本部

アストラル2~暴走竜の支配~

アトリエL

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~10人
英雄
6人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/06/11 19:32

掲示板

オープニング

 世界は危機に瀕している。
 突如世界を襲った暴走竜により滅びた世界で君はリアルとヴァーチャルを超える。
「そんな謳い文句と共にアストラルシステムの新作が登場しました」
 アストラルとは過去にその正体がドロップゾーンであることが判明した制作者不明のゲームシステムだ。
 チケットを配布し、それを手に入れたものしか遊べないという希少性と謳い文句に恥じない現実感がゲーマーの間で話題となり、ドロップゾーンを閉じた後でもその存在を探し求めるゲーマーがあちこちに現れる始末。
 今回の情報もそういったゲーマー達のネットワークから偶然発掘された眉唾な情報の一つだった。
「今回のアストラルにはゲーム自体に暴走竜と呼ばれるドラゴンを倒すという明確な目標があり、稼働初日に偶然チケットを得たリンカーの報告によるとドロップゾーンへのデバッグ干渉が通じなくなっているそうです」
 正確には通じないではなく、直後に書き戻されたといった印象が近かったようだが、具体的に何がどう違うのかはわからない。
「今回のゲームも正体がドロップゾーンであることはほぼ間違いないでしょう。その特性の最たるものは想像が現実になるというもので、簡単に言えば願った世界が具現化するようですが……今回は一般的なファンタジーに限られるようです」
 挑戦したリンカーの得た情報から使用できる武器は一般的なファンタジーで用いられる近接武器や想像によって生み出した魔法。重火器の類はその全てが機能不全に陥ったらしい。弓などであれば使用可能なのかもしれないが、干渉する存在から世界観を乱すと判断されればそれが使えなくなる可能性は高い。
「今回はおそらく内部にデバッグを行っている何らかの存在がいるはずです。こちらからの干渉も全く無意味というわけではないのでゲーム内のルールに従いながらその存在を探し出し、しかるべき措置をお願いします」

解説

 ヴァーチャルゲームの皮を被ったライヴスを奪う装置『アストラル』の調査依頼です。
 その正体はライヴスを用いることで干渉できるドロップゾーンで存在目的は未だ不明です。
 今回のアストラル側は積極的な排除を行ってきませんが、普通に従魔が混ざって攻撃してくるのでライヴスを吸われ過ぎないように気を付けてください。一定以上吸われると強制的にゲームオーバー扱いになります。
 ゲームのコンセプトは一般的なファンタジーで世界観を壊す装備などは無力化されるようです。
 今回はゲームに干渉できなくなっていることから内部に何らかの情報を知っている存在がいるとHOPEでは仮定しており、それを見つけ出すのが目的です。

 暴走竜ドラゴン:正式名称不明ですが、ネット上の情報で何故か画像データが存在しています。
 眼鏡をかけた少年:触ることができないNPCとして時々姿を見せる案内人のようです。聞かれたことに決まった回答を返してくれます。
 ゲームセンターの店長:アストラルセカンドを設置することを許可した店長さん。HOPEの命令にはしぶしぶといった感じで従うけど、基本的にゲーマー気質。気さくで何故かゲーム内でも稀にその姿を見かける。
 やせたオタクと太ったオタクっぽいコンビ:ゲーム攻略サイトを作っているらしい。ゲームを終えたプレイヤーにゲーム内の情報を聞いて回っている。何故か同サイト内にアストラルの公式ページが存在する。

リプレイ

●鉄の始まり
「ほう……これは興味深い情報です。あのアストラルが生き延びて市中に潜んでいたとは」
 石井 菊次郎(aa0866)はゲームセンターの店構えを見上げ、呟く。
 そこに描かれている竜の姿は見覚えこそなかったがゲームの名には憶えがあった。
「あれか? 全く中途半端なドロップゾーンであった……従魔なのかそのネットとやらが産み出した幻影なのか区別が付かぬから苛々したぞ」
「結局、ヴァーチャルなのかARなのかも区別が付きませんでしたが、DPを形成しているとなれば放って置けません。何処かに愚神が潜んでいる可能性も有りますし」
 不快感を顕わにするテミス(aa0866hero001)に対し、菊次郎はそういうとゲームセンターの中へと移動する。以前見たモノとはデザインの違うそれが堂々と店内に設置されていた。
「うむ、では……主よ」
「……何でしょう?」
 店内で配っていたチケットを受け取ったテミスはそれを菊次郎に向かって差し出す。
「信じておるぞ」
 テミスはそう言うとチケットを渡し、自らは観客用モニターの前へと向かった。

●情報収集
「名探偵とろろくんサイバーバージョン! 今日の僕は一味違うのです」
 都呂々 俊介(aa1364)はパソコンの前にいた。帰宅途中、偶然に得たチケットを手にパソコンに向かう。
「……勉強をサボっていつもこんな事をして居るとはな。ゲーム機だけでなくパソコンも時間制限が必要なのかの?」
「い、今からのネット戦国時代、ビッグデータの処理にマイナンバーと色々有るのです! しょ、将来の為にもタイタニアお願い!」
 その背後から聞こえた声に振り替えれば、いつの間にか目の前にいたタイタニア(aa1364hero001)が名状しがたい表情を俊介に向けていた。半ば反射的に五体投地する俊介は守るべきモノのために全力を尽くす。
「どうも疑わしいが、今日のところはあい分かった……勿論中間は大丈夫なのであろうな俊介」
その心意気だけはタイタニアにも伝わったらしい。ジト目でそんなことを聞かれるところから察するに信用はされていないが。
「……ま、まだ期間が充分にあるから……」
「……仕方ない。またわらわも協力しようぞ」
 声と目が泳ぐ俊介を前に、放っておけば余計な時間がかかりそうだと判断したタイタニアは溜息を吐き出しながら協力するのだった。
「まずは公式サイトの情報からです。大型掲示板の過去ログからいつ頃から存在するのか……リンク先のサイトの管理者に関しても調べてみる必要があるかもしれません」
「そうか。わらわにはわからんが俊介がそういうからにはそうなのじゃろうな」
 様々な情報を多角的に分析し、関連する情報を全て拾い集める。その結果見えてきた中にギルド・アイゼンガルドの存在があった。

●最低限の労力で最大限の結果を得る方法?
「……またコレ?」
「仕方が無い。前ヴァージョンの調査に私達は関わっていたからな。強く勧められたのも当然だ」
 色々と押し付けられた仕事の山を前にした結果、疲れた顔の穂村 御園(aa1362)にST-00342(aa1362hero001)は冷静な分析を返す。
「うう、有給とバーターってどんだけブラックなの? ウチの部署……ともかく適当にやっつけよう?」
「適当?」
「……適切と間違えたんだヨ。ええと、前みたいな方法を使うのはよろしくないのかな? かな?」
「その件はST-00342に相談されても困る。御園が適切だと思う方法で対処することを勧める」
 本音をこぼしつつ、それを誤魔化し、どうにか楽ができないかと只管思案する御園をエスティはいつも通りに見守る。
 そして、御園が辿り着いた結論は……ネット上で情報収集と戦力募集をすることだった。

●攻略サイト閲覧中
「ゲーム型のドロップゾーンか……。面白そうだが、この重体中の身ではな……迂闊に中に入っては、却って足手纏いにもなりかねん……か」
「緋十郎ってば、ロシアで雪娘に苛められて悦んだりするからよ。己の変態っぷりをよくよく反省なさい」
 偶然入手したチケットを見つめ、己が身体の不調を嘆く狒村 緋十郎(aa3678)にレミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)は追い打ちをかけた。プレイヤーのライヴスを用いて様々な願望を具象化するアストラルのドロップゾーンはリアル体力に応じて内部での強さが決定される。即ち身体の不調はそのままゲーム内でのステータスの劣化に直結するのだ。
「せっかく面白そうな任務だったのに……!」
「返す言葉も無い……。せめて、今の俺達で出来ることをさせて貰おう」
 療養中の身で無理をしない範囲となると必然的にできることは限られる。
「げーむ、ふぁんたじーの世界観……つまりは古き時代の欧州の暮らしぶりをイメージすれば概ね間違いないのよね? わたしがこの世界に来る前の……かつての世界とよく似たものと考えればよいのでしょう? ああ、ますます残念だわ……! せっかく中に入って『魔王』として君臨して、グールやダンピールや下級ヴァンパイアどもを惨殺、暴走竜とやらも屠ってやりたかったのに……!」
 レミアは攻略サイトを閲覧しながら悶々とした気持ちを吐き出す。続々と更新される情報の量は膨大でそれに比例するように声音も大きくなっていった。
「本当にすまない……。ああ、それはそこをクリックして。ドラッグ&ドロップするんだ」
「専門用語は使わないでっていってるでしょ!! ええと……これがこうで、大体わかったわ」
 謝罪しながら指示する緋十郎の手元には次々と動画データがダウンロードされる。レミアのPCスキルがどんどん上がっていくのが目に見えるようだ。
「それじゃあ例のお店、調べてくるわよ」
 それらの情報が十分と思える量になり、レミアはゲームセンターへと出かけるのだった。 

●店長への質問タイム
「あの、やっぱり何か駄目だったんでしょうか……」
「上海じゃ、こう言ったオーナーから協賛金を回収する仕事をしていたんだが、何奴もたちが悪くて困ったもんだ」
「跪きなさい。誰があなたの主か、教えてあげるわ。わたしの前で偉そうな態度は慎むことね」
「……この者は無害そうに見えるが」
 ゲームセンターの店長を捕まえ、凶悪な笑みを浮かべる雁間 恭一(aa1168)とレミアにマリオン(aa1168hero001)は正直な感想を漏らす。HOPEの名前を出すことでしぶしぶといった感じで応対してくれている店長は一見すると人の良さそうな印象を受ける。
「ネットのサイトを利用した賭博、女の待合わせ、薬物の取引仲介……アホな餓鬼の溜まり場に成るのと匿名でネットを利用できるんでやりたい放題……こいつがどうなのかはこれから調べれば分かる」
「余はそのヴァーチャルとやらで斬り合いが出来ると言うのに興味がある! そこの間抜け相手は大概にして早く始めようぞ」
「つーわけで。話をきかせてもらうぜ。オーナーさんよ。まずは設置経由からだ」
 HOPEの権限を行使しての店長との接触は半ば強制的であり、脅迫紛いでもある。良い子は決して真似をしてはいけません。
「誰がこの筐体持って来たの?」
「知りません」
 レミアの問いに答えた店長は嘘を言っている様子はない。本当に知らないのだろう。
「此処以外にも、このゲームが置かれているゲーセンって、あるのかしら?」
「噂だとあるみたいですけど、行ってみたらなかったという話も多くて何とも言えません」
「メンテナンスとか、売上金の支払とか……色々あるわよね。そういう時……このゲームに関わる連絡先って、何処なの?
「正直な話、怪しいなとか思ってはいたんですが……私もゲーマーの端くれでして、ただで遊んでいいならと気にしてなかったんですよ」
「1番疑わしいのはメンテナンス方法だな。誰が担当している?」
「……まあ、ぶっちゃけメンテナンスとかしたこともないですし、設置も気付いたらいつの間にか一角がアストラル2のゲーム機になってたんです」
 恭一に逆らう意思を欠片も見せず、店長は正直に答える。
 ドロップゾーンであるアストラル2は気づいたらそこにあり、普通のゲームと違ってメンテナンスも必要がない。一見すると尋問のようにも見えるただの質問タイムは結局、何の実入りもなかった。
「ま、話を聞いた結果。結局内部を直接ぶっ叩いたほうが早いという結論に至ったわけだが」
「お前のような脳筋にはそれが1番だな」
「やかましい!!」
 店長の善意から奪い取ったチケットとレミアから受け取った情報を手に恭一とマリオンはアストラル2に挑むのであった。

●廃人の末路
「やりました。我がギルド『アイゼンガルド』は最早この世界を手中に収めたも同然です」
「メンバーは1万人越え。主の指示で皆が動く。これが現実世界だとしたらさすがに恐ろしいな……」
 アストラルの潜在的なユーザーの数は無駄に多い。何しろ偶発的な接触でチケットを得なければ遊べないのに遊んだ者の評価は軒並み高いのだから当然とも言える。その結果、幾度となくチケットを得るに至った菊次郎の評価は高騰し、その傘下のメンバーの数にテミスが驚くのも当然の帰結であった。
「これより『アイゼンガルド』は最終決戦に挑みます」
 その宣言により各地から集まることを宣言する書き込みが次々と集まってくる。
 そのスレッドの裏側でついでに開かれるオフ会の参加者も次々と集まっていた。

●オンのままのオフ
「ブヒィィイイイイッ!!!??? これがリアルミソノタンですとおおぉぉぅゥォゥおぅッ??!?!!?!?!?」
 某所のゲームセンターの前で待ち構えていた一人のオタクに声をかけると、そんな奇声が返ってきた。
「はい!! どうしても直接お会いしたくて!! 今日はよろしくお願いします!!」
 営業スマイルで対応する御園だが、僅かに表情が引きつっている。
「うおおおぉぉぉぉぉッ!! M・I・S・O・N・Oオオォォッ!」
 ヒートアップしたままの勢いでオタ芸を披露し始めれば、周囲の注目が集まってきた。
「ST-00342がそんなに珍しいか? どのような機能があるか……? い、今は御園の相手をしてあげて欲しい」
 ゲームのマスコットキャラクターか何かと勘違いされたエスティが捕まり、御園はその対応に追われる。
 オタ芸で注目を浴びるオタク達のことは地元では有名らしく、曰くアストラル2のクリアに最も近いとかなんとか。
「あなた達がこのゲームに一番詳しいと聞きました」
「ふふり、吾輩達に目をつけるとは流石でござるな」
 それを聞きつけて話しかけるアリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)の丁寧な物腰に今更のように取り繕った態度で応じるが、その鼻息の荒さは変わっていない。むしろ、注目を浴びたことで更に興奮状態に陥っている。
「えぇ。このゲームとあなたたちに興味があってね。いろいろとお話きかせてね?」
「モテキ来たッ?! もう何も怖くないでござるぅぅぉぅぉうぉぅオゥォウォッ!!!!!」
 志賀谷 京子(aa0150)にまで声を掛けられて許容範囲を大幅に超えたらしく、彼にはもはや冷静さなど欠片も残っていなかった。
「すごーい!! 武器の情報なんかも全部自分で調べたんですか? もしかして公認ですか?」
「そんな装備で大丈夫か? もちろん大丈夫でござる!! 公認を超えた公式と自負してるでござるよ」
 京子に差し出したコピー用紙の束は膨大な量の武具データを網羅している。褒められて調子に乗ってキャラ崩壊著しいが、とりあえず情報が役に立ちそうなことだけは間違いない。公式との関わりは自負しているだけで疑問が残るところだが。
「このトッププレイヤーってもしかしてあなたたち? それじゃあなんでも知ってるんですか?」
「そこまで言われたら見せないわけにもいきませぬなぁ……これはここだけの情報でござるよ」
 アリッサの手を握る度胸もなく、密かに隅っこに個人の電話番号が記載されている極秘とトップシークレットのハンコを押してある紙を取り出し、見せびらかす。
「これ一枚でアストラルに勝つるッ!」
「へぇ……ドラゴンってやっぱり強いんですね?」
 そこに記されていたのはドラゴン族に関する様々な情報だ。アリッサが見たところ先ほどの武具リストのデータの中でも上位の物しか通用しそうにないスペックがそこには書かれていた。だが、その中にアストラル2の看板ともいえるドラゴンのデータはない。
「あなた達のページ内に公式ページがあるってことは公認ってこと?」
「まあそう思ってくれても構わないでござるよ」
「よければその……このゲームの裏技なんか、知ってたりするのかなー……なんて」
「仕方ないでござるな。これは極秘情報でござるよ?」
 アリッサや京子に褒めちぎられ、もはや直線を探すことの方が困難な表情を浮かべ、懐から別の紙を取り出す。一体何枚隠してたんだ。
「BOTの過激発言により情報は随分取得できましたよ!!」
「やはり当初の目的のハッキングとまではいかなかったようじゃな。して、どのような?」
「例の眼鏡の少年と竜のデータですよ!! どうやらこの二人。いや、一人と一匹、密接な関係があるみたいで……」
 その横を俊介とタイタニアが大声をあげながら通り過ぎる。
「サブキャラも駆使し調べ上げた結果。やはりあの少年が怪しいと思われます。そして、特定のワードで問い詰めると妙な反応をすることも」
「ううむ……ただの偶然だと思いたいのじゃが。どうやら間違いないようじゃの。このギルドメンバー『ほぼ全員が』経験しているところを見ると」
 菊次郎とテミスがそう言いながら通り過ぎると同時にオタクは愕然と崩れ落ちた。
「……燃え尽きたでござる。真っ白にな……」
 どうやらその情報はほぼ同時期に多くの人が得ていたらしい。
 菊次郎がサブキャラテミスの分のチケットとギルドの人脈を駆使して集めたチケットで可能な限り合理的に集めた情報はギルド掲示板にアップしてある。それを踏まえた上でアストラル2に挑んだギルメンから集まった情報は、ほぼ全員が初見プレイでそのため大半の条件が異なる。にも拘らず経験が一致するということはそこは必須ルートであるかあるいは根源たる何かにかかわる存在ということになる。
 遭遇する場所は一貫しておらず、必須ルートと考えるには難しい。となれば必然的にその存在がクリア条件に関わる存在であると推測するのはゲーマーであれば当然の帰結だ。
「こんなゲーム世界にドロップゾーンを作るような趣味的な手合はさ、きっと見てるだけじゃ満足しないんじゃないかな」
「つまり、自身もNPCのふりをして参加しているわけですか」
「うん、あるいはPCとしてかも。まあいいや、暴走竜をたおすぞー!」
 必要な情報は集まった。京子とアリッサは崩れ落ちたオタクを置いて、アストラル2へと向かうのだった。

●見た目やレベルで判断してはいけません
「で、さっそくなんですけど。不正アクセス禁止法って知ってますか? 私たち実はHOPEの者なんですよねー」
「こんな手段をとってしまったことは謝罪する。しかし事態は急を要するのだ。協力してほしい」
「ア、ハイ」
 御園とエスティの言葉の意味を理解しているかどうかはわからないが放心状態のオタクには逆らう意思などは欠片も残っていなかった。
「で、例の暴走竜の出現に関するフラグだけど……怪しいと思うのは……これとこれとこれね。お願い」
 御園はネット上で集めた情報をオタク……アストラル2内では永遠の修行僧シュバインに危険を伴うフラグの確認作業を任せていた。ネカマらしく、その姿は現実とは似ても似つかない。アストラル2の影響力はどこまで広がっているのだろうか。
「……お、ちょうどよさそうな奴らがいるな。ついていくことにしようか」
「お姉さん、よろしくお願いしまーす!! えっと、僕たち今日始めたばかりの初心者なんですー!!」
 そこに恭一とマリオンが合流してきた。その後ろにいるのは店長だろう。こちらはこちらで美少年キャラになっているのだが、自身の外見と全く同じキャラを作る者の方が少ないのが世の中というものだ。
「お、さっそく怪しい奴発見……ここは俺に任せておけ!! おりゃあぁぁぁぁ!!」
「レベル1のキャラがあからさまに強そうな相手に有利をとれるのは怪しまれると思うのだが……奴ら、ゲームの敵ではないな?」
 半ばパワーレベリングに等しい勢いで成長する恭一とマリオンだが、主に戦っているのはデータに紛れ込んでライヴスを奪っていると思われる雑魚従魔だ。しっかりと倒した分のレベルが上がるのが仕様らしく、アストラル2の世界ではリンカーは他のゲーマー達よりも遥かに優遇されていた。最も、その分より多くのライヴスを吸われている可能性を考えればメリットとデメリットのどちらが大きいのかは何とも言えないが。
「ここは俺たちに任せてさっさと逃げてくれ……いやいや、裏技とかでなくてだな!! 説明がめんどくせぇ!!」
「ええと、とにかくここは僕たちに任せて!! お姉さん達は向こうの奴お願い!!」
 そして、リンカー達は従魔に狙われるのもアストラル2の仕様の一つだ。恭一とマリオンを囮にし、御園達は目的の少年の元へとフラグを踏みつつ急ぐのだった。

●眼鏡をかけた少年
「ダメだとは思いますけど、一応愚神について少年に聞いてみましょうか」
 様々なフラグを超え、辿りついた先の少年にアリッサは問いかける。
 愚神に関しての情報は特に反応なし。
 デバッグモードについては少し変化が見えた気もしたが、揺さぶりをかけてもスルーされた。
 攻略サイトによるとこの少年の言葉に従って動けば様々な竜と闘うことができるらしい。だが、その中に暴走竜の姿を見たという情報は一つもなかった。
 その事実と少年が反応するワードを知る菊次郎達は合流すると全員で少年を囲んだ。
「では……少年よ。我らは今禁断のワードを口にする。『我々は皆ニート!! 働きたくないでござる!!』」
「誰がニートだッ! お前らが原因か、この前からニートニート連呼しやがってッ!!!!」
 菊次郎の声に唱和する形でギルドアイゼンがルドの全員が同時にハモると先ほどまでは無気力に見えていた少年が激高し、声を荒げていた。思いっきり感情を顕わにしている少年の姿が歪んでいるのは気のせいではない。
「……な。なんだこの揺れは!? 少年の姿が……竜に変化していくぞ!?」
 テミスの目の前で真の姿を現す少年。その正体はアストラル2の看板モンスターである暴走竜そのもの。
「情報通りですね。理由はわかりませんが……無職という意味合いの言葉に反応するのは確か、後は皆で協力し奴を倒すだけ!!」
「いやまぁ、主よ。やってることはかっこよく見えるが。言ってることは相当かっこ悪いぞ」
 そう宣言する菊次郎にテミスは冷静な突っ込みを入れつつ、暴走竜と対峙するのだった。

●探偵は遅れてやってくる
「ほう。では公式サイトとの関連性は全くないのじゃな?」
「えぇ! 公式サイトと言い張っていますが、管理しているのは個人でした」
 アストラル2の内部に入り込み、タイタニアに俊介から答えを聞いていた。
 集めた様々な情報から辿り着いた一つの結論。それはNPCの少年が実在し、公式サイトのサーバーを借りているということ。
「さっそく他の方と協力して例の少年の元へ向かいましょう!! ……あれ?」
「どうやらすでに暴走竜が出現しているようじゃの。他の者に先を越されてしまったか」
「遅れた分は戦闘で取り戻しますよ!! 名探偵の力、見せてあげます!!」
「……名探偵なのに力任せなのはどうかと思うのじゃが。とにかく竜退治じゃ」
 俊介にそう突っ込みつつ、タイタニアはアイゼンガルドVS暴走竜の戦いに飛び込んだ。

●決戦
「紛れ込んでる従魔の実体はデータなわけでしょ? サイバーパンクだよね」
「ドロップゾーン自体がゲーム空間ですから何でもありですね……」
 京子とアリッサはリンカー達を重点的に狙う鳥真紀を相手にしていた。
「想像が現実になるというなら、放った矢が幾重にも分裂して敵に降り注ぐとかできるのかな」
 京子がそうイメージすると僅かにライヴスが削られる感覚と引き換えに放たれた矢が分裂して暴走竜に降り注いだ。
 それを見た恭一もイメージを乗せた一撃を放つ。前衛に立ち、仲間の盾となり、双剣を振るっていた。
「ここは僕の世界だ! 僕が見つけて僕が育てた!! お前らなんかに終わりにさせてたまるもんかああぁぁ!!!!」
 暴走竜の背に見える少年の姿はやつれているようにも見える。それは暴走竜というコアにライヴスを吸われていることの証明でもあった。アストラルのデバッグシステム。それはドロップゾーンの核として別の存在を隔離し、その者の理想とする世界を生み出すことで取り込むゲーマーの性質を利用したトラップである。
「想像が現実になるなら……!」
 明らかに頭数が足りない。そう判断した俊介はとっさに機転を利かせた。情報収集のために送り込んだBOTにライヴスを分け与える。その結果無数の俊介の分身体が戦場を闊歩する。
「なっ? どこからこんなに?!」
 少年が戸惑い、暴れ始めた。それは暴走竜の巨体で行えば大きな隙を生む。
 実践に慣れているリンカー達がその隙を逃すはずもなく、暴走竜は討伐された。

●終わらない戦い
「奴をやっつけたら元に戻ったみたいだな。これで一応解決か?」
 恭一の前には何もない空間だけがあった。アストラル2は跡形もなく消えている。
「……ギルドは本日をもって解散します。ゲームは1日1時間!! 次は現実で会いましょう!!」
 解散を宣言する菊次郎の背後にはやつれた少年の姿があった。彼も被害者だったのだろうか。
「うむむ……情報を収集するには時間がかかりすぎましたね」
「うむ。短期間で効率よく行動するのは重要じゃな」
「あの……その大量の問題集はなんでしょうか?」
「安心せい。わらわが効率のよい勉強方法を仕込んでやるぞ」
 反省する俊介はタイタニアに拉致され、ゲームセンターを後にする。
 そんなアストラル2の消えたゲームセンターにはクレーンゲームの達人が現れたという伝説が刻まれた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362

重体一覧

参加者

  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • ヴィランズ・チェイサー
    雁間 恭一aa1168
    機械|32才|男性|生命
  • 桜の花弁に触れし者
    マリオンaa1168hero001
    英雄|12才|男性|ブレ
  • 真実を見抜く者
    穂村 御園aa1362
    機械|23才|女性|命中
  • スナイパー
    ST-00342aa1362hero001
    英雄|18才|?|ジャ
  • 真仮のリンカー
    都呂々 俊介aa1364
    人間|16才|男性|攻撃
  • 蜘蛛ハンター
    タイタニアaa1364hero001
    英雄|25才|女性|バト
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
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