陽が東から来る前。
 ふと、ベルベット・ボア・ジィ(aa0936hero001 )は窓に視線を向ける。
 これが本当の夜明け前で、今日は楽しみにしていたもふもふわーるど貸切日だ。
 意気揚揚とベルベットは冷蔵庫から食材を取り出し、泉興京 桜子(aa0936)はエプロンを着用し手を念入りに洗う。
「おべんと用意するわよ桜子ー!」
 と、ルーシャンは調理器具を運びながら桜子に声を掛ける。
「おー! よういであるぞー!」
 その言葉を聞いた桜子は両手を上げ、ベルベットの指示を受けながら予め下ごしらえしていた材料を冷蔵庫から取り出す。
「もふもふわーるど楽しみだな……皆と遊んでご飯食べて、最近はやれ調査だ、愚神やヴィランが起こす事件で大変だが。今日は思いっきり楽しむ!」
 と、桜子はこれからの事を頭の中で想像しながら調理をする。
「そうよね。ふふ、ルーシャンちゃんとアルセイドちゃんにお弁当を喜んで貰えると良いわね」
「うむ」
 など、楽しげに会話をしながらだからのだろうあっという間にお弁当は完成した。
「忘れ物ないわよね?」
「昨日から入念に準備したから大丈夫だ」
 ベルベットは重箱と飲み物が入った鞄を持ち、桜子はハンカチ等が入った巾着を手にした。
「いざ、もふもふわーるどへ!」
 先ほどまで暗かった空に太陽がきらきらと照らしていた。

 水平線から太陽が顔を出し、地球の生きる全ての生物におはようと光が降り注ぐ中。
 もふもふわーるど出入り口の前に男が一人、飛岡 豪(aa4056)が後光を放ちながら立っていた。 
「……早くない? いつから居るの?」
 と、豪を見て冥人は小さく首を傾げた。
「確か2時間ほど前に着いた」
 と、豪は真顔で答えた。
「朝ごはんは?」
 そう冥人が問うと、豪のお腹の虫がぐぅ~と恨めしそうに空腹だという事を告げた。
「ま、そんなヤツも居るかと思ってさ。はい、こんなモンでよければ朝食にどうぞ」
 冥人は大きめの鞄から円柱型のお弁当を取り出し、お腹の虫が合唱する豪に差し出した。
「そうだな。腹が空いては戦はできぬ、という言葉もある。頂こう」
 豪は冥人のお弁当箱を受け取る
「少し前に作ったからね。熱いから気を付けてね」
「感謝だ」
 弁当箱の蓋を開けて豪は朝食を頬張る。
「空腹は根性で! どうにか! なるっ!」
 と、仁王立ちでガイ・フィールグッド(aa4056hero001)が力強く言うが、弁当の匂いを嗅いでお腹の虫が盛大に鳴る。
「はいはい、無理は良くないよー。全力で楽しむなら腹ごしらえはしっかりとね」
 まるで、熱血ヒーローの息子を持つ母親の様な対応で冥人はガイに豪と同じ弁当を押しつける。
「あと、今の時間は入場も出来ないし売店も空いてないからね。準備しておいて良かったよ」
 と、弁当をオカズを頬張る2人を見て冥人は肩を竦ませた。
「ごちそうさまだ! 冥人、お弁当は美味かったありがとうな!」
 豪とガイは空になった弁当を冥人に渡す。
 そんな事もあり、ティリアが参加者の名簿を持参して現れる頃にはエージェント達がちらほらともふもふわーるどの出入り口に集まってきていた。

「モフモフの聖地! 早速行こうぜ、ゆら!」
 加賀谷 亮馬(aa0026)は恋人である北条 ゆら(aa0651)の手を取る。
「久しぶりに亮ちゃんとデートだぞー!」
 と、言って亮馬の手をしっかりと握る。
「今日は存分に楽しむといい」
 シド(aa0651hero001)とEbony Knight(aa0026hero001)はそんな2人を保護者の様に見守る。
「ふむ、シド殿。こういう場所は初めてなのだ」
 シドに肩車をしてもらい、普段とは違う目線の高さからもふもふわーるどを眺めるのは何だか違う世界に見えた。
 普段は鎧を身に纏っているEbony、だが今日はH.O.P.Eからのエージェント達へ日頃の疲れを取るための企画だ。
 戦うワケでは無いので鎧は家に置いてきた。
 少し風は暑いが鎧を着てない分、Ebonyは背中に翼が生えたかのように軽くて思わず両腕を上げて背伸びをした。
 一時的な平穏、しかしエージェント達にとっては長くて思い出を作る特別な1日だ。

「……」
 オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は落ち着かない様子でそこら辺を歩きまわる。
「そわそわしちゃってまぁ、もふもふは逃げないよオリヴィエ……」
 と、木霊・C・リュカ(aa0068)は、遠足前に楽しみすぎて落ち着かない様な子供に親が落ち着かせる様な感じに言う。

「せっかくだから一通り回ってみるか」
「こういう場所には滅多に来ないのですから、それが良いですわ」
 と、『もふもふわーるどまっぷ』を見ながら赤城 龍哉(aa0090)とヴァルトラウテ(aa0090hero001)は話す。
 小動物、草食、わんにゃん、期間限定『あかちゃん』、体験ルーム、そして広場と可愛い動物のイラスト付きだ。

「桜子ちゃんやベルさんも一緒、嬉しいな……♪」
 ルーシャン(aa0784)が満面の笑みで一緒に居る友達を見る。
「うふふ ルーシャンちゃん アルセイドちゃん誘ってくれてありがとぅ」
 ベルベットは、4,5人前の食事が入っているであろう重箱が入ったカバンを持ってルーシャン達に会釈する。
 朝早く起きて作った弁当だ。
「むふふ! るーしゃんに誘われたのであるぞ! 一緒にもふもふするのである!」
 桜子はルーシャンに向かって満面の笑みを向け手を取り駈け出した。
「……!?」
 アルセイド(aa0784hero001)は体中の産毛が立つ。
 周囲を見回してもベルベットが鞄を持って微笑んでいるだけだ。
 彼はイケメンの男性には目がないのだから……。
「早く追いかけないと見失いますよ?」
「あ、そうですね」
 ベルベットの言葉に真顔からハッとした表情になり、アルセイドは2人の後を追うように駈け出した。

「到着です! もふもふわーるどですよ、アンベールさん!」
 『もふもふわーるどまっぷ』を握りしめ、目を星のように輝かせながら七森 千香(aa1037)は声を上げる。
「……ここは草食動物バイキングじゃないのか?」
 と、アンベール(aa1037hero001)は視界に入ったヤギ等の草食動物を見て言う。
「絶対に違います!」
 と、言って千香はアンベールの首根っこを掴み半ば引きずるように、夢のもふもふわーるどに足を踏み入れた。
 入った瞬間、千香の瞳に映るのは触ると柔らかいそうな体毛に覆われた動物の姿だ。

「キリル! 天国に行くで!」
 突然、弥刀 一二三(aa1048)が声を上げた。
「……死ぬのか?」
 キリル ブラックモア(aa1048hero001)は眉をひそめる。
「阿呆! もふもふわーるどに行く依頼ががガガ……!」
 もふもふが沢山な場面を想像した一二三は、興奮した様子でキリルに言うが口が回らない。
「っちゅう訳で小遣い渡しとくし! 中で菓子でも買うてな!」
 と、言ってキリルにお小遣いが入ったガマ口のサイフを渡して一二三は『小動物ゾーン』と書かれた場所に足を踏み入れた。

「きょーは佐助とデート~♪」
 うきうきな古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001)は、夫とデートなのでばっちりとお洒落していた。
「お待たせ、アイリスちゃん! じゃ、いこーぜ!」
 と、菖蒲の後ろから古賀 佐助(aa2087)が声を掛ける。
 既に2人の世界、その後ろでリア=サイレンス(aa2087hero001)は防人 正護(aa2336)にお辞儀をした。
 楽しいデートをする2人、邪魔にならない様に正護は子守としてリアと一緒に行動する。

「もふもふですってよ奥さん!」
「楽しそうですわね奥さん!」
 と、裏声で叫ぶのはヴィヴィアン=R=ブラックモア(aa3936)とハルディン(aa3936hero001)だ。
「見てみて! もふもふがたくさん! かわいい♪」
 マオ キムリック(aa3951)は羊の群れ、アルパカ等々の動物を見て喜ぶ。
「急がなくても、もふもふは逃げないから」
 レイルース(aa3951hero001)は無表情だが内心は凄く楽しんでいる。
 頭の上に乗っている青い鳥『ソラ』は体を左右にゆらしながら楽しそうにさえずっている。

●小動物ゾーン
「……あっち、行きたい、です」
 リアは正護に向かって言う。
「ん?」
 正護はリアが指した先には『小動物ゾーン』と看板に書かれていた。
「行って来い」
 ぶっきらぼうに答える正護にリアは小さく頷き『小動物ゾーン』へと向かった。
 うさぎ、ハムスター、ヒヨコなど小さな動物が小さな足で歩きまわっていた。
「ん……可愛い……」
 白い雪の様な毛のうさぎをリアは優しく抱える。
 ふわっと柔らかいうさぎの毛が気持良い、温かくてとくんとくんと小さな鼓動が腕に伝わる。
「……」
 飛岡 豪(aa4056)は動けない、今彼の周りにはうさぎや小鳥が集まっているからだ。
「もふ……」
 リアは世界で一番大きなうさぎの頭を撫でる。
 あれは小動物なのか?と、正悟は疑問に思うが周りが気にしてない様子だったので気にしない事にした。
「シチュー、何人前?」
 静華が大きなうさぎを見て言う。
「……食用?」
 静華の言葉を聞いたリアは大きなうさぎを見つめたまま首を傾げた。
「あぁ、天国や……」
 小動物に埋もれている一二三。
 狭い場所にはハムスターなどのねずみ系が入り、エサに惹かれて小鳥やうさぎが囲う様に集まる。
「苦しくないのかな?」
「むしろ、天国」
 冥人の問いに一二三は嬉しそうに答える。
「幸せ、か」
「もちろんや」
 一二三の周りに動物用のエサを冥人はばら撒く。
 エサに誘われて集まってくる小動物は、まるで満員電車にぎゅうぎゅうと入ろうとするサラリーマンの様に群がる。
「そない乗ったら下のコ潰れてまうや~ん♪」
 もう、小動物にメロメロの一二三を見てキリルはイラッとした様子でその場から去った。
「……ずるい」
 一二三に群がる小動物の群れを見てリアは呟いた。
「独り占め出来る方が、いーよ?」
 そんなリアを見て静華は不思議そうに見つめた。
「ん……そうだね……」
 と、言いつつもリアの周りにも様々な種類のうさぎが集まっていた。
「よいこのみんなー、うさぎさんマッサージ講座はーじめーるでー」
 と、子供の教育番組に出てくる人の様にヴィヴィアンが声を上げる。
「わぁい……っていうか凄いウサギ寄ってくるンゴ、怖いンゴ」
 その隣ではハルディンの包帯が軽快な音共にうさぎの口に吸い込まれていく。
「そんな汚いのかじったらおなか壊すさかいペッしましょうねー」
 ひょいと、ヴィヴィアンはハルディンに群がるうさぎを抱えた。
「基本的にウサギは耳元と足回りのツボを押してあげるのが効果的や」
 ヴィヴィアンは膝にうさぎを乗せ、耳元や足回りを指の腹を使いマッサージをする。
「……」
 その光景を真面目に見る少女2人とおにーさんが2人。
「……ン」
 ヴィヴィアンのマッサージで気持ち良いのだろう、うさぎが目を閉じて小さく鳴き声を出す。
「うさぎって」
「……鳴くんだな」
 と、一二三と豪は目を丸くした。
 滅多に鳴き声は出さないが、「ん」とか人によっては聞こえ方は違う程の鳴き声だそうだ。
「……やってみる」
 リアはその辺に居たうさぎを膝に乗せ、ヴィヴィアンが説明しながら見せた方法を早速実際にしてみる。
 あっという間にうさぎは瞼を閉じてすやすやと寝息を立て始めたのだ。
「凄い、何だか小動物マスターになった気分だ」
 と、普段は犬や猫などに怖がられている龍哉は目を輝かせる。
「ヴィヴィアン君は博識ですわね」
 と、感嘆の声をあげるヴァルトラウテ。
 だが、彼女の肩には小鳥が乗り1枚の油絵を見ている様な光景だ。

●草食動物ゾーン
「せっかくだから普段触れない動物見に行くか」
 と、言った麻生 遊夜(aa0452)はユフォアリーヤ(aa0452hero001)と共に草食動物ゾーンへ。
 ふわもこの毛が特徴の羊、憎めない表情でエサを食べるアルパカ、人懐っこくて「エサを頂戴?」とねだる鹿、などの草食動物が放されていた。
「……ん、これが気になる」
 尻尾を振るユフォアリーヤの視線の先にはアルパカ。
「……ん、行く、よ?」
 長く、長く、見つめあったユフォアリーヤはアルパカとの距離を詰め始める。
 その頃、遊夜は羊の柔らかい毛に手を埋めていた。
「これは中々……」
 接近に成功したユフォアリーヤは、アルパカのやや長い首に抱き付きもふもふを堪能する。
「大きくてももふもふなんだね~。可愛い~♪」
 と、歓喜の声を上げながら大人しい羊の体を撫でてるのはフローラ メルクリィ(aa0118hero001)だ。
「動物と触れる瞬間や誰かと一緒に遊ぶ瞬間って、とっても幸せだと思うんです。ですから、オオカミでも今はヒト! アンベールさんにもその幸せを体験してほしいなと思って」
 その隣で千香は子ヤギにエサを与えながらアンベールに言う。
「こういった所にはあまり縁は無いのだが……折角だ、楽しませてもらう」
 そうアンベールは言うと駈け出した。
「あはは、アンベールさんって凄く元気な英雄なんだね♪」
「あれ……多分、本能かと思うんです」
 フローラの言葉を聞いて千香は恥ずかしそうに顔を下に向けた。
「また、寝てる」
 と、静華は呆れた口調で言う。
「あぁ、ここも最高や~……」
 羊の群れに飛び込む一二三。
 まだ此処には来てないだろうと、思い草食動物ゾーンに来たキリル。
 しかし、彼女の視界には羊と戯れる一二三の姿が入る。
(……イラッ)
 益々キリルはイラ立ちを抑えきれないのか、踵で地面をカツカツと踏んでいた。
「おぉ……これは……気持ち良いのです……」
 別の群れに既に飛び込んでいたのは牛嶋 奏(aa3495)だ。
「……牛?」
 静華は子牛だと勘違いして奏の頭を撫でた。
「牛じゃないです!」
「……ん、本当だ」
 奏の顔を見て静華は頷いた。
「角が付いているから、ね」
 フローラは奏の角を指先で撫でた。
「でも、仲間だと思っているのでしょうか? 先ほどから子牛がすり寄ってきます」
 と、嬉しそうに奏は子牛の頭を撫でる。
「も~」
 母に甘える様に子牛は鳴く。
「おかーさん、間違えて……ふが」
「それは言っちゃダメだよ」
 フローラは慌てて静華の口を手で塞いだ。
「はい?」
「いえ、本当に凄く人懐っこいよね!」
 首を傾げる奏に向かってフローラは微笑んだ。

「皆、楽しんでるね~。私は日中は熱いからここで見てよ~」
 と、水無月 花梨(aa3495hero001)は水が入ったペットボトルを口に含んだ。
 6月後半といえども、天候が良ければ真夏には劣るがそれなりに暑い。
 楽しそうに動物と戯れる人もいれば、疲れてベンチに腰を下ろす者もいた。
「あら、水だけですと倒れますわよ?」
 ティリアは花梨に声を掛ける。
「倒れないように」
 隣に居たトリスが鞄からアメを数個取り出し花梨の膝に置く。
「あ、ありがとうね~」
 花梨はにこっと微笑むとアメを1つ口に入れた。
「ちょっと待ってなんでこいつらこんなに唾かけてくんの!? 臭いねんけど!?」
 と、声を上げながらヴィヴィアンは草食動物ゾーン内を走り回る。
 その後ろにはアルパカの群れが、歯をむき出しにしながらぺっ!と何かを吐く動作をしていた。
「まったく……アルパカさん、これでも食べて落ち着きなさい」
 トリスは袋からエサを取り出しアルパカに差し出す。
 エサに気が付いたアルパカの群れはヴィヴィアンを追いかけるのを止め、トリスがばら撒いているエサへと進路を変えた。
「ヴィヴィアンちゃん、気を付けてください」
「草食動物ゾーンに入ったら向こうからいきなり唾かけてきたんだけど!」
 ヴィヴィアンはエサに夢中のアルパカ達を指す。
「……失礼かもしれませんが、その……ヴィヴィアンちゃんの姿がダメなんだと思います」
 トリスはヴィヴィアンを頭の先から足の先まで見つめる。
「それでも俺は行くんや!」
 再び草食動物の群れに向ってヴィヴィアンは駈け出した。

「人の子もまた羊、ハルディンちゃんはそれを導く羊飼いなのンゴ」
 と、哀愁漂う背中で呟くハルディン。
「昔の記憶に囚われてないで助けてくれへん?」
 白い大地に黒い棒ことヴィヴィアンはハルディンに助けを求める。
 ぎゅーぎゅー、と群れる羊は柔らかくてそして、熱い! 日光と羊の体温がヴィヴィアンを汗まみれにする。
「わっ。何、この群れ……」
 レイルースは羊の群れを見て目を丸くする。
「あ~そこのお兄さん~助けてくれへん!?」
 黒い棒ことヴィヴィアンが羊の群れ中央から両手を振りながら叫ぶ。
「ええっと……」
 困惑しているレイルースの服の裾をぎゅっとマオが掴む。
「わわっ! 大変だね! 手伝うよ!」
 フローラは奏と一緒にエサで羊の気を引こうとするが、群れの一部しか惹きつけられなかった。
「う~ん、どうしたら良いのでしょうか?」
 エサを片手に奏は首を傾げる。
「アンベールさんお願いします!」
 と、必死に千香はアンベールにお願いする。
「見た目は狼だが、これは範囲外だ」
 困惑した表情でアンベールは答えた。
「ヴィヴィアンちゃん、どうして……」
 トリスがヴィヴィアンを見て大きくため息を吐いた。
 その後、どうにか羊の群れから救出されたヴィヴィアンはトリスの小言を聞かされた。

●わんにゃんルーム
 王道アメリカンショートヘア、折れた耳が愛らしいスコティッシュフォールド、脚が短く小さな猫マンチカンなどなど、世界中の猫という猫と、日本といえば柴犬、走る姿は馬の様に美しいゴールデン・レトリーバー、凛々しい顔つきは狼の様シベリアン・ハスキーなどの世界中の犬という犬を集めたこのルーム。
 そう、わんにゃんルーム。流石というべきなのだろうか、エージェント達の人口密度が高い。
「おぉ、よしよしー!」
 とある動物王国の主の様に一二三は犬用ビスケットに集まってくる犬を片っ端から撫でまわす。
「あぁ、眼福すぎる。ここは天国か?」
 ルームに入った瞬間、黄昏ひりょ(aa0118)は声を上げた。
「おぉぉ! ここは天国ですかー」
 と、目を輝かせながら荒木 拓海(aa1049)はわんにゃんルームを見回す。
「一番大きいワンコと散歩がしたいです」
 メリッサ インガルズ(aa1049hero001)は受け付けの飼育員に希望を言う。
「でしたら、レオンベルガーという素敵なわんちゃんがいますよ!」
「その子で!」
 飼育員が犬の名前を言った瞬間、拓海が横から顔を出し即決した。
「超大型ですが、この子は温厚なので特に注意する事はありません。もし、何かありましたら最寄りの受け付けまでお越しください」
 と、飼育員は説明をしながらレオンベルガーの首輪に太いリードを手早く付ける。
「オレと行こうよ! リサ! 付き合って♪」
 リードを渡された拓海は、レオンベルガーの首に抱き付き頭を撫でまわす。
「嫌とは言えないわね……」
 そんな拓海を見てメリッサは口元を綻ばせた。
「よーし、広場の方へ!」
 拓海は意気揚々とレオンベルガーと一緒に広場に向かって駈け出した。

「わーネコさんかわいいのです……!!」
 ひょこひょこと小さな足で歩く猫を見て紫 征四郎(aa0076)は思わず微笑む。
「……またちっちゃいのがいっぱいいやがるな」
 と、ため息を吐くのはガルー・A・A(aa0076hero001)だ。
「どーしたのですガルー、もっと元気出してGOですよ!」
 征四郎は笑顔で拳を振り上げた。
 ガルーが手に持っているカメラは「ガルーちゃんはカメラ係も兼任!」とリュカから言われ渡されたモノだ。
「小さい足音が沢山するね」
「え、えっと、毛の長いネコさんが好きです」
 リュカの問いに征四郎は笑顔で答える。
「どんなのが好き?」
「のこ子です」
 と、征四郎は一匹の長毛で黒い猫をリュカの膝に乗せた。
「シャンティリーていうネコさんです」
 リュカは恐る恐る猫の背に手を置く、さらりとしていて同時に羽毛の様に柔らかい感触が手に伝わる。
「大人しくて、柔らかくそして奇麗な猫だね」
 シャンティリーはリュカの膝の上でごろごろと喉を鳴らす。
「フラッシュは切って、猫が怯えますわ」
 ガルーの後ろにはティリアがカメラの指示を出す。
「こう?」
「違いますわ……お二人がほんわかと、そして素敵な場面を収めるのですわ!」
 と、やりとりをしながらガルーはティリアによって写真術を教えられる。
 そんな中、オリヴィエは一匹の猫を見つめあう。
「顔が煩い」
 そんなオリヴィエを見ていたガルーのにやにやした顔がイヤだったのだろうか、彼はドスッ!と拳でガルーの腹部を突く。
「顔が煩いってなんだよ、何にも言ってねぇだろ……あー待って膝に乗せるの止め。オリヴィエ、オリヴィエこら退かして行って!」
 倒れたガルーの背中にオリヴィエは眠っている猫を乗せる。
 ピラミッド状に積み上げこれが本当の猫タワー。
 ガルーが持っていたカメラ、それをオリヴィエは拾い上げメモリーに保存されている写真を見る。
「ふふ、オドラン様。その時だけはとても良い顔でしたわ」
 と、言ってティリアはその場から離れる。
 オリヴィエの手の中にあるカメラの液晶部分には自分と猫が見つめあう一枚が映し出されていた。

「この間のネコカフェの時もそうだったが、寄って来る奴は何故腹を見せるのか」
 と、おへそを天井に向けたまま寝ている猫を見て龍哉は不思議そうに首を傾げた。
「相変わらずですわねー」
 ヴァルトラウテはその猫のお腹を撫でた。
「それは人慣れしてない猫、慣れている猫の違いです」
「そうなのか」
 トリスの言葉に龍哉は小さく頷きながら猫を撫でる。
「だから噛んだりしない、という事ですわね」
「ヤッベ、可愛過ぎ!」
 と、わんにゃんルームに入って来たカール シェーンハイド(aa0632hero001)は声を上げた。
「なぁなぁ、レイ。レイもそう思わね?」
 目をキラキラと輝かせながらカールはレイ(aa0632)の方に顔を向けた。
「……お前、テンション高過ぎ。煩さ過ぎ。顔、緩み過ぎ」
 そんなカールとは正反対にレイは怪訝な顔で見る。
「此処……天国ってヤツなのかなぁ」
「……いっそ本当の天国まで逝って来い……」
 話を聞いてない様子のカールを見てレイは大きくため息を吐いた。
「今度、猫がテーマの曲でも書くか……」
 ひょい、とレイは足にすり寄ってきた猫を抱えた。
「大きな犬、か……」
 次にレイの視界に入ってきたのは犬だ。
「あの、ふわふわな腹を枕にしたら気持ち良さそう……」
 大型犬のお腹に頭を乗せて寝ている静華を見て、レイは頭の中で想像する。
「……したければ、する?」
 そんな様子のレイを見て静華は飛び起き傍に駆け寄った。
「……って! 俺までカール化してどうする」
 静華の言葉を聞いてハッしたレイは首を横に振り、小さくため息を吐いた。
「凄く、もふもふ、気持良いよ?」
 静華がレイに向かって悪魔の様に囁く。
「遠慮……する」
 内心葛藤しつつもレイは断る。
「かもーん、らんどるふー」
 と、静華が声を上げるとセントバーナードが走ってきた。
「まか、せた」
 半ば強引にセントバーナードを静華から押し付けられたレイ。
「え、ええっ!?」
「素直、一番」
 と、静華が言うのと同時にレイにセントバーナードが飛び付いてきた。
「わ、わぁぁぁ!」
 生きた毛布を被ったレイ、満更でもない表情でセントバーナードを見上げた。
「アンベールさん?」
 ふと、千香がアンベールを見ると黒い犬に囲まれていた。
「……ぬくい……」
 と、囲んでいる犬の毛にアンベールは顔を埋めた。

「あぁ、ここも天国や~最高や~」
 一二三が愛らしい鳴き声を上げる子猫達が体を登ってくる。
(ここなら……この声はっ!)
 ほっと一息付けるかと思ったキリル。しかし、またもやいつの間にか一二三に先回りされていた。
 苛々は徐々に溜まっていく、キリルは踵を返しわんにゃんルームから出て行った。
「はわぁ~♪可愛い可愛い……」
 鈴音 桜花(aa1122)はポメラニアンを抱き頬ずりをする。
「ここに私という狐も居るのです! モフッても良いのですよ♪」
 と、Alice(aa1122hero001)が言うと静華は遠慮なくもふる。
「小型犬は可愛いよね!」
 來燈澄 真赭(aa0646)の顔をぺろぺろと舐めるパピヨン。
「もふ、もふっ」
 その隣で緋褪(aa0646hero001)の尻尾を追いかける静華。
「どの子にしようか悩むよ……」
 押すとピコッと鳴くおもちゃで様々な小型犬と遊ぶ真赭の目は真剣だ。
「う、動けん……」
 豪の膝には子猫がくるんと丸まって寝息を立てていた。
「これぞ猫隠れの術を……は良いけれど、ちょっと暑いかも」
 猫の中に埋もれる俺氏(aa3414hero001)は呟く。
「ね、猫隠れ!?」
 龍ノ紫刀(aa2459hero001)は急に姿を消した俺氏を見て驚きの声を上げた。

●広場でお昼
 お昼、太陽が真上に来た頃。
「今日は一緒にお昼に誘ってくれて、ありがとう」
 りひょとフローラはゆら達に会釈する。
「ご飯は人が多い程、美味しいのだよ!」
 と、笑顔でゆらは言う。

「えへへ……♪紅茶を飲んでいると緊張も解れてきます」
 由利菜は紅茶を口にしながら微笑む。
「ユリナ、私の分も注いでくれ」
「私も」
 リーヴスラシルが由利菜にティーカップを差し出すと、隣からトリスも自前のカップを差し出していた。
「はい、順番です」
 由利菜は差し出されたカップに紅茶を注ぐ。
「美味しかったです。ありがとう」
 と、あっと言う間に紅茶を飲み干したトリスは由利菜に一礼をしてその場から離れた。
「あ、美味しそう! 飲んでみたいよ♪」
 隣で食事をしていたフローラが由利菜に言う。
「はい、ちょっと待っててください」
 由利菜はティーカップに紅茶を注ぐ。

「お昼は用意してきたお弁当食べるわよー!」
 と、広場の芝生にシートを広げながらベルベットは桜子達に声を掛けた。
「はーい」
 と、桜子達は声を上げ、まるで母親と子供の様だ。

「キリルさーん、楽しんでる?」
 と、広場を歩くキリルを見つけたリサは声を掛ける。
「……いや」
 不機嫌そうな口調で答えるキリル。
「やっと人に渡せる出来になって来たの。食べてくれたら嬉しいわ。沢山食べてね♪」
 そんなキリルの前にリサは手作りのお菓子を出す。
「頂く」
 ぷつん、とキリルの何かが切れた。
 お菓子を取り、力強くかじり軽く砕いて飲み込んだ。
 直ぐに次のお菓子を取っては口へ放り込むキリル、行く先々で一二三に会ってしまう苛々が溜まりそれを発散する為のヤケ食いだ。
「作るだけで胸一杯で、遠慮せずオレの分もどうぞ……」
 がつがつ食べるキリルに拓海は自分の分を渡す。
「凄い食べっぷり……」
 と、リサが呆気にとられているとキリルの傍に一匹の犬が駆け寄る。
「ハッハッ」
 犬はキリルの隣に座り尻尾をぶんぶん振る。
 そんな事は気にせずにお菓子を口に運ぶ。
「きゅーん……」
 犬は何かを感じ取ったかのだろうか、じっとキリルの顔を見てからそっと手を舐めた。
 その行動を見て、嬉しくて動きが止まり犬を見つめた。
 キリルと犬を影から撮影する一二三。
(確信、犯)
 犬を連れてきた静華はそう思った。
「……あ、あの、私達も……一緒にいいですか?」
 マオは拓海達にそう問う。
「どうぞ!」
 と、拓海は笑顔で答えた。
「わぁ……凄い」
 マオはお菓子を見て感嘆の声を漏らした。
「美味しそうなおかずだね……1つ良い?」
「……はい、交換です」
 マオはお弁当のおかずと拓海のお菓子を交換した。
「このお菓子全部手作りです」
「これ手作りなんですか……美味しい!」
 リサの言葉にマオは口元を押さえ驚く。

「はい、佐助……だし巻き卵だよ♪あー……」
 菖蒲は手作りのおかずを箸で摘んで佐助の口元へ。
「あーん…もぐ……スッゲー美味いぜ!」
 美味しい、美味しい奥様手作りの料理を食べた佐助は笑顔で言う。
「こっちもお返しに、あーん♪」
「ん、美味しい~♪」
 菖蒲が作った料理だが、旦那から食べさせて貰うとより美味しく感じる。

「あの、飲み物も必要かと思って、持ってきたです……」
 奏は牛乳を片手に広場に集まっているエージェント達に声を掛ける。
「あ、欲しい!」
 フローラが手を上げた。
「え、えっと……」
「うん、美味しいよ!」
 と、フローラが牛乳を飲むと笑顔で答える。
「あ……良かったです」
 ほっと息を吐き奏は笑顔になる。
「ん~、やっぱり奏の牛乳は一味違うね」
 鼻の下に牛乳を付け、花梨はぷはっと満足そうな声を出す。
「ふふ、美味しい?」
 真赭は犬用のエサを買って、パピヨンに与えていた。
 ガツガツと食べるパピヨン。
「こうして見ると可愛いよなー」
 緋褪はパピヨンの尻尾を突きながら眺める。

●ドックショー!
「はーい、皆さーんドックショーが始まりますよー」
 と、ちょっと変わった服装のお姉さんが声を上げる。
 今から始まるのはドックショーだ。その声を聞いてだからだろう、エージェント達が続々と集まってきた。
「楽しみやな!」
 一番乗りの一二三は椅子に座り待機する。
「それではー本日、ショーで活躍するのはこの子達です!」
 と、ショーのお姉さんが犬笛を咥えながら舞台端から手を上げると、様々な種類の犬達が走って来た。
「はい、では皆さんから見て左側の子から紹介します!」
 お姉さんが合図すると紹介された犬は「わん!」と鳴き、その場でくるくると回る。
「娑己様って犬みたいよねー」
 龍ノ紫刀はフリスビーに反応する天都 娑己(aa2459)を見て呟く。
「よしよし、良い子だ♪……しまった、つい!?」
 そんな反応をする娑己を見て鹿島 和馬(aa3414)は頭を撫でまわすが、俺氏のツッコミで我にかえる。
 簡単な芸から、後ろ足で歩いたまま障害物を飛んだりと難しい芸で会場が沸いた。
「凄いわぁ……」
 一二三に関しては感動して涙を流していた。

●期間限定!
 そこは小さい音量のクラシックが流れる部屋、入り口には人数制限や注意事項が書かれた看板に飼育員が必ず一人ドアの横に立っていた。
 看板には丸文字で『期間限定あかちゃん』と書かれている。
「お、おう! ぬいぐるみみたいだな! てか何かすっごいんですがこれは」
 と、亮馬は目を丸くする。
「亮ちゃん。ライオンだよ。虎だよ。ぶっとい足―。可愛いよー!」
 ゆらはケージ内をおぼつかない足取りで歩く虎とライオンの赤ちゃんを見て興奮している。
「赤ちゃんでも注意して下さいね」
 と、飼育員が虎の赤ちゃんを亮馬に抱かせる。
「あははは、頭噛むなよー。禿げちゃうだろー?」
 遠慮なく亮馬の頭に登ろうとする虎、そんな様子を楽しそうにゆらは眺める。
「中に入れるの?」
「ええ、赤ちゃんといっても流石に猛獣なので……ごめんなさいね」
 と、ケージを見ているゆらに飼育員は申し訳なさそうに言う。
「それと、交代させているので数がどうしても一種に一匹と少なくなるのです」
「どうしてなの?」
 飼育員の説明を聞いてゆらは疑問を投げた。
「寝るのが仕事の赤ちゃんですから、人間の勝手で起こしてしまってはダメですから」
「なるほど、お前も大変だな」
 と、亮馬は虎の赤ちゃんのくりっとした瞳を見つめた。
「そうかーあまり遊べなくて残念だけど育てよー」
 ゆらは虎の前足を軽く握り、名残惜しそうに頭を撫でてから部屋から出た。

 征四郎に手を引かれながらリュカは部屋に設置してある椅子に座る。
「せーちゃんもやっぱり猫が一番好きなの?」
 と、膝の上に乗った赤ちゃんライオンを撫でながら征四郎に問う。
「そうですね、実は犬さんの方が好きだったりしますよ」
 征四郎は答えながら恐る恐るライオンの赤ちゃんに手を伸ばす。
「猫科だけど普通の猫とは違うね」
 ライオンの赤ちゃんの形を確かめる様にリュカは柔らかい体に手を滑らせる。
 ふわっとした毛は猫そのもの、だががっしりとした体と将来は大きくなると分かる脚、耳に響いてくる鳴き声は子猫に近い。
「でも、可愛い」
 動く征四郎の手を目で追うライオンの赤ちゃんは、威厳のある百獣の王ではなくただの大きな猫にしか見えない。
「あーあーはいはい、写真ね」
 と、気だるそうに言いながらもガルーは征四郎とオリヴィエをカメラで撮る。
「何か、懐かしい物を感じる……」
 オリヴィエは神妙な面持ちでライオンの赤ちゃんを見つめたが、その懐かしい物が何かは分からないまま部屋から出た。

「この小さな生き物があの猛獣に成長するんだものなぁ……」
 ころっとした可愛い毛玉はひりょを見上げた。
「ずっとこのままの大きさがいいのに~」
 と、フローラはもう可愛くてたまらない様子で虎の赤ちゃんをぎゅーと抱きしめる。
「あら、アジアにある寺院では虎を飼っているそうですわ」
 そんな2人を眺めながらティリアが話す。
「そんな事が出来るのか?」
 りひょは首を傾げた。子供の頃から人に慣れて育てられても猛獣は猛獣だ、お腹を空かせて人をがぶー! なんて事もありえるからだ。
「簡単、生肉から遠ざけるのです。生肉を知らなければ襲われない、という理屈らしいです」
「それじゃ、何を食べさせているの?」
 生肉を与えないという話を聞いてフローラは疑問を口にする。
「もちろん、キャットフードですわよ」
「それじゃ、ただの猫と同じだよな?」
「猫科だもんね……」
 ティリアの答えに2人は目を丸くして虎の赤ちゃんに視線を向けた。
 ひりょの腕の中でごろごろと喉を鳴らしながらくつろいでいる。
「でも、今だけだから可愛いだろうなぁ」
「そうだね!」
 と、ひりょの言葉に同意する様にフローラは頷いた。

「いずれ凛々しくなるにしても、何でも赤ん坊の頃は可愛いものだ」
 遊夜は腕の中でじたばたと暴れるライオンの赤ちゃんを見る。
「……ん、あかちゃん可愛い……欲しい、ね?」
 と、言いながらユフォアリーヤを見上げる。
「残念だが、家じゃ飼えんぞ?」
 視線に気が付いた遊夜は首を傾げる。
「……ちがう」
 頬を膨らませながらユフォアリーヤはぷいっと顔を横に向けた。

「この赤ちゃんならでは……の、もふもふ感……っ!」
 カールは膝の上で尻尾をかじる虎の赤ちゃんを見て、頭からふわーと魂が飛び出そうになる。
 ぐっと堪えて、魂を元に戻し震える手で虎の赤ちゃんを撫でる。
「写真撮ってください」
「良いですよー」
 カールは飼育員に携帯を渡し、虎の赤ちゃんの頬に自分の頬をくっつける。
「嗚呼……もうオレ、死んでもイイかも……」
 と、携帯の画面を見ながらカールは椅子の上で白くなる。
「はーい、次があるから出ようね~」
 冥人はカールを脇に抱えて広場まで連れて行った。
「虎のあかちゃん~」
 真赭は飼育員に説明を受けながら可愛がる。

「もこもこあかちゃんをさわるのであるぞ! みてみよ! るーしゃん! こやつもこもこでもふもふであるぞ!」
 と、元気よくケージを覗くのは桜子だ。
「桜子ちゃん、怖くない……?」
 桜子の後ろからルーシャンは恐る恐る覗きこむ。
「だいじょうぶであるぞ!」
 飼育員に抱えさせてもらった桜子はルーシャンに虎の赤ちゃんを見せた。
「ほら桜子! あかちゃんなんだからもっと優しく抱っこしないとだめよ」
 ベルベットは桜子に虎の赤ちゃんをしっかりと抱きなおさせる。
「わ、肉球やわらかい……毛もふわふわ……」
 桜子はピンク色の大きな肉球を軽く突き、縞模様が目立つ頭部に生えている耳を触る。
「アルセイドちゃんも楽しまないとだめよ☆」
 と、言ってベルベットはアルセイドに虎の赤ちゃんを抱かせる。
「え、えぇ……」
(そしてさりげなくアルセイドちゃんへせくはら☆だっていけめんなんだものぉ☆)
 困惑しているアルセイド、そんな彼をベルベットはぺたぺたとボディタッチをする。
「元気なおとなになってね……☆」
 小さな頭部にルーシャンの額をくっつけて囁いた。

「お~スッゲー、モフモフ……!」
 と、ライオンの赤ちゃんを撫でる佐助。
「赤ちゃんって温かいね~♪」
 菖蒲は腕の中でライオンの赤ちゃんの温もりを感じながら微笑む。
「アイリスちゃんスッゲー絵になって可愛いぜ!」
 と、カメラを構えてシャッターを押す佐助は、初めて生まれた我が子と妻を撮っている父親の様だ。

「この世の真理だ……子供は天使だ……」
 など、感動を口にしながら豪はその温もりをその可愛さを堪能した。

●レッツ! 体験!
 このもふもふわーるどでは乗馬(馬とゾウ)、羊毛フェルトでぬいぐるみ作りが出来る。
「乗ってみるか?」
 と、シドは馬を指す。
「乗るぞ!」
 Ebonyはシドに抱えられ馬に乗せるが。
「足が……」
 と、シドは呟く。
「大丈夫、俺が引っ張るのでしっかりと鞍を掴むんだ」
 シドがそう言うと手綱を引き馬が蹄の音を立てながら歩きだす。
「す、少し揺れるな……」
 意外と大きく上下に揺れる感覚にEbonyは驚く。
「おぉ……動く、動いているぞ……!」
 普段より高い視界、エージェント達が馬に乗っている人達に手を振る姿がよく見える。
 柵内を一周し終えたのでシドは飼育員に写真を撮って貰うように頼む。
「楽しかった。ありがと、シド殿」
 と、Ebonyが微笑んだ瞬間、シャッター音が響いた。

「いつか、HOPEでもペットを飼うのが許可されるかもしれない」
 と、言って馬を見つめながらリーヴスラシルは慣れた動作で馬に跨り、手綱を取り腹を蹴った。
「それに騎士なら、馬を乗りこなせないとな……」
 と、一周走り終えたリーヴスラシルは由利菜を見た。
「え、ええ……やってみます」
 緊張した面持ちで共鳴した由利菜は馬に跨った。
「和馬さん! こんなところにいたの~?」
 と、娑己は馬に言う。
「そっちは馬だ!」
「え? あ、ひゃぁ!?」
 和馬に言われて娑己は交互に顔を見て悲鳴に近い声を上げた。
「娑己様、バカすぎて可愛すぎ……」
 その後ろで龍ノ紫刀が口元を押さえて笑いを堪えている。

「めったに出来ないから、乗馬を楽しむぞ~!」
 共鳴した花梨は馬に乗る。
「はーい、それでは歩かせますよ~」
 と、言って飼育員は手綱を引く。
「乗馬楽し~!」
(おぉ、馬が歩く度に凄く揺れるのです……)
 楽しそうに声を上げる花梨とは裏腹に、奏は乗馬の揺れに驚いていた。
「ベリーグッド号! 行くぜ!」
 と、馬の手綱を引くのはガイ・フィールグッド(aa4056hero001)だ。
 しかし、乱暴に引っ張られて不満だったのだろうか馬は嘶きガイを振り払う。
「うおお! 落馬がなんだ! 絶対に乗りこなしてやるぜ! 気合だ! 根性だ! ファイヤーッ!」
 ガイは立ち上がり、ベリーグッド号と勝手に名付けた馬を追いかけた。
 そんな事が起きている中で、龍哉は馬と謎の友情を育んでいた。
「どこの覇王と黒号ですの、それは」
 ヴァルトラウテはその様子を見て首を傾げた。
「ゾウか。まともに闘うとさすがに手古摺るか?」
 龍哉はゾウを見上げた。
「今日は戦闘思考禁止ですわ」
 呆れた表情でヴァルトラウテは額に手を当てた。

 沢山の作業台が並び、台の上には冊子が置かれていた。
「フエルト……!?」
 作業台の冊子を手に取る桜子。
「それでは、羊毛でぬいぐるみを作り体験の説明を始めます」
 と、冊子を掲げた職員が声を上げた。
「……と、んん……あれれ??」
 フェルトニードルを羊毛に刺すマオ。
「……こうすればいいんじゃない?」
 と、レイルースはマオの前にソラを置く。
「むむ……なかなかむずか」
 真剣な眼差しで桜子とルーシャンは背中合わせで黙々とぬいぐるみを作る。
「小さめでも良いから数作らんとな」
「……ん、目標は35個」
 遊夜とユフォアリーヤは黙々と羊毛にフェルトニードルを刺す。
「わ。アンベールさんお上手ですね、その黒い犬!」
 ニードルで黙々と作業をしている中、千香はアンベールが作っているぬいぐるみを見て声を上げた。
「オオカミだ」
「……かわいいですね!」
 と、感想を言った千香だがぬいぐるみが完成するまで口を聞いてもらえなかった。
「白いウサギのようなマスコットをるーしゃんへ! ぷれぜんとであるぞ! 白いきつね風ますこっとをべるべっとへ。狼っぽいのますこっとをあるせいど殿へ!」
 桜子は完成した羊毛フェルトぬいぐるみを渡す。
「あらあたしの分もあるの?ありがとう~」
 と、嬉しそうな声を上げながらベルベットは大切に受け取る。
「はい、プレゼント! 桜色のにゃんこが桜子ちゃん、まっしろ狐さんはベルさん、金色のわんこさんはアリスね。貰ったうさぎさんは宝物にする♪」
 ルーシャンも完成した羊毛フェルトぬいぐるみを配る。
 遊夜とユフォアリーヤは両手いっぱいの羊毛フェルトぬいぐるみを作り上げていた。

●閉園
 太陽が地平線へと沈み始める頃。
「楽しかった!」
 ゆらと亮馬はもふもふわーるど内で売られていたライオンのストラップをお揃いで購入した。
「まぁ、良い気分転換にはなったな」
「こういうのも偶には良いですわ」
 龍哉とヴァルトラウテはオレンジ色に染まる広場を眺める。
「お前の動物好き、少しは分かった……かもな」
 と、広場で作曲しながらレイは言う。
「だろ? やっぱ動物、超最高!」
 ご機嫌な様子のカールは背伸びをしながら声を上げる。
「って、また拾って来るなよ?」
 そんなカールをレイはキッと睨んだ。

「正護さん、ありがとう、ございました……」
 リアは正護にお辞儀をする。
「ふふ、今日はとっても楽しかったなぁ」
 マオはソラにそっくりな羊毛フェルトぬいぐるみを大切に鞄に入れる。
「……うん、また来れるといいね」
 レイルースは名残惜しそうにもふもふわーるどの門を見上げた。

「もー終わりかー……なんかさびしいね……別れを惜しんで、ベンチで肩に寄りかかって終わっていくのをゆっくり見ていく」
 エージェント達が居ない広場、そのベンチで菖蒲は佐助と寄り添いながら眺める。
「楽しい時間はあっという間だったな……また、デートしようぜ?」
 佐助はそっと菖蒲の頭を撫でた。
「もー閉めますよ!」
 と、出入り口から職員が2人に向けて声を掛ける。
「はーい、帰ろう」
 佐助は手を差し出すと、菖蒲は差し出された手を取り2人はもふもふわーるどを後にした。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • きみのとなり
    加賀谷 亮馬aa0026
    機械|24才|男性|命中
  • 守護の決意
    Ebony Knightaa0026hero001
    英雄|8才|?|ドレ
  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 闇に光の道標を
    フローラ メルクリィaa0118hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • Sound Holic
    レイaa0632
    人間|20才|男性|回避
  • 本領発揮
    カール シェーンハイドaa0632hero001
    英雄|23才|男性|ジャ
  • もふもふの求道者
    來燈澄 真赭aa0646
    人間|16才|女性|攻撃
  • 罪深きモフモフ
    緋褪aa0646hero001
    英雄|24才|男性|シャド
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
  • 希望の守り人
    ルーシャンaa0784
    人間|7才|女性|生命
  • 絶望を越えた絆
    アルセイドaa0784hero001
    英雄|25才|男性|ブレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • もふもふは正義
    泉興京 桜子aa0936
    人間|7才|女性|攻撃
  • 美の匠
    ベルベット・ボア・ジィaa0936hero001
    英雄|26才|?|ブレ
  • おとぎの国の冒険者
    七森 千香aa1037
    人間|18才|女性|防御
  • きみと一緒に
    アンベールaa1037hero001
    英雄|19才|男性|ブレ
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • 未来を導き得る者
    メリッサ インガルズaa1049hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 百合姫
    鈴音 桜花aa1122
    人間|18才|女性|回避
  • great size
    Aliceaa1122hero001
    英雄|15才|女性|シャド
  • ~トワイライトツヴァイ~
    鈴宮 夕燈aa1480
    機械|18才|女性|生命
  • 陰に日向に 
    Agra・Gilgitaa1480hero001
    英雄|53才|男性|バト
  • 厄払いヒーロー!
    古賀 佐助aa2087
    人間|17才|男性|回避
  • エルクハンター
    リア=サイレンスaa2087hero001
    英雄|13才|女性|ジャ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 初心者彼女
    天都 娑己aa2459
    人間|16才|女性|攻撃
  • 弄する漆黒の策士
    龍ノ紫刀aa2459hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
  • 初心者彼氏
    鹿島 和馬aa3414
    獣人|22才|男性|回避
  • 巡らす純白の策士
    俺氏aa3414hero001
    英雄|22才|男性|シャド
  • 私がロリ少女だ!
    牛嶋 奏aa3495
    獣人|18才|女性|命中
  • スライムの姫
    水無月 花梨aa3495hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 発想力と書物を繋ぐ者
    ヴィヴィアン=R=ブラックモアaa3936
    機械|30才|男性|攻撃
  • ウサギのおもちゃ
    ハルディンaa3936hero001
    英雄|24才|?|ドレ
  • 希望の守り人
    マオ・キムリックaa3951
    獣人|17才|女性|回避
  • 絶望を越えた絆
    レイルースaa3951hero001
    英雄|21才|男性|シャド
  • 夜を取り戻す太陽黒点
    飛岡 豪aa4056
    人間|28才|男性|命中
  • 正義を語る背中
    ガイ・フィールグッドaa4056hero001
    英雄|20才|男性|ドレ
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